グルタミンによるガンの改良治療
【課題】ガンの治療方法および/またはガン療法の副作用の処置方法及び皮膚の創傷、傷害および感染によって損なわれた皮膚および関連する組織の治癒を促進する方法を提供する。
【解決手段】治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む組成物、及びグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物を投与する。また該炭水化物が、糖アルコールであり、グルタミンに対する総炭水化物の比率が、水性溶媒と調製後または哺乳動物患者の水性環境にデリバリーされた後のいずれかにおいて、水溶液において少なくとも4:1である組成物。
【解決手段】治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む組成物、及びグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物を投与する。また該炭水化物が、糖アルコールであり、グルタミンに対する総炭水化物の比率が、水性溶媒と調製後または哺乳動物患者の水性環境にデリバリーされた後のいずれかにおいて、水溶液において少なくとも4:1である組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アミノ酸およびタンパク質などの生体分子の吸収は、細胞機能にとって極めて重要である。哺乳類の身体において固体物の約75%が、酵素、サイトカインなどのポリペプチド、核タンパク質、輸送タンパク質および構造タンパク質といったようなタンパク質である。これらのタンパク質の第1の機能的構成要素であるアミノ酸、ポリペプチドおよび単離アミノ酸もまた、細胞代謝機能にとって重要である。たとえば、アミノ酸であるグルタミンは、組織間の炭素および窒素の輸送といったような代謝において重要な機能を果たす。グルタミンは、肝臓および腎臓の糖新生ならびに肝臓における尿素合成および腎臓におけるアンモニア産生のための前駆体である。多くの細胞型、特に腸粘膜の細胞もまた、呼吸燃料の主要源として大量のグルタミンを利用する。
【背景技術】
【0002】
種々の生理的障害の治療のためのアミノ酸補充の有効性が、実証されている。たとえば、D−セリン補充は、集積失調症の治療のための抗精神病薬の有利な効果を増大させる(Tsai, G.ら, Biol. Psychiatry(1998) 44(11): 1081−1089)。L−トリプトファンまたは5−ヒドロキシトリプトファン補充は、線維筋痛の患者において抑うつ、不安、不眠症および苦痛の症状を改善することが明らかにされている(Juhl, J.H., Altern. Med. Rev.(1998) 3(5): 367−375)。8種の必須および9種の非必須アミノ酸の食事補充は、タンパク質欠乏が一般的な問題である透析患者において健康状態、調子および気分を改善した(Mastroiacovo, P.ら, Clin. Ther.(1993) 15(4): 698−704)。カナバン病(一般に発症から数年以内に死亡する希少劣性常染色体遺伝子疾患)の治療のためにアスパラギン酸の栄養補充が示唆されている(Baslow, M.H.ら, J. Mol. Neurosci.(1997) 9(2): 109−125)。L−リシンもまた、1型単純ヘルペスウイルス(HSV−1)に関連する損傷に対する治療用途をもつことが実証されている(Ayala, E. And D. Krokorian, J. Med. Virol.(1989) 28(1): 16−20)。
【0003】
グルタミン補充は、免疫系の特定の細胞の刺激および細胞成長の一般的促進などの非常に多くの利点を提供することが明らかにされている。グルタミンの枯渇は、関連する細菌のトランスロケーションとともに、上皮組織の萎縮を引き起こす。グルタミンの臨床的補充は、上皮萎縮を減少させ、回復を促進する。
食事性グルタミン補充が、外科手術からの回復中または敗血症、炎症、火傷または外傷を患っている患者の治療のために提案されている。口腔の損傷した上皮組織または食道の痛みを修復するための、通常、経口用途用の「口内投入および嚥下(swish and swallow)」溶液の形態での局所投与は、骨髄移植または化学療法を受けた多くの患者において有効でありうる(Skubitzら, J. Lab. Clin. Med.(1996) 127(2): 223−8; Andersonら, Bone Marrow Transplant(1998) 22(4): 339−44)。
【0004】
グルタミン補充は、直接的および間接的結果の両方にとって、ガン療法のために有益でありうる。グルタミン補充は、Fisher−344ラットにおいて腸からのグルタチオン放出を増加させることが明らかにされている(Cao, Y.ら, J. Parenter. Enteral Nutr.(1998) 22(4): 224−227)。放射線療法または化学療法のいずれかと併用する場合に、グルタミンが、いずれの療法においても腫瘍細胞に対する選択性を増加させることが実証されている(Klimberg, V.およびJ. McClellan, Am. J. Surg.(1996) 172(5): 418−424)。一つの研究において、胃管補給によるかまたは食品添加物としてグルタミンを与えられているラットにおける腫瘍の成長は、3週間以内に40%まで減少した(Fahr, M.ら, J. Parenter. Enteral Nutr.(1994) 18(6): 471−476)。別の研究において、メトトレキセートを投与されているラットにおける腫瘍体積の喪失は、グルタミンを食餌に添加すると、ほとんど2倍になった(Klimberg, V.ら, J. Parenter. Enteral Nutr.(1992) 16(6 Suppl): 83S−87S)。グルタミン補充ラットにおける腫瘍成長の減少は、おそらく、プロスタグランジンE2(PGE2)合成のグルタチオン媒介性抑制による、ナチュラルキラー細胞活性の増加との相関関係が示されている(Klimberg, V.ら, J. Surg. Res.(1996) 63(1): 293−297)。
【0005】
アミノ酸、特にグルタミンの投与のための製剤が、1999年5月17日出願のU.S.仮出願No. 60/134,442に記載されており、これは、全体を参考文献として本発明に援用される。
アミノ補充の有効性は、加齢および疾病により、ある範囲の個人に限定されている。ある種のアミノ酸の効果的な補充は、あるアミノ酸の低い水溶解度および乏しい細胞取り込みによって、様々な程度にさらに限定される。たとえば、グルタミンは、水溶解度が低く(30度において48 g/l、18度において26 g/l、0度において18 g/l; The Merck Index, 12版)、水溶液中における化学的安定性が低い(22〜24度にて11日間)(Cardona, P., Nutr. Hosp.(1998) 13(1): 8−20)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
様々な型の細胞への小分子の輸送は、特定の細胞型への細胞取り込みを増加させる方法を考案するのをより困難にする代替輸送システムによってコントロールされる。アミノ酸および他の小分子の取り込みを高める方法が必要であるにもかかわらず、最初に、多くの生物活性化合物の最初の取り込みの原因となる細胞の型である上皮細胞などの細胞へのアミノ酸、ペプチドおよび他の化合物の最初の直接吸収を増加させる方法は記載されていない。
したがって、哺乳類細胞への生物活性化合物の取り込みを増加させる方法に対する必要性が依然として存在する。
クリプトスポリジウム・パルヴムは、発展途上国における持続性の下痢の主たる原因である。エイズ患者、高齢者および幼年者において特に問題をはらんでおり、生命を脅かす下痢を起こす可能性がある。したがって、クリプトスポリジウム症を治療する方法に対する必要性が依然として存在する。
【0007】
擦り傷、火傷、潰瘍、疱疹性病変および虫刺されなどの皮膚の創傷、傷害および感染は、日常的で、痛みを伴い、そしてしばしば外観を損なう。したがって、皮膚の創傷、傷害および感染によって損なわれた皮膚および関連する組織の治癒を促進する方法に対する必要性が存在する。
ガンは、合衆国における第2の主たる死因である。一般的および乳ガンなどの特定の種類のガンを予防および治療する方法に対する必要性がある。
ガンの治療のための最初の手段は、放射線療法および化学療法である。しかし、これらの手段は、しばしば、ガンの進行を停止あるいは逆行させることができない。さらに、化学療法および放射線療法の両方が、ガン患者の生活の質を制限し、しばしば治療の縮小を必要とする副作用をもつ。
したがって、ガンを治療する方法、ガンに対する現在の治療の有効性を増加させる方法、ガンの再発および転移を防止する方法、ならびに化学療法および放射線療法の副作用を軽減する方法に対する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、種々の身体状態、特にガンおよびガン治療に関連する身体状態をグルタミンの投与によって治療または予防方法を提供する。たとえば、本発明の一つの態様は、有効量のグルタミンを投与することを含む、ガンに苦しむ哺乳動物における転移の予防方法を提供する。本発明の他の態様は、有効量のグルタミンを投与することを含む、哺乳動物におけるガンの再発の予防方法およびガンの発症の阻害方法を提供する。本発明のもう一つの態様は、グルタミンを投与することによる、放射線療法または化学療法からの損傷に対する皮膚または乳房組織などの非粘膜組織の保護方法を提供する。本発明のもう一つの態様は、グルタミンを投与することによる、非粘膜組織から生じる痛みの軽減または予防方法を提供する。本発明のもう一つの態様は、グルタミンを投与することを含む、創傷、傷害および感染によって損なわれた皮膚の治癒の促進方法を提供する。本発明のもう一つの態様は、グルタミンを投与することによる、哺乳動物におけるクリプトスポリジウム感染(クリプトスポリジウム症)などの感染の治療方法を提供する。
【0009】
予期せぬことに、これらの適用におけるグルタミンの有効性が、有効量の炭水化物(糖質など)の併用投与によって増加することが見出されている。たとえば、本発明のもう一つの態様は、有効量の炭水化物と併用してグルタミンを投与することによる、ガンに苦しむ哺乳動物の化学療法および/または放射線療法の有効性の増加方法を提供する。
本発明のもう一つの態様は、ガンに苦しむ哺乳動物患者に、(a)少なくとも1つの正常組織においてグルタチオン濃度を増加させ、腫瘍組織においてグルタチオン濃度を減少させ、そのことによって化学療法および/または放射線療法による死滅への正常組織の感受性を低減化させ、腫瘍組織の感受性を増加させるのに有効な量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩;および(b)患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量の炭水化物;を含む組成物を投与することによる、化学療法および/または放射線療法の治療係数を高める方法を提供する。
本発明のもう一つの態様は、哺乳動物患者に、グルタミンおよび患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量の少なくとも1種の炭水化物を含む組成物を投与することによる、ガン細胞のアポトーシスを促進する方法を提供する。
【0010】
数種のタンパク質が、ガン細胞増殖あるいはアポトーシス(プログラムされた細胞死)を促進または阻害することが知られている。本発明者らは、グルタミンの投与が、Bad、Bax、p21およびカスパーゼ−3などのアポトーシス促進性タンパク質のレベルを増加させ、Bcl−2、IGF−1、IGF−1RおよびAktなどの抗アポトーシス性であるかまたはガン細胞増殖を促進するタンパク質のレベルを減少させることを発見している。したがって、本発明の特定の態様は、哺乳動物患者に、(a)グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩;および(b)患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量の炭水化物;を含む組成物を投与することによる、Bad、Baxまたはp21のタンパク質レベル、遺伝子発現または酵素活性の増加方法を提供する。同様に、本発明の特定の態様は、哺乳動物患者に、(a)グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩;および(b)患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量の炭水化物;を含む組成物を投与することによる、IGF−1、IGF−1RまたはAktのタンパク質レベルまたは遺伝子発現の減少方法を提供する。
【0011】
本発明は、哺乳類組織の細胞への生物活性作用物質、詳しくは「小分子」と呼ばれる物質、さらに詳しくはグルタミンの細胞取り込みを増加させる組成物および方法を提供する。水性ビヒクルおよび有効量のグルタミン、ならびにインビボまたはインビトロで標的細胞へのグルタミンの輸送(吸収)の増加を達成するのに有効な量の炭水化物を併用して含む溶液、分散液または懸濁液である。細胞が、水または生理的食塩水に溶解または懸濁したグルタミンに接触するときに、生理的条件、すなわち、恒常性条件下で細胞に入る量を超えて輸送(吸収)が増加される。活性物質の飽和以下の水溶液を用いることによって得られるものよりも、少なくとも約100−2000倍のファクターによって輸送(吸収)が増加されるのが好ましい。インビトロまたはインビボで炭水化物が哺乳類細胞ヘの小分子の取り込みを増加させるメカニズムは未知である。
【0012】
炭水化物担体は、グルコースなどの単糖、スクロースなどの二糖または単糖を二糖の組み合わせを含むことができる。炭水化物担体は、マンニトール、ソルビトールまたはキシリトールなどの糖アルコールを含むこともできる。炭水化物担体は、高フルクトースコーンシロップまたは固形コーンシロップなどの多糖を含むこともでき、ここで、コーンシロップまたは固形コーンシロップ(水和または無水)は、活性成分のための溶液相を構成する。担体は、水または水と医薬的に許容しうるグリセロールなどのアルカノール、アルキレングリコールまたはポリオールとの混合物と合わせて、溶液を形成することができる。有機溶媒が、水性相の少ない方の比率、好ましくは5〜10体積%を構成するのが好ましい。
溶液は、真溶液または流動性を有する「固溶体」でありうる。練り歯磨き、チューインガム、硬または軟ゼラチンカプセル、座薬、浣腸剤、口内洗浄剤、または局所適用ローションなどの他の液体投与剤形、あるいはシェイクなどの飲料といったような種々の液体投与手段によって投与することができる。
【0013】
本発明組成物の投与は、損なわれるかまたは無傷の組織への生物活性作用物質の吸収の増加によって改善される種々の生理的障害、特に内皮細胞および上皮組織の線維芽細胞に影響を及ぼす障害の治療を提供することができる。組織損傷を含むこのような生理的障害として、たとえば、ガンに対する処置をされた患者または骨髄移植を行われた患者における放射線療法または化学療法後の口腔、食道および/または胃腸粘膜の損傷、胃潰瘍および消化性潰瘍、火傷、重度または軽度の外傷性創傷、ウイルス性損傷、炎症性腸疾患、クローン病、シェーグレン症候群、口内乾燥症およびクリプトスポリジウム症が挙げられる。
バルクパッケージまたは個別パッケージのいずれかの、グルタミンなどの治療有効量のアミノ酸を、上皮細胞へのアミノ酸の吸収の増加を達成するのに有効な量の炭水化物担体と混合した、プレミックスした無水または液体製剤からなる医薬的投与組成物も提供される。1つの容器に別々にパッケージングされた無水製剤および前処理したビヒクルを含むキットも提供することができる。
【0014】
本発明者らは、インビトロまたはインビボで哺乳類細胞への生物活性作用物質の細胞取り込みを増加させる組成物を発見している。本発明の組成物および方法を用いて、投与後10秒以内に、約150倍以上のファクターでアミノ酸グルタミンの胃腸上皮細胞取り込みが増加されたことが、実証されている。また本発明は、治療量の組成物を用いて生物活性作用物質の細胞取り込みを増加させる、多くの病態生理学的身体状態に苦しむ患者の治療方法を提供する。
【0015】
本明細書で用いる用語「生物活性作用物質」は、標的細胞によって有効量の分子が吸収された後に哺乳動物に治療または栄養効果を与える分子を意味する。
本明細書で用いる用語「有効量」は、標的細胞集団において検出可能な生物学的変化を引き起こす量、および治療効果を成し遂げる、すなわち、哺乳動物に影響を及ぼしている病変または疾患の少なくとも1つの症状を減少させる量を意味する。
【0016】
本明細書で用いる「アミノ酸」として、たとえば、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、シトルリン、g−アミノ酪酸、ヒドロキシプロリンおよびオルニチンならびにグルタミン酸グルタミルおよびグルタチオンなどのトリペプチドなどのジペプチドが挙げられる(Remington’s Pharmaceutical Sciences(19th ed),pp 389−392を参照)。しかし、本発明組成物および方法は、グルタミンなどの制限された低い水溶解度および/または乏しい細胞取り込みを示すアミノ酸の吸収を増加させるのに特に有用である。本明細書で用いる低い水溶解度は、22−25度において約5 gのアミノ酸/水100 ml以下の溶解度として定義される。
【0017】
本明細書で用いる用語「グルタミン」として、グルタミン(グルタミン酸5−アミド)、および哺乳動物の身体においてグルタミンを生じる、分子量が約1000以下、好ましくは約500以下であるグルタミンのエステルおよび/またはアミド(たとえば、短いペプチド)などのグルタミンの加水分解性誘導体が挙げられる。塩酸塩、酢酸塩、酒石酸塩などのアミンの酸付加塩およびナトリウムおよびカリウム塩などの炭酸塩といったようなグルタミンの医薬的に許容しうる塩もまた、本発明方法に用いることができる。他の成分対するグルタミンの塩または加水分解性誘導体に関連して、グルタミンの重量またはグルタミンの重量比は、加水分解性誘導体のグルタミン部分の重量またはグルタミンの塩のグルタミン部分の重量を意味する。たとえば、グルタミン酸ナトリウムの式量は、168であり、グルタミンの式量は146であるので、1gのグルタミン酸ナトリウムを含む組成物は、0.87gのグルタミンを含むとみなされる。
【0018】
本発明溶液もまた、インビトロまたはインビボで、好ましくは治療量の特に一般に「小分子」と呼ばれる実体(entity)で、広範囲の生物活性作用物質の細胞吸収を増強することができる。
本明細書で用いる用語「小分子」として、一般に30kD以下、好ましくは25kD以下、最も好ましくは10kD以下の分子量、すなわち、5000ダルトンの分子量をもつアミノ酸、ステロイド、サイトカイン、ホルモン、ホルモンレギュレーター、酵素、ビタミンなどの単一分子である実体が挙げられる。
本明細書で用いる用語「オリゴペプチド」は、2〜20アミノ酸を含むペプチドである。
本明細書で用いる用語「治療係数(therapeutic index)」は、化学療法または放射線療法による正常または非標的細胞の死滅に対するガン細胞の死滅の比率を意味する。
本明細書で用いる用語「ナチュラルキラー細胞活性」は、ナチュラルキラー細胞の細胞死滅活性を意味する。たとえば、これは、後記実施例10に記載するような細胞障害性アッセイにおいて測定することができる。
【0019】
皮膚または無傷の腸粘膜組織への生物活性作用物質の吸収の増強を利用して、投与部位から遠い臓器または組織において効果を有する生物活性作用物質を投与することもできる。
本明細書で用いる「炭水化物」として、たとえば、キシリトール、ソルビトールおよびマンニトールといったような単糖および二糖として知られる糖質、ポリオール、ヒドロキシ類縁体または糖アルコール、ならびにデキストリン、高フルクトースコーンシロップおよび固形コーンシロップといったようなそのポリマーが挙げられる。特定の単糖および二糖が糖アルコールまたはヒドロキシ類縁体を形成することは当業界で周知である。これらのヒドロキシ類縁体の特定のもの、特にソルビトールおよびキシリトールは、それらの誘導もとである単糖または二糖の齲蝕原性特性をもたずに糖風味の利点を提供することがわかっている。
【0020】
炭水化物が、インビトロまたはインビボで哺乳動物細胞への小分子の取り込みを増強させるメカニズムは未知である。いくつかの具体例において、最終組成物における炭水化物の主たる重量比率は、たとえば、80〜90重量パーセント以上である。いくつかの場合、組成物は、本質的に添加水フリーすなわち、「固溶体」となることができ、炭水化物は、活性成分のための「溶媒」として働く。このような「固溶体」は、流動性であるか、半固体またはほぼ固体でありうる。活性作用物質に対する炭水化物の比率は、約0.5:1〜約50:1でありうる。たとえば、調製物と水性溶媒との構成によるか、または標的組織の周囲の細胞外液という水性環境へのデリバリーによるかのいずれかで達成された、無水調製物における約1.5:1 w/w〜20:1 w/w、および最水溶液における4:1 w/v以上、好ましくは4:1 w/v〜15:1 w/v、最も好ましくは7:1 w/v以上でありうる。
【0021】
本明細書で用いる「細胞」には、上皮細胞、内皮細胞、皮膚細胞、線維芽細胞または神経細胞などの本発明方法にしたがって本発明組成物が接触しうるどのような細胞もが含まれる。さらに詳しくは、本発明組成物および方法が、アミノ酸グルタミンの吸収を増加することが実証されている細胞は、口腔、咽喉、食道、胃、腸、結腸および直腸などの胃腸上皮細胞、内皮細胞および線維芽細胞である。
本明細書で用いる「水性溶媒との構成」として、水、生理的食塩水もしくは緩衝液、果汁または含水パーセントの高い他の液体との構成、唾液、粘液、胃液、髄液などの組成物が適用される組織の周囲の細胞外液との構成が挙げられる。
(本発明の説明)
【0022】
本発明の一つの態様は、患者に治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む組成物を投与することを含む、ガンに苦しむ哺乳動物患者における転移の予防方法を提供する。組成物には、患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物が含まれてもよい。
本発明のもう一つの態様は、ガンから回復したか、または抗ガン療法を受けている哺乳動物患者に治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む組成物を経口投与することを含む、ガンの再発の予防方法を提供する。組成物には、患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物が含まれてもよい。
【0023】
本発明のもう一つの態様は、患者に治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物を含む組成物を投与すること含む、ガンの発生の危険がある哺乳動物患者におけるガンの発症の阻害方法を提供する。経口投与が好ましい。
本発明のもう一つの態様は、ガンに苦しみ、放射線療法を処置された哺乳動物患者に、放射線療法からの損傷に対する非粘膜組織を保護する治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む組成物を投与することを含む、放射線療法からの損傷に対して非粘膜組織の保護方法を提供する。組成物には、患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物が含まれてもよい。
この方法により、患者に高用量の放射線処置および/または長期間の放射線処置を行うことができるようになる。
非粘膜組織は、乳房組織または関連する上半身でありうる。
組成物は、乳房密度の増大を予防することができ、放射線療法によって引き起こされた乳房密度の増大の重篤度を減少させる。組成物は、たとえば、乳房組織などの浮腫を予防することもでき、浮腫の重篤度を減少させる。
保護される非粘膜組織は、皮膚であることもできる。
組成物は、非粘膜組織の外観を保護することができる。
【0024】
本発明のもう一つの態様は、ガンに苦しみ、化学療法を処置された哺乳動物患者に、化学療法からの損傷に対して皮膚組織を保護する治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む組成物を投与することを含む、化学療法からの損傷に対する皮膚組織の保護方法を提供する。組成物には、患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物が含まれてもよい。
【0025】
本発明のもう一つの態様は、ガンに苦しみ、化学療法を処置された哺乳動物患者に、化学療法からの損傷に対して乳房組織を保護する治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む組成物を投与することを含む、化学療法からの損傷に対する乳房組織の保護方法を提供する。組成物には、患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物が含まれてもよい。
【0026】
本発明のもう一つの態様は、ガンに苦しみ、化学療法および/または放射線療法を処置された哺乳動物患者に、処置から生じる非粘膜組織における痛みを減少または予防する治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む組成物を投与することを含む、非粘膜組織から生じる痛みの減少または予防方法を提供する。組成物には、患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物が含まれてもよい。
組成物により、患者に高用量の放射線処置および/または長期間の放射線処置を行うことができるようになる。もし患者が化学療法を処置されるならば、組成物により、患者に高用量の化学療法剤処置および/または長期間の化学療法剤処置を行うことができるようになる。
組成物により、化学療法および/または放射線療法によって引き起こされる痛みに対する、患者のためのさらなる痛みのコントロールの必要性を減少または排除することができるようになる。
非粘膜組織は、たとえば、乳房組織または皮膚でありうる。
【0027】
本発明のもう一つの態様は、哺乳動物に、放射線への曝露前に治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む組成物を投与することを含む、放射線傷害に対する哺乳動物の皮膚の保護方法を提供する。組成物には、患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物が含まれてもよい。組成物は、局所または内服投与することができる。放射線傷害は、たとえば、日光曝露(日焼け)または人工的放射線曝露、および内部または外部源により引き起こされる治療的放射線照射によって引き起こされうる。
【0028】
本発明のもう一つの態様は、皮膚の創傷、傷害または感染によって損なわれた非粘膜組織の治癒を促進するために、哺乳動物患者に、治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む組成物を投与することを含む、創傷、傷害または感染によって損なわれた皮膚の治癒の促進方法を提供する。組成物には、患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物が含まれてもよい。
非粘膜組織は、上皮組織(皮膚など)でありうる。
組成物は、局所または内服投与することができる。組成物は、固体、ゲル、ペーストまたはシロップでありうる。
組織は、擦傷または裂傷などの創傷によって損なわれた組織でありうる。組織は、火傷、日焼け、放射線傷害、潰瘍(褥瘡性潰瘍など)または虫噛まれもしくは虫刺されなどの外傷によって損なわれた組織でありうる。組織は、細菌、真菌またはウイルス感染(疱疹性病変など)によって損なわれた組織でありうる。
【0029】
本発明のもう一つの態様は、哺乳動物患者に、治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む組成物を投与することを含む、哺乳動物患者におけるクリプトスポリジウム症の感染の治療方法を提供する。組成物には、患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物が含まれてもよい。
【0030】
本発明のもう一つの態様は、ガンに対して化学療法および/または放射線療法を処置された哺乳動物患者に、治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩、および患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で少なくとも1種の炭水化物を含む組成物を投与することを含む、ガンに苦しむ哺乳動物の化学療法および/または放射線療法の有効性の増強方法を提供する。
【0031】
本発明のもう一つの態様は、ガンに対して化学療法および/または放射線療法を処置された哺乳動物患者に、(a)少なくとも1つの正常組織においてグルタチオン濃度を増加させ、腫瘍組織においてグルタチオン濃度を減少させ、そのことによって化学療法および/または放射線療法による死滅への正常組織の感受性を低減化させ、腫瘍組織の感受性を増加させるのに有効な量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩;および(b)患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量の炭水化物;を含む組成物を投与することを含む、化学療法および/または放射線療法の治療係数を高める方法を提供する。
【0032】
本発明のもう一つの態様は、ガンに苦しむ哺乳動物患者に、グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量の少なくとも1種の炭水化物を含む組成物を投与することを含む、ガン細胞のアポトーシスの促進方法を提供する。
本発明の特定の態様は、哺乳動物患者に、(a)グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩;および(b)患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量の炭水化物;を含む組成物を投与することによる、細胞または組織(たとえば、乳房組織または血清)におけるBad、Baxまたはp21のタンパク質レベル、遺伝子発現または酵素活性の増加方法を提供する。
【0033】
本発明のもう一つの態様は、哺乳動物患者に、(a)グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩;および(b)患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量の炭水化物;を含む組成物を投与することによる、細胞または組織(たとえば、乳房組織または血清)におけるIGF−1、IGF−1RまたはAktのタンパク質レベルまたは遺伝子発現の減少方法を提供する。
これらのタンパク質レベル、遺伝子発現または酵素活性の増加または減少は、乳ガン細胞などのガン細胞、非ガン細胞または血清などの細胞外組織において生じうる。
【0034】
本発明のもう一つの態様は、哺乳動物患者に、(a)患者のナチュラルキラー細胞活性を増加させるのに有効な量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩;および(b)患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量の炭水化物;を含む組成物を投与することを含む、ナチュラルキラー細胞活性の増加方法を提供する。たとえば、患者は、ガンまたはHIV患者でありうる。
【0035】
本発明方法において、哺乳動物患者に投与されるグルタミンの量は、たとえば、少なくとも0.5 mg/日/患者の体重kgまたは0.2〜3.0g/日/患者の体重kgでありうる。
グルタミン組成物に含まれる炭水化物は、哺乳動物細胞によるグルタミンの吸収を増加させ、したがって、グルタミンを少ない量で投与することが可能になる。したがって、本発明方法の特定の態様において、患者に投与されるグルタミンの量は、0.5 g/日/患者の体重kg以下、0.2 g/日/患者の体重kg以下、0.1 g/日/患者の体重kg以下または0.05 g/日/患者の体重kg以下である。
本発明の特定の態様において、炭水化物は、1種以上の単糖または二糖を含む。他の態様において、炭水化物は、糖アルコールである。
【0036】
特定の態様において、グルタミンに対する総炭水化物の比率は、0.5:1〜50:1である。
特定の態様において、グルタミンに対する総炭水化物の比率は、水性溶媒と調製後または哺乳動物患者の水性環境にデリバリーされた後のいずれかにおいて、水溶液において少なくとも4:1である。
特定の態様において、組成物は、5個以下のグルタミン以外の天然アミノ酸、3個以下のグルタミン以外の天然アミノ酸を含むか、またはグルタミン以外の天然アミノ酸を含まない。
哺乳動物患者はヒトでありうる。
放射線療法に関して投与する場合、本発明組成物を放射線療法を行った後、行っている間、または行う前に投与することができる。同様に、化学療法に関して投与する場合、本発明組成物を化学療法を行った後、行っている間、または行う前に投与することができる。
本発明組成物をガンに対して患者を外科的に処置した後、または処置する前に投与することもできる。
抗ガン生物作用物質で患者を処置する前、処置した後、またはしょちを行っている間に投与することもできる。生物作用物質の例として、モノクローナル抗体、酵素または特定のホルモンなどのタンパク質;インターフェロン;マクロファージなどの細胞;または非タンパク質ホルモンが挙げられる。
【0037】
本発明のもう一つの態様は、ガンに苦しむ哺乳動物患者において転移を予防するのに有効な医薬を製造するためのグルタミンの使用である。
本発明のもう一つの態様は、グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む医薬(ガンから回復したか、または抗ガン療法を受けている哺乳動物患者への該医薬の経口投与は、患者におけるガンの再発を予防するのに有効である)を製造することを含む、ガンの再発を予防するのに有効な医薬を製造するためのグルタミンの使用である。
本発明のもう一つの態様は、グルタミンおよび少なくとも1種の炭水化物を含む医薬(該医薬は、炭水化物を含まない他の同一の医薬よりも低用量でグルタミンを投与して、哺乳動物患者におけるガンの発症を予防するのに有効である)を製造することを含む、ガンの発生の危険がある哺乳動物患者におけるガンの発症を予防するのに有効な医薬を製造するためのグルタミンおよび少なくとも1種の炭水化物の使用である。
【0038】
本発明のもう一つの態様は、放射線療法からの損傷に対して非粘膜組織を保護するのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩の使用である。
本発明のもう一つの態様は、ガンに苦しみ、化学療法を処置された哺乳動物患者の皮膚を化学療法からの損傷に対して保護するのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩の使用である。
本発明のもう一つの態様は、ガンに苦しみ、化学療法を処置された哺乳動物患者の皮膚を化学療法からの損傷に対して保護するのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩の使用である。
本発明のもう一つの態様は、ガンに苦しみ、化学療法を処置された哺乳動物患者の乳房組織を化学療法からの損傷に対して保護するのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩の使用である。
【0039】
本発明のもう一つの態様は、ガンに苦しみ、化学療法および/または放射線療法を処置された哺乳動物患者において非粘膜組織から生じる痛みを予防するのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩の使用である。
本発明のもう一つの態様は、放射線傷害に対して哺乳動物の皮膚を保護するのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩の使用である。
本発明のもう一つの態様は、グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む医薬(該医薬は、哺乳動物患者において、皮膚の創傷、傷害または感染によって損なわれた非粘膜組織の治癒を促進するのに有効である)を製造することを含む、創傷、傷害または感染によって損なわれた皮膚の治癒を促進するのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩の使用である。
【0040】
本発明のもう一つの態様は、哺乳動物患者においてクリプトスポリジウム症を治療するのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩の使用である。
本発明のもう一つの態様は、グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物を含む医薬(該医薬は、炭水化物を含まない他の同一の医薬よりも低用量でグルタミンを投与して、哺乳動物患者における化学療法および/または放射線療法の有効性を増加させるのに有効である)を製造することを含む、化学療法および/または放射線療法の有効性を増加させるのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物の使用である。
【0041】
本発明のもう一つの態様は、グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物を含む医薬(該医薬は、少なくとも一つの正常組織においてグルタチオン濃度を増加させ、腫瘍組織においてグルタチオン濃度を減少させ、そのことによって化学療法および/または放射線療法による死滅への正常組織の感受性を低減化させ、腫瘍組織の感受性を増加させるのに有効であり;該医薬は、炭水化物を含まない他の同一の医薬よりも低用量でグルタミンを投与して、少なくとも一つの正常組織においてグルタチオン濃度を増加させ、腫瘍組織においてグルタチオン濃度を減少させるのに有効である)を製造することを含む、化学療法および/または放射線療法の有効性を増加させるのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物の使用である。
【0042】
本発明のもう一つの態様は、グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物を含む医薬(該医薬は、炭水化物を含まない他の同一の医薬よりも低用量でグルタミンを投与して、ガン細胞のアポトーシスを促進するのに有効である)を製造することを含む、哺乳動物患者においてガン細胞のアポトーシスを促進するのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物の使用である。
【0043】
本発明のもう一つの態様は、グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物を含む医薬(該医薬は、炭水化物を含まない他の同一の医薬よりも低用量でグルタミンを投与して、患者の細胞においてBadタンパク質の量を増加させるのに有効である)を製造することを含む、哺乳動物患者の細胞においてBadタンパク質を増加させるのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物の使用である。
【0044】
本発明のもう一つの態様は、グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物を含む医薬(該医薬は、炭水化物を含まない他の同一の医薬よりも低用量でグルタミンを投与して、患者の細胞においてBaxタンパク質の量を増加させるのに有効である)を製造することを含む、哺乳動物患者の細胞においてBaxタンパク質を増加させるのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物の使用である。
【0045】
本発明のもう一つの態様は、グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物を含む医薬(該医薬は、炭水化物を含まない他の同一の医薬よりも低用量でグルタミンを投与して、患者の細胞においてp21タンパク質の量を増加させるのに有効である)を製造することを含む、哺乳動物患者の細胞においてp21タンパク質を増加させるのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物の使用である。
【0046】
本発明のもう一つの態様は、グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物を含む医薬(該医薬は、炭水化物を含まない他の同一の医薬よりも低用量でグルタミンを投与して、患者の細胞においてカスパーゼ−3タンパク質の量および/または活性を増加させるのに有効である)を製造することを含む、哺乳動物患者の細胞においてカスパーゼ−3タンパク質の量および/または活性を増加させるのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物の使用である。
【0047】
本発明のもう一つの態様は、グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物を含む医薬(該医薬は、炭水化物を含まない他の同一の医薬よりも低用量でグルタミンを投与して、患者の細胞においてBcl−2タンパク質の量を減少させるのに有効である)を製造することを含む、哺乳動物患者の細胞においてBcl−2タンパク質を減少させるのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物の使用である。
【0048】
本発明のもう一つの態様は、グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物を含む医薬(該医薬は、炭水化物を含まない他の同一の医薬よりも低用量でグルタミンを投与して、患者の細胞においてIGF−1タンパク質の量を減少させるのに有効である)を製造することを含む、哺乳動物患者の細胞においてIGF−1タンパク質を減少させるのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物の使用である。
【0049】
本発明のもう一つの態様は、グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物を含む医薬(該医薬は、炭水化物を含まない他の同一の医薬よりも低用量でグルタミンを投与して、患者の細胞においてIGF−1Rタンパク質の量を減少させるのに有効である)を製造することを含む、哺乳動物患者の細胞においてIGF−1Rタンパク質を減少させるのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物の使用である。
【0050】
本発明のもう一つの態様は、グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物を含む医薬(該医薬は、炭水化物を含まない他の同一の医薬よりも低用量でグルタミンを投与して、患者の細胞においてAktタンパク質の量を減少させるのに有効である)を製造することを含む、哺乳動物患者の細胞においてAktタンパク質を減少させるのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物の使用である。
【0051】
アミノ酸の溶解度および吸収を増加させるための組成物の製剤
本発明にしたがって、水溶液を形成するために、水の存在下に少なくとも1種の生物活性作用物質を炭水化物と組み合わせる。炭水化物は、たとえば、アロース、アルトロース、アラビノース、ジヒドロキシアセトン、エリトロース、エリトルロース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、グリセルアルデヒド、グロース、リキソース、イドース、マンノース、プシコース、リボース、リブロース、ソルビトール、タガトース、トレロース、キシロース、キシルロースなどの単糖およびソルボースからのソルビトール、マンノースからのマンニトールおよびキシロースからのキシリトールといったようなそれぞれのヒドロキシ類縁体でありうる。あるいは、炭水化物は、マルトースもしくはスクロースあるいはその両方などの二糖、またはデキストリン、マルトデストリンおよび高フルクトースコーンシロップ製品などのポリマーでありうる。炭水化物担体は、単糖、二糖もしくはその両方、または他の炭水化物のいずれかの組み合わせからなることもできる。多くの適用にとって、特に非齲蝕性の糖質が必要とされる場合、糖質のヒドロキシ類縁体が好ましい。ヒドロキシ類縁体の例として、糖アルコール、キシリトール、ソルビトールおよびマンニトールが挙げられる。
【0052】
固体組成物において重量/体積で測定される炭水化物濃度は、20%〜99%が好ましい。標的細胞への活性作用物質の輸送が有意に増加されるように、特定の濃度において炭水化物は複合し、活性作用物質のための溶液として利用できる遊離水の量を減少させる。
組成物の好ましい態様は、約5〜50% w/wのグルタミン(最も好ましくはL−グルタミン)、約15〜50% w/wの二糖(最も好ましくはスクロース)、糖アルコールまたはポリオール(最も好ましくはソルビトール)およびグリセリンなどの炭水化物担体、有効量の緩衝液または緩衝化合物(最も好ましくは無水一塩基性リン酸ナトリウム)、約1〜5% w/wの修飾セルロース(最も好ましくはアビセル(登録商標)セルロースゲル)、ならびに安定化剤および乳化剤(キサンタンガム、カラギーナン)、保存剤(メチルパラベン、ソルビン酸ナトリウム)、消泡剤(シメチコン)および香味剤を必要に応じて含む残りの部分を含む固体の混合物を提供する。
【0053】
より好ましい態様は、約5〜15% w/wのグルタミン(最も好ましくはL−グルタミン)、約30〜50% w/wの二糖(最も好ましくはスクロース)、糖アルコールまたはポリオール(最も好ましくはソルビトール)およびグリセリンなどの炭水化物担体、および有効量の緩衝液または緩衝化合物(最も好ましくは無水一塩基性リン酸ナトリウム)、修飾セルロース(最も好ましくはアビセル(登録商標)セルロースゲル)を含み、ならびに必要に応じて安定化剤および乳化剤(キサンタンガム、カラギーナン)、保存剤(メチルパラベン、ソルビン酸ナトリウム)、消泡剤(シメチコン)および香味剤を含む無水固体からなる残りの部分を提供する。
【0054】
好ましい液体組成物は、5〜25% w/vのL−グルタミン、20〜40% w/vの二糖、糖アルコールおよびグリセリンなどの炭水化物担体、5〜10%w/vのクエン酸および有効量の緩衝液(好ましくは0.4〜0.8%のリン酸ナトリウム)、ならびに水またはアルコール−水、および必要に応じて安定化剤、保存剤、乳化剤および香味剤を含む残りの部分を提供する。
【0055】
組成物における炭水化物担体の使用は、アミノ酸水溶液をそのまま投与する場合と比べて、アミノ酸の細胞吸収を少なくとも10倍に増加させることができる。たとえば、38% w/vのL−グルタミン、30% w/vのスクロースおよび2.8% w/vのソルビトールを含む好ましい水性組成物は、水性グルタミン溶液単独で使用する場合と比べて、CaCo細胞(上皮粘膜細胞系)によるグルタミン取り込みを360倍に増加させる。
炭水化物担体の必要な濃度が維持されるならば、組成物に賦形剤を添加することもできる。これらには、グリセリンなどの甘味料/溶媒;セルロースゲル(たとえば、アビセル(登録商標)微結晶セルロースゲル(FMC Corp., フィラデルフィア、ペンシルバニア))、キサンタンガムまたはカラギーナンなどの乳化剤および安定化剤;クエン酸およびメチルパラベンなどの保存剤および安定化剤;シメチコンなどの消泡剤/基剤成分;香味剤またはその他の組成物の安定性および投与性を改善する成分を含めることができる。
【0056】
増加した濃度での活性作用物質のデリバリー
本発明は、多くの代替経路によって、インビボまたはインビトロで標的細胞へ活性作用物質を増加した濃度でデリバリーする方法を提供する。たとえば、活性作用物質を炭水化物および水、ならびに必要に応じてゲル化剤または増粘剤と混合することができる。混合物は、溶液、ゲルまたは懸濁液として投与することができる。必要であれば、混合物を静置して非溶解粒子を沈降させることによって、非溶解物質を除去することができ、あるいは遠心分離して上清を単離することができる。次いで、注入物の静脈内注射により、非経口または経口で標的組織に上清溶液を適用することができる。
グルタミンおよび本発明組成物を医薬組成物として製剤し、たとえば、非経口(たとえば静脈内、局所または経腸的)または経口にて、選択する投与経路に適合する種々の形態で、ヒト患者などの哺乳動物宿主に投与することができる。
【0057】
筋肉内、局所または皮下経路によって、あるいは浣腸または座薬などによる胃腸管への直接投与によって、投与することもできる。経口投与が好ましい。製剤の適用として、経皮パッチによる投与を含む、軟膏、ゲルまたは液体剤形などにおける、火傷、外傷またはウイルス感染などに起因する創傷への直接塗布による局所投与が挙げられるが、これに限定されるものではない。好ましい態様において、本発明組成物は経口投与される。製剤は、口すすぎ剤、ゲルまたは摂食可能飲料によって、口、鼻および食道損傷に適用することができる。口すすぎ剤または摂食可能飲料のいずれかのために、多くの単糖、二糖または両方の組み合わせ、デキストリン、マルトデキストリンおよび高フルクトースコーンシロップ製品などのこれらのポリマーから炭水化物担体を選択することができる。好ましい炭水化物担体として、スクロース、ソルビトールおよび高フルクトースコーンシロップ製品が挙げられる。懸濁液または飲料のいずれかを、水、果汁または他の液体と合わせて用いるための炭水化物担体と有効量のアミノ酸の無水混合物混合物として提供することができる。無水混合物のバルクパッケージングまたは単一適用を含むパケットを、患者、医療提供者または増加した濃度での活性作用物質のデリバリーが望まれるいずれかの個人に提供することができる。投与前に、製剤を水、果汁または他の液体と合わせて用いて、容易な投与を提供することができ、上皮組織へのグルタミンの吸収を増加させることができる。プレミックス液体バルクまたは単位用量剤形を用いることもできる。
【0058】
スクロースまたはソルビトールなどの適当な炭水化物担体および必要に応じてゲル化剤または増粘剤を利用する、ロゼンジまたはふつうの棒付きキャンディーなどのキャンディー型または他の薬用菓子型を提供することによって、相対的に低い濃度の遊離水を含む組成物の適用を達成することもできる。チューインガムを用いて、スクロース、キシリトール、ソルビトールまたは固形コーンシロップなどの炭水化物担体およびアミノ酸をデリバリーすることもできる。好ましい形態において、チューインガムは、キシロース、ソルビトールまたはスクロースなどの炭水化物担体と有効量のアミノ酸の適当な混合物からなる香味シロップの中央ポケットを組み込むことができる。軟コア部をもつチューインガム製剤の調製は、米国特許No. 4,352,823(Cherukuriら, Oct. 5, 1982)および米国特許No. 4,352,825(Cherukuriら, Oct. 5, 1982)に記載されている。また、生物活性作用物質の固溶体をチューインガム、ロゼンジまたは棒付きキャンディーなどのキャンディー型の製剤に用いることができる。このような固溶体は、炭水化物担体と生物活性作用物質との共溶融、共沈澱から、あるいは機械的活性化によって形成されうる。キャンディまたはガムを口腔に入れ、周囲の液体によって溶解する。この水性環境において、炭水化物は、口腔、食道および胃の上皮細胞へのグルタミンの吸収を促進するための担体を提供することができる。
【0059】
炭水化物担体および活性作用物質を組み込むための練り歯磨きを形成することもできる。練り歯磨き組成物中の成分のマイクロカプセル封入が、米国特許No. 4,348,378(Kosti, September 7, 1982), 米国特許No. 4.071,614(Grimm, January 31, 1978)および米国特許No. 3, 957,964(Grimm, May 18, 1976)に記載されており、標準的練り歯磨き製品へのカプセル封入された香味剤および抗プラーク成分の添加が記載されている。
【0060】
座薬によって結腸および直腸の上皮細胞に本発明組成物をデリバリーすることもできる。座薬製剤の製造方法は当業界で公知である。このような方法の一つが、米国特許No. 4,439, 194(Harwoodら, March 27, 1984)に記載されており、座薬に使用するための水および薬物デリバリーシステムが記載されている。十分な量の水を含んでいる、炭水化物担体およびアミノ酸を含む浣腸製剤を形成することもできる。座薬または浣腸において炭水化物担体中の生物活性作用物質の固溶体を投与して、結腸または直腸から水性成分を引き出すこともできる。
【0061】
胃へのデリバリーが好ましい場合、充填されたカプセルを用いることができる。このような方法の一つが、米国特許5,569,466(Tannerら, October 29, 1996)に記載されており、軟弾性ゼラチンカプセルのための充填組成物の製造の記載がある。腸溶性コーティングカプセル剤もしくは錠剤、または腸溶性コーティング微粒子を用いて、腸管上部または下部に組成物をデリバリーすることができる。
ふつうのポプシクルなどのアイスクリーム製剤ならびに冷凍菓子にて組成物をデリバリーすることができる。冷凍製剤は、たとえば、グルタミンの有利な効果と冷たい混合物の鎮痛効果の両方を合わせることができるので、経口および食道潰瘍に特に有効である。
【0062】
グルタミンおよび本発明組成物を輸液または注射によって静脈内または腹腔内投与してもよい。活性化合物またはその塩の溶液を水溶液として、必要に応じて非毒性海面下製剤と混合して調製することができる。グリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチンおよびそれらの混合物中、および油中で分散液を調製することもできる。保管および使用の通常の条件下、これらの調製物は、微生物の成長を妨げる保存剤を含む。
【0063】
注射または輸液に適した医薬的投与剤形は、必要に応じてリポソームに封入された滅菌注射液もしくは滅菌輸液、または分散液の即時調製のために適合する活性成分を含む滅菌粉末を含むことができる。すべての場合において、最終の投与剤形は、製造および保管の条件下で、滅菌され、液体であり、安定であるべきである。液体担体またはビヒクルは、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、非毒性グリセリルエステルおよびそれらの適当な混合物などを含む溶媒または液体分散媒体でありうる。たとえば、リポソームの形成によるか、分散液の場合、必要な粒子径の維持によるか、または界面活性剤の使用により、適切な流動性を維持することができる。たとえば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどの種々の抗菌剤および抗真菌剤によって、微生物の活動の防止をもたらすことができる。多くの場合、糖質、緩衝液または塩化ナトリウムなどの等張剤を含むのが好ましい。モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収遅延化剤を組成物に使用することによって、注射用組成物の持続性吸収をもたらすことができる。
【0064】
必要に応じて、上記列挙した種々の他の成分とともに適当な溶媒に必要量で活性化合物を組み入れ、次いで濾過滅菌することによって滅菌注射液を調製する。滅菌注射液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥技術であり、予め滅菌濾過された溶液に存在するいずれかの追加的所望成分を加えた活性成分の粉末が得られる。
【0065】
局所投与のために、純粋な形態、すなわち液体で本発明組成物を適用してもよい。しかし、固体または液体であってよい皮膚科学的に許容しうる担体と組み合わせた組成物または製剤として皮膚に投与するのが一般的に望ましい。
有用な固体担体として、タルク、クレー、微結晶セルロース、シリカ、アルミナなどの微粉末固体が挙げられる。有用な液体担体として、必要に応じて、非毒性界面活性剤の助けをかりて、本発明化合物が有効濃度で溶解または分散することができる水、アルコールまたはグリコールまたは水−アルコール/グリコール混和物が挙げられる。特定の使用にとっての特性を最適化するために、香料および追加の抗菌剤などの補助剤を加えることができる。得られる液体組成物は、含浸包帯および他の包帯に用いられる吸収剤パッドから適用するか、またはポンプ型またはエアロゾルスプレーを用いて、罹患領域にスプレーすることができる。
【0066】
合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩もしくはエステル、脂肪アルコール、修飾セルロースまたは修飾鉱物材料などの増粘剤を液体担体とともに用いて、使用者の皮膚に直接適用するための展延可能なペースト、ゲル、軟膏、石けんなどを形成することもできる。
グルタミンを皮膚へデリバリーするのに用いることができる有用な皮膚科学的組成物の例は、当業界で周知である;たとえば、Jacquetら(米国特許No. 4,608,392), Geria(米国特許No. 4,992,478), Smithら(米国特許No. 4,559,157)およびWortzman(米国特許No. 4,820,508)を参照。
【0067】
グルタミンおよび本発明組成物を眼への局所投与用に適合させることもできる。水性ビヒクル、ゲルまたは軟膏などの眼科学的に許容しうるビヒクルを用いる。このようなビヒクルは約pH 5〜6に緩衝され、保存剤、増粘剤および可溶化剤を必要に応じて含むことができる。組成物を点眼剤として製剤するのが好ましい。液体点眼用組成物の例は、0.1% w/vのヒアルロン酸ナトリウム(平均分子量1,800,000)または0.1% w/vのポリソルベート80を水溶液中に含む。液体組成物は、緩衝液、等張塩およびEDTAおよびチメリソール(thimerisol)などの保存剤を含んでもよい。
本発明の眼科用水性組成物は、眼科的に適合性のpHおよび浸透圧をもつ。これらの組成物が、たとえば、滅菌条件下での調製およびパッケージングおよび/または抗微生物量の眼科学的に許容しうる保存剤の包含などによる、微生物の成長を阻止する手段を組み込むのが好ましい。
【0068】
好ましい態様において、組成物は、インシトゥでゲル化可能な水性組成物、より好ましくはインシトゥでゲル化可能な水溶液である。このような組成物は、眼または眼の外表面における涙液に接触するとゲル化を促進するのに有効な濃度でゲル化剤を含む。適当なゲル化剤として、非限定的に、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのテトラ置換エチレンジアミンブロックコポリマー(ポロキサミン1307など);ポリカルボフィル;およびゲラン、カラギーナン(κ−カラギーナンおよびι−カラギーナンなど)、キトサンおよびアルギン酸ガムなどの多糖が挙げられる。
【0069】
本明細書における用語「インシトゥでゲル化可能」は、眼または眼の外表面における涙液に接触するとゲルを形成する低粘度の液体のみならず、眼に投与すると実質的に増加した粘度またはゲル堅度を示す、ゲル半流動体および揺変性ゲルなどのより粘稠な液体も含まれるものとして包括的に理解されるべきである。実際、本発明組成物をゲルとして製剤することは、たとえば、反射性まばたきによって引き起こされる流涙の結果としての投与後すぐの組成物の損失を最小化するという利点がありうる。投与に際し、組成物がさらなる粘度の増加またはゲル堅度を示すが好ましいけれども、最初のゲルが涙液の排液による散逸に対して十分に耐性があり、本明細書に特定する有効な滞留時間を提供するならば、このことは絶対に必要なものではない。
【0070】
本発明組成物を、眼科的デリバリー手段によって眼に投与することもできる。たとえば、コンタクトレンズを眼に装着する前あるいは眼に組成物着した後に、レンズに組成物を適用してもよい。
これらの調製物のいずれにおいても、グルタミンは安定な品質で保持され、投与の時間に十分に先だって患者に提供されうる。用時投与のために調製物を病院または患者の家に保管することができる。
たとえば、アミンなどの十分に塩基性の化合物を適当な酸と反応させて、生理的に許容しうるアニオンを得るこことによる、当業界で公知の標準的手順を用いて、医薬的に許容しうる塩を得てもよい。カルボン酸のアルカリ金属(ナトリウム、カリウムまたはリチウムなど)またはアルカリ土類金属(カルシウムなど)塩を製造することもできる。
【0071】
アミノ酸吸収を増加させることによる哺乳動物患者の治療方法
本発明組成物およびその種々のデリバリー方法は、種々の哺乳動物、特にヒトの生理的障害の治療方法において用いることができる。該方法は、上皮組織、特に胃腸上皮(中咽頭、食道、胃および結腸を含む)の障害の治療にとって最も有効である。
該方法は、患者の上皮組織へ投与するための治療有効用量の選択されたアミノ酸またはアミノ酸の組み合わせと、該アミノ酸の水溶解度および細胞吸収を増加させる有効量の炭水化物担体との組み合わせである前述の組成物を提供する。
本発明は、トリプトファン、チロシン、グルタミン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニンおよびフェニルアラニンといったような食事性アミノ酸などの制限された水溶解度を示すアミノ酸の治療レベルのデリバリーにとって特に有用である。たとえば、D−およびL−の両方のアミノ酸ならびにシトルリン、g−アミノ酪酸、ヒドロキシプロリンおよびオルニチンなどのアミノ酸は、本発明の細胞吸収増加方法によってデリバリーすることができる。
【0072】
本発明方法において投与される組成物に有用な炭水化物担体は、たとえば、D−アロース、D−アルトロース、D−アラビノース、D−エリトロース、D−エリトルロース、D−フルクトース、D−ガラクトース、D−グルコース、D−ブリセルアルデヒド、D−グロース、D−リキソース、D−イドース、D−マンノース、D−プシコース、D−リボース、D−リブロース、D−ソルボース、D−タガトース、D−タロース、D−トレロース、D−キシロース、D−キシルロース、マルトース、ラクトースおよびスクロースなどの単糖または二糖のいずれかの糖質から選ぶことができる。たとえば、虫歯を促進しないか、または血糖値における突然の上昇を引き起こさない炭水化物担体を選択することが重要である場合など、一部の患者あるいは生理的状態においては、ソルビトール、エリトリトール、マルチトール、マンニトールまたはキシリトールなどのポリオールまたは糖アルコールを選択するのが好ましい。
【0073】
子供にとって、糖アルコールが特に好ましい担体であり、標的細胞における所望の治療効果に加えてさらなる利点を生み出すことができる。たとえば、キシリトールは、小児用チューインガムに配合すると、肺炎連鎖球菌(ストレプトコッカス・ニューモニアエ)の成長を減少させ、急性中耳炎に対する予防効果をもつことが明らかにされている(Uhari, M.ら, Brit. Med. J.(1996) 313(7066): 1180−1184)。したがって、化学療法または骨髄移植後に、損なわれた口腔または食道上皮組織を治療するために用いられるチューインガム製剤におけるグルタミンのための炭水化物担体としてのキシリトールの使用は、病原体に対する保護的利点を提供することもできる。
【0074】
方法は、アミノ酸補給が指示される生理的障害の同定を含む。さらに詳しくは、本発明は、アミノ酸補給が治療的価値をもちうる生理的障害の症状を示す患者に、増加した細胞内アミノ酸補給をデリバリーする方法が提供される。数多くの生理的障害または疾患が、たとえば、不完全なアミノ酸代謝または不完全な吸収に関連づけられている。多くの状況において、高い細胞内濃度でアミノ酸をデリバリーするのが望ましい。ほとんどの状況において、制限された用量の選択されたアミノ酸(1種またはそれ以上)を投与することによってそうするのも好ましい。しかし、多くのアミノ酸が制限された水溶解度および細胞内吸収を示し、したがって、所望の効果を達成するために高用量で投与されなければならないので、このことは以前は不可能であった。アミノ酸補給が指示されており、したがって、本発明の方法がアミノ酸補給の細胞内デリバリーを増加させるために有利である生理的身体状態を以下に記載する。これらの例は、本明細書に記載の方法の用途を制限することを意図するものではなく、本発明方法が有用である多種多様な生理的障害の例として示すものである。
【0075】
短腸症候群の子供および成人の治療のためのアミノ酸吸収の増強
短腸症候群は、大腸の外科的切除に関連し、吸収のための表面領域の減少を引き起こす。腸の組織は、しばしば、痙攣および下痢などの症状を伴って炎症を起こす。重篤な短腸症候群の子供における食事耐性の改善、非経口栄養摂取の必要性の排除および腸機能の改善において、アミノ酸ベース完全乳児用調合乳が有効であることが実証されている(Bines, J.ら, J. Pediatr. Gastroenterol. Nutr.(1998) 26(2): 123−128)。本発明は、短腸症候群の子供および成人の両方におけるアミノ酸、特に、制限された水溶解度および細胞取り込みを示すアミノ酸(たとえば、トリプトファン、チロシン、グルタミン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニンおよびフェニルアラニンなど)の吸収の増加方法を提供する。短腸症候群の患者の治療に用いる場合、治療有効濃度のアミノ酸と有効量の炭水化物担体の組み合わせが、腸上皮へのアミノ酸の細胞取り込みのレベルを増加させることによって、より大きな利点が患者に提供され、満足できる治療レベルを達成するために投与されなければならないアミノ酸の量が減少する。
アミノ酸と炭水化物担体の組み合わせは、腸または結腸へのデリバリー用にコーティングされた錠剤、カプレット剤またはカプセル剤ならびに浣腸溶液または懸濁液などの種々の医薬的に許容しうる経路で投与することができる。治療用量は、患者の医師によって患者の年齢、身長・体重および栄養状態を考慮して決定される。
【0076】
透析患者におけるアミノ酸吸収の増強
透析患者は一般に悪い栄養状態を示す。しかし、8種の必須および9種の非必須アミノ酸の混合物の補給が、透析患者の健康と気分の両方を改善することが明らかにされている(Mastroiacovo, P.ら, Clin. Ther.(1993) 15(4): 698−704)。本発明方法においては、治療有効量におけるアミノ酸の組み合わせが、有効量の炭水化物担体と組み合わされて、アミノ酸の溶解度および細胞取り込みを増加させることによって、アミノ酸補給の治療効果を増加し、治療効果を達成するのに必要なアミノ酸の用量を減少させる。
透析患者にとって好ましい投与様式は、スクロースまたはキシリトールもしくはソルビトールなどのポリオールなどの有効量の炭水化物担体と組み合わせた治療有効量の種々のアミノ酸を含む腸溶性被覆カプセル剤、カプレット剤、錠剤または被覆ビーズである。
【0077】
創傷の治療のためのグルタミンの吸収の増強
グルタミンは、ヌクレオチド合成のための先駆体である。グルタミンは、タンパク質合成のアクチベーターおよびタンパク質分解のインヒビターの両方である。グルタミンは、グリコーゲン合成のアクチベーターであり、迅速に細胞が分裂するための代謝基質である。また、グルタミンは、上皮細胞のエネルギー源である。アミノ酸吸収を増強するために記載された組成物による表層性または非表層性のいずれかである創傷の治療は、上皮組織へのグルタミンの吸収を増加させ、より迅速な創傷治癒を促進する。しかし、グルタミン吸収の増加による創傷治癒の促進に加えて、本発明方法は、創傷を病原体による感染から保護する治療を提供する。感染した創傷を糖質で充填することは、何世紀にもわたって、実践されている。蜂蜜が、一つには高張濃度の糖質をもつことにより、抗菌特性をもつことは長い間知られている(Basson, N.ら, J. Dent. Assoc. S. Afr.(1994) 49(7): 339−341; Jeddar, A.ら, S. Afr. Med. J.(1985) 67(7): 257−258; Willix, D.ら, J. Appl. Bacteriol.(1992) 73(5): 388−394)。
【0078】
糖質とポビドン−ヨウ素の組み合わせは、創傷、火傷および潰瘍に対して患者を処置するのに用いると、迅速な治癒の促進、細菌汚染の減少および肉芽組織による欠損の充填において有効である(Knutson, R.ら, South Med. J.(1981) 74(11: 1329−1335)。しかし、高張糖質環境の抗菌特性がありつつも、ポビドン−ヨウ素は、白血球細胞を殺す。
したがって、グルタミンと炭水化物担体を組み合わせることは、創傷の処置にとって二重の利点を提供する:上皮細胞によって吸収されるグルタミンの増加が、上皮細胞のためのエネルギー源を提供して細胞分裂および治癒を促進すると同時に、細菌侵入から下層組織を保護するために必要な白血球細胞のためのエネルギー源を提供し、および炭水化物担体が、高浸透圧および低水利用可能性が細菌の成長を防ぐ環境を提供することによって細菌汚染から創傷の表面を保護する。
創傷の処置のために、治療有効量のグルタミンと炭水化物担体(スクロースまたは蜂蜜が好ましい)の組み合わせは、水およびグルタミンと混合した高濃度の糖質の半固体製剤として局所的に適用される。別法として、組み合わせは、患部への局所適用のための濃厚なシロップとして提供される。もう一つの適用の別法は、創傷領域へ適用される固体として製剤を提供することであり、創傷環境からその水性フラクションが引き出される。このような製剤は、創傷治療のための応急処置キットまたは他の緊急処置キット容易に設置することができる。
この組み合わせ剤は、治療の第1の目的が、感染から組織を保護することおよび新しい組織を迅速に再生させることである火傷の治療のために特に有効である。
【0079】
粘膜炎および口内炎の治療のためのグルタミン吸収の増強
粘膜炎は、口腔から肛門までの胃腸管の上皮組織の火傷様損傷または潰瘍様損傷を特徴とする炎症反応である。電離放射線または化学療法剤のいずれかへの曝露に起因する。口内炎は、潰瘍形成を伴うかまたは伴わない、口腔粘膜に影響を及ぼすいずれかの炎症反応である。特に粘膜炎は、潰瘍組織の感染によってさらに悪化することが多い。研究は、これまでに、グルタミン溶液の経口適用が、一部の骨髄移植患者および化学療法患者における粘膜炎に伴う症状を改善しうることを明らかにしている(Skubitz, K.およびP. Anderson, J. Lab. Clin. Med.(1996) 127(2): 223−228; Anderson, P.ら, Bone Marrow Transplant(1998) 22(4): 339−344; Anderson, P.ら, Cancer(1998) 83(7): 1433−1439; 米国特許No. 5,545,668(Skubitzら, August 13, 1996);および米国特許No. 5,438,075(Skubitzら, August 1, 1995)。本明細書に記載の組成物および方法を用いて、粘膜炎または口内炎の治療のために、グルタミンの絶対用量を増やすことなく、増加して有効な細胞内グルタミン濃度を胃腸系の内皮組織にデリバリーすることができる。
【0080】
本発明方法において、たとえば、潰瘍の治療用の口内洗浄、うがい、および飲み込み製剤、ロゼンジまたは硬キャンディーとして組成物を提供することができる。食道潰瘍には、砂糖飲料、ミルクセーキまたは凍結スラリーなどの飲料を用いることができる。生体分解性の挿入物を用いて、口および咽頭を治療することもできる。これらの製剤のいずれかを用いて、粘膜炎または口内炎の子供ならびに成人を治療することができるが、ポプシクルとして、またはシャーベット、氷菓子もしくはアイスクリームと組み合わせて、デリバリーされる炭水化物、グルタミンおよび香味剤の製剤が好ましい。これらのデリバリー方法は、潰瘍組織における冷やすことによる鎮静効果という追加される利点を提供する。チューインガム製剤、好ましくは半固体もしくは液体中心をもつ製剤は、口および食道潰瘍の治療に用いることもできる。
胃潰瘍の治療のために、炭水化物/グルタミン組成物を含む錠剤、カプレット剤、カプセル剤または被覆ビーズを投与することができる。腸潰瘍には、腸溶性または結腸性デリバリーのいずれかで被覆錠剤、カプレット剤、カプセル剤または被覆ビーズを投与することができる。腸溶性コーティングまたは結腸性デリバリーのためのコーティングを提供する方法は、当業界で公知であり、本明細書において前文に記載されている。
【0081】
クリプトスポリジウム症の治療のためのグルタミン吸収の増強
クリプトスポリジウム・パルヴムは、発展途上国における持続性の下痢の主たる原因である。その塩素に対する耐性により、幾つかの合衆国での給水においても驚異となっている。エイズ患者、高齢者および幼年者において特に問題をはらんでおり、生命を脅かす下痢を起こす。クリプトスポリジウム・パルヴムは、腸組織に感染するが、大部分の腸上皮の表層面を越えては感染しない。コブタモデルにおいて、クリプトスポリジウム感染中に、約2/3の腸柔突起表面領域が損なわれた。残りの上皮組織において、増加したグルタミン代謝は、塩素輸送メカニズムに連結したナトリウム−水素交換を伴う。塩素輸送メカニズムとのその直接的関連ゆえに、グルタミンは、クリプトスポリジウム感染による組織の修復にとって特に治療的に有効である(Guerrant, R., Emerging Infectious Diseases(1997) 3(1): 51−57)。感染した組織は、多くの吸収性表面領域が失われたが、炭水化物担体と治療用量のグルタミンを含む組成物で患者を処置することにより、本発明方法は、残りの細胞におけるグルタミン取り込みを増強させて、減少した吸収性表面領域を補う。
【0082】
腸デリバリーのために、被覆カプセル剤、錠剤またはカプレット剤を用いて、組成物を投与することができる。別法として、浣腸溶液として組成物を注入または投与して、グルタミン/炭水化物担体で腸の内層を被覆し、残りの腸上皮細胞へのグルタミン吸収を増強することができる。
グルタミンは、腸の内層の細胞間を移動し、クリプトスポリジウム・パルヴムなどの病原体を破壊する原因である白血球細胞のための一次的エネルギー源を提供することが知られているので、該方法は、疾病予防の要素としても有用である。したがって、本発明方法による上皮細胞および白血球へのグルタミン吸収増加は、腸の上皮内層の構造的完全性を維持しながら免疫応答を改善する方法を提供する。クリプトスポリジウム感染の危険がある患者のために、腸溶性被覆カプセル剤を投与して、上皮細胞の完全性を維持し、免疫応答を改善することができる。
【0083】
胃腸管における外科手術後の創傷治癒を改善するためのグルタミン吸収の増強
口腔、腸全体または一部の内部における外科的切除に続いて、本発明方法によって、上皮組織損傷を処置して、組織完全性を増加させ、創傷治癒を促進することができる。口腔外科手術に続いて、本発明組成物を含むうがいおよび飲み込み製剤、口内洗浄、ロゼンジ、キャンディーまたはチューインガム製剤により、患者に炭水化物担体と組み合わせた治療有効量のグルタミンを容易に投与することができるようになる。特に、口腔外科手術を受けた患者において、非齲蝕原性の炭水化物担体が好ましい。このような糖質担体として、たとえば、マルチトール、ラクチトール、ソルビトールおよびキシリトールが挙げられる。組成物に配合するのに最も好ましいポリオール炭水化物担体は、キシリトールである。
【0084】
腸の外科手術に続いて、被覆錠剤、カプレット剤、カプセル剤または被覆ビーズの剤形で組成物を投与することができる。錠剤、カプレット剤、カプセル剤または被覆ビーズは、腸溶性デリバリーのために、たとえば、酢酸フタル酸セルロース、酢酸トリメリット酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびカルボキシメチルエチルセルロースなどの有機溶媒でコーティングすることができる。錠剤、カプレット剤またはカプセル剤は、高いpH(pH7)で溶解するようにアクリルベース樹脂でコーティングして、回腸末端部および結腸へのデリバリーを提供することができる。別法として、カカオバターまたは他のグリセリドなどの基剤を用いて座薬の剤形で、または慣例の座薬基剤を含まない直腸錠剤として、グルタミン/炭水化物担体組成物のデリバリーを提供することができる。このような座薬用途のための組成物は、Mizunoら, 米国特許No. 4,462, 984およびHarwoodら, 米国特許No. 4,439,194に記載されている。
糖尿病患者の治療のためには、ソルビトールは腸で吸収されず、さらなる腸の不快感を引き起こしうるので、キシリトールが好ましい炭水化物担体である。
【0085】
低体重新生児の治療のためのグルタミン吸収の増強
Neuらは、腸溶性グルタミン補給を受ける極低体重新生児の生存率が増加していることを報告している(J. Pediatrics,(1997) 131(5): 691−699)。本発明方法は、真のグルタミン投与量を減少させると同時に、治療的細胞内グルタミン量を増加させることを提供する。低体重新生児においては、特に、より少量の栄養素の投与により所望の効果が達成されるのが必須である。
組成物のデリバリーには、経腸栄養チューブが好ましい。スクロースおよび高フルクトースコーンシロップが好ましいが、多くの炭水化物担体のいずれか一つを選択することができる。グルタミンの治療用量は、用量計算の標準的手段を用い、炭水化物担体と組み合わせることにより、グルタミン吸収が、グルタミン単独投与により達成される吸収と比べて少なくとも10倍まで増加することを考慮して、個々の医師によって決定される。栄養製剤に香味剤および安定化剤などの賦形剤を加えることができる。加える栄養素として、ビタミン、アミノ酸およびラクトフェリンなどの推奨された栄養素が挙げられる。
【0086】
ウイルスおよび細菌由来の皮膚科損傷を治療するためのグルタミン吸収の増強
多くのウイルス性疾患が、上皮病変によって認識される。これらには、たとえば、水痘帯状疱疹ウイルスを特徴とする、口の周囲の疱疹性病変、とびひに関連する病変および帯状疱疹として知られる痛みを伴う病変が含まれる。本発明方法を用いて、病変部にグルタミン/炭水化物担体組成物を局所適用することにより、このような病変を治療することができる。組成物中のグルタミン成分が、上皮細胞にエネルギーを提供することにより治癒を補助し、糖質が、さらなる感染から損傷または感染組織を保護するための抗菌特性を提供する。
局所適用には、グルタミン、炭水化物担体および安定化剤、ゲル化剤または増粘剤などの賦形剤を含むローション剤またはクリーム剤が好ましい。
【0087】
ヒト免疫不全ウイルスに感染した患者を治療するためのグルタミン吸収の増強
胃腸リンパ組織は身体における総リンパ球の90%以上を宿している。幾つかの研究は、胃腸上皮が、CD34+ CD4−前駆体の大きな集団を含むことを明らかにしている(Mattapallil, J.ら, J. Virol.(1999) 73(5): 4518−4523)。胃腸管もまた、サル免疫不全ウイルス感染におけるCD4+ T細胞欠乏およびウイルス複製の主要な部位であることを実証されている。他の研究は、グルタミンがTリンパ球誘導サイトカインの産生を増加させることを明らかにしている(Yaqoob, P.およびP. Calder, Cytokine(1998) 10(10): 790−794)。したがって、本発明方法による腸粘膜へのグルタミン吸収の増強は、HIV感染患者、特に感染の早期段階にある患者に対して治療的利点を提供することができる。ウイルス感染に対するサイトカイン応答の増強は、重要なウイルス複製部位における免疫系によるウイルス破壊に貢献することができる。
グルタミン/炭水化物担体組成物は、腸溶性被覆錠剤、カプレット剤、カプセル剤または被覆ビーズの形態で投与することができる。適当な糖質担体として、好ましくは、たとえば、スクロース、グルコース、高フルクトースコーンシロップおよびキシリトールが挙げられる。
本発明方法による推奨食事量のグルタミンの投与は、たとえば、10〜30倍のファクターで腸上皮へのグルタミンのデリバリーの増加をもたらしうるので、この量のグルタミンを毎日投与するのが好ましい。したがって、より少ない量の投与にでも、以前にグルタミン単独でより高用量で投与することにより達成された濃度よりもやや多いグルタミンの細胞内濃度を生み出すことができる。
【0088】
ガン療法のためのグルタミン吸収の増強
グルタミン補給は、腫瘍細胞に対する放射線療法と化学療法の両方の選択性を増加させる。グルタミン補給は、腫瘍の成長を減少させ、化学療法または放射線療法と併用すると、腫瘍体積における減少量を増加させる。本明細書は、グルタミン補給がナチュラルキラー細胞の活性を増加させることも明らかにしている。
グルタミン補給は、化学療法および放射線療法に対する耐性も増加させる。これは、細胞修復を達成するためのエネルギー源および手段をもつ正常細胞によって達成される。
本発明組成物および方法は、胃腸上皮細胞へのグルタミン吸収の増加を提供する。いったんこれらの細胞に吸収されると、より多くのグルタミンが身体の他の組織への循環に利用できるようになる。グルタミン吸収の増強は、腸におけるグルタチオン産生を増加させる手段も提供する。したがって、ガン療法は、胃腸上皮へのグルタミン吸収を増加させるのに有効な、スクロース、グルコース、キシロース、キシリトール、固形高フルクトースコーンシロップなどの炭水化物担体のある量との混合物においてグルタミンを毎日投与することからなりうるか、または該投与により増強されうる。本発明組成物および方法は、ヒトおよび獣医のガン療法の両方に用いることができる。
グルタミンの1日用量は、たとえば、身長・体重および年齢などの用量計算に影響を及ぼす当業者に周知のファクターを考慮して、個々の患者の医師によって決定される。本発明組成物および方法は、少なくとも10倍のファクター、より好ましくは100倍のファクターでグルタミン吸収を増加させるので、より低い用量で投与することができるが、ガン療法のためのグルタミンの推奨食事量は、少なくとも3〜4g/日の最大食事摂取が好ましい。
【0089】
アミノ酸吸収の増加方法の他の用途
患者における生理的障害を治療する方法は、最初は、グルタミンの投与という用語で記載されているが、本発明は、増強されたレベルのグルタミン単独の投与方法に限定することを意図するものではない。たとえば、D−セリンは、抗精神病薬の投与を組み合わせて投与すると、集積失調症の治療に有効であることが実証されている(Tsai, G.ら, Biol. Psychiatry(1998) 44(11): 1081−1089)。したがって、経口投与後の腸上皮へのD−セリンの吸収を増強せることにより、全身循環のための利用可能なD−セリンを増加させる方法を提供することができる。染色体の遺伝子障害であるカナバン病は、食事性アスパラギン酸の補給からの利点が提唱されている(Baslow, M. And T. Resnik, J. Mol. Neurosci.(1997) 9(2): 109−125)。したがって、疾患の早期発見は、わずかに25度にて0.778 g/100gの水溶性しかもたないアミノ酸であるアスパラギン酸の取り込みを増強させ、この疾患の特徴である脳の進行性の変性に対して保護する本発明方法により、アスパラギン酸補給に付随して行うことができる。
これらは、本発明方法によって提供される、アミノ酸吸収が増強されることを用いて治療的に処置されうる多くの生理的身体状態のうちのわずかに2つの例である。アミノ酸類が、治療価値をもつことがわかるので、本発明方法に記載したように、炭水化物担体と組み合わせてアミノ酸補給を提供することにより、食事補給はさらに増強されうる。
【0090】
上皮細胞へのアミノ酸吸収の増強の獣医用途
早期に乳離れしたブタは、腸萎縮を発症するので、腸上皮損傷を予防し、ブタ生産における利点を提供するためにグルタミン補給が求められている(Wuら, J. Nutr.(1996) 126(10): 2578−84)。本発明組成物および方法を用いて、上皮組織細胞へのアミノ酸吸収を増強し、それによってアミノ酸補給に関連するコストを減少させることができる。本発明組成物および方法は、化学療法を始めているイヌや他の哺乳動物の獣医学的処置にも有用である。たとえば、ヒト化学療法患者における胃腸潰瘍に関連して、ドキソルビシンは、血管肉腫などの多くの他の哺乳動物のガンに対する推奨される処置である。本発明組成物および方法は、哺乳動物患者の損傷を受けた上皮へのアミノ酸吸収ならびに胃腸上皮への吸収を増加させることによる全身適用可能なアミノ酸の増加の増強を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】図1および図2は、本発明の組成物および方法を用いて達成された増加したアミノ酸取り込みを説明するグラフである。アミノ酸グルタミンを、有効量の炭水化物担体と組み合わせて(炭水化物担体:アミノ酸=7:1の比率)(エスゲン(Aesgen)−14)、ならびにコントロールとして添加成分なしで飽和溶液として投与されたアミノ酸と組み合わせて(L−グルタミン飽和溶液(Glut Sat Sol))、CaCo細胞に投与した。記号の説明およびグラフに示されるように、グルタミン単独投与によって達成されたグルタミン濃度と比べて、アミノ酸と炭水化物担体の組み合わせで処置した細胞における細胞内グルタミン濃度は増加した。インキュベーション時間(秒)をX軸に示し、細胞グルタミン取り込みをY軸に示す。
【図2】図1および図2は、本発明の組成物および方法を用いて達成された増加したアミノ酸取り込みを説明するグラフである。アミノ酸グルタミンを、有効量の炭水化物担体と組み合わせて(炭水化物担体:アミノ酸=7:1の比率)(エスゲン−14)、ならびにコントロールとして添加成分なしで飽和溶液として投与されたアミノ酸と組み合わせて(L−グルタミン飽和溶液)、CaCo細胞に投与した。記号の説明およびグラフに示されるように、グルタミン単独投与によって達成されたグルタミン濃度と比べて、アミノ酸と炭水化物担体の組み合わせで処置した細胞における細胞内グルタミン濃度は増加した。インキュベーション時間(秒)をX軸に示し、細胞グルタミン取り込みをY軸に示す。
【図3】図3は、L−グルタミン細胞取り込みにおけるビヒクルの相対的効果を表す。
【図4】図4は、グリシルサルコシン細胞取り込みにおけるビヒクルの相対的効果を表す。
【図5】図5は、L−アスパラギン細胞取り込みにおけるビヒクルの相対的効果を表す。
【図6】図6は、アシクロビル細胞取り込みにおけるビヒクルの相対的効果を表す。
【図7】図7は、L−グルタミン細胞取り込み(半飽和から)におけるビヒクルの相対的効果を表す。
【図8】図8は、L−グルタミンのCaCo−2透過性を表す。
【図9】図9は、グリシルサルコシンのCaCo−2透過性を表す。
【図10】図10は、L−アスパラギンのCaCo−2透過性を表す。
【図11】図11は、アシクロビルのCaCo−2透過性を表す。
【図12】図12は、L−グルタミンのCaCo−2透過性(半飽和から)を表す。
【図13】図13は、ヒト線維芽細胞への取り込みにおける、飽和L−グルタミン(左ボックス)対エスゲン−14(右ボックス)の効果を表す。
【図14】図14は、ヒト臍細胞および上皮細胞へのL−グルタミン取り込みにおけるエスゲン−14の効果を表す。
【図15】図15は、DMBA+GLN(AES−14)、DMBA+遊離アミン(FA)、油(OIL)+GLN(AES−14)およびOIL+FAで処置したラットの腸グルタミン流束(パネルA)および腸グルタチオン流束(パネルB)を示す。
【図16】図16は、ゴマ油の胃管補給に続いて、AES−14(GLN)、イソ窒素性(isonitrogenous)遊離アミン(FA)または水を経口処置した1〜11週間後のラットにおける血清IGF−1濃度を示す。
【図17】図17は、ゴマ油中のDMBAの胃管補給に続いて、AES−14(GLN)、イソ窒素性遊離アミン(FA)または水を経口処置した1〜11週間後のラットにおける血清IGF−1濃度を示す。
【図18】図18は、実験的DMBA誘発性乳ガンにおいてのGSH(パネルA)およびGSSG(パネルB)の腫瘍レベルにおけるGLN(AES−14)補充の効果を示す。測定は、三重に行った。標準誤差バーを伴ったnmol/mgタンパク質として結果を表す。
【図19】図19は、DMBA誘発性乳腺腫瘍においてのカスパーゼ−3酵素活性におけるGLN(AES−14)補充の効果を示す。標準誤差バーを伴った405nmにおける吸光度として結果を表す。測定は、三重に行った。
【図20】図20は、相対的RT−PCRによって確証された、DMBAで処置したラットの乳腺腫瘍においてのBcl−2、Bax、カスパーゼ−3およびp21のmRNA発現におけるGLN(AES−14)補充の効果を示す。標準誤差バーを伴った任意単位として結果を表す。代表的な(n=5)反転アガロースゲル画像を各カラムの下に示す。
【図21】図21は、DMBA乳ガンモデルにおいてのGLN(AES−14)補充による非腫瘍乳房組織におけるIGF−1タンパク質発現の阻害を示す。
【図22】図22は、実験的DMBA誘発性乳ガンにおいてのIGF−1Rのタンパク質発現における食事性GLN(AES−14)の効果を示す。
【図23】図23は、ラットの実験的乳ガンにおいてのAktタンパク質発現における食事性GLN(AES−14)補充の阻害効果を示す。
【図24】図24は、実験的DMBA誘発性乳ガンをもつラットからの非腫瘍組織サンプルにおけるBcl−2タンパク質の減少を示す。
【図25】図25は、DMBA誘発性乳ガンモデルにおいてのBadタンパク質発現におけるGLN補充の効果を示す。
【図26】図26は、ラット空腸側底膜小胞において測定されたグルタチオン(GSH)輸送における経口摂取DMBAの効果を示す。
【図27】図27は、BMDAまたはゴマ油(コントロール)を経口摂取させた1週間後のラットの門脈血グルタチオン(GSH)濃度を示す。
【図28】図28は、ラット腸粘膜におけるグルタチオン(GSH)の濃度における経口摂取DMBAの効果を示す。
【図29】図29は、ゴマ油を与えられたラットの粘膜組織ならびにDMBAを胃管補給されたラットの粘膜組織および腫瘍組織のγ−グルタミルトランスペプチダーゼ(GT)活性を示す。
【図30】図30は、ゴマ油を与えられたラットの粘膜組織ならびにDMBAを胃管補給されたラットの粘膜組織および腫瘍組織のγ−グルタミルトシステインシンセターゼ活性を示す。
【図31】図31は、AES−14(GLN)、遊離アミン(FA)または水を胃管補給した後、ゴマ油中のDMBAまたはゴマ油コントロール(oil)を胃管補給し、実験期間中を通して経口投与した1〜11週間後のラットからサンプリングされたNK細胞のナチュラルキラー細胞活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0092】
以下の非限定的実施例により、本発明を詳しく説明する。
【実施例1】
【0093】
スクロースおよびソルビトールと組み合わせたグルタミンの細胞取り込みの評価
以下の実施例に示すように、本発明組成物は、ヒト胃腸上皮細胞へのアミノ酸グルタミンの溶解性および細胞吸収を改良することが明らかにされている。
1.材料および方法
蒸留脱イオン水(107 ml)を表1に示すスクロース、ソルビトールおよびグルタミンと賦形剤との混合物(エスゲン−14)(207 g)に加えた。
【表1】
コントロールとして、200 mlの蒸留脱衣温水を50 gのL−グルタミン(Ajinomoto, Raleigh NC)に加え、攪拌により混合する。両方のサンプルを室温にて1時間静置した。傾瀉して上清を残渣から分離し、細胞取り込み測定に用いた。
第1日に、6ウエル組織培養皿に、ヒト胃腸上皮細胞系由来の細胞(CaCo)を0.5 x 106細胞/ウエルの密度で播いた。第2日に、培養培地を正常成長培地またはL−グルタミン欠乏培地のいずれかに置き換えた。
第3日に、以下のプロトコルにしたがい、エスゲン−14溶液と並行してL−グルタミン溶液を用いて、正常成長培地(「正常」)およびL−グルタミン欠乏培地(「欠乏」)で培養した両方の細胞をグルタミン取り込みの比較のために評価した:2 mlの試験物質(エスゲン−14またはL−グルタミン溶液のいずれか)を適当なウエルに加え、次いで、37度にてインキュベートした。0、10、20、40および60秒の時点で、試験物質を吸引し、冷(4度)リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で細胞を3回洗浄し、次いで、1.0 mlの過塩素酸を加えた。細胞を擦り、次いでピペットで1.7 mlチューブに収集した。
収集した細胞を10秒間超音波処理し、500 μlの超音波処理細胞を1.7 mlチューブに移した。130 μlの2M KHCO3を加えて過塩素酸を中和し、得られる混合物を−80度にて一夜凍結させた。
解凍し、14,000 rpmで10秒間サンプルを遠心分離し、上清を1.7 mlチューブに移し、−80度にて凍結させた。得られる清澄化サンプルを解凍し、イオン水で1:3に希釈した。5 μlを回収し、10 μlの完全o−フタルジアルデヒド(Sigma P−0532)を加え、攪拌により混合する。室温にて2分間インキュベートした後、移動相として70:30のアセトニトリル:水を用いて、20 μlのサンプルをHypersil(登録商標)C18 Elite 5 μm HPLCカラムに注入した。μg/mlで測定したグルタミンレベルを340 nmで検出した。
【0094】
2.結果
結果を平均細胞グルタミン取り込み(μg/ml)として表2に示す。
【表2】
上記にまとめたように、グルタミン取り込みは、水性L−グルタミン単独で処理した細胞と比べてエスゲン−14で処理した細胞において、正常細胞(363x)および欠乏細胞(21x)の両方で有意に増加した。
【実施例2】
【0095】
薬物取り込みおよび透過性におけるAES−14の効果
本実験では、Caco−2細胞単層を通過する5つのモデル薬物(L−グルタミン、L−アスパラギン、グリシルサルコシンおよびアシクロビルの飽和溶液;およびL−グルタミンの半飽和溶液)におけるスクロース含有ビヒクルの細胞取り込みおよび透過性増強効果を測定した。アピカルからバソラテラル方向にて、ビヒクル有りまたは無しで、各化合物の取り込みおよび透過性を測定した。
【0096】
方法
物質:
透過性の低い2つのアミノ酸(L−グルタミン、L−アスパラギン)、ジペプチド(グリシルサルコシン)および治療薬(アシクロビル)を調査した。各化合物をトリチュレートした。単層/細胞の完全性の評価として(すなわち、取り込み/透過性の低さのマーカーとして)14C−マンニトールを用いた。
取り込みおよび透過性評価:
Caco−2単層を通過する化合物の細胞取り込みおよび透過性を測定した。21日間よりも4日間を必要とする最近開発された迅速培養システムを用いて、Caco−2単層を成長させた(Lentzら,(2000), Int. J. Pharm., 200(1): 41−51)。
取り込みおよび透過性実験を、ブランクAES−1(すなわち、L−グルタミン無しのAES−1)または10 mM HEPES 緩衝液(溶液pH=6.8)を含むハンクス平衡塩溶液(HBSS)のいずれか中、Caco−2単層を通過させて、37度および50振動/分にて2回繰り返して行った。4つの化合物それぞれに対して医薬ビヒクルが存在する場合にHBSSを用いた。ビヒクルの効果を考慮する場合に、ブランクAES−14が、L−アスパラギン、グリシルサルコシン、アシクロビルおよび「半飽和」L−グルタミン実験のためのマトリックスであった。L−グルタミンを含むAES−14は、L−グルタミンについて調査した。単層完全性は、14C−マンニトール透過性を用いてモニターした。マンニトール取り込みは、単独で調査した。
10秒、60秒および5分の間隔でアピカルからバソラテラル方向にて、Transwell(登録商標)インサートを用いて、取り込みおよび透過性調査を行った。9つの飽和系(半飽和L−グルタミンを除く)を含むドナー溶液が、取り込み/透過性調査のため源溶液である。飽和溶液群は、5.4 g L−グルタミン/100 ml、1 g L−アスパラギン/10 ml、2 g グリシルサルコシン/10 mlおよび16 mg アシクロビル/10 ml 系濃度(Kristol,(1999), J. Pharm. Sci., 88: 109−110)を利用することによって得た(ここで、過剰の固体溶質は、飽和を確実にするために存在した):
L−グルタミン/HBSSの飽和溶液(5.4g/100 ml)
L−アスパラギン/HBSSの飽和溶液(1g/10 ml)
グリシルサルコシン/HBSSの飽和溶液(2g/10 ml)
アシクロビル/HBSS AES−14の飽和溶液(16 mg/10 ml)
L−アスパラギン/ブランク AES−14の飽和溶液(1g/10 ml)
グリシルサルコシン/ブランクAES−14の飽和溶液(16 mg/10 ml)
2.3g/100 ml L−グルタミン/ブランクAES−14(すなわち、半飽和L−グルタミン)。
液体シンチレーションカウンティングによって、14C−マンニトールおよび3H−薬物を定量した。取り込みの調査のために、指定の時点(10秒、60秒および5分)で、ドナー溶液を吸引した。氷冷HBSSで2回細胞単層を洗浄して、残留結合物を除去し、次いで、1 mlの細胞可溶化剤Solvable(登録商標)に溶解した。5 mlのシンチレーションカクテル(Econosafe(登録商標))に細胞溶解液(0.5 ml)を加え、液体シンチレーションカウンター(Beckman LS5801、Columbia、MD)で計数した。透過性調査のために、5 mlのシンチレーションカクテル(Econosafe(登録商標))に0.5 mlの受容溶液を加え、液体シンチレーションカウンターで計数した。
薬物の濃度未知の飽和溶液を用いたので、絶対的取り込みは計算することができなかった。したがって、取り込みにおけるビヒクルの効果は、ビヒクル対非ビヒクルから細胞単層への相対的薬物取り込み(すなわち、放射標識トレーサーにおけるわずかな差に対して標準化した後の取り込みの比率)に関して、後記に考察される(図3−7)。
等式1を用いて、各実験における透過性を計算した(図8−12)。
【数1】
[ここで、Pは透過性、dM/dtは受容コンパートメントにおける薬物塊蓄積の速度(すなわち、放射活性)、Aは領域およびCdはドナー薬物濃度(すなわち、放射活性)である](Polliら,(1998)、Pharm. Res.、15: 47−52)。透過性は、絶対的測定(単位cm/秒または速度)であり、絶対的薬物濃度が未知であっても決定することができる。。
【0097】
結果
取り込み:
図3−7において、L−グルタミン、グリシルサルコシン、L−アスパラギン、アシクロビルおよびL−グルタミン(半強度)の細胞への取り込みにおけるビヒクルの相対的効果を示す。もし、取り込みが各ビヒクルおよびHBSSからのものと同一ならば、相対的取り込みは1.0である。4つの薬物および半強度L−グルタミンのすべてについて、相対的取り込みは、1.0を越えた。図3−6において、L−グルタミン、L−アスパラギン、グリシルサルコシンおよびアシクロビルについて、ビヒクルは、細胞取り込みを約4倍に増強した。おそらく、より少ない程度で、ビヒクルは半強度L−グルタミンを増強した(図7)。
下記表3において、マンニトール相対的取り込みにおいてビヒクルは効果がなかった。図3−7と同時に行われた、これらのマンニトールの調査は、取り込み強化に関して、ビヒクルの効果がマンニトールと他の化合物では相異することを示した。したがって、糖類の取り込み自体は、明らかに増加されず、溶液、分散液またはゲル中にある糖類は、用語「生物活性作用物質」から排除されうる。
【表3】
透過性:
図8―12において、L−グルタミン、グリシルサルコシン、L−アスパラギン、アシクロビルおよびL−グルタミン(半強度)の透過性におけるエスゲン−14ビヒクルの相対的効果を示す。取り込みにおける相対的ビヒクルの効果(すなわち、ビヒクル対ビヒクル無しの取り込みの比率)を示す前述の取り込みデータとは相異して、透過性は、各製剤(ビヒクル無しおよびビヒクル有り)について、絶対値で測定され、計算される。透過性における2倍の変動は、典型的実験変動内にあるので、これらの結果は、透過性においてビヒクルが効果がないことを示す。同様に、ビヒクルは、マンニトール透過性において効果がなかった(表3)。
図13において、ヒト線維芽細胞へのL−グルタミン取り込み(右ボックス)対飽和L−グルタミン取り込み(左ボックス)におけるエスゲン−14ビヒクルの効果を示す。図14は、ヒト内皮細胞へのL−グルタミン吸収における効果を示す。チャートにおいて、飽和L−グルタミン単独の効果は見られなかった。
5分間が、従来のCaco−2の透過性研究にとって非常に短時間の枠を意味することに留意すべきである。いずれかの可能なビヒクル効果を観察することの確率を減少させながら5分後に定常状態が達成されることは起こりそうにない。
【0098】
まとめ
L−グルタミン、L−アスパラギン、グリシルサルコシンおよびアシクロビルは、正常な生理的条件下でそれぞれ受動膜貫通特性の乏しい2つのアミノ酸、ペプチドおよび抗ウイルス薬を表す。したがって、それらの細胞取り込みおよび膜貫通性の増強は、ドラッグデリバリーの観点から利点がある。L−グルタミン、L−アスパラギン、グリシルサルコシンおよびアシクロビルの飽和溶液について、AES−14ビヒクルは、その細胞薬物取り込みを4倍に増強した。この細胞への薬物取り込みの増強は、迅速に(すなわち、1分以内で)生じ、実験時間(5分間)を越えて持続した。おそらく、より少ない程度で、ビヒクルは、半飽和L−グルタミンを増強した。ビヒクルは、マンニトール取り込みに対しては効果がなかった。非常に短い5分間という時間にわたっての透過性にかんして、ビヒクルは、いずれの化合物に対しても効果がなかった。
【表4】
【実施例3】
【0099】
経口AES−14は、DMBAによって妨害された胃のグルタチオン産生を復活させる
序論:
経口グルタミン(GLN)がDMBA誘発性乳ガンを予防するメカニズムは、未知である。GLNは、ラットにおいて胃グルタチオン(GSH)の負の抽出を3倍にするが、7,12−ジメチルベンズ[a]アントラセン(DMBA)は、それを有意に妨害する。実際の胃のGSH流束は、報告されていない。我々は、胃がGSHの産生者であり、DMBAが胃のGSH産生をブロックし、補給的経口GLNがこの効果をアンタゴナイズすると仮定した。
方法:
80匹のスプラーグ−ドーリーラットを無作為に4つのグループ(n=20/グループ)に分ける:DMBA+GLN、DMBA+FA、OIL+GLN、OIL+FA。ラット(50日齢)に20 mgのDMBAまたは油(Oil)を胃管補給にて1回だけ与えた。ラットにAES−14(1 gm GLN/kg/日)またはイソ窒素性量のフレアミン(FA)をDMBAの1週間前から1週間後の屠殺まで胃管補給にて与えた(胃のGSH抽出における最大の効果)。GLNおよびGSHレベルのために動脈血および門脈血を採取し、14−C−PAHを用いて血流を測定する。胃のGLNおよびGSH流束(取り込みまたは産生)を計算した。
結果:
DMBAは、OIL+FAにおいて正常なGSH産生を抑止する(負の流束)が、GLN代謝には影響を及ぼさない(図15)。GLNは、DMBA+GLNにおいてGSH産生を維持する(図15)。
結論:
AES−14の経口投与は、DMBA処置動物において正常なGSH産生を復活させ、このモデルにおけるGLNが乳ガンを予防するメカニズムの一つが示唆される。DMBA処置動物においてGLNの取り込みが変化しないことは、実際の細胞内産生よりもむしろGSH輸送の遮断を示す。
【実施例4】
【0100】
経口AES−14は、放射線傷害から乳房組織を保護する。
乳房温存療法(BCT)後の胸の美容的結果は、皮膚および周囲の組織への放射傷害によって部分的に制限される。前臨床試験において、グルタミン(GLN)が、おそらくグルタチオン(GSH)代謝のアップレギュレーションを介して、小腸に対する急性および慢性の放射線傷害の両方を有意に減少させることが明らかにされている。GLNを提供するためのAES−14の経口投与は、乳房腫瘍組織内のGSHを増加させることなく正常な細胞内乳房GSHを倍増する。したがって、われわれは、BCT患者においてGLNが正常乳房組織への放射線傷害を安全に予防するものと仮定した。
この理論を2つの部分において試験した。最初に、経口AES−14の3日前および後のヒト乳房腫瘍からのバイオプシーは、細胞内腫瘍GSHにおいて有意な変化を示さなかった。放射線療法(5,000 cGy)の1週間前から1週間後まで経口AES−14(30 gm GLN/日、およそ0.5 gm GLN/kg/日)またはプラセボに対して17人の患者を無作為化する第3相予備実験を行った。7週間週一度および2年間3ヶ月毎に
急性および慢性の放射線傷害に対して、RTOGスケール、第0週および第7週における皮膚バイオプシー、GLNおよびGSHレベル、超音波、乳房エックス線像密度、リンパ浮腫、生活の質および一般状態を用いて、患者を調査した。
皮膚の程度に対するRTOG急性放射線罹患率スコアリング基準は0(変化なし)〜4(壊死)である。スコア2(湿性剥離)は、治療の失敗とみなした。プラセボグループが1.4+0.2であるのに比べて、経口AES−14を受けている患者の平均スコアは0.9+0.2 SEMであった。プラセボグループのすべての患者は、最初の7週間の間にスコア2またはそれ以上に達した。プラセボ患者8人のうち2人は、放射線療法の延期を必要とした。しかし、4人のうちスコア3のもう一人の患者は、放射線を延期しなかった。AES−14グループの9人の患者のうち4人のみが、スコア2であり、スコア3はいない(p=0.03 AES−14対プラセボ、フィッシャーの正確な確率)。12ヶ月の時点で、プラセボグループの8人の患者のうち4人は、3人が鎮痛薬を必要とする痛みを訴え、8人のうち6人が顕著な浮腫を有し、8人のうち4人が放射線を受けた乳房の密度および堅さの増加を示した。AES−14グループでは、9人のうち2人が鎮痛薬を必要としない程度の軽度の痛みを訴え、浮腫を生じたものはおらず、1人の患者が乳房密度の最少の増加を示した(p=0.01、AES−14対プラセボ、フィッシャーの正確な確率)。2年間の追跡調査において、2人のプラセボ患者が局所的に再発し、GLNグループではいなかった。美容的スコアは、AES−14グループにおいて平均して優秀であった(9.2+0.6)が、プラセボグループにおいてはまあまあよかった(7.3+1.0)。
この予備実験の結果は、経口GLN補給が、乳房に対する急性および慢性放射線罹病率の両方を減少させるのに安全で有効な方法であり、美容面を改善することができることを示唆する。
【実施例5】
【0101】
血清IGF−1レベルにおけるグルタミン(AES−14)補給の効果
インスリン様成長因子−1(IGF−1)レベルがより高いことは、インビトロおよびインビボでの乳房における細胞増殖の速度がより速いことと相関関係にある(Ma、J.ら、JNCI 91:620、1999; Hinkinson、S.E.ら、Lancet 351:1393、1998)。我々は、経口グルタミンで見られる腫瘍成長の阻害が、血清IFG−1レベルの低下によるものであると仮定した。このことは、IGF−1の排出のメカニズムの一つがGSHと複合しているIGF−1を介しているという知識に基づいている。肝臓へのGSHレベルの増加はこの排出を促進する。
方法:
192匹の50日齢の雌性スプラーグ−ドーリーラットに、無作為に胃管補給にて1 gm/kg/日の3%Gln水溶液、イソ窒素性遊離アミン(必須および非必須アミノ酸の混合物、FA)または水を与え、TD96163固形飼料の制限食事で同時飼育し、0時点では、胃管補給にてゴマ油中の100 mg/kgのDMBAを与え、コントロールとしてコントロール油を与えた。コントロールグループにおける100%腫瘍形成を促進するための残りの実験において、100 mg/kg用量のDEMBAおよび同じタイミングを用いた。1、2、4および11週の時点で各グループ(n=48)からのラットを屠殺した。動脈Gln、血清IGF−1レベルおよび腫瘍成長を時間とともに測定した。使用説明書にしたがってDSL−2900 Rat Radioimmunoassay Kit(Diagnostic Systems Laboratories、Inc.、Texas)を用いて血清IGF−1レベルを測定した。
結果:
AES−14としての経口Glnは、動脈GlnおよびGSHレベルを上昇させ(〜10%、データ示さず)、IGF−1血清レベルを低下させた(〜10−30%)(図16および17)。IGF−1レベルの低下は、DMBAの存在または不在下で長期にわたって持続した。Glnの経口補給により、ラットモデルにおけるDMBAの発ガンはDMBA+FAおよびDMBA+H2Oに対して50%、p<0.05まで再度有意に減少した。これは、80 mg/kg DMBAを用いる80〜90%の減少に匹敵する。IGF−1レベルにおける減少量は、Glnグループにおける腫瘍成長の減少は、このモデルにおいてタキソフェンで見られるものと類似する(Jordan、VC、Reviews on Endoc. Rel. Cancer(October Suppl) 49−55、1978)。
【実施例6】
【0102】
グルタミン補給は、アポトーシスを増進することにより、7,12−ジメチルベンズ[a]アントラセン誘発性乳ガンにおける腫瘍の発生を阻害する。
概論:
GLNが腫瘍細胞の成長をインビトロにおいて刺激するという事実にもかかわらず、GLN補給は、腫瘍の成長をインビボにおいて有意に減少させ、放射線処置および化学療法の両方において腫瘍の殺傷を増強する(Klimbergら、JPEN、16: 1606−09(1992)、Farrら、JPEN、18: 471−76(1994)、Rouseら、Ann. Surg.、221: 420−26(1995))。腫瘍の成長におけるGLNの阻害効果がグルタチオン(GSH)生成の刺激により生じることが仮定されている(Fengら、Surg. Forum、XLVII: 524−526(1996))。GSHは、最も豊富な天然の抗酸化剤であり、感染、活性酸素および発ガン性物質に対する身体の防御において中心的役割を担う(Larssonら、In: The Metabolic and Molecular Basis of Inherited Disease(Eds.Scriver CF、Beaudet AL、Sly WS & Vallee D)、McGraw Hill、New York 8th edition p. 2205−2216(2001))。しかし、近年の研究は、GSHレベルが、乳房、結腸、卵巣および肺ガン組織において正常組織と比べて上昇することを実証している。腫瘍GSHレベルの上昇は、化学療法に対する耐性の増強に関連があった(Schnelldorferら、Cancer、89: 1440−1447(2000))。したがって、腫瘍GSHの選択的欠乏は、腫瘍の成長を阻害することができ、ガン予防において新たな有望な方策を提供する。
現在、アポトーシスの阻害が、発ガンプロセスにおいて役割を演じることが、一般的に容認されている。機能的研究が、抗アポトーシス性Bcl−2ファミリーのメンバー(Bcl−2、Bcl−XL、Mcl−1、A1)の発現の増加またはアポトーシス促進性のBcl−2ファミリーのメンバー(Bad、Bax、Bid、Bik、Bak、Bcl−XS)の発現の減少が、ミトコンドリア経路を阻害することができることを決定している(Kaufmannら、BioEssays、22:1007−1017(2000)およびReed、J. Cell Biol.、124: 1−6(1994))。GSHおよびBcl−2のレベルの間の正の相関関係が示唆されている(Voehringer、Free Radic. Biol. Med.、27: 945−950(1999) and Hall、Eur J of Clin. Investig.、29:238−245(1999))。たとえば、ミトコンドリアの外膜におけるBcl−2の過剰発現が、多くのアポトーシス性トリガーに曝された細胞における活性酸素種の形成を阻害することが実証されている(Hockenberyら、Cell、75: 241−251(1993))。DMBAは、多感式芳香族炭化水素であり、酸化を介して生物体において代謝され、DNA付加体を形成するジオール−エポキシドを生成する(Dippleら、Chem.− Biol. Interactions、20: 17−26(1978)およびWei、Med. Hypth.、39:267(1992))。成熟期ラットへのDMBAの単回投与は、DMBA適用後約11週間で100%の動物に管起源の乳ガンを誘発する(Hugginsら、Nature、189: 204−207(1961))。しかし、我々は、これまでに、ラットにおけるDMBA誘発性乳ガンが、GSH生成の有意な阻害に関連があり、GSH欠乏を引き起こすことを明らかにしている(Caoら、J. Surg. Res.、100:135−140(2001)。しかし、GLN補給は、腫瘍の成長を有意に減少させ、血液、乳房組織および胃粘膜におけるGSHレベルの低下を復活させた(Klimbergら、Am. J. Surg.、172:418−424(1996))。これらの結果に基づいて、我々は、GLNがガン細胞においてGSH欠乏によりアポトーシスを刺激するということを仮定した。したがって、腫瘍細胞におけるGSHレベルおよびカスパーゼ−3の活性におけるGLNの効果ならびに腫瘍におけるカスパーゼ−3Bcl−2、Baxおよびp21の遺伝子発現をここに実験した。
【0103】
材料および方法:
実験動物および処置
50日齢以下、体重約150 gのtime−dated成熟期雌性スプラーグ−ドーリーラット(Harlan Sprague−Dawley、Indianapolis、IN)を用いた。すべての実験は、Central Arkansas Veterans Healthcare Systemにおける動物実験委員会によって認可された。ラットは、動物飼育施設内の標準ケージにて飼育し、12時間の明暗サイクルに付した。実験期間中、ラットは、固形飼料(TD 96163)の所定の食餌で同時飼育され、水を自由に与えられた。50日齢にて、ラットを無作為に2つの実験グループに分け、ビヒクルとしてゴマ油中の100 mg/kgのDMBAを単回投与した。全実験継続期間中、すべての実験動物に、GLN(1 g/kg/日)懸濁液製剤(AES−14)(n=16)または水(n=16)のいずれかを1日1回胃管補給した。腫瘍の発生について毎週動物を検査し、体重を記録した。DMBA適用後11週で動物を屠殺し、腫瘍の数、体積および重量を記録した。標準的公式:幅2×長さ×0.52(Ingberら、Phys. Rev.、42 :7057(1990))を用いて腫瘍の体積を計算し、立方センチメートルで表した。各実験グループからの10個の腫瘍を本実施例に用いた。組織サンプルを集め、ドライアイスで急速冷凍し、使用するまで−80度で保存した。
【0104】
GSH測定
Tietzeにより記載され(Ann. Biochem.、27:502−522(1969))、Andersonにより変更された (In: Glutathione、vol. 1、Dophin D(ed). New York: John Wiley & Sons、pg. 340−365)標準的酵素リサイクリング法により腫瘍中のGSHおよびGSSG含量を測定した。簡単に述べると、0.5 gの組織を2.5のml 5% 5−スルホサリチル酸でホモジナイズし、タンパク質含量を測定し、50度にて15分間、5000×gでサンプルを遠心分離した。10μlの上清を1 mlの反応混合物(0.2 mMの還元ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート、0.6 mMの5,5−ジチオ−ビス−2−ニトロ安息香酸および1.33単位のGSHレダクターゼ)に加え、412 nmでの吸光度を測定した。GSHジスルフィド(GSSG)含量を決定するために、0.5 mlの上清を10 μlの2−ビニルピリジンおよび60 μlのトリエタノールアミンと混合して、Griffithの方法(Anal. Biochem.、106:207−212)によりGSHを除去し、次いで上記手順にしたがって測定した。タンパク質のmgによりデータを標準化し、nM/タンパク質mgとして表した。
【0105】
カスパーゼ−3アッセイ
カスパーゼ−3比色アッセイ(R&D System、Minneapolis、MN)によって、腫瘍の組織におけるカスパーゼ−3の酵素活性を測定した。簡単に述べると、100 μgの組織抽出物を50 μlの反応緩衝液および5 μlのカスパーゼ−3基質DEVDと混合し、発色団p−ニトロアニリン(pNA)と複合させ、37度にて1時間インキュベートした。405 nmにて分光高度計により、p−ニトロアニリドの放出による色反応の強度を測定した。計算前に各サンプル読み取り値からブランク値を減じた。データは、405 nmにおける吸光度(OD)として表す。
【0106】
RNA抽出および相対的RT−PCRによる遺伝子産物の検出
RNeasyミニキット(Qiagen、Chatsworth、CA)により全RNAを単離した。Ready−To−Go You−Prime First−Strandビーズ(Amersham Pharmacia Biotech Inc、Piscataway、NJ)およびオリゴ(dT)(Promega、Madison、WI)を用いてRNA(1 μg)を逆転写した。以下のプライマーを用いる続いてのPCR増幅のためのテンプレートとして第1鎖cDNA(3 μl)を用いた:カスパーゼ−3、フォワード、5’ CGATGCAGCTAACCTCAGAGA(配列番号:1)、リバース、5’ CCTTCCGGTTAACACGAGTGA(配列番号:2); p21、フォワードd: 5’ GATCCTGGTGATGTCCGACCT(配列番号:3)、リバース: 5’ GGAACTTTGACTTCGCCACTGA(配列番号:4)。ラットBax Dual−PCRキットおよびラットBcl−2 Dual−PCRキット(Maxim Biotech、Inc、San Fransisco、CA)を用いて、Bax−およびBcl−2を検査した。Qiagen(Chatsworth、CA)から購入したTaq PCRマスターミックスおよびカスパーゼ−3およびp21増幅用の各プライマー0.20 pmolを用い、総量25 μlで、あるいはBaxおよびBcl−2のための使用説明書にしたがって、PCRを行った。Perkin−Elmer 2400サーマルサイクラーを用い、94度(60秒)および適当なアニーリング温度(90秒)、次いで、72度にて10分間を35サイクル行った。内部コントロールとして18Sリボソーム単位を同時増幅することによって、各転写物の量を定量した(Ambion、Austin、TX)。増幅したcDNAを、100 ng/mlの臭化エチジウムを含む1.5%アガロースゲルでの電気泳動に付した。電気泳動の完了時に、ゲルを調べ、紫外線下で写真を撮影した。同じチューブで同じサンプルから増幅された18S rRNAのレベルと比較して、各転写物の量を計算した。
【0107】
デンシトメトリー
IBM用Scionイメージプログラム(Scion Corporation)を用いて、RT−PCRから得られたバンドの領域および密度を測定した。各標的遺伝子および18S rRNAのシグナルの比率を個々に計算した。結果は、相対的な任意の単位で表し、統計的に分析する。
【0108】
統計的分析
Windows、バージョン4.5用の統計ソフトウェアStatViewを用いるANOVAの一元分析により、グループ間の比較を行った。すべてのデータは、平均±標準誤差(SE)で表した。結果(P<0.05)は、統計的に有意であるとみなされた。
【0109】
結果:
DMBAの発ガン性
実験開始時または屠殺時において両方のグループからの動物の平均体重に有意な差はなかった。すべてのラットは、11週間の実験期間中に重量を獲得した。実験終了時にGLN補給グループのラットの50%が腫瘍を生じなかった。このグループの大部分の動物が1個の腫瘍を生じ、2匹のラットが3個の腫瘍をそれぞれ生じた。GLNの代わりに水を与えられたグループにおいて、100%のラットが乳ガンになり、6匹の動物が3および4個の腫瘍をそれぞれ生じた。水を与えたグループにおける腫瘍の総数が26個であるのに対して、GLNを与えた実験グループでは12個であった。水処置グループにおける腫瘍の重量が0.07〜19.7 gの間を変動し、平均腫瘍重量が3.9 gであったのに対して、GLN処置グループでは、0.6〜6 gの間を変動し、平均腫瘍重量は3.8 gであった。
【0110】
GLNの補給は、腫瘍GSHレベルを減少させる
還元グルタチオンレベルの減少は22%であった(平均値±SE、18.00±3.713対22.980±3.535)、P<0.05(P=0.4)(図18のパネルA)。腫瘍中の酸化グルタチオンレベルにおける40%以上の減少が、GLN補給の結果として実証された(ng/タンパク質μg±SEにおけるGSSG濃度の平均値は、水処置グループでは0.703±0.131であるのに対して、GLN処置グループでは1.188±0.171である、P<0.05)(図18のパネルB)。
【0111】
カスパーゼ−3酵素活性におけるGLN補給の効果
GLN処置動物から、カスパーゼ−3酵素活性が、腫瘍組織において有意に上昇することが見出された(405 nmでの光学密度単位において、平均値±SE、0.283±0.183対0.140±0.035、P<0.05)(図19)。
【0112】
GLNはBcl−2をダウンレギュレートし、Bax、カスパーゼ−3およびp21をアップレギュレートした
相対的RT−PCRの平均によって得られた遺伝子発現分析および定量的デンシトメトリー分析からの結果を図20に示す。GLN補給の結果として、GLNを与えられた動物から集められた腫瘍においては、水を胃管補給された動物と比較して、Bcl−2の34%阻害が得られた(平均値±SE、任意の単位において、1265±88対1893±130、P<0.05)。同時に、GLN強化食餌は、Baxの発現において27%の増加(平均値±SE、任意の単位において、1371±79対1150±41、P<0.05);カスパーゼ−3の発現において23%の増加(平均値±SE、任意の単位において、2579±213対1989±141、P<0.05);およびp21の発現において23%の増加(平均値±SE、任意の単位において、2851±177対2167±161、P<0.05)をもたらした。
【0113】
考察
本実施例の主な焦点は、腫瘍細胞中のGSHレベルおよびアポトーシスの活性化におけるGLNの効果であった。結果は、GLN補給が、GSHの20%の減少およびGSSGの41%の減少をもたらすことを実証する。最も重要な点は、腫瘍GSHにおける減少が、カスパーゼ−3の酵素活性におけるほぼ50%の増加に相関したことである。カスパーゼ−3活性の増加は、相対的RT−PCR分析によって示されるように、カスパーゼ−3およびBax遺伝子発現のアップレギュレーションに関連があった。GLNは、主な抗アポトーシス性タンパク質Bcl−2をガン細胞において34%までダウンレギュレートした。さらに、細胞増殖をコントロールすることが知られている、サイクリン依存性キナーゼのインヒビターであるp21のアップレギュレーションを実証した。
【0114】
アポトーシスの促進におけるGSH欠乏の重要性が、いくつかのインビトロモデルにおいて実証されている(Bojesら、Biochem J.、325:315−319(1997)、Hoら、Mol. Carcinog.、19: 101−113(1997)およびRothら、Nutrition、18: 217−221(2002))。GSHレベルの変化が、Bcl−2ファミリーのタンパク質の発現を調節することによってアポトーシスに影響を及ぼすことが見出されている(Bojesら、Biochem J.、325:315−319(1997)およびVoehringer、Free Radic. Biol. Med.、27:945−950(1999))。GSH欠乏が必要であり、アポトーシス性ミトコンドリアシグナル経路において重要なイベントであるチトクロームcの放出を誘発するのに十分であることも示唆されている。アポトーシスに関連があるミトコンドリアの変化は、チャネルの開口および細胞質ゾルへのチトクロームcの放出を含み、細胞質ゾルからミトコンドリアへのBcl−2ファミリーのアポトーシス促進性のメンバーのいくつかの転移を引き起こし、アポトーシスの活性化をもたらすと考えられる(Coppolaら、Biochem. Soc. Trans.、28:56−61(2000))。Obradorら(Free Radic. Biol. Med.、3:642−650(2001)は、GLN強化食餌が、腫瘍ミトコンドリア内での酸化還元状態におけるグルタチオンの変化を介してアポトーシス性細胞死を活性化することを報告した。GLNは、正常細胞においてはGSH合成を増進し、腫瘍細胞においては増進しないが、これまでは、GSHの合成にとって速度制限基質であるとは考えられていない。本実施例では、GLN(GLN後に18 ng/タンパク質mg after対GLNなしで23 ng/タンパク質mg)を与えられたラットから収集した腫瘍組織サンプルにおけるGSHおよびGSSGレベルの減少が見出された。GSSGのレベルにおけるGLNの効果は、よりめざましかった(腫瘍細胞における40%減少よりも)。しかし、実験モデルにおけるカスパーゼ−3活性の増加と相関するGSSGの強い還元は、GSSGレベルの増加がアポトーシスを刺激する(Celliら、Am. J. Physiol.、275:G749−G757(1998))という示唆とは一致しない。
【0115】
多くの研究が、GLN補給が外科手術、創傷治癒、外傷、エイズならびに化学療法、放射線処置および骨髄移植に関連する合併症の予防において利点があることを明らかにしている(Labowら、World Journal of Surgery、24: 1503−1513.(2000)およびKarinchら、Journal of Nutrition、131: 2535S−2577S(2001))。いくつかの臨床試験(Piccirilloら、Hematologica、88:192−200(2003))が、種々の臨床的身体状態におけるGLNの重要性を指摘しているが、GLNのこのような有利な効果の背後にある分子メカニズムは依然として明らかではない。インビトロ研究は、いくつかのヒト乳房細胞系において、GLNの欠乏が、成長停止およびDNA損傷誘発可能遺伝子(GADD45およびGADD153)の発現の急速な上昇を引き起こすことを実証した(Abcouwerら、J. Biol. Chem.、274: 28645−28651(1999))。我々は、DMBA誘発性乳ガンにおいて、GLN補給が、正常組織の周囲の腫瘍におけるホスファチジルイノシトール−3キナーゼ(PI−3K)/Aktシグナル伝達経路のダウンレギュレーションをもたらすことを見出している(実施例7)。
【0116】
我々の乳ガンの実験モデルでは、成熟期ラットにDMBAを1回投与して、ヒト乳ガンのいくつかの局面を模倣し、腫瘍形成のプロセスを研究するための適切なモデルである管起源の乳ガンを誘発する。経口GLN補給は、腫瘍の発生を有意に阻害し、減少したGSHレベルを逆転させた。本実施例の結果は、GLN補給が、おそらくGSHの結合を介して、癌細胞のアポトーシスを有意に増加したことを示す。p21の遺伝子発現の増加は、細胞周期調節タンパク質の関与も示唆する。この結果は、GSHと細胞周チェックポイントのコントロールとの間で確立された関係と一致する(Gansaugeら、Cell Growth Differ.、9: 611−617(1998))。
全体として、本実施例の結果は、GLN補給が、おそらくGSHの還元およびBcl−2ファミリータンパク質のアポトーシス促進性および抗アポトーシス性メンバーならびに細胞周期調節タンパク質p21の遺伝子発現の調節を介して、インビボで癌細胞におけるアポトーシスを刺激することを示唆する。GLNの臨床的適用についての情報を獲得する手段として、これらの結果は、ガンにおけるGLNの作用の正確な分子的メカニズムを解明するためのさらなる研究のための基盤を提供する。
【0117】
結論:
本実施例は、GLN補給が、腫瘍におけるGSHレベルを有意に減少させることを確証した。細胞内GSHレベルとBcl−2媒介性アポトーシスとの間に強い相関関係があると考えられているので、雌性スプラーグ−ドーリーラットのDMBA誘発性乳ガンにおけるアポトーシス性経路の関与に関するGSHのGLN誘発性調節の効果を調べた。DMBA適用の11週後、全実験期間中をとおしてGLNを与えられた動物の50%が腫瘍を生じなかった。GLNを与えられた動物からの腫瘍細胞中のGSHレベルにおける有意な減少およびカスパーゼ−3活性の増加。さらに、本実施例は、GLN補給が、カスパーゼ−3、baxおよびp21遺伝子発現のアップレギュレーションおよびBcl−2発現ののダウンレギュレーションをもたらすことを確証した。全体的に、これらの結果は、GLN補給が、異化ストレス下の生物体におけるGSH合成の重大なレギュレーターであり、アポトーシスの刺激を介して乳腺におけるDMBA誘発性発ガンを阻害することを示唆する。
【実施例7】
【0118】
経口グルタミン補給は、実験的乳ガンにおいてPI−3K/Aktシグナル伝達を阻害する
序論
成熟期ラットへの7,12−ジメチルベンズ[a]アントラセン(DMBA)の投与は、乳房腫瘍を引き起こし、グルタチオン(GSH)の生成を阻害する。経口グルタミン(GLN)補給が、腫瘍の発生を有意に阻害することがわかっている本実施例は、IGF-1活性化ホスファチジルイノシトール−3キナーゼ(PI−3K)/Aktアポトーシス性シグナル伝達経路の関与を調査するために設計された。
本実施例の背後にある仮説は、乳腺組織におけるIGF-1のダウンレギュレーションがアポトーシス性細胞シグナル伝達に影響を及ぼすということであった。本実施例は、食餌によるGLN補給が、標的組織におけるPI−3K/Aktシグナル伝達カスケードのメンバーのタンパク質発現を有意に変更し、アポトーシスのプロセスを促進することを立証する。
【0119】
材料および方法
実験動物および処置
全部で40匹の50日齢以下、体重約150 gのtime−dated成熟期雌性スプラーグ−ドーリーラット(Harlan Sprague−Dawley、Indianapolis、IN)を用いた。すべての実験は、Central Arkansas Veterans Healthcare Systemにおける動物実験委員会によって認可された。ラットは、動物飼育施設内の標準ケージにて飼育し、12時間の明暗サイクルに付した。実験期間中、ラットは、固形飼料(TD 96163)の所定の食餌で同時飼育され、水を自由に与えられた。50日齢にて、ラットを無作為に以下の4つの実験グループ(n=16):DMBA+GLN、DMBA+水、油+GLNおよび油+水に分け、、ビヒクルとしてゴマ油中の100 mg/kgのDMBAまたはゴマ油単独を単回投与した。全実験継続期間中、すべての実験動物に、GLN(1 g/kg/日)懸濁液製剤(AES−14)または水のいずれかを1日1回胃管補給した。腫瘍の発生について毎週動物を検査し、体重を記録した。DMBA適用後11週で動物を屠殺し、腫瘍の数、体積および重量を記録した。腫瘍および乳房を集め、ドライアイスで急速冷凍した。組織サンプルは、使用するまで−80度で保存した。腫瘍のサンプルを10%緩衝ホルマリンで固定し、パラフィンに包埋し、へまトキシリンおよびエオシン染色を行い、形態学的変化を顕微鏡で調べた。
【0120】
タンパク質抽出
乳腺組織(−80度で冷凍)から、以下の溶解緩衝液中でホモジナイズすることによりタンパク質抽出物を調製した:10 mM Tris HCl、pH 7.6/5 mM EDTA/50 mM NaCl/30 mM Na4P2O7/50 mM NaF/200μM Na3VO4/1% Triton−X 100および1錠/緩衝液50 mlのプロテアーゼインヒビターカクテル錠剤(Roche Diagnostics GmbH、Mannheim、Germany)。ホモジネートを軌道振とう器中、4度にて一夜インキュベートし、4度にて30分間、14,000 rpmで遠心分離した。Bio−Radタンパク質アッセイ(Bio−Rad Laboratories、Hercules、CAを用いて、上清のタンパク質濃度を測定した。
【0121】
SDS−PAGEおよびイムノブロッティング
40μgの各サンプルのタンパク質を10%ポリアクリルアミドゲル上で分画し、ミニ・バーティカル・ゲル・システム(Thermo EC、Holbrook、NY)(Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、2nd edition、Cold Spring Harbor、The Laboratory Press、1987)を用いてPVDF膜に移した。移動後、タンパク質の等量ローディングをコントロールするために、0.2% Ponso Sで膜を染色した。TBS−T緩衝液(100 mM Tris、pH 7.5; 150 mM NaCl; 0.1% Tween 20)中の5%脱脂乳で室温にて1時間ブロッキングした後、膜を、5%乳または5% BSAで希釈した一次抗体中で4度にて一夜(または室温にて2時間)およびHRP−標識二次抗体中で室温にて1時間インキュベートした。抗βアクチン抗体で膜を再プロービングすることによって、等量タンパク質ローディングを検証した。ECL検出システム(Amersham Biosci.、Piscataway、NJ)を用いてタンパク質を視覚化した。使用説明書に推奨されているとおり、以下の一次抗体を用いた:抗IGF−1、抗Bcl−2 and 抗βアクチン(Santa Cruz Biotech.、Inc.、Santa Cruz、CA)、抗IGF−1R、抗Aktおよび抗Bad(Cell Signaling Technology、Beverly、MA)。二次抗体(HRP標識抗ウサギ、抗マウスおよび抗ヤギ)は、Santa Cruz Biotech、Inc.から購入した。
【0122】
デンシトメトリー
IBM用Scionイメージプログラム(Scion Corporation、Maryland、USA)を用いて、ウエスタン・ブロッティングで得られたバンドの領域および密度を測定した。結果は、集積密度単位(integrated density units)/1000で表し、統計的に分析した。
【0123】
統計的分析
データは、平均±標準誤差(SE)で表した。Windows、バージョン4.5用の統計ソフトウェアStatViewを用いるANOVAの一元分析により、グループ間の比較を行った。結果(P<0.05)は、統計的に有意であるとみなされた。
【0124】
結果
実験開始時または屠殺時において両方のグループからの動物の平均体重に有意な差はなかった。すべてのラットは、11週間の実験期間中に重量を獲得した。実験終了時にGLN補給グループのラットの50%が腫瘍を生じなかった。このグループの大部分の動物が1個の腫瘍を生じ、2匹のラットが3個の腫瘍をそれぞれ生じた。GLNの代わりに水を与えられたグループにおいて、100%のラットが乳ガンになり、6匹の動物が3および4個の腫瘍をそれぞれ生じた。水を与えたグループにおける腫瘍の総数が26個であるのに対して、GLNを与えた実験グループでは12個であった。水処置グループにおける腫瘍の重量が0.07〜19.7 gの間を変動し、平均腫瘍重量が3.9 gであったのに対して、GLN処置グループでは、0.6〜6 gの間を変動し、平均腫瘍重量は3.8 gであった。
乳ガンモデルにおいてこれまでに報告されているように(Russoら、Lab. Invest.、57: 112−137(1987)およびFukunishi、Acta Path. Jap.、18: 51−72(1968))、腫瘍の組織学的研究から、両方のグループにおけるすべての腫瘍が、悪性腺ガンであることが確証された。
非腫瘍および腫瘍乳房組織抽出物からのホモジネートのウエスタン・ブロット分析によって、IGF-1、その受容体IGF−1R、Akt、BadおよびBcl−2のタンパク質発現を測定した。DMBA+GLNグループ内での上記タンパク質の発現におけるGLN補給の効果をより正確に確証するために、腫瘍を有する動物(DMBA+GLN、腫瘍)および腫瘍を発生していない動物(DMBA+GLN、腫瘍無し)におけるそれらのレベルを比較した。
【0125】
IGF−1
結果は、DMBA+水グループと比較して、DMBA処置グループにおいて、GLN補給がインスリン様成長因子−1(IGF−1)の発現を有意にダウンレギュレートしたことを示した(図21)。DMBA+水グループと比較して、DMBA+GLN腫瘍グループの方が、8分の1以下の低レベルのIGF-1であることが見出された(平均±SE、集積密度単位において、238±82対1990±563、P=0.008)。DMBA+GLNグループでは、腫瘍を有さない動物においてIGF-1の発現がないことが見出された。相互作用に対するPは統計的に有意ではなかった(P=0.1)が、水を与えられたグループと比較して、GLNを投与されたコントロールグループにおけるIGF-1発現の低下も確証された(平均±SE、集積密度単位において、1078±368対2836±1044)。腫瘍組織において、IGF-1発現は検出されなかった。
【0126】
IGF−1R
DMBA+水を与えられたグループにおける発現と比較して、DMBA+GLNグループでは、GLN補給は、乳房組織におけるIGF-1受容体(IGF−1R)タンパク質発現を2分の1に低下させた。DMBA+GLNで処置された腫瘍ラットおよび同じグループで腫瘍なしのラットからの乳房組織抽出物におけるIGF-1Rのタンパク質レベルには差はなかった(平均±SE、集積密度単位において、141±12対142±32)(図22)。DMBA+GLN処置グループ対DMBA+水グループ(平均±SE、296±67)の両方における発現の差は、統計的に有意であった(P<0.05)。GLNは、コントロールグループ対水胃管補給グループの乳房組織のIGF-1Rレベルにおいて統計的に有意な増加を引き起こした(平均±SE、集積密度単位において、674±150対368±34、P=0.006)。腫瘍組織(平均±SE、188±62)は、油+GLNおよび油+水グループと比較して、IGF-1Rレベルにおいて統計的に有意な減少を示した(腫瘍対油+GLN、P=0.03; 腫瘍対油+水、P=0.02)。DMBA+GLNおよびDMBA+水グループの腫瘍および非腫瘍組織におけるIGF-1Rレベルの差は、統計的に有意ではなかった。
【0127】
Akt
DMBA+GLNグループでは、Aktのタンパク質発現もまた有意に影響を受けた(図23)。DMBA+水グループにおける発現と比較して、DMBA+GLN腫瘍なしグループでは、GLN補給は、Aktの発現(Aktタンパク質レベル)をほとんど8分の1に減少させ(平均±SE、1649±425対191±17、P<0.05)、DMBA+GLN腫瘍グループでは、7分の1以下に減少させた(平均±SE、258±46)。GLN補給コントロールグループ対水グループにおけるAktレベルの増加は、およそ2倍であることが見出された(平均±SE、集積密度単位において、2243±288対1253±291、P=0.03)。他のグループにおけるAkt発現と比較して、腫瘍組織のサンプルは、Aktレベルにおいて統計的に有意な減少を示した(平均±SE、集積密度単位において、229±46、P<0.05)。
【0128】
Bcl−2
Bcl−2タンパク質発現は、DMBA+GLN腫瘍なしグループにおいて、DMBA+水グループのおよそ20分の1に低下した(平均±SE、集積密度単位において、63±7.3対1253±214、P=0.03)(図24)。Bcl−2は、DMBA+水に対して、DMBA+GLN腫瘍ありグループでは8分の1に低下した(平均±SE、184.07±50)。コントロールグループにおいて、Bcl−2レベルは、水単独投与グループよりもGLN投与動物において高かったが、これは統計的に有意ではなかった(平均±SE、集積密度単位において、757±147対429±102、P=0.09)。腫瘍は、DMBA+水グループおよびコントロールグループの乳房組織よりも、より低いBcl−2レベルを示したが、DMBA+GLNグループの動物の乳房組織よりも、より高いレベルを示した(平均±SE、集積密度単位において、331±86.8)。
【0129】
Bad
GLN補給は、DMBA+水グループに対して、DMBA+GLN腫瘍なしグループにおいて、Badタンパク質発現のアップレギュレーションをもたらした(平均±SE、863±122対565±114、P=0.01)(図25)。DMBA+GLN腫瘍なし動物におけるBadのレベルは、DMBA+GLN腫瘍あり動物のレベルと比較しても、より高かった(平均±SE、376±116)(P<0.05)。コントロールグループでは、Bad発現において統計的に有意な差はなかった(平均±SE、266±57の油+GLN、308±55の油+水)。腫瘍組織(平均±SE、集積密度単位において、221±33)は、Bad発現において、コントロールグループと比較して有意な変化は示さなかった。
【0130】
考察
Hugginsモデルとして知られる乳ガンの実験モデルにおいて、成熟期ラットへのDMBAの1回投与は、DMBA適用の約11週後に100%の動物において腺由来の乳ガンを誘発する(Russoら、Lab. Invest.、57: 112−137(1987))。DMBA(多環式芳香族炭化水素)は、DNAに結合して点突然変異を創成するジオールエポキシドを生成する酸化を介して代謝される(Fukunishi、Acta Path. Jap.、18: 51−72(1968))。実施例3の結果は、経口GLN補給が、DMBA誘発性腫瘍の発生を有意に減少させ、腫瘍成長に起因する胃グルタチオン(GSH)合成の抑制を刺激することを示した。GLNは、循環中に低下したNK細胞活性ならびに低下したIGF-1およびTGF−βのレベルのアップレギュレーションにも関連する(Farrら、JPEN、18(6): 471−476(1994)、Fengら、Surg. Forum、XLVII: 524−526(1996)、and Caoら、J Surg. Res.、100: 135−140(2001))。食餌療法GLNのこれらの効果の根拠をなすメカニズムはわかっていないが、アポトーシス性シグナル伝達系の関与が示唆される。本実施例の結果は、食餌療法GLNが、乳腺組織において、IGF-1、その受容体IGF-1Rのタンパク質発現およびAktアポトーシス性シグナル伝達経路を有意にダウンレギュレートしたことを示す。GLNの最も印象的な効果は、DMBA処置グループで腫瘍を有する動物と比較して、DMBA処置の結果として腫瘍を発生していない動物におけるアポトーシス促進性タンパク質Badの強いアップレギュレーションであった。Badの上昇した組織レベルは、腫瘍発生の阻害をもたらすDMBA誘発性腫瘍形成に対する対抗効果としてのアポトーシスの刺激を示す。
腫瘍成長におけるGLNの阻害効果が、グルタチオン(GSH)生成の刺激によって生じることが仮定されている(Farrら、JPEN、18(6): 471−476(1994))。GSHは、細胞において最も豊富な抗酸化剤であり、発ガン性の生体異物の無害化において重大な役割を演じ、その結果としてDNAアダクト形成を予防する(Karinchら、Journal of Nutrition、131: 2535S−2577S(2001))。細胞において、グルタチオンは、通常、その還元(チオール)型(GSH)および少量(<10%)のグルタチオンジスルフィド(GSSG)で存在する(Abcouwerら、J. of Biol. Chem.、274: 28645−28651(1999))。その保護的作用は、GSSGが形成される、そのシステイン残基のチオール基の酸化に基づく;これは、グルタチオンレダクターゼによって、順次、触媒的にGSHに還元される。GSHの結合は、アポトーシス性ミトコンドリアシグナル伝達経路において重要なイベントであるチトクロームc放出の誘発において必要かつ十分である。アポトーシスに関連があるミトコンドリアの変化は、チャネルの開口および細胞質ゾルへのチトクロームcの放出を含み、細胞質ゾルからミトコンドリアへのBcl−2ファミリーのアポトーシス促進性のメンバーのいくつかの転移を引き起こし、アポトーシスの活性化をもたらすと考えられる(Larssonら、8 edn. New York: Mc Gray Hill、2001)。
本実験は、GLN補給がアポトーシス関連タンパク質Bcl−2およびBaxタンパク質を調節することを確証した。
【0131】
結論
GLN補給は、非腫瘍サンプル中のIGF-1、IGF−1R、AktおよびBcl−2のレベルにおいて有意な減少をもたらす。同時に、アポトーシス促進性タンパク質Badのレベルは有意に上昇された。腫瘍組織から収集されたサンプルは、非腫瘍組織と比較して、IGF−1、Akt、Bcl−2、BadおよびIGF−1Rのレベルの低下を示した。GLN補給は、腫瘍形成中の細胞の生存を増加させることにおいて重要であると考えられるPI−3K/Akt経路を阻害した。これらの結果は、GLNがDMBAの影響に対抗し、インビボでの発ガンをブロックするという我々の仮説と一致する。
【実施例8】
【0132】
グルタチオン輸送におけるDMBAの影響
序論:
ジメチルベンズ[a]アントラセン(DMBA)の経口摂取は、実験用ラットにおいて乳ガンを引き起こし、胃グルタチオン(GSH)生成の抑制および門脈グルタチオンレベルにおけるめざましい減少に関連する。したがって、われわれは、DMBAが、空腸側底膜を通過するGSH輸送において阻害を引き起こし、したがってGSHの流出を減少させると仮定した。この仮説を証明するために、空腸側底膜小胞を通るGSH輸送を調べた。
【0133】
方法:
100 mg/kg DMBA(n=15)またはコントロールとしてゴマ油(n=15)の1回投与で処置したスプラーグ−ドーリーラットにおいて、空腸側底膜小胞(BLMV)におけるGSHの輸送を調べた。動物は、固形飼料で同時飼育され、水を自由に与えられた。DMBA投与の1週後にすべてのラットを屠殺する。Percoll Colloidal PVP被覆シリカ分画遠心技術を用いて空腸側底膜小胞(BLMV)を調製した。すべてのステップは、2〜4度にて行った。ポリトロン・ホモジナイザー(Brinkman、Rexdale、ON)を用い、2から6、次いで、6〜2のセッティングで55秒にわたって、2 mM HepesでpH 7.40に調節した180 mMスクロース/2 mM Trisを含む単離緩衝液中で空腸粘膜剥離物をホモジナイズした。ホモジネートを1000gで10分間遠心分離した。4層のガーゼで上清を濾過し、再度採取した。次いで、側底膜物質を含む上清を22,000gで15分間遠心分離した。ペレットのゆるく固まった上部を注意深く洗い流し、吸引し、12 mlの単離緩衝液に懸濁した。1.4 mlのパーコールを加え、20分間軽く攪拌した。この懸濁液を42,000gで35分間遠心分離した。2つのバンドが形成された。側底膜を含む勾配の頂部2.4 mlを再度採取し、2 mM HepesでpH 7.40に調節した60 mM KCL/60 mMスクロース/2 mM Trisを含む洗浄緩衝液で希釈した。再度、この懸濁液を60,000gで90分間遠心分離した。パーコールペレットの頂部から膜画分を洗浄緩衝液で注意深く洗い流した。さらなる調査のために、この最終懸濁液をでタンパク質濃度12〜15μg/μlに滴定した。タンパク質濃度は、Bio−Radタンパク質アッセイ(Bio−Rad Laboratories、Hercules、CA)によって測定した。
【0134】
急速混合/濾過技術によって[3H]グルタチオンの取り込みを測定した。40μlの放射活性取り込み緩衝液を12x75 mmホウケイ酸ガラス培養管(Fisher scientific)の底に入れた。結合反応を開始するために、20μlの膜小胞を加え、タイマー(Gralab Instruments、Centerville、Ohio)でコントロールして8秒間急速に振動させた。8秒の終了時に、150 mM NaCl/10 mM Hepes/10 mM Trisを含む1 mlの停止緩衝液を加えた。すべての溶液を吸引により取り出し、取り込み/真空装置中のフィルター上に放出した。さらなる9 mlの冷停止緩衝液で濾過膜を洗浄した。側底膜小胞を抽出している濾過膜を取り外し、シンチレーションバイアルに置いた。バイアルに3 mlのアクアゾル(Packard BioScience、Meriden、CT)をバイアルに加え、濾過膜が溶解するまでバイアルを16時間室温に保った。液体シンチレーションシステムLS1801(Beckman coulter、Fullerton、CA)ですべてのバイアルを計数した。
【0135】
結果:
結果は、DMBAが空腸側底膜小胞におけるGSH取り込みの阻害を引き起こすことを示し、システムASC/B0として定義されたNa+依存性アミノ酸輸送システム(Bode、BP(2001) J. Nutrition 131: 2539S−2542S)が、DMBA投与によって阻害されることが実証された。DMBAグループにおけるBLMVによる総GSH取り込みの比率(図26)は、コントロールグループと比較して、42%まで減少した。門脈血GSH濃度(図27)は、34%まで減少し、胃粘膜GSH(図28)は、2倍に増加した。
【0136】
結論:
DMBAを胃管補給されたラットにおいて、GSH輸送および門脈GSH濃度の両方は、有意に減少した(p<0.05、独立t−検定)。DMBAが胃GSH放出を減少させ、発ガンを誘発するメカニズムの一つは、GSH輸送システムの阻害によるGSH流出の有意な低下を通るものと考えられる。胃GSH流出および門脈GSHレベルの低下は、発ガンをもたらす肝臓におけるDNAアダクトの発生を増加させる。GLNは、おそらくこの輸送メカニズムを介して、GSH流出の低下を克服することが明らかにされている。
【実施例9】
【0137】
γ−グルタミルサイクルにおけるグルタミン(AES−14)の効果
7,12−ジメチルベンズ[a]アントラセン(DMBA)誘発乳ガンモデルにおいて、経口グルタミン(GLN)(AES−14)が、腫瘍発生を減少させることが見出された。このことは、正常宿主組織におけるグルタチオン(GSH)レベルの有意な増加および腫瘍におけるGSHレベルの減少に関連があった。GSH合成を含むγ−グルタミルサイクルにおいて、2つの重要な酵素がある:アミノ酸を輸送してGSH合成のための基質を提供するγ−グルタミルトランスペプチダーゼ(GT)およびGSH合成における速度制限酵素であるγ−グルタミルシステインシンセターゼ(GCS)である。我々は、宿主GSHを復活させ、腫瘍GSHを枯渇させるために、経口GLNがこれらの酵素に影響を及ぼすと仮定した。
【0138】
方法:
雌性スプラーグ−ドーリーラットを無作為に6つのグループに分けた:DMBA+GLN、DMBA+FA、DMBA+H2O、油+GLN、油+FA、油+H2O。50日齢にて、ラットに、100 mg/kg DMBAまたはゴマ油を1回投与にて与え、次いで、無作為に胃管補給にて、DMBAの投与の1週間前から屠殺まで、GLN(AES−14)(1 gm/kg/日)またはイソ窒素量のフレアミン(FA)または水(H2O)を与えた。空腸粘膜および腫瘍組織を集め、GTおよびGCS活性についてアッセイした。GT活性は、WahlefeldおよびBergmeyerの方法(Wahlefeld AW、Bergmeyer HU: Routine method. In Bergmeyer HU、Bergmeyer J、Graβ1 M eds. Methods of enzymatic analysis、3rd edition、vol III、Verlag Chemie、Weinheim、Deerfield beach、Florida. 1983、p. 352)を用いて決定した。簡単に述べると、PowderGen 125ホモジナイザーを用いて、0.1 gの組織を5倍容のホモジナイズ緩衝液(100mM Tris/HCl、150mM塩化ナトリウム、0.1% v/v トリトンX−100、PH=8)中でホモジナイズした。ホモジネートを酵素基質の混合物(2.9mM L−γ−グルタミル−3−カルボキシ−4−ニトロアニリド; pH 7−7.5および100 mM Tris/グリシルグリシン、pH 8.25)に加えた。405nmにおける吸光度の増加を3分間継続的にモニターした。BioRadタンパク質アッセイによってタンパク質濃度を決定した。下記公式を用いてGT活性を計算した。
【数2】
ここで:
率=405 nmにおける1分当たりの吸光度の変化(ラムダABS/分)
TV=総反応混合物体積(ml)
SV=サンプル体積(ml)
LP=光路(この場合、10mm)
PC=タンパク質濃度(mgタンパク質/l)
ε=405 nmにおけるcanaのミリモル吸光率(この場合、0.951ラムダABS/mmol/l/mm)
1000=ミリモル単位をマイクロモル単位に変換する
アッセイ手順の条件下で1分当たり1マイクロモルの3−カルボキシ−4−ニトロアニリン(cana)の形成を触媒する酵素の量として、GT活性の1単位を定義した。
【0139】
GCS活性は、SekuraおよびMeister(Sekura、R.ら(1977) J. Biol. Chem. 252:2599)ならびにTausskyおよびShorr(Taussky、H.H.ら(1953) J. Biol. Chem. 202:675))の方法を用いて測定した。組織(0.1 g)を比率1:5(w/v)のホモジナイズ溶液(150 mM 塩化カリウム、5 mM 2−メルカプトエタノールおよび1 mM 塩化マグネシウム)中でホモジナイズした。10 mM L−グルタミン酸ナトリウム、10 mM L−α−アミノブチレート、20 mM 塩化マグネシウム、5 mM ATPナトリウム、2 mM EDTAナトリウム、100 mM pH 8.2 Tris/HCl緩衝液および10μg ウシ血清アルブミンを含む0.5 mlの反応混合物に10 μlのホモジネートを加え、振とう水浴中で37度にて30分間インキュベートした。0.5mlの10% トリクロロ酢酸を加えて反応を停止した。1500 RPM、40度にて10分間混合物を遠心分離し、100 μlの上清を0.5mlの12.6% トリクロロ酢酸および0.4mlのFe−試薬(10% モリブデン酸アンモニウム、5% 硫酸第一鉄/10N 硫酸)に加え、720nmにて光学密度を測定した。標準曲線を用いて、無機リン酸塩の濃度を決定した。BioRadタンパク質アッセイによって、各サンプルのタンパク質濃度を測定した。下記公式を用いてγ−GCS酵素活性を計算した。
【数3】
ここで:
ABSRXN=720nmにおける反応後のサンプルの吸光度
ABSBL=720nmにおけるコントロールの吸光度
スロープ=標準曲線のスロープ
PC=サンプルホモジネートのタンパク質濃度
タンパク質マイクログラム当たりの形成された無機リン酸塩マイクログラムとして、GCS酵素活性を表した。
【0140】
結果:
経口GLNにより、宿主組織GTおよびGCS活性は有意に増進されたが、腫瘍組織GTおよびGCS活性は阻害された(図29および図30)。
結論:
経口GLNは、GTおよびGCSの酵素活性のアップレギュレーションを介して宿主におけるGSH合成を刺激した。同時に、GLNは、これらの重要な酵素の酵素活性を低下させることを介して腫瘍GSH合成における減少をを引き起こす。腫瘍GSHの減少は、ガン細胞を放射線照射および化学療法に対して影響を受けやすくするが、宿主GSHの増加は、患者を正常組織損傷に対してより影響を受けにくくする。この格差効果は、治療濃度域の拡張および宿主生存可能性の増大をもたらす。
【実施例10】
【0141】
ナチュラルキラー細胞の細胞障害性におけるグルタミン補給の経時効果
我々は、グルタミンが、これまでに報告されたナチュラルキラー(NK)細胞の細胞障害性のDMBA誘発性抑制を逆行させることにより、DMBA誘発性ガンを予防するように作用することができると仮定した。
方法:
ラットは、実施例5のとおり処置した。NK細胞の細胞障害性を以下の通り測定した:滅菌した外科手術用メスを用いて、無菌的に切除した脾臓を細かく切り刻み、暖かいRPMI 1640(Gibco BRL、Life Technologies Inc.、Grand Island、NY)で脾臓カプセル(splenic capsule)からリンパ球を剥いた。得られる細胞を50 mlの円錐管に入れ、塩化アンモニウム(0.83%)(Sigma Chemical Co.、St. Louis、MO)を満たして赤血球を溶解した。次いで、細胞溶液を1000 rpmで10分間遠心分離した。上清を傾冩し、細胞ペレットをRPMI(GLNなし)とともに渦巻き攪拌し、再度遠心分離した。次いで、10%ウシ胎児血清(FBS)(Gibco BRL、Life Technologies Inc.、Grand Island、NY)を含む1% GLNを補足したRPMI約10mlに細胞を再懸濁した。この細胞懸濁液をペトリ皿に置き、6% CO2中、37度にて30分間インキュベートした。単球の付着を確実にするためにインキュベーションを行った後、付着しないリンパ球を計数した(1:1、クリスタルバイオレット染色)。各脾臓からの総数約7 x 106個の細胞を、10% FBSおよび組換えヒトIL−2(500 U/ml)を含むPRMI中で3日間インキュベートした。この細胞懸濁液を用いて、NK細胞感受性マウス腫瘍細胞系YAC−1を用いる4時間の51−クロム放出アッセイにより、NK細胞の細胞障害性を決定した。NK細胞障害性は、溶解単位(LU)で表す。LUは、20%の標的細胞溶解を媒介する106個当たりのエフェクター細胞の数として定義される。NK活性の計算は、以下の等式で表される:
【数4】
【0142】
結果:
NK細胞活性は、DMBAグループにおいて、第1週および第11週においてのみ、より低かった(図31)。第2週において、非DMBAコントロールと比較して、DMBAグループにNK細胞の細胞障害性の有意な予期せぬ上昇があった。経口GLNは、遅いが早期ではないNK細胞活性の抑制を完全に逆行させた。しかし、経口GLNは、第1週においても、NK細胞活性のDMBA誘発性抑制を部分的に逆行させた。
【0143】
本発明は、種々の特定および好ましい具体例および技術を参照して記載される。しかし、本発明の範囲内で多くの変形および変更をなしうることを理解すべきである。
すべての参考文献、特許および特許文献は、個々に援用されるごとく、全体を参考文献として本発明に援用される。
【技術分野】
【0001】
アミノ酸およびタンパク質などの生体分子の吸収は、細胞機能にとって極めて重要である。哺乳類の身体において固体物の約75%が、酵素、サイトカインなどのポリペプチド、核タンパク質、輸送タンパク質および構造タンパク質といったようなタンパク質である。これらのタンパク質の第1の機能的構成要素であるアミノ酸、ポリペプチドおよび単離アミノ酸もまた、細胞代謝機能にとって重要である。たとえば、アミノ酸であるグルタミンは、組織間の炭素および窒素の輸送といったような代謝において重要な機能を果たす。グルタミンは、肝臓および腎臓の糖新生ならびに肝臓における尿素合成および腎臓におけるアンモニア産生のための前駆体である。多くの細胞型、特に腸粘膜の細胞もまた、呼吸燃料の主要源として大量のグルタミンを利用する。
【背景技術】
【0002】
種々の生理的障害の治療のためのアミノ酸補充の有効性が、実証されている。たとえば、D−セリン補充は、集積失調症の治療のための抗精神病薬の有利な効果を増大させる(Tsai, G.ら, Biol. Psychiatry(1998) 44(11): 1081−1089)。L−トリプトファンまたは5−ヒドロキシトリプトファン補充は、線維筋痛の患者において抑うつ、不安、不眠症および苦痛の症状を改善することが明らかにされている(Juhl, J.H., Altern. Med. Rev.(1998) 3(5): 367−375)。8種の必須および9種の非必須アミノ酸の食事補充は、タンパク質欠乏が一般的な問題である透析患者において健康状態、調子および気分を改善した(Mastroiacovo, P.ら, Clin. Ther.(1993) 15(4): 698−704)。カナバン病(一般に発症から数年以内に死亡する希少劣性常染色体遺伝子疾患)の治療のためにアスパラギン酸の栄養補充が示唆されている(Baslow, M.H.ら, J. Mol. Neurosci.(1997) 9(2): 109−125)。L−リシンもまた、1型単純ヘルペスウイルス(HSV−1)に関連する損傷に対する治療用途をもつことが実証されている(Ayala, E. And D. Krokorian, J. Med. Virol.(1989) 28(1): 16−20)。
【0003】
グルタミン補充は、免疫系の特定の細胞の刺激および細胞成長の一般的促進などの非常に多くの利点を提供することが明らかにされている。グルタミンの枯渇は、関連する細菌のトランスロケーションとともに、上皮組織の萎縮を引き起こす。グルタミンの臨床的補充は、上皮萎縮を減少させ、回復を促進する。
食事性グルタミン補充が、外科手術からの回復中または敗血症、炎症、火傷または外傷を患っている患者の治療のために提案されている。口腔の損傷した上皮組織または食道の痛みを修復するための、通常、経口用途用の「口内投入および嚥下(swish and swallow)」溶液の形態での局所投与は、骨髄移植または化学療法を受けた多くの患者において有効でありうる(Skubitzら, J. Lab. Clin. Med.(1996) 127(2): 223−8; Andersonら, Bone Marrow Transplant(1998) 22(4): 339−44)。
【0004】
グルタミン補充は、直接的および間接的結果の両方にとって、ガン療法のために有益でありうる。グルタミン補充は、Fisher−344ラットにおいて腸からのグルタチオン放出を増加させることが明らかにされている(Cao, Y.ら, J. Parenter. Enteral Nutr.(1998) 22(4): 224−227)。放射線療法または化学療法のいずれかと併用する場合に、グルタミンが、いずれの療法においても腫瘍細胞に対する選択性を増加させることが実証されている(Klimberg, V.およびJ. McClellan, Am. J. Surg.(1996) 172(5): 418−424)。一つの研究において、胃管補給によるかまたは食品添加物としてグルタミンを与えられているラットにおける腫瘍の成長は、3週間以内に40%まで減少した(Fahr, M.ら, J. Parenter. Enteral Nutr.(1994) 18(6): 471−476)。別の研究において、メトトレキセートを投与されているラットにおける腫瘍体積の喪失は、グルタミンを食餌に添加すると、ほとんど2倍になった(Klimberg, V.ら, J. Parenter. Enteral Nutr.(1992) 16(6 Suppl): 83S−87S)。グルタミン補充ラットにおける腫瘍成長の減少は、おそらく、プロスタグランジンE2(PGE2)合成のグルタチオン媒介性抑制による、ナチュラルキラー細胞活性の増加との相関関係が示されている(Klimberg, V.ら, J. Surg. Res.(1996) 63(1): 293−297)。
【0005】
アミノ酸、特にグルタミンの投与のための製剤が、1999年5月17日出願のU.S.仮出願No. 60/134,442に記載されており、これは、全体を参考文献として本発明に援用される。
アミノ補充の有効性は、加齢および疾病により、ある範囲の個人に限定されている。ある種のアミノ酸の効果的な補充は、あるアミノ酸の低い水溶解度および乏しい細胞取り込みによって、様々な程度にさらに限定される。たとえば、グルタミンは、水溶解度が低く(30度において48 g/l、18度において26 g/l、0度において18 g/l; The Merck Index, 12版)、水溶液中における化学的安定性が低い(22〜24度にて11日間)(Cardona, P., Nutr. Hosp.(1998) 13(1): 8−20)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
様々な型の細胞への小分子の輸送は、特定の細胞型への細胞取り込みを増加させる方法を考案するのをより困難にする代替輸送システムによってコントロールされる。アミノ酸および他の小分子の取り込みを高める方法が必要であるにもかかわらず、最初に、多くの生物活性化合物の最初の取り込みの原因となる細胞の型である上皮細胞などの細胞へのアミノ酸、ペプチドおよび他の化合物の最初の直接吸収を増加させる方法は記載されていない。
したがって、哺乳類細胞への生物活性化合物の取り込みを増加させる方法に対する必要性が依然として存在する。
クリプトスポリジウム・パルヴムは、発展途上国における持続性の下痢の主たる原因である。エイズ患者、高齢者および幼年者において特に問題をはらんでおり、生命を脅かす下痢を起こす可能性がある。したがって、クリプトスポリジウム症を治療する方法に対する必要性が依然として存在する。
【0007】
擦り傷、火傷、潰瘍、疱疹性病変および虫刺されなどの皮膚の創傷、傷害および感染は、日常的で、痛みを伴い、そしてしばしば外観を損なう。したがって、皮膚の創傷、傷害および感染によって損なわれた皮膚および関連する組織の治癒を促進する方法に対する必要性が存在する。
ガンは、合衆国における第2の主たる死因である。一般的および乳ガンなどの特定の種類のガンを予防および治療する方法に対する必要性がある。
ガンの治療のための最初の手段は、放射線療法および化学療法である。しかし、これらの手段は、しばしば、ガンの進行を停止あるいは逆行させることができない。さらに、化学療法および放射線療法の両方が、ガン患者の生活の質を制限し、しばしば治療の縮小を必要とする副作用をもつ。
したがって、ガンを治療する方法、ガンに対する現在の治療の有効性を増加させる方法、ガンの再発および転移を防止する方法、ならびに化学療法および放射線療法の副作用を軽減する方法に対する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、種々の身体状態、特にガンおよびガン治療に関連する身体状態をグルタミンの投与によって治療または予防方法を提供する。たとえば、本発明の一つの態様は、有効量のグルタミンを投与することを含む、ガンに苦しむ哺乳動物における転移の予防方法を提供する。本発明の他の態様は、有効量のグルタミンを投与することを含む、哺乳動物におけるガンの再発の予防方法およびガンの発症の阻害方法を提供する。本発明のもう一つの態様は、グルタミンを投与することによる、放射線療法または化学療法からの損傷に対する皮膚または乳房組織などの非粘膜組織の保護方法を提供する。本発明のもう一つの態様は、グルタミンを投与することによる、非粘膜組織から生じる痛みの軽減または予防方法を提供する。本発明のもう一つの態様は、グルタミンを投与することを含む、創傷、傷害および感染によって損なわれた皮膚の治癒の促進方法を提供する。本発明のもう一つの態様は、グルタミンを投与することによる、哺乳動物におけるクリプトスポリジウム感染(クリプトスポリジウム症)などの感染の治療方法を提供する。
【0009】
予期せぬことに、これらの適用におけるグルタミンの有効性が、有効量の炭水化物(糖質など)の併用投与によって増加することが見出されている。たとえば、本発明のもう一つの態様は、有効量の炭水化物と併用してグルタミンを投与することによる、ガンに苦しむ哺乳動物の化学療法および/または放射線療法の有効性の増加方法を提供する。
本発明のもう一つの態様は、ガンに苦しむ哺乳動物患者に、(a)少なくとも1つの正常組織においてグルタチオン濃度を増加させ、腫瘍組織においてグルタチオン濃度を減少させ、そのことによって化学療法および/または放射線療法による死滅への正常組織の感受性を低減化させ、腫瘍組織の感受性を増加させるのに有効な量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩;および(b)患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量の炭水化物;を含む組成物を投与することによる、化学療法および/または放射線療法の治療係数を高める方法を提供する。
本発明のもう一つの態様は、哺乳動物患者に、グルタミンおよび患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量の少なくとも1種の炭水化物を含む組成物を投与することによる、ガン細胞のアポトーシスを促進する方法を提供する。
【0010】
数種のタンパク質が、ガン細胞増殖あるいはアポトーシス(プログラムされた細胞死)を促進または阻害することが知られている。本発明者らは、グルタミンの投与が、Bad、Bax、p21およびカスパーゼ−3などのアポトーシス促進性タンパク質のレベルを増加させ、Bcl−2、IGF−1、IGF−1RおよびAktなどの抗アポトーシス性であるかまたはガン細胞増殖を促進するタンパク質のレベルを減少させることを発見している。したがって、本発明の特定の態様は、哺乳動物患者に、(a)グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩;および(b)患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量の炭水化物;を含む組成物を投与することによる、Bad、Baxまたはp21のタンパク質レベル、遺伝子発現または酵素活性の増加方法を提供する。同様に、本発明の特定の態様は、哺乳動物患者に、(a)グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩;および(b)患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量の炭水化物;を含む組成物を投与することによる、IGF−1、IGF−1RまたはAktのタンパク質レベルまたは遺伝子発現の減少方法を提供する。
【0011】
本発明は、哺乳類組織の細胞への生物活性作用物質、詳しくは「小分子」と呼ばれる物質、さらに詳しくはグルタミンの細胞取り込みを増加させる組成物および方法を提供する。水性ビヒクルおよび有効量のグルタミン、ならびにインビボまたはインビトロで標的細胞へのグルタミンの輸送(吸収)の増加を達成するのに有効な量の炭水化物を併用して含む溶液、分散液または懸濁液である。細胞が、水または生理的食塩水に溶解または懸濁したグルタミンに接触するときに、生理的条件、すなわち、恒常性条件下で細胞に入る量を超えて輸送(吸収)が増加される。活性物質の飽和以下の水溶液を用いることによって得られるものよりも、少なくとも約100−2000倍のファクターによって輸送(吸収)が増加されるのが好ましい。インビトロまたはインビボで炭水化物が哺乳類細胞ヘの小分子の取り込みを増加させるメカニズムは未知である。
【0012】
炭水化物担体は、グルコースなどの単糖、スクロースなどの二糖または単糖を二糖の組み合わせを含むことができる。炭水化物担体は、マンニトール、ソルビトールまたはキシリトールなどの糖アルコールを含むこともできる。炭水化物担体は、高フルクトースコーンシロップまたは固形コーンシロップなどの多糖を含むこともでき、ここで、コーンシロップまたは固形コーンシロップ(水和または無水)は、活性成分のための溶液相を構成する。担体は、水または水と医薬的に許容しうるグリセロールなどのアルカノール、アルキレングリコールまたはポリオールとの混合物と合わせて、溶液を形成することができる。有機溶媒が、水性相の少ない方の比率、好ましくは5〜10体積%を構成するのが好ましい。
溶液は、真溶液または流動性を有する「固溶体」でありうる。練り歯磨き、チューインガム、硬または軟ゼラチンカプセル、座薬、浣腸剤、口内洗浄剤、または局所適用ローションなどの他の液体投与剤形、あるいはシェイクなどの飲料といったような種々の液体投与手段によって投与することができる。
【0013】
本発明組成物の投与は、損なわれるかまたは無傷の組織への生物活性作用物質の吸収の増加によって改善される種々の生理的障害、特に内皮細胞および上皮組織の線維芽細胞に影響を及ぼす障害の治療を提供することができる。組織損傷を含むこのような生理的障害として、たとえば、ガンに対する処置をされた患者または骨髄移植を行われた患者における放射線療法または化学療法後の口腔、食道および/または胃腸粘膜の損傷、胃潰瘍および消化性潰瘍、火傷、重度または軽度の外傷性創傷、ウイルス性損傷、炎症性腸疾患、クローン病、シェーグレン症候群、口内乾燥症およびクリプトスポリジウム症が挙げられる。
バルクパッケージまたは個別パッケージのいずれかの、グルタミンなどの治療有効量のアミノ酸を、上皮細胞へのアミノ酸の吸収の増加を達成するのに有効な量の炭水化物担体と混合した、プレミックスした無水または液体製剤からなる医薬的投与組成物も提供される。1つの容器に別々にパッケージングされた無水製剤および前処理したビヒクルを含むキットも提供することができる。
【0014】
本発明者らは、インビトロまたはインビボで哺乳類細胞への生物活性作用物質の細胞取り込みを増加させる組成物を発見している。本発明の組成物および方法を用いて、投与後10秒以内に、約150倍以上のファクターでアミノ酸グルタミンの胃腸上皮細胞取り込みが増加されたことが、実証されている。また本発明は、治療量の組成物を用いて生物活性作用物質の細胞取り込みを増加させる、多くの病態生理学的身体状態に苦しむ患者の治療方法を提供する。
【0015】
本明細書で用いる用語「生物活性作用物質」は、標的細胞によって有効量の分子が吸収された後に哺乳動物に治療または栄養効果を与える分子を意味する。
本明細書で用いる用語「有効量」は、標的細胞集団において検出可能な生物学的変化を引き起こす量、および治療効果を成し遂げる、すなわち、哺乳動物に影響を及ぼしている病変または疾患の少なくとも1つの症状を減少させる量を意味する。
【0016】
本明細書で用いる「アミノ酸」として、たとえば、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、シトルリン、g−アミノ酪酸、ヒドロキシプロリンおよびオルニチンならびにグルタミン酸グルタミルおよびグルタチオンなどのトリペプチドなどのジペプチドが挙げられる(Remington’s Pharmaceutical Sciences(19th ed),pp 389−392を参照)。しかし、本発明組成物および方法は、グルタミンなどの制限された低い水溶解度および/または乏しい細胞取り込みを示すアミノ酸の吸収を増加させるのに特に有用である。本明細書で用いる低い水溶解度は、22−25度において約5 gのアミノ酸/水100 ml以下の溶解度として定義される。
【0017】
本明細書で用いる用語「グルタミン」として、グルタミン(グルタミン酸5−アミド)、および哺乳動物の身体においてグルタミンを生じる、分子量が約1000以下、好ましくは約500以下であるグルタミンのエステルおよび/またはアミド(たとえば、短いペプチド)などのグルタミンの加水分解性誘導体が挙げられる。塩酸塩、酢酸塩、酒石酸塩などのアミンの酸付加塩およびナトリウムおよびカリウム塩などの炭酸塩といったようなグルタミンの医薬的に許容しうる塩もまた、本発明方法に用いることができる。他の成分対するグルタミンの塩または加水分解性誘導体に関連して、グルタミンの重量またはグルタミンの重量比は、加水分解性誘導体のグルタミン部分の重量またはグルタミンの塩のグルタミン部分の重量を意味する。たとえば、グルタミン酸ナトリウムの式量は、168であり、グルタミンの式量は146であるので、1gのグルタミン酸ナトリウムを含む組成物は、0.87gのグルタミンを含むとみなされる。
【0018】
本発明溶液もまた、インビトロまたはインビボで、好ましくは治療量の特に一般に「小分子」と呼ばれる実体(entity)で、広範囲の生物活性作用物質の細胞吸収を増強することができる。
本明細書で用いる用語「小分子」として、一般に30kD以下、好ましくは25kD以下、最も好ましくは10kD以下の分子量、すなわち、5000ダルトンの分子量をもつアミノ酸、ステロイド、サイトカイン、ホルモン、ホルモンレギュレーター、酵素、ビタミンなどの単一分子である実体が挙げられる。
本明細書で用いる用語「オリゴペプチド」は、2〜20アミノ酸を含むペプチドである。
本明細書で用いる用語「治療係数(therapeutic index)」は、化学療法または放射線療法による正常または非標的細胞の死滅に対するガン細胞の死滅の比率を意味する。
本明細書で用いる用語「ナチュラルキラー細胞活性」は、ナチュラルキラー細胞の細胞死滅活性を意味する。たとえば、これは、後記実施例10に記載するような細胞障害性アッセイにおいて測定することができる。
【0019】
皮膚または無傷の腸粘膜組織への生物活性作用物質の吸収の増強を利用して、投与部位から遠い臓器または組織において効果を有する生物活性作用物質を投与することもできる。
本明細書で用いる「炭水化物」として、たとえば、キシリトール、ソルビトールおよびマンニトールといったような単糖および二糖として知られる糖質、ポリオール、ヒドロキシ類縁体または糖アルコール、ならびにデキストリン、高フルクトースコーンシロップおよび固形コーンシロップといったようなそのポリマーが挙げられる。特定の単糖および二糖が糖アルコールまたはヒドロキシ類縁体を形成することは当業界で周知である。これらのヒドロキシ類縁体の特定のもの、特にソルビトールおよびキシリトールは、それらの誘導もとである単糖または二糖の齲蝕原性特性をもたずに糖風味の利点を提供することがわかっている。
【0020】
炭水化物が、インビトロまたはインビボで哺乳動物細胞への小分子の取り込みを増強させるメカニズムは未知である。いくつかの具体例において、最終組成物における炭水化物の主たる重量比率は、たとえば、80〜90重量パーセント以上である。いくつかの場合、組成物は、本質的に添加水フリーすなわち、「固溶体」となることができ、炭水化物は、活性成分のための「溶媒」として働く。このような「固溶体」は、流動性であるか、半固体またはほぼ固体でありうる。活性作用物質に対する炭水化物の比率は、約0.5:1〜約50:1でありうる。たとえば、調製物と水性溶媒との構成によるか、または標的組織の周囲の細胞外液という水性環境へのデリバリーによるかのいずれかで達成された、無水調製物における約1.5:1 w/w〜20:1 w/w、および最水溶液における4:1 w/v以上、好ましくは4:1 w/v〜15:1 w/v、最も好ましくは7:1 w/v以上でありうる。
【0021】
本明細書で用いる「細胞」には、上皮細胞、内皮細胞、皮膚細胞、線維芽細胞または神経細胞などの本発明方法にしたがって本発明組成物が接触しうるどのような細胞もが含まれる。さらに詳しくは、本発明組成物および方法が、アミノ酸グルタミンの吸収を増加することが実証されている細胞は、口腔、咽喉、食道、胃、腸、結腸および直腸などの胃腸上皮細胞、内皮細胞および線維芽細胞である。
本明細書で用いる「水性溶媒との構成」として、水、生理的食塩水もしくは緩衝液、果汁または含水パーセントの高い他の液体との構成、唾液、粘液、胃液、髄液などの組成物が適用される組織の周囲の細胞外液との構成が挙げられる。
(本発明の説明)
【0022】
本発明の一つの態様は、患者に治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む組成物を投与することを含む、ガンに苦しむ哺乳動物患者における転移の予防方法を提供する。組成物には、患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物が含まれてもよい。
本発明のもう一つの態様は、ガンから回復したか、または抗ガン療法を受けている哺乳動物患者に治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む組成物を経口投与することを含む、ガンの再発の予防方法を提供する。組成物には、患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物が含まれてもよい。
【0023】
本発明のもう一つの態様は、患者に治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物を含む組成物を投与すること含む、ガンの発生の危険がある哺乳動物患者におけるガンの発症の阻害方法を提供する。経口投与が好ましい。
本発明のもう一つの態様は、ガンに苦しみ、放射線療法を処置された哺乳動物患者に、放射線療法からの損傷に対する非粘膜組織を保護する治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む組成物を投与することを含む、放射線療法からの損傷に対して非粘膜組織の保護方法を提供する。組成物には、患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物が含まれてもよい。
この方法により、患者に高用量の放射線処置および/または長期間の放射線処置を行うことができるようになる。
非粘膜組織は、乳房組織または関連する上半身でありうる。
組成物は、乳房密度の増大を予防することができ、放射線療法によって引き起こされた乳房密度の増大の重篤度を減少させる。組成物は、たとえば、乳房組織などの浮腫を予防することもでき、浮腫の重篤度を減少させる。
保護される非粘膜組織は、皮膚であることもできる。
組成物は、非粘膜組織の外観を保護することができる。
【0024】
本発明のもう一つの態様は、ガンに苦しみ、化学療法を処置された哺乳動物患者に、化学療法からの損傷に対して皮膚組織を保護する治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む組成物を投与することを含む、化学療法からの損傷に対する皮膚組織の保護方法を提供する。組成物には、患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物が含まれてもよい。
【0025】
本発明のもう一つの態様は、ガンに苦しみ、化学療法を処置された哺乳動物患者に、化学療法からの損傷に対して乳房組織を保護する治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む組成物を投与することを含む、化学療法からの損傷に対する乳房組織の保護方法を提供する。組成物には、患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物が含まれてもよい。
【0026】
本発明のもう一つの態様は、ガンに苦しみ、化学療法および/または放射線療法を処置された哺乳動物患者に、処置から生じる非粘膜組織における痛みを減少または予防する治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む組成物を投与することを含む、非粘膜組織から生じる痛みの減少または予防方法を提供する。組成物には、患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物が含まれてもよい。
組成物により、患者に高用量の放射線処置および/または長期間の放射線処置を行うことができるようになる。もし患者が化学療法を処置されるならば、組成物により、患者に高用量の化学療法剤処置および/または長期間の化学療法剤処置を行うことができるようになる。
組成物により、化学療法および/または放射線療法によって引き起こされる痛みに対する、患者のためのさらなる痛みのコントロールの必要性を減少または排除することができるようになる。
非粘膜組織は、たとえば、乳房組織または皮膚でありうる。
【0027】
本発明のもう一つの態様は、哺乳動物に、放射線への曝露前に治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む組成物を投与することを含む、放射線傷害に対する哺乳動物の皮膚の保護方法を提供する。組成物には、患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物が含まれてもよい。組成物は、局所または内服投与することができる。放射線傷害は、たとえば、日光曝露(日焼け)または人工的放射線曝露、および内部または外部源により引き起こされる治療的放射線照射によって引き起こされうる。
【0028】
本発明のもう一つの態様は、皮膚の創傷、傷害または感染によって損なわれた非粘膜組織の治癒を促進するために、哺乳動物患者に、治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む組成物を投与することを含む、創傷、傷害または感染によって損なわれた皮膚の治癒の促進方法を提供する。組成物には、患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物が含まれてもよい。
非粘膜組織は、上皮組織(皮膚など)でありうる。
組成物は、局所または内服投与することができる。組成物は、固体、ゲル、ペーストまたはシロップでありうる。
組織は、擦傷または裂傷などの創傷によって損なわれた組織でありうる。組織は、火傷、日焼け、放射線傷害、潰瘍(褥瘡性潰瘍など)または虫噛まれもしくは虫刺されなどの外傷によって損なわれた組織でありうる。組織は、細菌、真菌またはウイルス感染(疱疹性病変など)によって損なわれた組織でありうる。
【0029】
本発明のもう一つの態様は、哺乳動物患者に、治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む組成物を投与することを含む、哺乳動物患者におけるクリプトスポリジウム症の感染の治療方法を提供する。組成物には、患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物が含まれてもよい。
【0030】
本発明のもう一つの態様は、ガンに対して化学療法および/または放射線療法を処置された哺乳動物患者に、治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩、および患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で少なくとも1種の炭水化物を含む組成物を投与することを含む、ガンに苦しむ哺乳動物の化学療法および/または放射線療法の有効性の増強方法を提供する。
【0031】
本発明のもう一つの態様は、ガンに対して化学療法および/または放射線療法を処置された哺乳動物患者に、(a)少なくとも1つの正常組織においてグルタチオン濃度を増加させ、腫瘍組織においてグルタチオン濃度を減少させ、そのことによって化学療法および/または放射線療法による死滅への正常組織の感受性を低減化させ、腫瘍組織の感受性を増加させるのに有効な量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩;および(b)患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量の炭水化物;を含む組成物を投与することを含む、化学療法および/または放射線療法の治療係数を高める方法を提供する。
【0032】
本発明のもう一つの態様は、ガンに苦しむ哺乳動物患者に、グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量の少なくとも1種の炭水化物を含む組成物を投与することを含む、ガン細胞のアポトーシスの促進方法を提供する。
本発明の特定の態様は、哺乳動物患者に、(a)グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩;および(b)患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量の炭水化物;を含む組成物を投与することによる、細胞または組織(たとえば、乳房組織または血清)におけるBad、Baxまたはp21のタンパク質レベル、遺伝子発現または酵素活性の増加方法を提供する。
【0033】
本発明のもう一つの態様は、哺乳動物患者に、(a)グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩;および(b)患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量の炭水化物;を含む組成物を投与することによる、細胞または組織(たとえば、乳房組織または血清)におけるIGF−1、IGF−1RまたはAktのタンパク質レベルまたは遺伝子発現の減少方法を提供する。
これらのタンパク質レベル、遺伝子発現または酵素活性の増加または減少は、乳ガン細胞などのガン細胞、非ガン細胞または血清などの細胞外組織において生じうる。
【0034】
本発明のもう一つの態様は、哺乳動物患者に、(a)患者のナチュラルキラー細胞活性を増加させるのに有効な量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩;および(b)患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量の炭水化物;を含む組成物を投与することを含む、ナチュラルキラー細胞活性の増加方法を提供する。たとえば、患者は、ガンまたはHIV患者でありうる。
【0035】
本発明方法において、哺乳動物患者に投与されるグルタミンの量は、たとえば、少なくとも0.5 mg/日/患者の体重kgまたは0.2〜3.0g/日/患者の体重kgでありうる。
グルタミン組成物に含まれる炭水化物は、哺乳動物細胞によるグルタミンの吸収を増加させ、したがって、グルタミンを少ない量で投与することが可能になる。したがって、本発明方法の特定の態様において、患者に投与されるグルタミンの量は、0.5 g/日/患者の体重kg以下、0.2 g/日/患者の体重kg以下、0.1 g/日/患者の体重kg以下または0.05 g/日/患者の体重kg以下である。
本発明の特定の態様において、炭水化物は、1種以上の単糖または二糖を含む。他の態様において、炭水化物は、糖アルコールである。
【0036】
特定の態様において、グルタミンに対する総炭水化物の比率は、0.5:1〜50:1である。
特定の態様において、グルタミンに対する総炭水化物の比率は、水性溶媒と調製後または哺乳動物患者の水性環境にデリバリーされた後のいずれかにおいて、水溶液において少なくとも4:1である。
特定の態様において、組成物は、5個以下のグルタミン以外の天然アミノ酸、3個以下のグルタミン以外の天然アミノ酸を含むか、またはグルタミン以外の天然アミノ酸を含まない。
哺乳動物患者はヒトでありうる。
放射線療法に関して投与する場合、本発明組成物を放射線療法を行った後、行っている間、または行う前に投与することができる。同様に、化学療法に関して投与する場合、本発明組成物を化学療法を行った後、行っている間、または行う前に投与することができる。
本発明組成物をガンに対して患者を外科的に処置した後、または処置する前に投与することもできる。
抗ガン生物作用物質で患者を処置する前、処置した後、またはしょちを行っている間に投与することもできる。生物作用物質の例として、モノクローナル抗体、酵素または特定のホルモンなどのタンパク質;インターフェロン;マクロファージなどの細胞;または非タンパク質ホルモンが挙げられる。
【0037】
本発明のもう一つの態様は、ガンに苦しむ哺乳動物患者において転移を予防するのに有効な医薬を製造するためのグルタミンの使用である。
本発明のもう一つの態様は、グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む医薬(ガンから回復したか、または抗ガン療法を受けている哺乳動物患者への該医薬の経口投与は、患者におけるガンの再発を予防するのに有効である)を製造することを含む、ガンの再発を予防するのに有効な医薬を製造するためのグルタミンの使用である。
本発明のもう一つの態様は、グルタミンおよび少なくとも1種の炭水化物を含む医薬(該医薬は、炭水化物を含まない他の同一の医薬よりも低用量でグルタミンを投与して、哺乳動物患者におけるガンの発症を予防するのに有効である)を製造することを含む、ガンの発生の危険がある哺乳動物患者におけるガンの発症を予防するのに有効な医薬を製造するためのグルタミンおよび少なくとも1種の炭水化物の使用である。
【0038】
本発明のもう一つの態様は、放射線療法からの損傷に対して非粘膜組織を保護するのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩の使用である。
本発明のもう一つの態様は、ガンに苦しみ、化学療法を処置された哺乳動物患者の皮膚を化学療法からの損傷に対して保護するのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩の使用である。
本発明のもう一つの態様は、ガンに苦しみ、化学療法を処置された哺乳動物患者の皮膚を化学療法からの損傷に対して保護するのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩の使用である。
本発明のもう一つの態様は、ガンに苦しみ、化学療法を処置された哺乳動物患者の乳房組織を化学療法からの損傷に対して保護するのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩の使用である。
【0039】
本発明のもう一つの態様は、ガンに苦しみ、化学療法および/または放射線療法を処置された哺乳動物患者において非粘膜組織から生じる痛みを予防するのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩の使用である。
本発明のもう一つの態様は、放射線傷害に対して哺乳動物の皮膚を保護するのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩の使用である。
本発明のもう一つの態様は、グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む医薬(該医薬は、哺乳動物患者において、皮膚の創傷、傷害または感染によって損なわれた非粘膜組織の治癒を促進するのに有効である)を製造することを含む、創傷、傷害または感染によって損なわれた皮膚の治癒を促進するのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩の使用である。
【0040】
本発明のもう一つの態様は、哺乳動物患者においてクリプトスポリジウム症を治療するのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩の使用である。
本発明のもう一つの態様は、グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物を含む医薬(該医薬は、炭水化物を含まない他の同一の医薬よりも低用量でグルタミンを投与して、哺乳動物患者における化学療法および/または放射線療法の有効性を増加させるのに有効である)を製造することを含む、化学療法および/または放射線療法の有効性を増加させるのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物の使用である。
【0041】
本発明のもう一つの態様は、グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物を含む医薬(該医薬は、少なくとも一つの正常組織においてグルタチオン濃度を増加させ、腫瘍組織においてグルタチオン濃度を減少させ、そのことによって化学療法および/または放射線療法による死滅への正常組織の感受性を低減化させ、腫瘍組織の感受性を増加させるのに有効であり;該医薬は、炭水化物を含まない他の同一の医薬よりも低用量でグルタミンを投与して、少なくとも一つの正常組織においてグルタチオン濃度を増加させ、腫瘍組織においてグルタチオン濃度を減少させるのに有効である)を製造することを含む、化学療法および/または放射線療法の有効性を増加させるのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物の使用である。
【0042】
本発明のもう一つの態様は、グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物を含む医薬(該医薬は、炭水化物を含まない他の同一の医薬よりも低用量でグルタミンを投与して、ガン細胞のアポトーシスを促進するのに有効である)を製造することを含む、哺乳動物患者においてガン細胞のアポトーシスを促進するのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物の使用である。
【0043】
本発明のもう一つの態様は、グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物を含む医薬(該医薬は、炭水化物を含まない他の同一の医薬よりも低用量でグルタミンを投与して、患者の細胞においてBadタンパク質の量を増加させるのに有効である)を製造することを含む、哺乳動物患者の細胞においてBadタンパク質を増加させるのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物の使用である。
【0044】
本発明のもう一つの態様は、グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物を含む医薬(該医薬は、炭水化物を含まない他の同一の医薬よりも低用量でグルタミンを投与して、患者の細胞においてBaxタンパク質の量を増加させるのに有効である)を製造することを含む、哺乳動物患者の細胞においてBaxタンパク質を増加させるのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物の使用である。
【0045】
本発明のもう一つの態様は、グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物を含む医薬(該医薬は、炭水化物を含まない他の同一の医薬よりも低用量でグルタミンを投与して、患者の細胞においてp21タンパク質の量を増加させるのに有効である)を製造することを含む、哺乳動物患者の細胞においてp21タンパク質を増加させるのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物の使用である。
【0046】
本発明のもう一つの態様は、グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物を含む医薬(該医薬は、炭水化物を含まない他の同一の医薬よりも低用量でグルタミンを投与して、患者の細胞においてカスパーゼ−3タンパク質の量および/または活性を増加させるのに有効である)を製造することを含む、哺乳動物患者の細胞においてカスパーゼ−3タンパク質の量および/または活性を増加させるのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物の使用である。
【0047】
本発明のもう一つの態様は、グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物を含む医薬(該医薬は、炭水化物を含まない他の同一の医薬よりも低用量でグルタミンを投与して、患者の細胞においてBcl−2タンパク質の量を減少させるのに有効である)を製造することを含む、哺乳動物患者の細胞においてBcl−2タンパク質を減少させるのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物の使用である。
【0048】
本発明のもう一つの態様は、グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物を含む医薬(該医薬は、炭水化物を含まない他の同一の医薬よりも低用量でグルタミンを投与して、患者の細胞においてIGF−1タンパク質の量を減少させるのに有効である)を製造することを含む、哺乳動物患者の細胞においてIGF−1タンパク質を減少させるのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物の使用である。
【0049】
本発明のもう一つの態様は、グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物を含む医薬(該医薬は、炭水化物を含まない他の同一の医薬よりも低用量でグルタミンを投与して、患者の細胞においてIGF−1Rタンパク質の量を減少させるのに有効である)を製造することを含む、哺乳動物患者の細胞においてIGF−1Rタンパク質を減少させるのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物の使用である。
【0050】
本発明のもう一つの態様は、グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物を含む医薬(該医薬は、炭水化物を含まない他の同一の医薬よりも低用量でグルタミンを投与して、患者の細胞においてAktタンパク質の量を減少させるのに有効である)を製造することを含む、哺乳動物患者の細胞においてAktタンパク質を減少させるのに有効な医薬を製造するためのグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および少なくとも1種の炭水化物の使用である。
【0051】
アミノ酸の溶解度および吸収を増加させるための組成物の製剤
本発明にしたがって、水溶液を形成するために、水の存在下に少なくとも1種の生物活性作用物質を炭水化物と組み合わせる。炭水化物は、たとえば、アロース、アルトロース、アラビノース、ジヒドロキシアセトン、エリトロース、エリトルロース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、グリセルアルデヒド、グロース、リキソース、イドース、マンノース、プシコース、リボース、リブロース、ソルビトール、タガトース、トレロース、キシロース、キシルロースなどの単糖およびソルボースからのソルビトール、マンノースからのマンニトールおよびキシロースからのキシリトールといったようなそれぞれのヒドロキシ類縁体でありうる。あるいは、炭水化物は、マルトースもしくはスクロースあるいはその両方などの二糖、またはデキストリン、マルトデストリンおよび高フルクトースコーンシロップ製品などのポリマーでありうる。炭水化物担体は、単糖、二糖もしくはその両方、または他の炭水化物のいずれかの組み合わせからなることもできる。多くの適用にとって、特に非齲蝕性の糖質が必要とされる場合、糖質のヒドロキシ類縁体が好ましい。ヒドロキシ類縁体の例として、糖アルコール、キシリトール、ソルビトールおよびマンニトールが挙げられる。
【0052】
固体組成物において重量/体積で測定される炭水化物濃度は、20%〜99%が好ましい。標的細胞への活性作用物質の輸送が有意に増加されるように、特定の濃度において炭水化物は複合し、活性作用物質のための溶液として利用できる遊離水の量を減少させる。
組成物の好ましい態様は、約5〜50% w/wのグルタミン(最も好ましくはL−グルタミン)、約15〜50% w/wの二糖(最も好ましくはスクロース)、糖アルコールまたはポリオール(最も好ましくはソルビトール)およびグリセリンなどの炭水化物担体、有効量の緩衝液または緩衝化合物(最も好ましくは無水一塩基性リン酸ナトリウム)、約1〜5% w/wの修飾セルロース(最も好ましくはアビセル(登録商標)セルロースゲル)、ならびに安定化剤および乳化剤(キサンタンガム、カラギーナン)、保存剤(メチルパラベン、ソルビン酸ナトリウム)、消泡剤(シメチコン)および香味剤を必要に応じて含む残りの部分を含む固体の混合物を提供する。
【0053】
より好ましい態様は、約5〜15% w/wのグルタミン(最も好ましくはL−グルタミン)、約30〜50% w/wの二糖(最も好ましくはスクロース)、糖アルコールまたはポリオール(最も好ましくはソルビトール)およびグリセリンなどの炭水化物担体、および有効量の緩衝液または緩衝化合物(最も好ましくは無水一塩基性リン酸ナトリウム)、修飾セルロース(最も好ましくはアビセル(登録商標)セルロースゲル)を含み、ならびに必要に応じて安定化剤および乳化剤(キサンタンガム、カラギーナン)、保存剤(メチルパラベン、ソルビン酸ナトリウム)、消泡剤(シメチコン)および香味剤を含む無水固体からなる残りの部分を提供する。
【0054】
好ましい液体組成物は、5〜25% w/vのL−グルタミン、20〜40% w/vの二糖、糖アルコールおよびグリセリンなどの炭水化物担体、5〜10%w/vのクエン酸および有効量の緩衝液(好ましくは0.4〜0.8%のリン酸ナトリウム)、ならびに水またはアルコール−水、および必要に応じて安定化剤、保存剤、乳化剤および香味剤を含む残りの部分を提供する。
【0055】
組成物における炭水化物担体の使用は、アミノ酸水溶液をそのまま投与する場合と比べて、アミノ酸の細胞吸収を少なくとも10倍に増加させることができる。たとえば、38% w/vのL−グルタミン、30% w/vのスクロースおよび2.8% w/vのソルビトールを含む好ましい水性組成物は、水性グルタミン溶液単独で使用する場合と比べて、CaCo細胞(上皮粘膜細胞系)によるグルタミン取り込みを360倍に増加させる。
炭水化物担体の必要な濃度が維持されるならば、組成物に賦形剤を添加することもできる。これらには、グリセリンなどの甘味料/溶媒;セルロースゲル(たとえば、アビセル(登録商標)微結晶セルロースゲル(FMC Corp., フィラデルフィア、ペンシルバニア))、キサンタンガムまたはカラギーナンなどの乳化剤および安定化剤;クエン酸およびメチルパラベンなどの保存剤および安定化剤;シメチコンなどの消泡剤/基剤成分;香味剤またはその他の組成物の安定性および投与性を改善する成分を含めることができる。
【0056】
増加した濃度での活性作用物質のデリバリー
本発明は、多くの代替経路によって、インビボまたはインビトロで標的細胞へ活性作用物質を増加した濃度でデリバリーする方法を提供する。たとえば、活性作用物質を炭水化物および水、ならびに必要に応じてゲル化剤または増粘剤と混合することができる。混合物は、溶液、ゲルまたは懸濁液として投与することができる。必要であれば、混合物を静置して非溶解粒子を沈降させることによって、非溶解物質を除去することができ、あるいは遠心分離して上清を単離することができる。次いで、注入物の静脈内注射により、非経口または経口で標的組織に上清溶液を適用することができる。
グルタミンおよび本発明組成物を医薬組成物として製剤し、たとえば、非経口(たとえば静脈内、局所または経腸的)または経口にて、選択する投与経路に適合する種々の形態で、ヒト患者などの哺乳動物宿主に投与することができる。
【0057】
筋肉内、局所または皮下経路によって、あるいは浣腸または座薬などによる胃腸管への直接投与によって、投与することもできる。経口投与が好ましい。製剤の適用として、経皮パッチによる投与を含む、軟膏、ゲルまたは液体剤形などにおける、火傷、外傷またはウイルス感染などに起因する創傷への直接塗布による局所投与が挙げられるが、これに限定されるものではない。好ましい態様において、本発明組成物は経口投与される。製剤は、口すすぎ剤、ゲルまたは摂食可能飲料によって、口、鼻および食道損傷に適用することができる。口すすぎ剤または摂食可能飲料のいずれかのために、多くの単糖、二糖または両方の組み合わせ、デキストリン、マルトデキストリンおよび高フルクトースコーンシロップ製品などのこれらのポリマーから炭水化物担体を選択することができる。好ましい炭水化物担体として、スクロース、ソルビトールおよび高フルクトースコーンシロップ製品が挙げられる。懸濁液または飲料のいずれかを、水、果汁または他の液体と合わせて用いるための炭水化物担体と有効量のアミノ酸の無水混合物混合物として提供することができる。無水混合物のバルクパッケージングまたは単一適用を含むパケットを、患者、医療提供者または増加した濃度での活性作用物質のデリバリーが望まれるいずれかの個人に提供することができる。投与前に、製剤を水、果汁または他の液体と合わせて用いて、容易な投与を提供することができ、上皮組織へのグルタミンの吸収を増加させることができる。プレミックス液体バルクまたは単位用量剤形を用いることもできる。
【0058】
スクロースまたはソルビトールなどの適当な炭水化物担体および必要に応じてゲル化剤または増粘剤を利用する、ロゼンジまたはふつうの棒付きキャンディーなどのキャンディー型または他の薬用菓子型を提供することによって、相対的に低い濃度の遊離水を含む組成物の適用を達成することもできる。チューインガムを用いて、スクロース、キシリトール、ソルビトールまたは固形コーンシロップなどの炭水化物担体およびアミノ酸をデリバリーすることもできる。好ましい形態において、チューインガムは、キシロース、ソルビトールまたはスクロースなどの炭水化物担体と有効量のアミノ酸の適当な混合物からなる香味シロップの中央ポケットを組み込むことができる。軟コア部をもつチューインガム製剤の調製は、米国特許No. 4,352,823(Cherukuriら, Oct. 5, 1982)および米国特許No. 4,352,825(Cherukuriら, Oct. 5, 1982)に記載されている。また、生物活性作用物質の固溶体をチューインガム、ロゼンジまたは棒付きキャンディーなどのキャンディー型の製剤に用いることができる。このような固溶体は、炭水化物担体と生物活性作用物質との共溶融、共沈澱から、あるいは機械的活性化によって形成されうる。キャンディまたはガムを口腔に入れ、周囲の液体によって溶解する。この水性環境において、炭水化物は、口腔、食道および胃の上皮細胞へのグルタミンの吸収を促進するための担体を提供することができる。
【0059】
炭水化物担体および活性作用物質を組み込むための練り歯磨きを形成することもできる。練り歯磨き組成物中の成分のマイクロカプセル封入が、米国特許No. 4,348,378(Kosti, September 7, 1982), 米国特許No. 4.071,614(Grimm, January 31, 1978)および米国特許No. 3, 957,964(Grimm, May 18, 1976)に記載されており、標準的練り歯磨き製品へのカプセル封入された香味剤および抗プラーク成分の添加が記載されている。
【0060】
座薬によって結腸および直腸の上皮細胞に本発明組成物をデリバリーすることもできる。座薬製剤の製造方法は当業界で公知である。このような方法の一つが、米国特許No. 4,439, 194(Harwoodら, March 27, 1984)に記載されており、座薬に使用するための水および薬物デリバリーシステムが記載されている。十分な量の水を含んでいる、炭水化物担体およびアミノ酸を含む浣腸製剤を形成することもできる。座薬または浣腸において炭水化物担体中の生物活性作用物質の固溶体を投与して、結腸または直腸から水性成分を引き出すこともできる。
【0061】
胃へのデリバリーが好ましい場合、充填されたカプセルを用いることができる。このような方法の一つが、米国特許5,569,466(Tannerら, October 29, 1996)に記載されており、軟弾性ゼラチンカプセルのための充填組成物の製造の記載がある。腸溶性コーティングカプセル剤もしくは錠剤、または腸溶性コーティング微粒子を用いて、腸管上部または下部に組成物をデリバリーすることができる。
ふつうのポプシクルなどのアイスクリーム製剤ならびに冷凍菓子にて組成物をデリバリーすることができる。冷凍製剤は、たとえば、グルタミンの有利な効果と冷たい混合物の鎮痛効果の両方を合わせることができるので、経口および食道潰瘍に特に有効である。
【0062】
グルタミンおよび本発明組成物を輸液または注射によって静脈内または腹腔内投与してもよい。活性化合物またはその塩の溶液を水溶液として、必要に応じて非毒性海面下製剤と混合して調製することができる。グリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチンおよびそれらの混合物中、および油中で分散液を調製することもできる。保管および使用の通常の条件下、これらの調製物は、微生物の成長を妨げる保存剤を含む。
【0063】
注射または輸液に適した医薬的投与剤形は、必要に応じてリポソームに封入された滅菌注射液もしくは滅菌輸液、または分散液の即時調製のために適合する活性成分を含む滅菌粉末を含むことができる。すべての場合において、最終の投与剤形は、製造および保管の条件下で、滅菌され、液体であり、安定であるべきである。液体担体またはビヒクルは、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、非毒性グリセリルエステルおよびそれらの適当な混合物などを含む溶媒または液体分散媒体でありうる。たとえば、リポソームの形成によるか、分散液の場合、必要な粒子径の維持によるか、または界面活性剤の使用により、適切な流動性を維持することができる。たとえば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどの種々の抗菌剤および抗真菌剤によって、微生物の活動の防止をもたらすことができる。多くの場合、糖質、緩衝液または塩化ナトリウムなどの等張剤を含むのが好ましい。モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収遅延化剤を組成物に使用することによって、注射用組成物の持続性吸収をもたらすことができる。
【0064】
必要に応じて、上記列挙した種々の他の成分とともに適当な溶媒に必要量で活性化合物を組み入れ、次いで濾過滅菌することによって滅菌注射液を調製する。滅菌注射液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥技術であり、予め滅菌濾過された溶液に存在するいずれかの追加的所望成分を加えた活性成分の粉末が得られる。
【0065】
局所投与のために、純粋な形態、すなわち液体で本発明組成物を適用してもよい。しかし、固体または液体であってよい皮膚科学的に許容しうる担体と組み合わせた組成物または製剤として皮膚に投与するのが一般的に望ましい。
有用な固体担体として、タルク、クレー、微結晶セルロース、シリカ、アルミナなどの微粉末固体が挙げられる。有用な液体担体として、必要に応じて、非毒性界面活性剤の助けをかりて、本発明化合物が有効濃度で溶解または分散することができる水、アルコールまたはグリコールまたは水−アルコール/グリコール混和物が挙げられる。特定の使用にとっての特性を最適化するために、香料および追加の抗菌剤などの補助剤を加えることができる。得られる液体組成物は、含浸包帯および他の包帯に用いられる吸収剤パッドから適用するか、またはポンプ型またはエアロゾルスプレーを用いて、罹患領域にスプレーすることができる。
【0066】
合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩もしくはエステル、脂肪アルコール、修飾セルロースまたは修飾鉱物材料などの増粘剤を液体担体とともに用いて、使用者の皮膚に直接適用するための展延可能なペースト、ゲル、軟膏、石けんなどを形成することもできる。
グルタミンを皮膚へデリバリーするのに用いることができる有用な皮膚科学的組成物の例は、当業界で周知である;たとえば、Jacquetら(米国特許No. 4,608,392), Geria(米国特許No. 4,992,478), Smithら(米国特許No. 4,559,157)およびWortzman(米国特許No. 4,820,508)を参照。
【0067】
グルタミンおよび本発明組成物を眼への局所投与用に適合させることもできる。水性ビヒクル、ゲルまたは軟膏などの眼科学的に許容しうるビヒクルを用いる。このようなビヒクルは約pH 5〜6に緩衝され、保存剤、増粘剤および可溶化剤を必要に応じて含むことができる。組成物を点眼剤として製剤するのが好ましい。液体点眼用組成物の例は、0.1% w/vのヒアルロン酸ナトリウム(平均分子量1,800,000)または0.1% w/vのポリソルベート80を水溶液中に含む。液体組成物は、緩衝液、等張塩およびEDTAおよびチメリソール(thimerisol)などの保存剤を含んでもよい。
本発明の眼科用水性組成物は、眼科的に適合性のpHおよび浸透圧をもつ。これらの組成物が、たとえば、滅菌条件下での調製およびパッケージングおよび/または抗微生物量の眼科学的に許容しうる保存剤の包含などによる、微生物の成長を阻止する手段を組み込むのが好ましい。
【0068】
好ましい態様において、組成物は、インシトゥでゲル化可能な水性組成物、より好ましくはインシトゥでゲル化可能な水溶液である。このような組成物は、眼または眼の外表面における涙液に接触するとゲル化を促進するのに有効な濃度でゲル化剤を含む。適当なゲル化剤として、非限定的に、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのテトラ置換エチレンジアミンブロックコポリマー(ポロキサミン1307など);ポリカルボフィル;およびゲラン、カラギーナン(κ−カラギーナンおよびι−カラギーナンなど)、キトサンおよびアルギン酸ガムなどの多糖が挙げられる。
【0069】
本明細書における用語「インシトゥでゲル化可能」は、眼または眼の外表面における涙液に接触するとゲルを形成する低粘度の液体のみならず、眼に投与すると実質的に増加した粘度またはゲル堅度を示す、ゲル半流動体および揺変性ゲルなどのより粘稠な液体も含まれるものとして包括的に理解されるべきである。実際、本発明組成物をゲルとして製剤することは、たとえば、反射性まばたきによって引き起こされる流涙の結果としての投与後すぐの組成物の損失を最小化するという利点がありうる。投与に際し、組成物がさらなる粘度の増加またはゲル堅度を示すが好ましいけれども、最初のゲルが涙液の排液による散逸に対して十分に耐性があり、本明細書に特定する有効な滞留時間を提供するならば、このことは絶対に必要なものではない。
【0070】
本発明組成物を、眼科的デリバリー手段によって眼に投与することもできる。たとえば、コンタクトレンズを眼に装着する前あるいは眼に組成物着した後に、レンズに組成物を適用してもよい。
これらの調製物のいずれにおいても、グルタミンは安定な品質で保持され、投与の時間に十分に先だって患者に提供されうる。用時投与のために調製物を病院または患者の家に保管することができる。
たとえば、アミンなどの十分に塩基性の化合物を適当な酸と反応させて、生理的に許容しうるアニオンを得るこことによる、当業界で公知の標準的手順を用いて、医薬的に許容しうる塩を得てもよい。カルボン酸のアルカリ金属(ナトリウム、カリウムまたはリチウムなど)またはアルカリ土類金属(カルシウムなど)塩を製造することもできる。
【0071】
アミノ酸吸収を増加させることによる哺乳動物患者の治療方法
本発明組成物およびその種々のデリバリー方法は、種々の哺乳動物、特にヒトの生理的障害の治療方法において用いることができる。該方法は、上皮組織、特に胃腸上皮(中咽頭、食道、胃および結腸を含む)の障害の治療にとって最も有効である。
該方法は、患者の上皮組織へ投与するための治療有効用量の選択されたアミノ酸またはアミノ酸の組み合わせと、該アミノ酸の水溶解度および細胞吸収を増加させる有効量の炭水化物担体との組み合わせである前述の組成物を提供する。
本発明は、トリプトファン、チロシン、グルタミン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニンおよびフェニルアラニンといったような食事性アミノ酸などの制限された水溶解度を示すアミノ酸の治療レベルのデリバリーにとって特に有用である。たとえば、D−およびL−の両方のアミノ酸ならびにシトルリン、g−アミノ酪酸、ヒドロキシプロリンおよびオルニチンなどのアミノ酸は、本発明の細胞吸収増加方法によってデリバリーすることができる。
【0072】
本発明方法において投与される組成物に有用な炭水化物担体は、たとえば、D−アロース、D−アルトロース、D−アラビノース、D−エリトロース、D−エリトルロース、D−フルクトース、D−ガラクトース、D−グルコース、D−ブリセルアルデヒド、D−グロース、D−リキソース、D−イドース、D−マンノース、D−プシコース、D−リボース、D−リブロース、D−ソルボース、D−タガトース、D−タロース、D−トレロース、D−キシロース、D−キシルロース、マルトース、ラクトースおよびスクロースなどの単糖または二糖のいずれかの糖質から選ぶことができる。たとえば、虫歯を促進しないか、または血糖値における突然の上昇を引き起こさない炭水化物担体を選択することが重要である場合など、一部の患者あるいは生理的状態においては、ソルビトール、エリトリトール、マルチトール、マンニトールまたはキシリトールなどのポリオールまたは糖アルコールを選択するのが好ましい。
【0073】
子供にとって、糖アルコールが特に好ましい担体であり、標的細胞における所望の治療効果に加えてさらなる利点を生み出すことができる。たとえば、キシリトールは、小児用チューインガムに配合すると、肺炎連鎖球菌(ストレプトコッカス・ニューモニアエ)の成長を減少させ、急性中耳炎に対する予防効果をもつことが明らかにされている(Uhari, M.ら, Brit. Med. J.(1996) 313(7066): 1180−1184)。したがって、化学療法または骨髄移植後に、損なわれた口腔または食道上皮組織を治療するために用いられるチューインガム製剤におけるグルタミンのための炭水化物担体としてのキシリトールの使用は、病原体に対する保護的利点を提供することもできる。
【0074】
方法は、アミノ酸補給が指示される生理的障害の同定を含む。さらに詳しくは、本発明は、アミノ酸補給が治療的価値をもちうる生理的障害の症状を示す患者に、増加した細胞内アミノ酸補給をデリバリーする方法が提供される。数多くの生理的障害または疾患が、たとえば、不完全なアミノ酸代謝または不完全な吸収に関連づけられている。多くの状況において、高い細胞内濃度でアミノ酸をデリバリーするのが望ましい。ほとんどの状況において、制限された用量の選択されたアミノ酸(1種またはそれ以上)を投与することによってそうするのも好ましい。しかし、多くのアミノ酸が制限された水溶解度および細胞内吸収を示し、したがって、所望の効果を達成するために高用量で投与されなければならないので、このことは以前は不可能であった。アミノ酸補給が指示されており、したがって、本発明の方法がアミノ酸補給の細胞内デリバリーを増加させるために有利である生理的身体状態を以下に記載する。これらの例は、本明細書に記載の方法の用途を制限することを意図するものではなく、本発明方法が有用である多種多様な生理的障害の例として示すものである。
【0075】
短腸症候群の子供および成人の治療のためのアミノ酸吸収の増強
短腸症候群は、大腸の外科的切除に関連し、吸収のための表面領域の減少を引き起こす。腸の組織は、しばしば、痙攣および下痢などの症状を伴って炎症を起こす。重篤な短腸症候群の子供における食事耐性の改善、非経口栄養摂取の必要性の排除および腸機能の改善において、アミノ酸ベース完全乳児用調合乳が有効であることが実証されている(Bines, J.ら, J. Pediatr. Gastroenterol. Nutr.(1998) 26(2): 123−128)。本発明は、短腸症候群の子供および成人の両方におけるアミノ酸、特に、制限された水溶解度および細胞取り込みを示すアミノ酸(たとえば、トリプトファン、チロシン、グルタミン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニンおよびフェニルアラニンなど)の吸収の増加方法を提供する。短腸症候群の患者の治療に用いる場合、治療有効濃度のアミノ酸と有効量の炭水化物担体の組み合わせが、腸上皮へのアミノ酸の細胞取り込みのレベルを増加させることによって、より大きな利点が患者に提供され、満足できる治療レベルを達成するために投与されなければならないアミノ酸の量が減少する。
アミノ酸と炭水化物担体の組み合わせは、腸または結腸へのデリバリー用にコーティングされた錠剤、カプレット剤またはカプセル剤ならびに浣腸溶液または懸濁液などの種々の医薬的に許容しうる経路で投与することができる。治療用量は、患者の医師によって患者の年齢、身長・体重および栄養状態を考慮して決定される。
【0076】
透析患者におけるアミノ酸吸収の増強
透析患者は一般に悪い栄養状態を示す。しかし、8種の必須および9種の非必須アミノ酸の混合物の補給が、透析患者の健康と気分の両方を改善することが明らかにされている(Mastroiacovo, P.ら, Clin. Ther.(1993) 15(4): 698−704)。本発明方法においては、治療有効量におけるアミノ酸の組み合わせが、有効量の炭水化物担体と組み合わされて、アミノ酸の溶解度および細胞取り込みを増加させることによって、アミノ酸補給の治療効果を増加し、治療効果を達成するのに必要なアミノ酸の用量を減少させる。
透析患者にとって好ましい投与様式は、スクロースまたはキシリトールもしくはソルビトールなどのポリオールなどの有効量の炭水化物担体と組み合わせた治療有効量の種々のアミノ酸を含む腸溶性被覆カプセル剤、カプレット剤、錠剤または被覆ビーズである。
【0077】
創傷の治療のためのグルタミンの吸収の増強
グルタミンは、ヌクレオチド合成のための先駆体である。グルタミンは、タンパク質合成のアクチベーターおよびタンパク質分解のインヒビターの両方である。グルタミンは、グリコーゲン合成のアクチベーターであり、迅速に細胞が分裂するための代謝基質である。また、グルタミンは、上皮細胞のエネルギー源である。アミノ酸吸収を増強するために記載された組成物による表層性または非表層性のいずれかである創傷の治療は、上皮組織へのグルタミンの吸収を増加させ、より迅速な創傷治癒を促進する。しかし、グルタミン吸収の増加による創傷治癒の促進に加えて、本発明方法は、創傷を病原体による感染から保護する治療を提供する。感染した創傷を糖質で充填することは、何世紀にもわたって、実践されている。蜂蜜が、一つには高張濃度の糖質をもつことにより、抗菌特性をもつことは長い間知られている(Basson, N.ら, J. Dent. Assoc. S. Afr.(1994) 49(7): 339−341; Jeddar, A.ら, S. Afr. Med. J.(1985) 67(7): 257−258; Willix, D.ら, J. Appl. Bacteriol.(1992) 73(5): 388−394)。
【0078】
糖質とポビドン−ヨウ素の組み合わせは、創傷、火傷および潰瘍に対して患者を処置するのに用いると、迅速な治癒の促進、細菌汚染の減少および肉芽組織による欠損の充填において有効である(Knutson, R.ら, South Med. J.(1981) 74(11: 1329−1335)。しかし、高張糖質環境の抗菌特性がありつつも、ポビドン−ヨウ素は、白血球細胞を殺す。
したがって、グルタミンと炭水化物担体を組み合わせることは、創傷の処置にとって二重の利点を提供する:上皮細胞によって吸収されるグルタミンの増加が、上皮細胞のためのエネルギー源を提供して細胞分裂および治癒を促進すると同時に、細菌侵入から下層組織を保護するために必要な白血球細胞のためのエネルギー源を提供し、および炭水化物担体が、高浸透圧および低水利用可能性が細菌の成長を防ぐ環境を提供することによって細菌汚染から創傷の表面を保護する。
創傷の処置のために、治療有効量のグルタミンと炭水化物担体(スクロースまたは蜂蜜が好ましい)の組み合わせは、水およびグルタミンと混合した高濃度の糖質の半固体製剤として局所的に適用される。別法として、組み合わせは、患部への局所適用のための濃厚なシロップとして提供される。もう一つの適用の別法は、創傷領域へ適用される固体として製剤を提供することであり、創傷環境からその水性フラクションが引き出される。このような製剤は、創傷治療のための応急処置キットまたは他の緊急処置キット容易に設置することができる。
この組み合わせ剤は、治療の第1の目的が、感染から組織を保護することおよび新しい組織を迅速に再生させることである火傷の治療のために特に有効である。
【0079】
粘膜炎および口内炎の治療のためのグルタミン吸収の増強
粘膜炎は、口腔から肛門までの胃腸管の上皮組織の火傷様損傷または潰瘍様損傷を特徴とする炎症反応である。電離放射線または化学療法剤のいずれかへの曝露に起因する。口内炎は、潰瘍形成を伴うかまたは伴わない、口腔粘膜に影響を及ぼすいずれかの炎症反応である。特に粘膜炎は、潰瘍組織の感染によってさらに悪化することが多い。研究は、これまでに、グルタミン溶液の経口適用が、一部の骨髄移植患者および化学療法患者における粘膜炎に伴う症状を改善しうることを明らかにしている(Skubitz, K.およびP. Anderson, J. Lab. Clin. Med.(1996) 127(2): 223−228; Anderson, P.ら, Bone Marrow Transplant(1998) 22(4): 339−344; Anderson, P.ら, Cancer(1998) 83(7): 1433−1439; 米国特許No. 5,545,668(Skubitzら, August 13, 1996);および米国特許No. 5,438,075(Skubitzら, August 1, 1995)。本明細書に記載の組成物および方法を用いて、粘膜炎または口内炎の治療のために、グルタミンの絶対用量を増やすことなく、増加して有効な細胞内グルタミン濃度を胃腸系の内皮組織にデリバリーすることができる。
【0080】
本発明方法において、たとえば、潰瘍の治療用の口内洗浄、うがい、および飲み込み製剤、ロゼンジまたは硬キャンディーとして組成物を提供することができる。食道潰瘍には、砂糖飲料、ミルクセーキまたは凍結スラリーなどの飲料を用いることができる。生体分解性の挿入物を用いて、口および咽頭を治療することもできる。これらの製剤のいずれかを用いて、粘膜炎または口内炎の子供ならびに成人を治療することができるが、ポプシクルとして、またはシャーベット、氷菓子もしくはアイスクリームと組み合わせて、デリバリーされる炭水化物、グルタミンおよび香味剤の製剤が好ましい。これらのデリバリー方法は、潰瘍組織における冷やすことによる鎮静効果という追加される利点を提供する。チューインガム製剤、好ましくは半固体もしくは液体中心をもつ製剤は、口および食道潰瘍の治療に用いることもできる。
胃潰瘍の治療のために、炭水化物/グルタミン組成物を含む錠剤、カプレット剤、カプセル剤または被覆ビーズを投与することができる。腸潰瘍には、腸溶性または結腸性デリバリーのいずれかで被覆錠剤、カプレット剤、カプセル剤または被覆ビーズを投与することができる。腸溶性コーティングまたは結腸性デリバリーのためのコーティングを提供する方法は、当業界で公知であり、本明細書において前文に記載されている。
【0081】
クリプトスポリジウム症の治療のためのグルタミン吸収の増強
クリプトスポリジウム・パルヴムは、発展途上国における持続性の下痢の主たる原因である。その塩素に対する耐性により、幾つかの合衆国での給水においても驚異となっている。エイズ患者、高齢者および幼年者において特に問題をはらんでおり、生命を脅かす下痢を起こす。クリプトスポリジウム・パルヴムは、腸組織に感染するが、大部分の腸上皮の表層面を越えては感染しない。コブタモデルにおいて、クリプトスポリジウム感染中に、約2/3の腸柔突起表面領域が損なわれた。残りの上皮組織において、増加したグルタミン代謝は、塩素輸送メカニズムに連結したナトリウム−水素交換を伴う。塩素輸送メカニズムとのその直接的関連ゆえに、グルタミンは、クリプトスポリジウム感染による組織の修復にとって特に治療的に有効である(Guerrant, R., Emerging Infectious Diseases(1997) 3(1): 51−57)。感染した組織は、多くの吸収性表面領域が失われたが、炭水化物担体と治療用量のグルタミンを含む組成物で患者を処置することにより、本発明方法は、残りの細胞におけるグルタミン取り込みを増強させて、減少した吸収性表面領域を補う。
【0082】
腸デリバリーのために、被覆カプセル剤、錠剤またはカプレット剤を用いて、組成物を投与することができる。別法として、浣腸溶液として組成物を注入または投与して、グルタミン/炭水化物担体で腸の内層を被覆し、残りの腸上皮細胞へのグルタミン吸収を増強することができる。
グルタミンは、腸の内層の細胞間を移動し、クリプトスポリジウム・パルヴムなどの病原体を破壊する原因である白血球細胞のための一次的エネルギー源を提供することが知られているので、該方法は、疾病予防の要素としても有用である。したがって、本発明方法による上皮細胞および白血球へのグルタミン吸収増加は、腸の上皮内層の構造的完全性を維持しながら免疫応答を改善する方法を提供する。クリプトスポリジウム感染の危険がある患者のために、腸溶性被覆カプセル剤を投与して、上皮細胞の完全性を維持し、免疫応答を改善することができる。
【0083】
胃腸管における外科手術後の創傷治癒を改善するためのグルタミン吸収の増強
口腔、腸全体または一部の内部における外科的切除に続いて、本発明方法によって、上皮組織損傷を処置して、組織完全性を増加させ、創傷治癒を促進することができる。口腔外科手術に続いて、本発明組成物を含むうがいおよび飲み込み製剤、口内洗浄、ロゼンジ、キャンディーまたはチューインガム製剤により、患者に炭水化物担体と組み合わせた治療有効量のグルタミンを容易に投与することができるようになる。特に、口腔外科手術を受けた患者において、非齲蝕原性の炭水化物担体が好ましい。このような糖質担体として、たとえば、マルチトール、ラクチトール、ソルビトールおよびキシリトールが挙げられる。組成物に配合するのに最も好ましいポリオール炭水化物担体は、キシリトールである。
【0084】
腸の外科手術に続いて、被覆錠剤、カプレット剤、カプセル剤または被覆ビーズの剤形で組成物を投与することができる。錠剤、カプレット剤、カプセル剤または被覆ビーズは、腸溶性デリバリーのために、たとえば、酢酸フタル酸セルロース、酢酸トリメリット酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびカルボキシメチルエチルセルロースなどの有機溶媒でコーティングすることができる。錠剤、カプレット剤またはカプセル剤は、高いpH(pH7)で溶解するようにアクリルベース樹脂でコーティングして、回腸末端部および結腸へのデリバリーを提供することができる。別法として、カカオバターまたは他のグリセリドなどの基剤を用いて座薬の剤形で、または慣例の座薬基剤を含まない直腸錠剤として、グルタミン/炭水化物担体組成物のデリバリーを提供することができる。このような座薬用途のための組成物は、Mizunoら, 米国特許No. 4,462, 984およびHarwoodら, 米国特許No. 4,439,194に記載されている。
糖尿病患者の治療のためには、ソルビトールは腸で吸収されず、さらなる腸の不快感を引き起こしうるので、キシリトールが好ましい炭水化物担体である。
【0085】
低体重新生児の治療のためのグルタミン吸収の増強
Neuらは、腸溶性グルタミン補給を受ける極低体重新生児の生存率が増加していることを報告している(J. Pediatrics,(1997) 131(5): 691−699)。本発明方法は、真のグルタミン投与量を減少させると同時に、治療的細胞内グルタミン量を増加させることを提供する。低体重新生児においては、特に、より少量の栄養素の投与により所望の効果が達成されるのが必須である。
組成物のデリバリーには、経腸栄養チューブが好ましい。スクロースおよび高フルクトースコーンシロップが好ましいが、多くの炭水化物担体のいずれか一つを選択することができる。グルタミンの治療用量は、用量計算の標準的手段を用い、炭水化物担体と組み合わせることにより、グルタミン吸収が、グルタミン単独投与により達成される吸収と比べて少なくとも10倍まで増加することを考慮して、個々の医師によって決定される。栄養製剤に香味剤および安定化剤などの賦形剤を加えることができる。加える栄養素として、ビタミン、アミノ酸およびラクトフェリンなどの推奨された栄養素が挙げられる。
【0086】
ウイルスおよび細菌由来の皮膚科損傷を治療するためのグルタミン吸収の増強
多くのウイルス性疾患が、上皮病変によって認識される。これらには、たとえば、水痘帯状疱疹ウイルスを特徴とする、口の周囲の疱疹性病変、とびひに関連する病変および帯状疱疹として知られる痛みを伴う病変が含まれる。本発明方法を用いて、病変部にグルタミン/炭水化物担体組成物を局所適用することにより、このような病変を治療することができる。組成物中のグルタミン成分が、上皮細胞にエネルギーを提供することにより治癒を補助し、糖質が、さらなる感染から損傷または感染組織を保護するための抗菌特性を提供する。
局所適用には、グルタミン、炭水化物担体および安定化剤、ゲル化剤または増粘剤などの賦形剤を含むローション剤またはクリーム剤が好ましい。
【0087】
ヒト免疫不全ウイルスに感染した患者を治療するためのグルタミン吸収の増強
胃腸リンパ組織は身体における総リンパ球の90%以上を宿している。幾つかの研究は、胃腸上皮が、CD34+ CD4−前駆体の大きな集団を含むことを明らかにしている(Mattapallil, J.ら, J. Virol.(1999) 73(5): 4518−4523)。胃腸管もまた、サル免疫不全ウイルス感染におけるCD4+ T細胞欠乏およびウイルス複製の主要な部位であることを実証されている。他の研究は、グルタミンがTリンパ球誘導サイトカインの産生を増加させることを明らかにしている(Yaqoob, P.およびP. Calder, Cytokine(1998) 10(10): 790−794)。したがって、本発明方法による腸粘膜へのグルタミン吸収の増強は、HIV感染患者、特に感染の早期段階にある患者に対して治療的利点を提供することができる。ウイルス感染に対するサイトカイン応答の増強は、重要なウイルス複製部位における免疫系によるウイルス破壊に貢献することができる。
グルタミン/炭水化物担体組成物は、腸溶性被覆錠剤、カプレット剤、カプセル剤または被覆ビーズの形態で投与することができる。適当な糖質担体として、好ましくは、たとえば、スクロース、グルコース、高フルクトースコーンシロップおよびキシリトールが挙げられる。
本発明方法による推奨食事量のグルタミンの投与は、たとえば、10〜30倍のファクターで腸上皮へのグルタミンのデリバリーの増加をもたらしうるので、この量のグルタミンを毎日投与するのが好ましい。したがって、より少ない量の投与にでも、以前にグルタミン単独でより高用量で投与することにより達成された濃度よりもやや多いグルタミンの細胞内濃度を生み出すことができる。
【0088】
ガン療法のためのグルタミン吸収の増強
グルタミン補給は、腫瘍細胞に対する放射線療法と化学療法の両方の選択性を増加させる。グルタミン補給は、腫瘍の成長を減少させ、化学療法または放射線療法と併用すると、腫瘍体積における減少量を増加させる。本明細書は、グルタミン補給がナチュラルキラー細胞の活性を増加させることも明らかにしている。
グルタミン補給は、化学療法および放射線療法に対する耐性も増加させる。これは、細胞修復を達成するためのエネルギー源および手段をもつ正常細胞によって達成される。
本発明組成物および方法は、胃腸上皮細胞へのグルタミン吸収の増加を提供する。いったんこれらの細胞に吸収されると、より多くのグルタミンが身体の他の組織への循環に利用できるようになる。グルタミン吸収の増強は、腸におけるグルタチオン産生を増加させる手段も提供する。したがって、ガン療法は、胃腸上皮へのグルタミン吸収を増加させるのに有効な、スクロース、グルコース、キシロース、キシリトール、固形高フルクトースコーンシロップなどの炭水化物担体のある量との混合物においてグルタミンを毎日投与することからなりうるか、または該投与により増強されうる。本発明組成物および方法は、ヒトおよび獣医のガン療法の両方に用いることができる。
グルタミンの1日用量は、たとえば、身長・体重および年齢などの用量計算に影響を及ぼす当業者に周知のファクターを考慮して、個々の患者の医師によって決定される。本発明組成物および方法は、少なくとも10倍のファクター、より好ましくは100倍のファクターでグルタミン吸収を増加させるので、より低い用量で投与することができるが、ガン療法のためのグルタミンの推奨食事量は、少なくとも3〜4g/日の最大食事摂取が好ましい。
【0089】
アミノ酸吸収の増加方法の他の用途
患者における生理的障害を治療する方法は、最初は、グルタミンの投与という用語で記載されているが、本発明は、増強されたレベルのグルタミン単独の投与方法に限定することを意図するものではない。たとえば、D−セリンは、抗精神病薬の投与を組み合わせて投与すると、集積失調症の治療に有効であることが実証されている(Tsai, G.ら, Biol. Psychiatry(1998) 44(11): 1081−1089)。したがって、経口投与後の腸上皮へのD−セリンの吸収を増強せることにより、全身循環のための利用可能なD−セリンを増加させる方法を提供することができる。染色体の遺伝子障害であるカナバン病は、食事性アスパラギン酸の補給からの利点が提唱されている(Baslow, M. And T. Resnik, J. Mol. Neurosci.(1997) 9(2): 109−125)。したがって、疾患の早期発見は、わずかに25度にて0.778 g/100gの水溶性しかもたないアミノ酸であるアスパラギン酸の取り込みを増強させ、この疾患の特徴である脳の進行性の変性に対して保護する本発明方法により、アスパラギン酸補給に付随して行うことができる。
これらは、本発明方法によって提供される、アミノ酸吸収が増強されることを用いて治療的に処置されうる多くの生理的身体状態のうちのわずかに2つの例である。アミノ酸類が、治療価値をもつことがわかるので、本発明方法に記載したように、炭水化物担体と組み合わせてアミノ酸補給を提供することにより、食事補給はさらに増強されうる。
【0090】
上皮細胞へのアミノ酸吸収の増強の獣医用途
早期に乳離れしたブタは、腸萎縮を発症するので、腸上皮損傷を予防し、ブタ生産における利点を提供するためにグルタミン補給が求められている(Wuら, J. Nutr.(1996) 126(10): 2578−84)。本発明組成物および方法を用いて、上皮組織細胞へのアミノ酸吸収を増強し、それによってアミノ酸補給に関連するコストを減少させることができる。本発明組成物および方法は、化学療法を始めているイヌや他の哺乳動物の獣医学的処置にも有用である。たとえば、ヒト化学療法患者における胃腸潰瘍に関連して、ドキソルビシンは、血管肉腫などの多くの他の哺乳動物のガンに対する推奨される処置である。本発明組成物および方法は、哺乳動物患者の損傷を受けた上皮へのアミノ酸吸収ならびに胃腸上皮への吸収を増加させることによる全身適用可能なアミノ酸の増加の増強を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】図1および図2は、本発明の組成物および方法を用いて達成された増加したアミノ酸取り込みを説明するグラフである。アミノ酸グルタミンを、有効量の炭水化物担体と組み合わせて(炭水化物担体:アミノ酸=7:1の比率)(エスゲン(Aesgen)−14)、ならびにコントロールとして添加成分なしで飽和溶液として投与されたアミノ酸と組み合わせて(L−グルタミン飽和溶液(Glut Sat Sol))、CaCo細胞に投与した。記号の説明およびグラフに示されるように、グルタミン単独投与によって達成されたグルタミン濃度と比べて、アミノ酸と炭水化物担体の組み合わせで処置した細胞における細胞内グルタミン濃度は増加した。インキュベーション時間(秒)をX軸に示し、細胞グルタミン取り込みをY軸に示す。
【図2】図1および図2は、本発明の組成物および方法を用いて達成された増加したアミノ酸取り込みを説明するグラフである。アミノ酸グルタミンを、有効量の炭水化物担体と組み合わせて(炭水化物担体:アミノ酸=7:1の比率)(エスゲン−14)、ならびにコントロールとして添加成分なしで飽和溶液として投与されたアミノ酸と組み合わせて(L−グルタミン飽和溶液)、CaCo細胞に投与した。記号の説明およびグラフに示されるように、グルタミン単独投与によって達成されたグルタミン濃度と比べて、アミノ酸と炭水化物担体の組み合わせで処置した細胞における細胞内グルタミン濃度は増加した。インキュベーション時間(秒)をX軸に示し、細胞グルタミン取り込みをY軸に示す。
【図3】図3は、L−グルタミン細胞取り込みにおけるビヒクルの相対的効果を表す。
【図4】図4は、グリシルサルコシン細胞取り込みにおけるビヒクルの相対的効果を表す。
【図5】図5は、L−アスパラギン細胞取り込みにおけるビヒクルの相対的効果を表す。
【図6】図6は、アシクロビル細胞取り込みにおけるビヒクルの相対的効果を表す。
【図7】図7は、L−グルタミン細胞取り込み(半飽和から)におけるビヒクルの相対的効果を表す。
【図8】図8は、L−グルタミンのCaCo−2透過性を表す。
【図9】図9は、グリシルサルコシンのCaCo−2透過性を表す。
【図10】図10は、L−アスパラギンのCaCo−2透過性を表す。
【図11】図11は、アシクロビルのCaCo−2透過性を表す。
【図12】図12は、L−グルタミンのCaCo−2透過性(半飽和から)を表す。
【図13】図13は、ヒト線維芽細胞への取り込みにおける、飽和L−グルタミン(左ボックス)対エスゲン−14(右ボックス)の効果を表す。
【図14】図14は、ヒト臍細胞および上皮細胞へのL−グルタミン取り込みにおけるエスゲン−14の効果を表す。
【図15】図15は、DMBA+GLN(AES−14)、DMBA+遊離アミン(FA)、油(OIL)+GLN(AES−14)およびOIL+FAで処置したラットの腸グルタミン流束(パネルA)および腸グルタチオン流束(パネルB)を示す。
【図16】図16は、ゴマ油の胃管補給に続いて、AES−14(GLN)、イソ窒素性(isonitrogenous)遊離アミン(FA)または水を経口処置した1〜11週間後のラットにおける血清IGF−1濃度を示す。
【図17】図17は、ゴマ油中のDMBAの胃管補給に続いて、AES−14(GLN)、イソ窒素性遊離アミン(FA)または水を経口処置した1〜11週間後のラットにおける血清IGF−1濃度を示す。
【図18】図18は、実験的DMBA誘発性乳ガンにおいてのGSH(パネルA)およびGSSG(パネルB)の腫瘍レベルにおけるGLN(AES−14)補充の効果を示す。測定は、三重に行った。標準誤差バーを伴ったnmol/mgタンパク質として結果を表す。
【図19】図19は、DMBA誘発性乳腺腫瘍においてのカスパーゼ−3酵素活性におけるGLN(AES−14)補充の効果を示す。標準誤差バーを伴った405nmにおける吸光度として結果を表す。測定は、三重に行った。
【図20】図20は、相対的RT−PCRによって確証された、DMBAで処置したラットの乳腺腫瘍においてのBcl−2、Bax、カスパーゼ−3およびp21のmRNA発現におけるGLN(AES−14)補充の効果を示す。標準誤差バーを伴った任意単位として結果を表す。代表的な(n=5)反転アガロースゲル画像を各カラムの下に示す。
【図21】図21は、DMBA乳ガンモデルにおいてのGLN(AES−14)補充による非腫瘍乳房組織におけるIGF−1タンパク質発現の阻害を示す。
【図22】図22は、実験的DMBA誘発性乳ガンにおいてのIGF−1Rのタンパク質発現における食事性GLN(AES−14)の効果を示す。
【図23】図23は、ラットの実験的乳ガンにおいてのAktタンパク質発現における食事性GLN(AES−14)補充の阻害効果を示す。
【図24】図24は、実験的DMBA誘発性乳ガンをもつラットからの非腫瘍組織サンプルにおけるBcl−2タンパク質の減少を示す。
【図25】図25は、DMBA誘発性乳ガンモデルにおいてのBadタンパク質発現におけるGLN補充の効果を示す。
【図26】図26は、ラット空腸側底膜小胞において測定されたグルタチオン(GSH)輸送における経口摂取DMBAの効果を示す。
【図27】図27は、BMDAまたはゴマ油(コントロール)を経口摂取させた1週間後のラットの門脈血グルタチオン(GSH)濃度を示す。
【図28】図28は、ラット腸粘膜におけるグルタチオン(GSH)の濃度における経口摂取DMBAの効果を示す。
【図29】図29は、ゴマ油を与えられたラットの粘膜組織ならびにDMBAを胃管補給されたラットの粘膜組織および腫瘍組織のγ−グルタミルトランスペプチダーゼ(GT)活性を示す。
【図30】図30は、ゴマ油を与えられたラットの粘膜組織ならびにDMBAを胃管補給されたラットの粘膜組織および腫瘍組織のγ−グルタミルトシステインシンセターゼ活性を示す。
【図31】図31は、AES−14(GLN)、遊離アミン(FA)または水を胃管補給した後、ゴマ油中のDMBAまたはゴマ油コントロール(oil)を胃管補給し、実験期間中を通して経口投与した1〜11週間後のラットからサンプリングされたNK細胞のナチュラルキラー細胞活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0092】
以下の非限定的実施例により、本発明を詳しく説明する。
【実施例1】
【0093】
スクロースおよびソルビトールと組み合わせたグルタミンの細胞取り込みの評価
以下の実施例に示すように、本発明組成物は、ヒト胃腸上皮細胞へのアミノ酸グルタミンの溶解性および細胞吸収を改良することが明らかにされている。
1.材料および方法
蒸留脱イオン水(107 ml)を表1に示すスクロース、ソルビトールおよびグルタミンと賦形剤との混合物(エスゲン−14)(207 g)に加えた。
【表1】
コントロールとして、200 mlの蒸留脱衣温水を50 gのL−グルタミン(Ajinomoto, Raleigh NC)に加え、攪拌により混合する。両方のサンプルを室温にて1時間静置した。傾瀉して上清を残渣から分離し、細胞取り込み測定に用いた。
第1日に、6ウエル組織培養皿に、ヒト胃腸上皮細胞系由来の細胞(CaCo)を0.5 x 106細胞/ウエルの密度で播いた。第2日に、培養培地を正常成長培地またはL−グルタミン欠乏培地のいずれかに置き換えた。
第3日に、以下のプロトコルにしたがい、エスゲン−14溶液と並行してL−グルタミン溶液を用いて、正常成長培地(「正常」)およびL−グルタミン欠乏培地(「欠乏」)で培養した両方の細胞をグルタミン取り込みの比較のために評価した:2 mlの試験物質(エスゲン−14またはL−グルタミン溶液のいずれか)を適当なウエルに加え、次いで、37度にてインキュベートした。0、10、20、40および60秒の時点で、試験物質を吸引し、冷(4度)リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で細胞を3回洗浄し、次いで、1.0 mlの過塩素酸を加えた。細胞を擦り、次いでピペットで1.7 mlチューブに収集した。
収集した細胞を10秒間超音波処理し、500 μlの超音波処理細胞を1.7 mlチューブに移した。130 μlの2M KHCO3を加えて過塩素酸を中和し、得られる混合物を−80度にて一夜凍結させた。
解凍し、14,000 rpmで10秒間サンプルを遠心分離し、上清を1.7 mlチューブに移し、−80度にて凍結させた。得られる清澄化サンプルを解凍し、イオン水で1:3に希釈した。5 μlを回収し、10 μlの完全o−フタルジアルデヒド(Sigma P−0532)を加え、攪拌により混合する。室温にて2分間インキュベートした後、移動相として70:30のアセトニトリル:水を用いて、20 μlのサンプルをHypersil(登録商標)C18 Elite 5 μm HPLCカラムに注入した。μg/mlで測定したグルタミンレベルを340 nmで検出した。
【0094】
2.結果
結果を平均細胞グルタミン取り込み(μg/ml)として表2に示す。
【表2】
上記にまとめたように、グルタミン取り込みは、水性L−グルタミン単独で処理した細胞と比べてエスゲン−14で処理した細胞において、正常細胞(363x)および欠乏細胞(21x)の両方で有意に増加した。
【実施例2】
【0095】
薬物取り込みおよび透過性におけるAES−14の効果
本実験では、Caco−2細胞単層を通過する5つのモデル薬物(L−グルタミン、L−アスパラギン、グリシルサルコシンおよびアシクロビルの飽和溶液;およびL−グルタミンの半飽和溶液)におけるスクロース含有ビヒクルの細胞取り込みおよび透過性増強効果を測定した。アピカルからバソラテラル方向にて、ビヒクル有りまたは無しで、各化合物の取り込みおよび透過性を測定した。
【0096】
方法
物質:
透過性の低い2つのアミノ酸(L−グルタミン、L−アスパラギン)、ジペプチド(グリシルサルコシン)および治療薬(アシクロビル)を調査した。各化合物をトリチュレートした。単層/細胞の完全性の評価として(すなわち、取り込み/透過性の低さのマーカーとして)14C−マンニトールを用いた。
取り込みおよび透過性評価:
Caco−2単層を通過する化合物の細胞取り込みおよび透過性を測定した。21日間よりも4日間を必要とする最近開発された迅速培養システムを用いて、Caco−2単層を成長させた(Lentzら,(2000), Int. J. Pharm., 200(1): 41−51)。
取り込みおよび透過性実験を、ブランクAES−1(すなわち、L−グルタミン無しのAES−1)または10 mM HEPES 緩衝液(溶液pH=6.8)を含むハンクス平衡塩溶液(HBSS)のいずれか中、Caco−2単層を通過させて、37度および50振動/分にて2回繰り返して行った。4つの化合物それぞれに対して医薬ビヒクルが存在する場合にHBSSを用いた。ビヒクルの効果を考慮する場合に、ブランクAES−14が、L−アスパラギン、グリシルサルコシン、アシクロビルおよび「半飽和」L−グルタミン実験のためのマトリックスであった。L−グルタミンを含むAES−14は、L−グルタミンについて調査した。単層完全性は、14C−マンニトール透過性を用いてモニターした。マンニトール取り込みは、単独で調査した。
10秒、60秒および5分の間隔でアピカルからバソラテラル方向にて、Transwell(登録商標)インサートを用いて、取り込みおよび透過性調査を行った。9つの飽和系(半飽和L−グルタミンを除く)を含むドナー溶液が、取り込み/透過性調査のため源溶液である。飽和溶液群は、5.4 g L−グルタミン/100 ml、1 g L−アスパラギン/10 ml、2 g グリシルサルコシン/10 mlおよび16 mg アシクロビル/10 ml 系濃度(Kristol,(1999), J. Pharm. Sci., 88: 109−110)を利用することによって得た(ここで、過剰の固体溶質は、飽和を確実にするために存在した):
L−グルタミン/HBSSの飽和溶液(5.4g/100 ml)
L−アスパラギン/HBSSの飽和溶液(1g/10 ml)
グリシルサルコシン/HBSSの飽和溶液(2g/10 ml)
アシクロビル/HBSS AES−14の飽和溶液(16 mg/10 ml)
L−アスパラギン/ブランク AES−14の飽和溶液(1g/10 ml)
グリシルサルコシン/ブランクAES−14の飽和溶液(16 mg/10 ml)
2.3g/100 ml L−グルタミン/ブランクAES−14(すなわち、半飽和L−グルタミン)。
液体シンチレーションカウンティングによって、14C−マンニトールおよび3H−薬物を定量した。取り込みの調査のために、指定の時点(10秒、60秒および5分)で、ドナー溶液を吸引した。氷冷HBSSで2回細胞単層を洗浄して、残留結合物を除去し、次いで、1 mlの細胞可溶化剤Solvable(登録商標)に溶解した。5 mlのシンチレーションカクテル(Econosafe(登録商標))に細胞溶解液(0.5 ml)を加え、液体シンチレーションカウンター(Beckman LS5801、Columbia、MD)で計数した。透過性調査のために、5 mlのシンチレーションカクテル(Econosafe(登録商標))に0.5 mlの受容溶液を加え、液体シンチレーションカウンターで計数した。
薬物の濃度未知の飽和溶液を用いたので、絶対的取り込みは計算することができなかった。したがって、取り込みにおけるビヒクルの効果は、ビヒクル対非ビヒクルから細胞単層への相対的薬物取り込み(すなわち、放射標識トレーサーにおけるわずかな差に対して標準化した後の取り込みの比率)に関して、後記に考察される(図3−7)。
等式1を用いて、各実験における透過性を計算した(図8−12)。
【数1】
[ここで、Pは透過性、dM/dtは受容コンパートメントにおける薬物塊蓄積の速度(すなわち、放射活性)、Aは領域およびCdはドナー薬物濃度(すなわち、放射活性)である](Polliら,(1998)、Pharm. Res.、15: 47−52)。透過性は、絶対的測定(単位cm/秒または速度)であり、絶対的薬物濃度が未知であっても決定することができる。。
【0097】
結果
取り込み:
図3−7において、L−グルタミン、グリシルサルコシン、L−アスパラギン、アシクロビルおよびL−グルタミン(半強度)の細胞への取り込みにおけるビヒクルの相対的効果を示す。もし、取り込みが各ビヒクルおよびHBSSからのものと同一ならば、相対的取り込みは1.0である。4つの薬物および半強度L−グルタミンのすべてについて、相対的取り込みは、1.0を越えた。図3−6において、L−グルタミン、L−アスパラギン、グリシルサルコシンおよびアシクロビルについて、ビヒクルは、細胞取り込みを約4倍に増強した。おそらく、より少ない程度で、ビヒクルは半強度L−グルタミンを増強した(図7)。
下記表3において、マンニトール相対的取り込みにおいてビヒクルは効果がなかった。図3−7と同時に行われた、これらのマンニトールの調査は、取り込み強化に関して、ビヒクルの効果がマンニトールと他の化合物では相異することを示した。したがって、糖類の取り込み自体は、明らかに増加されず、溶液、分散液またはゲル中にある糖類は、用語「生物活性作用物質」から排除されうる。
【表3】
透過性:
図8―12において、L−グルタミン、グリシルサルコシン、L−アスパラギン、アシクロビルおよびL−グルタミン(半強度)の透過性におけるエスゲン−14ビヒクルの相対的効果を示す。取り込みにおける相対的ビヒクルの効果(すなわち、ビヒクル対ビヒクル無しの取り込みの比率)を示す前述の取り込みデータとは相異して、透過性は、各製剤(ビヒクル無しおよびビヒクル有り)について、絶対値で測定され、計算される。透過性における2倍の変動は、典型的実験変動内にあるので、これらの結果は、透過性においてビヒクルが効果がないことを示す。同様に、ビヒクルは、マンニトール透過性において効果がなかった(表3)。
図13において、ヒト線維芽細胞へのL−グルタミン取り込み(右ボックス)対飽和L−グルタミン取り込み(左ボックス)におけるエスゲン−14ビヒクルの効果を示す。図14は、ヒト内皮細胞へのL−グルタミン吸収における効果を示す。チャートにおいて、飽和L−グルタミン単独の効果は見られなかった。
5分間が、従来のCaco−2の透過性研究にとって非常に短時間の枠を意味することに留意すべきである。いずれかの可能なビヒクル効果を観察することの確率を減少させながら5分後に定常状態が達成されることは起こりそうにない。
【0098】
まとめ
L−グルタミン、L−アスパラギン、グリシルサルコシンおよびアシクロビルは、正常な生理的条件下でそれぞれ受動膜貫通特性の乏しい2つのアミノ酸、ペプチドおよび抗ウイルス薬を表す。したがって、それらの細胞取り込みおよび膜貫通性の増強は、ドラッグデリバリーの観点から利点がある。L−グルタミン、L−アスパラギン、グリシルサルコシンおよびアシクロビルの飽和溶液について、AES−14ビヒクルは、その細胞薬物取り込みを4倍に増強した。この細胞への薬物取り込みの増強は、迅速に(すなわち、1分以内で)生じ、実験時間(5分間)を越えて持続した。おそらく、より少ない程度で、ビヒクルは、半飽和L−グルタミンを増強した。ビヒクルは、マンニトール取り込みに対しては効果がなかった。非常に短い5分間という時間にわたっての透過性にかんして、ビヒクルは、いずれの化合物に対しても効果がなかった。
【表4】
【実施例3】
【0099】
経口AES−14は、DMBAによって妨害された胃のグルタチオン産生を復活させる
序論:
経口グルタミン(GLN)がDMBA誘発性乳ガンを予防するメカニズムは、未知である。GLNは、ラットにおいて胃グルタチオン(GSH)の負の抽出を3倍にするが、7,12−ジメチルベンズ[a]アントラセン(DMBA)は、それを有意に妨害する。実際の胃のGSH流束は、報告されていない。我々は、胃がGSHの産生者であり、DMBAが胃のGSH産生をブロックし、補給的経口GLNがこの効果をアンタゴナイズすると仮定した。
方法:
80匹のスプラーグ−ドーリーラットを無作為に4つのグループ(n=20/グループ)に分ける:DMBA+GLN、DMBA+FA、OIL+GLN、OIL+FA。ラット(50日齢)に20 mgのDMBAまたは油(Oil)を胃管補給にて1回だけ与えた。ラットにAES−14(1 gm GLN/kg/日)またはイソ窒素性量のフレアミン(FA)をDMBAの1週間前から1週間後の屠殺まで胃管補給にて与えた(胃のGSH抽出における最大の効果)。GLNおよびGSHレベルのために動脈血および門脈血を採取し、14−C−PAHを用いて血流を測定する。胃のGLNおよびGSH流束(取り込みまたは産生)を計算した。
結果:
DMBAは、OIL+FAにおいて正常なGSH産生を抑止する(負の流束)が、GLN代謝には影響を及ぼさない(図15)。GLNは、DMBA+GLNにおいてGSH産生を維持する(図15)。
結論:
AES−14の経口投与は、DMBA処置動物において正常なGSH産生を復活させ、このモデルにおけるGLNが乳ガンを予防するメカニズムの一つが示唆される。DMBA処置動物においてGLNの取り込みが変化しないことは、実際の細胞内産生よりもむしろGSH輸送の遮断を示す。
【実施例4】
【0100】
経口AES−14は、放射線傷害から乳房組織を保護する。
乳房温存療法(BCT)後の胸の美容的結果は、皮膚および周囲の組織への放射傷害によって部分的に制限される。前臨床試験において、グルタミン(GLN)が、おそらくグルタチオン(GSH)代謝のアップレギュレーションを介して、小腸に対する急性および慢性の放射線傷害の両方を有意に減少させることが明らかにされている。GLNを提供するためのAES−14の経口投与は、乳房腫瘍組織内のGSHを増加させることなく正常な細胞内乳房GSHを倍増する。したがって、われわれは、BCT患者においてGLNが正常乳房組織への放射線傷害を安全に予防するものと仮定した。
この理論を2つの部分において試験した。最初に、経口AES−14の3日前および後のヒト乳房腫瘍からのバイオプシーは、細胞内腫瘍GSHにおいて有意な変化を示さなかった。放射線療法(5,000 cGy)の1週間前から1週間後まで経口AES−14(30 gm GLN/日、およそ0.5 gm GLN/kg/日)またはプラセボに対して17人の患者を無作為化する第3相予備実験を行った。7週間週一度および2年間3ヶ月毎に
急性および慢性の放射線傷害に対して、RTOGスケール、第0週および第7週における皮膚バイオプシー、GLNおよびGSHレベル、超音波、乳房エックス線像密度、リンパ浮腫、生活の質および一般状態を用いて、患者を調査した。
皮膚の程度に対するRTOG急性放射線罹患率スコアリング基準は0(変化なし)〜4(壊死)である。スコア2(湿性剥離)は、治療の失敗とみなした。プラセボグループが1.4+0.2であるのに比べて、経口AES−14を受けている患者の平均スコアは0.9+0.2 SEMであった。プラセボグループのすべての患者は、最初の7週間の間にスコア2またはそれ以上に達した。プラセボ患者8人のうち2人は、放射線療法の延期を必要とした。しかし、4人のうちスコア3のもう一人の患者は、放射線を延期しなかった。AES−14グループの9人の患者のうち4人のみが、スコア2であり、スコア3はいない(p=0.03 AES−14対プラセボ、フィッシャーの正確な確率)。12ヶ月の時点で、プラセボグループの8人の患者のうち4人は、3人が鎮痛薬を必要とする痛みを訴え、8人のうち6人が顕著な浮腫を有し、8人のうち4人が放射線を受けた乳房の密度および堅さの増加を示した。AES−14グループでは、9人のうち2人が鎮痛薬を必要としない程度の軽度の痛みを訴え、浮腫を生じたものはおらず、1人の患者が乳房密度の最少の増加を示した(p=0.01、AES−14対プラセボ、フィッシャーの正確な確率)。2年間の追跡調査において、2人のプラセボ患者が局所的に再発し、GLNグループではいなかった。美容的スコアは、AES−14グループにおいて平均して優秀であった(9.2+0.6)が、プラセボグループにおいてはまあまあよかった(7.3+1.0)。
この予備実験の結果は、経口GLN補給が、乳房に対する急性および慢性放射線罹病率の両方を減少させるのに安全で有効な方法であり、美容面を改善することができることを示唆する。
【実施例5】
【0101】
血清IGF−1レベルにおけるグルタミン(AES−14)補給の効果
インスリン様成長因子−1(IGF−1)レベルがより高いことは、インビトロおよびインビボでの乳房における細胞増殖の速度がより速いことと相関関係にある(Ma、J.ら、JNCI 91:620、1999; Hinkinson、S.E.ら、Lancet 351:1393、1998)。我々は、経口グルタミンで見られる腫瘍成長の阻害が、血清IFG−1レベルの低下によるものであると仮定した。このことは、IGF−1の排出のメカニズムの一つがGSHと複合しているIGF−1を介しているという知識に基づいている。肝臓へのGSHレベルの増加はこの排出を促進する。
方法:
192匹の50日齢の雌性スプラーグ−ドーリーラットに、無作為に胃管補給にて1 gm/kg/日の3%Gln水溶液、イソ窒素性遊離アミン(必須および非必須アミノ酸の混合物、FA)または水を与え、TD96163固形飼料の制限食事で同時飼育し、0時点では、胃管補給にてゴマ油中の100 mg/kgのDMBAを与え、コントロールとしてコントロール油を与えた。コントロールグループにおける100%腫瘍形成を促進するための残りの実験において、100 mg/kg用量のDEMBAおよび同じタイミングを用いた。1、2、4および11週の時点で各グループ(n=48)からのラットを屠殺した。動脈Gln、血清IGF−1レベルおよび腫瘍成長を時間とともに測定した。使用説明書にしたがってDSL−2900 Rat Radioimmunoassay Kit(Diagnostic Systems Laboratories、Inc.、Texas)を用いて血清IGF−1レベルを測定した。
結果:
AES−14としての経口Glnは、動脈GlnおよびGSHレベルを上昇させ(〜10%、データ示さず)、IGF−1血清レベルを低下させた(〜10−30%)(図16および17)。IGF−1レベルの低下は、DMBAの存在または不在下で長期にわたって持続した。Glnの経口補給により、ラットモデルにおけるDMBAの発ガンはDMBA+FAおよびDMBA+H2Oに対して50%、p<0.05まで再度有意に減少した。これは、80 mg/kg DMBAを用いる80〜90%の減少に匹敵する。IGF−1レベルにおける減少量は、Glnグループにおける腫瘍成長の減少は、このモデルにおいてタキソフェンで見られるものと類似する(Jordan、VC、Reviews on Endoc. Rel. Cancer(October Suppl) 49−55、1978)。
【実施例6】
【0102】
グルタミン補給は、アポトーシスを増進することにより、7,12−ジメチルベンズ[a]アントラセン誘発性乳ガンにおける腫瘍の発生を阻害する。
概論:
GLNが腫瘍細胞の成長をインビトロにおいて刺激するという事実にもかかわらず、GLN補給は、腫瘍の成長をインビボにおいて有意に減少させ、放射線処置および化学療法の両方において腫瘍の殺傷を増強する(Klimbergら、JPEN、16: 1606−09(1992)、Farrら、JPEN、18: 471−76(1994)、Rouseら、Ann. Surg.、221: 420−26(1995))。腫瘍の成長におけるGLNの阻害効果がグルタチオン(GSH)生成の刺激により生じることが仮定されている(Fengら、Surg. Forum、XLVII: 524−526(1996))。GSHは、最も豊富な天然の抗酸化剤であり、感染、活性酸素および発ガン性物質に対する身体の防御において中心的役割を担う(Larssonら、In: The Metabolic and Molecular Basis of Inherited Disease(Eds.Scriver CF、Beaudet AL、Sly WS & Vallee D)、McGraw Hill、New York 8th edition p. 2205−2216(2001))。しかし、近年の研究は、GSHレベルが、乳房、結腸、卵巣および肺ガン組織において正常組織と比べて上昇することを実証している。腫瘍GSHレベルの上昇は、化学療法に対する耐性の増強に関連があった(Schnelldorferら、Cancer、89: 1440−1447(2000))。したがって、腫瘍GSHの選択的欠乏は、腫瘍の成長を阻害することができ、ガン予防において新たな有望な方策を提供する。
現在、アポトーシスの阻害が、発ガンプロセスにおいて役割を演じることが、一般的に容認されている。機能的研究が、抗アポトーシス性Bcl−2ファミリーのメンバー(Bcl−2、Bcl−XL、Mcl−1、A1)の発現の増加またはアポトーシス促進性のBcl−2ファミリーのメンバー(Bad、Bax、Bid、Bik、Bak、Bcl−XS)の発現の減少が、ミトコンドリア経路を阻害することができることを決定している(Kaufmannら、BioEssays、22:1007−1017(2000)およびReed、J. Cell Biol.、124: 1−6(1994))。GSHおよびBcl−2のレベルの間の正の相関関係が示唆されている(Voehringer、Free Radic. Biol. Med.、27: 945−950(1999) and Hall、Eur J of Clin. Investig.、29:238−245(1999))。たとえば、ミトコンドリアの外膜におけるBcl−2の過剰発現が、多くのアポトーシス性トリガーに曝された細胞における活性酸素種の形成を阻害することが実証されている(Hockenberyら、Cell、75: 241−251(1993))。DMBAは、多感式芳香族炭化水素であり、酸化を介して生物体において代謝され、DNA付加体を形成するジオール−エポキシドを生成する(Dippleら、Chem.− Biol. Interactions、20: 17−26(1978)およびWei、Med. Hypth.、39:267(1992))。成熟期ラットへのDMBAの単回投与は、DMBA適用後約11週間で100%の動物に管起源の乳ガンを誘発する(Hugginsら、Nature、189: 204−207(1961))。しかし、我々は、これまでに、ラットにおけるDMBA誘発性乳ガンが、GSH生成の有意な阻害に関連があり、GSH欠乏を引き起こすことを明らかにしている(Caoら、J. Surg. Res.、100:135−140(2001)。しかし、GLN補給は、腫瘍の成長を有意に減少させ、血液、乳房組織および胃粘膜におけるGSHレベルの低下を復活させた(Klimbergら、Am. J. Surg.、172:418−424(1996))。これらの結果に基づいて、我々は、GLNがガン細胞においてGSH欠乏によりアポトーシスを刺激するということを仮定した。したがって、腫瘍細胞におけるGSHレベルおよびカスパーゼ−3の活性におけるGLNの効果ならびに腫瘍におけるカスパーゼ−3Bcl−2、Baxおよびp21の遺伝子発現をここに実験した。
【0103】
材料および方法:
実験動物および処置
50日齢以下、体重約150 gのtime−dated成熟期雌性スプラーグ−ドーリーラット(Harlan Sprague−Dawley、Indianapolis、IN)を用いた。すべての実験は、Central Arkansas Veterans Healthcare Systemにおける動物実験委員会によって認可された。ラットは、動物飼育施設内の標準ケージにて飼育し、12時間の明暗サイクルに付した。実験期間中、ラットは、固形飼料(TD 96163)の所定の食餌で同時飼育され、水を自由に与えられた。50日齢にて、ラットを無作為に2つの実験グループに分け、ビヒクルとしてゴマ油中の100 mg/kgのDMBAを単回投与した。全実験継続期間中、すべての実験動物に、GLN(1 g/kg/日)懸濁液製剤(AES−14)(n=16)または水(n=16)のいずれかを1日1回胃管補給した。腫瘍の発生について毎週動物を検査し、体重を記録した。DMBA適用後11週で動物を屠殺し、腫瘍の数、体積および重量を記録した。標準的公式:幅2×長さ×0.52(Ingberら、Phys. Rev.、42 :7057(1990))を用いて腫瘍の体積を計算し、立方センチメートルで表した。各実験グループからの10個の腫瘍を本実施例に用いた。組織サンプルを集め、ドライアイスで急速冷凍し、使用するまで−80度で保存した。
【0104】
GSH測定
Tietzeにより記載され(Ann. Biochem.、27:502−522(1969))、Andersonにより変更された (In: Glutathione、vol. 1、Dophin D(ed). New York: John Wiley & Sons、pg. 340−365)標準的酵素リサイクリング法により腫瘍中のGSHおよびGSSG含量を測定した。簡単に述べると、0.5 gの組織を2.5のml 5% 5−スルホサリチル酸でホモジナイズし、タンパク質含量を測定し、50度にて15分間、5000×gでサンプルを遠心分離した。10μlの上清を1 mlの反応混合物(0.2 mMの還元ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート、0.6 mMの5,5−ジチオ−ビス−2−ニトロ安息香酸および1.33単位のGSHレダクターゼ)に加え、412 nmでの吸光度を測定した。GSHジスルフィド(GSSG)含量を決定するために、0.5 mlの上清を10 μlの2−ビニルピリジンおよび60 μlのトリエタノールアミンと混合して、Griffithの方法(Anal. Biochem.、106:207−212)によりGSHを除去し、次いで上記手順にしたがって測定した。タンパク質のmgによりデータを標準化し、nM/タンパク質mgとして表した。
【0105】
カスパーゼ−3アッセイ
カスパーゼ−3比色アッセイ(R&D System、Minneapolis、MN)によって、腫瘍の組織におけるカスパーゼ−3の酵素活性を測定した。簡単に述べると、100 μgの組織抽出物を50 μlの反応緩衝液および5 μlのカスパーゼ−3基質DEVDと混合し、発色団p−ニトロアニリン(pNA)と複合させ、37度にて1時間インキュベートした。405 nmにて分光高度計により、p−ニトロアニリドの放出による色反応の強度を測定した。計算前に各サンプル読み取り値からブランク値を減じた。データは、405 nmにおける吸光度(OD)として表す。
【0106】
RNA抽出および相対的RT−PCRによる遺伝子産物の検出
RNeasyミニキット(Qiagen、Chatsworth、CA)により全RNAを単離した。Ready−To−Go You−Prime First−Strandビーズ(Amersham Pharmacia Biotech Inc、Piscataway、NJ)およびオリゴ(dT)(Promega、Madison、WI)を用いてRNA(1 μg)を逆転写した。以下のプライマーを用いる続いてのPCR増幅のためのテンプレートとして第1鎖cDNA(3 μl)を用いた:カスパーゼ−3、フォワード、5’ CGATGCAGCTAACCTCAGAGA(配列番号:1)、リバース、5’ CCTTCCGGTTAACACGAGTGA(配列番号:2); p21、フォワードd: 5’ GATCCTGGTGATGTCCGACCT(配列番号:3)、リバース: 5’ GGAACTTTGACTTCGCCACTGA(配列番号:4)。ラットBax Dual−PCRキットおよびラットBcl−2 Dual−PCRキット(Maxim Biotech、Inc、San Fransisco、CA)を用いて、Bax−およびBcl−2を検査した。Qiagen(Chatsworth、CA)から購入したTaq PCRマスターミックスおよびカスパーゼ−3およびp21増幅用の各プライマー0.20 pmolを用い、総量25 μlで、あるいはBaxおよびBcl−2のための使用説明書にしたがって、PCRを行った。Perkin−Elmer 2400サーマルサイクラーを用い、94度(60秒)および適当なアニーリング温度(90秒)、次いで、72度にて10分間を35サイクル行った。内部コントロールとして18Sリボソーム単位を同時増幅することによって、各転写物の量を定量した(Ambion、Austin、TX)。増幅したcDNAを、100 ng/mlの臭化エチジウムを含む1.5%アガロースゲルでの電気泳動に付した。電気泳動の完了時に、ゲルを調べ、紫外線下で写真を撮影した。同じチューブで同じサンプルから増幅された18S rRNAのレベルと比較して、各転写物の量を計算した。
【0107】
デンシトメトリー
IBM用Scionイメージプログラム(Scion Corporation)を用いて、RT−PCRから得られたバンドの領域および密度を測定した。各標的遺伝子および18S rRNAのシグナルの比率を個々に計算した。結果は、相対的な任意の単位で表し、統計的に分析する。
【0108】
統計的分析
Windows、バージョン4.5用の統計ソフトウェアStatViewを用いるANOVAの一元分析により、グループ間の比較を行った。すべてのデータは、平均±標準誤差(SE)で表した。結果(P<0.05)は、統計的に有意であるとみなされた。
【0109】
結果:
DMBAの発ガン性
実験開始時または屠殺時において両方のグループからの動物の平均体重に有意な差はなかった。すべてのラットは、11週間の実験期間中に重量を獲得した。実験終了時にGLN補給グループのラットの50%が腫瘍を生じなかった。このグループの大部分の動物が1個の腫瘍を生じ、2匹のラットが3個の腫瘍をそれぞれ生じた。GLNの代わりに水を与えられたグループにおいて、100%のラットが乳ガンになり、6匹の動物が3および4個の腫瘍をそれぞれ生じた。水を与えたグループにおける腫瘍の総数が26個であるのに対して、GLNを与えた実験グループでは12個であった。水処置グループにおける腫瘍の重量が0.07〜19.7 gの間を変動し、平均腫瘍重量が3.9 gであったのに対して、GLN処置グループでは、0.6〜6 gの間を変動し、平均腫瘍重量は3.8 gであった。
【0110】
GLNの補給は、腫瘍GSHレベルを減少させる
還元グルタチオンレベルの減少は22%であった(平均値±SE、18.00±3.713対22.980±3.535)、P<0.05(P=0.4)(図18のパネルA)。腫瘍中の酸化グルタチオンレベルにおける40%以上の減少が、GLN補給の結果として実証された(ng/タンパク質μg±SEにおけるGSSG濃度の平均値は、水処置グループでは0.703±0.131であるのに対して、GLN処置グループでは1.188±0.171である、P<0.05)(図18のパネルB)。
【0111】
カスパーゼ−3酵素活性におけるGLN補給の効果
GLN処置動物から、カスパーゼ−3酵素活性が、腫瘍組織において有意に上昇することが見出された(405 nmでの光学密度単位において、平均値±SE、0.283±0.183対0.140±0.035、P<0.05)(図19)。
【0112】
GLNはBcl−2をダウンレギュレートし、Bax、カスパーゼ−3およびp21をアップレギュレートした
相対的RT−PCRの平均によって得られた遺伝子発現分析および定量的デンシトメトリー分析からの結果を図20に示す。GLN補給の結果として、GLNを与えられた動物から集められた腫瘍においては、水を胃管補給された動物と比較して、Bcl−2の34%阻害が得られた(平均値±SE、任意の単位において、1265±88対1893±130、P<0.05)。同時に、GLN強化食餌は、Baxの発現において27%の増加(平均値±SE、任意の単位において、1371±79対1150±41、P<0.05);カスパーゼ−3の発現において23%の増加(平均値±SE、任意の単位において、2579±213対1989±141、P<0.05);およびp21の発現において23%の増加(平均値±SE、任意の単位において、2851±177対2167±161、P<0.05)をもたらした。
【0113】
考察
本実施例の主な焦点は、腫瘍細胞中のGSHレベルおよびアポトーシスの活性化におけるGLNの効果であった。結果は、GLN補給が、GSHの20%の減少およびGSSGの41%の減少をもたらすことを実証する。最も重要な点は、腫瘍GSHにおける減少が、カスパーゼ−3の酵素活性におけるほぼ50%の増加に相関したことである。カスパーゼ−3活性の増加は、相対的RT−PCR分析によって示されるように、カスパーゼ−3およびBax遺伝子発現のアップレギュレーションに関連があった。GLNは、主な抗アポトーシス性タンパク質Bcl−2をガン細胞において34%までダウンレギュレートした。さらに、細胞増殖をコントロールすることが知られている、サイクリン依存性キナーゼのインヒビターであるp21のアップレギュレーションを実証した。
【0114】
アポトーシスの促進におけるGSH欠乏の重要性が、いくつかのインビトロモデルにおいて実証されている(Bojesら、Biochem J.、325:315−319(1997)、Hoら、Mol. Carcinog.、19: 101−113(1997)およびRothら、Nutrition、18: 217−221(2002))。GSHレベルの変化が、Bcl−2ファミリーのタンパク質の発現を調節することによってアポトーシスに影響を及ぼすことが見出されている(Bojesら、Biochem J.、325:315−319(1997)およびVoehringer、Free Radic. Biol. Med.、27:945−950(1999))。GSH欠乏が必要であり、アポトーシス性ミトコンドリアシグナル経路において重要なイベントであるチトクロームcの放出を誘発するのに十分であることも示唆されている。アポトーシスに関連があるミトコンドリアの変化は、チャネルの開口および細胞質ゾルへのチトクロームcの放出を含み、細胞質ゾルからミトコンドリアへのBcl−2ファミリーのアポトーシス促進性のメンバーのいくつかの転移を引き起こし、アポトーシスの活性化をもたらすと考えられる(Coppolaら、Biochem. Soc. Trans.、28:56−61(2000))。Obradorら(Free Radic. Biol. Med.、3:642−650(2001)は、GLN強化食餌が、腫瘍ミトコンドリア内での酸化還元状態におけるグルタチオンの変化を介してアポトーシス性細胞死を活性化することを報告した。GLNは、正常細胞においてはGSH合成を増進し、腫瘍細胞においては増進しないが、これまでは、GSHの合成にとって速度制限基質であるとは考えられていない。本実施例では、GLN(GLN後に18 ng/タンパク質mg after対GLNなしで23 ng/タンパク質mg)を与えられたラットから収集した腫瘍組織サンプルにおけるGSHおよびGSSGレベルの減少が見出された。GSSGのレベルにおけるGLNの効果は、よりめざましかった(腫瘍細胞における40%減少よりも)。しかし、実験モデルにおけるカスパーゼ−3活性の増加と相関するGSSGの強い還元は、GSSGレベルの増加がアポトーシスを刺激する(Celliら、Am. J. Physiol.、275:G749−G757(1998))という示唆とは一致しない。
【0115】
多くの研究が、GLN補給が外科手術、創傷治癒、外傷、エイズならびに化学療法、放射線処置および骨髄移植に関連する合併症の予防において利点があることを明らかにしている(Labowら、World Journal of Surgery、24: 1503−1513.(2000)およびKarinchら、Journal of Nutrition、131: 2535S−2577S(2001))。いくつかの臨床試験(Piccirilloら、Hematologica、88:192−200(2003))が、種々の臨床的身体状態におけるGLNの重要性を指摘しているが、GLNのこのような有利な効果の背後にある分子メカニズムは依然として明らかではない。インビトロ研究は、いくつかのヒト乳房細胞系において、GLNの欠乏が、成長停止およびDNA損傷誘発可能遺伝子(GADD45およびGADD153)の発現の急速な上昇を引き起こすことを実証した(Abcouwerら、J. Biol. Chem.、274: 28645−28651(1999))。我々は、DMBA誘発性乳ガンにおいて、GLN補給が、正常組織の周囲の腫瘍におけるホスファチジルイノシトール−3キナーゼ(PI−3K)/Aktシグナル伝達経路のダウンレギュレーションをもたらすことを見出している(実施例7)。
【0116】
我々の乳ガンの実験モデルでは、成熟期ラットにDMBAを1回投与して、ヒト乳ガンのいくつかの局面を模倣し、腫瘍形成のプロセスを研究するための適切なモデルである管起源の乳ガンを誘発する。経口GLN補給は、腫瘍の発生を有意に阻害し、減少したGSHレベルを逆転させた。本実施例の結果は、GLN補給が、おそらくGSHの結合を介して、癌細胞のアポトーシスを有意に増加したことを示す。p21の遺伝子発現の増加は、細胞周期調節タンパク質の関与も示唆する。この結果は、GSHと細胞周チェックポイントのコントロールとの間で確立された関係と一致する(Gansaugeら、Cell Growth Differ.、9: 611−617(1998))。
全体として、本実施例の結果は、GLN補給が、おそらくGSHの還元およびBcl−2ファミリータンパク質のアポトーシス促進性および抗アポトーシス性メンバーならびに細胞周期調節タンパク質p21の遺伝子発現の調節を介して、インビボで癌細胞におけるアポトーシスを刺激することを示唆する。GLNの臨床的適用についての情報を獲得する手段として、これらの結果は、ガンにおけるGLNの作用の正確な分子的メカニズムを解明するためのさらなる研究のための基盤を提供する。
【0117】
結論:
本実施例は、GLN補給が、腫瘍におけるGSHレベルを有意に減少させることを確証した。細胞内GSHレベルとBcl−2媒介性アポトーシスとの間に強い相関関係があると考えられているので、雌性スプラーグ−ドーリーラットのDMBA誘発性乳ガンにおけるアポトーシス性経路の関与に関するGSHのGLN誘発性調節の効果を調べた。DMBA適用の11週後、全実験期間中をとおしてGLNを与えられた動物の50%が腫瘍を生じなかった。GLNを与えられた動物からの腫瘍細胞中のGSHレベルにおける有意な減少およびカスパーゼ−3活性の増加。さらに、本実施例は、GLN補給が、カスパーゼ−3、baxおよびp21遺伝子発現のアップレギュレーションおよびBcl−2発現ののダウンレギュレーションをもたらすことを確証した。全体的に、これらの結果は、GLN補給が、異化ストレス下の生物体におけるGSH合成の重大なレギュレーターであり、アポトーシスの刺激を介して乳腺におけるDMBA誘発性発ガンを阻害することを示唆する。
【実施例7】
【0118】
経口グルタミン補給は、実験的乳ガンにおいてPI−3K/Aktシグナル伝達を阻害する
序論
成熟期ラットへの7,12−ジメチルベンズ[a]アントラセン(DMBA)の投与は、乳房腫瘍を引き起こし、グルタチオン(GSH)の生成を阻害する。経口グルタミン(GLN)補給が、腫瘍の発生を有意に阻害することがわかっている本実施例は、IGF-1活性化ホスファチジルイノシトール−3キナーゼ(PI−3K)/Aktアポトーシス性シグナル伝達経路の関与を調査するために設計された。
本実施例の背後にある仮説は、乳腺組織におけるIGF-1のダウンレギュレーションがアポトーシス性細胞シグナル伝達に影響を及ぼすということであった。本実施例は、食餌によるGLN補給が、標的組織におけるPI−3K/Aktシグナル伝達カスケードのメンバーのタンパク質発現を有意に変更し、アポトーシスのプロセスを促進することを立証する。
【0119】
材料および方法
実験動物および処置
全部で40匹の50日齢以下、体重約150 gのtime−dated成熟期雌性スプラーグ−ドーリーラット(Harlan Sprague−Dawley、Indianapolis、IN)を用いた。すべての実験は、Central Arkansas Veterans Healthcare Systemにおける動物実験委員会によって認可された。ラットは、動物飼育施設内の標準ケージにて飼育し、12時間の明暗サイクルに付した。実験期間中、ラットは、固形飼料(TD 96163)の所定の食餌で同時飼育され、水を自由に与えられた。50日齢にて、ラットを無作為に以下の4つの実験グループ(n=16):DMBA+GLN、DMBA+水、油+GLNおよび油+水に分け、、ビヒクルとしてゴマ油中の100 mg/kgのDMBAまたはゴマ油単独を単回投与した。全実験継続期間中、すべての実験動物に、GLN(1 g/kg/日)懸濁液製剤(AES−14)または水のいずれかを1日1回胃管補給した。腫瘍の発生について毎週動物を検査し、体重を記録した。DMBA適用後11週で動物を屠殺し、腫瘍の数、体積および重量を記録した。腫瘍および乳房を集め、ドライアイスで急速冷凍した。組織サンプルは、使用するまで−80度で保存した。腫瘍のサンプルを10%緩衝ホルマリンで固定し、パラフィンに包埋し、へまトキシリンおよびエオシン染色を行い、形態学的変化を顕微鏡で調べた。
【0120】
タンパク質抽出
乳腺組織(−80度で冷凍)から、以下の溶解緩衝液中でホモジナイズすることによりタンパク質抽出物を調製した:10 mM Tris HCl、pH 7.6/5 mM EDTA/50 mM NaCl/30 mM Na4P2O7/50 mM NaF/200μM Na3VO4/1% Triton−X 100および1錠/緩衝液50 mlのプロテアーゼインヒビターカクテル錠剤(Roche Diagnostics GmbH、Mannheim、Germany)。ホモジネートを軌道振とう器中、4度にて一夜インキュベートし、4度にて30分間、14,000 rpmで遠心分離した。Bio−Radタンパク質アッセイ(Bio−Rad Laboratories、Hercules、CAを用いて、上清のタンパク質濃度を測定した。
【0121】
SDS−PAGEおよびイムノブロッティング
40μgの各サンプルのタンパク質を10%ポリアクリルアミドゲル上で分画し、ミニ・バーティカル・ゲル・システム(Thermo EC、Holbrook、NY)(Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、2nd edition、Cold Spring Harbor、The Laboratory Press、1987)を用いてPVDF膜に移した。移動後、タンパク質の等量ローディングをコントロールするために、0.2% Ponso Sで膜を染色した。TBS−T緩衝液(100 mM Tris、pH 7.5; 150 mM NaCl; 0.1% Tween 20)中の5%脱脂乳で室温にて1時間ブロッキングした後、膜を、5%乳または5% BSAで希釈した一次抗体中で4度にて一夜(または室温にて2時間)およびHRP−標識二次抗体中で室温にて1時間インキュベートした。抗βアクチン抗体で膜を再プロービングすることによって、等量タンパク質ローディングを検証した。ECL検出システム(Amersham Biosci.、Piscataway、NJ)を用いてタンパク質を視覚化した。使用説明書に推奨されているとおり、以下の一次抗体を用いた:抗IGF−1、抗Bcl−2 and 抗βアクチン(Santa Cruz Biotech.、Inc.、Santa Cruz、CA)、抗IGF−1R、抗Aktおよび抗Bad(Cell Signaling Technology、Beverly、MA)。二次抗体(HRP標識抗ウサギ、抗マウスおよび抗ヤギ)は、Santa Cruz Biotech、Inc.から購入した。
【0122】
デンシトメトリー
IBM用Scionイメージプログラム(Scion Corporation、Maryland、USA)を用いて、ウエスタン・ブロッティングで得られたバンドの領域および密度を測定した。結果は、集積密度単位(integrated density units)/1000で表し、統計的に分析した。
【0123】
統計的分析
データは、平均±標準誤差(SE)で表した。Windows、バージョン4.5用の統計ソフトウェアStatViewを用いるANOVAの一元分析により、グループ間の比較を行った。結果(P<0.05)は、統計的に有意であるとみなされた。
【0124】
結果
実験開始時または屠殺時において両方のグループからの動物の平均体重に有意な差はなかった。すべてのラットは、11週間の実験期間中に重量を獲得した。実験終了時にGLN補給グループのラットの50%が腫瘍を生じなかった。このグループの大部分の動物が1個の腫瘍を生じ、2匹のラットが3個の腫瘍をそれぞれ生じた。GLNの代わりに水を与えられたグループにおいて、100%のラットが乳ガンになり、6匹の動物が3および4個の腫瘍をそれぞれ生じた。水を与えたグループにおける腫瘍の総数が26個であるのに対して、GLNを与えた実験グループでは12個であった。水処置グループにおける腫瘍の重量が0.07〜19.7 gの間を変動し、平均腫瘍重量が3.9 gであったのに対して、GLN処置グループでは、0.6〜6 gの間を変動し、平均腫瘍重量は3.8 gであった。
乳ガンモデルにおいてこれまでに報告されているように(Russoら、Lab. Invest.、57: 112−137(1987)およびFukunishi、Acta Path. Jap.、18: 51−72(1968))、腫瘍の組織学的研究から、両方のグループにおけるすべての腫瘍が、悪性腺ガンであることが確証された。
非腫瘍および腫瘍乳房組織抽出物からのホモジネートのウエスタン・ブロット分析によって、IGF-1、その受容体IGF−1R、Akt、BadおよびBcl−2のタンパク質発現を測定した。DMBA+GLNグループ内での上記タンパク質の発現におけるGLN補給の効果をより正確に確証するために、腫瘍を有する動物(DMBA+GLN、腫瘍)および腫瘍を発生していない動物(DMBA+GLN、腫瘍無し)におけるそれらのレベルを比較した。
【0125】
IGF−1
結果は、DMBA+水グループと比較して、DMBA処置グループにおいて、GLN補給がインスリン様成長因子−1(IGF−1)の発現を有意にダウンレギュレートしたことを示した(図21)。DMBA+水グループと比較して、DMBA+GLN腫瘍グループの方が、8分の1以下の低レベルのIGF-1であることが見出された(平均±SE、集積密度単位において、238±82対1990±563、P=0.008)。DMBA+GLNグループでは、腫瘍を有さない動物においてIGF-1の発現がないことが見出された。相互作用に対するPは統計的に有意ではなかった(P=0.1)が、水を与えられたグループと比較して、GLNを投与されたコントロールグループにおけるIGF-1発現の低下も確証された(平均±SE、集積密度単位において、1078±368対2836±1044)。腫瘍組織において、IGF-1発現は検出されなかった。
【0126】
IGF−1R
DMBA+水を与えられたグループにおける発現と比較して、DMBA+GLNグループでは、GLN補給は、乳房組織におけるIGF-1受容体(IGF−1R)タンパク質発現を2分の1に低下させた。DMBA+GLNで処置された腫瘍ラットおよび同じグループで腫瘍なしのラットからの乳房組織抽出物におけるIGF-1Rのタンパク質レベルには差はなかった(平均±SE、集積密度単位において、141±12対142±32)(図22)。DMBA+GLN処置グループ対DMBA+水グループ(平均±SE、296±67)の両方における発現の差は、統計的に有意であった(P<0.05)。GLNは、コントロールグループ対水胃管補給グループの乳房組織のIGF-1Rレベルにおいて統計的に有意な増加を引き起こした(平均±SE、集積密度単位において、674±150対368±34、P=0.006)。腫瘍組織(平均±SE、188±62)は、油+GLNおよび油+水グループと比較して、IGF-1Rレベルにおいて統計的に有意な減少を示した(腫瘍対油+GLN、P=0.03; 腫瘍対油+水、P=0.02)。DMBA+GLNおよびDMBA+水グループの腫瘍および非腫瘍組織におけるIGF-1Rレベルの差は、統計的に有意ではなかった。
【0127】
Akt
DMBA+GLNグループでは、Aktのタンパク質発現もまた有意に影響を受けた(図23)。DMBA+水グループにおける発現と比較して、DMBA+GLN腫瘍なしグループでは、GLN補給は、Aktの発現(Aktタンパク質レベル)をほとんど8分の1に減少させ(平均±SE、1649±425対191±17、P<0.05)、DMBA+GLN腫瘍グループでは、7分の1以下に減少させた(平均±SE、258±46)。GLN補給コントロールグループ対水グループにおけるAktレベルの増加は、およそ2倍であることが見出された(平均±SE、集積密度単位において、2243±288対1253±291、P=0.03)。他のグループにおけるAkt発現と比較して、腫瘍組織のサンプルは、Aktレベルにおいて統計的に有意な減少を示した(平均±SE、集積密度単位において、229±46、P<0.05)。
【0128】
Bcl−2
Bcl−2タンパク質発現は、DMBA+GLN腫瘍なしグループにおいて、DMBA+水グループのおよそ20分の1に低下した(平均±SE、集積密度単位において、63±7.3対1253±214、P=0.03)(図24)。Bcl−2は、DMBA+水に対して、DMBA+GLN腫瘍ありグループでは8分の1に低下した(平均±SE、184.07±50)。コントロールグループにおいて、Bcl−2レベルは、水単独投与グループよりもGLN投与動物において高かったが、これは統計的に有意ではなかった(平均±SE、集積密度単位において、757±147対429±102、P=0.09)。腫瘍は、DMBA+水グループおよびコントロールグループの乳房組織よりも、より低いBcl−2レベルを示したが、DMBA+GLNグループの動物の乳房組織よりも、より高いレベルを示した(平均±SE、集積密度単位において、331±86.8)。
【0129】
Bad
GLN補給は、DMBA+水グループに対して、DMBA+GLN腫瘍なしグループにおいて、Badタンパク質発現のアップレギュレーションをもたらした(平均±SE、863±122対565±114、P=0.01)(図25)。DMBA+GLN腫瘍なし動物におけるBadのレベルは、DMBA+GLN腫瘍あり動物のレベルと比較しても、より高かった(平均±SE、376±116)(P<0.05)。コントロールグループでは、Bad発現において統計的に有意な差はなかった(平均±SE、266±57の油+GLN、308±55の油+水)。腫瘍組織(平均±SE、集積密度単位において、221±33)は、Bad発現において、コントロールグループと比較して有意な変化は示さなかった。
【0130】
考察
Hugginsモデルとして知られる乳ガンの実験モデルにおいて、成熟期ラットへのDMBAの1回投与は、DMBA適用の約11週後に100%の動物において腺由来の乳ガンを誘発する(Russoら、Lab. Invest.、57: 112−137(1987))。DMBA(多環式芳香族炭化水素)は、DNAに結合して点突然変異を創成するジオールエポキシドを生成する酸化を介して代謝される(Fukunishi、Acta Path. Jap.、18: 51−72(1968))。実施例3の結果は、経口GLN補給が、DMBA誘発性腫瘍の発生を有意に減少させ、腫瘍成長に起因する胃グルタチオン(GSH)合成の抑制を刺激することを示した。GLNは、循環中に低下したNK細胞活性ならびに低下したIGF-1およびTGF−βのレベルのアップレギュレーションにも関連する(Farrら、JPEN、18(6): 471−476(1994)、Fengら、Surg. Forum、XLVII: 524−526(1996)、and Caoら、J Surg. Res.、100: 135−140(2001))。食餌療法GLNのこれらの効果の根拠をなすメカニズムはわかっていないが、アポトーシス性シグナル伝達系の関与が示唆される。本実施例の結果は、食餌療法GLNが、乳腺組織において、IGF-1、その受容体IGF-1Rのタンパク質発現およびAktアポトーシス性シグナル伝達経路を有意にダウンレギュレートしたことを示す。GLNの最も印象的な効果は、DMBA処置グループで腫瘍を有する動物と比較して、DMBA処置の結果として腫瘍を発生していない動物におけるアポトーシス促進性タンパク質Badの強いアップレギュレーションであった。Badの上昇した組織レベルは、腫瘍発生の阻害をもたらすDMBA誘発性腫瘍形成に対する対抗効果としてのアポトーシスの刺激を示す。
腫瘍成長におけるGLNの阻害効果が、グルタチオン(GSH)生成の刺激によって生じることが仮定されている(Farrら、JPEN、18(6): 471−476(1994))。GSHは、細胞において最も豊富な抗酸化剤であり、発ガン性の生体異物の無害化において重大な役割を演じ、その結果としてDNAアダクト形成を予防する(Karinchら、Journal of Nutrition、131: 2535S−2577S(2001))。細胞において、グルタチオンは、通常、その還元(チオール)型(GSH)および少量(<10%)のグルタチオンジスルフィド(GSSG)で存在する(Abcouwerら、J. of Biol. Chem.、274: 28645−28651(1999))。その保護的作用は、GSSGが形成される、そのシステイン残基のチオール基の酸化に基づく;これは、グルタチオンレダクターゼによって、順次、触媒的にGSHに還元される。GSHの結合は、アポトーシス性ミトコンドリアシグナル伝達経路において重要なイベントであるチトクロームc放出の誘発において必要かつ十分である。アポトーシスに関連があるミトコンドリアの変化は、チャネルの開口および細胞質ゾルへのチトクロームcの放出を含み、細胞質ゾルからミトコンドリアへのBcl−2ファミリーのアポトーシス促進性のメンバーのいくつかの転移を引き起こし、アポトーシスの活性化をもたらすと考えられる(Larssonら、8 edn. New York: Mc Gray Hill、2001)。
本実験は、GLN補給がアポトーシス関連タンパク質Bcl−2およびBaxタンパク質を調節することを確証した。
【0131】
結論
GLN補給は、非腫瘍サンプル中のIGF-1、IGF−1R、AktおよびBcl−2のレベルにおいて有意な減少をもたらす。同時に、アポトーシス促進性タンパク質Badのレベルは有意に上昇された。腫瘍組織から収集されたサンプルは、非腫瘍組織と比較して、IGF−1、Akt、Bcl−2、BadおよびIGF−1Rのレベルの低下を示した。GLN補給は、腫瘍形成中の細胞の生存を増加させることにおいて重要であると考えられるPI−3K/Akt経路を阻害した。これらの結果は、GLNがDMBAの影響に対抗し、インビボでの発ガンをブロックするという我々の仮説と一致する。
【実施例8】
【0132】
グルタチオン輸送におけるDMBAの影響
序論:
ジメチルベンズ[a]アントラセン(DMBA)の経口摂取は、実験用ラットにおいて乳ガンを引き起こし、胃グルタチオン(GSH)生成の抑制および門脈グルタチオンレベルにおけるめざましい減少に関連する。したがって、われわれは、DMBAが、空腸側底膜を通過するGSH輸送において阻害を引き起こし、したがってGSHの流出を減少させると仮定した。この仮説を証明するために、空腸側底膜小胞を通るGSH輸送を調べた。
【0133】
方法:
100 mg/kg DMBA(n=15)またはコントロールとしてゴマ油(n=15)の1回投与で処置したスプラーグ−ドーリーラットにおいて、空腸側底膜小胞(BLMV)におけるGSHの輸送を調べた。動物は、固形飼料で同時飼育され、水を自由に与えられた。DMBA投与の1週後にすべてのラットを屠殺する。Percoll Colloidal PVP被覆シリカ分画遠心技術を用いて空腸側底膜小胞(BLMV)を調製した。すべてのステップは、2〜4度にて行った。ポリトロン・ホモジナイザー(Brinkman、Rexdale、ON)を用い、2から6、次いで、6〜2のセッティングで55秒にわたって、2 mM HepesでpH 7.40に調節した180 mMスクロース/2 mM Trisを含む単離緩衝液中で空腸粘膜剥離物をホモジナイズした。ホモジネートを1000gで10分間遠心分離した。4層のガーゼで上清を濾過し、再度採取した。次いで、側底膜物質を含む上清を22,000gで15分間遠心分離した。ペレットのゆるく固まった上部を注意深く洗い流し、吸引し、12 mlの単離緩衝液に懸濁した。1.4 mlのパーコールを加え、20分間軽く攪拌した。この懸濁液を42,000gで35分間遠心分離した。2つのバンドが形成された。側底膜を含む勾配の頂部2.4 mlを再度採取し、2 mM HepesでpH 7.40に調節した60 mM KCL/60 mMスクロース/2 mM Trisを含む洗浄緩衝液で希釈した。再度、この懸濁液を60,000gで90分間遠心分離した。パーコールペレットの頂部から膜画分を洗浄緩衝液で注意深く洗い流した。さらなる調査のために、この最終懸濁液をでタンパク質濃度12〜15μg/μlに滴定した。タンパク質濃度は、Bio−Radタンパク質アッセイ(Bio−Rad Laboratories、Hercules、CA)によって測定した。
【0134】
急速混合/濾過技術によって[3H]グルタチオンの取り込みを測定した。40μlの放射活性取り込み緩衝液を12x75 mmホウケイ酸ガラス培養管(Fisher scientific)の底に入れた。結合反応を開始するために、20μlの膜小胞を加え、タイマー(Gralab Instruments、Centerville、Ohio)でコントロールして8秒間急速に振動させた。8秒の終了時に、150 mM NaCl/10 mM Hepes/10 mM Trisを含む1 mlの停止緩衝液を加えた。すべての溶液を吸引により取り出し、取り込み/真空装置中のフィルター上に放出した。さらなる9 mlの冷停止緩衝液で濾過膜を洗浄した。側底膜小胞を抽出している濾過膜を取り外し、シンチレーションバイアルに置いた。バイアルに3 mlのアクアゾル(Packard BioScience、Meriden、CT)をバイアルに加え、濾過膜が溶解するまでバイアルを16時間室温に保った。液体シンチレーションシステムLS1801(Beckman coulter、Fullerton、CA)ですべてのバイアルを計数した。
【0135】
結果:
結果は、DMBAが空腸側底膜小胞におけるGSH取り込みの阻害を引き起こすことを示し、システムASC/B0として定義されたNa+依存性アミノ酸輸送システム(Bode、BP(2001) J. Nutrition 131: 2539S−2542S)が、DMBA投与によって阻害されることが実証された。DMBAグループにおけるBLMVによる総GSH取り込みの比率(図26)は、コントロールグループと比較して、42%まで減少した。門脈血GSH濃度(図27)は、34%まで減少し、胃粘膜GSH(図28)は、2倍に増加した。
【0136】
結論:
DMBAを胃管補給されたラットにおいて、GSH輸送および門脈GSH濃度の両方は、有意に減少した(p<0.05、独立t−検定)。DMBAが胃GSH放出を減少させ、発ガンを誘発するメカニズムの一つは、GSH輸送システムの阻害によるGSH流出の有意な低下を通るものと考えられる。胃GSH流出および門脈GSHレベルの低下は、発ガンをもたらす肝臓におけるDNAアダクトの発生を増加させる。GLNは、おそらくこの輸送メカニズムを介して、GSH流出の低下を克服することが明らかにされている。
【実施例9】
【0137】
γ−グルタミルサイクルにおけるグルタミン(AES−14)の効果
7,12−ジメチルベンズ[a]アントラセン(DMBA)誘発乳ガンモデルにおいて、経口グルタミン(GLN)(AES−14)が、腫瘍発生を減少させることが見出された。このことは、正常宿主組織におけるグルタチオン(GSH)レベルの有意な増加および腫瘍におけるGSHレベルの減少に関連があった。GSH合成を含むγ−グルタミルサイクルにおいて、2つの重要な酵素がある:アミノ酸を輸送してGSH合成のための基質を提供するγ−グルタミルトランスペプチダーゼ(GT)およびGSH合成における速度制限酵素であるγ−グルタミルシステインシンセターゼ(GCS)である。我々は、宿主GSHを復活させ、腫瘍GSHを枯渇させるために、経口GLNがこれらの酵素に影響を及ぼすと仮定した。
【0138】
方法:
雌性スプラーグ−ドーリーラットを無作為に6つのグループに分けた:DMBA+GLN、DMBA+FA、DMBA+H2O、油+GLN、油+FA、油+H2O。50日齢にて、ラットに、100 mg/kg DMBAまたはゴマ油を1回投与にて与え、次いで、無作為に胃管補給にて、DMBAの投与の1週間前から屠殺まで、GLN(AES−14)(1 gm/kg/日)またはイソ窒素量のフレアミン(FA)または水(H2O)を与えた。空腸粘膜および腫瘍組織を集め、GTおよびGCS活性についてアッセイした。GT活性は、WahlefeldおよびBergmeyerの方法(Wahlefeld AW、Bergmeyer HU: Routine method. In Bergmeyer HU、Bergmeyer J、Graβ1 M eds. Methods of enzymatic analysis、3rd edition、vol III、Verlag Chemie、Weinheim、Deerfield beach、Florida. 1983、p. 352)を用いて決定した。簡単に述べると、PowderGen 125ホモジナイザーを用いて、0.1 gの組織を5倍容のホモジナイズ緩衝液(100mM Tris/HCl、150mM塩化ナトリウム、0.1% v/v トリトンX−100、PH=8)中でホモジナイズした。ホモジネートを酵素基質の混合物(2.9mM L−γ−グルタミル−3−カルボキシ−4−ニトロアニリド; pH 7−7.5および100 mM Tris/グリシルグリシン、pH 8.25)に加えた。405nmにおける吸光度の増加を3分間継続的にモニターした。BioRadタンパク質アッセイによってタンパク質濃度を決定した。下記公式を用いてGT活性を計算した。
【数2】
ここで:
率=405 nmにおける1分当たりの吸光度の変化(ラムダABS/分)
TV=総反応混合物体積(ml)
SV=サンプル体積(ml)
LP=光路(この場合、10mm)
PC=タンパク質濃度(mgタンパク質/l)
ε=405 nmにおけるcanaのミリモル吸光率(この場合、0.951ラムダABS/mmol/l/mm)
1000=ミリモル単位をマイクロモル単位に変換する
アッセイ手順の条件下で1分当たり1マイクロモルの3−カルボキシ−4−ニトロアニリン(cana)の形成を触媒する酵素の量として、GT活性の1単位を定義した。
【0139】
GCS活性は、SekuraおよびMeister(Sekura、R.ら(1977) J. Biol. Chem. 252:2599)ならびにTausskyおよびShorr(Taussky、H.H.ら(1953) J. Biol. Chem. 202:675))の方法を用いて測定した。組織(0.1 g)を比率1:5(w/v)のホモジナイズ溶液(150 mM 塩化カリウム、5 mM 2−メルカプトエタノールおよび1 mM 塩化マグネシウム)中でホモジナイズした。10 mM L−グルタミン酸ナトリウム、10 mM L−α−アミノブチレート、20 mM 塩化マグネシウム、5 mM ATPナトリウム、2 mM EDTAナトリウム、100 mM pH 8.2 Tris/HCl緩衝液および10μg ウシ血清アルブミンを含む0.5 mlの反応混合物に10 μlのホモジネートを加え、振とう水浴中で37度にて30分間インキュベートした。0.5mlの10% トリクロロ酢酸を加えて反応を停止した。1500 RPM、40度にて10分間混合物を遠心分離し、100 μlの上清を0.5mlの12.6% トリクロロ酢酸および0.4mlのFe−試薬(10% モリブデン酸アンモニウム、5% 硫酸第一鉄/10N 硫酸)に加え、720nmにて光学密度を測定した。標準曲線を用いて、無機リン酸塩の濃度を決定した。BioRadタンパク質アッセイによって、各サンプルのタンパク質濃度を測定した。下記公式を用いてγ−GCS酵素活性を計算した。
【数3】
ここで:
ABSRXN=720nmにおける反応後のサンプルの吸光度
ABSBL=720nmにおけるコントロールの吸光度
スロープ=標準曲線のスロープ
PC=サンプルホモジネートのタンパク質濃度
タンパク質マイクログラム当たりの形成された無機リン酸塩マイクログラムとして、GCS酵素活性を表した。
【0140】
結果:
経口GLNにより、宿主組織GTおよびGCS活性は有意に増進されたが、腫瘍組織GTおよびGCS活性は阻害された(図29および図30)。
結論:
経口GLNは、GTおよびGCSの酵素活性のアップレギュレーションを介して宿主におけるGSH合成を刺激した。同時に、GLNは、これらの重要な酵素の酵素活性を低下させることを介して腫瘍GSH合成における減少をを引き起こす。腫瘍GSHの減少は、ガン細胞を放射線照射および化学療法に対して影響を受けやすくするが、宿主GSHの増加は、患者を正常組織損傷に対してより影響を受けにくくする。この格差効果は、治療濃度域の拡張および宿主生存可能性の増大をもたらす。
【実施例10】
【0141】
ナチュラルキラー細胞の細胞障害性におけるグルタミン補給の経時効果
我々は、グルタミンが、これまでに報告されたナチュラルキラー(NK)細胞の細胞障害性のDMBA誘発性抑制を逆行させることにより、DMBA誘発性ガンを予防するように作用することができると仮定した。
方法:
ラットは、実施例5のとおり処置した。NK細胞の細胞障害性を以下の通り測定した:滅菌した外科手術用メスを用いて、無菌的に切除した脾臓を細かく切り刻み、暖かいRPMI 1640(Gibco BRL、Life Technologies Inc.、Grand Island、NY)で脾臓カプセル(splenic capsule)からリンパ球を剥いた。得られる細胞を50 mlの円錐管に入れ、塩化アンモニウム(0.83%)(Sigma Chemical Co.、St. Louis、MO)を満たして赤血球を溶解した。次いで、細胞溶液を1000 rpmで10分間遠心分離した。上清を傾冩し、細胞ペレットをRPMI(GLNなし)とともに渦巻き攪拌し、再度遠心分離した。次いで、10%ウシ胎児血清(FBS)(Gibco BRL、Life Technologies Inc.、Grand Island、NY)を含む1% GLNを補足したRPMI約10mlに細胞を再懸濁した。この細胞懸濁液をペトリ皿に置き、6% CO2中、37度にて30分間インキュベートした。単球の付着を確実にするためにインキュベーションを行った後、付着しないリンパ球を計数した(1:1、クリスタルバイオレット染色)。各脾臓からの総数約7 x 106個の細胞を、10% FBSおよび組換えヒトIL−2(500 U/ml)を含むPRMI中で3日間インキュベートした。この細胞懸濁液を用いて、NK細胞感受性マウス腫瘍細胞系YAC−1を用いる4時間の51−クロム放出アッセイにより、NK細胞の細胞障害性を決定した。NK細胞障害性は、溶解単位(LU)で表す。LUは、20%の標的細胞溶解を媒介する106個当たりのエフェクター細胞の数として定義される。NK活性の計算は、以下の等式で表される:
【数4】
【0142】
結果:
NK細胞活性は、DMBAグループにおいて、第1週および第11週においてのみ、より低かった(図31)。第2週において、非DMBAコントロールと比較して、DMBAグループにNK細胞の細胞障害性の有意な予期せぬ上昇があった。経口GLNは、遅いが早期ではないNK細胞活性の抑制を完全に逆行させた。しかし、経口GLNは、第1週においても、NK細胞活性のDMBA誘発性抑制を部分的に逆行させた。
【0143】
本発明は、種々の特定および好ましい具体例および技術を参照して記載される。しかし、本発明の範囲内で多くの変形および変更をなしうることを理解すべきである。
すべての参考文献、特許および特許文献は、個々に援用されるごとく、全体を参考文献として本発明に援用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む組成物を投与することを含む、ガンに苦しむ哺乳動物患者における転移の予防方法。
【請求項2】
組成物が、患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ガンから回復したか、または抗ガン療法を受けている哺乳動物患者に治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む組成物を経口投与することを含む、ガンの再発の予防方法。
【請求項4】
組成物が、患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物を含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
患者に治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物を含む組成物を経口投与すること含む、ガンの発生の危険がある哺乳動物患者におけるガンの発症の阻害方法。
【請求項6】
ガンに苦しみ、化学療法を処置された哺乳動物患者に、化学療法からの損傷に対して皮膚組織を保護する治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む組成物を投与することを含む、化学療法からの損傷に対する皮膚組織の保護方法。
【請求項7】
組成物が、患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物を含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ガンに苦しみ、化学療法を処置された哺乳動物患者に、化学療法からの損傷に対して乳房組織を保護する治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む組成物を投与することを含む、化学療法からの損傷に対する乳房組織の保護方法。
【請求項9】
組成物が、患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物を含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ガンに苦しみ、化学療法および/または放射線療法を処置された哺乳動物患者に、処置から生じる非粘膜組織における痛みを減少または予防する治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む組成物を投与することを含む、非粘膜組織から生じる痛みの減少または予防方法。
【請求項11】
組成物が、患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物を含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
患者が放射線療法を処置される請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
組成物により、患者に高用量の放射線処置および/または長期間の放射線処置を行うことができるようになる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
組成物により、患者に高用量の化学療法および/または長期間の化学療法を行うことができるようになる請求項10または11に記載の方法。
【請求項15】
組成物により、患者のためのさらなる痛みのコントロールの必要性を減少または排除することができるようになる請求項10または11に記載の方法。
【請求項16】
非粘膜組織が、乳房組織である請求項10または11に記載の方法。
【請求項17】
非粘膜組織が、皮膚である請求項10または11に記載の方法。
【請求項18】
皮膚の創傷、傷害または感染によって損なわれた非粘膜組織の治癒を促進するために、哺乳動物患者に、治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む組成物を投与することを含む、創傷、傷害または感染によって損なわれた皮膚の治癒の促進方法。
【請求項19】
組成物が、患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物を含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
非粘膜組織が、上皮組織である請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
組成物を局所投与する請求項18または19に記載の方法。
【請求項22】
組織が、創傷によって損なわれた組織である請求項18または19に記載の方法。
【請求項23】
創傷が、擦傷または裂傷である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
組織が、外傷(ここで、外傷は、火傷または潰瘍である)によって損なわれる請求項18または19に記載の方法。
【請求項25】
外傷が、褥瘡性潰瘍である請求項24に記載の方法。
【請求項26】
組織が、外傷(ここで、外傷は、虫噛まれもしくは虫刺されである)によって損なわれる請求項18または19に記載の方法。
【請求項27】
組織が、細菌、真菌またはウイルス感染によって損なわれる請求項18または19に記載の方法。
【請求項28】
損なわれた組織が、疱疹性病変である請求項27に記載の方法。
【請求項29】
ガンに対して化学療法および/または放射線療法を処置された哺乳動物患者に、治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩、および患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で少なくとも1種の炭水化物を含む組成物を投与することを含む、ガンに苦しむ哺乳動物の化学療法および/または放射線療法の有効性の増強方法。
【請求項30】
ガンに対して化学療法および/または放射線療法を処置された哺乳動物患者に、(a)少なくとも1つの正常組織においてグルタチオン濃度を増加させ、腫瘍組織においてグルタチオン濃度を減少させ、そのことによって化学療法および/または放射線療法による死滅への正常組織の感受性を低減化させ、腫瘍組織の感受性を増加させるのに有効な量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩;および(b)患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量の炭水化物;を含む組成物を投与することを含む、化学療法および/または放射線療法の治療係数を高める方法。
【請求項31】
腫瘍組織が、乳ガン組織である請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ガンに苦しむ哺乳動物患者に、グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量の少なくとも1種の炭水化物を含む組成物を投与することを含む、ガン細胞のアポトーシスの促進方法。
【請求項33】
哺乳動物患者に、(a)患者のナチュラルキラー細胞活性を増加させるのに有効な量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩;および(b)患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量の炭水化物;を含む組成物を投与することを含む、ナチュラルキラー細胞活性の増加方法。
【請求項34】
患者が、ガンまたはHIVに苦しむ請求項33に記載の方法。
【請求項35】
投与されるグルタミンの量が、少なくとも0.5 mg/日/患者の体重kgである請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、18、19、29、30、32または33に記載の方法。
【請求項36】
投与されるグルタミンの量が、0.2〜3.0g/日/患者の体重kgである請求項35に記載の方法。
【請求項37】
投与されるグルタミンの量が、0.5 g/kg/日以下である請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、18、19、29、30、32または33に記載の方法。
【請求項38】
投与されるグルタミンの量が、0.1 g/kg/日以下である請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、18、19、29、30、32または33に記載の方法。
【請求項39】
炭水化物が、1種以上の単糖または二糖を含む2、4、5、7、9、11、19、29、30、32または33に記載の方法。
【請求項40】
炭水化物が、糖アルコールである請求項2、4、5、7、9、11、19、29、30、32または33に記載の方法。
【請求項41】
グルタミンに対する総炭水化物の重量比率が、0.5:1〜50:1である請求項2、4、5、7、9、11、19、29、30、32または33に記載の方法。
【請求項42】
グルタミンに対する総炭水化物の比率が、水性溶媒と調製後または哺乳動物患者の水性環境にデリバリーされた後のいずれかにおいて、水溶液において少なくとも4:1である請求項2、4、5、7、9、11、19、29、30、32または33に記載の方法。
【請求項43】
組成物が、5個以下のグルタミン以外の天然アミノ酸を含む請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、18、19、29、30、32または33に記載の方法。
【請求項44】
組成物が、グルタミン以外の天然アミノ酸を含まない請求項43に記載の方法。
【請求項45】
組成物を、経口投与する請求項1、2、6、7、8、9、10、11、18、19、29、30、32または33に記載の方法。
【請求項46】
哺乳動物患者が、ヒトである請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、18、19、29、30、32または33に記載の方法。
【請求項47】
組成物を、患者に放射線療法を行った後または行っている間に投与する請求項1、2、3、4、10、11、29、30、32または33に記載の方法。
【請求項48】
組成物を、患者に放射線療法を行う前に投与する請求項10、11、19、30、32または33に記載の方法。
【請求項49】
組成物を、患者に化学療法を行った後または行っている間に投与する1、2、3、4、6、7、8、9、10、11、19、30、32または33に記載の方法。
【請求項50】
組成物を、ガンに対して患者を外科的に処置した後または処置する前に投与する1、2、3、4、32または33に記載の方法。
【請求項51】
組成物を、ガンに対して抗ガン生物作用物質で患者を処置する前または処置中に投与する請求項1、2、3、4、32または33に記載の方法。
【請求項1】
患者に治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む組成物を投与することを含む、ガンに苦しむ哺乳動物患者における転移の予防方法。
【請求項2】
組成物が、患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ガンから回復したか、または抗ガン療法を受けている哺乳動物患者に治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む組成物を経口投与することを含む、ガンの再発の予防方法。
【請求項4】
組成物が、患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物を含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
患者に治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物を含む組成物を経口投与すること含む、ガンの発生の危険がある哺乳動物患者におけるガンの発症の阻害方法。
【請求項6】
ガンに苦しみ、化学療法を処置された哺乳動物患者に、化学療法からの損傷に対して皮膚組織を保護する治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む組成物を投与することを含む、化学療法からの損傷に対する皮膚組織の保護方法。
【請求項7】
組成物が、患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物を含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ガンに苦しみ、化学療法を処置された哺乳動物患者に、化学療法からの損傷に対して乳房組織を保護する治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む組成物を投与することを含む、化学療法からの損傷に対する乳房組織の保護方法。
【請求項9】
組成物が、患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物を含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ガンに苦しみ、化学療法および/または放射線療法を処置された哺乳動物患者に、処置から生じる非粘膜組織における痛みを減少または予防する治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む組成物を投与することを含む、非粘膜組織から生じる痛みの減少または予防方法。
【請求項11】
組成物が、患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物を含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
患者が放射線療法を処置される請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
組成物により、患者に高用量の放射線処置および/または長期間の放射線処置を行うことができるようになる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
組成物により、患者に高用量の化学療法および/または長期間の化学療法を行うことができるようになる請求項10または11に記載の方法。
【請求項15】
組成物により、患者のためのさらなる痛みのコントロールの必要性を減少または排除することができるようになる請求項10または11に記載の方法。
【請求項16】
非粘膜組織が、乳房組織である請求項10または11に記載の方法。
【請求項17】
非粘膜組織が、皮膚である請求項10または11に記載の方法。
【請求項18】
皮膚の創傷、傷害または感染によって損なわれた非粘膜組織の治癒を促進するために、哺乳動物患者に、治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩を含む組成物を投与することを含む、創傷、傷害または感染によって損なわれた皮膚の治癒の促進方法。
【請求項19】
組成物が、患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で炭水化物を含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
非粘膜組織が、上皮組織である請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
組成物を局所投与する請求項18または19に記載の方法。
【請求項22】
組織が、創傷によって損なわれた組織である請求項18または19に記載の方法。
【請求項23】
創傷が、擦傷または裂傷である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
組織が、外傷(ここで、外傷は、火傷または潰瘍である)によって損なわれる請求項18または19に記載の方法。
【請求項25】
外傷が、褥瘡性潰瘍である請求項24に記載の方法。
【請求項26】
組織が、外傷(ここで、外傷は、虫噛まれもしくは虫刺されである)によって損なわれる請求項18または19に記載の方法。
【請求項27】
組織が、細菌、真菌またはウイルス感染によって損なわれる請求項18または19に記載の方法。
【請求項28】
損なわれた組織が、疱疹性病変である請求項27に記載の方法。
【請求項29】
ガンに対して化学療法および/または放射線療法を処置された哺乳動物患者に、治療有効量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩、および患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量で少なくとも1種の炭水化物を含む組成物を投与することを含む、ガンに苦しむ哺乳動物の化学療法および/または放射線療法の有効性の増強方法。
【請求項30】
ガンに対して化学療法および/または放射線療法を処置された哺乳動物患者に、(a)少なくとも1つの正常組織においてグルタチオン濃度を増加させ、腫瘍組織においてグルタチオン濃度を減少させ、そのことによって化学療法および/または放射線療法による死滅への正常組織の感受性を低減化させ、腫瘍組織の感受性を増加させるのに有効な量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩;および(b)患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量の炭水化物;を含む組成物を投与することを含む、化学療法および/または放射線療法の治療係数を高める方法。
【請求項31】
腫瘍組織が、乳ガン組織である請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ガンに苦しむ哺乳動物患者に、グルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩および患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量の少なくとも1種の炭水化物を含む組成物を投与することを含む、ガン細胞のアポトーシスの促進方法。
【請求項33】
哺乳動物患者に、(a)患者のナチュラルキラー細胞活性を増加させるのに有効な量のグルタミンまたはその医薬的に許容しうる塩;および(b)患者によるグルタミンの吸収を増加させるのに有効な量の炭水化物;を含む組成物を投与することを含む、ナチュラルキラー細胞活性の増加方法。
【請求項34】
患者が、ガンまたはHIVに苦しむ請求項33に記載の方法。
【請求項35】
投与されるグルタミンの量が、少なくとも0.5 mg/日/患者の体重kgである請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、18、19、29、30、32または33に記載の方法。
【請求項36】
投与されるグルタミンの量が、0.2〜3.0g/日/患者の体重kgである請求項35に記載の方法。
【請求項37】
投与されるグルタミンの量が、0.5 g/kg/日以下である請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、18、19、29、30、32または33に記載の方法。
【請求項38】
投与されるグルタミンの量が、0.1 g/kg/日以下である請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、18、19、29、30、32または33に記載の方法。
【請求項39】
炭水化物が、1種以上の単糖または二糖を含む2、4、5、7、9、11、19、29、30、32または33に記載の方法。
【請求項40】
炭水化物が、糖アルコールである請求項2、4、5、7、9、11、19、29、30、32または33に記載の方法。
【請求項41】
グルタミンに対する総炭水化物の重量比率が、0.5:1〜50:1である請求項2、4、5、7、9、11、19、29、30、32または33に記載の方法。
【請求項42】
グルタミンに対する総炭水化物の比率が、水性溶媒と調製後または哺乳動物患者の水性環境にデリバリーされた後のいずれかにおいて、水溶液において少なくとも4:1である請求項2、4、5、7、9、11、19、29、30、32または33に記載の方法。
【請求項43】
組成物が、5個以下のグルタミン以外の天然アミノ酸を含む請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、18、19、29、30、32または33に記載の方法。
【請求項44】
組成物が、グルタミン以外の天然アミノ酸を含まない請求項43に記載の方法。
【請求項45】
組成物を、経口投与する請求項1、2、6、7、8、9、10、11、18、19、29、30、32または33に記載の方法。
【請求項46】
哺乳動物患者が、ヒトである請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、18、19、29、30、32または33に記載の方法。
【請求項47】
組成物を、患者に放射線療法を行った後または行っている間に投与する請求項1、2、3、4、10、11、29、30、32または33に記載の方法。
【請求項48】
組成物を、患者に放射線療法を行う前に投与する請求項10、11、19、30、32または33に記載の方法。
【請求項49】
組成物を、患者に化学療法を行った後または行っている間に投与する1、2、3、4、6、7、8、9、10、11、19、30、32または33に記載の方法。
【請求項50】
組成物を、ガンに対して患者を外科的に処置した後または処置する前に投与する1、2、3、4、32または33に記載の方法。
【請求項51】
組成物を、ガンに対して抗ガン生物作用物質で患者を処置する前または処置中に投与する請求項1、2、3、4、32または33に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2009−256357(P2009−256357A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132966(P2009−132966)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【分割の表示】特願2004−526274(P2004−526274)の分割
【原出願日】平成15年7月31日(2003.7.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(509054360)エーザイ コーポレーション オブ ノース アメリカ (5)
【出願人】(501033578)ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ アーカンソー (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【分割の表示】特願2004−526274(P2004−526274)の分割
【原出願日】平成15年7月31日(2003.7.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(509054360)エーザイ コーポレーション オブ ノース アメリカ (5)
【出願人】(501033578)ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ アーカンソー (2)
【Fターム(参考)】
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