説明

グロメット

【課題】グロメットが車体パネルの貫通孔との取付け部分周りでの音漏れを抑制することを目的とする。
【解決手段】グロメット20は、ワイヤーハーネス18に外装された状態で、車体パネル10に形成された貫通孔12に装着される。グロメット20は、ワイヤーハーネス18が挿通支持される筒状のワイヤーハーネス支持部22と、ワイヤーハーネス支持部22に連結され、ワイヤーハーネス支持部22の軸芯周りの位置で貫通孔12の内周縁部を係止可能な係止凹部31を有するパネル取付部30と、弾性材料によって形成され、ワイヤーハーネス支持部22の外周部であってパネル取付部30から離れた位置からパネル取付部30に向けて係止凹部31よりも大きく拡開するように延出する傘状部40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワイヤーハーネスに外装された状態で車体パネルに形成された貫通孔に装着されるグロメットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のグロメットとして、特許文献1に開示のものがある。
【0003】
特許文献1では、グロメットの外周に車体係止凹部が形成されている。そして、車体パネルに形成された貫通孔の周縁部が前記車体係止凹部に嵌め込まれることで、グロメットが車体パネルに装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−369345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記車体パネルに不織布等の遮音材を貼着ければ、車体パネルによって区画される2つの空間の間で遮音性を向上させることができる。
【0006】
しかしながら、この場合でも、グロメットの車体係止凹部周りで音漏れを抑制することは困難である。
【0007】
そこで、本発明は、グロメットが車体パネルの貫通孔との取付け部分周りでの音漏れを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1の態様は、ワイヤーハーネスに外装された状態で、車体パネルに形成された貫通孔に装着されるグロメットであって、前記ワイヤーハーネスが挿通支持される筒状のワイヤーハーネス支持部と、前記ワイヤーハーネス支持部に連結され、前記ワイヤーハーネス支持部の軸心周りの位置で前記貫通孔の内周縁部を係止可能な係止凹部を有するパネル取付部と、弾性材料によって形成され、前記ワイヤーハーネス支持部の外周部であって前記パネル取付部から離れた位置から、前記パネル取付部に向けて前記係止凹部よりも大きく拡開するように延出する傘状部とを備える。
【0009】
第2の態様は、第1の態様に係るグロメットであって、前記パネル取付部は、前記係止凹部が形成された環状部と、前記環状部を前記ワイヤーハーネス支持部外側位置に支持する連結部とを有し、前記傘状部の外周縁部を前記ワイヤーハーネス支持部と前記環状部との間に配設するように、前記傘状部が弾性変形可能に構成されている。
【0010】
第3の態様は、第2の態様に係るグロメットであって、前記連結部は、前記環状部を前記ワイヤーハーネス支持部の軸方向に沿って移動させるように弾性変形可能に形成されている。
【0011】
第4の態様は、第1〜第3のいずれか1つの態様に係るグロメットであって、前記パネル取付部は、前記貫通孔の内周縁部に当接可能なつば部を有する樹脂成形部分と、前記前記樹脂成形部分が取付けられる装着部分を含み、前記装着部分と前記ワイヤーハーネス支持部と前記傘状部分とが弾性材料によって一体形成されている。
【0012】
第5の態様は、第1〜第4のいずれか1つの態様に係るグロメットであって、前記傘状部は、その先細り側の端部から前記外周縁部に向けて放射状に延びる複数の厚肉部と、前記複数の厚肉部間に介在する前記厚肉部よりも薄い薄肉部とを有する。
【発明の効果】
【0013】
第1の態様に係るグロメットによると、弾性材材料によって形成され、前記ワイヤーハーネス支持部の外周部であって前記パネル取付部から離れた位置から、前記パネル取付部に向けて前記係止凹部よりも大きく拡開するように延出する傘状部を有しているため、貫通孔の内周縁部を係止凹部に係止させた状態で、傘状部の外周縁部を当該係止凹部よりも外周側で車体パネルに接触させることができる。これにより、グロメットと車体パネルの貫通孔との取付け部分周りでの音漏れを抑制することを目的とする。
【0014】
第2の態様によると、前記傘状部の外周縁部を前記ワイヤーハーネス支持部と前記環状部との間に配設するように、前記傘状部が弾性変形可能に構成されているため、この状態で、グロメットを貫通孔内に容易に挿入できる。
【0015】
第3の態様によると、前記環状部を前記ワイヤーハーネス支持部の軸方向に沿って移動させるように連結部が弾性変形することで、傘状部の外周縁部をワイヤーハーネス支持部と環状部との間から容易に抜くことができる。
【0016】
第4の態様によると、前記貫通孔の内周縁部に当接可能なつば部が形成された部品を樹脂成形部分とし、これをパネル取付部の装着部に装着する構成としているため、貫通孔に係止させる形状を容易に形成することができる。
【0017】
第5の態様によると、前記傘状部は、その先細り側の端部から前記外周縁部に向けて放射状に延びる複数の厚肉部と、前記複数の厚肉部間に介在する前記厚肉部よりも薄い薄肉部とを有しているため、主として薄肉部で弾性変形させることで、傘状部を容易に縮径変形させることができる。一方、厚肉部によって傘状部を拡げて車体パネルに押付ける状態を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係るグロメットを車体パネルに取付けた状態を示す正面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1のIII−III線断面図である。
【図4】グロメットを車体パネルに取付ける手順を示す説明図である。
【図5】グロメットを車体パネルに取付ける手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態に係るグロメットについて説明する。図1は実施形態に係るグロメット20を車体パネル10に取付けた状態を示す正面図であり、図2は図1のII−II線断面図であり、図3は図1のIII−III線断面図である。
【0020】
このグロメット20は、ワイヤーハーネス18に外装された状態で、車体パネル10に形成された貫通孔12に装着される。
【0021】
ここで、車体パネル10は、車両において空間を仕切る板状の部材である。車体パネル10としては、例えば、車室(図2の右側)とエンジンルーム(図2の左側)とを仕切るパネルが想定される。車体パネル10には、貫通孔12が形成されている。貫通孔12は、円形状であることが多いが、長円状、多角形状の孔等であってもよい。ここでは、貫通孔12の周縁部には、車体パネル10の一主面側(ここでは、エンジンルーム側)に突出する環状突起部13が形成されている。また、車体パネル10の少なくとも一主面(ここでは、エンジンルーム側の面)には、遮音層14が設けられている。遮音層14は、不織布、ゴム板、発泡層等によって形成されており、車体パネル10に遮音性を付与する。遮音層14は、上記貫通孔12の周りで大きく開口する開口部15を有している。開口部15の直径は、貫通孔12の直径よりも大きい。
【0022】
ワイヤーハーネス18は、結束された複数の電線を有している。このワイヤーハーネス18が上記貫通孔12を通って配設されることで、車体パネル10にて区画される2つの空間間で電気機器同士を電気的に接続する配線として用いられる。
【0023】
グロメット20は、ワイヤーハーネス支持部22と、パネル取付部30と、傘状部40とを備える。
【0024】
ワイヤーハーネス支持部22は、挿通されたワイヤーハーネス18を支持可能に構成されている。ここでは、ワイヤーハーネス支持部22は、ワイヤーハーネス18を挿通可能な筒状に形成されている。ワイヤーハーネス支持部22におけるワイヤーハーネス18の支持は、例えば、次のようにしてなされる。まず、ワイヤーハーネス支持部22の内径を、支持対象となるワイヤーハーネス18の外径よりも小さく設定しておき、弾性材料によって形成されたワイヤーハーネス支持部22を拡げておいた状態で内部にワイヤーハーネス支持部22を挿通し、その後、ワイヤーハーネス支持部22を元の形に弾性変形させれば、ワイヤーハーネス支持部22がワイヤーハーネス18を締付けることで、当該ワイヤーハーネス18を固定することができる。また、ワイヤーハーネス支持部22の端部と当該端部から延出するワイヤーハーネス18とに粘着テープ等を巻付けることで、ワイヤーハーネス18を固定することができる。
【0025】
パネル取付部30は、上記ワイヤーハーネス支持部22に連結され、ワイヤーハーネス支持部22の軸芯周りの位置で貫通孔12の内周縁部を係止可能な係止凹部31を有している。そして、前記係止凹部31が貫通孔12の内周縁部に係止されることで、グロメット20が車体パネル10の貫通孔12に装着される。
【0026】
ここでは、パネル取付部30は、環状部32と連結部36とを有している。
【0027】
環状部32は、貫通孔12の外径と略同径で、ワイヤーハーネス支持部22の外径よりも大きい直径を有する環状に形成されている。このパネル取付部30の外周に、その外周側に開口する環状の上記係止凹部31が形成されている。係止凹部31は、その環状底の外径が貫通孔12の内周縁部の内径と略同一で、かつ、貫通孔12の軸方向における幅寸法が貫通孔12の内周縁部の厚み寸法(ここでは、環状突起部13の突出寸法)と略同一となる形状に形成されている。そして、内周縁部が係止凹部31に嵌め込むことで、パネル取付部30が車体パネル10の貫通孔12にがたつきなく、固定されるようになっている。
【0028】
ここでは、環状部32は、樹脂成形部分33と装着部分34とを有している。
【0029】
樹脂成形部分33は、ポリプロピレン(P.P.)等の樹脂によって金型一体成形された部品であり、装着部分34等の弾性材料によって形成された部分よりも高い剛性を有している。この樹脂成形部分33は、短円筒部33aと装着鍔部33bと係止鍔部33cとを有している。短円筒部33aの外径は、内周縁部の内径と略同一に設定されており、当該短円筒部33aを内周縁部内に当該内周縁部に接触させた状態で配設できるようになっている。また、装着鍔部33bは短円筒部33aの一端部より環状に突出しており、係止鍔部33cは、装着鍔部33bから内周縁部の縁厚み寸法以上離れた位置で短円筒部33aの外周より環状に突出している。そして、装着鍔部33b及び係止鍔部33cの間に、内周縁部を配設できるようになっている。また、短円筒部33aの他端部は、係止鍔部33cに対して装着鍔部33bの反対側に突出している。
【0030】
なお、この樹脂成形部分33を貫通孔12に押込む作業を容易に行えるように、短円筒部33aの他端部の外面及び係止鍔部33cの外向き面は、短円筒部33aの他端部外方に向けて順次縮径するテーパー状に形成されている。
【0031】
装着部分34は、ゴムを含むエラストマー等の弾性材料によって形成された部分である。ここでは、装着部分34は、連結部36、ワイヤーハーネス支持部22及び傘状部40と共に、弾性材料によって金型一体形成されている。装着部分34は、貫通孔12の内周縁部の内径よりも大きな外径を有する環状形状に形成されており、貫通孔12の周縁部で車体パネル10の他方主面側に配設できるようになっている。また、装着部分34の内周部には、上記装着鍔部33bを嵌め込み可能な鍔部装着凹部34aが形成されている。そして、上記装着鍔部33bを鍔部装着凹部34aに嵌め込むことで、樹脂成形部分33が装着部分34に装着される。この状態で、装着鍔部33b及び係止鍔部33cの一対の対向面と短円筒部33aの外面とで構成される前記係止凹部31が形成される。
【0032】
連結部36は、上記環状部32をワイヤーハーネス支持部22の外側位置で支持可能に構成されている。より具体的には、連結部36は、ワイヤーハーネス支持部22の外周部であってその一端部よりも中間よりの位置より外方に突設されている。また、連結部36の外周部と装着部分34とが一体的に連結されている。これにより、環状部32の中心軸とワイヤーハーネス支持部22の中心軸とを一致させた状態で、環状部32がワイヤーハーネス支持部22の外側位置で支持されている。
【0033】
また、連結部36は、ワイヤーハーネス支持部22の外方に向けて突出しつつ、ワイヤーハーネス支持部22の軸方向に沿った縦断面において凹凸に波打つ形状を有している。換言すれば、連結部36は、ワイヤーハーネス支持部22の外方に向けて突出する鍔形状で、かつ、ワイヤーハーネス支持部22の軸周りでワイヤーハーネス支持部22の軸方向いずれか一方側に凸となる環状凸部分を有する形状に形成されている。そして、上記連結部36の凹凸部分を引き伸し或は弾性復帰させるように連結部36を弾性変形させることによって、環状部32がワイヤーハーネス支持部22の軸方向に沿って移動可能に支持されている。
【0034】
つまり、通常状態では、連結部36は、環状部32をワイヤーハーネス支持部22の中間よりの位置に支持している(図2参照)。この状態では、傘状部40を弾性変形させてその大部分をワイヤーハーネス支持部22と環状部32との間に配設できるようになっている。また、連結部36を引き伸すように、環状部32をワイヤーハーネス支持部22の軸方向に沿ってその一端部方向(傘状部40より離れる方向)に移動させると、傘状部40の全部又は大部分(ここでは傘状部40の大部分)がワイヤーハーネス支持部22と環状部32との間から脱し、当該傘状部40をワイヤーハーネス支持部22と環状部32との間から容易に抜出すことができるようになる。
【0035】
もっとも、ワイヤーハーネス支持部22と環状部32との間に傘状部40の外周縁部を配設できること、環状部32がワイヤーハーネス支持部22の軸方向に移動可能とされていることは必須ではない。
【0036】
傘状部40は、弾性材料によって形成された部分であり、ワイヤーハーネス支持部22の外周部であってパネル取付部30から離れた位置から前記パネル取付部30に向けて係止凹部31よりも大きく拡開するように延出している。
【0037】
より具体的には、傘状部40は、ワイヤーハーネス支持部22の外周であって上記連結部36とワイヤーハーネス支持部22の他端部との間の位置に一体的に連結されている。傘状部40は当該連結部分より環状部32に向けて徐々に拡がるように延出する形状に形成されている。ここでは、傘状部40は、角錐(ここでは、8角錐)の側面に対応する形状に形成されている。傘状部40のうち最も拡がる外周縁部は、遮音層14に当接した状態で、遮音層14に被さる程度の大きさに設定されている。すなわち、傘状部40のうち最も拡がる外周縁部は、遮音層14に当接した状態で、遮音層14の開口部15よりも大きく拡がる。
【0038】
また、傘状部40の延出長は、環状部32に達する以上の大きさに設定されており、傘状部40のうち少なくともその外周縁部を、ワイヤーハーネス支持部22と環状部32との間に配設できるようになっている。そして、傘状部40が弾性変形することによって、その外周縁部をワイヤーハーネス支持部22と環状部32との間に配設できるようになっている。
【0039】
また、原形状における傘状部40の外周縁部は、貫通孔12の内周縁部が係止凹部31に係止した状態で、貫通孔12の傘状部40が配設される側の主面に達するように設定されている。
【0040】
また、傘状部40は、その先細り側の端部(ワイヤーハーネス支持部22に連結された部分)から外周縁部に向けて延びる複数の厚肉部42と、その複数の厚肉部42の間に介在する薄肉部44とを有している。
【0041】
ここでは、傘状部40のうち角錐の側辺に対応する長尺部分が長尺状(ここでは丸棒状)の厚肉部42に形成されている。また、傘状部40のうち各厚肉部42間の三角形状部分が前記厚肉部よりも厚みが小さい薄肉部44に形成されている。
【0042】
もっとも、傘状部40が上記形状であることは必須ではない。傘状部40は、円錐の側面に対応する形状であってもよい。また、傘状部40は、その基端部から先端部に向けて外側又は内側に凸となるように湾曲しつつ拡がる形状であってもよい。つまり、傘状部40の先端側の外周縁部が車体パネル10の貫通孔12の外周で当該車体パネル10(好ましくは、遮音層14部分)に接触可能であり、かつ、傘状部40と車体パネル10との間で遮音に役立つ空間が形成されればよい。
【0043】
また、傘状部40が厚肉部42と薄肉部44とを備えていることは必須ではなく、その周方向において均一な厚みに形成されていてもよい。
【0044】
このように構成されたグロメット20を車体パネル10の貫通孔12に装着する手順について説明する。
【0045】
まず、ワイヤーハーネス支持部22にワイヤーハーネス18を挿通し、当該ワイヤーハーネス支持部22に固定する。そして、傘状部40の外周縁部をワイヤーハーネス支持部22と環状部32との間に配設する(図4参照)。この際、環状部32を環状部32の連結部分から遠い側に移動させることで、傘状部40の外周縁部をワイヤーハーネス支持部22と環状部32との間に容易に配設することができる。しかも、薄肉部44を厚肉部42間で内側又は外側に変形させるようにすることで、傘状部40を容易に縮径変形させることができる。
【0046】
なお、ワイヤーハーネス支持部22に対するワイヤーハーネス18の支持作業と、傘状部40の外周縁部をワイヤーハーネス支持部22と環状部32との間に配設する作業とは、いずれが先に行われてもよい。また、傘状部40の外周縁部をワイヤーハーネス支持部22と環状部32との間に配設する作業は省略されてもよい。この場合には、手にて傘状部40を縮径変形させた状態で、又は、傘状部40を貫通孔12の内周縁部に押し当てて縮径変形させた状態で、後述する貫通孔12への挿入作業等を行えばよい。
【0047】
次に、ワイヤーハーネス18及びワイヤーハーネス支持部22の他端部を貫通孔12に挿通し、続いて、樹脂成形部分33を貫通孔12内に押込む。すると、樹脂成形部分33が縮径するように弾性変形し、係止鍔部33cが貫通孔12の内周縁部を乗越えると、貫通孔12の内周縁部が装着鍔部33b及び係止鍔部33cの一対の対向面と短円筒部33aの外面とで構成される係止凹部31に係止する。
【0048】
この後、連結部36を引き伸すように弾性変形させつつ、ワイヤーハーネス支持部22を環状部32に対して相対的に離れる方向に移動させると、傘状部40の全部又は大部分がワイヤーハーネス支持部22と環状部32から脱するようになる。この状態で、傘状部40を外方に引出し、傘状部40の弾性力によって傘状部40の外周縁部を貫通孔12及び開口部15の外周りで遮音層14に被せるように接触させる。この状態では、傘状部40の厚肉部42によって、傘状部40の外周縁部を遮音層14に向けてしっかりと押付ける弾性力が付与される。
【0049】
この状態では、グロメット20のうち貫通孔12に係止する部分外周りで、車体パネル10と傘状部40とで囲まれる空間が形成される。この空間によって、遮音効果を得ることができる。しかも、傘状部40は、グロメット20のうち貫通孔12に係止する部分の内周側も覆っているため、当該部分で傘状部40と連結部36とで囲まれる空間が形成されている。この部分でも遮音効果を得ることができる。
【0050】
以上のように構成されたグロメット20によると、弾性材料によって形成され、ワイヤーハーネス支持部22の外周部であってパネル取付部30から離れた位置からパネル取付部30に向けて係止凹部31よりも大きく拡開するように延出する傘状部40を有しているため、貫通孔12の内周縁部を係止凹部31に係止させた状態で、傘状部40の外周縁部を係止凹部31よりも外周側で車体パネル10に接触させることができる。これにより、車体パネル10と傘状部40とで囲まれる空間を形成して、グロメット20と貫通孔12との取付部分周りでの音漏れを抑制することができる。
【0051】
また、傘状部40の外周縁部をワイヤーハーネス支持部22と環状部32との間に配設するように、傘状部40が弾性変形可能に構成されているため、この状態で、グロメット20を貫通孔12内に容易に挿入できる。
【0052】
また、環状部32をワイヤーハーネス支持部22の軸方向に沿って移動させるように連結部36が弾性変形するため、傘状部40の外周縁部をワイヤーハーネス支持部22と環状部32との間に容易に配設し、また、傘状部40の外周縁部を当該間から容易に抜くことができる。
【0053】
また、上記傘状部40を形成した場合、金型形状の都合等により、傘状部40の内側では複雑な形状を形成し難い。そこで、貫通孔12の内周縁部に当接可能な係止鍔部33cが形成された部品を樹脂成形部分33とし、これをパネル取付部30の装着鍔部33bに装着する構成としているため、貫通孔12に係止させる形状を容易に形成できる。しかも、樹脂成形部分33の係止鍔部33cが貫通孔12に抜け止状に係止する構成であるため、当該樹脂成形部分33を貫通孔12に押込むことで、係止鍔部33cを貫通孔12に容易に係止させる構成を実現し易く、また、グロメット20をしっかりと貫通孔12に固定することができる。
【0054】
また、傘状部40は、その先細り側の端部から外周縁部に向けて放射状に延びる複数の厚肉部42と、複数の厚肉部42間に介在する薄肉部44とを有しているため、主として薄肉部44で弾性変形させることで、傘状部40を容易に縮径変形させることができる。また、傘状部40の外周縁部を車体パネル10に押付ける力は、厚肉部42によって十分に得られているため、傘状部40を押拡げて車体パネル10の表面(ここでは、遮音層14表面)との密着させた状態を維持できる。
【0055】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0056】
10 車体パネル
12 貫通孔
18 ワイヤーハーネス
20 グロメット
22 ワイヤーハーネス支持部
30 パネル取付部
32 環状部
33 樹脂成形部分
33c 係止鍔部
34 装着部分
36 連結部
40 傘状部
42 厚肉部
44 薄肉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーハーネスに外装された状態で、車体パネルに形成された貫通孔に装着されるグロメットであって、
前記ワイヤーハーネスが挿通支持される筒状のワイヤーハーネス支持部と、
前記ワイヤーハーネス支持部に連結され、前記ワイヤーハーネス支持部の軸心周りの位置で前記貫通孔の内周縁部を係止可能な係止凹部を有するパネル取付部と、
弾性材料によって形成され、前記ワイヤーハーネス支持部の外周部であって前記パネル取付部から離れた位置から、前記パネル取付部に向けて前記係止凹部よりも大きく拡開するように延出する傘状部と、
を備えるグロメット。
【請求項2】
請求項1記載のグロメットであって、
前記パネル取付部は、前記係止凹部が形成された環状部と、前記環状部を前記ワイヤーハーネス支持部外側位置に支持する連結部とを有し、
前記傘状部の外周縁部を前記ワイヤーハーネス支持部と前記環状部との間に配設するように、前記傘状部が弾性変形可能に構成されている、グロメット。
【請求項3】
請求項2記載のグロメットであって、
前記連結部は、前記環状部を前記ワイヤーハーネス支持部の軸方向に沿って移動させるように弾性変形可能である、グロメット。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のグロメットであって、
前記パネル取付部は、前記貫通孔の内周縁部に当接可能なつば部を有する樹脂成形部分と、前記前記樹脂成形部分が取付けられる装着部分を含み、
前記装着部分と前記ワイヤーハーネス支持部と前記傘状部分とが弾性材料によって一体形成されている、グロメット。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載のグロメットであって、
前記傘状部は、その先細り側の端部から前記外周縁部に向けて放射状に延びる複数の厚肉部と、前記複数の厚肉部間に介在する前記厚肉部よりも薄い薄肉部とを有する、グロメット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−239321(P2012−239321A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107027(P2011−107027)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】