説明

グロメット

【課題】 被取付け体への取付け時の挿入力を低減し取付け作業性の向上を図ることができるとともに、取付け時に付く傷を防止することができるグロメットを提供する。
【解決手段】 パネル100の挿通孔100Aに係止する鍔部2Cが形成されかつ内部にワイヤーハーネスが挿通されるゴム製のグロメット本体2と、このグロメット本体2の外周に設けられるとともに当該グロメット本体2より摩擦力の小さな材料のプラスチック製の滑り部材3とを備えたグロメット1としり。滑り部材3は、その一端部3Aを、グロメット本体2のスカート部2Dに当接させて取付ける。また、滑り部材3には、パネル100の挿通孔100Aと干渉し合うパネル挿通部3Dを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部にワイヤーハーネスが挿通されるとともに、自動車等の例えば鉄板製のパネルに取付けられるグロメットに係り、さらに詳しくは、パネルに取付ける際の挿入力を低減させ、取付け作業性の向上を図ることができるグロメットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス設備が搭載された自動車や、複写機、券売機等の進歩が目覚しいものとなっている。これらの設備に欠かせない情報とエネルギーとを伝送する配線システムとしてワイヤーハーネスが使用されている。
例えば、車両のエンジン、メータ、ライト等を正確に作動させるには、何百本もの高性能な電線が必要となり、このような電線や情報回路をコンパクトに束ねたものがワイヤーハーネスとして用いられている。
このようなワイヤーハーネスを、車両等に取付ける際、鉄板等のパネルにあけられた挿通孔を貫通させて取付けることになるが、ワイヤーハーネスを直接配線した場合、振動等でワイヤーハーネスの被覆部材が傷ついてしまったり、ワイヤーハーネス内に水が浸入するという課題がある。そのため、パネルの挿通孔には、ワイヤーハーネスの保護と防水をするグロメットを設けることが一般的である(例えば特許文献1参照)。
【0003】
グロメットとしては、特許文献1のようなものに限らず、例えば図5に示すような構造のものが知られている。
このグロメット11は、例えばゴム製で漏斗状に形成されたグロメット本体12と、このグロメット本体12の外周に集中給脂用グリースの一種であるユニルーブを塗付して形成されるユニルーブ塗付部14とで構成されている。グロメット本体12の先端部12Aには、スリット12Bが形成され、パネルの挿通孔と当接する部位には、その挿通孔に係止する鍔部12Cが設けられている。また、ユニルーブ塗付部14の一部がパネルの挿通孔に挿入するパネル挿通部13となっている。
グロメット11の取付けに際しては、グロメット本体12の先端部12Aからパネルの挿通孔に挿入し、パネル挿通部13がパネルの挿通孔に掛かったとき、さらに力を加えて挿入させると、パネル挿通部13が変形して押し込まれ、グロメット本体12の鍔部12Cがパネルの挿通孔に係止される。
【0004】
【特許文献1】特開2003−235131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記図5に示すグロメットでは、次に述べるような問題がある。
すなわち、グロメット本体12の外周にユニルーブが塗付されているため、ユニルーブを塗付していない場合と比べて、パネルの挿通孔との間で摩擦力が少なくなる。その結果、比較的少ない挿入力でグロメット11をパネルの挿通孔に挿入することはできるが、グロメット11とパネルの挿通孔との摩擦力は依然として大きく、完全に挿入するにはかなりの押圧力で挿入しなくてはならず、取付け作業の効率が悪いものとなっている。
また、ゴム製のグロメット11を、鉄板等のパネルの挿通孔に押込んで取付けるため、両者が干渉し合い、グロメット11が傷つくという問題もある。
【0006】
本発明の目的は、被取付け体への取付け時の挿入力を低減し取付け作業性の向上を図ることができるとともに、取付け時に付く傷を防止することができるグロメットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記各問題を解決し、上記目的を達成するために提案されたものである。
すなわち、ゴム製のグロメットの場合、鉄板等のパネルの挿通孔とグロメットとが干渉する際、摩擦が大きいため挿入力が大きくなる。このため、ゴムより摩擦力が小さな材料製の介在物を滑り部材としてグロメットに装着し、その滑り部材とパネルとを直接干渉させるようにすれば、挿入力を低減することができることが判明した。この発明のグロメットは、上述した研究結果に基づいてなされたものである。
【0008】
本発明のグロメットの第1の態様は、被取付け体の挿通部に係止可能な鍔部を備え、内部にワイヤーハーネスが挿通されるゴム製のグロメット本体と、
前記グロメット本体の外周に設けられ、当該グロメット本体より摩擦力の小さな材料によって作製されて、前記被取付け体の挿通部と干渉し合う滑り部材とを備えたグロメットである。
【0009】
本発明のグロメットの第2の態様は、前記グロメット本体の一部には、その外周外側に突出したスカート部が一体的に形成され、前記滑り部材は、前記グロメット本体の形状に沿った形状を有し、その一端部が前記スカート部に嵌合され、その他端部が前記鍔部側に向けて取付けられていることを特徴とするグロメットである。
【0010】
本発明のグロメットの第3の態様は、前記滑り部材の他端部には、当該他端部に切り込み形成され一部が前記鍔部側に突出した複数枚の羽根部が設けられていることを特徴とするグロメットである。
【0011】
本発明のグロメットの第4の態様は、前記羽根部の一端と前記グロメット本体の鍔部との間には、前記被取付け体を挟み込むために必要な隙間が形成されていることを特徴とするグロメットである。
【0012】
本発明のグロメットの第5の態様は、前記滑り部材がプラスチック製であることを特徴とするグロメットである。
【0013】
本発明のグロメットの第6の態様は、前記グロメット本体および滑り部材は断面リング状に形成されるとともに自動車用のワイヤーハーネスを保護するものであることを特徴とするグロメットである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のグロメットによれば、被取付け体への取付け時の挿入力を低減し取付け作業性の向上を図ることができるとともに、取付け時に付く傷を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図1〜図4に基づいて、本発明に係るグロメットの好適な一実施形態を説明する。
図1は上記実施形態のグロメットの全体斜視図、図2はグロメットの部分断面図、図3はグロメットの分解図、図4はグロメットを被取付け体である鉄板等のパネルに取付けた状態図である。
【0016】
グロメット1は、自動車用のワイヤーハーネスを保護するためのものであり、漏斗状に形成されている。グロメット1は、ゴム製のグロメット本体2と、このグロメット本体2に装着されるプラスチック製の滑り部材3とで構成されている。
グロメット本体2の先端部2Aは筒状に形成され、この先端部2Aには、筒状の長さ方向に沿ったスリット2Bが形成されている。また、グロメット本体2の後端部には鍔部2Cが設けられている。さらに、先端部2Aからグロメット本体2の鍔部2Cに向かって拡がる部位の途中位置には、図3に詳細を示すように、当該位置の外周から外側に突出したスカート部2Dが形成されている。このスカート部2Dは、上記鍔部2C側に向かって開いている。
【0017】
グロメット本体2の鍔部2Cは、被取付け体であるパネル100にあけられた挿通孔100A(図2(a)、図4参照)の径より大きな外形に形成されている。そのため、図4に示すように、グロメット1をパネル100に取付けたとき、鍔部2Cがパネル100に当接するとともに、係止し、それ以上は入り込まないようにストッパとなっている。
【0018】
上記プラスチック製の滑り部材3は、図3に詳細を示すように、略傘状に形成されている。この滑り部材3は、その一端部3Aが、上記グロメット本体2のスカート部2Dの段差部に当接する寸法に形成され、そこから他端部3B側に向かって拡がり、グロメット本体2の外形形状に沿った形状となっている。また、滑り部材3の他端部3Bの先端には、切り込みにより形成された、例えば歯車の山、谷形状の羽根部3Cとなっている。
なお、滑り部材3を形成するプラスチックとしては、アクリル樹脂、塩化ビニール等が使用され、ゴムより摩擦力が小さいものである。
【0019】
羽根部3Cの先端は、上記グロメット本体2の鍔部2Cの端部に近い位置まで延びており、グロメット1をパネル100の挿通孔100Aに挿入して取付けたとき、その挿通孔100Aの内側に位置し、鍔部2Cと羽根部3Cの先端とでパネル100を挟み込めるようになっている。ただし、羽根部3Cの先端がパネル100の挿通孔100A内に残るような寸法に形成されていてもよい。
また、羽根部3Cにおけるスカート部2D側寄りで、かつ挿通孔100Aの孔径より大きい部位が、パネル100の挿通孔100Aに挿入する際のパネル挿通部3Dとなっており、このパネル挿通部3Dがグロメット1とパネル100との干渉部となっている。
【0020】
滑り部材3は、次のようにしてグロメット本体2に装着される。
まず、滑り部材3の内面に例えば接着剤を塗布しておいて、図3に示すように、グロメット本体2の先端部2A側から被せるように挿通させ、滑り部材3の一端部3Aをグロメット本体2のスカート部2Dに当接させるとともに、他端部3Bをグロメット本体2の外形形状に沿って装着させ、グロメット1を完成させる。
【0021】
完成したグロメット1をパネル100に取付ける手順を説明する。
図2(b)、図2(c)にグロメットの部分断面図を示す。図2(b)に示すように、グロメット本体2の鍔部2Cには、パネル100と嵌合するパネル嵌合部2Eが設けられている。パネル嵌合部は、パネルの挿通孔100Aの端部が挿入される概ね逆コの字形部分とパネルを係止する係止部からなっている。図2(c)に示すように、グロメット本体2がパネル挿通孔に挿入されると、上述したように、鍔部2Cの逆コの字形部分にパネル100の端部が挿入され、係止部によって係止され固定される。
グロメット1をパネル100に取り付けるには、図4に示すように、先ず、グロメット本体2の先端部2Aにテープを巻き付けてワイヤーハーネス105を固定し、ワイヤーハーネス105を矢印の方向に引っ張って、パネル100の挿通孔100Aに挿入する。更に引っ張ると、上述したように、グロメット本体2の鍔部2Cの逆コの字形部分にパネル100の端部が挿入され、係止部によって係止され固定される。
【0022】
以上に述べた実施形態によれば、次のような効果がある。
(1)本実施形態のグロメット1は、ゴム製のグロメット本体2にプラスチック製の滑り部材3を装着して形成され、滑り部材3がパネル100の挿通孔100Aに挿入するとき、両者3,100が干渉する。滑り部材3の方がグロメット本体2よりも摩擦力が小さいので、グロメット1を少ない押圧力で取付けることができ、その結果、グロメット1の取付け時の挿入力を低減することができ、取付け作業性の向上を図ることができる。
【0023】
(2)グロメット1が、ゴム製のグロメット本体2にプラスチック製の滑り部材3を装着して形成され、滑り部材3がパネル100の挿通孔100Aに挿入されるようになっているので、グロメット1の取付け時に、グロメット本体2、ひいてはグロメット1に付く擦り傷等の傷を防止することができる。
【0024】
(3)滑り部材3にはパネル挿通部3Dが設けられ、このパネル挿通部3Dが、パネル100の挿通孔100Aに挿入されるようになっている。羽根部3Cは、切り込みによって歯車の山、谷形状に形成されているので、変形しやすく、グロメット1をパネル100の挿通孔100Aに挿入して取付ける際、羽根部3Cが容易に変形し、それに連れてグロメット本体2も容易に変形する。その結果、グロメット1を少ない挿入力で取付けることができ、この点でも、取付け作業性の向上を図ることができる。
【0025】
(4)滑り部材3には羽根部3Cが形成され、羽根部3Cの先端と、グロメット本体2の鍔部2Cとで、パネル100を挟み込めるようになっている。そのため、グロメット1の離脱方向(抜き方向)に圧力がかかった場合でも、プラスチック製の部材3がゴムの変形を妨げ、更に、羽根部3Cがパネル100の挿通孔100Aに引っ掛かるので、パネル100からグロメット1が外れるのを防止することができる。
【0026】
(5)グロメット本体2にスカート部2Dが形成されており、滑り部材3の一端部3Aをスカート部2Dに当接させて装着されるので、スカート部2Dが、滑り部材3が先端側へ移動しないようにするストッパとなり、その結果、滑り部材3をグロメット本体2に対して確実に装着することができる。
【0027】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上記実施形態では、滑り部材3の他端部3Bの先端には羽根部3Cが形成されているが、必ずしも羽根部3Cを設けなくてもよい。要は、滑り部材3を、パネル100の挿通孔100Aに挿通させる際に、挿入力を低減して挿通させることができればよく、羽根部3Cのない鉢巻状の滑り部材としてもよい。
【0028】
また、上記実施形態では、滑り部材3の他端部3Bの先端に切り欠きによる羽根部3Cが形成され、グロメット1の挿入時に、羽根部3Cを容易に変形させるようにしているが、これに限らない。羽根部3Cを形成することに加え、パネル挿通部3Dにグロメット1の挿入方向に沿ったスリットを、例えば羽根部3Cごとに形成してもよい。このようにすれば、グロメット1の挿入時に、羽根部3C、つまり滑り部材3が容易に変形し、グロメット1の挿入力が低減し、取付け作業性の向上を図ることができる。
この場合、グロメット本体2にも、同じようにスリットを形成してもよい。
【0029】
さらに、上記実施形態では、グロメット1が、自動車用のワイヤーハーネスを保護するためのものとして用いられているが、これに限らない。グロメット1を、例えば、複写機や券売機等のワイヤーハーネスを保護するために用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係るグロメットの一実施形態を示す全体斜視図である。
【図2】上記実施形態のグロメットを示す正面図である。
【図3】上記実施形態のグロメットを示す分解図である。
【図4】上記実施形態のグロメットのパネルへの取付け状態を示す図である。
【図5】従来のグロメットを示す全体斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 グロメット
2 グロメット本体
2A 先端部
2B スリット
2C 鍔部
2D スカート部
3 プラスチック製の滑り部材
3A 一端部
3B 他端部
3C 羽根部
3D パネル挿通部
100 被取付体であるパネル
100A 挿通孔
105 ワイヤーハーネス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付け体の挿通部に係止可能な鍔部を備え、内部にワイヤーハーネスが挿通されるゴム製のグロメット本体と、
前記グロメット本体の外周に設けられ、当該グロメット本体より摩擦力の小さな材料によって作製されて、前記被取付け体の挿通部と干渉し合う滑り部材とを備えたグロメット。
【請求項2】
前記グロメット本体の一部には、その外周外側に突出したスカート部が一体的に形成され、前記滑り部材は、前記グロメット本体の形状に沿った形状を有し、その一端部が前記スカート部に嵌合され、その他端部が前記鍔部側に向けて取付けられていることを特徴とする請求項1に記載のグロメット。
【請求項3】
前記滑り部材の他端部には、当該他端部に切り込み形成され一部が前記鍔部側に突出した複数枚の羽根部が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のグロメット。
【請求項4】
前記羽根部の一端と前記グロメット本体の鍔部との間には、前記被取付け体を挟み込むために必要な隙間が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のグロメット。
【請求項5】
前記滑り部材がプラスチック製であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のグロメット。
【請求項6】
前記グロメット本体および滑り部材は断面リング状に形成されるとともに自動車用のワイヤーハーネスを保護するものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のグロメット。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−271119(P2006−271119A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−86073(P2005−86073)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河オートモーティブパーツ株式会社 (571)
【Fターム(参考)】