グロープラグ及びその製造方法
【課題】抵抗発熱体を内蔵したシースチューブ内に絶縁粉末を充填してなる、グロープラグ用のシースヒータの製造で、同チューブ内に絶縁粉末を充填した後、軸線方向に加圧するだけで、絶縁粉末を所望とする充填密度に保持できるようにする。
【解決手段】抵抗発熱体30をシースチューブ21内で、その後端側から見られたときに渦巻き状をなすよう、金属板を巻板相互間に間隔を保持して渦巻き状に形成されてなる渦巻き構造体とし、巻き構造体の最外周側に位置する抵抗発熱体30の一端33をシースチューブ21の内面27に溶接する構成とした。
【解決手段】抵抗発熱体30をシースチューブ21内で、その後端側から見られたときに渦巻き状をなすよう、金属板を巻板相互間に間隔を保持して渦巻き状に形成されてなる渦巻き構造体とし、巻き構造体の最外周側に位置する抵抗発熱体30の一端33をシースチューブ21の内面27に溶接する構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの始動促進(予備加熱)のために使用されるグロープラグ及びグロープラグの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなグロープラグとしては図12に示した構造のものがある(特許文献1)。このグロープラグ1は、筒状をなし、エンジンヘッド(図示せず)にねじ込み方式で固定されるように外周面にネジ13を備えた筒状の金具本体(以下、単に本体ともいう)10、及びその内側に固定されたシースヒータ(電熱式シースヒータ)20等を主体として構成されている。このシースヒータ20は、それをなすシースチューブ21の先端22側(図12では先端側の半分程度)を本体10の先端11から突出させる配置で固定されている。シースヒータ20は、詳細は後述するが、先端22が閉じられたシースチューブ21内に通電することで発熱するコイル状の抵抗発熱体30をその一端(先端)33を同チューブの先端22に溶接した形で内蔵している。他方、金具本体10の内側(中空部)には、このシースチューブ21の後端23寄り部位に先端側が内挿されて固定された通電用の端子用軸(金属軸)40が配置されている。この端子用軸40は、その先端41を介して抵抗発熱体30に電気的に接続されており、その後端を、本体10の後端において絶縁を保持して固定されている。すなわち、端子用軸40の後端は本体10の後端より突出しており、その後端寄り部位には、Oリングパッキン51及び絶縁リング53が外嵌されており、これらを本体10の後端のねじ込み用の多角形部15の内周側に配置している。そして、この配置状態で、通電用端子55におけるその筒状部57を、その軸40の後端部に外嵌してその先端側のフランジで、絶縁リング53を押さえつけた状態の下で、外周面を縮径状に加締めることで、グロープラグ1として組立てられている。なお、本願書類において、グロープラグ1、及びそれを構成するシースヒータ20、その他の構成部品に関して、先端とは、図12におけるそれらの下方の端をいい、後端とはその逆(上方)の端を言う。
【0003】
ところで、このようなグロープラグ1をなすシースヒータ20自体の詳細な構成は次のようである。すなわち、同ヒータ20は、ステンレス鋼やNi基耐熱合金からなるシースチューブ21と、上記したようにその内部に先端33が溶接されて配置された抵抗発熱体(コイル)30等から次のように構成されている。すなわち、シースチューブ21は、先端22が凸となす略半球面状に形成された有底の円筒形状を呈している。そして、抵抗発熱体(発熱コイル)30は鉄クロム合金やニクロム等からなり、同図のものでは、その金属線(横断面が円形の線)から、円筒形で、所定長さを有するツル巻き状(螺旋状)のコイルばね構造を呈している。なお、同図のシースヒータ20では、抵抗発熱体30の後端に、抵抗温度係数が正で大きい値を有する金属(例えばコバルト鉄合金)製の電流制御用抵抗コイル(抵抗発熱体のコイルと逆巻で図示)32が直列で接続(溶接)されている。これにより同図のものでは、シースチューブ21内においてその後端の開口から内挿された端子用軸40の先端41が、その電流制御用抵抗コイル32の後端に溶接で接続されており、この端子用軸40と金具本体10間に通電することで、抵抗発熱体30を昇温させる構成とされている。なお、シースチューブ21は全長にわたり同径(ストレート)のものもあるが、図12に示したものは、先端寄り部位が細い異径の円筒形状を呈している。
【0004】
このようなシースチューブ21内には、図の複雑化を避けるために図示はしていないが実際には電気絶縁性及び耐熱性のあるセラミック(例えば、MgO)の粉末(絶縁粉末)が充填されている。これにより、シースチューブ21の内面と、抵抗発熱体等をなすコイル(以下、単にコイルとも言う)や端子用軸40との間、及びコイル自体をなす巻線同士における先後の電気的絶縁が確保されていると共に、これらをシースチューブ21内に安定して固定させている。なお、このような固定の確保のため、同チューブ21内の絶縁粉末は圧縮され、所定の充填密度が保持されている。そして、このようなシースチューブ21の後端23寄り部位の内周面と、端子用軸40の外周面との間には、絶縁材からなる筒状(又は環状)の封止材(例えば、耐熱ゴムチューブ)65が介挿され、その間の絶縁を保持しつつ、この封止材65より先のチューブ21内(絶縁粉末)を封止(シール)している。
【0005】
ところで、上記した構成のシースヒータ20は、次のような工程を経て製造ないし組み立てられる。図13に模式的に示した製造工程図に基づいて説明する。すなわち、シースチューブ21用に、図13−Aに示したように、両端が開口されたパイプ(円管)から多数の成形過程を経て、その下端部(シースチューブ21の先端となる部位)を半球面部を有するように絞り成形すると共に、その半球面部の先端中央に、そのパイプと同心で縮径し、先方に向けて突出する縮径筒部21sを形成してシースチューブ仕掛品21aを成形しておく。一方、抵抗発熱体(発熱コイル)30は、図13−B(左)に示したように、その先端部分の一部を、小径部33bとして形成しておく。そして、その発熱コイルの後方に電流制御用抵抗コイル32を接続しておき、その後端に端子用軸40の先端を溶接しておき、端子用軸付きのコイル(抵抗発熱体)組立体を形成しておく。
【0006】
次いで、この端子用軸付きのコイル組立体を、図13−B,Cに示したように、上記シースチューブ仕掛品(抵抗発熱体の溶接前のシースチューブ)21a内に、その後端の開口から挿入し、先端の小径部33bを縮径筒部内(穴)21sに挿入する(図13−C参照)。そして、その状態の下で、その縮径筒部21sと共に小径部33bを溶接により溶融して凝固させる。こうすることで、図13−Dに示したように、その先端部分の溶融、凝固により、シースチューブ仕掛品21aはその先端が塞がれるともに、抵抗発熱体(コイル)30の先端33はシースチューブ21内の先端22に溶接され、端子用軸付きのシースヒータ仕掛品20aとなる。
【0007】
こうして得られたシースヒータ仕掛品20aは、図14−Aに示したものとなるが、その後は、図14−Bに示したように、同チューブ21の後端の開口(チューブ後端23の内周面と端子用軸40の外周面との隙間)から、同チューブ21内に所定量の絶縁粉末60を注ぎ込み、充填する。その後、図14−Cに示したように、この状態のシースチューブ21の後端寄り部位の内周面と、端子用軸40の外周面との間に上記した筒状の封止材65を介在させる。
【0008】
次に、絶縁粉末60の充填密度を所定値に高めるため、別途、独立の工程において、図14−C中の横向き矢印で記したように、シースチューブ21を縮径状(径方向)に加締める加工をする(スウェージング加工をする)。こうして、内部の絶縁粉末60を所望とする充填密度にする。かくては、これを上記した金具本体10の内側に圧入等し、上記したようなグロープラグ1として組立てられる。
【0009】
ところで、上記の端子用軸40付きのシースヒータ20の製造工程において、シースチューブ21を縮径状に加締めているが、これは、シースチューブ21内にその後端23の開口から絶縁粉末60を充填して、それを後方から単に軸線G1方向に押込む(加圧する)だけでは、絶縁粉末60がその内部において均一又は所望とする充填密度が得られないためである。これは次の理由による。上記構成のシースヒータ20では、内蔵されている抵抗発熱体30等がツルマキ状のコイル構造をしており、そのコイルの後端(開口)には端子用軸40の先端41が当接又は嵌合状をなして接続されており、そのコイルの後端を閉塞している。したがって、このようなコイル構造及び、これに対する端子用軸40の配置条件下で、シースチューブ21の後端側から絶縁粉末60を充填して後方から押込むだけでは、そのコイル構造の内側のみならず巻線相互間にさえも同粉末が入り込み難いことから、望とする充填密度が得られない。それ故、図14−Cに示したように、同粉末60が充填されたシースチューブ21を縮径状に加締めることで、その充填密度の均等、高度化を図っているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−330249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
グロープラグはシースチューブの先端の熱で燃焼室内を過熱するため、シースチューブの先端の温度が最も重要である。しかし、上記したような従来のシースヒータ20においては、シースチューブ21の形状や絶縁粉末の充填密度を向上しても、抵抗発熱体30は先後に伸びるコイル構造を有しているため、発熱領域が軸線方向に長くなり、発熱効率を向上させるには限界があった。
【0012】
上記したように従来のシースヒータ20の構成においては、その製法上、シースチューブ21内に充填した絶縁粉末60を所望とする充填密度にするためには、これを充填した後、別途、独立の工程において、シースチューブ21を、縮径状に加締めて内部の絶縁粉末を圧縮する工程を要していた。このため、その工程分、製造工程が増加、複雑化し、製造コストの増大を招いていたといった問題があった。
【0013】
また、このようなシースヒータ20を製造する工程においては、シースチューブ21内の先端22に抵抗発熱体30を溶接するのに、パイプから、上記したように先端に縮径筒部21sを備えたシースチューブ仕掛品21aを成形しておき、その縮径筒部21s内に抵抗発熱体30の先端線部33bを挿入し、これをその縮径筒部21sと共に溶融する形で溶接していた。一方、このようなシースチューブ仕掛品21aの成形においてその先端に縮径筒部21sを成形する場合には、不可避的にその部分の長さ等の寸法にバラツキ(成形上等の誤差)が発生する。その上に、その後の溶接過程でも、縮径筒部21sを含む部分の溶融量(凝固量)にもバラツキが生じる。こうしたことから、その溶接による溶融金属の凝固後においては、シースチューブ21の先端(底部)22の肉厚に過度のバラツキが生じることがある。他方、グロープラグ用のシースヒータ20はシースチューブ21の先端22が発熱部として重要な役割を果たすところである。したがって、このようなバラツキは、グロープラグとしての発熱性能にバラツキを与えることになる。
【0014】
本発明は、上記したグロープラグをなすシースヒータの構造、及びその製造工程に起因する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は次のようである。
第1には、シースヒータの先端における発熱効率を高める。
第2には、シースチューブ内にその後端の開口から絶縁粉末を充填し、軸線方向に加圧するだけで、絶縁粉末を所望とする充填密度に保持できるようにする。すなわち、その充填密度の確保のためのシースチューブの縮径状の加締め工程を省略し得るようにして、シースヒータを低コストで、効率的に製造できるようにし、結果としてグロープラグの低コスト化を図る。
そして、第3には、シースヒータの発熱性能のバラツキを小さくする。以上の3点が、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するために請求項1に記載の発明は次の通りである。
先端が閉じられたシースチューブと、
前記シースチューブ内に内挿されている通電用の端子用軸と、
前記シースチューブ内に配置され、自身の一端側がシースチューブ内の先端又は先端寄り部位に溶接される一方、他端側は前記端子用軸に電気的に接続され、かつ、通電することにより発熱する抵抗発熱体と、
前記シースチューブ内に充填された絶縁粉末と、
を備えたシースヒータを有してなるグロープラグにおいて、
前記抵抗発熱体は、前記シースチューブ内で、その後端側から見られたときに渦巻き状をなすよう、金属板を巻板相互間に間隔を保持して渦巻き状に形成されてなる渦巻き構造体をなしており、該渦巻き構造体の最外周側に位置する該抵抗発熱体の一端側が、該シースチューブ内の先端又は先端寄り部位に溶接されていることを特徴とするグ。
【0016】
請求項2に記載の発明は、前記渦巻き構造体の最内周側に位置する該抵抗発熱体の他端側は、前記端子用軸の先端又は先端寄り部位に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のグロープラグである。
【0017】
請求項3に記載の発明は、前記渦巻き構造体は、仮想軸の回りに、該仮想軸に垂直な一平面に沿う形で平面的に巻かれた渦巻き状をなしていることを特徴とする請求項1又は2に記載のグロープラグである。請求項4に記載の発明は、前記渦巻き構造体は、該抵抗発熱体の前記一端側から離れて前記他端側に向かう巻板部位ほど、後方に位置する形の渦巻き状をなしていることを特徴とする請求項1又は2に記載のグロープラグである。
【0018】
請求項5に記載の発明は、前記抵抗発熱体の前記一端側と前記シースチューブ内との溶接部位における溶接部通電面積が、この溶接部位よりも内周側に位置する巻板部位の導通断面積より大きく保持されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のグロープラグである。
【0019】
請求項6に記載の発明は、前記抵抗発熱体は、前記一端側に位置する巻板部位の単位長さ当りの抵抗値が、それより内周側に位置する巻板部位の単位長さ当りの抵抗値より大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のグロープラグである。
【0020】
請求項7に記載の発明は、前記端子用軸は、前記抵抗発熱体の前記他端側が電気的に接続されている部位を含む先端寄り部位の横断面積が、それより後方の部位の横断面積に比べて小さく形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のグロープラグである。
【0021】
請求項8に記載の発明は、前記抵抗発熱体は、前記他端側に前記端子用軸が接合された状態で、前記シースチューブ内に位置決め配置されて該シースチューブの先端又は先端寄り部位に溶接される前において、該抵抗発熱体の前記一端側が、該シースチューブの内面にバネ性により押付けられる渦巻きバネに形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のグロープラグである。
【0022】
請求項9に記載の発明は、前記シースヒータが、前記抵抗発熱体の前記他端側に、前記端子用軸の先端又は先端寄り部位を電気的に接続して端子用軸付きの抵抗発熱体を得る工程と、該端子用軸付きの抵抗発熱体を前記シースチューブ内に配置して、前記抵抗発熱体の前記一端側を前記シースチューブ内の先端又は先端寄り部位に溶接する工程と、その後、該シースチューブ内にその後端の開口から絶縁粉末を充填した後、該シースチューブの後端の開口から、該絶縁粉末を先端側に向けて圧縮することで該絶縁粉末を所定の充填密度に保持する工程とを含んで製造されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のグロープラグの製造方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、抵抗発熱体を従来のような、先後に延びるツル巻状のコイル構造ではなく、上記構成のように渦巻き構造体としている。そして、シースチューブ内の先端又は先端寄り部位にその抵抗発熱体の前記一端側を溶接した構成を有しているため、そのシースチューブ内に後端から絶縁粉末を充填して軸方向に所定の圧縮力で圧縮することで、渦巻き構造体をなす抵抗発熱体の巻板相互間も含め、絶縁粉末を所望とする所定の充填密度に保持することができる。したがって、従来のシースヒータの製造におけるような、シースチューブの縮径状の加締め工程を要しない。これにより、シースヒータの製造の効率化、ひいてはグロープラグの低コスト化が図られる。
【0024】
しかも従来のシースヒータでは、背景技術で説明したようにその製造において、シースチューブ内の先端に、コイル構造をなす抵抗発熱体の先端を溶接するため、その溶接前のシースチューブ仕掛品は、先端の半球面部の中心において先方に向けて突出する縮径筒部(穴)のある成形体としておく必要があった。そして、その溶接に際しては、その縮径筒部に抵抗発熱体の先端の小径部を挿入し、これを縮径筒部と共に溶融、凝固させる形で溶接する必要があったことから、溶接後の同チューブの先端(底部)の肉厚にバラツキが生じる結果として発熱性能にバラツキが生じることがあった。これに対し、本発明では、抵抗発熱体の先端を溶接する前のシースチューブは、先端が閉じられたものを使用できる。そして、このような先端が閉じられたシースチューブは、金属板素材から深絞り成形したり、或いは、軸材から押出し成形したりすることで、その先端(底部)の肉厚等についても高い寸法精度のものが容易に成形できる。したがって、このような有底チューブ内に、渦巻き構造体をなす抵抗発熱体を挿入して配置した後は、その最外周側に位置する該抵抗発熱体の一端側を、該シースチューブ内の先端又は先端寄り部位に対し、溶接で容易に溶接できる。その上、その溶接では同チューブの先端の肉厚にバラツキを与えることもないから、発熱性能にバラツキの小さいシースヒータを得ることができる。
【0025】
さらに、本発明の抵抗発熱体は、上記したような渦巻き構造をなしているため、これをシースチューブの先端に近づけて配置することで、シースチューブの先端又は先端寄り部位を集中的かつ効率的に加熱できる。すなわち、本発明によれば、シースヒータの先端における発熱効率を高めることができる。一方、本発明の抵抗発熱体は、請求項1、2に記載のように、シースチューブ内で後端側から見られたときに渦巻き状をなすよう、金属板を巻板相互間に間隔を保持して渦巻き状に形成された渦巻き構造体をなしていればよい。したがって、この渦巻き構造体は請求項4に記載のように、前記一端側から離れて前記他端側に向かう部位ほど、後方に位置する形の渦巻き構造(円錐状の渦巻き構造)をなしているものとしてもよいが、請求項3に記載のように平面的に巻かれた渦巻状に形成した場合には、従来のコイル形状のものに比べて、シースチューブ内の先端又は先端寄り部位に、その抵抗発熱体の全体を集中的に配置できるため、その先端の昇温特性ないし発熱効率を効果的に高めることができる。
【0026】
なお、請求項4に記載のように抵抗発熱体を形成して配置した場合には、端子用軸の先端の、シースチューブの先端からの距離を大きく確保できる。したがって、端子用軸の先端と抵抗発熱体の前記他端側との接合部の高温化を回避することができる。これにより、この接合を溶接による場合でも、ヒータの加熱に基づく破断防止に有効である。
【0027】
また、請求項5に記載のように、前記溶接部通電面積が、この溶接部位よりも内周側に位置する巻板部位の導通断面積より大きく保持されている場合には、溶接部位の抵抗増大を防止できるから、同溶接部位の再溶融による溶断(断線)防止が図られる。
【0028】
そして、請求項6に記載のように抵抗発熱体を形成することで、シースチューブの先端部の内周面側に位置する抵抗発熱体の外周側を効率的かつ迅速に加熱できる。なお、抵抗値を大きくするためには、渦巻き構造体の最外周側に位置する該抵抗発熱体の一端側の導通断面積を他端側のそれより小さくすればよい。したがって、渦巻き構造体をなす抵抗発熱体を、一定厚さの帯板を渦巻状に巻く場合には、最外周側に位置する巻板部位の帯板における幅を小さくすればよい。すなわち、渦巻き構造体をなす抵抗発熱体は、一定厚さ、一定幅の帯板を渦巻状に巻くこととしてもよいが、このように渦巻き構造体の最外周側に位置する該抵抗発熱体の一端側の導通断面積を他端側のそれより小さくなるようにしておくことで、シースチューブの先端部を迅速かつ効率的に加熱できる。
【0029】
請求項7に記載のように前記端子用軸を形成しておくことで、前記抵抗発熱体からの、同軸の後方への熱伝導性を低下させることができるから、その抵抗発熱体の加熱性の低下防止に有効である。なお、端子用軸が充実棒(中実棒)であれば、前記先端寄り部位の外径を、それより後方部位より細くしておけばよい。
【0030】
また、請求項8に記載のように抵抗発熱体を構成し、その最外周側である前記一端部がシースチューブの内面にバネ性により押付けられものとした場合には、その一端側とシースチューブとの溶接がレーザ溶接により容易にできる。このような構成を有する場合には、シースチューブの外部からレーザ光を照射して、その一端側の外向き面とシースチューブの内面とを溶接する際において、別途、両者が接するように保持する手段を要しないためである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のグロープラグの縦断面図、そのシースヒータ部分の拡大図、及びその要部のさらなる拡大図。
【図2】図1のA−A線断面図(後端側から見た図)。
【図3】図2のB−B線断面図。
【図4】図3において絶縁粉末を充填した図。
【図5】端子用軸に対し抵抗発熱体を渦巻状に形成する説明用展開図であり、Aは説明用正面図、Bは説明用平面図。
【図6】抵抗発熱体付きの端子用軸の要部正面図及び部分拡大図。
【図7】シースヒータを製造する工程の説明用断面図。
【図8】シースヒータの別例の要部拡大断面図。
【図9】抵抗発熱体付きの端子用軸の別例の抵抗発熱体の説明用展開図。
【図10】抵抗発熱体付きの端子用軸の別例の抵抗発熱体の説明用展開図。
【図11】抵抗発熱体付きの端子用軸の別例の抵抗発熱体の説明用展開図。
【図12】従来のグロープラグの一例を示す断面図、及びそのシースヒータ部分の拡大図。
【図13】従来のシースヒータの製造工程(抵抗発熱体の溶接まで)の模式的説明図。
【図14】従来のシースヒータの製造工程(抵抗発熱体の溶接後)の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施の形態について図1〜図7に基づいて詳細に説明する。ただし、本形態のグロープラグ1は、そのシースヒータ20の内部構造を除けば、図12に示したものと同様の構成を有する。以下、詳述する。このグロープラグ1は、筒状(円筒状)をなす金具本体(ハウジング)10と、シースヒータ(発熱チューブ)20等からなっている。シースヒータ20は、先端22が閉じられたシースチューブ21と、その内部の抵抗発熱体30などから形成されており、金具本体10の内側に、そのシースチューブ21の先端22側の半分以上を本体10の先端11から突出させた状態で、圧入等により固定されている。金具本体10は、図示しないエンジンヘッドのねじ穴(取付け用ねじ穴)にねじ込み方式で取り付けられるように、その後端寄り部位の外周面にネジ13を備えており、そのネジ13の後方の外周面にはねじ込み用の多角形部(例えば、六角部)15を備えている。また、筒状の金具本体10内には、シースチューブ21内にその後端(後端部)23から内挿された通電用の端子用軸40が同軸状に、同本体10の内周面と絶縁(空間)を保持して配置されている。
【0033】
この端子用軸40は丸棒(中実丸棒)状をなしているが、本例では、その先端(図示下端)41側から、例えば外径1mmの小径部45、それより太い中径部46、そしてさらに後端部42側に向けて太い大径部47と、順次、太くなる異径同芯の丸棒をなし、その後端部42を本体10の後端において後方に突出させている。そして、この軸40の後端寄り部位の大径部47の外周面と、本体10の後端の多角形部15において拡径された内周面との間に、シール材(Oリングパッキン)51、絶縁リング53を配置させ、それより後方に突出する軸の後端部(図示、ダブルハッチング部)42に対し、通電用端子(端子部材)55がその筒状部57を外嵌し、かつ、絶縁リング53の後端を先方に押さえつけた状態で、その筒状部57を縮径状に加締めて固定している。
【0034】
さて次に、このグロープラグ1を構成するシースヒータ20の詳細について説明するが、これは、本例ではステンレス鋼やNi基耐熱合金からなるシースチューブ21と、その内部に配置された抵抗発熱体30等から次のように構成されている。すなわち、シースチューブ21は、先端寄り部位が若干小径に形成された異径円筒状をなし、その先端22が閉じられた有底の円筒形状を呈している。本形態では、先端22をなす底部は平坦形をなして閉じられており、先端寄り部位の小径部24とそれより後方の大径部26とは先細り状のテーパ部25を介して連結されている。
【0035】
抵抗発熱体30は、体積抵抗率:1μΩ・m以上の鉄クロム合金又はニクロム等の高融点金属からなる薄い帯板(厚さ0.1mm、幅1.0mm)31を、渦巻きバネ状に渦巻き形成された渦巻き構造体をなしている(図2〜図5参照)。すなわち、本例では、抵抗発熱体30は、シースチューブ21内で、図2に示したように、その後端23側(軸線G1方向)から見られたときに渦巻き状をなすよう、前記した金属製の帯板を巻板相互間に間隔を保持して、シースチューブ21の軸線G1回りにおいて、その板面相互間である巻板間に微小間隔(0.05〜0.2mm)を保持して、3〜4回、ウズ巻き状に巻かれた渦巻き構造を呈している。ただし、この抵抗発熱体30は、それが自由状態にあるときは、仮想軸の回りに、該仮想軸に垂直な一平面に沿う形で平面的に巻かれた渦巻き状をなしている。なお、この抵抗発熱体30は、23℃の抵抗値を1としたとき、1000℃の抵抗値が0.985〜1.190の範囲にある温度特性の単一材料からなるものとするのが好ましい。
【0036】
この渦巻き構造体をなす抵抗発熱体30は、シースチューブ21内においてその先端(底部)22と微量の間隔で絶縁を保持して配置されている。そして、この渦巻き構造体の最外周側に位置する抵抗発熱体30の一端33の板面は、本例では、シースチューブ21内の内周面27のうち、その先端(底部)22の近傍(先端寄り部位)部位に重ね合わされて、例えばレーザ溶接で、図2中、太線で示した位置において溶接されている。なお前記一端33とシースチューブ21との溶接箇所は、その先端(底部)22であってもよい。すなわち、渦巻き構造体の最外周側に位置する抵抗発熱体30の一端33側を曲げ形成して、この先端(底部)22に接するようにしておいて溶接してもよい。そして、本例では渦巻き構造体の最内周側に位置する抵抗発熱体30の他端35は、図2〜図4に示したように、シースチューブ21内の先端(底部)22と絶縁間隔が保持されている端子用軸40の先端41の近傍(先端寄り部位)の外周面に対し、電流制御用抵抗コイルを介することなく、直接溶接されて電気的に接続されている。なお、この端子用軸40のうち、抵抗発熱体30の他端35側が溶接されている先端部位(図2中の太線部、図5の破線部位)を含む先端寄り部位が、上記もしたが、それより後方の部位より細い(直径1mm)小径部45をなしている。このようなシースヒータ20をなすシースチューブ21内には、一部の図では図示を省略しているが、図1、図4、図7に示したように、耐熱性のある絶縁粉末(MgO)60が所定の充填密度で充填されている。
【0037】
このように、シースチューブ21の内周面27を含む内面と端子用軸40の外面との間、抵抗発熱体30をなす巻板間には絶縁粉末60が充填されている。なお、シースチューブ21の後端部23の内周面と端子用軸40(中径部)の外周面との間には絶縁ゴムチューブからなる筒状の封止材65が配置されている。そして、シースチューブ21の後端部23の外周は、図示はしないが本例では縮径状に加締められており、その後端部23において抵抗発熱体30付きの端子用軸40を固定すると共に、内部の絶縁粉末60を封止している。しかして、このような構成を有するシースヒータ20は、そのシースチューブ21の後端寄り部位(大径部26)を介して本体10内に同軸状に圧入されて固定され、その後で、上記したように、同軸40の後端部にシール材51、絶縁リング53を配置させ、それより後方に突出する軸の後端部42に通電用端子55を加締め固定することでグロープラグ1を構成している。そして、かかる構成を有するグロープラグ1は、端子用軸40の後端部(通電用端子55)と本体10(接地電極)間に通電することで、シースチューブ21内の渦巻き構造体をなす抵抗発熱体30を発熱させ、これによって同チューブ21(シースヒータ20)の先端22部分を加熱するように構成されている。
【0038】
本形態のグロープラグ1においては、それを構成するシースヒータ20が、前記のように構成されているが、その製造、組立は次のようにしてなされる。すなわち、図5に示したように、端子用軸40の小径部45である先端41の近傍(先端寄り部位)の外周面に対し、渦巻き構造体をなすべく帯板31であって、抵抗発熱体30の最内周側となる端部(端部寄り部位)35をあてがって(重ねて)、例えば、破線で示した部分を溶接する(図5−A)。そして、この端子用軸40の回りに抵抗発熱体30をなす帯板31を、図5−Bに示したように、周回状に巻いて渦巻き構造体とする。こうして、図6に示したような渦巻き構造体をなす抵抗発熱体30付きの端子用軸40を形成しておく。なお、このような渦巻き構造体の形成は、端子用軸40への端部35の溶接前に別途、行っておいてもよい。すなわち、渦巻き構造体として形成した後、その最内周側の端部35を、端子用軸40の先端41の近傍(先端寄り部位)の外周面に溶接してもよい。もっとも、電気的に接続されていればよく、したがって、溶接によらずに圧入、カシメ等によって固定することでもよい。
【0039】
次に、こうして得られた抵抗発熱体30付きの端子用軸40を、図7−Aに示したように、先端が閉じられた(有底筒状)形に事前に成形されたシースチューブ21内に挿入する。そして、図7−Bに示したように、その端子用軸40を同心状にしかつ同軸40の先端41を同チューブ21内の先端22から所定量離間するようにして位置決めする。なお、この状態において、抵抗発熱体30の最外周側の一端33が、シースチューブ21の内周面27に接するようにし(図2、図3参照)、この抵抗発熱体30の外周側の端部である一端33の外向き面と、シースチューブ21の先端寄り部位の内周面27とを外部からレーザ溶接する。これより明らかなように、この溶接前においては抵抗発熱体30の前記一端33側が、シースチューブ21の内面に自身のバネ性により押付けられるように、上記渦巻き構造体を渦巻きバネ構造に形成しておくとよい。すなわち、シースチューブ21内に挿入する前の自由状態において、抵抗発熱体30の最外周側の外径がシースチューブ21の先端寄り部位の内径より大きくなるようにしておくとよい。
【0040】
次に、シースチューブ21の先端22を下にして、その後端23である上の開口からシースチューブ21内に絶縁粉末60を所定量注ぎ込み、充填する(図7−C参照)。このとき、抵抗発熱体30はシースチューブ21内において、上記のように、これを後端側から見たとき(図2参照)に渦巻き構造体をなしていることから、絶縁粉末60はその巻板間に入り込むと共に、それより先のシースチューブ21内の先端22にも入り込む(図4参照)。したがって、その後は、充填した絶縁粉末60が所望の充填密度となるように後端23側から先端22側に向けて、例えば、円筒状の押え具70で、絶縁粉末60の後端側を圧縮する(図7−C参照)。こうすることで、絶縁粉末60はその内部において所望とする充填密度に保持される。なお、この圧縮工程に用いる押え具70には、内径が端子用軸40の外径(本例では中径部46の外径)より大きく、外径がシースチューブ21の後端寄り部位の内径より小さい円筒体を用いればよい。かくして、その充填後には、シースチューブ21の後端部23において、端子用軸40との絶縁を保持しつつ絶縁粉末60を封止する封止材65を圧入等により配置することで、シースヒータ20(組立体)が製造、組立られる。なお、端子用軸40の大径部47が、絶縁粉末60の圧縮において干渉するような場合には、大径部47を含む後端寄り部位はその先端を、後工程で中径部46の後端に突合せ溶接すればよい。
【0041】
前記したように本形態をなすシースヒータ20は、抵抗発熱体30が上記のような渦巻き構造体をなしているため、その製造、組立において、シースチューブ21内に充填した絶縁粉末60を所望とする充填密度に保持するためには、これを後端側から、所定の圧縮力で軸方向に圧縮することで可能となる。つまり、本形態の製法によれば、従来のように抵抗発熱体30として先後に延びるツル巻コイル構造のものを用いていないため、絶縁粉末60の充填後に、シースチューブ21をその長手方向にわたり縮径状に加締めるといった工程を省略できる。したがって、そのような工程を要しない分、製造工程が簡略化できるから、シースヒータ20の製造コストの低減が図られる。
【0042】
また、本形態をなすシースヒータ20の製造工程においては、シースチューブ21内における先端22に抵抗発熱体30を溶接するのに、有底筒状に成形されたシースチューブ21内に、抵抗発熱体30を配置、位置決めした後、レーザ溶接するだけでよい。これは、従来のように、先端に縮径筒部を備えたシースチューブ仕掛品を成形しておき、その縮径筒部内に抵抗発熱体(コイル)の先端線部を挿入し、これをその縮径筒部と共に溶融するような溶接工程を要しないことを意味する。したがって、このようなシースチューブ仕掛品の先端の縮径筒部の寸法や、その溶接時の溶融(金属)量のバラツキに起因するシースチューブの先端(底部)の肉厚のバラツキの発生をなくすことができる。つまり、本形態をなすシースヒータ20の製造に用いるシースチューブ21は、先端が閉じられたものとして板素材からの深絞り成形や、軸材からの押出し成形により製造でき、そのような製法によるチューブ21は、先端(底部)22の肉厚精度も含め、高精度に形成できる。その上に、抵抗発熱体30との溶接もレーザ溶接で行えるから、シースヒータ20における先端部の肉厚にバラツキを与えることもない。よって発熱性能にバラツキの小さいシースヒータ20となすことができる。
【0043】
さらに、本形態では、抵抗発熱体30がシースチューブ21内において先後に延びることなく、その先端22の近傍に集中して配置されるものとなる。このため、従来のように、それが先後に延びるコイル構造のものに比べて、シースヒータ20をなすシースチューブ21の先端又は先端寄り部位を集中的かつ効率的に加熱できる。その結果、消費電力の低減も図られる。
【0044】
また、上記形態では、端子用軸40のうち、抵抗発熱体30の他端35側が溶接されている先端部位を含む部位が、それより後方の部位より細い小径部45をなしている。このため、端子用軸40の後方への熱伝導の防止効果が高く、したがって、シースヒータ20の発熱効率の低減防止が図られる。
【0045】
さて、次に本発明のグロープラグ1の別例について、図8に基づいて説明する。ただし、本例のものはシースヒータ20をなすシースチューブ21内に設けられた抵抗発熱体30の構成が上記形態のものと異なるのみであるため、その相違点のみ説明する。すなわち、本発明における渦巻き構造体をなす抵抗発熱体30は、シースチューブ21内で、その後端側から見られたときに渦巻き状をなすよう、帯板などの金属板を巻板相互間に間隔を保持して渦巻き状に形成されてなる渦巻き構造体をなしておればよい。上記形態ではその典型例として、帯板31を平面で渦巻状に巻いた渦巻きバネ構造のもとした。すなわち、その抵抗発熱体30の一端33側と他端35側とが、仮想軸の先後において同位置又は略同位置にあるもの、すなわち、仮想軸の回りに、該仮想軸に垂直な一平面に沿う形で平面的に巻かれた渦巻き状のものを例示した。
【0046】
これに対して本例では、図8に示したように、渦巻き構造体をなす抵抗発熱体30を、その前記一端33側から離れて前記他端35側に向かう巻板部位ほど、後方に位置する形の渦巻き状をなしているものとしたものである。このような構成とした場合には、抵抗発熱体30の最内周側である他端35側を、高温となるシースチューブ21の先端22から遠ざけることができる。このため、この他端35側に端子用軸40を溶接で接合した場合においても、その溶接部位の再溶融による溶断防止(分離)が図られる。なお、このような渦巻き構造体は、上記した帯板31を平面で渦巻状に巻いた渦巻きバネ構造のものとして成形しておき、その一端33をシースチューブ21の内周面に溶接した後、その他端35が溶接等で固定された端子用軸40を後方に移動するようにしても、それを構成できる。
【0047】
上記各例の抵抗発熱体30は、一定幅で一定厚さを有する帯板31を渦巻状に巻いた渦巻き構造体としたものを例示しているが、本発明の抵抗発熱体30はこのようなものに限定されるものではない。例えば、図9に渦巻き形成前の展開状態で示したように、このような抵抗発熱体30のうち、巻板をなす中間部位38を他端35側よりも幅狭に形成しておき、他端35側よりも渦巻き構造体の外側に位置する部位の抵抗値を大きくすることができる。このようにすれば、比較的外側に位置する中間部位38を、その内側に配置された他端35側の部位よりも優先的に発熱させることができ、容易に渦巻き構造体の発熱効率を向上することができる。さらに、抵抗発熱体30のうち、その一端33側である、前記シースチューブ21内面との溶接部位となる部位を、巻板をなす中間部位38より帯板の幅を幅広に形成しておき、この幅広の一端33側の部位をシースチューブ21内面に重ねて溶接するのが好ましい。このようにすれば、巻板をなす中間部位38より、図中、破線で示したように導通断面積が大きい溶接部通電面積が得られるためである。すなわち、このような最外周部位となる抵抗発熱体30の一端33は最高温に発熱されるべき部位であるが、このように形成しておくことで、その一端33とシースチューブ21の内面との溶接部位における抵抗値(導通抵抗)の過大、高温化による、破断・溶断(溶接分離)を防止できるためである。なお、端子用軸40に対する他端35部の電気的な接続を溶接による場合も同様のことが言えるため、帯板31におけるその他端35も、溶接部通電面積が大きく確保できるように、同図に示したように帯板31の幅を中間部位38より広くしておくのが好ましい。
【0048】
なお、上記各例の抵抗発熱体30は、両端部を除いて一定幅で、一定厚さを有する帯板31を渦巻状に巻いてなる渦巻き構造体としたものを例示しているが、一定厚さの金属板を用いる場合では、前記一端側(渦巻き構造体の最外周側)に位置する巻板部位の幅が、それより内周側(端子用軸40側)に位置する巻板部位の幅より、実質的に小さくなるように形成しておいておくと、シースヒータとしての発熱効率が高められる。このように形成しておけば、前記一端側に位置する巻板部位の単位長さ当りの抵抗値が、それより内周側に位置する巻板部位の単位長さ当りの抵抗値より大きくなるため、シースチューブの先端部の内周面に近接する部位に位置することとなる抵抗発熱体の外周側を迅速に高温にできるためである。
【0049】
因みに、このように前記一端側(最外周側)に位置する巻板部位の抵抗値を大きくするには、一定厚さの金属帯板を巻いた抵抗発熱体では、その渦巻き構造体における最外周側に位置する部位の幅が、最内周側に位置する部位(端子用軸側に位置する巻板部位)の幅より実質的に狭くなるように、図10の展開図に示したように、帯板31を最外周の一端33寄り部位から最内周側にむかう所定範囲の部位にわたり、ハシゴ状に孔(例えば四角孔)39を複数打抜き形成しておいておくとよい。このようにしておけば、抵抗発熱体の素材として帯板を用いることができるためである。なお、孔39相互間はリブとして機能するため、渦巻き構造体を安定させる役割を果たすことができる。また、図11の展開図に示したように最外周の一端33寄り部位ほど幅が次第に狭くなる帯板状の金属板を素材とし、これらを巻いて渦巻き構造体としてもよい。なお、この場合にも抵抗発熱体30の一端33をなす、前記シースチューブ21の内面との溶接部位となる部位は、巻板をなす中間部位より帯板の幅を幅広に形成しておき、その溶接部位が、図中、破線で示したように導通断面積が大きい溶接部通電面積が得られるようにしておくのが好ましい。
【0050】
本発明は上記した内容のものに限定されるものではなく、適宜に変更して具体化できる。例えば、渦巻き構造体をなす抵抗発熱体の他端側と、端子用軸との電気的な接続は上記もしたように圧入又はカシメによってもよい。なお、抵抗発熱体の他端側を電気的に接続すべき、端子用軸の部位は、その先端に近い部位とするのが好ましいが、その先端から離れていてもよい。また、抵抗発熱体の一端(最外周側の端)側をシースチューブに溶接する箇所は上記各形態ではシースチューブの先端寄り部位の内周面(チューブ壁面)としたが、これは上記もしたようにシースチューブの先端(底部)であってもよいし、その両者に跨っていてもよい。これが、本願発明において、抵抗発熱体の一端側が溶接される箇所が、シースチューブ内の先端又は先端寄り部位としている理由である。
【符号の説明】
【0051】
1 グロープラグ
20 シースヒータ
21 シースチューブ
22 シースチューブの先端
23 シースチューブの後端部
30 抵抗発熱体
33 渦巻き構造体の最外周側に位置する該抵抗発熱体の一端
35 渦巻き構造体の最内周側に位置する該抵抗発熱体の他端
40 端子用軸
41 端子用軸の先端
60 絶縁粉末
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの始動促進(予備加熱)のために使用されるグロープラグ及びグロープラグの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなグロープラグとしては図12に示した構造のものがある(特許文献1)。このグロープラグ1は、筒状をなし、エンジンヘッド(図示せず)にねじ込み方式で固定されるように外周面にネジ13を備えた筒状の金具本体(以下、単に本体ともいう)10、及びその内側に固定されたシースヒータ(電熱式シースヒータ)20等を主体として構成されている。このシースヒータ20は、それをなすシースチューブ21の先端22側(図12では先端側の半分程度)を本体10の先端11から突出させる配置で固定されている。シースヒータ20は、詳細は後述するが、先端22が閉じられたシースチューブ21内に通電することで発熱するコイル状の抵抗発熱体30をその一端(先端)33を同チューブの先端22に溶接した形で内蔵している。他方、金具本体10の内側(中空部)には、このシースチューブ21の後端23寄り部位に先端側が内挿されて固定された通電用の端子用軸(金属軸)40が配置されている。この端子用軸40は、その先端41を介して抵抗発熱体30に電気的に接続されており、その後端を、本体10の後端において絶縁を保持して固定されている。すなわち、端子用軸40の後端は本体10の後端より突出しており、その後端寄り部位には、Oリングパッキン51及び絶縁リング53が外嵌されており、これらを本体10の後端のねじ込み用の多角形部15の内周側に配置している。そして、この配置状態で、通電用端子55におけるその筒状部57を、その軸40の後端部に外嵌してその先端側のフランジで、絶縁リング53を押さえつけた状態の下で、外周面を縮径状に加締めることで、グロープラグ1として組立てられている。なお、本願書類において、グロープラグ1、及びそれを構成するシースヒータ20、その他の構成部品に関して、先端とは、図12におけるそれらの下方の端をいい、後端とはその逆(上方)の端を言う。
【0003】
ところで、このようなグロープラグ1をなすシースヒータ20自体の詳細な構成は次のようである。すなわち、同ヒータ20は、ステンレス鋼やNi基耐熱合金からなるシースチューブ21と、上記したようにその内部に先端33が溶接されて配置された抵抗発熱体(コイル)30等から次のように構成されている。すなわち、シースチューブ21は、先端22が凸となす略半球面状に形成された有底の円筒形状を呈している。そして、抵抗発熱体(発熱コイル)30は鉄クロム合金やニクロム等からなり、同図のものでは、その金属線(横断面が円形の線)から、円筒形で、所定長さを有するツル巻き状(螺旋状)のコイルばね構造を呈している。なお、同図のシースヒータ20では、抵抗発熱体30の後端に、抵抗温度係数が正で大きい値を有する金属(例えばコバルト鉄合金)製の電流制御用抵抗コイル(抵抗発熱体のコイルと逆巻で図示)32が直列で接続(溶接)されている。これにより同図のものでは、シースチューブ21内においてその後端の開口から内挿された端子用軸40の先端41が、その電流制御用抵抗コイル32の後端に溶接で接続されており、この端子用軸40と金具本体10間に通電することで、抵抗発熱体30を昇温させる構成とされている。なお、シースチューブ21は全長にわたり同径(ストレート)のものもあるが、図12に示したものは、先端寄り部位が細い異径の円筒形状を呈している。
【0004】
このようなシースチューブ21内には、図の複雑化を避けるために図示はしていないが実際には電気絶縁性及び耐熱性のあるセラミック(例えば、MgO)の粉末(絶縁粉末)が充填されている。これにより、シースチューブ21の内面と、抵抗発熱体等をなすコイル(以下、単にコイルとも言う)や端子用軸40との間、及びコイル自体をなす巻線同士における先後の電気的絶縁が確保されていると共に、これらをシースチューブ21内に安定して固定させている。なお、このような固定の確保のため、同チューブ21内の絶縁粉末は圧縮され、所定の充填密度が保持されている。そして、このようなシースチューブ21の後端23寄り部位の内周面と、端子用軸40の外周面との間には、絶縁材からなる筒状(又は環状)の封止材(例えば、耐熱ゴムチューブ)65が介挿され、その間の絶縁を保持しつつ、この封止材65より先のチューブ21内(絶縁粉末)を封止(シール)している。
【0005】
ところで、上記した構成のシースヒータ20は、次のような工程を経て製造ないし組み立てられる。図13に模式的に示した製造工程図に基づいて説明する。すなわち、シースチューブ21用に、図13−Aに示したように、両端が開口されたパイプ(円管)から多数の成形過程を経て、その下端部(シースチューブ21の先端となる部位)を半球面部を有するように絞り成形すると共に、その半球面部の先端中央に、そのパイプと同心で縮径し、先方に向けて突出する縮径筒部21sを形成してシースチューブ仕掛品21aを成形しておく。一方、抵抗発熱体(発熱コイル)30は、図13−B(左)に示したように、その先端部分の一部を、小径部33bとして形成しておく。そして、その発熱コイルの後方に電流制御用抵抗コイル32を接続しておき、その後端に端子用軸40の先端を溶接しておき、端子用軸付きのコイル(抵抗発熱体)組立体を形成しておく。
【0006】
次いで、この端子用軸付きのコイル組立体を、図13−B,Cに示したように、上記シースチューブ仕掛品(抵抗発熱体の溶接前のシースチューブ)21a内に、その後端の開口から挿入し、先端の小径部33bを縮径筒部内(穴)21sに挿入する(図13−C参照)。そして、その状態の下で、その縮径筒部21sと共に小径部33bを溶接により溶融して凝固させる。こうすることで、図13−Dに示したように、その先端部分の溶融、凝固により、シースチューブ仕掛品21aはその先端が塞がれるともに、抵抗発熱体(コイル)30の先端33はシースチューブ21内の先端22に溶接され、端子用軸付きのシースヒータ仕掛品20aとなる。
【0007】
こうして得られたシースヒータ仕掛品20aは、図14−Aに示したものとなるが、その後は、図14−Bに示したように、同チューブ21の後端の開口(チューブ後端23の内周面と端子用軸40の外周面との隙間)から、同チューブ21内に所定量の絶縁粉末60を注ぎ込み、充填する。その後、図14−Cに示したように、この状態のシースチューブ21の後端寄り部位の内周面と、端子用軸40の外周面との間に上記した筒状の封止材65を介在させる。
【0008】
次に、絶縁粉末60の充填密度を所定値に高めるため、別途、独立の工程において、図14−C中の横向き矢印で記したように、シースチューブ21を縮径状(径方向)に加締める加工をする(スウェージング加工をする)。こうして、内部の絶縁粉末60を所望とする充填密度にする。かくては、これを上記した金具本体10の内側に圧入等し、上記したようなグロープラグ1として組立てられる。
【0009】
ところで、上記の端子用軸40付きのシースヒータ20の製造工程において、シースチューブ21を縮径状に加締めているが、これは、シースチューブ21内にその後端23の開口から絶縁粉末60を充填して、それを後方から単に軸線G1方向に押込む(加圧する)だけでは、絶縁粉末60がその内部において均一又は所望とする充填密度が得られないためである。これは次の理由による。上記構成のシースヒータ20では、内蔵されている抵抗発熱体30等がツルマキ状のコイル構造をしており、そのコイルの後端(開口)には端子用軸40の先端41が当接又は嵌合状をなして接続されており、そのコイルの後端を閉塞している。したがって、このようなコイル構造及び、これに対する端子用軸40の配置条件下で、シースチューブ21の後端側から絶縁粉末60を充填して後方から押込むだけでは、そのコイル構造の内側のみならず巻線相互間にさえも同粉末が入り込み難いことから、望とする充填密度が得られない。それ故、図14−Cに示したように、同粉末60が充填されたシースチューブ21を縮径状に加締めることで、その充填密度の均等、高度化を図っているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−330249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
グロープラグはシースチューブの先端の熱で燃焼室内を過熱するため、シースチューブの先端の温度が最も重要である。しかし、上記したような従来のシースヒータ20においては、シースチューブ21の形状や絶縁粉末の充填密度を向上しても、抵抗発熱体30は先後に伸びるコイル構造を有しているため、発熱領域が軸線方向に長くなり、発熱効率を向上させるには限界があった。
【0012】
上記したように従来のシースヒータ20の構成においては、その製法上、シースチューブ21内に充填した絶縁粉末60を所望とする充填密度にするためには、これを充填した後、別途、独立の工程において、シースチューブ21を、縮径状に加締めて内部の絶縁粉末を圧縮する工程を要していた。このため、その工程分、製造工程が増加、複雑化し、製造コストの増大を招いていたといった問題があった。
【0013】
また、このようなシースヒータ20を製造する工程においては、シースチューブ21内の先端22に抵抗発熱体30を溶接するのに、パイプから、上記したように先端に縮径筒部21sを備えたシースチューブ仕掛品21aを成形しておき、その縮径筒部21s内に抵抗発熱体30の先端線部33bを挿入し、これをその縮径筒部21sと共に溶融する形で溶接していた。一方、このようなシースチューブ仕掛品21aの成形においてその先端に縮径筒部21sを成形する場合には、不可避的にその部分の長さ等の寸法にバラツキ(成形上等の誤差)が発生する。その上に、その後の溶接過程でも、縮径筒部21sを含む部分の溶融量(凝固量)にもバラツキが生じる。こうしたことから、その溶接による溶融金属の凝固後においては、シースチューブ21の先端(底部)22の肉厚に過度のバラツキが生じることがある。他方、グロープラグ用のシースヒータ20はシースチューブ21の先端22が発熱部として重要な役割を果たすところである。したがって、このようなバラツキは、グロープラグとしての発熱性能にバラツキを与えることになる。
【0014】
本発明は、上記したグロープラグをなすシースヒータの構造、及びその製造工程に起因する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は次のようである。
第1には、シースヒータの先端における発熱効率を高める。
第2には、シースチューブ内にその後端の開口から絶縁粉末を充填し、軸線方向に加圧するだけで、絶縁粉末を所望とする充填密度に保持できるようにする。すなわち、その充填密度の確保のためのシースチューブの縮径状の加締め工程を省略し得るようにして、シースヒータを低コストで、効率的に製造できるようにし、結果としてグロープラグの低コスト化を図る。
そして、第3には、シースヒータの発熱性能のバラツキを小さくする。以上の3点が、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するために請求項1に記載の発明は次の通りである。
先端が閉じられたシースチューブと、
前記シースチューブ内に内挿されている通電用の端子用軸と、
前記シースチューブ内に配置され、自身の一端側がシースチューブ内の先端又は先端寄り部位に溶接される一方、他端側は前記端子用軸に電気的に接続され、かつ、通電することにより発熱する抵抗発熱体と、
前記シースチューブ内に充填された絶縁粉末と、
を備えたシースヒータを有してなるグロープラグにおいて、
前記抵抗発熱体は、前記シースチューブ内で、その後端側から見られたときに渦巻き状をなすよう、金属板を巻板相互間に間隔を保持して渦巻き状に形成されてなる渦巻き構造体をなしており、該渦巻き構造体の最外周側に位置する該抵抗発熱体の一端側が、該シースチューブ内の先端又は先端寄り部位に溶接されていることを特徴とするグ。
【0016】
請求項2に記載の発明は、前記渦巻き構造体の最内周側に位置する該抵抗発熱体の他端側は、前記端子用軸の先端又は先端寄り部位に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のグロープラグである。
【0017】
請求項3に記載の発明は、前記渦巻き構造体は、仮想軸の回りに、該仮想軸に垂直な一平面に沿う形で平面的に巻かれた渦巻き状をなしていることを特徴とする請求項1又は2に記載のグロープラグである。請求項4に記載の発明は、前記渦巻き構造体は、該抵抗発熱体の前記一端側から離れて前記他端側に向かう巻板部位ほど、後方に位置する形の渦巻き状をなしていることを特徴とする請求項1又は2に記載のグロープラグである。
【0018】
請求項5に記載の発明は、前記抵抗発熱体の前記一端側と前記シースチューブ内との溶接部位における溶接部通電面積が、この溶接部位よりも内周側に位置する巻板部位の導通断面積より大きく保持されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のグロープラグである。
【0019】
請求項6に記載の発明は、前記抵抗発熱体は、前記一端側に位置する巻板部位の単位長さ当りの抵抗値が、それより内周側に位置する巻板部位の単位長さ当りの抵抗値より大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のグロープラグである。
【0020】
請求項7に記載の発明は、前記端子用軸は、前記抵抗発熱体の前記他端側が電気的に接続されている部位を含む先端寄り部位の横断面積が、それより後方の部位の横断面積に比べて小さく形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のグロープラグである。
【0021】
請求項8に記載の発明は、前記抵抗発熱体は、前記他端側に前記端子用軸が接合された状態で、前記シースチューブ内に位置決め配置されて該シースチューブの先端又は先端寄り部位に溶接される前において、該抵抗発熱体の前記一端側が、該シースチューブの内面にバネ性により押付けられる渦巻きバネに形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のグロープラグである。
【0022】
請求項9に記載の発明は、前記シースヒータが、前記抵抗発熱体の前記他端側に、前記端子用軸の先端又は先端寄り部位を電気的に接続して端子用軸付きの抵抗発熱体を得る工程と、該端子用軸付きの抵抗発熱体を前記シースチューブ内に配置して、前記抵抗発熱体の前記一端側を前記シースチューブ内の先端又は先端寄り部位に溶接する工程と、その後、該シースチューブ内にその後端の開口から絶縁粉末を充填した後、該シースチューブの後端の開口から、該絶縁粉末を先端側に向けて圧縮することで該絶縁粉末を所定の充填密度に保持する工程とを含んで製造されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のグロープラグの製造方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、抵抗発熱体を従来のような、先後に延びるツル巻状のコイル構造ではなく、上記構成のように渦巻き構造体としている。そして、シースチューブ内の先端又は先端寄り部位にその抵抗発熱体の前記一端側を溶接した構成を有しているため、そのシースチューブ内に後端から絶縁粉末を充填して軸方向に所定の圧縮力で圧縮することで、渦巻き構造体をなす抵抗発熱体の巻板相互間も含め、絶縁粉末を所望とする所定の充填密度に保持することができる。したがって、従来のシースヒータの製造におけるような、シースチューブの縮径状の加締め工程を要しない。これにより、シースヒータの製造の効率化、ひいてはグロープラグの低コスト化が図られる。
【0024】
しかも従来のシースヒータでは、背景技術で説明したようにその製造において、シースチューブ内の先端に、コイル構造をなす抵抗発熱体の先端を溶接するため、その溶接前のシースチューブ仕掛品は、先端の半球面部の中心において先方に向けて突出する縮径筒部(穴)のある成形体としておく必要があった。そして、その溶接に際しては、その縮径筒部に抵抗発熱体の先端の小径部を挿入し、これを縮径筒部と共に溶融、凝固させる形で溶接する必要があったことから、溶接後の同チューブの先端(底部)の肉厚にバラツキが生じる結果として発熱性能にバラツキが生じることがあった。これに対し、本発明では、抵抗発熱体の先端を溶接する前のシースチューブは、先端が閉じられたものを使用できる。そして、このような先端が閉じられたシースチューブは、金属板素材から深絞り成形したり、或いは、軸材から押出し成形したりすることで、その先端(底部)の肉厚等についても高い寸法精度のものが容易に成形できる。したがって、このような有底チューブ内に、渦巻き構造体をなす抵抗発熱体を挿入して配置した後は、その最外周側に位置する該抵抗発熱体の一端側を、該シースチューブ内の先端又は先端寄り部位に対し、溶接で容易に溶接できる。その上、その溶接では同チューブの先端の肉厚にバラツキを与えることもないから、発熱性能にバラツキの小さいシースヒータを得ることができる。
【0025】
さらに、本発明の抵抗発熱体は、上記したような渦巻き構造をなしているため、これをシースチューブの先端に近づけて配置することで、シースチューブの先端又は先端寄り部位を集中的かつ効率的に加熱できる。すなわち、本発明によれば、シースヒータの先端における発熱効率を高めることができる。一方、本発明の抵抗発熱体は、請求項1、2に記載のように、シースチューブ内で後端側から見られたときに渦巻き状をなすよう、金属板を巻板相互間に間隔を保持して渦巻き状に形成された渦巻き構造体をなしていればよい。したがって、この渦巻き構造体は請求項4に記載のように、前記一端側から離れて前記他端側に向かう部位ほど、後方に位置する形の渦巻き構造(円錐状の渦巻き構造)をなしているものとしてもよいが、請求項3に記載のように平面的に巻かれた渦巻状に形成した場合には、従来のコイル形状のものに比べて、シースチューブ内の先端又は先端寄り部位に、その抵抗発熱体の全体を集中的に配置できるため、その先端の昇温特性ないし発熱効率を効果的に高めることができる。
【0026】
なお、請求項4に記載のように抵抗発熱体を形成して配置した場合には、端子用軸の先端の、シースチューブの先端からの距離を大きく確保できる。したがって、端子用軸の先端と抵抗発熱体の前記他端側との接合部の高温化を回避することができる。これにより、この接合を溶接による場合でも、ヒータの加熱に基づく破断防止に有効である。
【0027】
また、請求項5に記載のように、前記溶接部通電面積が、この溶接部位よりも内周側に位置する巻板部位の導通断面積より大きく保持されている場合には、溶接部位の抵抗増大を防止できるから、同溶接部位の再溶融による溶断(断線)防止が図られる。
【0028】
そして、請求項6に記載のように抵抗発熱体を形成することで、シースチューブの先端部の内周面側に位置する抵抗発熱体の外周側を効率的かつ迅速に加熱できる。なお、抵抗値を大きくするためには、渦巻き構造体の最外周側に位置する該抵抗発熱体の一端側の導通断面積を他端側のそれより小さくすればよい。したがって、渦巻き構造体をなす抵抗発熱体を、一定厚さの帯板を渦巻状に巻く場合には、最外周側に位置する巻板部位の帯板における幅を小さくすればよい。すなわち、渦巻き構造体をなす抵抗発熱体は、一定厚さ、一定幅の帯板を渦巻状に巻くこととしてもよいが、このように渦巻き構造体の最外周側に位置する該抵抗発熱体の一端側の導通断面積を他端側のそれより小さくなるようにしておくことで、シースチューブの先端部を迅速かつ効率的に加熱できる。
【0029】
請求項7に記載のように前記端子用軸を形成しておくことで、前記抵抗発熱体からの、同軸の後方への熱伝導性を低下させることができるから、その抵抗発熱体の加熱性の低下防止に有効である。なお、端子用軸が充実棒(中実棒)であれば、前記先端寄り部位の外径を、それより後方部位より細くしておけばよい。
【0030】
また、請求項8に記載のように抵抗発熱体を構成し、その最外周側である前記一端部がシースチューブの内面にバネ性により押付けられものとした場合には、その一端側とシースチューブとの溶接がレーザ溶接により容易にできる。このような構成を有する場合には、シースチューブの外部からレーザ光を照射して、その一端側の外向き面とシースチューブの内面とを溶接する際において、別途、両者が接するように保持する手段を要しないためである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のグロープラグの縦断面図、そのシースヒータ部分の拡大図、及びその要部のさらなる拡大図。
【図2】図1のA−A線断面図(後端側から見た図)。
【図3】図2のB−B線断面図。
【図4】図3において絶縁粉末を充填した図。
【図5】端子用軸に対し抵抗発熱体を渦巻状に形成する説明用展開図であり、Aは説明用正面図、Bは説明用平面図。
【図6】抵抗発熱体付きの端子用軸の要部正面図及び部分拡大図。
【図7】シースヒータを製造する工程の説明用断面図。
【図8】シースヒータの別例の要部拡大断面図。
【図9】抵抗発熱体付きの端子用軸の別例の抵抗発熱体の説明用展開図。
【図10】抵抗発熱体付きの端子用軸の別例の抵抗発熱体の説明用展開図。
【図11】抵抗発熱体付きの端子用軸の別例の抵抗発熱体の説明用展開図。
【図12】従来のグロープラグの一例を示す断面図、及びそのシースヒータ部分の拡大図。
【図13】従来のシースヒータの製造工程(抵抗発熱体の溶接まで)の模式的説明図。
【図14】従来のシースヒータの製造工程(抵抗発熱体の溶接後)の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施の形態について図1〜図7に基づいて詳細に説明する。ただし、本形態のグロープラグ1は、そのシースヒータ20の内部構造を除けば、図12に示したものと同様の構成を有する。以下、詳述する。このグロープラグ1は、筒状(円筒状)をなす金具本体(ハウジング)10と、シースヒータ(発熱チューブ)20等からなっている。シースヒータ20は、先端22が閉じられたシースチューブ21と、その内部の抵抗発熱体30などから形成されており、金具本体10の内側に、そのシースチューブ21の先端22側の半分以上を本体10の先端11から突出させた状態で、圧入等により固定されている。金具本体10は、図示しないエンジンヘッドのねじ穴(取付け用ねじ穴)にねじ込み方式で取り付けられるように、その後端寄り部位の外周面にネジ13を備えており、そのネジ13の後方の外周面にはねじ込み用の多角形部(例えば、六角部)15を備えている。また、筒状の金具本体10内には、シースチューブ21内にその後端(後端部)23から内挿された通電用の端子用軸40が同軸状に、同本体10の内周面と絶縁(空間)を保持して配置されている。
【0033】
この端子用軸40は丸棒(中実丸棒)状をなしているが、本例では、その先端(図示下端)41側から、例えば外径1mmの小径部45、それより太い中径部46、そしてさらに後端部42側に向けて太い大径部47と、順次、太くなる異径同芯の丸棒をなし、その後端部42を本体10の後端において後方に突出させている。そして、この軸40の後端寄り部位の大径部47の外周面と、本体10の後端の多角形部15において拡径された内周面との間に、シール材(Oリングパッキン)51、絶縁リング53を配置させ、それより後方に突出する軸の後端部(図示、ダブルハッチング部)42に対し、通電用端子(端子部材)55がその筒状部57を外嵌し、かつ、絶縁リング53の後端を先方に押さえつけた状態で、その筒状部57を縮径状に加締めて固定している。
【0034】
さて次に、このグロープラグ1を構成するシースヒータ20の詳細について説明するが、これは、本例ではステンレス鋼やNi基耐熱合金からなるシースチューブ21と、その内部に配置された抵抗発熱体30等から次のように構成されている。すなわち、シースチューブ21は、先端寄り部位が若干小径に形成された異径円筒状をなし、その先端22が閉じられた有底の円筒形状を呈している。本形態では、先端22をなす底部は平坦形をなして閉じられており、先端寄り部位の小径部24とそれより後方の大径部26とは先細り状のテーパ部25を介して連結されている。
【0035】
抵抗発熱体30は、体積抵抗率:1μΩ・m以上の鉄クロム合金又はニクロム等の高融点金属からなる薄い帯板(厚さ0.1mm、幅1.0mm)31を、渦巻きバネ状に渦巻き形成された渦巻き構造体をなしている(図2〜図5参照)。すなわち、本例では、抵抗発熱体30は、シースチューブ21内で、図2に示したように、その後端23側(軸線G1方向)から見られたときに渦巻き状をなすよう、前記した金属製の帯板を巻板相互間に間隔を保持して、シースチューブ21の軸線G1回りにおいて、その板面相互間である巻板間に微小間隔(0.05〜0.2mm)を保持して、3〜4回、ウズ巻き状に巻かれた渦巻き構造を呈している。ただし、この抵抗発熱体30は、それが自由状態にあるときは、仮想軸の回りに、該仮想軸に垂直な一平面に沿う形で平面的に巻かれた渦巻き状をなしている。なお、この抵抗発熱体30は、23℃の抵抗値を1としたとき、1000℃の抵抗値が0.985〜1.190の範囲にある温度特性の単一材料からなるものとするのが好ましい。
【0036】
この渦巻き構造体をなす抵抗発熱体30は、シースチューブ21内においてその先端(底部)22と微量の間隔で絶縁を保持して配置されている。そして、この渦巻き構造体の最外周側に位置する抵抗発熱体30の一端33の板面は、本例では、シースチューブ21内の内周面27のうち、その先端(底部)22の近傍(先端寄り部位)部位に重ね合わされて、例えばレーザ溶接で、図2中、太線で示した位置において溶接されている。なお前記一端33とシースチューブ21との溶接箇所は、その先端(底部)22であってもよい。すなわち、渦巻き構造体の最外周側に位置する抵抗発熱体30の一端33側を曲げ形成して、この先端(底部)22に接するようにしておいて溶接してもよい。そして、本例では渦巻き構造体の最内周側に位置する抵抗発熱体30の他端35は、図2〜図4に示したように、シースチューブ21内の先端(底部)22と絶縁間隔が保持されている端子用軸40の先端41の近傍(先端寄り部位)の外周面に対し、電流制御用抵抗コイルを介することなく、直接溶接されて電気的に接続されている。なお、この端子用軸40のうち、抵抗発熱体30の他端35側が溶接されている先端部位(図2中の太線部、図5の破線部位)を含む先端寄り部位が、上記もしたが、それより後方の部位より細い(直径1mm)小径部45をなしている。このようなシースヒータ20をなすシースチューブ21内には、一部の図では図示を省略しているが、図1、図4、図7に示したように、耐熱性のある絶縁粉末(MgO)60が所定の充填密度で充填されている。
【0037】
このように、シースチューブ21の内周面27を含む内面と端子用軸40の外面との間、抵抗発熱体30をなす巻板間には絶縁粉末60が充填されている。なお、シースチューブ21の後端部23の内周面と端子用軸40(中径部)の外周面との間には絶縁ゴムチューブからなる筒状の封止材65が配置されている。そして、シースチューブ21の後端部23の外周は、図示はしないが本例では縮径状に加締められており、その後端部23において抵抗発熱体30付きの端子用軸40を固定すると共に、内部の絶縁粉末60を封止している。しかして、このような構成を有するシースヒータ20は、そのシースチューブ21の後端寄り部位(大径部26)を介して本体10内に同軸状に圧入されて固定され、その後で、上記したように、同軸40の後端部にシール材51、絶縁リング53を配置させ、それより後方に突出する軸の後端部42に通電用端子55を加締め固定することでグロープラグ1を構成している。そして、かかる構成を有するグロープラグ1は、端子用軸40の後端部(通電用端子55)と本体10(接地電極)間に通電することで、シースチューブ21内の渦巻き構造体をなす抵抗発熱体30を発熱させ、これによって同チューブ21(シースヒータ20)の先端22部分を加熱するように構成されている。
【0038】
本形態のグロープラグ1においては、それを構成するシースヒータ20が、前記のように構成されているが、その製造、組立は次のようにしてなされる。すなわち、図5に示したように、端子用軸40の小径部45である先端41の近傍(先端寄り部位)の外周面に対し、渦巻き構造体をなすべく帯板31であって、抵抗発熱体30の最内周側となる端部(端部寄り部位)35をあてがって(重ねて)、例えば、破線で示した部分を溶接する(図5−A)。そして、この端子用軸40の回りに抵抗発熱体30をなす帯板31を、図5−Bに示したように、周回状に巻いて渦巻き構造体とする。こうして、図6に示したような渦巻き構造体をなす抵抗発熱体30付きの端子用軸40を形成しておく。なお、このような渦巻き構造体の形成は、端子用軸40への端部35の溶接前に別途、行っておいてもよい。すなわち、渦巻き構造体として形成した後、その最内周側の端部35を、端子用軸40の先端41の近傍(先端寄り部位)の外周面に溶接してもよい。もっとも、電気的に接続されていればよく、したがって、溶接によらずに圧入、カシメ等によって固定することでもよい。
【0039】
次に、こうして得られた抵抗発熱体30付きの端子用軸40を、図7−Aに示したように、先端が閉じられた(有底筒状)形に事前に成形されたシースチューブ21内に挿入する。そして、図7−Bに示したように、その端子用軸40を同心状にしかつ同軸40の先端41を同チューブ21内の先端22から所定量離間するようにして位置決めする。なお、この状態において、抵抗発熱体30の最外周側の一端33が、シースチューブ21の内周面27に接するようにし(図2、図3参照)、この抵抗発熱体30の外周側の端部である一端33の外向き面と、シースチューブ21の先端寄り部位の内周面27とを外部からレーザ溶接する。これより明らかなように、この溶接前においては抵抗発熱体30の前記一端33側が、シースチューブ21の内面に自身のバネ性により押付けられるように、上記渦巻き構造体を渦巻きバネ構造に形成しておくとよい。すなわち、シースチューブ21内に挿入する前の自由状態において、抵抗発熱体30の最外周側の外径がシースチューブ21の先端寄り部位の内径より大きくなるようにしておくとよい。
【0040】
次に、シースチューブ21の先端22を下にして、その後端23である上の開口からシースチューブ21内に絶縁粉末60を所定量注ぎ込み、充填する(図7−C参照)。このとき、抵抗発熱体30はシースチューブ21内において、上記のように、これを後端側から見たとき(図2参照)に渦巻き構造体をなしていることから、絶縁粉末60はその巻板間に入り込むと共に、それより先のシースチューブ21内の先端22にも入り込む(図4参照)。したがって、その後は、充填した絶縁粉末60が所望の充填密度となるように後端23側から先端22側に向けて、例えば、円筒状の押え具70で、絶縁粉末60の後端側を圧縮する(図7−C参照)。こうすることで、絶縁粉末60はその内部において所望とする充填密度に保持される。なお、この圧縮工程に用いる押え具70には、内径が端子用軸40の外径(本例では中径部46の外径)より大きく、外径がシースチューブ21の後端寄り部位の内径より小さい円筒体を用いればよい。かくして、その充填後には、シースチューブ21の後端部23において、端子用軸40との絶縁を保持しつつ絶縁粉末60を封止する封止材65を圧入等により配置することで、シースヒータ20(組立体)が製造、組立られる。なお、端子用軸40の大径部47が、絶縁粉末60の圧縮において干渉するような場合には、大径部47を含む後端寄り部位はその先端を、後工程で中径部46の後端に突合せ溶接すればよい。
【0041】
前記したように本形態をなすシースヒータ20は、抵抗発熱体30が上記のような渦巻き構造体をなしているため、その製造、組立において、シースチューブ21内に充填した絶縁粉末60を所望とする充填密度に保持するためには、これを後端側から、所定の圧縮力で軸方向に圧縮することで可能となる。つまり、本形態の製法によれば、従来のように抵抗発熱体30として先後に延びるツル巻コイル構造のものを用いていないため、絶縁粉末60の充填後に、シースチューブ21をその長手方向にわたり縮径状に加締めるといった工程を省略できる。したがって、そのような工程を要しない分、製造工程が簡略化できるから、シースヒータ20の製造コストの低減が図られる。
【0042】
また、本形態をなすシースヒータ20の製造工程においては、シースチューブ21内における先端22に抵抗発熱体30を溶接するのに、有底筒状に成形されたシースチューブ21内に、抵抗発熱体30を配置、位置決めした後、レーザ溶接するだけでよい。これは、従来のように、先端に縮径筒部を備えたシースチューブ仕掛品を成形しておき、その縮径筒部内に抵抗発熱体(コイル)の先端線部を挿入し、これをその縮径筒部と共に溶融するような溶接工程を要しないことを意味する。したがって、このようなシースチューブ仕掛品の先端の縮径筒部の寸法や、その溶接時の溶融(金属)量のバラツキに起因するシースチューブの先端(底部)の肉厚のバラツキの発生をなくすことができる。つまり、本形態をなすシースヒータ20の製造に用いるシースチューブ21は、先端が閉じられたものとして板素材からの深絞り成形や、軸材からの押出し成形により製造でき、そのような製法によるチューブ21は、先端(底部)22の肉厚精度も含め、高精度に形成できる。その上に、抵抗発熱体30との溶接もレーザ溶接で行えるから、シースヒータ20における先端部の肉厚にバラツキを与えることもない。よって発熱性能にバラツキの小さいシースヒータ20となすことができる。
【0043】
さらに、本形態では、抵抗発熱体30がシースチューブ21内において先後に延びることなく、その先端22の近傍に集中して配置されるものとなる。このため、従来のように、それが先後に延びるコイル構造のものに比べて、シースヒータ20をなすシースチューブ21の先端又は先端寄り部位を集中的かつ効率的に加熱できる。その結果、消費電力の低減も図られる。
【0044】
また、上記形態では、端子用軸40のうち、抵抗発熱体30の他端35側が溶接されている先端部位を含む部位が、それより後方の部位より細い小径部45をなしている。このため、端子用軸40の後方への熱伝導の防止効果が高く、したがって、シースヒータ20の発熱効率の低減防止が図られる。
【0045】
さて、次に本発明のグロープラグ1の別例について、図8に基づいて説明する。ただし、本例のものはシースヒータ20をなすシースチューブ21内に設けられた抵抗発熱体30の構成が上記形態のものと異なるのみであるため、その相違点のみ説明する。すなわち、本発明における渦巻き構造体をなす抵抗発熱体30は、シースチューブ21内で、その後端側から見られたときに渦巻き状をなすよう、帯板などの金属板を巻板相互間に間隔を保持して渦巻き状に形成されてなる渦巻き構造体をなしておればよい。上記形態ではその典型例として、帯板31を平面で渦巻状に巻いた渦巻きバネ構造のもとした。すなわち、その抵抗発熱体30の一端33側と他端35側とが、仮想軸の先後において同位置又は略同位置にあるもの、すなわち、仮想軸の回りに、該仮想軸に垂直な一平面に沿う形で平面的に巻かれた渦巻き状のものを例示した。
【0046】
これに対して本例では、図8に示したように、渦巻き構造体をなす抵抗発熱体30を、その前記一端33側から離れて前記他端35側に向かう巻板部位ほど、後方に位置する形の渦巻き状をなしているものとしたものである。このような構成とした場合には、抵抗発熱体30の最内周側である他端35側を、高温となるシースチューブ21の先端22から遠ざけることができる。このため、この他端35側に端子用軸40を溶接で接合した場合においても、その溶接部位の再溶融による溶断防止(分離)が図られる。なお、このような渦巻き構造体は、上記した帯板31を平面で渦巻状に巻いた渦巻きバネ構造のものとして成形しておき、その一端33をシースチューブ21の内周面に溶接した後、その他端35が溶接等で固定された端子用軸40を後方に移動するようにしても、それを構成できる。
【0047】
上記各例の抵抗発熱体30は、一定幅で一定厚さを有する帯板31を渦巻状に巻いた渦巻き構造体としたものを例示しているが、本発明の抵抗発熱体30はこのようなものに限定されるものではない。例えば、図9に渦巻き形成前の展開状態で示したように、このような抵抗発熱体30のうち、巻板をなす中間部位38を他端35側よりも幅狭に形成しておき、他端35側よりも渦巻き構造体の外側に位置する部位の抵抗値を大きくすることができる。このようにすれば、比較的外側に位置する中間部位38を、その内側に配置された他端35側の部位よりも優先的に発熱させることができ、容易に渦巻き構造体の発熱効率を向上することができる。さらに、抵抗発熱体30のうち、その一端33側である、前記シースチューブ21内面との溶接部位となる部位を、巻板をなす中間部位38より帯板の幅を幅広に形成しておき、この幅広の一端33側の部位をシースチューブ21内面に重ねて溶接するのが好ましい。このようにすれば、巻板をなす中間部位38より、図中、破線で示したように導通断面積が大きい溶接部通電面積が得られるためである。すなわち、このような最外周部位となる抵抗発熱体30の一端33は最高温に発熱されるべき部位であるが、このように形成しておくことで、その一端33とシースチューブ21の内面との溶接部位における抵抗値(導通抵抗)の過大、高温化による、破断・溶断(溶接分離)を防止できるためである。なお、端子用軸40に対する他端35部の電気的な接続を溶接による場合も同様のことが言えるため、帯板31におけるその他端35も、溶接部通電面積が大きく確保できるように、同図に示したように帯板31の幅を中間部位38より広くしておくのが好ましい。
【0048】
なお、上記各例の抵抗発熱体30は、両端部を除いて一定幅で、一定厚さを有する帯板31を渦巻状に巻いてなる渦巻き構造体としたものを例示しているが、一定厚さの金属板を用いる場合では、前記一端側(渦巻き構造体の最外周側)に位置する巻板部位の幅が、それより内周側(端子用軸40側)に位置する巻板部位の幅より、実質的に小さくなるように形成しておいておくと、シースヒータとしての発熱効率が高められる。このように形成しておけば、前記一端側に位置する巻板部位の単位長さ当りの抵抗値が、それより内周側に位置する巻板部位の単位長さ当りの抵抗値より大きくなるため、シースチューブの先端部の内周面に近接する部位に位置することとなる抵抗発熱体の外周側を迅速に高温にできるためである。
【0049】
因みに、このように前記一端側(最外周側)に位置する巻板部位の抵抗値を大きくするには、一定厚さの金属帯板を巻いた抵抗発熱体では、その渦巻き構造体における最外周側に位置する部位の幅が、最内周側に位置する部位(端子用軸側に位置する巻板部位)の幅より実質的に狭くなるように、図10の展開図に示したように、帯板31を最外周の一端33寄り部位から最内周側にむかう所定範囲の部位にわたり、ハシゴ状に孔(例えば四角孔)39を複数打抜き形成しておいておくとよい。このようにしておけば、抵抗発熱体の素材として帯板を用いることができるためである。なお、孔39相互間はリブとして機能するため、渦巻き構造体を安定させる役割を果たすことができる。また、図11の展開図に示したように最外周の一端33寄り部位ほど幅が次第に狭くなる帯板状の金属板を素材とし、これらを巻いて渦巻き構造体としてもよい。なお、この場合にも抵抗発熱体30の一端33をなす、前記シースチューブ21の内面との溶接部位となる部位は、巻板をなす中間部位より帯板の幅を幅広に形成しておき、その溶接部位が、図中、破線で示したように導通断面積が大きい溶接部通電面積が得られるようにしておくのが好ましい。
【0050】
本発明は上記した内容のものに限定されるものではなく、適宜に変更して具体化できる。例えば、渦巻き構造体をなす抵抗発熱体の他端側と、端子用軸との電気的な接続は上記もしたように圧入又はカシメによってもよい。なお、抵抗発熱体の他端側を電気的に接続すべき、端子用軸の部位は、その先端に近い部位とするのが好ましいが、その先端から離れていてもよい。また、抵抗発熱体の一端(最外周側の端)側をシースチューブに溶接する箇所は上記各形態ではシースチューブの先端寄り部位の内周面(チューブ壁面)としたが、これは上記もしたようにシースチューブの先端(底部)であってもよいし、その両者に跨っていてもよい。これが、本願発明において、抵抗発熱体の一端側が溶接される箇所が、シースチューブ内の先端又は先端寄り部位としている理由である。
【符号の説明】
【0051】
1 グロープラグ
20 シースヒータ
21 シースチューブ
22 シースチューブの先端
23 シースチューブの後端部
30 抵抗発熱体
33 渦巻き構造体の最外周側に位置する該抵抗発熱体の一端
35 渦巻き構造体の最内周側に位置する該抵抗発熱体の他端
40 端子用軸
41 端子用軸の先端
60 絶縁粉末
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端が閉じられたシースチューブと、
前記シースチューブ内に内挿されている通電用の端子用軸と、
前記シースチューブ内に配置され、自身の一端側がシースチューブ内の先端又は先端寄り部位に溶接される一方、他端側は前記端子用軸に電気的に接続され、かつ、通電することにより発熱する抵抗発熱体と、
前記シースチューブ内に充填された絶縁粉末と、
を備えたシースヒータを有してなるグロープラグにおいて、
前記抵抗発熱体は、前記シースチューブ内で、その後端側から見られたときに渦巻き状をなすよう、金属板を巻板相互間に間隔を保持して渦巻き状に形成されてなる渦巻き構造体をなしており、該渦巻き構造体の最外周側に位置する該抵抗発熱体の一端側が、該シースチューブ内の先端又は先端寄り部位に溶接されていることを特徴とするグロープラグ。
【請求項2】
前記渦巻き構造体の最内周側に位置する該抵抗発熱体の他端側は、前記端子用軸の先端又は先端寄り部位に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のグロープラグ。
【請求項3】
前記渦巻き構造体は、仮想軸の回りに、該仮想軸に垂直な一平面に沿う形で平面的に巻かれた渦巻き状をなしていることを特徴とする請求項1又は2に記載のグロープラグ。
【請求項4】
前記渦巻き構造体は、該抵抗発熱体の前記一端側から離れて前記他端側に向かう巻板部位ほど、後方に位置する形の渦巻き状をなしていることを特徴とする請求項1又は2に記載のグロープラグ。
【請求項5】
前記抵抗発熱体の前記一端側と前記シースチューブ内との溶接部位における溶接部通電面積が、この溶接部位よりも内周側に位置する巻板部位の導通断面積より大きく保持されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のグロープラグ。
【請求項6】
前記抵抗発熱体は、前記一端側に位置する巻板部位の単位長さ当りの抵抗値が、それより内周側に位置する巻板部位の単位長さ当りの抵抗値より大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のグロープラグ。
【請求項7】
前記端子用軸は、前記抵抗発熱体の前記他端側が電気的に接続されている部位を含む先端寄り部位の横断面積が、それより後方の部位の横断面積に比べて小さく形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のグロープラグ。
【請求項8】
前記抵抗発熱体は、前記他端側に前記端子用軸が接合された状態で、前記シースチューブ内に位置決め配置されて該シースチューブの先端又は先端寄り部位に溶接される前において、該抵抗発熱体の前記一端側が、該シースチューブの内面にバネ性により押付けられる渦巻きバネに形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のグロープラグ。
【請求項9】
前記シースヒータが、前記抵抗発熱体の前記他端側に、前記端子用軸の先端又は先端寄り部位を電気的に接続して端子用軸付きの抵抗発熱体を得る工程と、該端子用軸付きの抵抗発熱体を前記シースチューブ内に配置して、前記抵抗発熱体の前記一端側を前記シースチューブ内の先端又は先端寄り部位に溶接する工程と、その後、該シースチューブ内にその後端の開口から絶縁粉末を充填した後、該シースチューブの後端の開口から、該絶縁粉末を先端側に向けて圧縮することで該絶縁粉末を所定の充填密度に保持する工程とを含んで製造されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のグロープラグの製造方法。
【請求項1】
先端が閉じられたシースチューブと、
前記シースチューブ内に内挿されている通電用の端子用軸と、
前記シースチューブ内に配置され、自身の一端側がシースチューブ内の先端又は先端寄り部位に溶接される一方、他端側は前記端子用軸に電気的に接続され、かつ、通電することにより発熱する抵抗発熱体と、
前記シースチューブ内に充填された絶縁粉末と、
を備えたシースヒータを有してなるグロープラグにおいて、
前記抵抗発熱体は、前記シースチューブ内で、その後端側から見られたときに渦巻き状をなすよう、金属板を巻板相互間に間隔を保持して渦巻き状に形成されてなる渦巻き構造体をなしており、該渦巻き構造体の最外周側に位置する該抵抗発熱体の一端側が、該シースチューブ内の先端又は先端寄り部位に溶接されていることを特徴とするグロープラグ。
【請求項2】
前記渦巻き構造体の最内周側に位置する該抵抗発熱体の他端側は、前記端子用軸の先端又は先端寄り部位に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のグロープラグ。
【請求項3】
前記渦巻き構造体は、仮想軸の回りに、該仮想軸に垂直な一平面に沿う形で平面的に巻かれた渦巻き状をなしていることを特徴とする請求項1又は2に記載のグロープラグ。
【請求項4】
前記渦巻き構造体は、該抵抗発熱体の前記一端側から離れて前記他端側に向かう巻板部位ほど、後方に位置する形の渦巻き状をなしていることを特徴とする請求項1又は2に記載のグロープラグ。
【請求項5】
前記抵抗発熱体の前記一端側と前記シースチューブ内との溶接部位における溶接部通電面積が、この溶接部位よりも内周側に位置する巻板部位の導通断面積より大きく保持されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のグロープラグ。
【請求項6】
前記抵抗発熱体は、前記一端側に位置する巻板部位の単位長さ当りの抵抗値が、それより内周側に位置する巻板部位の単位長さ当りの抵抗値より大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のグロープラグ。
【請求項7】
前記端子用軸は、前記抵抗発熱体の前記他端側が電気的に接続されている部位を含む先端寄り部位の横断面積が、それより後方の部位の横断面積に比べて小さく形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のグロープラグ。
【請求項8】
前記抵抗発熱体は、前記他端側に前記端子用軸が接合された状態で、前記シースチューブ内に位置決め配置されて該シースチューブの先端又は先端寄り部位に溶接される前において、該抵抗発熱体の前記一端側が、該シースチューブの内面にバネ性により押付けられる渦巻きバネに形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のグロープラグ。
【請求項9】
前記シースヒータが、前記抵抗発熱体の前記他端側に、前記端子用軸の先端又は先端寄り部位を電気的に接続して端子用軸付きの抵抗発熱体を得る工程と、該端子用軸付きの抵抗発熱体を前記シースチューブ内に配置して、前記抵抗発熱体の前記一端側を前記シースチューブ内の先端又は先端寄り部位に溶接する工程と、その後、該シースチューブ内にその後端の開口から絶縁粉末を充填した後、該シースチューブの後端の開口から、該絶縁粉末を先端側に向けて圧縮することで該絶縁粉末を所定の充填密度に保持する工程とを含んで製造されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のグロープラグの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−69550(P2011−69550A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−221201(P2009−221201)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
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