説明

グルコマンナン含有アスベスト溶解剤を用いるアスベスト溶解残渣の飛散防止方法

【課題】 アスベスト含有建築物、罹災建造物を解体する再の粉塵飛散防止に関し、アスベスト組成分を溶解し、非品質化した溶解残渣粉塵の飛散防止方法を提供する。
【解決手段】 東日本大震災による大量のアスベスト罹災建築物や被災瓦礫処理および被災瓦礫集積場に対し、グルコマンナン含有アスベスト溶解剤を、該罹災建造物、被災瓦礫に吹き付け散布することにより、アスベスト成分を溶解すると共に溶解残渣の解体時に発生する粉塵の飛散防止方法を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
東日本大震災による罹災建造物および被災瓦礫の処理に際し、これらに含まれるアスベスト粉塵の飛散防止に関する。
詳しくは、本発明は罹災建造物及び被災瓦礫に対し、グルコマンナン含有アスベスト溶解剤を散布し、アスベスト組成分を非品質化して減容する溶解残渣の飛散防止に関する。
【背景技術】
【0002】
アスベストは繊維状の針状結晶物で、長期間強度劣化することなく、建設資材の耐火吹き付け、壁材、スレート材、電気製品、工業用品等々に使用されてきたが、平成23年3月11日の東日本大震災により、大量のアスベストを含有する罹災建造物や被災瓦礫が発生、これらを処理する際、アスベスト粉塵の飛散防止が喫緊のとなっている。
従来、アスベスト粉塵の飛散防止方法として、アスベスト含有建築物資材の繊維状アスベスト針状結晶体に対し、直接コンニャク精粉やグルコマンナンを散布するアスベスト飛散防止方法が特許文献〔1〕,〔2〕,〔3〕に提案されている。
【0003】
特許文献〔1〕および〔2〕の提案は、コンニャク精粉乃至その誘導体およびグルコマンナンの水溶液を用いて、建造物に対し噴霧するアスベスト粉塵の飛散防止である。
また、特許文献〔3〕の提案は、電気石と酸化ケイ素からなる複合体セラミックスや植物系樹脂の海草、コンニャク精粉、水等を用いて吹き付け噴霧するアスベスト飛散防止方法である。
【0004】
これらの提案は、何れもアスベスト含有物の繊維状アスベスト針状体に対し、直接コンニャク精粉やグルコマンナンの水溶液を吹き付け、固化することであるが、アスベスト組成物は針状体のまま解体された後、乾燥すると再度飛散するため、アスベスト飛散防止には多くの課題を残している。
【0005】
特許文献〔1〕特開平2−214584号公報
特許文献〔2〕特開平2−263886号公報
特許文献〔3〕特開2009−108607号公報
【0006】
アスベストは、蛇紋岩系とカンラン岩質角閃石とが知られ、蛇紋岩質白石綿クリソタイル〔MgSi10(OH)〕、角閃石質茶石綿アモサイト〔(Fe,Mg)Si22(OH)〕、角閃石質青石綿クロシドライト〔Na(Fe2+,Mg)Fe3+Si22(OH,F)〕のクリソタイル、アモサイト、クロシドライトの三種が工業的にアスベスト建材として使用されていることが知られている。
この他、角閃石系のアンソフィライト〔MgSi22(OH)〕トレモライト〔CaMgSi22(OH)〕、アクチノライト〔Ca(Mg,Fe)Si22(OH)〕が知られているが、耐摩擦材、耐熱材等に多く用いられ、建材用の利用は極めて少ないことが知られている。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、アスベスト溶解剤として、植物性有機酸と低濃度オルトリン酸および天然成分ミネラルイオン含有植物皮果汁液組成物による混合酸と酸化剤として次亜塩素酸ソーダ(アンチホルミン)と超微粒子二酸化チタンを用いてアスベスト含有廃材を溶解処理することにより、低濃度オルトリン酸であっても植物性有機酸との混合酸により、アスベスト繊維状針状結晶体を安全、且つ、容易に溶解することを見出し、アスベスト溶解残渣の繊維状針状結晶体はマグネシウム溶解残渣となり、グルコマンナンにより固形体となり、アスベスト繊維成分を非品質化して減容するアスベスト溶解残渣の飛散防止方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、これまで〔特開2011−25212号公報〕に、アスベスト溶解剤およびアスベスト無害化湿式処理方法の提案を行い建造物の解体と解体物の処理を実施して来ている。
発明者は、角閃石、花こう閃緑岩系の変質黒雲母(一般にはヒル石)を植物性有機酸であるパイナップル皮果汁液を用いて、天然ミネラル成分の抽出に成功し、特願2010−100790号公報に提案して来ている。アスベストの主成分についても、アモサイトやクロシドライトは角閃石質系石綿体をもっているので、パイナップル皮果汁液を用いて溶解試験を実施しX線回析の結果、アスベストの溶解が認められた。
しかし、パイナップル皮果汁液でのアスベスト溶解処理には、コストが高いため、模索の中、低濃度オルトリン酸液に少量のパイナップル皮果汁液を添加した混合液の中に、吹き付けアスベストを浸したところ溶解が確認されたことから、再度、X線回析した結果、アスベストが完全溶解することを見出した。
本発明は、東日本大震災によるアスベスト含有罹災建造物及び被災瓦礫の処理に対し、グルコマンナンを含有したアスベスト溶解剤を吹き付け噴霧することにより、粉塵発生を防止することがわかり、本発明を完成した。
【0009】
本発明のアスベスト溶解剤について説明する。
発明者らは、アスベストを含有する廃材を処理するに当たり、植物性有機酸のパイナップル皮果汁液の主成分であるイソ吉草酸〔(CHCHCHCOOH〕と低濃度オルトリン酸(HPO)との混合酸を用いてアスベストの繊維状針状結晶物を浸漬すると、浸漬液中にアスベストの主成分であるマグネシウム(Mg)や鉄(Fe)がイオンとして溶解され、アスベストの針状結晶体表面を覆うことなく、アスベスト繊維状針状結晶体が完全に溶解消失することが分かった。
【0010】
さらに、発明者は、鋭意研究を重ね、植物性有機酸のパイナップル皮果汁液の主成分であるイソ吉草酸と低濃度オルトリン酸との混合酸の中に、酸化剤の次亜塩素酸ソーダ(アンチホルミン)、過マンガン酸カリ、塩素酸塩各種、二酸化マンガン、過酸化水素、オゾン等と超微粒子二酸化チタンとカリミョウバンおよび天然成分ミネラルイオン含有植物皮果汁液組成物を添加することにより、アスベストの繊維状針状結晶を非品質化して完全溶解処理が安全、且つ、容易となり、更に、減容した溶解残渣はグルコマンナンにより固形化したアスベスト溶解残渣を飛散防止することが分かり本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明に用いたアスベスト含有廃材の繊維状針状結晶物は、蛇紋岩系のクリソタイル〔MgSi10(OH)〕と角閃石系のアモサイト〔(Fe,Mg)SicO22(OH)〕の他が含有されることを示差熱天秤分析とX線回析により確認した。
【0012】
本発明のアスベストのアモサイトと低濃度オルトリン酸による溶解反応について説明する。
アモサイト〔(Fe,Mg)Si22(OH)〕は、MgO,FeO,Mg(OH),SiO、それぞれの酸化物または水酸化物との共晶により繊維状針状結晶物を成していることが分かる。
次に、アモサイト〔(Fe,Mg)Si22(OH)〕のMg(OH)とMgOとが低濃度オルトリン酸と反応し溶解してマグネシウムイオンとなることを溶解液中のMg2+を高周波プラズマ発光分析(ICP)法により確認した。化学反応式を式(1)、(2)に示す。

【0013】
角閃石系アモサイトの共晶体のMg(OH)とMgOとイソ吉草酸〔(CHCHCHCOOH〕とが反応し溶解してマグネシウムイオン化する反応式を式(3)(4)に示す。

【0014】
本発明のアスベストのアモサイトと低濃度オルトリン酸及びイソ吉草酸による溶解反応を式(1)〜(4)に示したが、アスベスト成分の溶解反応は、このように単純ではなく複雑な過程を経て、イオン化が進行するものと考えている。
【0015】
アスベストは、低濃度オルトリン酸(HPO 8重量%含有)単独では、極微量が溶解するが、長時間浸漬しつづけても、全く同様の極微量しか溶解しなかった。
しかし、低濃度オルトリン酸(HPO 8重量%含有)液中に、少量のパイナップル皮果汁液(イソ吉草酸 12重量%含有)を3重量%程度添加することにより、アスベストの針状結晶体は完全溶解し、溶解液の定性分析(高周波プラズマ発光分析ICP法)により、Mgイオン、Feイオンが溶出後液に含有されることを確認した。
【0016】
本発明の植物性有機酸について説明する。本発明の植物性有機酸はパイナップル皮果汁液の主成分であるイソ吉草酸〔(CHCHCHCOOH〕や酪酸〔CHCHCHCOOH〕、クエン酸〔HOCCOH(CHCOOH)〕と、ココナツ果汁液のカプロン酸〔CH(CHCOOH〕およびカプリル酸〔CH(CHCOOH〕と、柑橘皮果汁液のリモネン(C1016)、アスコルビン酸(C)、パントテン酸(C17NO)等複合植物性有機酸を、本発明では、植物性有機酸と称する。
【0017】
角閃石系アモサイト〔(Fe,Mg)Si22(OH)〕とイソ吉草酸との溶解反応式を式(3)、(4)に一例として記述したが、イソ吉草酸のみでなく、その他の上記した有機酸成分の化学反応の相乗効果により溶解が推移すると考えている。
【0018】
天然成分ミネラネイオン含有植物皮果汁液組成物について説明する。
天然成分ミネラネイオン含有植物皮果汁液組成物は、角閃石花こう岩系変質黒雲母(一般名:ヒル石)等を、パイナップル皮果汁液を主成分とする植物性有機酸並びに、天然成分ミネラルイオンのAl、Ca、K、Mn、Fe、Ti、Si、等を含有すると共に、活性酸素の一種であるOHラジカル(OH)を多量に含むことをESR(Electoron Spin,Resonance)測定のDMPO(5−Dimetyl,phyrroline 1−oxide)捕捉剤を用いるスピントラップ法により確認している。
本発明者は、特開2010−100790号公報に天然成分のミネラルイオン含有植物皮果汁液組成物として提案を行ってきている。天然成分ミネラルイオン含有植物皮果汁液の成分組成値は概して〔表1〕高周波プラズマ発光分析ICP法分析値に示すものを用いた。
【0019】
【表1】

【0020】
本発明の天然成分ミネラルイオン含有植物皮果汁液組成物中の活性酸素の一種であるOHラジカルについて詳しく説明する。
本発明者らは、天然成分ミネラルイオン含有植物皮果汁液組成物を極く少量添加するだけで大気中からの溶存酸素(DO)の酸化力が著しく増大する現象を数多く確認して来ている。本発明者らは、この現象は、麦飯石、医王石、ヒル石等の金属酸化物がミネラルイオン化する際に生成する活性酸素の一種であるOHラジカルを含有することによって起こる酸化力によるものではないかと考えた。
発明者は、前記した考えを基に、本発明の天然成分ミネラルイオン含有植物皮果汁液組成物中の酸化性物質としての励起OH含有について、ESR(Electoron Spin Resonance=電子スピン共鳴)法による測定(ESR測定装置:ELLEXSYS E500:(株)松下電工製)を、スピントラップ剤にDMPO(5−5dimetyl pyrroline 1−oxide)を選択し、天然成分ミネラルイオン含有植物皮果汁液組成物の希釈液に添加することにより実施し、DMPO−OH捕捉を確認した結果、天然成分ミネラルイオン含有植物皮果汁液が本発明の重要なアスベスト溶解剤の成分要素となることを確認した。
更に、酸化剤として次亜塩素酸ソーダ(アンチホルミン)を少量添加することで溶解速度が増加することを確認した。
【0021】
天然成分ミネラルイオン含有植物皮果汁液組成物の、一種の活性酸素であるラシカ

や超微粒子二酸化チタンと共に、アスベストの角閃石系アモサイト〔(FeMg)Si22(OH)〕等に含まれる二価鉄(Fe(II))の酸化を促進する役割があり、アモサイトの二価鉄が酸化されて三価鉄になることにより、植物性有機酸のイソ吉草酸や低濃度オルトリン酸との反応が容易となり、単独酸では溶出が困難であったものが、天然成分ミネラルイオン含有植物皮果汁液組成物等の酸化剤の併用により浸出溶解が可能となることを見出した。
【0022】
角閃石系アモサイト〔(Fe,Mg)Si22(OH)〕と酸化剤入り低濃度オルトリン酸による溶解反応について説明する。
角閃石系アモサイト〔(Fe,Mg)Si22(OH)〕は、単純なる酸性液では難溶解性であることは公知である。
発明者は、酸化剤を用いることにより、アモサイト針状結晶体の二価酸化鉄(FeO,Fe(OH))が酸化され、溶解反応が容易になることを見出した。
角閃石系のアモサイト〔(Fe,Mg)Si22(OH)〕は、
〔6(Fe,Mg)O〕[(Fe,Mg)(OH)8SiO]であり、つまり
6FeO、Fe(OH)、8SiOであり、6MgO、Mg(OH)、8SiOである。
二価鉄酸化物および水酸化鉄の酸化剤(活性酸素の一種OHラジカル)および次亜塩素酸ソーダ(アンチホルミン)(NaClO)の塩素による酸化反応式を式(5)(6)(7)(8)に示す。
【0023】

【0024】
三価鉄酸化物とオルトリン酸との反応式を式(9)に示す。

なお、MgO、Mg(OH)と低濃度オルトリン酸およびイソ吉草酸との反応については式(1)、(2)および式(3)、(4)に示した。
【0025】
本発明に於いては、アスベスト含有罹災建造物を用いたが、アスベスト含有材であれば特に限定しない。また、飛散防止剤のグルコマンナンを用いるが、グルコマンナンを含有するものであれば、コンニャク精粉乃至その誘導体、海藻類抽出物を用いても差し支えない。
尚、アスベスト溶解剤である無機酸の塩酸、フッ酸、リン酸、硝酸の他、有機酸の酢酸、クエン酸等を用いても差し支えない。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、アスベスト含有罹災建造物および被災瓦礫の処理に対し、グルコマンナン含有アスベスト溶解剤を吹き付け散布することにより、アスベスト組成物の繊維状針状物品体を溶解して非品質化した溶解残渣の飛散防止を可能にすると共に、アスベスト組成分を含有しない溶解残渣を常法により固形体を形成し有効利用する相乗効果がある。
【本発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の実施形態について以下に説明する。
本発明のアスベスト溶解剤、オルトリン酸(HPO)75%と植物有機酸のパイナップル皮果汁液(イソ吉草酸15%、酪酸10%)との混合液、グルコマンナン、水を所定の濃度に調整したグルコマンナン含有アスベスト溶解剤の中にアスベスト含有建材を浸漬またはグルコマンナン含有アスベスト溶解剤を噴霧・吹き付け処理して、アスベスト溶解試験を実施すると共に、溶解残渣の飛散試験を実施した。
【0028】
実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。尚、本実施例は本発明の一実施形態に過ぎず、なんら限定解釈されるものではない。
【実施例1】
【0029】
アスベストの蛇紋岩質白石綿クリソタイル〔MgSi10(OH)〕原石50g(粒径3mmφ以下80%)をオルトリン酸(HPO,75重量%)20gと、植物性有機酸のパイナップル皮果汁液(イソ吉草酸1.0重量%)との混合酸200mlに浸漬し、常温にて60分間攪拌処理した。
高周波プラズマ発光分析(ICP)法成分定性分析の結果、溶解処理液中にマグネシウム(Mg)を確認した。溶解残渣をX線回析の結果、クリソタイルの繊維状針状結晶は確認されなかった。
白石綿クリソタイル〔MgSi10(OH)〕繊維状針状結晶体は、低濃度オルトリン酸と植物性有機酸との混合酸により溶解切断されたことを確認し、溶解残渣のX線回析によりクリソタイルは確認されなかった。
【実施例2】
【0030】
アスベストの角閃石系茶石綿アモサイト〔(Fe,Mg)Si22(OH)〕原石50g(粒径3mmφ以下80%)を〔実施例1〕のオルトリン酸(HPO,75重量%)20gと植物性有機酸のパイナップル皮果汁液(イソ吉草酸1.0重量%)との混合酸200mlに、次亜塩素酸ソーダ(アンチホルミン)(NaClO)0.5g、超微粒子二酸化チタン0.5g、カリミョウバン3g、天然成分ミネラルイオン含有植物皮果汁液組成物20gを加えたアスベスト溶解剤中に浸漬し、60分間常温にて攪拌した。これを固液分離した後、溶解処理後液と溶解残渣を得た。
溶解処理後液を定性分析した結果、マグネシウム(Mg)と三価鉄(Fe3+)を確認した。残渣はX線回析の結果、アモサイトの針状結晶は存在しなかった。
オルトリン酸(HPO)20重量%溶液のみによる比較テストでは、アモサイトの結晶は、浸漬時間30分では残渣の中に残留し、浸漬時間3時間でも残渣の中に残留することを確認した。
【実施例3】
【0031】
アスベスト含有廃材(粒径5mmφ以下80%)200gをオルトリン酸(HPO,75重量%)10gと〔実施例2〕に用いたアスベスト溶解剤200mlの中に浸漬し、常温にて30分間攪拌し溶解処理した。これを固液分離し溶解処理後液と溶解残渣を得た。溶解処理後液の高周波プラズマ発光分析(ICP)法定性分析の結果、マグネシウム(Mg)と三価鉄(Fe3+)を確認した。残渣はX線回析の結果、アスベスト組成分のクリソタイル、アモサイト等は確認しなかった。
【実施例4】
【0032】
〔実施例1〕に準じ〔実施例2〕に用いたアスベスト溶解剤200mlにグルコマンナン粉末1gを添加したグルコマンナン含有アスベスト溶解剤50mlをポリエチレン製テトラパック(乾燥空気)10lの中に噴霧し、この中に〔実施例3〕に用いたアスベスト含有廃材50gを投入した後、直ちに手動にて5分間振り混ぜ静止した。経過30分、60分、90分、120分、180分後のアスベスト溶解残渣浮遊粉塵測定を実施した。
また、水のみを噴霧した比較例についても同様実施した。尚、比較例の浮遊粉塵は、アスベスト浮遊粉塵であった。
粉塵測定は、柴田化学株式会社製(型式AS−100型)アスベスト大気サンプラー測定装置を用いた。結果を〔表2〕に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
〔表2〕より、本発明のグルコマンナン0.5%含有アスベスト溶解剤によるテトラパック試験の結果、噴霧静置後30分経過、粉塵量は8本/Lとなった。
【実施例5】
【0035】
東京都荒川区内の商業ビル改造に伴い、アスベスト剥離箇所があった為、試験区、比較区共に各20mを完全密閉で養生後、アスベスト剥離を試験〔実施例2〕に用いたアスベスト溶解剤1,000mlにグルコマンナン粉末を添加したグルコマンナン含有アスベスト溶解剤を水で10倍に希釈、アスベスト解体建造物の天井部10mに1,000ml噴霧器で散布し20分経過後、剥離作業を実施した。比較区の天井部10mに水のみ1,000ml噴霧器で散布し、経過時間および作業手順は試験区と同様とした。グルコマンナン含有アスベスト溶解剤の10倍水希釈による剥離試験結果を〔表3〕に示す。また、〔表3〕の天井部剥離作業前室内の試験区及び比較区の地点別値の違いは、グルコマンナン含有アスベスト溶解剤散布と水のみ散布との差である。
尚、試験区、比較区共に剥離作業開始から柴田化学株式会社製(型式AS−100型)アスベスト大気サンプラー測定装置を設置し、大気中および作業環境中のアスベスト溶解残渣浮遊粉塵を測定した。
尚、測定は、平成元年環境庁告示93号(室内環境における石綿粉塵濃度測定方法)により実施した。
【0036】
【表3】

【0037】
〔表3〕により、本発明のグルコマンナン2重量%含有アスベスト溶解剤を水で5倍希釈して噴霧吹き付けする。現地剥離試験では、剥離作業中の平均粉塵量は0.7本/Lとなることを確認した。
【実施例6】
【0038】
〔実施例5〕に準じ〔実施例2〕で用いたアスベスト溶解剤2,000mlにグルコマンナン20gを添加したグルコマンナン含有するグルコマンナン含有アスベスト溶解剤を水で希釈10,20,30,50倍について、それぞれを試験区20m完全密封の後噴霧等で散布、20分後剥離作業を実施し、アスベスト溶解残渣浮遊粉塵測定を実施した。
結果を〔表4〕に示す。
【0039】
【表4】

【0040】
〔実施例6〕において、グルコマンナン含有アスベスト溶解剤の水希釈、10〜50倍希釈液による剥離作業中の室内粉塵量は大気汚染防止法による特定粉塵(石綿)の基準値10本/L以下となる値を確認した。
【実施例7】
【0041】
〔実施例2〕に用いたグルコマンナン含有アスベスト溶解剤を〔実施例5〕に準じ実施した天井部のアスベスト溶解残渣剥離及び比較例、水のみ散布の天井部アスベスト剥離の完全剥離時間を確認した。結果を〔表5〕に示す。
【0042】
【表5】

【産業上利用の可能性】
【0043】
本発明は、グルコマンナン含有アスベスト溶解剤を、一定量水で希釈して、アスベスト含有解体建築物、罹災建造物、被災瓦礫に噴霧散布することにより、解体作業中の室内外の粉塵数値が、大気汚染防止法に基づく基準値以下に低下させることを可能にした。
東日本大震災による罹災建築物や被災瓦礫集積処理作業のアスベスト粉塵の飛散防止への利用の可能性が多大である。
また、東日本大震災により多くの冷凍冷蔵庫が被災瓦礫同然に破壊され、貯蔵されていた魚類が散乱、各箇所で腐敗による悪臭が発生、現地住民及び瓦礫処理される作業者に莫大な環境悪化を起こしている。これらの悪臭に於いてもグルコマンナン含有アスベスト溶解剤を噴霧散布することにより、悪臭を低下させることを可能にした。
尚、グルコマンナン含有アスベスト溶解剤で非品質化残渣を脱水処理後、セメントに配合させてのブロックの製造、アスファルトの骨材、及び樹脂に配合させた植木鉢、プランター、境界線の杭等再使用も可能である。
また、グルコマンナン含有アスベスト溶解剤を噴霧吹き付けすることにより、アスベスト溶解と共に、溶液が壁、天井部等のアスベスト内部に短時間で浸透する為、剥離時間の短縮、飛散防止することから利用の可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスベスト含有罹災建造物及び被災瓦礫を処理する際の粉塵発生防止において、グルコマンナン含有アスベスト溶解剤によりアスベスト組成分を非品質化して、減容する溶解残渣の飛散防止方法。
【請求項2】
グルコマンナン含有アスベスト溶解剤が、アスベスト溶解剤100重量部、グルコマンナン0.5重量部から2重量部から成るグルコマンナン含有アスベスト溶解剤を水で希釈した後、アスベスト建材に吹き付け散布するアスベスト溶解残渣の飛散防止方法。

【公開番号】特開2013−6169(P2013−6169A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151260(P2011−151260)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(508323562)
【出願人】(511166220)株式会社未来技術研究所 (1)
【Fターム(参考)】