説明

グルタミン酸N,N−二酢酸のアルカリ金属塩、そのような塩の調製プロセス及びその使用

本発明は、式NaGLDA(式中、xは2以上で4未満であり、yは0よりも大きく2以下であり、x+yは3.5〜4であり、x+y+z=4である)のグルタミン酸−N,N−二酢酸(GLDA)のアルカリ金属塩、そのような塩を調製するためのプロセス、及び、その使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルタミン酸N,N−二酢酸の一群のアルカリ金属塩、それらを調製するためのプロセス、及び、その使用に関する。
【背景技術】
【0002】
キレート化剤は、金属イオンとの錯体を形成することができる薬剤である。キレート化剤の例には、EDTA(エチレンジアミンN,N,N’,N’−四酢酸)及びGLDA(グルタミン酸,N,N−二酢酸)のような化合物が含まれる。
【0003】
GLDAは、良好な生分解性を有するので、数多くの用途のために有用であることが開示され、また、多くの文献によれば、GLDAのアルカリ金属塩が実際に適用される。
【0004】
例えば、特開2001−003089は、良好な生分解性を有する食器洗浄機用の液体洗浄剤成分を開示する。洗浄剤のための生分解性金属イオン封鎖剤として、L−グルタミン酸酢酸の四ナトリウム塩又は四カリウム塩を使用することができる。
【0005】
欧州特許第783034号は、グルタミン酸−N,N−二酢酸の四ナトリウム塩を含む洗剤を開示する。
【0006】
特開2000−192091は、グルタミン酸−N,N−二酢酸のアルカリ金属塩を含む漂白剤組成物を開示する。
【0007】
国際公開第96/22351号は、グルタミン酸−N,N−二酢酸のナトリウム塩を含む殺生物剤組成物を開示する。
【0008】
特開2002−356464は、四ナトリウム塩又は四カリウム塩を完全な酸に転換することによる高純度のグルタミン酸−N,N−二酢酸の調製を開示する。
【0009】
欧州特許第1004571号は、その四ナトリウム塩から出発するグルタミン酸−N,N−二酢酸の調製を開示する。
【0010】
GLDAが使用される多くの用途では、高い濃度、又は、固体さえもがしばしば好まれる。このことは経済的(より低い輸送コスト)であるだけでなく、同様に重要なことは、取り扱い上の様々な問題(例えば、粘度など)を経験することなく、有効成分の濃度をより高くすることができ、このことはまた、他の添加物(例えば、苛性アルカリ、界面活性剤など)のための配合でのより多くの「余地」を残す。
【0011】
しかしながら、実際には、溶解度が制限されるか、又は、粘度が大きくなりすぎるために、キレート濃度を増大することには限界がある。高濃度に濃縮されすぎた製造物は、結晶化が始まることがあるか、又は、取り扱うには粘度が高くなりすぎることがある。高濃度に濃縮されたGLDAテトラナトリウム溶液の場合、粘度が主な懸念事項である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−003089
【特許文献2】欧州特許第783034号
【特許文献3】特開2000−192091
【特許文献4】国際公開第96/22351号
【特許文献5】特開2002−356464
【特許文献6】欧州特許第1004571号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者らは、グルタミン酸−N,N−二酢酸のカリウム塩がそのナトリウム塩よりも低い粘度を有することを見出している。しかしながら、カリウム塩を調製するためには、カリウム源が必要であり、しかし、カリウム源は一般には、対応するナトリウム含有化合物よりも製造現場では容易に入手することができず、また、著しく高価である。多くの企業がその製造現場に水酸化ナトリウムを有し、一方で、水酸化カリウムはそれほど容易に入手できない。別の欠点は、カリウムがナトリウムよりも大きい原子量を有することであり、このことはGLDAのカリウム塩の重量をそのナトリウム塩よりも重くしている。言い換えれば、より少ないキレートが、GLDAのナトリウム塩の1キログラムあたりと比較して、GLDAのカリウム塩の1キログラムあたりには存在する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、式NaGLDA(式中、xは2以上で4未満であり、yは0よりも大きく2以下であり、x+yは3.5〜4であり、x+y+z=4である)のグルタミン酸−N,N−二酢酸(GLDA)のアルカリ金属塩を提供する。
【0015】
本発明のアルカリ金属塩は、低い粘度と、低価格のために工場現場で容易に入手できる原料を使用するプロセスによって得ることができることとの間において、良好なバランスをもたらす。同様にまた、本発明のアルカリ金属塩は適度な分子量対粘度のバランスを有する。すなわち、本発明のアルカリ金属塩は、本発明のアルカリ金属塩を輸送可能にするために、十分に低い粘度を有し、かつ、アルカリ金属キレート塩の重量単位あたり十分なキレート活性を得るために、十分に低い分子量を有する。
【0016】
GLDAの完全な酸又はGLDAの四ナトリウム塩と比較した場合、本発明の塩は、高い濃度で輸送可能であるという利点(wt%で表される60%は全く問題がない)を有し、一方で、低い温度(40℃未満)でポンプ送液することができるための十分に低い粘度を依然として有する。このことはまた、より少量の材料が、同じ量のキレートを目的地で得るために輸送される必要があることを意味する。
【0017】
混合型塩の他の利点は、混合型GLDA塩の溶液の固体含有量が、同じキレート化力を有する溶液については、完全なカリウム形態の場合よりも低いことである。GLDAの四ナトリウム塩の分子量は351.1であるが、四カリウム塩については分子量が415.1となる。従って、金属イオン封鎖力に関して同じ有効成分を得るためには、およそ20%多い物質を溶解する必要がある。本発明のモノカリウムトリナトリウムGLDAは、20%の代わりに、ほんの5%多い製造物が溶解されることを必要とし、このことは、実施例によって明らかにされるように、四ナトリウム形態と比較したとき、より濃縮された溶液での高い粘度の負の影響を有する製造物を必要としない。
【0018】
好ましくは、本発明のGLDAのアルカリ金属塩において、xは2.5〜3.5の間であり、yは0.5〜1.5の間であり、最も好ましくは、xは約3であり、yは約1である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】HOにおける50% NaGLDA生成物の粘度測定
【発明を実施するための形態】
【0020】
1つの実施形態において、本発明は、式NaGLDA(式中、xは2以上で4未満であり、yは0よりも大きく2以下であり、x+yは3.5〜4であり、x+y+z=4である)を有するグルタミン酸−N,N−二酢酸(GLDA)の上記アルカリ金属塩を調製するためのプロセスであって、グルタミン酸、そのナトリウム塩若しくはカリウム塩、又は、それらの混合物を、形成されたNHを除くための高い温度で水溶液において、ホルムアルデヒド、シアン化水素又はそのカリウム塩若しくはナトリウム塩又はそれらの混合物、及び、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム又はそれらの混合物と反応させることを含むプロセスで、プロセスの期間中において、反応物におけるナトリウム対カリウムのモル比が1:1〜7:1の間であることを特徴とするプロセスを提供する。
【0021】
好ましくは、反応物におけるナトリウム対カリウムのモル比が2:1〜4:1の間であり、最も好ましくは約3:1である。
【0022】
この実施形態において、グルタミン酸−N,N−二酢酸塩の新規な一群が、ワンポット合成を使用するアルカリ性条件でのいわゆるストレッカー/バースワース(Strecker/Bersworth)経路によって調製される。この反応経路は、グルタミン酸を水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの存在下でホルムアルデヒド及びシアン化水素と反応させることを含む。必要とされる過剰なシアン化物/ホルムアルデヒドは10%以上である;1当量のグルタミン酸あたり少なくとも2.2当量のシアン化物/ホルムアルデヒドが使用される。
【0023】
ホルムアルデヒド及びHCNを個々に添加することはまた、グリコロニトリル(HO−CH−CN)を生じさせるために組み合わせることができる。このグリコロニトリルがアルカリ性環境でグルタミン酸又はそのナトリウム塩若しくはカリウム塩と反応する(ストレッカー/バースワースプロセス)。
1グルタミン酸+2HO−CH−CN+3NaOH+1KOH → GLDA−KNa+2NH+2H
【0024】
好ましくは、本発明のアルカリ金属塩は、第1の工程において、グルタミン酸、そのナトリウム塩若しくはカリウム塩、又は、それらの混合物が、7以下のpHで、ホルムアルデヒド及びシアン化水素と反応させられ、その後の工程において、第1の工程で形成されたニトリル化合物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又はそれらの混合物により加水分解される、2つ以上の工程を含むシンガー(Singer)プロセスで、反応物におけるナトリウム対カリウムのモル比が1:1〜7:1の間であることを特徴とするプロセスによって調製される。
【0025】
1つのより好ましい実施形態において、すなわち、第1の工程が中性pH又は酸性pHで行われる2工程プロセス(上記のいわゆるシンガープロセス)において、1.6当量〜2.4当量の間のホルムアルデヒドが1当量のグルタミン酸又はその塩について使用され、1.6当量〜2.4当量のHCNが1当量のグルタミン酸又はその塩について使用される。一層より好ましい実施形態において、1.9当量〜2.1当量のホルムアルデヒド及びHCNが、1当量のグルタミン酸又はその塩について使用される。最も好ましくは、ホルムアルデヒド及びHCNの量は、1当量のグルタミン酸又はその塩について約2.0当量である。このプロセスにおいて、HCNの量はホルムアルデヒドの量と同量にすることができる(しかし、ホルムアルデヒドの量と同量にする必要はない)。
【0026】
全体の反応(例えば、三ナトリウム一カリウム塩、x=3、y=1)は下記の通りである:
1グルタミン酸+2CHO+2HCN+3NaOH+1KOH → GLDA−KNa+2NH+2H
【0027】
グルタミン酸から出発する代わりに、グルタミン酸ナトリウム又はグルタミン酸カリウムを使用することが可能であることは明らかである。同じことがシアン化水素及び水酸化ナトリウムについて当てはまる;シアン化ナトリウム、シアン化カリウム及び水酸化カリウムが代替物である。
【0028】
より好ましい実施形態において、第1の工程が2つのサブ工程に分けられる:すなわち、最初に、シッフ塩基中間体を生じさせるための、グルタミン酸又はグルタミン酸塩と、ホルムアルデヒドとの反応、及び、その後、ニトリルを形成するための、HCN及びさらなるホルムアルデヒドとの反応。
【0029】
上記の好ましいプロセスにおいて、原料は、グルタミン酸一ナトリウム、グルタミン酸又はグルタミン酸一カリウムである。グルタミン酸の非常に低い溶解度を、グルタミン酸をNaOH又はKOHに溶解すること(これにより、グルタミン酸一ナトリウム又はグルタミン酸一カリウムの形成がもたらされる)によって克服することができ、約0.6当量〜1.4当量の塩基を有することが好ましい。GLDAの製造では、グルタミン酸の一ナトリウム塩又は一カリウム塩が水に溶解され、ホルムアルデヒド及びシアン化物が酸性条件又は中性条件のもとで加えられる。
【0030】
中間体ニトリルを合成する場合、ホルムアルデヒド及びシアン化水素の添加が好ましくは、10℃〜40℃の間での温度で行われる。結果は、2つのニトリル官能性を有する中間体生成物である。これらのタイプの生成物は、アミノアセトニトリルとして、又は、略して「ニトリル」として公知である。GLDAのニトリル、例えば、カリウムグルタマートジアセトニトリル又はナトリウムグルタマートジアセトニトリルが、下記ではGLDAとして示される。このニトリルは、極めて水溶性であり、苛性アルカリを加える第2の工程において加水分解される。
【0031】
全体の反応は下記の通りである:
HOOC−CH−CH−C(H)(COOM’)−N−(CH−CN)+3M(OH)+1HO → MOOC−CH−CH−C(H)(COOM’)−N−(CH−COOM)+2NH
(アミノアセトニトリル中間体+塩基 → アミノカルボン酸塩+アンモニア)
上記反応において、それぞれのM及びM’は同じ又は異なる場合があり、アルカリ金属イオンを表す。
【0032】
このプロセスは、さらなる利点として、カリウムGLDNを有する場合、GLDA−KNaを製造するために水酸化ナトリウムのみを必要とするという利点を有する。すべての製造場所がKOHを入手できるとは限らず、また、KOHの貯蔵タンクを有するとは限らず、そのため、NaOHがより一般に使用される。混合型塩の製造は、KOHがそれぞれの場所に存在することを必要とする完全なカリウム形態の製造よりも容易である。すなわち、ニトリルの加水分解を行う場所が、一般に使用されるNaOHを必要とするだけである。
【0033】
従って、第1の工程において、グルタミン酸ジアセトニトリルモノカリウム塩が、グルタミン酸カリウムをシアン化水素及びホルムアルデヒドと反応することによるか、又は、グルタミン酸をシアン化カリウム及びホルムアルデヒドと反応することによるかのどちらかによって形成され、但し、このニトリルがその後の工程において水酸化ナトリウムにより加水分解されるプロセスが提供される。
【0034】
出発物質として、グルタミン酸の代わりに、そのカリウム塩もまた用いることができる。この製造プロセスにおけるグルタミン酸一カリウムの主な利点は、その溶解度が室温でさえ非常に高いことである。グルタミン酸一ナトリウム(MSG)は室温では水において約40wt%の溶解度を有し、グルタミン酸一カリウムは約65wt%〜70wt%の溶解度を有する。グルタミン酸塩が高濃度に処理され得るほど、より少ない水の除去が、高濃度のGLDA溶液を作製するために要求される。製造されるモノナトリウムGLDN(=グルタミン酸アミノジアセトニトリルモノナトリウム塩)は、グルタミン酸一ナトリウムの最大達成可能な濃度と、ホルムアルデヒド水溶液を使用することによって加えられる水の量とに関連づけられる濃度を有する。高濃度のホルムアルデヒド溶液の使用が好都合であることは明らかである。
【0035】
GLDNのカリウム形態の場合、グルタミン酸カリウムの高い溶解度のために、最終的なニトリル濃度がより高くなる。これは、より経済的な輸送、反応器体積あたりのより大きい生産量、より低いエネルギー費用を可能にし、また、高濃度の最終的なGLDA溶液を、水の除去を伴うことなく、ニトリル官能性の加水分解で製造するための容易な方法である。
【0036】
アミド(これは、部分加水分解されたニトリルである)を製造及び単離することが可能である。微酸性/中性であるpHでのより長い期間にわたるGLDNの貯蔵は、加水分解を誘発することが見出され、しかし、その加水分解条件は穏和であるので、加水分解は完全ではなく、そのため、カルボキシラート酸官能性の代わりに、モノアミド官能性又はジアミド官能性の形成をもたらす。これらのアミドは、沈殿させられ、単離されたとき、副生成物を実質的に含まない高純度のGLDA溶液をさらなる加水分解によって合成するために使用することができる。
【0037】
従って、1つの実施形態において、本発明は、加水分解が、グルタミン酸−N,N−二酢酸アミド、グルタミン酸−N−モノ酢酸アミド−N−モノアセトニトリル又はそれらのカリウム塩若しくはナトリウム塩を生じさせるための、0.5〜7の間(好ましくは2.5〜7の間)のpHにおける第1の工程と、グルタミン酸−N,N−二酢酸又はそのナトリウム塩若しくはカリウム塩を生じさせるための、少なくとも90℃の温度及びアルカリ性pHにおけるその後の工程との2つの工程で行われる、GLDAのアルカリ金属塩を調製するためのプロセスを提供し、但し、このプロセスは、必要な場合には、グルタミン酸−N,N−二酢酸アミド、グルタミン酸−N−モノ酢酸アミド−N−モノアセトニトリル又はそれらのカリウム塩若しくはナトリウム塩を単離するさらなる中間工程を含む。
【0038】
これらのアミド中間体は下記の構造によって表される:モノアミド−モノニトリルについてはHOOC−CH−CH−CH(COOM)−N−(CH−CN)(CH−C(O)−NH)、又は、ジアミドについてはHOOC−CH−CH−CH(COOM)−N−(CH−C(O)−NH、但し、M=K、Na又はH。
【0039】
本発明の特定のNaGLDA塩を作製することができるためには、xと、yとの間における比率が容易に微調整され得るプロセスもまた望まれる。従って、本発明は下記の2つの代替プロセスを提供する。第1に、グルタミン酸−N,N−二酢酸(又はその適切な誘導体若しくは塩)をナトリウム塩及びカリウム塩により滴定することを含み、但し、これらの物質におけるナトリウム対カリウムのモル比が7:1〜1:1の間であるプロセス、及び、第2に、GLDAの四ナトリウム塩及びGLDAの四カリウム塩を7:1〜1:1の間のモル比で混合するプロセス。
【0040】
最後に、本発明は、洗剤組成物、スケール除去(descaling)組成物、微生物用組成物、油井刺激(oil well stimulating)組成物、微量栄養素組成物における、又は、ガススイートニング(gas sweetening)、パルプ漂白及び紙漂白における、又は、そのような組成物のいずれかの調製における本発明のアルカリ金属塩の使用に関する。
【実施例】
【0041】
実施例1a及び実施例1b、比較のための実施例1c〜実施例1e
種々のNaGLDA生成物を、下記の原料:
GLDA−H(GLDA−Hを作製するために強酸性樹脂によりイオン交換されたDissolvine GL−45−S(Akzo Nobel NVから得られる)から作製される)、50%のNaOH水溶液、45%のKOH水溶液を下記の表1に従って混合することによって調製した。
【表1】

【0042】
KOH溶液(45%溶液)及びNaOH溶液(50%溶液)を加えた後、生成物を、50wt%の濃度を有するグルタミン酸−N,N−二酢酸のアルカリ金属塩の生成物を単離するためにエバポレーションに供した。
【0043】
実施例1a〜実施例1eで調製されたグルタミン酸−N,N−二酢酸のアルカリ金属塩の生成物の粘度を、10℃〜40℃の温度で、Brookfield DV−II粘度計をスピンドル34とともに使用して求めた。結果が図1に示される。
【0044】
この測定により、NaGLDAと比較して、NaKGLDA及びNaGLDAの粘度が著しくより低いことが明らかにされる。
【0045】
実施例2a
NaKGLDAを、下記の調製プロセスを使用して調製した:
222kgのグルタミン酸(Flukaから得られる)を182kgの水酸化カリウム(46.3wt%)(1当量のKOH)に60℃未満の温度で溶解して、404kgのモノカリウムグルタミン酸の均一な溶液を得た(HOにおける約70wt%)。
【0046】
溶液を室温に冷却した後、102kgの約44wt%のホルムアルデヒド溶液を加え(1当量)、いわゆるシッフ塩基を透明な溶液で得た。
【0047】
この溶液が事前に仕込まれた反応器に、102kgの約44wt%のホルムアルデヒド溶液(さらに1当量)及び81kgのHCN(2当量)を、通常の安全条件を適用して同時に添加した。この同時添加の期間中、反応混合物を連続して冷却することによって、温度を40℃未満で保った。ホルムアルデヒド及びシアン化水素の添加が完了した後、反応混合物を少なくとも30分間撹拌した。反応混合物は約57wt%のカリウムグルタマートジアセトニトリルを含有した。
【0048】
第2の工程で加水分解を行った。反応器に、140kgの水及び60kgの50wt% NaOH水溶液を事前に仕込み、この混合物を90℃〜100℃に加熱した。続いて、322kgの50% NaOH溶液と、前の反応工程から生じるグルタミン酸ジアセトニトリルモノカリウム塩混合物の全量とを、この加熱された溶液に約90分で同時に加えた。添加が完了した後、反応混合物を、アンモニア及び水を除きながら沸騰させた。けん化によって生じたほぼすべてのアンモニアが除かれ、適切なGLDA塩濃度(HOにおいて約70wt%)に達したとき、沸騰を止めた。溶液を室温に冷却し、これにより、貯蔵又はさらなる処理が可能となった。NMR及びAASによる分析では、生成物がモノカリウムトリナトリウムグルタミン酸−N,N−二酢酸であり、収率がグルタミン酸に基づいて90%を超えていたことが示された。
【0049】
比較のための実施例2b
GLDAの四ナトリウム塩を調製するために、最初の反応工程において、120kgの50wt%(1当量)NaOH水溶液が、グルタミン酸のナトリウム塩(MSG)を溶解するために使用されたことを除いて、実施例2aの手順を繰り返した。MSGの溶解度は、グルタミン酸のカリウム塩(MPG)の溶解度よりも、大きく制限され、結果として、ニトリル溶液はより大きく希釈される。最終的な生成物であるNaGLDAがHOにおける約55wt%の濃度で単離された。NMR及びAASによる分析では、生成物がテトラナトリウムグルタミン酸−N,N−二酢酸であり、収率がグルタミン酸に基づいて90%を超えていたことが示された。
【0050】
実施例3
222kgのグルタミン酸(Flukaから得られる)を182kgの水酸化カリウム(46.3wt%)(1当量のKOH)に80℃未満の温度で溶解して、404kgのモノカリウムグルタミン酸の均一な溶液を得た(HOにおける約70wt%)。この溶液に1当量の50wt% NaOHを加えた。グルタミン酸塩溶液の温度が沸点にまで上昇し、2.2当量のNaCN(30wt%)(539kg)及び2.2当量のホルムアルデヒド(44wt%)(229kg)を、溶液をその沸点で保ちながら同時に添加した。溶液を加熱して、さらに数時間沸騰させた。アンモニアが遊離し、KNaGLDAが形成された。KNaGLDAをNMR分析及びAAS分析によって確認した。
【0051】
実施例4
222kgのグルタミン酸(Flukaから得られる)を182kgの水酸化カリウム(46.3wt%)(1当量のKOH)及び360kgのNaOH(50wt%)(3当量)の混合物に溶解した。溶解が完了したとき、89kgのHCN(2.2当量)及び229kgの44wt%ホルムアルデヒド(2.2当量)を同時に添加した。溶液を加熱して、さらに数時間沸騰させた。アンモニアが遊離し、KNaGLDAが形成された。
【0052】
実施例5
NaGLDA及びKGLDAを3:1のモル比で混合すること
テトラナトリウムGLDAの45wt%溶液の234kgをテトラカリウムGLDAの55wt%溶液の75.5kgと混合して、KNaGLDAの47.7wt%溶液の309.5kgを得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式のグルタミン酸−N,N−二酢酸(GLDA)のアルカリ金属塩:NaGLDA(式中、xは2以上で4未満であり、yは0よりも大きく2以下であり、x+yは3.5〜4であり、x+y+z=4である)。
【請求項2】
xが2.5〜3.5の間であり、yが0.5〜1.5の間である、請求項1に記載のアルカリ金属塩。
【請求項3】
xが約3であり、yが約1である、請求項1に記載のアルカリ金属塩。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載されるアルカリ金属塩を調製するためのプロセスであって、グルタミン酸、そのナトリウム塩若しくはカリウム塩、又は、それらの混合物と、ホルムアルデヒド、シアン化水素又はそのカリウム塩若しくはナトリウム塩又はそれらの混合物、及び、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム又はそれらの混合物とを、高い温度で水溶液において、反応させて、生成したNHを除くことを含むプロセスであり、プロセス中において、反応物におけるナトリウム対カリウムのモル比が1:1〜7:1の間であることを特徴とする、プロセス。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載されるアルカリ金属塩を調製するためのプロセスであって、2つ以上の工程を含み、第1の工程において、グルタミン酸、そのナトリウム塩若しくはカリウム塩、又は、それらの混合物と、ホルムアルデヒド及びシアン化水素とが、7以下のpHで反応させられ、その次の工程において、第1の工程で生成したニトリル化合物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又はそれらの混合物により加水分解されるプロセスであり、反応物におけるナトリウム対カリウムのモル比が1:1〜7:1の間であることを特徴とする、プロセス。
【請求項6】
前記第1の工程において、グルタミン酸ジアセトニトリルモノカリウム塩が、グルタミン酸カリウムとシアン化水素及びホルムアルデヒドとを反応させることによるか、又は、グルタミン酸とシアン化カリウム及びホルムアルデヒドとを反応させることによるかのどちらかによって形成され、ただし、前記ニトリルがその次の工程において水酸化ナトリウムにより加水分解される、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記加水分解が2つの工程で行われ、第1の工程が、0.5〜7の間のpHで、グルタミン酸−N,N−二酢酸アミド、グルタミン酸−N−モノ酢酸アミド−N−モノアセトニトリル又はそれらのカリウム塩若しくはナトリウム塩を生じさせる工程であり、その次の工程が、少なくとも90℃の温度及びアルカリ性pHで、グルタミン酸−N,N−二酢酸又はそのナトリウム塩若しくはカリウム塩を生じさせる工程であり、必要な場合には、グルタミン酸−N,N−二酢酸アミドを単離するさらなる中間工程を含む、請求項5又は6に記載のプロセス。
【請求項8】
グルタミン酸−N,N−二酢酸をナトリウム塩及びカリウム塩により滴定することを含み、該物質におけるナトリウム対カリウムのモル比が7:1〜1:1の間である、請求項1から3のいずれか一項に記載されるアルカリ金属塩を調製するためのプロセス。
【請求項9】
GLDAの四ナトリウム塩及びGLDAの四カリウム塩を7:1〜1:1の間のモル比で混合することを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載されるアルカリ金属塩を調製するためのプロセス。
【請求項10】
ナトリウム対カリウムのモル比が1:1〜4:1の間であり、好ましくは約3:1である、請求項4から9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムが過剰に使用される、請求項4から7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
油井用途における、又は、洗剤組成物、スケール除去組成物、微生物用組成物、微量栄養素組成物における、又は、ガススイートニング、パルプ漂白及び紙漂白における、又は、そのような組成物のいずれかの調製における、請求項1から3のいずれか一項に記載されるアルカリ金属塩の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2010−536727(P2010−536727A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520577(P2010−520577)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際出願番号】PCT/EP2008/060655
【国際公開番号】WO2009/024518
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(390009612)アクゾ ノーベル ナムローゼ フェンノートシャップ (132)
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel N.V.
【Fターム(参考)】