説明

グルタチオンSトランスフェラーゼPi発現に基づき化学療法を決定する方法

【課題】本発明は、医療、詳細にはガンの化学療法において有用な予測方法に関連する。本発明の目的は、固定化されたもしくは固定化してパラフィン包埋された組織におけるGST−pi発現レベルを評価し、そして白金ベースの化学療法に対する、患者の腫瘍の予測可能な耐性もしくは感度を予測することである。
【解決手段】その予測は、患者の腫瘍細胞中のGST−pi mRNAの量と所定の閾値発現レベルとを比較することによる。更に詳細には、本発明は1組のオリゴヌクレオチドプライマーGSTをGST−piを用いてGST−pi mRNAのレベルを検出することを含んで成るオリゴヌクレオチドプライマー対GST−piand法を供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療、詳細にはガンの化学療法において有用な予測方法に関連する。一層詳細には、本発明は、患者における腫瘍細胞遺伝子発現の評価に関連する。DNAを標的とする化学療法薬剤、特にプラチナ化(platinating)する方法でDNAを傷害する薬剤に対する腫瘍細胞の耐性は、ヒトのDNA修復に関わる遺伝子から発現したmRNAを試験することによって評価されている。
【背景技術】
【0002】
ガンは、正常な細胞が悪性形質転換をして悪性細胞になった場合に生じる。形質転換した(悪性の)細胞は、細胞の表現形を特定化し且つ細胞の増殖を制限する正常な生理的調節を逃れる。このようにして形質転換した細胞は各個体の体内で増殖し、腫瘍を形成する。腫瘍が発見された場合、臨床上の目的は、悪性細胞を選択的に破壊し、しかも個体が治療を受けている間に正常な細胞に対して生じる全ての害を軽減することである。
【0003】
化学療法は、ガン細胞に対する選択的毒性(細胞傷害性)を有する薬物を使用することに基づいている。いくつかの一般的な種類の化学療法薬が開発されており、それらには、核酸合成、タンパク質合成、及び他の重要な代謝過程を妨害する薬物などが挙げられる。これらは一般に代謝拮抗薬といわれている。細胞のDNAに対して傷害を与える種類の化学療法薬もある。これらの種類の薬物は一般に遺伝毒性薬といわれている。しかしながら、個々の新生物の、所望の化学療法薬又は薬物の組み合わせに対する感受性を正確に評価できるのは、往々にして、治療の試行期間の後である。不成功裡な試行期間に時間を費やすことは、侵攻性の悪性腫瘍を臨床的治療することにおける有意な危険をもたらす。
【0004】
細胞のDNAに対する損傷の修復は、細胞の酵素によるDNA修復機構によって行われる重要な生物学的プロセスである。細胞のゲノム中での未修復の損傷部は、DNAの複製を妨げ、新たに合成されるDNAの複製の忠実度を損ないそして/又は細胞が生存するために必要な遺伝子の発現を妨げる。従って、一般に遺伝毒性薬は、休止状態にある、分裂しない細胞に対してよりも、DNAを合成し活発に分裂する細胞に対して一層毒性であると考えられている。多くの体組織の正常な細胞は、休止状態にあり、そしてまれに細胞周期に再び入って分裂する。一巡する細胞分裂どうしの時間間隔は、一般に、化学療法による遺伝毒性物質によって損なわれた正常細胞におけるDNA損傷を修復するために与えられた時間よりも長い。結果として、いくつかの選択性は、ガン細胞を殺すことによって達成される。多くの治療計画は、これらの一般的な2つ以上の種類に属する化学療法薬を共投与することによってガン細胞に対する選択性を向上させる試みを反映している。
【0005】
固形腫瘍における効率的な化学療法には通常、薬剤の組み合わせが必要なので、各単一の薬物に対する耐性又は感受性の決定因子の同定及び定量化をすることが、個々の組み合わせ化学療法を計画するうえでの重要な道具になる。
【0006】
細胞のDNAを損傷することが分かっている、2つの広く使用されてきた遺伝毒性抗ガン剤は、シスプラチン(DDP)とカルボプラチンである。シスプラチン及び/又はカルボプラチンは通常、上皮及び間葉由来の、例えば、選定の呼吸器、結腸直腸及び生殖器官のガン腫及び肉腫、中枢神経系の、並びに頭部及び頸状部における扁平上皮由来の様々な新生物の治療において用いられている。他の薬剤との組み合わせにおけるシスプラチンは、現在までのところ、通常の睾丸ガンの治療のために好ましく、そして多くの場合長期に渡り痛みを緩和する(Loehrerら、1984年、100Ann. Int. Med.704)。シスプラチン(DDP)は鎖内付加体(intrastrand adducts)を形成することによりDNA構造を中断する。DDPなどの白金薬剤に対する耐性は白金付加物に対する耐性向上、薬物蓄積の低下、又はDNAの修復向上に寄与している。DDPに対する耐性は多因子性であるが、DNA修復機構における変化がおそらく有意に貢献している。
【0007】
グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)ファミリーのタンパク質が細胞傷害性薬物の解毒化に関わっている。毒性且つ発ガン性の求電子分子とグルタチオンとの共役を触媒することによって、GST酵素は、細胞の巨大分子を損傷から保護する(Boyerら、Preparation、characterization and properties of S−transferases. In:Zakim D, Vessey D(著)Biochemical Pharmacology and Toxicology. New York, N.Y.:John Wiley and Sons, 1985)。これらのタンパク質の所定の異性体の種類の、グルタチオンS−トランスフェラ−ゼPi(GST−pi。本明細書中ではGSTP1又はGST−πと同義語である)はヒトの上皮組織中で非常に良く発現されており、いくつかの腫瘍においては過剰に発現していることが証明されている(Terrierら、Am J Pathol.1990;vol.137 pp.845〜853;Moscowら、Cancer Res.1989;pp.1422〜1428)。GST−piレベルの増加は薬物耐性腫瘍において認められているのだが、その正確な機構は不明のままである(Tsuchidaら、Crit Rev Biochem. Mol.Biol.1992;vol.27:pp.337〜384)。従来の研究により、GSTタンパク質(mRNAではない)の発現が低いことは、白金ベースの化学療法に対する応答性に関連していることが示唆されている(Nishimuraら、Cancer. Clin Cancer Res 1996;vol. 2:pp.1859〜1865;Tominagaら、Am.J.Gastro.vol.94:pp.1664〜1668、1999;Kaseら、Acta Cytologia.vol.42:pp.1397〜1402、1998)。しかし、これらの研究は、半定量的免疫組織化学的染色方法を用いてタンパク質レベルを測定した以外は、遺伝子の発現を定量的に測定していなかった。しかし、定量的GST−pi発現測定は、非常に効率的な予測を達成するために必要である。
【0008】
大抵の病理試料は通常、固定化及びパラフィン包埋(FPE)され、解剖学的な分析及びその後アーカイブ保存が可能になる。従って、大抵の生検組織試料は、遺伝子の発現を解析するためには有用ではない。何故なら、かかる研究には、遺伝子の発現の正確な測定がなされるよう、完全性の高いRNAが必要となるからである。現在までのところ、遺伝子の発現レベルは、かかる固定化及び包埋した試料を免疫組織化学を用い染色し、タンパク質の発現レベルを観測することによってのみ、定量的に観察されうる。
【0009】
この度まで、GST−pi発現の研究など、定量的遺伝子発現研究は、新鮮又は凍結された組織に由来するRNAの逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)による増幅に限られてきた。
【0010】
医療関係者により凍結された組織の使用は実質上の不都合をもたらす。RNAをベースとした定量的遺伝子マーカーアッセイを計画する場合には、組織の分解及びそれに続くmRNAの分解を避けるために、迅速に生検体を輸送することが最初に考えられる。生検を行う医療関係者は、組織試料を受け取ると直ぐに、RNA抽出プロトコールを行うために備えられた設備に対して当該組織試料を急いで輸送しなければならない。もし使用可能なかかる設備がなければ、臨床医は、mRNAの分解を防ぐために試料を迅速に凍らせなければならない。組織及びRNAが分解する前に診断設備において有用なRNA抽出プロトコールを行うためには、組織試料はそれが当該診断設備に到着するまで、診断施設がどんなに離れていようとも、凍ったままでなければならない。輸送中の凍結組織の完全性は、多大な支出のみをもたらす、液体窒素及びドライアイスを備えた特殊な運搬装置を用いることで維持される。
【0011】
通常の生検体は一般に、間質及び腫瘍組織の異種混合物を含んで成る。FPE生検組織試料は、新鮮及び凍結された組織とは異なり、容易に顕微解剖されて間質組織と腫瘍組織に分けられる。それ故に、新鮮又は凍結された組織を超える使用上の利点が提案される。しかし、固定化した組織、及び特に固定化及びパラフィン包埋した組織からRNAを単離すると、かなり分解が進んだRNAがもたらされる。一般にそのようなRNAは遺伝子発現研究に適用することができない。
【0012】
生物試料からRNAを精製するための多くの技術が存在するが、FPE試料からRNAを単離するために信頼できる方法はない。例えば、Chmoczynski(米国特許第5,346,994号)は、フェノール及びグアニジンイソチオシアネートを用いる液層分離に基づき、組織からRNAを精製する方法を記載している。生物試料は、フェノールとイソチオシアン酸グアニジンの水溶液中でホモジナイズされ、その後このホモジネートがクロロホルムと混合される。遠心後、前記ホモジネートは有機相、中間相及び水相に分離する。タンパク質は有機層に、DNAは中間相に、そしてRNAは水相に閉じ込められる。RNAを水相から沈降することができうる。残念なことに、この方法を固定化及びパラフィン包埋(FPE)した組織試料に対しては適用することはできない。
【0013】
RNAを単離するための他の公知の方法は、典型的に、Sambrook, Jら(1989年)のpp.7.3〜7.24及びAusubel, F.M.ら(1994年)pp.4.0.3〜4.4.7に記載されているように、グアニジン塩又はフェノール抽出物のいずれかを使用する。かさねて、パラフィン包埋した組織試料からRNAを単離にすることにおいて再現可能な定量結果を供する公知の方法はない。
【0014】
このようにして、パラフィン包埋された組織試料からRNAを単離するための技術は、腫瘍組織における遺伝子発現の研究のために特に必要であり、その理由は、所定のレセプター又は酵素の発現レベルを使用し、個々の治療が成功する可能性を特定できうるからである。
【0015】
計画された遺伝毒性ガン治療についての早い予測を供するために、パラフィン処理された組織からGST−pi mRNAを定量する方法に対する要請がある。結果として、未だに当業界においては、固定化及びパラフィン処理(FPE)された組織においてGST−pi発現の定量化を達成するために、不首尾な努力が払われている。従って、本発明の目的は、患者の腫瘍細胞中のGST−pi mRNAの量を調べてそれを所定の閾値発現レベルと比較することによって、固定化及びパラフィン包埋(FPE)された組織におけるGST−piレベルを評価して、DNA傷害剤(DNA白金化剤によって生じるようなDNA中での損傷を生じる種類)による治療に対する患者の腫瘍の、耐性の可能性を予測するための方法を供する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の1つの観点において、固定化及びパラフィン包埋(FPE)された腫瘍細胞から獲得したGST−pi mRNAの発現レベルを評価するための方法が供されている。
【0017】
本発明の他の観点において、固定化及びパラフィン包埋(FPE)された組織試料に由来する内部標準に対するGST−pi mRNAの発現量を定量化する方法が供されている。この方法には、前記試料から全長 mRNAを単離し、そして内部標準遺伝子のmRNA量に対するGST−pi mRNA量を測定することが含まれる。
【0018】
本発明のこの観点の実施態様において、GST−F(配列番号:1)又はGST−R(配列番号:2)の配列及び実質的にそれらと同一の配列、を有するオリゴヌクレオチドプライマーが提供されている。本発明は、配列番号:1もしくは配列番号:2もしくはそれらの相補体に対してストリンジェント条件下でハイブリダイズする配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーをも提供する。
【0019】
本発明の更なる他の観点において、患者に対する化学療法を決定するための方法であって、固定化及びパラフィン包埋(FPE)された腫瘍試料からRNAを単離し;当該試料中のGST−piの遺伝子発現レベルを測定し;当該試料中でのGST−pi遺伝子の発現レベルをGST−pi遺伝子に関する所定の閾値レベルと比較し;そしてGST−pi遺伝子の発現レベルと所定の閾値レベルとを比較した結果に基づき化学療法を決定する、ことを含んで成る方法を供する。
【0020】
本発明は更に、TaqMan(登録商標)技術を用いて分析された組織試料における、内部標準に対する補正されていないGST−piの遺伝子の発現(UGE)レベルを、プレTaqMan(登録商標)技術によって分析された試料に由来する内部標準に対する既知のGST−pi発現レベルへと正規化する方法にも関連する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
発明の詳細な説明
本発明は、ある意味では、GST−pi mRNAの量がDNAプラチナ化薬剤に対する感度の増加と関連があることの発見に属する。GST−pi mRNAを高いレベルで発現する腫瘍は、白金ベースの化学療法に対して感受性であるようだと考えられている。それとは反対に、GST−pi mRNAを低い量で発現する腫瘍は、白金ベースの化学療法に対して非感受性であるようだ。患者の、腫瘍GST−pi mRNAの相対的な発現レベルは、それを所定の閾値発現レベルと比較することによって判断されている。DNA白金化薬剤に対するかかる感受性又はその欠如は、患者の生存率によって特定されている。
【0022】
本発明は、固定化及びパラフィン包埋(FPE)された試料中において、内部標準の遺伝子発現に対するGST−pi mRNA発現の量を定量化する方法に関連する。本発明者は、固定化及び包埋された組織中でのGST−pi発現を正確に評価することを可能にするオリゴヌクレオチドプライマーを開発した。本発明のオリゴヌクレオチドプライマーの、GST−F(配列番号:1)、GST−R(配列番号:2)、又は実質的にそれらと同一のオリゴヌクレオチドプライマーは、好適には固定化及びパラフィン包埋(FPE)された腫瘍試料から抽出したRNAと一緒に用いられている。ひいては、GST−pi遺伝子発現のこのような測定は、白金ベースの化学療法の予測のために用いられうる。
【0023】
本発明のこの実施態様には、第1番目に、FPE試料からRNAを抽出するための信頼性の高い方法が含まれる。そして第2番目には、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応を行うための1組のオリゴヌクレオチドプライマー、好適にはオリゴヌクレオチドプライマー対GST−F(配列番号:1)及びGST−R(配列番号:2)、又は実質的にそれらと同一のオリゴヌクレオチドを用いることによって、前記試料中のGST−pi mRNAの含量を測定する方法が含まれる。RNAは、FPE細胞のような試料からRNAを単離するための任意の方法によって、FPE細胞から抽出されている。その方法とは、現在は米国特許番号第6,248,535号の1999年12月20に提出された米国特許出願番号09/469,338(その全体は本明細書中に組み込まれている)に記載されたような方法である。
【0024】
本発明の方法は、患者に由来する全ての種類の組織に対して適用できうる。腫瘍組織の感度を試験するためには、腫瘍組織を調べることが好ましい。好適な実施態様において、腫瘍を獲得した患者に由来する正常な組織の一部も試験されている。
【0025】
本発明の方法は様々な種類の腫瘍に対して適用できうる。これにより、個体の「腫瘍発現プロファイル」を作成することが可能になる。これによって、GST−piの発現のレベルが個々の患者の試料において特定され、そして様々な化学療法に対する応答が予測される、好適には、本発明の方法は、固形腫瘍に対して、最も好ましくは食道噴門部腫瘍に対して適用されている。本発明のいくつかの実施態様を特定の種類の腫瘍に対して適用するためには、特定のGST−pi遺伝子発現と白金ベースの化学療法に対する臨床的耐性とを相関付けることを可能にするデ−タセットを適合させることによって、臨床耐性に対するGST−pi遺伝子の発現レベルの関係を確かめることが好ましい。
【0026】
「所定の閾値レベル」とは、本明細書中では、それを超えると腫瘍は白金ベースの化学療法に対して感受性である様だということが分かるGST−piの発現レベルである。この閾値レベルに満たない発現レベルは、白金ベースの化学療法に対して非感受性の腫瘍において確認されるようだ。GST−pi:β−アクチンの比率として表された、GST−piの補正された相対的な発現の範囲は、白金ベースの化学療法に対して反応する腫瘍においては約1.0×10-3を超える範囲である。白金ベースの化学療法に対して反応しない腫瘍は、GST−pi:β−アクチンの比率が約1.0×10-3未満の相対的発現を有する(図1)。しかし、本発明は内部標準遺伝子としてβ−アクチンを使用することに限定されてはいない。
【0027】
本発明のこの実施態様の方法を行う場合、腫瘍細胞は患者から単離されているのが好ましい。固形もしくはリンパ腫瘍又はそれらの部分は、外科的に患者から切除されているかあるいは通常の生検によって獲得されている。凍結試料又は新鮮試料から単離したRNAは、例えば、当業界における典型的な任意の方法によって細胞から抽出されている。Sombrook、Fisher及びManiatis、Molecular Cloning、a laboratory manual、(第2版)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York、(1989年)。抽出方法の間にRNAが分解するのを避けるための注意が払われるのが好ましい。
【0028】
しかし、生検後、患者から獲得した組織は固定化される。通常は、例えば、ホルマリン(ホルムアルデヒド)又はグルタルアルデヒドによって、あるいはアルコールに浸すことによって固定化される。往々にして、固定化された生物試料は脱水され、そしてパラフィン又は他の当業者に周知の固相支持体中に包埋される。かかる固相支持体は、有機溶媒などで除去可能であると考えられ、保存された組織がその後、再水和可能になる。
【0029】
RNAはFPE細胞から、1999年、12月20日に提出された米国特許出願第09/469,338(その全体を本明細書中で参照として組み込まれている)に記載されたような任意の方法によって、抽出されている。固定化及びパラフィン包埋(FPE)された組織試料とは、本明細書中で記載した場合、保存可能又はアーカイバル組織試料を意味する。RNAは、最初に脱パラフィン処理されているアーカイバル病理試料又は生検試料から単離されうる。模範的な脱パラフィン処理の方法には、パラフィン処理した試料を、例えば、キシレンなどの有機溶媒で洗浄することを伴う。脱パラフィン処理した試料を低級アルコールの水溶液で再水和できうる。適切な低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール及びブタノールなどが挙げられる。脱パラフィン処理した試料は、低級アルコール溶液などにより濃度を下げながら逐次洗浄することで再水和できうる。もう1つの方法は、試料の脱パラフィン処理と再水和を同時にする方法である。次いでRNAが前記試料から抽出される。
【0030】
RNA抽出のために、固定化された試料もしくは固定化及び脱パラフィン処理された試料は、機械、超音波もしくは他のホモジナイゼーション手段を用いることでホモジェナイズできうる。再水和された試料は、チオシアン酸グアニジン(イソシアン酸グアニジンとしても市販されている)などのカオトロピック剤を含んで成る水溶液中でホモジナイズされうる。ホモジナイズされた試料は約50℃〜約100℃の範囲の温度でカオトロピック溶液(グアニジニウム化合物などのカオトロピック剤を有効量含む)中で加熱される。好適なカオトロピック剤は、チオシアン酸グアニジンである。
【0031】
「カオトロピック剤の有効な濃度」とは、RNAが、パラフィン包埋された試料から、カオトロピック剤不在下で単離された場合の約10倍超の量で精製されるように選択されている。カオトロピック剤としては:グアニジニウム化合物、尿素、ホルムアミド、ヨウ化カリウム、チオシアン酸カリウム及び類似の化合物が挙げられる。本発明の方法のための好適なカオトロピック剤は、グアニジウム化合物であり、イソシアン酸グアニジウム(チオシアン酸グアニジンとしても市販されている)及び塩酸グアニジンなどが挙げられる。多くの陰イオン性対イオンは有用であり、そして当業者はかかる適切な陰イオンを伴う多くのグアニジウム塩を調製できる。本発明中で用いられたグアニジニウム溶液の有効な濃度とは一般に、約1〜約5Mの範囲の濃度であり、約4Mの値が好ましい。もしRNAが既に溶液中に存在しているなら、グアニジニウム溶液は、試料中で到達する最終濃度が約1〜約5Mの範囲にあるような、より高い濃度のものであって良い。グアニジニウム溶液はトリス−HClなどの適切な生化学バッファーにより、好適には約3〜約6、更に好適には、約4のpHに緩衝化されている。カオトロピック溶液は、ジチオトレイトール(DTT)及びβ−メルカプトエタノール(BME)などの還元剤をも含みうる。カオトロピック剤はRNAse阻害物質をも含みうる。
【0032】
ホモジナイズされた試料は、約50℃〜約100℃の範囲の温度へとカオトロピック溶液(グアニジニウム化合物などのカオトロピック剤を有効量含む)中で加熱されうる。好適なカオトロピック剤は、チオシアン酸グアニジンである。
【0033】
次いで、RNAが溶液から、例えば、フェノールクロロホルム抽出、イオン交換クロマトグラフィー又はサイズ排除クロマトグラフィーによって回収されている。次いで、RNAは更に、抽出技術、電気泳動、クロマトグラフィー、沈降又は他の適切な技術を用いることで精製されうる。
【0034】
新鮮、凍結又は固定化した試料から精製した全長 mRNAからのGST−pi mRNAの定量は、好適には、当業界で常用の逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)などを用いることで行われる。GST−pi mRNAを定量化するための他の方法には、例えば、多重PCRにおいて有用な分子標識及び他の標識したプローブの使用が挙げられる。加えて、本発明は、Invader(登録商標)アッセイ(Third Wave Technologies, Inc.)のものに類似する蛍光標識したプローブなどを用いるPCRフリ−システムを使用してGST−pi mRNAを定量する方法を考える。最も好適には、GST−pi cDNA及び内部標準もしくはハウスキ−ピング遺伝子(β−アクチンなど)の定量は、蛍光に基づくリアルタイム検出法(ABI PRISM 7770又は7900配列検出システム〔TaqMan(登録商標)〕、Applied Biosystems、Foster City、CA.)もしくはHeidら(Genome Res.1996; vol.6:pp.986〜994)及びGibsonら(Genome Res.1996;vol.6:pp.995〜1001)によって記載された類似のシステムを用いて行われている。ABI7700(TaqMan(登録商標)装置)の出力は、Ct又は「サイクル閾値(cycle threshold)」で表される。TaqMan(登録商標)システムにより、試料中でより多くの数の標的分子を有する非常に良く発現した遺伝子は、相対発現率が低い遺伝子(標的分子がかなり少ない(高Ct))よりもずっと少ないPCRサイクル(低Ct)でシグナルを生じる。
【0035】
本明細書中で用いた場合、「ハウスキーピング」もしくは「内部標準」遺伝子とは、恒常的もしくは全体的に発現しており、それの存在によりGST−pi mRNAレベルを評価することが可能になる遺伝子である。かかる評価は、遺伝子の転写の全体的な恒常レベルを測定すること及びRNA回収率の変動を調節することを含んで成る。「ハウスキ−ピング」もしくは「内部標準」遺伝子には、それらに限定はされないが、サイクロフィリン遺伝子、β−アクチン遺伝子、トランスフェリンレセプタ−遺伝子、GAPDH遺伝子などが挙げられる。最も好ましくは、内部標準遺伝子はEadsら、Cancer Research 1999;vol.59:pp.2302〜2306に記載されたβ−アクチン遺伝子である。
【0036】
RNA回収率の変動を調節するためには、「較正RNA」を使用することが必要である。前記「較正RNA」とは、予め正確に定量化されたコントロ−ルRNAの全ての使用可能なソースを意味する。好適には、成人結腸病人完全長RNA(Cat. No.#735263)(Stratagen)が用いられている。
【0037】
「補正されていない遺伝子発現(UGE)」とは、本明細書中で用いられた場合、Taq Man(登録商標)装置によって生じた、内部標準遺伝子に対するGST−pi発現の数値的出力を意味する。UGEを測定するのに用いられた等式を例3に示しており、そして計算の例と共に図4に例示した。
【0038】
本発明の更なる観点は、Taq Man(登録商標)装置から得られた補正されていない遺伝子発現(UGE)値を、非Taq Man(登録商標)技術から導かれた「既知の相対的遺伝子発現」値で正規化する方法を供する。好適に、既知の非Taq Man(登録商標)から導かれた相対的GST−pi:β−アクチン発現の値は、組織試料からTaq Man(登録商標)により誘導されたGST−pi UGE値で正規化されている。
【0039】
「補正された相対的GST−pi発現」とは、本明細書中で用いられた場合、正規化されたGST−pi発現を意味し、それによって、UGEは、GST−pi特異的補正係数(KGST-pi)を掛けられ、内部標準遺伝子に対する既知の範囲のGST−pi発現レベルと比較できうる値がもたらされる。例3及び図4はこれらの計算の詳細を例示している。これらの数値により、特定の試料の「補正された相対的GST−pi発現」が「所定の閾値」レベルを超えて落ち着くかあるいはそのレベルより低く落ち着くのか否かを特定することが可能になる。β−アクチンレベルに対する、補正された相対的GST−pi発現レベルの所定の閾値レベルは、約1.0×10-3である。GST−pi、内部標準β−アクチン及び較正成人結腸病人完全長RNA(Cat. No.#735263)(Stratagene)、に対して特異的なKGST-piは、7.28×10-3である。
【0040】
「既知の相対的遺伝子発現」値は、予め分析された組織試料から導かれており、そして恒常的に発現している内部標準遺伝子(β−アクチン、GAPDHなど)に対する標的遺伝子のRT−PCRシグナルの比率に基づいている。好適に、かかる組織試料は、ホルマリン固定化及びパラフィンで包埋(FPE)された試料であり、RNAは、例1及び1999年12月20日に提出され現在米国特許第6,248,535号の、米国特許出願09/469,338(本明細書中にその全体を参照として組み込まれている)に記載されているプロトコールに従いそのような試料から抽出されている。内部標準に対する遺伝子発現を定量化するために、当業界で公知の標準定量的RT−PCR技術が用いられている。プレTaq Man(登録商標)技術PCR反応は、サイクル数(即ち30)を一定にして動かされ、そして各試料についての指標値(endpoint value)が報じられる。次いで、これらの値は、β−アクチン発現に対するGST−pi発現の比率として報じられる。Reedらに対する米国特許第5,705,336を参照のこと。
【0041】
KGST-piは、β−アクチン以外及び/又は較正RNA(成人結腸病人完全長RNA(Cat. No#735263)(Stratagene)とは異なる)以外の内部標準遺伝子に関して決定されて良い。そのようにするために、当業者は、特定の内部標準遺伝子発現レベルに対するGST−pi発現レベル(即ち、「既知の相対的遺伝子発現」)が既に決定されている組織試料に対して、内部標準遺伝子及び較正RNAを両方とも較正をしなければならない。好適に、かかる試料はホルマリン固定化及びパラフィン包埋(FPE)された試料であり、次いで、RNAは、例1及び1999年12月20日に提出され現在米国特許第6,248,535号の、米国特許出願09/469,338(本明細書中にその全体を参照として組み込まれている)に記載されている方法によりそのような試料から抽出されている。かかる測定は、当業界で周知の、標準的なプレTaq Man(登録商標)定量的RT−PCRを用いて行うことができうる。かかる測定により、かかる試料は、例3に記載の、新たなる内部標準及び/又は較正RNAに対して特異的な新たなるKGST-piを決定することにおいて有用なGST−piの「既知の相対的遺伝子発現」レベルを有する。
【0042】
本発明の方法は、様々な組織及び様々な種類の腫瘍に対して適用可能であり、そして患者の臨床治療の評価のために用いることができ、そして例えば、胸部、頭部及び頸部、肺、食道、結腸直腸などの各種ガンを診断する又は予測する道具として用いることができる。好適な実施態様において、本発明の方法は、食道噴門部腺ガンの予測に適用されている。
【0043】
予備化学療法腫瘍生検は、通常、異種組織を全体的に非常に僅かな量でのみ含む固定化パラフィン包埋(FPE)組織の場合のみ使用可能である。かかるFPE試料は、顕微解剖するのが容易であり、従ってGST−pi遺伝子発現が、間質組織で汚染されていない腫瘍組織中で測定されうる。加えて、生検組織試料内の間質組織と腫瘍組織との比較ができうる。その理由は、かかる試料は往々にして両方の種類の組織を含むからである。
【0044】
一般に、GST−pi遺伝子の領域に隣接する全てのオリゴヌクレオチドの組が本発明の方法を実行するために用いられて良い。本発明において用いるための、ストリンジェント条件下でGST−pi遺伝子の領域に対してハイブリダイズするプライマーは、20〜1000bp、好適には50〜100bp、最も好適には100bp未満の産物を増幅するだろう。
【0045】
本発明は、特異的オリゴヌクレオチドプライマー対及び実質的にそれらと同一なオリゴヌクレオチドプライマーを提供し、それにより特に、FPE組織中でのGST−pi発現の正確な評価が可能になる。好適にリゴヌクレオチドプライマーは、(本明細書中では1組のGSTオリゴヌクレオチドプライマーともよばれる)GST−F(配列番号:1)及びGST−R(配列番号:2)、及び実質的にそれらと同一のオリゴヌクレオチドプライマーである。オリゴヌクレオチドプライマーのGST−F(配列番号:1)及びGST−R(配列番号:2)は、mRNAを単離するための任意の方法によってFPE細胞から抽出したRNAを用いて、GST−pi mRNAレベルの測定を行うのに特に有効である。mRNAを単離するための任意の方法とは、1999年12月20日に提出され現在米国特許第6,248,535号の、米国特許出願09/469,338(本明細書中にその全体を参照として組み込まれている)に記載されている方法などである。
【0046】
「実質的に同一」とは、核酸に関連して本明細書中で用いられる場合、ストリジェント条件下で標的、及び核酸領域、又は相補的な鎖に対してもハイブリダイズし、それらが適切に並べられ、比較された場合、核酸の適当な挿入及び欠失を伴う、前記ヌクレオチドの約60%以上、典型的には約70%以上、一層典型的には約80%以上、通常は約90%以上、そして一層通常にはヌクレオチドの約95〜98%以上が同じことを意味する。特異性を全く欠く場合よりもハイブリダイゼーションが一層選択的である場合に、当該はハイブリダイゼーションが有効である。Kanehisa、Nucleic Acid Res.、vol.12:pp.203〜213(1984年)を参照のこと。
【0047】
本発明は、ストリンジェント条件下(本明細書中で規定した)でオリゴヌクレオチドプライマー配列の、GST−F(配列番号:1)、その相補体又はGST−R(配列番号:2)もしくはその相補体、の全部もしくは一部分に対してハイブリダイズする、実質的に同一なオリゴヌクレオチドを含む。
【0048】
ストリンジェントハイブリダイゼ−ション条件下では、非常に相補的な、即ち実質的に類似する核酸配列のみがハイブリダイズする。好適には、かかる条件により、20個の連続するヌクレオチドのうち4つ以上のミスマッチを有する核酸、一層好適には、20個の連続するヌクレオチドのうち2つ以上のミスマッチを有する核酸、最も好適には、20個の連続するヌクレオチドのうち1つ以上ミスマッチを有する核酸がハイブリダイズすることが予防される。
【0049】
核酸のハイブリダイズする部分は、典型的に、10ヌクレオチド以上(15など)の長さである。ハイブリダイズする核酸のハイブリダイズする部分は、約80%以上、好適には約95%以上、又は最も好適には約98%以上がオリゴヌクレオチドプライマーGST−F(配列番号:1)、その相補体もしくはGST−R(配列番号:2)もしくはその相補体の配列の一部もしくは全ての配列に対して同一である。
【0050】
ストリンジェント条件下での核酸試料に対するオリゴヌクレオチドプライマーのハイブリダイゼーションは以下のように規定されている。二本鎖又はハイブリッド核酸の安定性は融解温度(Tm)として表され、この温度でプロ−ブが標的DNAから解離する。この融解温度は、所要のストリンジェント条件を規定するために用いられている。プローブに対して、同一ではなく、実質的に同一な配列がもしも同定されれば、次いでそれは、特定の濃度の塩(SSC又はSSPE)により相同ハイブリダイゼーションのみが起こる最低温度を最初に設定するために有用である。ひいては、1%のミスマッチはTmを1℃下げ、従ってハイブリダイゼーション反応の最後の洗いの温度が下がる(例えば、もしプロ−ブと95%超の同一性を有する配列が求められているならば、最後の洗いの温度は5℃下がる)。実際には、Tmの変化は、1%のミスマッチにつき0.5〜1.5℃でありうる。
【0051】
ストリンジェント条件には、5×SSC/Denhart溶液/1.0%SDS中68℃でハイブリダイズさせること、及び0.2×SSC/0.1%SDS中室温で洗いをすることが含まれる。穏和なストリンジェント条件には、3×SSC中42℃で洗いをすることが含まれる。塩濃度及び温度のパラメーターは、プライマーと標的核酸との間での同一性の至適レベルを得るために変動する。かかる条件に関する更なる指針は当業界において容易に入手可能である。例えば、Sambrook、Fischer及びManiatis、Moleular Cloning、a laboratory manual、(第2版)、Cold Spring Harbor Laboratry Press、New York(1989年)及びF.M.Ausubelら著、Current Protocols in Molecular Biology、Jhon Wiley 及びSons(1994年)が挙げられる。
【0052】
本明細書中で開示されているオリゴヌクレオオチドプライマーにより、固定化もしくは固定化及びパラフィン包埋された組織、並びに凍結されたもしくは新鮮組織におけるGST−pi遺伝子の発現を正確に評価することが可能になる。これは、FPE試料に由来するRNAは、新鮮組織もしくは凍結された組織のものに比べて一層断片化されている事実に関係ない。従って、本発明の方法は、FPE組織におけるGST−pi発現レベルの評価をすることにおいて用いるために適切であり、ここで、従来は、固定化された組織を用いてGST−pi遺伝子の発現を評価する有効な方法はない。
【0053】
腫瘍中で発現しているGST−pi mRNAの量を測定することから、当業者は、特に、遺伝毒性、好適には白金ベースの化学療法、又は類似の種類のDNA損傷作用を誘導する化学療法に対する、腫瘍の臨床的耐性に関する予測を立てることができうる。白金ベースの化学療法は、DNAの「かさ付加物(bulky adduct)」を生じる。この場合、一次効果とは二重らせんの三次構造を歪ませることである。かかる化合物は単独でかあるいはゲムシタビン(Gem)又は5−フルオロウラシル(5−FU)などの他の化学療法剤と一緒に投与される。
【0054】
多くの化合物が、白金ベースの化学療法剤と共に通常与えられている。例えば、BEP(ブレオマイシン、エトポシド、シスプラチン)が睾丸ガンの治療ために用いられており、MVAC(メトトレキサート、ビンブラスチン、ドキソルブシン、シスプラチン)が膀胱ガンの治療ために用いられており、MVP(マイトマイシンC、ビンブラスチン、シスプラチン)が非小細胞肺ガンの治療のために用いられている。多くの研究により白金含有薬剤との間での相互作用が証明されている。例えば、白金ベースの化学療法剤中に潜在的に含まれている多くの薬物に関して、治療薬相乗作用が報じられている。このことに関する最近の参考文献の非常に短いリストには以下の文献が含まれる。Okamotoら、Urology2001;vol.57:pp.188〜192;Tanakaら、Anticancer Research 2001;vol.21:pp313〜315;Slamonら、Seminers in Oncology 2001;vol28:pp.13〜19;Lidorら、Journal of Clinical Investigation 1993; vol.92:pp.2440〜2447;Leopoldら、NCI Monographs1987;pp.99〜104;Ohtaら、Cancer Letters2001;vol.162:pp.39〜48;van Moorselら、British Journal of Cancer 1999;vol.80:pp.981〜990。
【0055】
白金ベースの遺伝毒性化学療法剤は、共有結合DNA付加物を形成する重金属配位化合物を含んで成る。一般に、これらの重金属化合物は、DNAと共有結合し適切な部分において、シス−1,2−ストランド内ジヌクレオチド付加物を形成する。一般に、これらの種類は、シス−ジアミンジクロロプラチナ(II)(シスプラチン)として表されており、そしてシス−ジアミン−(1,1−シクロブタンジカルボキシラト)プラチナ(II)(カルボプラチン)、シス−ジアミノ−(1,2−シクロヘキシル)ジクロロプラチナ(II)、及びシス−(1,2−エチレンジアミン)ジクロロプラチナ(II)が挙げられる。白金第一薬剤には、前述の代表的な化合物の類似物又は誘導体が挙げられる。
【0056】
現在までのところ、白金配位化合物によって処理することができる腫瘍には、睾丸の、子宮内膜の、子宮頸部の、胃の、扁平上皮細胞の、副腎皮質の腫瘍並びに髄芽腫及び神経芽細胞腫に伴う小細胞肺ガンが挙げられる。トランス−ジアミンジクロロプラチナ(II)(トランス−DDP)は臨床上実用性がない。何故なら、それによる、DNA反転が急速に修復されると考えられているからだ。本明細書中で、化学療法剤としてトランス−DDPを使用することにより、非選定の細胞における毒性が低く、そして選定の細胞における毒性が比較的高い化合物が提供されるだろう。好適な実施態様において、白金化合物はシスプラチンである。
【0057】
従って、記載された本発明は以下に供された実験的実施例によって本発明の実施が例示されている。当業者は、実施例において用いられた材料と方法は様々な方法で変更されることに気付くだろう。かかる変更は本発明の範囲内にあると考えられる。
【実施例】
【0058】
実施例1
FPE組織からのRNAの単離
RNAをパラフィン包埋した組織から以下の一般的な手順によって抽出した。
【0059】
A.脱パラフィン処理及び切片の水和
(1)切片を約10μMずつ1.5mLのプラスチック遠心管中に置く。
【0060】
(2)600μLのキシレンを添加し、そしてその混合物を室温(おおよそ20〜25℃)で10分に渡り激しく振る。
【0061】
(3)試料を室温で約7分に渡りベンチトップ型遠心器で最大速度(約10−20,000g)で遠心する。
【0062】
(4)パラフィンの大部分が溶けるまで段階2及び3を繰り返す。もともとの試料部分に含まれているパラフィンの量によるが、通常は2回以上行う必要がある。
【0063】
(5)前記キシレン溶液を低級アルコール、好適には100%エタノール(約600μL)と共に約3分に渡り激しく振ることによって除去する。
【0064】
(6)チューブを段階(3)のようにして約7分に渡り遠心する。上清をデカンテーションして捨てる。ペレットが白くなる。
【0065】
(7)一層希薄なエタノール溶液で逐次:最初は約95%エタノール、次いで約80%エタノールで、そして最後には約70%エタノールで、段階5及び6を繰り返す。
【0066】
(8)試料を段階(3)のようにして室温で約7分に渡り遠心する。上清を捨てペレットを室温で約5分に渡り乾燥させる。
【0067】
B.フェノール−クロロホルムによるRNAの単離
(1)0.5%サルコシンを含む400μLのイソシアン酸グアニジン溶液及び8μLのジチオトレイトールを添加する。
【0068】
(2)次いで、溶液を組織ホモジナイザー(Ultra−Turrax、IKA−Works、Inc Wilmington、NC)で約2〜3分に渡り、徐々に速度を低速(速度1)〜高速(速度5)にしてホモジナイズする。
【0069】
(3)次いで、試料を約95℃で約5〜20分に渡り加熱する。95℃に加熱する前に試料が入っているチューブのキャップに微小なゲージ針を挿すことが好ましい。代わりに、キャップにはプラスチッククランプをつけるかあるいは実験室用フィルムを付けても良い。
【0070】
(4)次いで、試料の抽出を50μLの2M酢酸ナトリウム(pH4)及び600μLのフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(10:1.93:0.036)(18mLのフェノールと、イソアミルアルコール:クロロホルム(1:49)溶液3.6mLを混合することによって新たに調製した)で行う。この溶液を10秒間激しく振り、次いで、氷上に15分に渡り置く。
【0071】
(5)溶液を約7分に渡り最大速度で遠心する。上相(水相)を新しいチューブに移す。
【0072】
(6)RNAを約10μLのグリコーゲン及び400μLのイソプロパノールで30分に渡り−20℃で沈殿させる。
【0073】
(7)RNAのペレット化を、ベンチトップ型の遠心器で最大速度で約7分に渡る遠心によって行い;上清をデカンテーションして捨てる;そしてペレットを約500μLの約70〜75%エタノールで洗う。
【0074】
(8)試料を再度、7分に渡り最大速度で遠心する。上清をデカンテーションしてペレットを空気乾燥する。次いで更なる実験のためにペレットを適切なバッファー(pI50の5mMトリスクロリド、pH8.0)中に溶かす。
【0075】
実施例2
mRNAの逆転写及びPCR
逆転写:RNAを、顕微解剖した又は顕微解剖しなかったホルマリン固定化パラフィン包埋(FPE)組織から、実施例1及び米国特許出願09/469,338(1999年12月20日に提出され現在米国特許第6,248,535号、本明細書中にその全体は参照として組み込まれている)中に従来記載されたようにして単離した。エタノール及び遠心で沈殿させた後、RNAペレットを50μlの5mMトリス/Cl(pH8.0)中に溶かした。M−MLV逆転写酵素がオリゴヌクレオチドプライマー(一本鎖RNA又はDNA鋳型とデオキシヌクレオチドの存在下でハイブリダイズする)を伸長し、相補鎖を生成する。生成されたRNAをランダムヘキサマー及びM−MLV逆転写酵素(Life technologies)で逆転写した。25μlのRNA溶液と25.5μlの「逆転写混合物」(下を参照のこと)とを混合することによって逆転写を達成した。反応物をサーマルサイクラー、26℃で8分(ランダムヘキサマーをRNAに対して結合させるため)、42℃で45分(M−MLV逆転写酵素反応のため)及び95℃で5分(DNAseの熱不活性化のため)中に置いた。
【0076】
「逆転写混合物」は、10μlの5×バッファー(250mMのトリス−HCl、pH8.3、375mMのKCl、15mMのMgCl2)、0.5μlのランダムヘキサマー(O.D.50、550μlの10mMトリス−HCl、pH7.5に溶かした)、5μlの10mM dNTP(dATP、dGTP、dCTP及びdTTP)、5μlの0.1M DDT、1.25μlのBSA(10mMのトリス−HCl、pH7.5中3mg/ml)、1.25μlのRNA Guard (RNAse阻害物質)24,800U/ml(Porcine#27−0186、Amersham Pharmacia)及び2.5μlのMMLV 200U/ul(Life Tech Cat.#28025−02)から成る。
【0077】
各反応成分の最終濃度は:50mMのトリス−HCl(pH8.3)、75mMのKCl、3mMのMgCl2、1.0mM のdNTP、1.0mMのDDT、0.00375mg/mlのBSA、0.62U/ulのRNA Guard及び10U/μlのMMLVである。
【0078】
mRNA発現のPCRによる定量化
GST−pi cDNA及び内部標準又はハウスキーピング遺伝子(β−アクチンなど)cDNAの定量化を、蛍光に基づくリアルタイム検出法(ABI PRISM7700又は7900配列検出システム[Taq Man(登録商標)]、Applied Biosystemes, Foster City, CA)を用い、Heidら(Genome Res. 1996;vol.6:pp.986〜994);Gibsonら(Genome Res. 1996;vol.6:pp.995〜1001)に記載されたようにして行った。一言でいえば、このような方法は、二重標識した蛍光発生Taq Man(登録商標)オリゴヌクレオチドプローブ(GST−219T(配列番号:3)、Tm=69℃)を用いる。このプローブは正方向及び逆方向プライマーに特異的にアニールする。反応混合物が入っているフタをしたウェル内をレーザー刺激することにより、PCR伸長中にDNAポリメラーゼの5´→3´ヌクレアーゼ活性によってプローブが解裂され、5´レポーター色素(6FAM)の放出が生じるまで、3´クエンチャー色素(TAMRA)の放射が生じる。このように、アンプリコンの生産は、蛍光シグナルの放射を生じさせ、それはTaq Man(登録商標)のCCD(電荷結合素子)検出カメラによって検出され、そしてPCR反応の対数期の閾値サイクルで生産されたシグナルの量は純粋に、注目の配列の最初のコピー数を反映する。注目の配列の最初のコピー数と内部標準遺伝子の最初のコピー数とを比較することは、相対遺伝子発現レベルを供する。Taq Man(登録商標)解析により、2つの絶対測定値同士の比率(注目の遺伝子/内部標準遺伝子)として表される値が得られる。
【0079】
上記のようにして調製したcDNA、600nMの各オリゴヌクレオチドプライマー(GST−F(配列番号:1)、Tm=59℃及びGST−R(配列番号:2)、Tm=59℃)、200nMのTaq Man(登録商標)プローブ(配列番号:3)、5UのAmpli Taq Goldポリメラーゼ、200μMの各dATP、dCTP、dGTP、400μMのdTTP、5.5mMのMgCl2及び参照色素を含有する1×Taq Man(登録商標)バッファー、を含む0.5μlの逆転写反応物からなるPCR反応混合物を、最終体積25μl以下にする(全ての試薬はApplied Biosystems、Foster City, CA製である)。サイクル条件は、95℃で10分、しかる後に95℃で15秒及び60℃で1分の45サイクルであった。内部標準遺伝子のβ−アクチンを定量化するのに用いたオリゴヌクレオチドは、β−アクチンTaq Man(登録商標)プローブ(配列番号:4)、β−アクチン−592F(配列番号:5)及びβアクチン−651R(配列番号:6)であった。
【0080】
上記の反応中で用いた前記オリゴヌクレオチドプライマーGST−F(配列番号:1)及びGST−R(配列番号:2)は、72bpの産物を増幅するだろう。
【0081】
実施例3
GST−piに関する補正されていない遺伝子発現の決定
二組の反応を並行して行う。即ち、「試験」反応及び「較正」反応である。GST−pi増幅反応及びβ−アクチン内部標準増幅反応は試験反応である。GST−pi及びβ−アクチン増幅反応を較正鋳型RNAに対して個別に行い、そしてそれらを較正反応と呼ぶ。Taq Man(登録商標)装置により4つの異なるサイクル閾値(Ct)が得られるだろう。それは即ち、試験反応に由来するCtGST-pi及びCtβ-アクチン並びに較正反応に由来するCtGST-pi及Ctβ-アクチンである。2つの反応に関するCt値の違いを以下の等式を用いて特定した。
【数1】

【0082】
次の段階は、以下の式、2の−ΔCt乗を伴う。
【数2】

【0083】
次いで、Taq Man(登録商標)装置からGST−piに関する補正されていない遺伝子発現を得るために、以下の計算を行う。
【数3】

【0084】
既知の相対GST発現レベルでUGEを正規化する
正規化計算にはUGEと、GST−pi及び特定の較正RNA対して特異的な補正係数(KGST-pi)とを掛けることが必要である。補正係数(KGST-pi)を、全ての内部標準遺伝子及び予め正確に定量化しておいた全ての較正RNAについて決定できうる。好適には、内部標準遺伝子のβ−アクチン及び予め正確に定量化しておいた較正成人結腸病人完全長RNA(Cat.No.#735263)(Stratagene)を用いている。これらの反応物の補正係数KGST-piは7.28×10-3である。
【0085】
正規化をΔCt法(Applied Biosystems、Taq Man(登録商標)説明書の、User Bulletin #2に記載されているそして先に記載した)により達成している。この手順を行うために、6つの異なる試験組織のUGEを、GST−pi発現に関して上記Taq Man(登録商標)を用いて分析した。内部標準遺伝子のβ−アクチン及び較正RNA、成人結腸病人完全長RNA(Cat.No.#735263)(Stratagene)を用いた。
【0086】
各試料14−1、14−5、14−8、13−24、13−25の既知の相対GST−pi発現レベルをその対応するTaq Man(登録商標)により誘導されたUGEで割って、平均化されていない補正係数Kを得た。
【数4】

【0087】
次に、全てのK値を平均化し、GST−pi、成人結腸病人完全長RNA(Cat.No.#735263)(Stratagene)に対して特異的な単一のKGST-pi補正係数を較正RNA及びβ−アクチンから決定する。
【0088】
従って、補正された相対GST−pi発現を、未知の試料において、プレTaq Man(登録商標)GST−pi発現研究と矛盾ない規模で決定するには、当業者は、Taq Man(登録商標)装置から導かれた補正されていない発現データとKGST-pi特異的補正係数とを単に掛けるだけで、同じ内部標準遺伝子と較正RNAを使用できる。
【数5】

【0089】
KGST-piは、任意の予め正確に定量化した較正RNA又は内部標準遺伝子を用いることで決定されて良い。以後、上記の方法のようにして、予め正確に定量化したRNAのソースを、既知の相対的GST−pi発現レベルを有する試料に対して較正することができうる。あるいは、予め較正した、成人結腸病人完全長RNA(Cat.No.#735263)(Stratagene)などの較正RNAに対して較正できうる。
【0090】
例えば、その後もしKGST-piが異なる内部標準遺伝子及び/又は異なる較正RNAについて決定されれば、当業者は、特定の内部標準遺伝子発現レベルに対するGST−pi発現レベルが既に決定されている試料に対して、内部標準遺伝子及び較正RNAを両方とも較正をしなければならない。かかる決定は、当業界で周知の標準的なプレTaq Man(登録商標)定量的RT−PCR技術を用いて決定できうる。これらの試料に関する既知の発現レベルをそれらの対応するUGEレベルで割り、その試料に関するKを決定できるだろう。次いで、K値を既知の試料の数により平均化し、異なる内部標準遺伝子及び/又は較正RNAに対して特異的な新たなるKGST-piを決定できるだろう。
【0091】
実施例4
GST−pi発現は生存性と関連する
顕微解剖したFPE前処理腫瘍組織から完全長mRNAを単離した。そして補正した相対GST−pi発現を実施例2及び3に記載のようにして定量的RT−PCRを用い測定した。かかる試料からRNAを単離するための他の方法は、米国特許出願09/469,338(1999年12月20日に提出され現在米国特許第6,248,535号、本明細書中にその全体は参照として組み込まれている)中に従来記載されている。
【0092】
遺伝子発現の値は、適切な統計的方法を用いることで臨床結果と一致した。生存率をKaplan及びMeier(Kaplanら、J AM Stat Assoc. 1958年;vol.53:pp.187〜220)に従い見積もった。単変量解析をログランク(log−rank)検定(Mentel、Chemother Rep 1996年;vol.50:pp.163〜170)で行った。有意なレベルをP<0.05に設定した。報じられたすべてのP値は、両側検定に基づいている。
【0093】
GST−pi mRNA発現解析をするために、31人の患者に由来する、全部で31個の食道又は胃食道接合部(食道噴門部)腺ガン腫瘍標本を分析した。30人(97%)の患者は男性で、年齢の中央値は64歳(平均年齢が60.9歳、年齢幅36〜78歳)であった。この集団の民族的背景は、白人29人、アジア人1人、及びアフリカ系アメリカ人1人であった。TNM臨床病期基準を用いて、2人(6.5%)の患者がステージIの疾患、22人(71%)の患者がステージIIの疾患、1人(3.2%)の患者がステージIII の疾患、及び6人(19.4%)の患者がステージIVの疾患を有していることが分かった。全体生存率を全ての患者に関して評価可能であった。全体的な生存率の中央値は、17.17月(平均24.8月、3.8〜156.7月の幅)であった。12人(38.7%)の患者が死亡し、そして19人(61.3%)の患者が生存した。
【0094】
治療は全ての患者に5−FUを5日に渡り800mg/m2/日の2サイクルに渡り与えた又は5−FUを4日に渡り1000mg/m2/日に加え75mg/m2のシスプラチンと同時に45Gy放射物を加えて与え、しかる後に手術により切除したことからなる。研究に入るために、各患者は化学療法及び放射線療法を中止し、全体的に完全に切除を受け、そして手術後30日以上生存した。
【0095】
腫瘍ステージの影響を、TNMステージ階層のデータを蓄積することによって評価した。生存曲線及びログランク統計をステージII及びステージIVの疾患の患者においてのみ作成した。何故なら、他のステージの患者は非常に少数であったからである。補正した相対的GST−pi mRNA発現レベルの中央値は1.0×10-3(全ての値はGST−pi×10-3/β−アクチンであり、平均0.51×10-3、幅0.0〜16.1×10-3)であった。GST−pi値による生存率解析で示されたことは、腫瘍が中央値よりも高い相対GST−pi遺伝子発現レベルを有する患者は、中央値(ログランク検定、P=0.0073)より低いレベルの患者に比べて統計的に有意な延命効果を有したことである。従って、中央値を補正した相対GST−pi mRNA発現レベルを閾値とした。関係を図1にグラフで示している。この関連性は病期とは無関係である。図2及び3は、もし解析がステージIIの疾患又はステージIVの疾患に限定されているならば、この関係が存在することを示している。
【0096】
GST−pi mRNA発現は、シスプラチン含有療法で治療されている食道噴門部腺ガンの患者のための有意な予測因子である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】5−FU及びシスプラチンで治療されている食道噴門部腺ガン患者の、生存率とGST−pi 補正後相対mRNA発現との関係を示している。中央値/閾値よりも高いGST−pi値を有する患者は、中央値/閾値よりGST−pi値が低い値の患者に比べて延命効果を有した。打ち切り値(censored data)に印をつけている。
【図2】TNMステージII食道噴門部腺ガンの患者に限定した生存率解析のグラフを示す。
【図3】TNMステージIV食道噴門部腺ガンの患者に限定した生存率解析のグラフを示す。
【図4】内部標準遺伝子に対するGST−pi発現をどのようにして計算するのか例示している図表である。この図表には2つの試験試料(未知の1及び2)で得たデータが含まれ、そしてどのようにして補正されていない遺伝子発現データ(UGE)を決定するのかを示している。この図表はTaq Man(登録商標)装置で得られたUGEをどのようにして既知の相対GST−pi値(プレTaq Man(登録商標)技術で決定した)で正規化するのかということも例示している。このことは、UGEに補正係数KGST-piを掛けることによって達成される。図中の内部標準遺伝子はβ−アクチンであり、そして較正RNAは、ヒト肝臓完全長RNA(Stratagene、Cat.#735017)である。
【図5】本発明中で用いたオリゴヌクレオチドプライマーを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の腫瘍を治療するための白金ベースの化学療法を決定するための方法であって:
(a) 前記腫瘍の組織試料を獲得して当該試料を固定化し、固定化された腫瘍試料を獲得し;
(b) 当該固定化された腫瘍試料からmRNAを単離し;
(c) 当該mRNAを、高ストリンジェント条件下でGST−pi遺伝子のある領域に対してハイブリダイズする1組のオリゴヌクレオチドプライマーを用いる増幅に委ね、増幅された試料を獲得し;
(d) 当該増幅した試料中のGST−pi mRNAの量を測定し;
(e) 段階(d)に由来するGST−pi mRNAの量を内部標準遺伝子のmRNAの量と比較し;そして
(f) 前記増幅された試料中のGST−pi mRNAの量及びGST−pi遺伝子発現に関する所定の閾値レベルに基づき、白金ベースの化学療法を決定する、
ことを含んで成る方法。
【請求項2】
前記1組のオリゴヌクレオチドプライマーが、配列番号:1もしくはそれに対して実質的に同一のオリゴヌクレオチドプラマーと配列番号:2もしくはそれに対して実質的に同一のオリゴヌクレオチドプラマーからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記腫瘍が非小細胞肺ガン(NSCLC)腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記GST−pi遺伝子発現の閾値レベルが、内部標準遺伝子発現レベルの約1.0×10-3倍である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
白金ベースの化学療法により腫瘍を治療する方法であって:
(a) 前記腫瘍の組織試料を獲得して当該試料を固定化し、固定化された腫瘍試料を獲得し;
(b) 当該固定化された腫瘍試料からmRNAを単離し;
(c) 当該mRNAを、ストリンジェント条件下でGST−pi遺伝子のある領域に対してハイブリダイズする1組のオリゴヌクレオチドプライマーを用いる増幅に委ね、増幅された試料を獲得し;
(d) 当該増幅された試料中のGST−pi mRNAの量を測定し;
(e) 段階(d)に由来するGST−pi mRNAの量を内部標準遺伝子のmRNAの量と比較し;
(f) GST−pi 遺伝子に関して測定された遺伝子発現レベルが所定の閾値を下回る場合に、細胞傷害性の薬剤を含んで成る白金ベースの化学療法を供する、
ことを含んで成る方法。
【請求項6】
前記腫瘍が食道噴門部腺ガン腫瘍である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞傷害性の薬剤が、5−FUもしくはシスプラチンもしくはそれらの組み合わせである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
固定化されたパラフィン包埋組織試料において、GST−pi発現レベルを測定するための方法であって:
(a) 前記組織試料を脱パラフィン処理し;脱パラフィン処理された試料を獲得し;
(b) 当該脱パラフィン処理された試料から、有効な量のカオトロピック剤の存在下でmRNAを単離し;
(c) 当該mRNAを、ストリンジェント条件下でGST−pi遺伝子のある領域に対してハイブリダイズする1組のオリゴヌクレオチドプライマーを用いる増幅に委ね、増幅された試料を獲得し;
(d) 内部標準遺伝子のmRNAの量に対するGST−pi mRNAの量を決定する、
ことを含んで成る方法。
【請求項9】
前記1組のオリゴヌクレオチドプライマーが、GSTオリゴヌクレオチドプライマーの組又はそれらに対して実質的に類似する1組のオリゴヌクレオチドプライマーからなる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記内部標準遺伝子がβ−アクチンである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
mRNAの単離が、
(a) 前記組織試料を、有効な濃度のカオトロピック化合物を含んで成る溶液中で約75℃〜約100℃の範囲の温度で約5分〜約120分の時間に渡り加熱し;そして
(b) 前記mRNAを前記カオトロピック溶液から回収する、
ことによって行われている、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
配列番号:1の配列を有するオリゴヌクレオチドプライマー又は及びそれに対して実質的に同一なオリゴヌクレオチド。
【請求項13】
配列番号:2の配列を有するオリゴヌクレオチドプライマー又は及びそれに対して実質的に同一なオリゴヌクレオチド。
【請求項14】
GST−pi遺伝子の発現を検出するための、1組のGSTオリゴヌクレオチド又はそれに対して実質的に同一な1組のオリゴヌクレオチドを含んで成るキット。
【請求項15】
段階(b)が、前記固定化された腫瘍試料を、有効な濃度のカオトロピック剤の存在下で加熱する段階を含んで成り、ここで当該加熱を約50℃〜約100℃の温度で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記腫瘍が食道腺ガン腫瘍である、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−118(P2009−118A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177217(P2008−177217)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【分割の表示】特願2003−505376(P2003−505376)の分割
【原出願日】平成14年5月15日(2002.5.15)
【出願人】(503198817)レスポンス ジェネティクス,インコーポレイティド (9)
【Fターム(参考)】