グルコース分解用触媒組成物
【課題】有害な副生成物を生成せずに、かつ、液体中で長期間グルコースの分解能を保持できる技術を提供する。
【解決手段】本発明は、固定化されたグルコースオキシダーゼと、グルコースオキシダーゼの作用によるグルコースの分解反応で生じた過酸化水素の分解反応を触媒する固体触媒と、を含む、グルコース分解用触媒組成物である。
【解決手段】本発明は、固定化されたグルコースオキシダーゼと、グルコースオキシダーゼの作用によるグルコースの分解反応で生じた過酸化水素の分解反応を触媒する固体触媒と、を含む、グルコース分解用触媒組成物である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルコース分解用触媒組成物、及びこれを用いたグルコール濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
グルコース濃度測定装置としては、特許文献1に記載の血糖測定装置がある。特許文献1の血糖測定装置では、グルコースに対する触媒となる酵素(グルコースオキシターゼ)と、過酸化水素(H2O2)に対する触媒となる酵素(ペルオキシターゼ)と、活性酸素と反応して発色する発色色素とがセンサー部材のメッシュシート側の面に、塗布されており、センサー部材の発色強度等を測定することにより、メッシュシートに含まれるグルコースの量を検知する。
【0003】
また、グルコース測定装置としては、特許文献2に記載の尿糖計も知られている。特許文献2の尿糖計では、食直前尿糖値、及び、所定時間(好ましくは2時間)経過後の食後尿糖値を測定し、食後尿糖値と食直前尿糖値との差を示す尿糖変化値を演算して、尿糖変化値を出力する。これによると、食直前及び食後だけの測定で、被測定者にとって、手間が少なく信頼性の高い尿糖変化値を提供できるとされている。
【0004】
こうした従来のバイオセンサでは、感度の較正が必要であるため、使用頻度によって、感度の較正の要否を判定し、較正を要する場合に報知して較正を促すことが行われる。そして、基準液に対するセンサー出力が得られると、センサーを洗浄液で洗浄し、緩衝液等の保存液に浸して、センサー出力のベースラインを安定した状態にする。
【0005】
これに対し、特許文献3の尿糖計では、尿糖センサーの感度較正に際して、新たに取得された尿糖センサーの出力値が基準値の設定に適しないと判定された場合、洗浄処理が行われないまま、尿糖センサーに、基準液が追加して掛けられ、基準液が付着した状態で、尿糖センサーの他の出力値が取得される。したがって、特許文献3の尿糖計によれば、一の出力値が得られた後に必ず洗浄処理が行われていた従来の測定装置と比較して、簡単かつ短時間にバイオセンサの感度を較正できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−175801号公報
【特許文献2】特開2006−153849号公報
【特許文献3】特開2008−298648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のバイオセンサでは、感度の較正が必要なため基準液の測定が必要となることに加え、その後に洗浄液でセンサーを洗浄する洗浄工程も要求されていた。これは、基準液に含まれるグルコースが保存液に持ち込まれ、センサーの出力が安定化できなくなるのを防ぐためであるが、ユーザの操作を煩雑にさせる点で問題があった。
【0008】
そこで、本発明者らは、保存液に、基準液から持ち込まれるグルコースを分解できる機能をもたせれば、基準液の測定後の洗浄工程は不要になると考えた。しかしながら、こうしたグルコースを分解できる機能は、保存液中で長期間活性を維持される必要があり、また、保存液が本来有する、センサー出力の安定化機能を損なわないようにする必要もある。
【0009】
一方、保存液を害する副生成物を生成せずに、かつ、液体中で長期間活性を維持してグルコースを分解できる技術は、知られていなかった。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、有害な副生成物を生成せずに、かつ、液体中で長期間グルコースの分解能を保持できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、
固定化されたグルコースオキシダーゼと、
前記グルコースオキシダーゼの作用によるグルコースの分解反応で生じた過酸化水素の分解反応を触媒する固体触媒と、
を含む、グルコース分解用触媒組成物が提供される。
【0012】
また、本発明によれば、上記に記載の触媒組成物を用いてグルコースを分解する方法が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、
液体試料に含まれるグルコース濃度を測定するグルコースセンサと、
前記グルコースセンサの出力を安定化させる保存液を含むセンサー保護部と、
を備え、
前記グルコースセンサは、前記保存液に浸漬されており、
前記保存液が、上記の触媒組成物を含む、グルコース濃度測定装置が提供される。
【0014】
また、本発明によれば、
グルコースが所定濃度に定められた基準液をグルコースセンサに摘下して、前記グルコースセンサの感度を補正するステップと、
補正された前記グルコースセンサを保存液に浸漬して、前記グルコースセンサの出力を安定化するステップと、
安定化された前記グルコースセンサを用いて液体試料中のグルコース濃度を測定するステップと、
を含み、
前記保存液が、上記の触媒組成物を含む、グルコース濃度の測定方法が提供される。
【0015】
また、本発明によれば、
液体試料に含まれるグルコース濃度を測定するグルコースセンサと、
グルコースが所定濃度に定められた基準液を前記グルコースセンサに摘下することをユーザに案内する操作案内手段と、
前記操作案内手段の案内を受けてユーザがグルコースが所定濃度に定められた基準液に前記グルコースセンサを摘下することによって、前記グルコースセンサの感度を補正する補正手段と、
を有し、
前記補正手段により前記グルコースセンサの感度が補正されたとき、前記操作案内手段は、ユーザに対し、前記グルコースセンサの出力を安定化する保存液に、前記グルコースセンサを浸漬することを案内する、グルコース濃度測定装置が提供される。
【0016】
この発明によれば、グルコースオキシダーゼを固定化させることで、液体中でグルコースオキシダーゼを変性させずに長期間保存することができる。そのため、グルコースオキシダーゼにより長期間安定にグルコースをグルコン酸と過酸化水素とに分解することができる。また、グルコースの分解により生じた反応性の高い過酸化水素は、固体触媒により速やかに水と酸素とに分解させることができる。したがって、有害な副生成物を生成せずに、かつ、液体中で長期間グルコースの分解能を保持できる技術が実現可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、有害な副生成物を生成せずに、かつ、液体中で長期間グルコーの分解能を保持できる技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態に係るグルコース濃度測定装置の外観を模式的に示した図である。
【図2】実施の形態に係るグルコース濃度測定装置の論理構造を示す模式的なブロック図である。
【図3】実施の形態に係るグルコース濃度測定装置を用いたグルコース濃度測定方法を示すフローチャートである。
【図4】実施の形態に係るグルコース濃度測定装置の表示部への表示の一例を示す図である。
【図5】従来のグルコース濃度測定装置を用いたグルコース濃度測定方法を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態に係るグルコース濃度測定装置の効果を説明する図である。
【図7】実施の形態に係るグルコース濃度測定装置の効果を説明する図である。
【図8】実施の形態に係るグルコース濃度測定装置の効果を説明する図である。
【図9】実施の形態に係るグルコース濃度測定装置の効果を説明する図である。
【図10】実施の形態に係るグルコース濃度測定装置の効果を説明する図である。
【図11】実施例の結果を示す図である。
【図12】実施例の結果を示す図である。
【図13】実施例の結果を示す図である。
【図14】実施例の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0020】
(第1の実施形態)
本実施の形態は、グルコース分解用触媒組成物である。このグルコース分解用触媒組成物は、固定化されたグルコースオキシダーゼ(固定化GOX)と、GOXの作用によりグルコースから生じる過酸化水素の分解反応を触媒する固体触媒と、を含む。
【0021】
GOXの固定化には、包括法、担体結合法、架橋法又はこれらを組合せた複合法を用いることができる。GOXを固定化することにより、溶媒(特に水)にGOXを不溶化し、GOXの触媒能を液体中で保持させることができる。包括法でGOXを固定化する場合、有機ゲル等によって、GOXを包み込むことができる。また、担体結合法でGOXを固定化する場合、GOXを樹脂等に結合させて不溶化させればよい。中でも、架橋剤で固定化されたもの、あるいは、アルブミン架橋膜で包括することにより固定化されたものが、固定化GOXとして好ましい。
【0022】
架橋剤としては、多官能性アルデヒド化合物や多官能性エポシキ化合物を用いることができ、多官能性アルデヒドとしては、グリオキサール、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド及びマレアルデヒドなる群から選ばれたジアルデヒドなどを用いることができる。また、多官能性エポシキ化合物としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。中でも、使い勝手の良さ、膜厚のコントロールの容易さの観点からグルタルアルデヒドが好ましい。
【0023】
アルブミン架橋膜は、卵白アルブミン又は動物由来の血清アルブミン、好ましくは牛子牛血清のアルブミン(BSA:Bovine Serum Albumine)を、架橋剤を用いて架橋化させたものである。アルブミンの架橋剤も、上記例示したGOXの架橋剤と同様のものを用いることができる。
【0024】
固定化GOXの製法は、公知の固定化酵素の製造技術を適宜採用し得るが、例えば、GOXとBSAとグルタルアルデヒドとを任意の溶媒に混合させて、GOXを固定化させることができる。この場合、溶媒としては、例えば、水、アルコール、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)、TES(N−[トリス(ヒドロキシメチル)−メチル]−2−アミノエタンスルホン酸)、PIPES(4−ピペラジンジエタンスルフォン酸)等の緩衝液を用いることができる。この方法では、GOXに直接グルタルアルデヒドが架橋したグルタルアルデヒド架橋型GOXと、BSAとグルタルアルデヒドとの架橋体により包括されたBSA包括型GOXとの混合物からなる固定化GOXを得ることができる。
【0025】
また、グルコースセンサの製造工程で得られるGOX固定化膜を固定化GOXとして用いてもよい。具体的には、グルコースセンサは、複数の電極構造が形成された基材上にGOX固定化膜がスピンコート法により成膜された後、リソグラフィー技術を用いたパターニングを経て、ダイシングによりチップ化されることで形成される。このとき、基材の電極以外の部分(例えば、基材周縁部)は、グルコースセンサの製造工程では不要となるが、GOX固定化膜は成膜されている。したがって、この基材周縁部のGOX固定化膜を削り取るなどすれば、固定化されたGOXを得ることができ、本実施の形態の触媒組成物に用いることができる。なお、グルコースセンサの製造工程におけるGOX固定化膜の形成方法としては、例えば、昭62−54155号公報に記載されたものがある。なお、基材の材料としては、グルコースセンサの電極構造を形成できる材料を用いることができ、例えば、プラチナや金を用いることができる。
【0026】
固定化GOXは、触媒組成物中0.01〜50重量%含むことが好ましく、0.1〜20重量%含むことがより好ましい。
【0027】
固体触媒は、溶媒、特に水に不溶性であり、過酸化水素の分解反応を不均一系で触媒する不均一系触媒であれば、限定されないが、活性炭、二酸化マンガン、ゼオライト、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化第2鉄、及び、マグネタイト(三二酸化鉄)からなる少なくとも1種を用いることができ、活性炭、二酸化マンガン、及びゼオライトからなる少なくとも1種を用いることが好ましい。過酸化水素を速やかに分解できるという観点からは、二酸化マンガン及び活性炭が好ましく、二酸化マンガンがより好ましい。グルコース分解用触媒組成物中、後述するように、pH緩衝剤としてTES等のグッド緩衝液を含有する場合、緩衝剤を吸着しないという観点からは、二酸化マンガンが好ましい。グルコース濃度測定装置の保存液に用いたときに、緩衝能を損なわず、長期保存に優れる観点からは、ゼオライトが好ましい。固体触媒は1種のみを用いてもよいし、2種以上併用することもできる。
【0028】
固体触媒の形状は、限定されず、粒状(破砕状、ペレット状、球状、顆粒状)、粉末状、柱状、円柱状、繊維状いずれであってもよいが、ゼオライトを選択した場合は、球状が好ましい。
【0029】
ゼオライトは、細孔を有し、アルカリまたはアルカリ土類金属(好ましくはNaイオン、Kイオン、Caイオン)を含む含水アルミノケイ酸である。本発明の固体触媒として用いられるゼオライトは、合成品あるいは天然品のいずれであってもよい。具体的には、X型、Y型、A型、モルデナイト、及び、フェリライトからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、pH変化を起こさず、かつ、グルコース分解能にも優れる観点からX型ゼオライトがより好ましい。Naイオンを含むものが好ましいが、NaイオンがCa、Mg、Liでイオン交換されたものを用いてもよい。
【0030】
固体触媒は、触媒組成物中の固形分に対して50〜99重量%含むことが好ましく、80〜99重量%含むことがより好ましい。
【0031】
触媒組成物中、固定化GOXの重量は、固体触媒の重量に対して、0.01〜1倍であることが好ましく、0.01〜0.5倍であることがより好ましい。また、固定化GOX1000Uあたり、固体触媒を0.25〜25g用いることが好ましく、0.25〜12.5g用いることがより好ましい。
【0032】
本実施の形態に係る触媒組成物をグルコースに混合させることで、グルコースを分解することができる。反応は、溶媒を用いて行われることが好ましい。溶媒は、グルコースを溶解できる液体であればよく、水、緩衝液又はこれらの混合液を用いることができる。緩衝液としては、Tris緩衝液、グッド緩衝液及び炭酸塩緩衝液と呼ばれるものが好ましく、より好ましくは上述したHEPES、TES、PIPES等のグッド緩衝液が挙げられる。固体触媒として活性炭を用いるときは、水を用いることが好ましい。緩衝液を用いるときは、緩衝能を阻害しないという観点から、固体触媒としてゼオライトを用いることが好ましく、グッド緩衝液とゼオライトとの組み合わせがより好ましい。pHは、6〜8.5であることが好ましく、6〜7.5がより好ましい。グルコースを溶解できる液体は、触媒組成物にあらかじめ混合されていてもよいし、
あらかじめグルコースを溶解できる液体にグルコースを溶解したグルコース溶液と触媒組成物とを混合させてもよい。また、本実施の形態の触媒組成物は、グルコース溶液に添加してもよいし、溶媒に触媒組成物を添加した後、グルコース又はグルコース溶液を添加してもよい。なお、グルコース溶液を用いる場合は、尿、血液などの生体試料であってもよい。
【0033】
本実施の形態の触媒組成物は、溶媒中、長期間グルコース分解活性を有しており、例えば、水中においても、1月以上グルコース分解能を有している。そのため、溶媒と触媒組成物とをあらかじめ混合させておき、グルコース又はグルコース溶液を添加してグルコースを分解する態様がより好適である。この場合、本実施の形態の触媒組成物は、溶媒中、分散させていてもよいし、また、グルコース及び溶媒が透過できる孔が設けられた包装体に包装して溶媒に浸漬させたり、溶媒に浮遊させたりしてもよい。
【0034】
グルコースの分解反応において、本実施の形態の触媒組成物は、溶媒中0.01〜50w/v%用いると好ましく、0.1〜10w/v%であるとより好ましい。
【0035】
本実施の形態の触媒組成物は、分解すべきグルコースを速やかに分解する必要があるため分解の対象となるグルコースの量に対して過剰に用いられることが好ましいが、現実的にはグルコース1g当たり、GOXを100〜10000ユニット含むと好ましく、更には500〜5000ユニットを含むのがより好ましい。
【0036】
本実施の形態の触媒組成物を用いたグルコースの分解反応の反応温度は、特に制限されないが、室温(4〜50℃)で行うことが好ましい。
【0037】
本実施の形態の触媒組成物によれば、グルコースオキシダーゼを固定化させることで、液体中でGOXを変性させずに長期間保存することができる。そのため、GOXにより長期間安定にグルコースをグルコン酸と過酸化水素とに分解することができる。
【0038】
GOXにより触媒されるグルコースの分解反応は、下記式(1)で表される。
グルコース+O2→グルコノ−δ−ラクトン+H2O2・・・(1)
【0039】
上記(1)で表されるように、グルコースの分解反応には酸素が必要であるが、触媒組成物の調製、及び、反応液の調製において、特に脱気の操作を加えなければよい。こうすることで、触媒組成物の調製の過程で本実施の形態の触媒組成物に空気中の酸素が混入する。また、反応液の調製において、溶媒中に酸素が溶存する。このように自然に混入した酸素により、上記(1)の反応は、進行する。
【0040】
また、グルコースの分解により生じた反応性の高い過酸化水素は、固体触媒により速やかに水と酸素とに分解させることができる。
【0041】
そして、下記(2)の反応が自発的に進行する。
グルコノ−δ−ラクトン+H2O→グルコン酸・・・(2)
【0042】
なお、溶媒に水を用いた場合は、上記式(1)の反応後、上記式(2)の反応が速やかに起こるためより好ましい。
【0043】
このように、本実施の形態の触媒組成物によれば、有害な副生成物を算出せずに、かつ、溶媒中で長期間グルコースの分解能を保持することができる。
【0044】
(第2の実施形態)
本実施の形態は、グルコース濃度測定装置である。図1は、本実施の形態のグルコース濃度測定装置の外観の一例を示す図である。図2は、図1で示すグルコース濃度測定装置1の論理構造を示す模式的なブロック図である。図1で示すように、液体試料に含まれるグルコース濃度を測定するグルコースセンサ2と、グルコースセンサ2の出力を安定化させる保存液Sを含むセンサー保護部3とを備える。グルコースセンサ2は、保存液Sに浸漬されている。
【0045】
保存液Sは、第1の実施形態で説明した固定化GOXと固体触媒とを含む触媒組成物を含有する液体である。保存液に用いられる液体は、グルコースを溶解する液体であればよいが、具体的には、水、緩衝液又はこれらの混合液を用いることができる。中でも、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)、TES(N−[トリス(ヒドロキシメチル)−メチル]−2−アミノエタンスルホン酸)、PIPES(4−ピペラジンジエタンスルフォン酸)等の緩衝液を含むことが好ましく、塩化ナトリウムや塩化カリウムを混合してイオン強度が0.1〜0.15の範囲に調製されていることが好ましい。また、pHは、6.0〜8.5であることが好ましく、6.0〜7.5がより好ましい。また、保存液S中、固定化GOXは、電極の表面積に対して1mm2当たり0.1〜200mユニットを含むことが好ましく、0.5〜50mユニットを含むことがより好ましい。固体触媒としては、活性炭、二酸化マンガン及びゼオライトの少なくも1種を用いることが好ましいが、保存液S中のpHを保持できるという観点から、ゼオライトがより好ましく、X型ゼオライトが更に好ましい。保存液Sは、本発明の効果を妨げない範囲で、防腐剤等の任意成分を含むことができる。
【0046】
より具体的には、グルコース濃度測定装置1は、表示部4(操作案内手段)、操作部5、制御部6を有している。
【0047】
グルコースセンサ2は、液体試料に含まれるグルコース濃度を、電気化学的に検出(測定)するように構成されている。
【0048】
表示部4(操作案内手段)は、測定値や判定結果や操作ガイダンス等を表示する。
【0049】
操作部5は、強制的な感度較正モードへの移行や、待機中の過去履歴の呼出などモード切替部67により動作や表示を変更する。電源オン/オフスイッチはヒンジ部に磁石やプッシュスイッチ等を有してあり、センサー部の開閉によりボタン押し操作なしにオン/オフすることができる。
【0050】
制御部6は、CPU、RAM、ROM、EPROM、入出力インターフェース等からなり、表示部4への表示や操作部5からの入力を含んだ、グルコース濃度測定装置1全体の制御を行なうようになっている。加えて、グルコース濃度測定装置1は、図示しないA/D変換部を有しており、このA/D変換部は、グルコースセンサ2で検出された信号を、デジタルデータに変換して制御部6へと出力するように構成されている。
【0051】
制御部6は、出力取得部61と、出力判定部62と、測定値算出部63と、基準値設定部64と、測定値記憶部65と、基準値記憶部66と、モード切替部67と、カウンタ部68とを有している。
【0052】
出力取得部61は、グルコースセンサ2に液体試料又は基準液が摘下されたときのグルコースセンサ2の出力をA/D変換部(図示しない)を介して取得する。なお、基準液は、グルコース濃度が所定の濃度に定められたものである。
【0053】
出力判定部62は、出力取得部61により取得された基準液のグルコースセンサ2の出力値を、基準値設定部64により設定された基準値と比較する。
【0054】
測定値算出部63は、出力取得部61により取得された測定試料のグルコースセンサ2の出力値を、基準値設定部64により設定された基準値と比較する。
【0055】
基準値設定部64は、出力判定部62により基準値の設定に適すると判定されたグルコースセンサ2の出力値を用いて、基準値を設定する。この基準値は、基準値記憶部66に格納される。なお、製品出荷時には、基準値が初期値として予め記憶されている。
【0056】
モード切替部67は、グルコース濃度を測定するための測定モードと、グルコースセンサ2の感度を補正するための較正モードとを切り替える。測定モードのとき、出力取得部61は、グルコースセンサ2の出力を測定値算出部63に送出する。また、測定モードでは、制御部6が、その他図示しない構成によりグルコース濃度の測定全般を制御する。測定モードにおいてグルコース濃度を測定した回数が、カウンタ部68によって、グルコースセンサ2の使用頻度に相当する値としてカウントされる。モード切替部67は、カウンタ部68によりカウントされたグルコース濃度の測定回数が所定回数に達した場合に、較正(センサーの感度補正)が必要であると判定すると共に、較正が必要である旨を表示部4に表示し、較正モードに切り替えるようになっている。較正モードでは、出力取得部61は、グルコースセンサ2の出力を出力判定部62に送出する。また、較正モードでは、制御部6が、その他図示しない構成によりグルコースセンサ2の較正全般を制御し、グルコースセンサ2の感度を補正する(補正手段)。
【0057】
これらの構成のグルコース濃度測定装置1において、制御部6は、次に図3のフローチャートに示す流れで、各処理を実行する。グルコース濃度測定装置1の電源がオフされている状態で、使用者が操作部5上の電源オン/オフスイッチを押すと、ステップS1にて、グルコース濃度測定装置1が測定モードで起動される。
【0058】
ステップS2では、モード切替部67は、カウンタ部68でカウントされたグルコース濃度の測定回数によって、グルコースセンサ2の感度を補正する必要があるか否かを判定する。このステップS2における感度補正の要否は、例えば、前回、較正モードに変換した時からの経過時間を計時して、その経過時間が所定時間に達したか否かによって判定してもよい。
【0059】
ステップS2で感度補正の必要がないと判定された場合、即ち、グルコース濃度の測定回数が所定回数よりも少ない場合には(ステップS2にてNO)、ステップS3で、表示部4がユーザに測定を案内する表示をする。このとき例えば、図4(a)で示す表示がされる。
【0060】
そして、表示部4の表示をみて、ユーザがグルコースセンサ2に液体試料、例えば、尿を摘下すると、制御部6内の出力取得部61が、グルコースセンサ2からの出力を取得する。そして、測定値算出部63は、基準値設定部64が設定した基準値を用いて、出力取得部61が取得した出力値から、グルコース濃度を算出する。
【0061】
このグルコース濃度の測定が完了すると、制御部6は、ユーザに対して、算出されたグルコース濃度を表示部4に表示する。このとき、制御部6は、算出した測定値を測定値記憶部65に記憶してもよい(ステップS4)。
【0062】
そして、モード切替部67により、較正モードに切り替えられ、ステップS5において、制御部6は、表示部4に、グルコースセンサ2に基準液を摘下するよう指示するガイダンスを表示するように制御する。このとき、表示部4は、図4(b)で示すように、グルコース濃度とともに、基準液を摘下する旨のガイダンスを同時に表示してもよい。そして、表示部4でのガイダンス表示に従って、ユーザがグルコースセンサ2に基準液を摘下すると、出力取得部61により、グルコースセンサ2の出力値が取得される。ここでは、取得された出力値が、時系列に沿って、RAM上に記憶されていくようになっている。
【0063】
次に、ステップS6で、出力判定部62は、取得された最新の出力値(以下、「最新値」という)と、過去に取得されている出力値とを比較して、過去の出力値からの最新値の変化の大きさが許容範囲内に収まり、出力値が安定しているか否かを判定する。ここでは、過去の出力値として、前回の測定時における出力値(以下、「前回値」という)を用いるものとし、最新値とこの前回値とが比較されて出力値が安定しているか否かが判定される。これによって、出力判定部62は、最新値が、上記基準値として適しているか否かを判定する。
【0064】
即ち、出力判定部62は、基準液に対する出力変化の許容限界値をAとし、前回値と最新値との差分が、この許容限界値A以下であるか否かを判定する。但し、前回値となる出力が測定されていないとき、前回値として、製品出荷時に、予め設定され基準値記憶部66に記憶されていた基準値が用いられる。
【0065】
上記差分が許容限界値A以下である場合(ステップS6にてYES)、最新値が基準値に適していると判断されて、ステップS7へと進む。このステップS7では、基準値設定部64により、その最新値が、新たな基準値として、基準値記憶部66に既に記憶されていた基準値に置き換えられる。そして、ステップS9で、制御部6は、表示部4にユーザに収納の促す旨を表示し(例えば、図4(c))、ユーザは、グルコースセンサ2を保存液Sに浸漬し、グルコース濃度測定装置1の電源はオフされ、本処理は終了する。
【0066】
また、上記差分が許容限界値Aよりも大きい場合(ステップS6にてNO)、この最新値は基準値に適していないと判断されて、制御部6は、表示部4にエラー表示をさせる(ステップS8、図4(d)))。例えば、摘下した基準液が必要量に満たないときには、得られた最新値は基準値に適していないと判断される可能性が高い。そして、ステップS8で、制御部6は、表示部4にユーザに収納の促す旨を表示し(例えば、図4(c))、ユーザは、グルコースセンサ2を保存液Sに浸漬し、グルコース濃度測定装置1の電源はオフされ、本処理は終了する。この場合、ユーザは、使用説明書より、所定の対処をするよう案内される。
【0067】
また、上記ステップS2において、較正モードにする必要があると判定された場合、即ち、グルコース濃度測定回数が所定回数以上である場合(ステップS2にてYES)、モード切替部67は較正モードへ切り替え、ステップS5以降の感度補正に係る処理が実行される。
【0068】
ここで、保存液が第1の実施形態の触媒組成物を含まない場合のフローチャートを図5に示す。図5の例の場合、グルコース濃度測定装置が測定モードで起動され(ステップS81)、ステップS82では、ステップS2と同様に、較正モードにする必要がないと判定された場合(ステップS82にてNO)、ステップS83で、表示部がユーザに測定を案内する表示をする。そして、表示部の表示をみて、ユーザがグルコースセンサに液体試料、例えば、尿を摘下すると、ステップS4と同様にグルコース濃度が算出され、記憶される(ステップS84)。
【0069】
そして、表示部には、ユーザに対し洗浄する旨の案内が表示される(ステップS85)。これは、触媒組成物を含まない、従来の保存液に尿が持ち込まれると、グルコース濃度が増加して、グルコースセンサの出力を安定化できなくなり、測定精度が低下するためである。したがって、ユーザは、グルコースセンサを水で洗浄する手間を要求されてしまう。
【0070】
また、上記ステップS82において、較正の必要があると判定された場合(ステップS82にてYES)、モード切替部67により較正モードへ切り替えられ、ステップS5〜8と同様な感度補正に係る処理が実行される(ステップS85〜88)。
【0071】
そして、図5の例では、ステップS87又はS88の後、ユーザに対し洗浄する旨の案内が表示部に表示される(ステップS89)。これは、触媒組成物を含まない、従来の保存液に基準液が持ち込まれると、グルコース濃度が増加して、グルコースセンサの出力を安定化できなくなり、測定精度が低下するためである。したがって、ユーザは、グルコースセンサを水で洗浄する手間を要求されてしまう。
【0072】
ステップS90では、ステップS9と同様に、表示部にユーザに収納の促す旨が表示され、ユーザは、グルコースセンサを保存液に浸漬し、グルコース濃度測定装置の電源はオフされ、本処理は終了する。
【0073】
一方、本実施の形態のグルコース濃度測定装置1によれば、保存液Sにグルコースの分解機能を持たせたため、従来、測定後又は基準合わせ後に必要とされた洗浄処理が不要となる。したがって、液体試料中のグルコース濃度を簡便に測定することが可能になる。
【0074】
図6(a)、図7〜10は、グルコース濃度測定装置1の出力取得部61が取得するセンサー出力を模式的に示す図である。図6(a)では、ステップS1、S2YES、S5を経て基準液をグルコースセンサ2に摘下した後、ステップS7、S9を経て保存液に収納した例を示す。図6(b)は、従来のグルコース濃度測定装置のセンサー出力を模式的に示す図である。図6(b)では、ステップS81、S82YES、S85〜S87を経て基準液をセンサーに摘下後、水で洗浄を行い(ステップS89)、ステップS90を経て保存液に収納したときのセンサー出力を示す。グルコース濃度測定装置1では、保存液S中でグルコースセンサ2に残存した基準液のグルコースが分解されるため、図6(a)では、図6(b)と同じように、保存液Sに浸漬されたグルコースセンサ2が安定した出力を示す。
【0075】
図7では、尿を測定した例を示す。図7では、ステップS1、S2NO、S3を経て、尿をグルコースセンサ2に摘下し、さらに、ステップS4、S5を経て、基準液を摘下して、ステップS6YES、S7、S9を経て保存液に収納する例を示す。図7(a)では、高濃度(1000〜2000mg/dL)の尿糖が検出される例を示し、図7(b)では、低濃度(50〜100mg/dL)の尿糖が検出される例を示す。図7で示すように、保存液Sに浸漬されたグルコースセンサ2は、安定した出力を示す。
【0076】
図8、9では、感度補正をした後に、尿を測定した例を示す。図8、9では、ステップS1、S2YES、S5を経て、基準液をグルコースセンサ2に摘下し、さらに、ステップS6YES、S7を経て、保存液Sに収納し、さらに、保存液Sからグルコースセンサ2を取りだして、ステップS1、S2NO、S3を経て、尿をグルコースセンサ2に摘下し、さらに、ステップS4、S5を経て、基準液を摘下して、ステップS6YES、S7、S9を経て保存液Sに収納する例を示す。図8では、高濃度(200〜500mg/dL)の尿糖が検出される例を示し、図9では、低濃度(50〜100mg/dL)の尿糖が検出される例を示す。図8、9で示すように、保存液に浸漬されたグルコースセンサ2は、安定した出力を示す。
【0077】
図10では、測定試料として尿を測定した例を示す。図10では、ステップS1、S2NO、S3を経て、尿をグルコースセンサ2に摘下し、高濃度(200〜500mg/dL)の尿糖を検出した後、ステップS4、5を経て、基準液をグルコースセンサ2に摘下し、さらに、ステップS6YES、S7を経て、保存液Sに収納し、さらに、保存液Sからグルコースセンサ2を取りだして、ステップS1、S2NO、S3を経て、尿をグルコースセンサ2に摘下し、低濃度(50〜100mg/dL)の尿糖を検出した後、さらに、ステップS4、S5を経て、基準液を摘下して、ステップS6YES、S7、S9を経て保存液Sに収納する例を示す。図10で示すように、保存液Sに浸漬されたグルコースセンサ2が安定した出力を示す。
【0078】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
たとえば、本実施の形態では、操作案内手段として表示部を例に挙げて説明したが、表示部に代えて、あるいは、表示部とともに、音声による案内をさせる構成を採用しても良い。
また、実施の形態では、グルコース濃度測定装置の測定試料として、尿をあげて説明したが、本発明のグルコース濃度測定装置は、グルコースが溶解したあらゆる液体試料のグルコース濃度を測定することができ、血液など、グルコースが含まれる生体試料を用いることもできる。
【実施例】
【0079】
製造例1
[固定化GOXの調製]
下記の方法でBSA液、GOX液及びGA水溶液をそれぞれ調整した。
・BSA液:牛血清アルブミン(BSA、和光純薬社製)を、緩衝液(100mmol/l N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(TES)、150mmol/l塩化ナトリウム水溶液)で20%(w/v)に調整した液を用意した。
・GOX液(天野製薬社製):グルコースオキシダーゼを上記の緩衝液で38000U/mlに調整した。
・GA水溶液:グルタルアルデヒド(GA、和光純薬社製)の10%(w/v)水溶液を用意した。
調整したBSA液、GOX液及びGA水溶液を混合し、プラチナ表面(面積1.43mm2)にスピン塗布して厚み0.6μmの固定化GOX膜を形成し、上記スピン塗布の過程において周囲に飛散したGOX、BSA、GAの混合物からなる固定化酵素膜を回収し、粉末化して約25000U/gの固定化COXを約0.5g得た。
【0080】
製造例2
[保存液の調製]
10mmol/lのTES緩衝液を用意し、塩化ナトリウムでイオン強度を0.15に、水酸化ナトリウムでpH7に調製した。
【0081】
実施例1〜4
製造例1で調製した固定化GOXと顆粒状の活性炭(034−02125、和光純薬工業社製)とを混合して表1に示す組成の触媒組成物を得た。
【0082】
【表1】
【0083】
[評価]
製造例2で調製した保存液80mLに実施例1〜4の触媒組成物を加えたものと、実施例1〜4の触媒組成物を加えないものとを用意し、さらに、500mg/dLのグルコース水溶液3mLを入れ替えた。7日経過後、保存液中のグルコース濃度を測定したところ(全自動グルコース測定装置グルコースオートアンドスタット、型番GA−1152、アークレイ社製)、実施例1〜4の触媒組成物は、グルコースは検出されなかったが、実施例1〜4の触媒組成物を加えないものは、添加したグルコースの量だけ、グルコースが検出された。また、測定後に500mg/dLのグルコース水溶液3mLを入れ替え、1週間後に測定を同様にして行ない、2か月間後にも測定を同様にして行ったところ、いずれにおいてもグルコースは検出されなかった。
【0084】
実施例5
製造例2で調製した保存液50mLに、製造例1で調製した固定化GOX0.3gと顆粒状の活性炭(034−02125、和光純薬工業社製)0.5gとを混合した触媒組成物を加え、更にグルコースを0.5g添加し、25℃で放置した。4、24、48時間をそれぞれ経過したときに、保存液中のグルコース濃度を測定した(全自動グルコース測定装置グルコースオートアンドスタット、型番GA−1152、アークレイ社製)。結果を図11に示す。
【0085】
実施例6
実施例5において、活性炭に換えて粒状の二酸化マンガン(IV)0.5gを用いた以外は、実施例5と同様にした。結果を図11に示す。
【0086】
比較例1
実施例5において、活性炭を加えない以外は、実施例5と同様にした。結果を図11に示す。
【0087】
図11に示すとおり、固体触媒を加えた実施例5、6では、グルコース濃度が速やかに低下したが、固体触媒を加えない比較例1では、グルコース濃度の低下がほとんど見られなかった。なお、使用したグルコース濃度測定装置(アークレイ社製の全自動グルコース測定装置)は、過酸化水素反応出力を測定しグルコース換算しているため、比較例1の結果は、実質的には、保存液中で過酸化水素が分解されていない結果を示すものと考察された。
【0088】
実施例7
製造例2で調製した保存液50mLに、製造例1で調製した固定化GOXを0.1gと、球状のゼオライト(F−9、NaX型、比表面積591m2/g、Si/Al=2.5、和光純薬工業社製)5gとを混合した触媒組成物を加えて、25℃で15日間放置した。なお、4日目、9日目にグルコースを5mgずつ添加した。保存液中のグルコース濃度を毎日測定した(全自動グルコース測定装置グルコースオートアンドスタット、型番GA−1152、アークレイ社製)。結果を図12に示す。
【0089】
実施例8
実施例7において、球状のゼオライトに換えて、粉末のゼオライト(HS−341、NH3Y型、比表面積700m2/g、Si/Al=5.5、和光純薬工業社製)5gを用いた以外は、実施例7と同様にした。結果を図12に示す。
【0090】
実施例9
実施例7において、球状のゼオライトに換えて、粉末のゼオライト(HS−720、Kフェリライト、比表面積170m2/g、Si/Al=18.2、和光純薬工業社製)5gを用いた以外は、実施例7と同様にした。結果を図12に示す。
【0091】
図12で示すように、実施例7〜9では、グルコースを添加後数日以内で、グルコース濃度の低下が見られた。また、図13には、実施例7、9について、pHを毎日測定した結果を示すが、図13で示すように、実施例7、9ではpHの変化もほとんど見られず、pH7を保持していた。なお、pHは、25℃でpHメータ(新電元工業株式会社製、pH計 KS723)により測定した。
【0092】
実施例10
製造例2で調製した保存液50mLに、実施例7で用いた触媒組成物を加えて、25℃で150時間放置した。なお、0、68、104時間後にグルコースを5mgずつ添加した。0.5、2、24時間後に保存液中のグルコース濃度を測定した(全自動グルコース測定装置グルコースオートアンドスタット、型番GA−1152、アークレイ社製)。結果を図14に示す。
【0093】
実施例11
実施例10において、実施例7で用いた触媒組成物のうち、固定化GOXを0.3g用いた以外は、実施例10と同様にした。結果を図14に示す。
【0094】
実施例10、11ではいずれもグルコース濃度の低下がみられたが、この保存液をグルコースセンサ(製品番号UG201、タニタ社製)に用いると、実施例11では出力が小さくなるという変化が見られた。これは、固体触媒に対して固定化GOXの量が多すぎると、過酸化水素の分解が間に合わなくなるためと考えられた。
【符号の説明】
【0095】
1 グルコース濃度測定装置
2 グルコースセンサ
3 センサー保護部
4 表示部
5 操作部
6 制御部
61 出力取得部
62 出力判定部
63 測定値算出部
64 基準値設定部
65 測定値記憶部
66 基準値記憶部
67 モード切替部
68 カウンタ部
S 保存液
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルコース分解用触媒組成物、及びこれを用いたグルコール濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
グルコース濃度測定装置としては、特許文献1に記載の血糖測定装置がある。特許文献1の血糖測定装置では、グルコースに対する触媒となる酵素(グルコースオキシターゼ)と、過酸化水素(H2O2)に対する触媒となる酵素(ペルオキシターゼ)と、活性酸素と反応して発色する発色色素とがセンサー部材のメッシュシート側の面に、塗布されており、センサー部材の発色強度等を測定することにより、メッシュシートに含まれるグルコースの量を検知する。
【0003】
また、グルコース測定装置としては、特許文献2に記載の尿糖計も知られている。特許文献2の尿糖計では、食直前尿糖値、及び、所定時間(好ましくは2時間)経過後の食後尿糖値を測定し、食後尿糖値と食直前尿糖値との差を示す尿糖変化値を演算して、尿糖変化値を出力する。これによると、食直前及び食後だけの測定で、被測定者にとって、手間が少なく信頼性の高い尿糖変化値を提供できるとされている。
【0004】
こうした従来のバイオセンサでは、感度の較正が必要であるため、使用頻度によって、感度の較正の要否を判定し、較正を要する場合に報知して較正を促すことが行われる。そして、基準液に対するセンサー出力が得られると、センサーを洗浄液で洗浄し、緩衝液等の保存液に浸して、センサー出力のベースラインを安定した状態にする。
【0005】
これに対し、特許文献3の尿糖計では、尿糖センサーの感度較正に際して、新たに取得された尿糖センサーの出力値が基準値の設定に適しないと判定された場合、洗浄処理が行われないまま、尿糖センサーに、基準液が追加して掛けられ、基準液が付着した状態で、尿糖センサーの他の出力値が取得される。したがって、特許文献3の尿糖計によれば、一の出力値が得られた後に必ず洗浄処理が行われていた従来の測定装置と比較して、簡単かつ短時間にバイオセンサの感度を較正できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−175801号公報
【特許文献2】特開2006−153849号公報
【特許文献3】特開2008−298648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のバイオセンサでは、感度の較正が必要なため基準液の測定が必要となることに加え、その後に洗浄液でセンサーを洗浄する洗浄工程も要求されていた。これは、基準液に含まれるグルコースが保存液に持ち込まれ、センサーの出力が安定化できなくなるのを防ぐためであるが、ユーザの操作を煩雑にさせる点で問題があった。
【0008】
そこで、本発明者らは、保存液に、基準液から持ち込まれるグルコースを分解できる機能をもたせれば、基準液の測定後の洗浄工程は不要になると考えた。しかしながら、こうしたグルコースを分解できる機能は、保存液中で長期間活性を維持される必要があり、また、保存液が本来有する、センサー出力の安定化機能を損なわないようにする必要もある。
【0009】
一方、保存液を害する副生成物を生成せずに、かつ、液体中で長期間活性を維持してグルコースを分解できる技術は、知られていなかった。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、有害な副生成物を生成せずに、かつ、液体中で長期間グルコースの分解能を保持できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、
固定化されたグルコースオキシダーゼと、
前記グルコースオキシダーゼの作用によるグルコースの分解反応で生じた過酸化水素の分解反応を触媒する固体触媒と、
を含む、グルコース分解用触媒組成物が提供される。
【0012】
また、本発明によれば、上記に記載の触媒組成物を用いてグルコースを分解する方法が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、
液体試料に含まれるグルコース濃度を測定するグルコースセンサと、
前記グルコースセンサの出力を安定化させる保存液を含むセンサー保護部と、
を備え、
前記グルコースセンサは、前記保存液に浸漬されており、
前記保存液が、上記の触媒組成物を含む、グルコース濃度測定装置が提供される。
【0014】
また、本発明によれば、
グルコースが所定濃度に定められた基準液をグルコースセンサに摘下して、前記グルコースセンサの感度を補正するステップと、
補正された前記グルコースセンサを保存液に浸漬して、前記グルコースセンサの出力を安定化するステップと、
安定化された前記グルコースセンサを用いて液体試料中のグルコース濃度を測定するステップと、
を含み、
前記保存液が、上記の触媒組成物を含む、グルコース濃度の測定方法が提供される。
【0015】
また、本発明によれば、
液体試料に含まれるグルコース濃度を測定するグルコースセンサと、
グルコースが所定濃度に定められた基準液を前記グルコースセンサに摘下することをユーザに案内する操作案内手段と、
前記操作案内手段の案内を受けてユーザがグルコースが所定濃度に定められた基準液に前記グルコースセンサを摘下することによって、前記グルコースセンサの感度を補正する補正手段と、
を有し、
前記補正手段により前記グルコースセンサの感度が補正されたとき、前記操作案内手段は、ユーザに対し、前記グルコースセンサの出力を安定化する保存液に、前記グルコースセンサを浸漬することを案内する、グルコース濃度測定装置が提供される。
【0016】
この発明によれば、グルコースオキシダーゼを固定化させることで、液体中でグルコースオキシダーゼを変性させずに長期間保存することができる。そのため、グルコースオキシダーゼにより長期間安定にグルコースをグルコン酸と過酸化水素とに分解することができる。また、グルコースの分解により生じた反応性の高い過酸化水素は、固体触媒により速やかに水と酸素とに分解させることができる。したがって、有害な副生成物を生成せずに、かつ、液体中で長期間グルコースの分解能を保持できる技術が実現可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、有害な副生成物を生成せずに、かつ、液体中で長期間グルコーの分解能を保持できる技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態に係るグルコース濃度測定装置の外観を模式的に示した図である。
【図2】実施の形態に係るグルコース濃度測定装置の論理構造を示す模式的なブロック図である。
【図3】実施の形態に係るグルコース濃度測定装置を用いたグルコース濃度測定方法を示すフローチャートである。
【図4】実施の形態に係るグルコース濃度測定装置の表示部への表示の一例を示す図である。
【図5】従来のグルコース濃度測定装置を用いたグルコース濃度測定方法を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態に係るグルコース濃度測定装置の効果を説明する図である。
【図7】実施の形態に係るグルコース濃度測定装置の効果を説明する図である。
【図8】実施の形態に係るグルコース濃度測定装置の効果を説明する図である。
【図9】実施の形態に係るグルコース濃度測定装置の効果を説明する図である。
【図10】実施の形態に係るグルコース濃度測定装置の効果を説明する図である。
【図11】実施例の結果を示す図である。
【図12】実施例の結果を示す図である。
【図13】実施例の結果を示す図である。
【図14】実施例の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0020】
(第1の実施形態)
本実施の形態は、グルコース分解用触媒組成物である。このグルコース分解用触媒組成物は、固定化されたグルコースオキシダーゼ(固定化GOX)と、GOXの作用によりグルコースから生じる過酸化水素の分解反応を触媒する固体触媒と、を含む。
【0021】
GOXの固定化には、包括法、担体結合法、架橋法又はこれらを組合せた複合法を用いることができる。GOXを固定化することにより、溶媒(特に水)にGOXを不溶化し、GOXの触媒能を液体中で保持させることができる。包括法でGOXを固定化する場合、有機ゲル等によって、GOXを包み込むことができる。また、担体結合法でGOXを固定化する場合、GOXを樹脂等に結合させて不溶化させればよい。中でも、架橋剤で固定化されたもの、あるいは、アルブミン架橋膜で包括することにより固定化されたものが、固定化GOXとして好ましい。
【0022】
架橋剤としては、多官能性アルデヒド化合物や多官能性エポシキ化合物を用いることができ、多官能性アルデヒドとしては、グリオキサール、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド及びマレアルデヒドなる群から選ばれたジアルデヒドなどを用いることができる。また、多官能性エポシキ化合物としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。中でも、使い勝手の良さ、膜厚のコントロールの容易さの観点からグルタルアルデヒドが好ましい。
【0023】
アルブミン架橋膜は、卵白アルブミン又は動物由来の血清アルブミン、好ましくは牛子牛血清のアルブミン(BSA:Bovine Serum Albumine)を、架橋剤を用いて架橋化させたものである。アルブミンの架橋剤も、上記例示したGOXの架橋剤と同様のものを用いることができる。
【0024】
固定化GOXの製法は、公知の固定化酵素の製造技術を適宜採用し得るが、例えば、GOXとBSAとグルタルアルデヒドとを任意の溶媒に混合させて、GOXを固定化させることができる。この場合、溶媒としては、例えば、水、アルコール、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)、TES(N−[トリス(ヒドロキシメチル)−メチル]−2−アミノエタンスルホン酸)、PIPES(4−ピペラジンジエタンスルフォン酸)等の緩衝液を用いることができる。この方法では、GOXに直接グルタルアルデヒドが架橋したグルタルアルデヒド架橋型GOXと、BSAとグルタルアルデヒドとの架橋体により包括されたBSA包括型GOXとの混合物からなる固定化GOXを得ることができる。
【0025】
また、グルコースセンサの製造工程で得られるGOX固定化膜を固定化GOXとして用いてもよい。具体的には、グルコースセンサは、複数の電極構造が形成された基材上にGOX固定化膜がスピンコート法により成膜された後、リソグラフィー技術を用いたパターニングを経て、ダイシングによりチップ化されることで形成される。このとき、基材の電極以外の部分(例えば、基材周縁部)は、グルコースセンサの製造工程では不要となるが、GOX固定化膜は成膜されている。したがって、この基材周縁部のGOX固定化膜を削り取るなどすれば、固定化されたGOXを得ることができ、本実施の形態の触媒組成物に用いることができる。なお、グルコースセンサの製造工程におけるGOX固定化膜の形成方法としては、例えば、昭62−54155号公報に記載されたものがある。なお、基材の材料としては、グルコースセンサの電極構造を形成できる材料を用いることができ、例えば、プラチナや金を用いることができる。
【0026】
固定化GOXは、触媒組成物中0.01〜50重量%含むことが好ましく、0.1〜20重量%含むことがより好ましい。
【0027】
固体触媒は、溶媒、特に水に不溶性であり、過酸化水素の分解反応を不均一系で触媒する不均一系触媒であれば、限定されないが、活性炭、二酸化マンガン、ゼオライト、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化第2鉄、及び、マグネタイト(三二酸化鉄)からなる少なくとも1種を用いることができ、活性炭、二酸化マンガン、及びゼオライトからなる少なくとも1種を用いることが好ましい。過酸化水素を速やかに分解できるという観点からは、二酸化マンガン及び活性炭が好ましく、二酸化マンガンがより好ましい。グルコース分解用触媒組成物中、後述するように、pH緩衝剤としてTES等のグッド緩衝液を含有する場合、緩衝剤を吸着しないという観点からは、二酸化マンガンが好ましい。グルコース濃度測定装置の保存液に用いたときに、緩衝能を損なわず、長期保存に優れる観点からは、ゼオライトが好ましい。固体触媒は1種のみを用いてもよいし、2種以上併用することもできる。
【0028】
固体触媒の形状は、限定されず、粒状(破砕状、ペレット状、球状、顆粒状)、粉末状、柱状、円柱状、繊維状いずれであってもよいが、ゼオライトを選択した場合は、球状が好ましい。
【0029】
ゼオライトは、細孔を有し、アルカリまたはアルカリ土類金属(好ましくはNaイオン、Kイオン、Caイオン)を含む含水アルミノケイ酸である。本発明の固体触媒として用いられるゼオライトは、合成品あるいは天然品のいずれであってもよい。具体的には、X型、Y型、A型、モルデナイト、及び、フェリライトからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、pH変化を起こさず、かつ、グルコース分解能にも優れる観点からX型ゼオライトがより好ましい。Naイオンを含むものが好ましいが、NaイオンがCa、Mg、Liでイオン交換されたものを用いてもよい。
【0030】
固体触媒は、触媒組成物中の固形分に対して50〜99重量%含むことが好ましく、80〜99重量%含むことがより好ましい。
【0031】
触媒組成物中、固定化GOXの重量は、固体触媒の重量に対して、0.01〜1倍であることが好ましく、0.01〜0.5倍であることがより好ましい。また、固定化GOX1000Uあたり、固体触媒を0.25〜25g用いることが好ましく、0.25〜12.5g用いることがより好ましい。
【0032】
本実施の形態に係る触媒組成物をグルコースに混合させることで、グルコースを分解することができる。反応は、溶媒を用いて行われることが好ましい。溶媒は、グルコースを溶解できる液体であればよく、水、緩衝液又はこれらの混合液を用いることができる。緩衝液としては、Tris緩衝液、グッド緩衝液及び炭酸塩緩衝液と呼ばれるものが好ましく、より好ましくは上述したHEPES、TES、PIPES等のグッド緩衝液が挙げられる。固体触媒として活性炭を用いるときは、水を用いることが好ましい。緩衝液を用いるときは、緩衝能を阻害しないという観点から、固体触媒としてゼオライトを用いることが好ましく、グッド緩衝液とゼオライトとの組み合わせがより好ましい。pHは、6〜8.5であることが好ましく、6〜7.5がより好ましい。グルコースを溶解できる液体は、触媒組成物にあらかじめ混合されていてもよいし、
あらかじめグルコースを溶解できる液体にグルコースを溶解したグルコース溶液と触媒組成物とを混合させてもよい。また、本実施の形態の触媒組成物は、グルコース溶液に添加してもよいし、溶媒に触媒組成物を添加した後、グルコース又はグルコース溶液を添加してもよい。なお、グルコース溶液を用いる場合は、尿、血液などの生体試料であってもよい。
【0033】
本実施の形態の触媒組成物は、溶媒中、長期間グルコース分解活性を有しており、例えば、水中においても、1月以上グルコース分解能を有している。そのため、溶媒と触媒組成物とをあらかじめ混合させておき、グルコース又はグルコース溶液を添加してグルコースを分解する態様がより好適である。この場合、本実施の形態の触媒組成物は、溶媒中、分散させていてもよいし、また、グルコース及び溶媒が透過できる孔が設けられた包装体に包装して溶媒に浸漬させたり、溶媒に浮遊させたりしてもよい。
【0034】
グルコースの分解反応において、本実施の形態の触媒組成物は、溶媒中0.01〜50w/v%用いると好ましく、0.1〜10w/v%であるとより好ましい。
【0035】
本実施の形態の触媒組成物は、分解すべきグルコースを速やかに分解する必要があるため分解の対象となるグルコースの量に対して過剰に用いられることが好ましいが、現実的にはグルコース1g当たり、GOXを100〜10000ユニット含むと好ましく、更には500〜5000ユニットを含むのがより好ましい。
【0036】
本実施の形態の触媒組成物を用いたグルコースの分解反応の反応温度は、特に制限されないが、室温(4〜50℃)で行うことが好ましい。
【0037】
本実施の形態の触媒組成物によれば、グルコースオキシダーゼを固定化させることで、液体中でGOXを変性させずに長期間保存することができる。そのため、GOXにより長期間安定にグルコースをグルコン酸と過酸化水素とに分解することができる。
【0038】
GOXにより触媒されるグルコースの分解反応は、下記式(1)で表される。
グルコース+O2→グルコノ−δ−ラクトン+H2O2・・・(1)
【0039】
上記(1)で表されるように、グルコースの分解反応には酸素が必要であるが、触媒組成物の調製、及び、反応液の調製において、特に脱気の操作を加えなければよい。こうすることで、触媒組成物の調製の過程で本実施の形態の触媒組成物に空気中の酸素が混入する。また、反応液の調製において、溶媒中に酸素が溶存する。このように自然に混入した酸素により、上記(1)の反応は、進行する。
【0040】
また、グルコースの分解により生じた反応性の高い過酸化水素は、固体触媒により速やかに水と酸素とに分解させることができる。
【0041】
そして、下記(2)の反応が自発的に進行する。
グルコノ−δ−ラクトン+H2O→グルコン酸・・・(2)
【0042】
なお、溶媒に水を用いた場合は、上記式(1)の反応後、上記式(2)の反応が速やかに起こるためより好ましい。
【0043】
このように、本実施の形態の触媒組成物によれば、有害な副生成物を算出せずに、かつ、溶媒中で長期間グルコースの分解能を保持することができる。
【0044】
(第2の実施形態)
本実施の形態は、グルコース濃度測定装置である。図1は、本実施の形態のグルコース濃度測定装置の外観の一例を示す図である。図2は、図1で示すグルコース濃度測定装置1の論理構造を示す模式的なブロック図である。図1で示すように、液体試料に含まれるグルコース濃度を測定するグルコースセンサ2と、グルコースセンサ2の出力を安定化させる保存液Sを含むセンサー保護部3とを備える。グルコースセンサ2は、保存液Sに浸漬されている。
【0045】
保存液Sは、第1の実施形態で説明した固定化GOXと固体触媒とを含む触媒組成物を含有する液体である。保存液に用いられる液体は、グルコースを溶解する液体であればよいが、具体的には、水、緩衝液又はこれらの混合液を用いることができる。中でも、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)、TES(N−[トリス(ヒドロキシメチル)−メチル]−2−アミノエタンスルホン酸)、PIPES(4−ピペラジンジエタンスルフォン酸)等の緩衝液を含むことが好ましく、塩化ナトリウムや塩化カリウムを混合してイオン強度が0.1〜0.15の範囲に調製されていることが好ましい。また、pHは、6.0〜8.5であることが好ましく、6.0〜7.5がより好ましい。また、保存液S中、固定化GOXは、電極の表面積に対して1mm2当たり0.1〜200mユニットを含むことが好ましく、0.5〜50mユニットを含むことがより好ましい。固体触媒としては、活性炭、二酸化マンガン及びゼオライトの少なくも1種を用いることが好ましいが、保存液S中のpHを保持できるという観点から、ゼオライトがより好ましく、X型ゼオライトが更に好ましい。保存液Sは、本発明の効果を妨げない範囲で、防腐剤等の任意成分を含むことができる。
【0046】
より具体的には、グルコース濃度測定装置1は、表示部4(操作案内手段)、操作部5、制御部6を有している。
【0047】
グルコースセンサ2は、液体試料に含まれるグルコース濃度を、電気化学的に検出(測定)するように構成されている。
【0048】
表示部4(操作案内手段)は、測定値や判定結果や操作ガイダンス等を表示する。
【0049】
操作部5は、強制的な感度較正モードへの移行や、待機中の過去履歴の呼出などモード切替部67により動作や表示を変更する。電源オン/オフスイッチはヒンジ部に磁石やプッシュスイッチ等を有してあり、センサー部の開閉によりボタン押し操作なしにオン/オフすることができる。
【0050】
制御部6は、CPU、RAM、ROM、EPROM、入出力インターフェース等からなり、表示部4への表示や操作部5からの入力を含んだ、グルコース濃度測定装置1全体の制御を行なうようになっている。加えて、グルコース濃度測定装置1は、図示しないA/D変換部を有しており、このA/D変換部は、グルコースセンサ2で検出された信号を、デジタルデータに変換して制御部6へと出力するように構成されている。
【0051】
制御部6は、出力取得部61と、出力判定部62と、測定値算出部63と、基準値設定部64と、測定値記憶部65と、基準値記憶部66と、モード切替部67と、カウンタ部68とを有している。
【0052】
出力取得部61は、グルコースセンサ2に液体試料又は基準液が摘下されたときのグルコースセンサ2の出力をA/D変換部(図示しない)を介して取得する。なお、基準液は、グルコース濃度が所定の濃度に定められたものである。
【0053】
出力判定部62は、出力取得部61により取得された基準液のグルコースセンサ2の出力値を、基準値設定部64により設定された基準値と比較する。
【0054】
測定値算出部63は、出力取得部61により取得された測定試料のグルコースセンサ2の出力値を、基準値設定部64により設定された基準値と比較する。
【0055】
基準値設定部64は、出力判定部62により基準値の設定に適すると判定されたグルコースセンサ2の出力値を用いて、基準値を設定する。この基準値は、基準値記憶部66に格納される。なお、製品出荷時には、基準値が初期値として予め記憶されている。
【0056】
モード切替部67は、グルコース濃度を測定するための測定モードと、グルコースセンサ2の感度を補正するための較正モードとを切り替える。測定モードのとき、出力取得部61は、グルコースセンサ2の出力を測定値算出部63に送出する。また、測定モードでは、制御部6が、その他図示しない構成によりグルコース濃度の測定全般を制御する。測定モードにおいてグルコース濃度を測定した回数が、カウンタ部68によって、グルコースセンサ2の使用頻度に相当する値としてカウントされる。モード切替部67は、カウンタ部68によりカウントされたグルコース濃度の測定回数が所定回数に達した場合に、較正(センサーの感度補正)が必要であると判定すると共に、較正が必要である旨を表示部4に表示し、較正モードに切り替えるようになっている。較正モードでは、出力取得部61は、グルコースセンサ2の出力を出力判定部62に送出する。また、較正モードでは、制御部6が、その他図示しない構成によりグルコースセンサ2の較正全般を制御し、グルコースセンサ2の感度を補正する(補正手段)。
【0057】
これらの構成のグルコース濃度測定装置1において、制御部6は、次に図3のフローチャートに示す流れで、各処理を実行する。グルコース濃度測定装置1の電源がオフされている状態で、使用者が操作部5上の電源オン/オフスイッチを押すと、ステップS1にて、グルコース濃度測定装置1が測定モードで起動される。
【0058】
ステップS2では、モード切替部67は、カウンタ部68でカウントされたグルコース濃度の測定回数によって、グルコースセンサ2の感度を補正する必要があるか否かを判定する。このステップS2における感度補正の要否は、例えば、前回、較正モードに変換した時からの経過時間を計時して、その経過時間が所定時間に達したか否かによって判定してもよい。
【0059】
ステップS2で感度補正の必要がないと判定された場合、即ち、グルコース濃度の測定回数が所定回数よりも少ない場合には(ステップS2にてNO)、ステップS3で、表示部4がユーザに測定を案内する表示をする。このとき例えば、図4(a)で示す表示がされる。
【0060】
そして、表示部4の表示をみて、ユーザがグルコースセンサ2に液体試料、例えば、尿を摘下すると、制御部6内の出力取得部61が、グルコースセンサ2からの出力を取得する。そして、測定値算出部63は、基準値設定部64が設定した基準値を用いて、出力取得部61が取得した出力値から、グルコース濃度を算出する。
【0061】
このグルコース濃度の測定が完了すると、制御部6は、ユーザに対して、算出されたグルコース濃度を表示部4に表示する。このとき、制御部6は、算出した測定値を測定値記憶部65に記憶してもよい(ステップS4)。
【0062】
そして、モード切替部67により、較正モードに切り替えられ、ステップS5において、制御部6は、表示部4に、グルコースセンサ2に基準液を摘下するよう指示するガイダンスを表示するように制御する。このとき、表示部4は、図4(b)で示すように、グルコース濃度とともに、基準液を摘下する旨のガイダンスを同時に表示してもよい。そして、表示部4でのガイダンス表示に従って、ユーザがグルコースセンサ2に基準液を摘下すると、出力取得部61により、グルコースセンサ2の出力値が取得される。ここでは、取得された出力値が、時系列に沿って、RAM上に記憶されていくようになっている。
【0063】
次に、ステップS6で、出力判定部62は、取得された最新の出力値(以下、「最新値」という)と、過去に取得されている出力値とを比較して、過去の出力値からの最新値の変化の大きさが許容範囲内に収まり、出力値が安定しているか否かを判定する。ここでは、過去の出力値として、前回の測定時における出力値(以下、「前回値」という)を用いるものとし、最新値とこの前回値とが比較されて出力値が安定しているか否かが判定される。これによって、出力判定部62は、最新値が、上記基準値として適しているか否かを判定する。
【0064】
即ち、出力判定部62は、基準液に対する出力変化の許容限界値をAとし、前回値と最新値との差分が、この許容限界値A以下であるか否かを判定する。但し、前回値となる出力が測定されていないとき、前回値として、製品出荷時に、予め設定され基準値記憶部66に記憶されていた基準値が用いられる。
【0065】
上記差分が許容限界値A以下である場合(ステップS6にてYES)、最新値が基準値に適していると判断されて、ステップS7へと進む。このステップS7では、基準値設定部64により、その最新値が、新たな基準値として、基準値記憶部66に既に記憶されていた基準値に置き換えられる。そして、ステップS9で、制御部6は、表示部4にユーザに収納の促す旨を表示し(例えば、図4(c))、ユーザは、グルコースセンサ2を保存液Sに浸漬し、グルコース濃度測定装置1の電源はオフされ、本処理は終了する。
【0066】
また、上記差分が許容限界値Aよりも大きい場合(ステップS6にてNO)、この最新値は基準値に適していないと判断されて、制御部6は、表示部4にエラー表示をさせる(ステップS8、図4(d)))。例えば、摘下した基準液が必要量に満たないときには、得られた最新値は基準値に適していないと判断される可能性が高い。そして、ステップS8で、制御部6は、表示部4にユーザに収納の促す旨を表示し(例えば、図4(c))、ユーザは、グルコースセンサ2を保存液Sに浸漬し、グルコース濃度測定装置1の電源はオフされ、本処理は終了する。この場合、ユーザは、使用説明書より、所定の対処をするよう案内される。
【0067】
また、上記ステップS2において、較正モードにする必要があると判定された場合、即ち、グルコース濃度測定回数が所定回数以上である場合(ステップS2にてYES)、モード切替部67は較正モードへ切り替え、ステップS5以降の感度補正に係る処理が実行される。
【0068】
ここで、保存液が第1の実施形態の触媒組成物を含まない場合のフローチャートを図5に示す。図5の例の場合、グルコース濃度測定装置が測定モードで起動され(ステップS81)、ステップS82では、ステップS2と同様に、較正モードにする必要がないと判定された場合(ステップS82にてNO)、ステップS83で、表示部がユーザに測定を案内する表示をする。そして、表示部の表示をみて、ユーザがグルコースセンサに液体試料、例えば、尿を摘下すると、ステップS4と同様にグルコース濃度が算出され、記憶される(ステップS84)。
【0069】
そして、表示部には、ユーザに対し洗浄する旨の案内が表示される(ステップS85)。これは、触媒組成物を含まない、従来の保存液に尿が持ち込まれると、グルコース濃度が増加して、グルコースセンサの出力を安定化できなくなり、測定精度が低下するためである。したがって、ユーザは、グルコースセンサを水で洗浄する手間を要求されてしまう。
【0070】
また、上記ステップS82において、較正の必要があると判定された場合(ステップS82にてYES)、モード切替部67により較正モードへ切り替えられ、ステップS5〜8と同様な感度補正に係る処理が実行される(ステップS85〜88)。
【0071】
そして、図5の例では、ステップS87又はS88の後、ユーザに対し洗浄する旨の案内が表示部に表示される(ステップS89)。これは、触媒組成物を含まない、従来の保存液に基準液が持ち込まれると、グルコース濃度が増加して、グルコースセンサの出力を安定化できなくなり、測定精度が低下するためである。したがって、ユーザは、グルコースセンサを水で洗浄する手間を要求されてしまう。
【0072】
ステップS90では、ステップS9と同様に、表示部にユーザに収納の促す旨が表示され、ユーザは、グルコースセンサを保存液に浸漬し、グルコース濃度測定装置の電源はオフされ、本処理は終了する。
【0073】
一方、本実施の形態のグルコース濃度測定装置1によれば、保存液Sにグルコースの分解機能を持たせたため、従来、測定後又は基準合わせ後に必要とされた洗浄処理が不要となる。したがって、液体試料中のグルコース濃度を簡便に測定することが可能になる。
【0074】
図6(a)、図7〜10は、グルコース濃度測定装置1の出力取得部61が取得するセンサー出力を模式的に示す図である。図6(a)では、ステップS1、S2YES、S5を経て基準液をグルコースセンサ2に摘下した後、ステップS7、S9を経て保存液に収納した例を示す。図6(b)は、従来のグルコース濃度測定装置のセンサー出力を模式的に示す図である。図6(b)では、ステップS81、S82YES、S85〜S87を経て基準液をセンサーに摘下後、水で洗浄を行い(ステップS89)、ステップS90を経て保存液に収納したときのセンサー出力を示す。グルコース濃度測定装置1では、保存液S中でグルコースセンサ2に残存した基準液のグルコースが分解されるため、図6(a)では、図6(b)と同じように、保存液Sに浸漬されたグルコースセンサ2が安定した出力を示す。
【0075】
図7では、尿を測定した例を示す。図7では、ステップS1、S2NO、S3を経て、尿をグルコースセンサ2に摘下し、さらに、ステップS4、S5を経て、基準液を摘下して、ステップS6YES、S7、S9を経て保存液に収納する例を示す。図7(a)では、高濃度(1000〜2000mg/dL)の尿糖が検出される例を示し、図7(b)では、低濃度(50〜100mg/dL)の尿糖が検出される例を示す。図7で示すように、保存液Sに浸漬されたグルコースセンサ2は、安定した出力を示す。
【0076】
図8、9では、感度補正をした後に、尿を測定した例を示す。図8、9では、ステップS1、S2YES、S5を経て、基準液をグルコースセンサ2に摘下し、さらに、ステップS6YES、S7を経て、保存液Sに収納し、さらに、保存液Sからグルコースセンサ2を取りだして、ステップS1、S2NO、S3を経て、尿をグルコースセンサ2に摘下し、さらに、ステップS4、S5を経て、基準液を摘下して、ステップS6YES、S7、S9を経て保存液Sに収納する例を示す。図8では、高濃度(200〜500mg/dL)の尿糖が検出される例を示し、図9では、低濃度(50〜100mg/dL)の尿糖が検出される例を示す。図8、9で示すように、保存液に浸漬されたグルコースセンサ2は、安定した出力を示す。
【0077】
図10では、測定試料として尿を測定した例を示す。図10では、ステップS1、S2NO、S3を経て、尿をグルコースセンサ2に摘下し、高濃度(200〜500mg/dL)の尿糖を検出した後、ステップS4、5を経て、基準液をグルコースセンサ2に摘下し、さらに、ステップS6YES、S7を経て、保存液Sに収納し、さらに、保存液Sからグルコースセンサ2を取りだして、ステップS1、S2NO、S3を経て、尿をグルコースセンサ2に摘下し、低濃度(50〜100mg/dL)の尿糖を検出した後、さらに、ステップS4、S5を経て、基準液を摘下して、ステップS6YES、S7、S9を経て保存液Sに収納する例を示す。図10で示すように、保存液Sに浸漬されたグルコースセンサ2が安定した出力を示す。
【0078】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
たとえば、本実施の形態では、操作案内手段として表示部を例に挙げて説明したが、表示部に代えて、あるいは、表示部とともに、音声による案内をさせる構成を採用しても良い。
また、実施の形態では、グルコース濃度測定装置の測定試料として、尿をあげて説明したが、本発明のグルコース濃度測定装置は、グルコースが溶解したあらゆる液体試料のグルコース濃度を測定することができ、血液など、グルコースが含まれる生体試料を用いることもできる。
【実施例】
【0079】
製造例1
[固定化GOXの調製]
下記の方法でBSA液、GOX液及びGA水溶液をそれぞれ調整した。
・BSA液:牛血清アルブミン(BSA、和光純薬社製)を、緩衝液(100mmol/l N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(TES)、150mmol/l塩化ナトリウム水溶液)で20%(w/v)に調整した液を用意した。
・GOX液(天野製薬社製):グルコースオキシダーゼを上記の緩衝液で38000U/mlに調整した。
・GA水溶液:グルタルアルデヒド(GA、和光純薬社製)の10%(w/v)水溶液を用意した。
調整したBSA液、GOX液及びGA水溶液を混合し、プラチナ表面(面積1.43mm2)にスピン塗布して厚み0.6μmの固定化GOX膜を形成し、上記スピン塗布の過程において周囲に飛散したGOX、BSA、GAの混合物からなる固定化酵素膜を回収し、粉末化して約25000U/gの固定化COXを約0.5g得た。
【0080】
製造例2
[保存液の調製]
10mmol/lのTES緩衝液を用意し、塩化ナトリウムでイオン強度を0.15に、水酸化ナトリウムでpH7に調製した。
【0081】
実施例1〜4
製造例1で調製した固定化GOXと顆粒状の活性炭(034−02125、和光純薬工業社製)とを混合して表1に示す組成の触媒組成物を得た。
【0082】
【表1】
【0083】
[評価]
製造例2で調製した保存液80mLに実施例1〜4の触媒組成物を加えたものと、実施例1〜4の触媒組成物を加えないものとを用意し、さらに、500mg/dLのグルコース水溶液3mLを入れ替えた。7日経過後、保存液中のグルコース濃度を測定したところ(全自動グルコース測定装置グルコースオートアンドスタット、型番GA−1152、アークレイ社製)、実施例1〜4の触媒組成物は、グルコースは検出されなかったが、実施例1〜4の触媒組成物を加えないものは、添加したグルコースの量だけ、グルコースが検出された。また、測定後に500mg/dLのグルコース水溶液3mLを入れ替え、1週間後に測定を同様にして行ない、2か月間後にも測定を同様にして行ったところ、いずれにおいてもグルコースは検出されなかった。
【0084】
実施例5
製造例2で調製した保存液50mLに、製造例1で調製した固定化GOX0.3gと顆粒状の活性炭(034−02125、和光純薬工業社製)0.5gとを混合した触媒組成物を加え、更にグルコースを0.5g添加し、25℃で放置した。4、24、48時間をそれぞれ経過したときに、保存液中のグルコース濃度を測定した(全自動グルコース測定装置グルコースオートアンドスタット、型番GA−1152、アークレイ社製)。結果を図11に示す。
【0085】
実施例6
実施例5において、活性炭に換えて粒状の二酸化マンガン(IV)0.5gを用いた以外は、実施例5と同様にした。結果を図11に示す。
【0086】
比較例1
実施例5において、活性炭を加えない以外は、実施例5と同様にした。結果を図11に示す。
【0087】
図11に示すとおり、固体触媒を加えた実施例5、6では、グルコース濃度が速やかに低下したが、固体触媒を加えない比較例1では、グルコース濃度の低下がほとんど見られなかった。なお、使用したグルコース濃度測定装置(アークレイ社製の全自動グルコース測定装置)は、過酸化水素反応出力を測定しグルコース換算しているため、比較例1の結果は、実質的には、保存液中で過酸化水素が分解されていない結果を示すものと考察された。
【0088】
実施例7
製造例2で調製した保存液50mLに、製造例1で調製した固定化GOXを0.1gと、球状のゼオライト(F−9、NaX型、比表面積591m2/g、Si/Al=2.5、和光純薬工業社製)5gとを混合した触媒組成物を加えて、25℃で15日間放置した。なお、4日目、9日目にグルコースを5mgずつ添加した。保存液中のグルコース濃度を毎日測定した(全自動グルコース測定装置グルコースオートアンドスタット、型番GA−1152、アークレイ社製)。結果を図12に示す。
【0089】
実施例8
実施例7において、球状のゼオライトに換えて、粉末のゼオライト(HS−341、NH3Y型、比表面積700m2/g、Si/Al=5.5、和光純薬工業社製)5gを用いた以外は、実施例7と同様にした。結果を図12に示す。
【0090】
実施例9
実施例7において、球状のゼオライトに換えて、粉末のゼオライト(HS−720、Kフェリライト、比表面積170m2/g、Si/Al=18.2、和光純薬工業社製)5gを用いた以外は、実施例7と同様にした。結果を図12に示す。
【0091】
図12で示すように、実施例7〜9では、グルコースを添加後数日以内で、グルコース濃度の低下が見られた。また、図13には、実施例7、9について、pHを毎日測定した結果を示すが、図13で示すように、実施例7、9ではpHの変化もほとんど見られず、pH7を保持していた。なお、pHは、25℃でpHメータ(新電元工業株式会社製、pH計 KS723)により測定した。
【0092】
実施例10
製造例2で調製した保存液50mLに、実施例7で用いた触媒組成物を加えて、25℃で150時間放置した。なお、0、68、104時間後にグルコースを5mgずつ添加した。0.5、2、24時間後に保存液中のグルコース濃度を測定した(全自動グルコース測定装置グルコースオートアンドスタット、型番GA−1152、アークレイ社製)。結果を図14に示す。
【0093】
実施例11
実施例10において、実施例7で用いた触媒組成物のうち、固定化GOXを0.3g用いた以外は、実施例10と同様にした。結果を図14に示す。
【0094】
実施例10、11ではいずれもグルコース濃度の低下がみられたが、この保存液をグルコースセンサ(製品番号UG201、タニタ社製)に用いると、実施例11では出力が小さくなるという変化が見られた。これは、固体触媒に対して固定化GOXの量が多すぎると、過酸化水素の分解が間に合わなくなるためと考えられた。
【符号の説明】
【0095】
1 グルコース濃度測定装置
2 グルコースセンサ
3 センサー保護部
4 表示部
5 操作部
6 制御部
61 出力取得部
62 出力判定部
63 測定値算出部
64 基準値設定部
65 測定値記憶部
66 基準値記憶部
67 モード切替部
68 カウンタ部
S 保存液
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定化されたグルコースオキシダーゼと、
前記グルコースオキシダーゼの作用によるグルコースの分解反応で生じた過酸化水素の分解反応を触媒する固体触媒と、
を含む、グルコース分解用触媒組成物。
【請求項2】
前記グルコースオキシダーゼは、グルタルアルデヒドが架橋して固定化されている、請求項1に記載のグルコース分解用触媒組成物。
【請求項3】
前記グルコースオキシダーゼは、アルブミンとグルタルアルデヒドとの架橋膜により固定化されている、請求項2に記載のグルコース分解用触媒組成物。
【請求項4】
前記固体触媒が、活性炭、二酸化マンガン、及び、ゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1乃至3いずれか1項に記載のグルコース分解用触媒組成物。
【請求項5】
前記ゼオライトが、X型、Y型、A型、モルデナイト、及び、フェリライトからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項4に記載のグルコース分解用触媒組成物。
【請求項6】
グルコースを溶解する液体をさらに含む、請求項1乃至5いずれか1項に記載のグルコース分解用触媒組成物。
【請求項7】
前記固体触媒がゼオライトを含み、前記液体がグッド緩衝液を含む、請求項6に記載のグルコース分解用触媒組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれか1項に記載の触媒組成物を用いてグルコースを分解する方法。
【請求項9】
液体試料に含まれるグルコース濃度を測定するグルコースセンサと、
前記グルコースセンサの出力を安定化させる保存液を含むセンサー保護部と、
を備え、
前記グルコースセンサは、前記保存液に浸漬されており、
前記保存液が、請求項1乃至7いずれか1項に記載の触媒組成物を含む、グルコース濃度測定装置。
【請求項10】
グルコースが所定濃度に定められた基準液をグルコースセンサに摘下して、前記グルコースセンサの感度を補正するステップと、
補正された前記グルコースセンサを保存液に浸漬して、前記グルコースセンサの出力を安定化するステップと、
安定化された前記グルコースセンサを用いて液体試料中のグルコース濃度を測定するステップと、
を含み、
前記保存液が、請求項1乃至7いずれか1項に記載の触媒組成物を含む、グルコース濃度の測定方法。
【請求項11】
前記液体試料が尿である、請求項10に記載のグルコース濃度の測定方法。
【請求項12】
液体試料に含まれるグルコース濃度を測定するグルコースセンサと、
グルコースが所定濃度に定められた基準液を前記グルコースセンサに摘下することをユーザに案内する操作案内手段と、
前記操作案内手段の案内を受けてユーザがグルコースが所定濃度に定められた基準液に前記グルコースセンサを摘下することによって、前記グルコースセンサの感度を補正する補正手段と、
を有し、
前記補正手段により前記グルコースセンサの感度が補正されたとき、前記操作案内手段は、ユーザに対し、前記グルコースセンサの出力を安定化する保存液に、前記グルコースセンサを浸漬することを案内する、グルコース濃度測定装置。
【請求項13】
前記液体試料が尿である、請求項9又は12に記載のグルコース濃度測定装置。
【請求項1】
固定化されたグルコースオキシダーゼと、
前記グルコースオキシダーゼの作用によるグルコースの分解反応で生じた過酸化水素の分解反応を触媒する固体触媒と、
を含む、グルコース分解用触媒組成物。
【請求項2】
前記グルコースオキシダーゼは、グルタルアルデヒドが架橋して固定化されている、請求項1に記載のグルコース分解用触媒組成物。
【請求項3】
前記グルコースオキシダーゼは、アルブミンとグルタルアルデヒドとの架橋膜により固定化されている、請求項2に記載のグルコース分解用触媒組成物。
【請求項4】
前記固体触媒が、活性炭、二酸化マンガン、及び、ゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1乃至3いずれか1項に記載のグルコース分解用触媒組成物。
【請求項5】
前記ゼオライトが、X型、Y型、A型、モルデナイト、及び、フェリライトからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項4に記載のグルコース分解用触媒組成物。
【請求項6】
グルコースを溶解する液体をさらに含む、請求項1乃至5いずれか1項に記載のグルコース分解用触媒組成物。
【請求項7】
前記固体触媒がゼオライトを含み、前記液体がグッド緩衝液を含む、請求項6に記載のグルコース分解用触媒組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれか1項に記載の触媒組成物を用いてグルコースを分解する方法。
【請求項9】
液体試料に含まれるグルコース濃度を測定するグルコースセンサと、
前記グルコースセンサの出力を安定化させる保存液を含むセンサー保護部と、
を備え、
前記グルコースセンサは、前記保存液に浸漬されており、
前記保存液が、請求項1乃至7いずれか1項に記載の触媒組成物を含む、グルコース濃度測定装置。
【請求項10】
グルコースが所定濃度に定められた基準液をグルコースセンサに摘下して、前記グルコースセンサの感度を補正するステップと、
補正された前記グルコースセンサを保存液に浸漬して、前記グルコースセンサの出力を安定化するステップと、
安定化された前記グルコースセンサを用いて液体試料中のグルコース濃度を測定するステップと、
を含み、
前記保存液が、請求項1乃至7いずれか1項に記載の触媒組成物を含む、グルコース濃度の測定方法。
【請求項11】
前記液体試料が尿である、請求項10に記載のグルコース濃度の測定方法。
【請求項12】
液体試料に含まれるグルコース濃度を測定するグルコースセンサと、
グルコースが所定濃度に定められた基準液を前記グルコースセンサに摘下することをユーザに案内する操作案内手段と、
前記操作案内手段の案内を受けてユーザがグルコースが所定濃度に定められた基準液に前記グルコースセンサを摘下することによって、前記グルコースセンサの感度を補正する補正手段と、
を有し、
前記補正手段により前記グルコースセンサの感度が補正されたとき、前記操作案内手段は、ユーザに対し、前記グルコースセンサの出力を安定化する保存液に、前記グルコースセンサを浸漬することを案内する、グルコース濃度測定装置。
【請求項13】
前記液体試料が尿である、請求項9又は12に記載のグルコース濃度測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−249628(P2012−249628A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−64203(P2012−64203)
【出願日】平成24年3月21日(2012.3.21)
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月21日(2012.3.21)
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)
【Fターム(参考)】
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