説明

ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体の製造方法及びその利用

【課題】本発明は、シリカ多孔質凝集体及びハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体の製造に利用可能なケイ酸カルシウム二次粒子凝集体を、簡便に、かつ生産性よく製造することを可能にするケイ酸カルシウム二次粒子凝集体の製造方法及びその利用を提供する。
【解決手段】ケイ酸原料として、非晶質ケイ酸原料を用い、ケイ酸原料と石灰原料とを、それぞれSiO及びCaOに換算したときのモル比CaO/SiOが0.2〜0.7の範囲内で混合し、水又は水酸化アルカリ水溶液に分散させて水性スラリーを調製する。当該スラリーを100℃以下の常圧下で水熱反応させることによって、未反応ケイ酸を含有したCaO/SiOが低いケイ酸カルシウム二次粒子凝集体が得られる。上記方法によれば、100℃以下の常圧下でケイ酸カルシウム二次粒子凝集体を製造できるため、低コスト化及び生産性の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体の製造方法及びその利用に関するものであって、特に、シリカ多孔質凝集体及びハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体の製造に利用可能なケイ酸カルシウム二次粒子凝集体の製造方法及びその利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリカ多孔質凝集体は、触媒担体、タンパク質、VOCガスなどの吸着剤、吸臭剤、濾過助剤、化粧品などとして、幅広い用途に用いられている。このようなシリカ多孔質凝集体は、ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体から製造される。
【0003】
上記ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体は、例えば、特許文献1及び2に示されるように、オートクレーブを用いた加圧下で水熱合成される。具体的には、特許文献1には、ケイ酸原料と石灰原料とを所定の割合で混合し、水の存在下で撹拌しながら175〜191℃で水熱反応させることによって、箔状又は繊維状の一次粒子が三次元的に絡み合って二次粒子となった凝集体を得る方法が開示されている。また、特許文献2には、ケイ酸原料と石灰原料とを、CaO/SiO2モル比が0.3〜1.2の割合で含有する水性スラリーを、70〜190℃の温度で加熱処理して水熱反応を行うことにより、ケイ酸カルシウムスラリーを製造する方法が開示されている。
【0004】
また、別の方法として、特許文献3には、ケイ酸カルシウムの二次粒子凝集体を常圧下での水熱合成する方法が開示されている。具体的には、ケイ酸原料及び石灰原料をCaO/SiOモル比が0.4〜1.0の範囲内で配合し、水を加えて懸濁させてスラリーを生成するスラリー生成工程と、生成したスラリーを湿式粉砕機を用いて撹拌及び粉砕を同時に行い、メカノケミカル反応を生じさせるメカノケミカル反応工程と、メカノケミカル反応終了後のスラリーを撹拌しながら加熱養生する加熱養生工程とを備える多孔質ケイ酸カルシウムの製造方法が開示されている。さらに、特許文献3には、上記ケイ酸原料は非晶質ケイ酸を主体とし、かつ、上記加熱養生工程は常圧加熱養生とすることが記載されている。
【0005】
上述したような方法で製造されたケイ酸カルシウム二次粒子凝集体を用いてシリカ多孔質凝集体を製造する方法については、例えば、特許文献2、4及び5に開示されている。具体的には、特許文献2の方法では、まず、上述した方法で、ケイ酸カルシウムスラリーを製造する。次に、当該ケイ酸カルシウムスラリーに30〜100℃の温度において所定量の酸を加えて処理したのち、固形分を分離回収し、乾燥することで、耐酸性ケイ酸質系濾過助剤が得られることが記載されている。
【0006】
特許文献4には、ケイ酸カルシウム化合物を水の存在下において、中和当量比1.0以上1.1以下の塩酸又は硝酸を添加して含有カルシウム分を溶解させることにより、その結晶形骸を保持したまま均一な細孔を形成させる多孔質シリカ粒子の製造方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献5には、ケイ酸カルシウムスラリーに珪酸ナトリウムを混合し、攪拌下炭酸ガスを圧入し、シリカ多孔体と炭酸カルシウムに分離した後、塩酸を用いて炭酸カルシウムを溶解除去する方法が開示されている。
【0008】
ところで、上記ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体を用いて、表層がハイドロキシアパタイトで被覆されたシリカ多孔質凝集体を製造することもできる。このような技術としては、例えば、特許文献6に開示される技術を挙げることができる。特許文献6に開示される方法では、まず、ケイ酸原料、石灰原料、セメント及び水を混合物してプレス成型機を用いて成形体を作製した後、150℃の加圧下で水熱反応を行って、ケイ酸カルシウム硬化体を得る。得られたケイ酸カルシウム硬化体の表面にリン酸円錐溶液を塗布し、121℃の加圧下処理することによって、ケイ酸カルシウム硬化体の表層をハイドロキシアパタイトで被覆できることが記載されている。
【特許文献1】特開平6−40715号公報(平成6(1994)年2月15日公開)
【特許文献2】特開平10−323559号公報(平成10(1998)年12月8日公開)
【特許文献3】特開2004−43290号公報(平成16(2004)年2月12日公開)
【特許文献4】特開昭62−41712号公報(昭和62(1987)年2月23日公開)
【特許文献5】特開平7−242409号公報(平成7(1995)年8月8日公開)
【特許文献6】特開2005−306665号公報(平成17(2005)年11月4日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体を製造する方法は、上述の特許文献1や2に開示されるような方法がある。しかしながら、特許文献1及び2のように、加圧下でケイ酸カルシウムの二次粒子凝集体を製造する方法では、ケイ酸カルシウムを水熱合成するために用いる工業用オートクレーブは非常に高額な上、原料スラリーを加熱するのにも多大な熱エネルギーが必要となるという問題がある。さらに、加圧が必要であるため、生産効率の向上が図れないという問題もある。
【0010】
また、特許文献3の方法では、常圧下で、ケイ酸カルシウムを水熱合成できるものの、工程が複雑であるという問題がある。加えて、一連の工程を工業スケールで行うには、大きな設備投資が必要であるという問題がある。
【0011】
そのため、シリカ多孔質凝集体を低コストで大量生産するために、その原料となるケイ酸カルシウム二次粒子凝集体を、簡便に、かつ生産性よく製造する技術の開発が産業界から強く望まれている。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであって、その目的は、シリカ多孔質凝集体及びハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体の製造に利用可能なケイ酸カルシウム二次粒子凝集体を、簡便に、かつ生産性よく製造することを可能にするケイ酸カルシウム二次粒子凝集体の製造方法及びその利用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、ケイ酸原料として非晶質ケイ酸原料を用い、当該非晶質ケイ酸原料と石灰原料とを所定の割合で混合した水性スラリーを100℃以下の常圧下で加熱すれば、簡便にケイ酸カルシウム二次粒子凝集体を水熱合成できることを独自に見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、産業上有用な以下の発明を包含する。
【0014】
(1)(A)ケイ酸原料と石灰原料とを、それぞれSiO及びCaOに換算したときのモル比CaO/SiOが0.2〜0.7の範囲内で混合し、水又は水酸化アルカリ水溶液に分散させ、水性スラリーを調製する工程と、(B)上記水性スラリーを、常圧下、100℃以下で加熱することによって、ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体を水熱合成する工程とを含み、上記ケイ酸原料は、非晶質ケイ酸原料であることを特徴とするケイ酸カルシウム二次粒子凝集体の製造方法。
【0015】
(2)上記ケイ酸原料は、非晶質ガラス、非晶質ケイ酸、水ガラス、及びホワイトカーボンからなる群より選択されるSiO少含有物質を少なくとも1つ含むことを特徴とする(1)に記載のケイ酸カルシウム二次粒子凝集体の製造方法。
【0016】
(3)上記石灰原料は、生石灰、消石灰、又は生石灰と消石灰との混合物であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のケイ酸カルシウム二次粒子凝集体の製造方法。
【0017】
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載のケイ酸カルシウム二次粒子凝集体の製造方法を1工程に含み、(C)上記(B)工程後の水性スラリーを酸処理する工程をさらに含むことを特徴とするシリカ多孔質凝集体の製造方法。
【0018】
(5)(1)〜(3)のいずれかに記載のケイ酸カルシウム二次粒子凝集体の製造方法を1工程に含み、(D)上記(B)工程後の水性スラリーをリン酸化合物処理する工程をさらに含むことを特徴とするハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体の製造方法。
【0019】
(6)シリカ多孔質凝集体又はハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体を製造するための製造装置であって、ケイ酸原料と石灰原料とを混合し、水又は水酸化アルカリ水溶液に分散させる混合手段とケイ酸原料と石灰原料とが水又は水酸化アルカリ水溶液に分散された水性スラリーを、常圧下、100℃以下で加熱するための加熱手段と、上記加熱手段によって加熱された水性スラリーを、酸処理もしくはリン酸化合物処理するための酸処理手段と、上記酸処理手段によって酸処理もしくはリン酸化合物処理されたスラリーを、固液分離し、固形物を乾燥させる分離乾燥手段とを備えることを特徴とする製造装置。
【0020】
(7)箔状又は繊維状の一次粒子が三次元的に絡み合って二次粒子を形成したシリカ多孔質凝集体であって、平均粒子径が5〜20μmであり、嵩密度が0.08〜0.30g/cmであり、BET比表面積が200〜900m/gであり、透過率が0.15Darcy以上であり、VOC吸着量が1.5mg/g以上であることを特徴とするシリカ多孔質凝集体。
【0021】
(8)箔状又は繊維状の一次粒子が三次元的に絡み合って二次粒子を形成したハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体であって、平均粒子径が5〜20μmであり、嵩密度が0.10〜0.40g/cmであり、BET比表面積が50〜300m/gであり、透過率が0.15Darcy以上であり、VOC吸着量が1.5mg/g以上であることを特徴とするハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかるケイ酸カルシウム二次粒子凝集体の製造方法では、以上のように、非晶質ケイ酸原料と石灰原料とを、CaO/SiOモル比0.2〜0.7の割合で含有する水性スラリーを用いるため、100℃以下の常圧下で、ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体を水熱合成することができる。それゆえ、大掛かりな設備や複雑な工程を必要とせず、ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体を簡便に、かつ安価に生産性よく製造できるという効果を奏する。さらに、本発明によれば、ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体を原料とするシリカ多孔質凝集体やハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体を高い生産性で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
<I.本発明を完成させるに至った経緯>
本発明は、安定供給可能な非晶質ケイ酸原料と石灰原料とを用い、100℃以下の常圧下でケイ酸カルシウム二次粒子凝集体を水熱合成し、低コストのシリカ多孔質凝集体及びハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体を提供するものである。本発明にかかる方法で製造されるシリカ多孔質凝集体及びハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体は、ケイ酸カルシウムの有する濾過特性、シリカゲルの有する吸着特性を併せ持つものである。
【0024】
本発明者らは、本発明を完成するより以前に、ケイ酸原料と石灰原料とを混合し、水の存在下で水熱反応させ、酸処理して脱カルシウムすることにより、濾過特性に優れた耐酸性ケイ酸質濾過助剤を得る方法を開発している(特開平10−323559号公報参照)。
【0025】
特開平10−323559号公報に開示される方法でもそうであるが、ケイ酸カルシウムは、通常、ケイ酸原料として結晶質シリカ(石英)、石灰原料として生石灰又は消石灰に水を加えてスラリ−を調製し、調製したスラリ−をオ−トクレ−ブに入れ、150〜200℃の加圧下で攪拌しながら4〜8時間程度水熱反応を行って合成される。工業用のオートクレーブは高額なため設備コストがかかる上、水熱反応時に加圧するため、ケイ酸カルシウムスラリーを製造するのに大きなエネルギーが必要であった。
【0026】
そこで、本発明者らは、より簡便に、かつ安価にケイ酸カルシウムスラリーを製造する方法の開発に着手したのである。具体的には、100℃以下かつ、常圧下でケイ酸カルシウムスラリーを製造する方法の開発に着手した。しかし、このような方法を開発するには、乗り越えるべき大きな問題があった。
【0027】
その問題の1つは、ケイ酸原料の問題である。ケイ酸カルシウムの水熱合成反応は、加圧及び常圧に関わらず、カルシウムが過飽和状態で溶解している溶液中に、シリカが溶解してくると瞬時にカルシウムとシリカとが結合し、ケイ酸カルシウムを生成するという反応過程を取る。しかし、上記シリカとして通常用いられる結晶質シリカは、安定な鉱物で溶解度が小さいため、100℃以下の低温での溶解は微量である。そのため、結晶質シリカを用いて、100℃以下でケイ酸カルシウムの水熱合成を行うと、ケイ酸カルシウムの生成反応は停滞してしまう。この停滞は、上記結晶質シリカの溶解を促進するアルカリの添加により緩和することができるが、工業的に実用化できるレベルの上記アルカリの添加量では、十分な効果が得られない。そのため、従来、ケイ酸カルシウムの水熱合成反応は、オートクレーブを用いた高温加圧条件で行われているのである。
【0028】
2つ目の問題は、得られるケイ酸カルシウムにおけるCaO/SiOモル比である。ケイ酸カルシウムを用いてシリカ多孔質凝集体を製造する場合、ケイ酸カルシウムを酸処理する方法がよく用いられている。CaO/SiOモル比の高いケイ酸カルシウムは、アルカリ性溶液中で水熱合成するため、アルカリ性溶液中では安定であるが、酸性溶液中では容易に分解し、無定型のシリカゲルとなる。これに対して、CaO/SiOモル比の低いケイ酸カルシウムは、酸性溶液で処理しても、酸化カルシウムは溶出されるが、ケイ酸カルシウムの形態は崩壊せず、多孔質凝集体となる。したがって、シリカ多孔質凝集体の原料となるケイ酸カルシウムとしては、ケイ酸カルシウムにおけるCaO/SiOモル比が低いことが求められる。しかし、100℃以下でケイ酸カルシウムの水熱合成を行うと、CaO/SiOモル比の高いケイ酸カルシウムしか得られないと考えられてきた。これについてより詳しく説明すると、以下の通りである。
【0029】
水熱合成反応の初期段階では、溶液中にシリカが少量しか溶解していないため、CaO/SiOモル比の高い不安定なケイ酸カルシウム(いわゆる、CSH又はトバモライトゲル)が生成する。そして、時間の経過とともに、溶解しているシリカ量が増加してくると、CaO/SiOモル比の高いケイ酸カルシウムからCaOが溶出し、CaO/SiOモル比の低い安定なケイ酸カルシウム(いわゆる、トバモライト)に転移する。
【0030】
しかし、100℃以下でケイ酸カルシウムの水熱合成を行うと、シリカの溶解量が少ない(時間が経過しても、溶解しているシリカ量が十分に増加してこない)ため、CaO/SiOモル比の低い安定なトバモライト(ケイ酸カルシウム)への転移が十分に起こらず、CaO/SiOモル比の高い不安定なCSH(ケイ酸カルシウム)が多く生成されると考えられてきた。
【0031】
以上の2つの問題があることから、これまで、100℃以下で水熱合成したケイ酸カルシウムを酸処理すると、急激にCaOが溶出してSiOの骨格が崩壊されることで、ケイ酸カルシウムの形態も崩壊して、無定型のシリカゲルになるのではないかと考えられてきたのである。
【0032】
そこで、本発明者らは、上記2つの問題、すなわち、ケイ酸原料の問題、及びケイ酸カルシウムにおけるCaO/SiOモル比の問題を解決すべく、鋭意検討し、(1)ケイ酸原料として結晶質シリカの代わりに、非晶質シリカを使用する、(2)ケイ酸原料と石灰原料との混合比をCaO/SiO換算モル比で0.7以下に抑えることを満足することにより、常圧下で、かつ100℃以下であっても、CaO/SiOモル比の低い安定なケイ酸カルシウムスラリーを製造できることを独自に見出した。
【0033】
上記知見に基づき、完成された本発明の一実施形態について、以下、詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
<II.ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体及びその製造方法>
本発明にかかるケイ酸カルシウム二次粒子凝集体は、ケイ酸原料と石灰原料とからなる水性スラリーを100℃以下、常圧下で水熱反応させることにより、製造されるものである。なお、本明細書において、「二次粒子」とは、箔状又は繊維状の一次粒子が三次元的に絡み合ったものを指す。また、本明細書において、「常圧」なる用語は、「大気圧」と同義的に用いられ、具体的には、0.1MPaの気圧を意味する。
【0035】
本発明にかかるケイ酸カルシウム二次粒子凝集体は、後述するシリカ多孔質凝集体及びハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体の製造に利用可能な特性を有する。具体的には、ケイ酸カルシウムの水熱合成反応では、シリカ粒子表面でシリカ粒子を取り囲む状態でケイ酸カルシウムの微粒子が生成し、その微粒子同士が凝集して二次粒子凝集体となる。原料のCaO/SiOモル比を0.2〜0.7としたケイ酸カルシウム二次粒子凝集体は、未反応のシリカが残存している。このような状態のケイ酸カルシウム二次粒子凝集体に、pHが急激に降下しない程度に徐々に酸を添加することにより、ケイ酸カルシウムの骨格を崩壊させず、ほとんど収縮のないシリカ多孔質凝集体を得ることができる。これは、ケイ酸カルシウムのCaO/SiOモル比をできるだけ小さくすることと、未反応のシリカによってシリカ多孔質凝集体の収縮を防止するためである。
【0036】
本発明にかかるケイ酸カルシウム二次粒子凝集体の製造方法について、以下詳細に述べる。
【0037】
上述したように、本発明にかかるケイ酸カルシウム二次粒子凝集体は、ケイ酸原料と石灰原料とからなる水性スラリーを常圧下、100℃以下で水熱反応させることにより製造することができる。より具体的にいえば、本発明にかかるケイ酸カルシウム二次粒子凝集体の製造方法は、(A)ケイ酸原料と石灰原料とを混合し、水又は水酸化アルカリ水溶液に分散させ、水性スラリーを調製する工程(以下、「水性スラリー調製工程」ともいう)と、(B)上記水性スラリーにおいて、常圧下、100℃以下で、ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体を水熱合成する工程(以下、「水熱合成工程」ともいう)とによって構成することができる。以下、上記「水性スラリー調製工程」及び「水熱合成工程」について詳細に説明する。
【0038】
(II−1)水性スラリー調製工程
上記水性スラリー調製工程では、ケイ酸原料と石灰原料とを混合し、水又は水酸化アルカリ水溶液に分散させることにより、水性スラリーを調製する。
【0039】
上記ケイ酸原料は、非晶質ケイ酸原料として用いることが可能なものであればよく、特に限定されるものではない。例えば、ホワイトカーボン、工業生産過程で副成される非晶質ケイ酸、水ガラス、ガラス、パーライトなどの非晶質のケイ酸含有物質を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記ケイ酸原料の粒子径は特に限定されるものではなく、所望の効果が得られるように適宜設定すればよいが、できるだけ微粉砕したものであることが好ましい。具体的には、ケイ酸原料を十分に反応させることを意図する場合、ケイ酸原料の粒子径は10μm以下であることが好ましい。また、ケイ酸原料の表層のみにケイ酸カルシウムを生成させたい場合は10μm以上であってもよい。なお、上記ケイ酸原料の平均粒子径は、体積基準のメジアン径であって、レーザー回析・散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
【0040】
上記石灰原料は、特に限定されるものではないが、例えば、生石灰(酸化カルシウム)や、消石灰(水酸化カルシウム)等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記石灰原料は、粉末であることが好ましい。
【0041】
上記ケイ酸原料と石灰原料との混合比は、ケイ酸原料と石灰原料とを、それぞれSiO及びCaOに換算したときのモル比CaO/SiOが0.2〜0.7の範囲内であることが好ましく、0.3〜0.6であることがより好ましい。上記範囲内であれば、後述の本発明にかかるシリカ多孔質凝集体及びハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体の製造に好適に用いることが可能なケイ酸カルシウム二次粒子凝集体を製造することができる。
【0042】
こうして混合されたケイ酸原料と石灰原料とは、水又は水酸化アルカリ水溶液に分散される。このとき、上記水酸化アルカリ水溶液は、特に限定されるものではないが、例えば、水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、及び水酸化カリウム水溶液などを挙げることができる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
また、上記水酸化アルカリ水溶液のモル濃度は、特に限定されるものではないが、モル濃度が低すぎると、生成するケイ酸カルシウムの結晶形態が変化しなかったり、水熱反応の促進効果が十分に発揮されなかったりする。逆に、モル濃度が高くしすぎても、水熱反応の促進効果は飽和し、むしろ、得られるケイ酸カルシウム二次粒子凝集体は上述した物性を満足しなくなる傾向がある。したがって、上記水酸化アルカリ水溶液のモル濃度は、具体的には、0.01〜1.0Mであることが好ましい。上記のような水酸化アルカリ水溶液を用いることにより、生成するケイ酸カルシウムの結晶形態を変化させたり、水熱反応を促進させたりする効果を得ることができる。
【0044】
さらに、上記水又は水酸化アルカリ水溶液の添加量についても特に限定されるものではなく、上記ケイ酸原料と石灰原料とを分散させることができ、後述の水熱合成工程において、水熱反応させることが可能な添加量であればよい。具体的には、ケイ酸原料と石灰原料との合計重量に対して5〜30倍量であることが好ましい。上記範囲内であれば、水熱反応性及び容積効率を良好なものとすることができる。
【0045】
また、水性スラリー調製工程において、ケイ酸原料及び石灰原料を水又は水酸化アルカリ水溶液に分散させる方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いればよい。例えば、ケイ酸原料、石灰原料及び水又はアルカリ水溶液を反応容器に直接入れて攪拌しながら反応させる方法や、ホモジナイザーや従来公知の懸濁液製造装置を用いる方法を好適に用いることができる。
【0046】
(II−2)水熱合成工程
上記水熱合成工程では、常圧下、100℃以下で上記水性スラリーを加熱することにより、水熱反応を行う。上記水熱合成工程によれば、後述するシリカ多孔質凝集体やハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体の原料として利用可能なケイ酸カルシウム二次粒子凝集体を製造することができる。
【0047】
上記水熱反応工程における反応温度は100℃以下であればよいが、できるだけ上記水性スラリーの沸点に近いことが好ましい。より具体的には、60〜100℃であることが好ましく、80〜100℃であることがさらに好ましい。上記反応温度であれば、水熱反応を十分に促進させることができる。
【0048】
また、反応時間は特に限定されるものではなく、ケイ酸カルシウムを水熱合成するのに十分な時間であればよい。具体的には、ケイ酸原料及び石灰原料を水に分散させた場合、水熱反応の反応速度が遅いため、水酸化アルカリ水溶液に分散させた場合よりも長く反応させることが好ましい。また、上記反応時間は、水熱反応工程における反応温度によっても適宜変更することが好ましい。より具体的にいえば、ケイ酸原料及び石灰原料を水に分散させ、水熱反応温度を60℃とする場合、上記反応時間は、10〜30時間とすることが好ましい。また、水酸化アルカリ水溶液に分散させ、水熱反応温度を60℃とする場合、上記反応時間は、8〜20時間とすることが好ましい。上記反応条件によれば、オ−トクレ−ブを用いて、高温高圧下で水熱合成するという従来法を用いて製造したケイ酸カルシウムに匹敵するケイ酸カルシウム二次粒子凝集体を合成することができる。すなわち、上述した物性を有するケイ酸カルシウム二次粒子凝集体を製造することができる。
【0049】
また、上記水熱合成工程では、必要に応じて、上記水性スラリーを撹拌してもよい。これにより、上記水性スラリー中のケイ酸原料の溶解をより促進することができる。このときの、撹拌速度は特に限定されるものではなく、水酸化アルカリ水溶液の添加の有無、及び目的とするケイ酸カルシウムの粒子径などに応じて適宜設定すればよい。具体的には、撹拌速度を速くすると、形成するケイ酸カルシウムの粒子径は小さくなり、反応は促進される傾向がある。逆に、撹拌速度を遅くすると、形成するケイ酸カルシウムの粒子径は大きくなり、反応は進行にくくなる傾向がある。したがって、所望の効果が得られるように、撹拌速度を設定することが好ましい。
【0050】
<III.シリカ多孔質凝集体及びその製造方法>
本発明にかかるシリカ多孔質凝集体は、上記ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体を用いて製造されるものであって、箔状又は繊維状の一次粒子が三次元的に絡み合って二次粒子を形成したシリカ多孔質凝集体である。本発明にかかるシリカ多孔質凝集体は、後述の実施例にも示されているように、濾過特性、タンパク吸着能、ホルムアルデヒド吸着能及び分解能が優れている。具体的には、以下の(a)〜(e)の物性を有することが好ましい。これらの物性を有することにより、シリカ多孔質凝集体を後述の<VI.本発明の利用>で述べる目的に好適に用いることができる。
(a)平均粒子径が5〜20μmであることが好ましい。
(b)嵩密度が0.08〜0.30g/cmであることが好ましい。
(c)BET比表面積が200〜900m/gであることが好ましい。
(d)透過率が0.15Darcy以上であることが好ましい。
(e)VOC吸着量が1.5mg/g以上であることが好ましい。
【0051】
上記平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用い写真撮影し、約150個の粒子径測定を行い、その平均粒子径により求めることができる。また、上記嵩密度の測定では、メスシリンダーの中にシリカ多孔質凝集体を約50ml入れ、タッピングして充填容積が一定になったところを容積とし、さら当該シリカ多孔質凝集体の重量を測定する。こうして得られたシリカ多孔質凝集体の重量を容積で除することにより、上記嵩密度を求めることができる。さらに、上記BET比表面積は、BET比表面積測定装置を用いて測定することができる。具体的には、200℃で十分に加熱脱気したシリカ多孔質凝集体について、窒素ガスを吸着させる多点法により求めることができる。
【0052】
また、上記透過率の測定では、まず、濾過面積8.5cmの円柱状加圧濾過器を用い、濾過板の上に約2cmのケーク層を形成させる。次に、ケーク層を崩さないように200mlの水を注ぎ込み、0.1Kg/cmで加圧する。濾液の採取量から透過率(Darcy)を求めることができる。
【0053】
さらに、上記VOC吸着量の測定では、22.5Lの攪拌機付きデシケータ、エアーポンプ、カラム、気化容器を用い、系全体の空気をエアーポンプで減圧する。その後、窒素ガスを充填し、気化容器に系全体の濃度が約40ppmにホルムアルデヒドを添加する。上記カラムに試料を0.1g充填して、ホルムアルデヒドを系全体に循環させながら試料への吸着を行う。60分後に検知管でホルムアルデヒド濃度を測定し、初期濃度との差から吸着量、すなわちVOC吸着量を求めることができる。
【0054】
本発明にかかるシリカ多孔質凝集体の製造方法について、以下詳細に説明する。
【0055】
本発明にかかるシリカ多孔質凝集体は、上記ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体を酸処理することにより製造することができる。より具体的には、本発明にかかるシリカ多孔質凝集体の製造方法は、(A)ケイ酸原料と石灰原料とを混合し、水又は水酸化アルカリ水溶液に分散させ、水性スラリーを調製する工程(以下、「水性スラリー調製工程」ともいう)と、(B)上記水性スラリーにおいて、常圧下、100℃以下で、ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体を水熱合成する工程(以下、「水熱合成工程」ともいう)と、(C)上記(B)工程後の水性スラリーを酸処理する工程(以下、「酸処理工程」ともいう)とによって構成することができる。また、本発明にかかるシリカ多孔質凝集体の製造方法は、(E)上記(C)工程後の水性スラリーから固形物を分離回収する工程(以下、「分離回収工程」ともいう)を含んでいてもよい。以下、上記酸処理工程、分離回収工程について詳細に述べることにする。なお、上記水性スラリー調製工程及び水熱合成工程は、<II.ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体及びその製造方法>で述べたものと同一であるので、ここでは述べない。
【0056】
(III−1)酸処理工程
上記酸処理工程では、上記水熱合成工程後のケイ酸カルシウム二次粒子凝集体を含有する水性スラリー(以下、「ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体含有スラリー」ともいう)を酸処理する。これにより、ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体中の酸化カルシウムが溶解・除去され、シリカ多孔質凝集体が得られる。
【0057】
上記酸処理工程で用いられる酸は、上記ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体中の酸化カルシウムを溶解できるものであればよく、特に限定されるものではない。例えば、塩酸、硝酸、及び炭酸等の無機酸を好適に用いることができる。また、上記酸は、ギ酸、シュウ酸、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、乳酸、及び酸性陽イオン交換剤等の有機酸であってもよい。
【0058】
また、上記酸処理工程において、上記ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体含有スラリーに、上記酸を添加する方法は特に限定されるものではないが、pHが急激に降下しないように徐々に添加することが好ましい。具体的には、後述の実施例のように、10g程度のケイ酸カルシウムを塩酸で処理する場合、pHが4を下回らないようにして処理し、その後は、pH4で5〜10分間程度維持した後、pHを3まで低下するように塩酸を添加することが好ましい。なお、ケイ酸カルシウムから酸化カルシウムが除去されたことは、pHの変動がなくなることにより判定することができる。
【0059】
上記酸処理工程の好ましい実施形態として、水熱反応が促進された嵩高なケイ酸カルシウムを酸処理する場合、上記酸処理工程は、pHを6〜8に維持する段階(以下、「pH維持段階」ともいう)を含むことが好ましい。より詳しく言えば、上記酸処理工程において、酸を添加している途中で、上記ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体含有スラリーのpHを6〜8に一定時間維持することが好ましい。上記pH維持段階で、pHを6〜8に維持する時間は特に限定されるものではないが、10〜20分間であることが好ましい。上記段階を含むことにより、酸処理により酸化カルシウムを溶解した後のシリカ多孔質凝集体において、ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体の形態をより高精度に維持することができる。
【0060】
また、上記pH維持段階は、1段階で構成される必要はなく、複数の段階から構成されていもよい。具体的には、pH6〜8の間の複数の点で、上記ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体含有スラリーのpHを一定時間保持してもよい。pH維持段階が複数の段階から構成される場合、各段階におけるpH維持時間は、特に限定されるものではないが、上記同様、10〜20分間であることが好ましい。このように、pH維持段階を複数の段階で構成することにより、上記ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体の内部に、上記ケイ酸原料が残存していない場合であっても、酸処理により酸化カルシウムを溶解した後のシリカ多孔質凝集体において、ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体の形態をより高精度に維持することができる。
【0061】
また、上記酸処理工程における処理温度及び処理時間は、特に限定されるものではなく、酸化カルシウムを溶解するのに十分な処理温度及び処理時間であればよい。具体的には、上記処理温度は、室温〜100℃の範囲で適宜選択して設定すればよい。上記範囲内であれば、酸化カルシウムを効率的に除去することができる。また、上記処理時間は、処理温度等に応じて適宜設定されるものであるが、一般的には、数十分〜数時間の範囲である。
【0062】
(III−2.分離回収工程)
上記分離回収工程では、上記酸処理工程後の水性スラリーから、固形物、言い換えればシリカ多孔質凝集体を分離・回収する。シリカ多孔質凝集体を分離・回収する方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。
【0063】
原料のCaO/SiOモル比が高くてアルカリ濃度が高い条件で水熱合成したケイ酸カルシウムは、未反応シリカが少なく、嵩高で二次粒子径の大きな凝集体となる。このようなケイ酸カルシウム二次粒子凝集体は、酸処理工程における酸処理が十分でない場合、シリカ多孔質凝集体の収縮と一部崩壊によって分離回収工程で濾過に長時間を必要とする。
【0064】
したがって、上記分離回収工程では、例えば、まず、酸処理された水性スラリーに水を加えて洗浄及び濾過を複数回、例えば、3〜4回繰り返して十分に洗浄し、カルシウム塩除去して固液分離を行う。それにより得られた固形物を乾燥させることにより、シリカ多孔質凝集体を得ることができる。上記乾燥の条件は特に限定されるものではないが、例えば、100〜160℃で乾燥させることができる。また、上記乾燥に用いる装置も特に限定されるものではなく、従来公知の装置を用いることができる。そのような装置としては、例えば、フラッシュドライヤーを挙げることができる。このような装置を用いれば、瞬時に乾燥が行えるので、乾燥時に粒子同士が凝集するのを防ぐことができる。
【0065】
さらに、乾燥時に粒子同士が凝集するのを防ぐために、上記固液分離後、アセトンなどの適当な溶媒を用いて、固形物を洗浄してもよい。
【0066】
<IV.ハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体及びその製造方法>
本発明にかかるケイ酸カルシウム二次粒子凝集体をリン酸化合物で処理することにより、表層がハイドロキシアパタイトで被覆されたシリカ多孔質凝集体(以下、「ハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体」ともいう)を製造することができる。本発明には、このように表層がハイドロキシアパタイトで被覆されたシリカ多孔質凝集体及びその製造方法も含まれる。
【0067】
本発明にかかるハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体は、箔状又は繊維状の一次粒子が三次元的に絡み合って二次粒子を形成したシリカ多孔質凝集体の表層がハイドロキシアパタイトで被覆されたものである。また、本発明にかかるハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体は、後述の実施例にも示されているように、濾過特性、タンパク吸着能、ホルムアルデヒド吸着能及び分解能が優れている。具体的には、以下の(a’)〜(e’)の物性を有することが好ましい。
(a’)平均粒子径が5〜20μmであることが好ましい。
(b’)嵩密度が0.10〜0.40g/cmであることが好ましい。
(c’)BET比表面積が50〜300m/gであることが好ましい。
(d’)透過率が0.15Darcy以上であることが好ましい。
(e’)VOC吸着量が1.5mg/g以上であることが好ましい。
【0068】
なお、上記物性の測定方法は、<III.シリカ多孔質凝集体及びその製造方法>で述べた方法と同一である。
【0069】
本発明にかかるハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体の製造方法について、以下詳細に説明する。
【0070】
本発明にかかるハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体は、上記ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体含有スラリーをリン酸化合物処理することにより製造することができる。より具体的には、本発明にかかるハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体の製造方法は、(A)ケイ酸原料と石灰原料とを混合し、水又は水酸化アルカリ水溶液に分散させ、水性スラリーを調製する工程(以下、「水性スラリー調製工程」ともいう)と、(B)上記水性スラリーにおいて、常圧下、100℃以下で、ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体を水熱合成する工程(以下、「水熱合成工程」ともいう)と、(D)上記(B)工程後の水性スラリーをリン酸化合物処理する工程(以下、「リン酸化合物処理工程」ともいう)とによって構成することができる。また、本発明にかかるハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体の製造方法は、(E)上記(D)工程後、固形物を分離回収する工程(以下、「分離回収工程」ともいう)を含んでいてもよい。以下、上記リン酸化合物処理工程について詳細に述べることにする。なお、上記水性スラリー調製工程及び水熱合成工程は、<II.ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体及びその製造方法>で述べたものと同一である。また、上記分離回収工程は、<III.シリカ多孔質凝集体及びその製造方法>で述べたものと同一である。したがって、これらの工程については、ここでは述べない。
【0071】
(IV−1)リン酸化合物処理工程
上記リン酸化合物処理工程では、上記水熱合成工程後のケイ酸カルシウム二次粒子凝集体含有スラリーをリン酸化合物処理する。これにより、ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体中の酸化カルシウムが溶出すると同時に、溶出した酸化カルシウムとリン酸化合物とが反応し、ハイドロキシアパタイトが生成される。その結果、表層がハイドロキシアパタイトで被覆されたシリカ多孔質凝集体が得られる。
【0072】
なお、本明細書において、「ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体含有スラリーをリン酸化合物処理する」とは、ケイ酸カルシウム二次粒子中の酸化カルシウムとリン酸化合物を反応させることを意味する。したがって、ケイ酸カルシウムとリン酸化合物とが接触すればよく、その添加方法などは特に限定されない。例えば、水性スラリーに、リン酸化合物の溶液を添加すればよい。また、固体のリン酸化合物を、上記水性スラリーに添加して、当該水性スラリー中で、リン酸化合物を溶解し、ケイ酸カルシウムとリン酸化合物とを反応させてもよい。
【0073】
上記リン酸化合物は、カルシウム化合物でなければ、特に限定されるものではない。具体的には、リン酸又はリン酸塩(カルシウム塩を除く)であることが好ましく、リン酸塩であることがより好ましい。また、リン酸化合物として、リン酸とリン酸塩とを併用してもよい。上記リン酸塩としては、例えば、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、第三リン酸カリウム、ピロリン酸カリウム、第一リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、第三リン酸アンモニウム、第一リン酸カルシウム、リン酸水素アンモニウムナトリウム、ピロリン水素ナトリウム、ピロリン酸水素カリウム、ピロリン酸アンモニウム、メタリン酸ナトリウム、及びメタリン酸アンモニウム等を挙げることができる。これらのリン酸塩は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
上記リン酸化合物処理工程において、上記ハイドロキシアパタイトの生成反応はpHが7.0以上の中性又は塩基性領域で進行すると微細なハイドロキシアパタイトとなる。したがって、上記ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体含有スラリーに、上記リン酸化合物を添加する方法は特に限定されるものではないが、pHが7.0よりも低くならないように添加することが好ましく、pHが7.5よりも低くならないように添加することがより好ましい。すなわち、微細なハイドロキシアパタイトを析出させるために、上記リン酸化合物処理工程では、pHを7.0〜8.0に保つことが好ましく、7.5〜8.0に保つことがさらに好ましい。
【0075】
また、上記リン酸化合物処理工程における処理温度及び処理時間は特に限定されるものではなく、上記のハイドロキシアパタイトの生成反応が起こるのに十分な処理温度、及び処理時間であればよい。
【0076】
具体的には、上記処理温度は、60℃〜100℃とすることが好ましく、80℃〜100℃とすることがより好ましい。上記範囲内であれば、好適にハイドロキシアパタイトの生成反応が起こる。また、上記処理時間は、リン酸イオン濃度、反応温度及びハイドロキシアパタイトで被覆される表層の厚さにより適宜変更すればよい。具体的には、処理する量によって異なるが、一般的には1時間から数十時間の範囲で処理すればよい。
【0077】
<V.シリカ多孔質凝集体の製造装置>
本発明にかかるシリカ多孔質凝集体の製造装置は、上述したシリカ多孔質凝集体の製造方法及びハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体の製造方法を実施するのに好適に用いることができるものである。
【0078】
具体的には、上記シリカ多孔質凝集体の製造装置は、(i)ケイ酸原料と石灰原料とを混合し、水又は水酸化アルカリ水溶液に分散させる混合部(混合手段)と、(ii)ケイ酸原料と石灰原料とが水又は水酸化アルカリ水溶液に分散された水性スラリーを、常圧下、100℃以下で加熱するための加熱部(加熱手段)と、(iii)上記加熱部によって加熱された水性スラリーを、酸処理もしくはリン酸化合物処理するための酸処理部(酸処理手段)と、(iv)上記酸処理部によって酸処理もしくはリン酸化合物処理されたスラリーを、固液分離し、固形物を乾燥させる分離乾燥部(分離乾燥手段)とを少なくとも備えていればよく、その他の具体的な構成については特に限定されるものではない。
【0079】
上記混合部は、上記の(II−1)で述べた水性スラリー調製工程を実施できるものであればよく、その具体的な構成は特に限定されない。例えば、ケイ酸原料、石灰原料及び水又はアルカリ水溶液を反応容器に直接入れて攪拌しながら反応させる方法や、ホモジナイザーや従来公知の懸濁液製造装置を用いる方法によって実現することができる。
【0080】
上記加熱部は、上記の(II−2)で述べた水熱合成工程を実施できるものであればよく、その具体的な構成は特に限定されるものではない。例えば、オートクレーブを加圧せずに用いることで実現することができる。
【0081】
上記酸処理部は、上記の(III−1)で述べた酸処理工程、及び上記の(IV−1)で述べたリン酸化合物処理工程を実施できるものであればよく、その具体的な構成は特に限定されるものではない。例えば、pHコントローラと、それに接続された液送ポンプとを組み合わせることによって実現することができる。
【0082】
上記分離乾燥部は、上記の(III−2)で述べた分離回収工程を実施できるものであればよく、その具体的な構成は特に限定されるものではない。例えば、濾過器や遠心分離機のような従来公知の固液分離装置と、フラッシュドライヤーのような公知の乾燥装置とを組み合わせることによって、実現することができる。
【0083】
<VI.本発明の利用>
本発明は、上述したように、常圧下、100℃以下でケイ酸カルシウム二次粒子凝集体の製造を可能にするものである。本発明にかかる製造方法により得られるケイ酸カルシウム二次粒子凝集体は、シリカ多孔質凝集体及びハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体の製造に用いることができる物性を有している。
【0084】
したがって、本発明によれば、安定供給可能な非晶質ケイ酸原料と石灰原料を用い、従来のケイソウ土濾過助剤に匹敵する濾過特性と化学的安定性を有する濾過助剤、及びシリカゲルに匹敵する比表面積、細孔容積、細孔径を有し、シリカゲルより優れたタンパク質の吸着能、並びにハイドロキシアパタイトより優れたVOCガス吸着能及び分解能を有するシリカ多孔質凝集体及びハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体を簡単かつ短時間で製造することができる。
【0085】
さらに、上述したシリカ多孔質凝集体、及びハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体の製造方法に記載した原料や反応条件を調整することにより、目的に応じた粒子径や結晶形態のシリカ多孔質凝集体及びハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体を製造することもできる。
【0086】
したがって、本発明にかかる方法で得られるシリカ多孔質凝集体及びハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体は、様々な分野に利用することができる。例えば、ビール用ろ過助剤として利用することができる。また、それ以外にも、医療関係、食品関係、農薬関係、化粧品関係など広範で利用する濾過助剤や吸着剤としても好適に用いることができる。また、本発明にかかるシリカ多孔質凝集体及びハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体は、VOCガス吸着能及び分解能、タンパク質の吸着能、並びに濾過特性に優れているため、生活環境浄化の目的で利用することもできる。
【0087】
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0088】
本発明について、実施例、比較例、及び参考例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、及び改変を行うことができる。なお、以下の実施例、比較例、及び参考例における非晶質ケイ酸原料の平均粒子径、シリカ多孔質凝集体及びハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体の平均粒子径、BET比表面積、嵩密度、透過率(Darcy)、チトクロームCの吸着量、ホルムアルデヒドの吸着量、及びホルムアルデヒドの分解量は、次のようにして評価した。
【0089】
〔非晶質ケイ酸原料の平均粒子径〕
レーザー回析・散乱式粒度分布測定装置を用い、粒子径は体積基準で、平均粒子径(メジアン径)を求めた。
【0090】
〔シリカ多孔質凝集体及びハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体の平均粒子径〕
走査型電子顕微鏡(SEM)を用い写真撮影し、約150個の粒子径測定を行い、平均粒子径を求めた。
【0091】
〔BET比表面積〕
BET比表面積測定装置を用い、200℃で十分に加熱脱気した試料について、窒素ガスを吸着させる多点法による比表面積を求めた。
【0092】
〔嵩密度〕
メスシリンダーの中に試料を約50ml入れ、タッピングして充填容積が一定になったところを容積とし、試料の重量及び容積から嵩密度を求めた。
【0093】
〔透過率(Darcy)〕
濾過面積8.5cmの円柱状加圧濾過器を用い、濾過板の上に約2cmのケーク層を形成させ、次にケーク層を崩さないように200mlの水を注ぎ込み、0.1Kg/cmで加圧し、濾液の採取量から透過率(Darcy)を求めた。
【0094】
〔タンパク質の吸着量〕
pH4に調整した500μg/mlのチトクロームC水溶液を100ml採取し、これに試料0.3gを投入した。30℃の恒温インキュベーターで1時間浸透後、5Cの濾紙を用いて濾過した。この濾液中のチトクロームCの残量を分光光度計を用いて吸光度(波長410nm)を測定し、初期濃度との差から吸着量を求めた。
【0095】
〔ホルムアルデヒドの吸着量〕
22.5Lの攪拌機付きデシケータ、エアーポンプ、カラム、気化容器を用い、系全体の空気をエアーポンプで減圧した。その後、窒素ガスを充填し、気化容器に系全体の濃度が約40ppmにホルムアルデヒドを添加した。カラムに試料を0.1g充填して、ホルムアルデヒドを系全体に循環させながら試料への吸着を行った。60分後に検知管でホルムアルデヒド濃度を測定した。初期濃度との差から吸着量を求めた。
【0096】
〔ホルムアルデヒドの分解量〕
実験用試料は、次のようにして得た。まず、解砕したパルプスラリーを濾過してパルプシートにした。その後、パルプシート重量に対して試料重量が10%になるよう水に分散させたスラリーを当該パルプシートに供し、濾過した後、120℃で乾燥させた。次に、試料重量に対して10%になるように、希釈した酸化チタン(アナターゼ)水溶液を乾燥させた試料含有パルプシートに吹き付けて、120℃で乾燥させた。このようにして、試料含有パルプシート、すなわち実験用試料を得た。これを用いて以下の操作を行った。
【0097】
まず、22.5Lの攪拌機付きデシケータ、エアーポンプ、カラム、気化容器を用い、系全体の空気をエアーポンプで減圧した。その後、窒素ガスを充填し、気化容器に系全体の濃度が約40ppmにホルムアルデヒドを添加した。カラムに、上記のようにして得た試料含有パルプシートを入れ、カラムの部分を蛍光灯(白色灯)で左右から照射し、ホルムアルデヒドを系全体に循環させながら試料への吸着を行い、60分後に検知管でホルムアルデヒド濃度を測定した。初期濃度との差から分解量を求めた。
【0098】
〔実施例1:シリカ多孔質凝集体の製造〕
ケイ酸原料には、シリコンウエハー製造工程で使用されるルツボを粉砕した非晶質シリカ(平均粒子径3.7μm)を用いた。当該非晶質シリカと生石灰原料とを、CaO/SiOモル比が0.5になるように反応容器に直接投入し、原料全量100gに対して、重量比で20倍の0.05モルのNaOH溶液を加えてかきまぜ、スラリーを調製した。
【0099】
次いで、このスラリーを冷却管と撹拌機を取り付けた3Lのセバラブルフラスコに入れ、さらにこのセバラブルフラスコをウォーターバスに入れ、撹拌速度が200rpm、昇温速度が2.0℃/minとして95℃まで昇温して、95℃で8時間水熱反応を行い、ケイ酸カルシウムスラリーを得た。
【0100】
こうして得られたケイ酸カルシウムスラリーについて、X線回折による解析を行った。その結果、図1中のスペクトル(b)に示すように、ケイ酸原料として非晶質シリカを使用すると、未反応の水酸化カルシウムはなく、ケイ酸カルシウムが生成されることが分かった。
【0101】
このスラリ−濃度から計算して10g程度ケイ酸カルシウムを含有する量のスラリ−を分取し、それに水を加えて全体量を400ml程度にしたスラリ−を攪拌しながら70℃に加熱して、0.05モルのNaOH溶液水の中和及びケイ酸カルシウム中の酸化カルシウムを除去するのに必要な1モルの塩酸を以下のようにして添加した。この酸処理では、pHコントローラと、それに接続された液送ポンプを使用した。pHコントローラのpHを7に設定し、pH7までは20分間をかけ、1モルの塩酸を液送ポンプにより徐々に添加し、pH7で10分間保持した。その後1モルの塩酸を徐々に添加し、pH6で10分間保持した。その後の5分間で、1モルの塩酸を添加してpH3とし、15分間保持した。
【0102】
酸処理後、洗浄濾過して120℃で乾燥処理することにより、シリカ多孔質凝集体を得た。このようにして得られたシリカ多孔質凝集体について、X線回折による解析を行った。その結果、図2中のスペクトル(b)に示すように、23度付近に非晶質シリカ多孔体を示すブロードなピークが認められた。これにより、シリカ多孔質凝集体であることが確認できた。
【0103】
また、このシリカ多孔質凝集体の平均粒子径、BET比表面積、及び嵩密度を表1に、透過率(Darcy)、タンパク質の吸着量、ホルムアルデヒドの吸着量、及びホルムアルデヒドの分解量を表2に示す。
【0104】
【表1】

【0105】
【表2】

【0106】
〔実施例2:ハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体の製造〕
実施例1で得られたケイ酸カルシウムスラリー濃度から計算して10g程度ケイ酸カルシウムを含有する量のスラリ−を分取した。それに水を加えて全体量を400ml程度にしたスラリ−を攪拌しながら70℃に加熱して、0.05モルのNaOH溶液水の反応及びケイ酸カルシウム中の酸化カルシウムと反応してハイドロキシアパタイトを生成するのに必要なリン酸水素二アンモニウム量の1.3倍を添加し、1時間撹拌しながら保持した。その際、pH7.5以下にならないように注意し、pHが7.5以下になったら水酸化ナトリウムを添加しながら処理を行った。
【0107】
リン酸化合物処理後、洗浄濾過して120℃で乾燥処理することにより、ハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体を得た。このハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体の平均粒子径、BET比表面積、及び嵩密度を表1に、透過率(Darcy)、タンパク質の吸着量、ホルムアルデヒドの吸着量、及びホルムアルデヒドの分解量を表2に示す。
【0108】
〔実施例3:シリカ多孔質凝集体の製造〕
ケイ酸原料には、シリコンウエハー製造工程で使用されるルツボを粉砕した非晶質シリカ(平均粒子径3.7μm)を使用した。当該非晶質シリカと生石灰原料とを、CaO/SiOモル比が0.5になるように反応容器に直接投入し、原料全量100gに対して、重量比で20倍の水を加えてかきまぜ、スラリーを調製した。
【0109】
次いで、このスラリーを冷却管と撹拌機を取り付けた3Lのセバラブルフラスコに入れ、さらにこのセバラブルフラスコをウォーターバスに入れ、撹拌速度が200rpm、昇温速度が2.0℃/minとして90℃まで昇温して、90℃で20時間水熱反応を行い、ケイ酸カルシウムスラリーを得た。
【0110】
このスラリ−濃度から計算して10g程度ケイ酸カルシウムを含有する量のスラリ−を分取し、それに水を加えて全体量を400ml程度にしたスラリ−を攪拌しながら70℃に加熱して、pHコントローラに接続された液送ポンプを使用し、ケイ酸カルシウム中の酸化カルシウムを除去するのに必要な1モルの塩酸を徐々に添加し、30分間撹拌しながら保持した。その後、洗浄濾過して120℃で乾燥処理することにより、シリカ多孔質凝集体を得た。このシリカ多孔質凝集体の平均粒子径、BET比表面積、及び嵩密度を表1に、透過率(Darcy)、タンパク質の吸着量、ホルムアルデヒドの吸着量、及びホルムアルデヒドの分解量を表2に示す。
【0111】
〔実施例4:ハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体の製造〕
実施例3で得られたケイ酸カルシウムスラリー濃度から計算して10g程度ケイ酸カルシウムを含有する量のスラリ−を分取した。それに水を加えて全体量を400ml程度にしたスラリ−を攪拌しながら70℃に加熱して、ケイ酸カルシウム中の酸化カルシウムと反応してハイドロキシアパタイトを生成するのに必要なリン酸水素二アンモニウム量の1.3倍を添加し、1時間撹拌しながら保持した。
【0112】
その後、洗浄濾過して120℃で乾燥処理することにより、ハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体を得た。このハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体の平均粒子径、BET比表面積、及び嵩密度を表1に、透過率(Darcy)、タンパク質の吸着量、ホルムアルデヒドの吸着量、及びホルムアルデヒドの分解量を表2に示す。
【0113】
〔実施例5:シリカ多孔質凝集体の製造〕
ケイ酸原料には、シリコンウエハー製造工程で使用されるルツボを粉砕した非晶質シリカ(平均粒子径3.7μm)を使用した。当該非晶質シリカと生石灰原料とを、CaO/SiOモル比が0.5になるように反応容器に直接投入し、原料全量100gに対して、重量比で20倍の0.2モルのNaOH溶液水を加えてかきまぜ、スラリーを調製した。
【0114】
次いで、このスラリーを冷却管と撹拌機を取り付けた3Lのセバラブルフラスコに入れ、さらにこのセバラブルフラスコをウォーターバスに入れ、撹拌速度が200rpm、昇温速度が2.0℃/minとして95℃まで昇温して、95℃で8時間水熱反応を行い、ケイ酸カルシウムスラリーを得た。
【0115】
このスラリー濃度から計算して10g程度ケイ酸カルシウムを含有する量のスラリ−を分取し、それに水を加えて全体量を400ml程度にしたスラリ−を攪拌しながら70℃に加熱して、0.2モルのNaOH溶液水の中和及びケイ酸カルシウム中の酸化カルシウムを除去するのに必要な1モルの塩酸を以下のようにして添加した。なお、この酸処理には、pHコントローラと、それに接続された液送ポンプを使用した。pHコントローラのpHを8に設定し、pH8までは15分間をかけ、1モルの塩酸を液送ポンプにより徐々に添加し、pH8で10分間保持した。その後1モルの塩酸を徐々に添加し、pH7で10分間保持した。さらに、1モルの塩酸を徐々に添加し、pH6で10分間保持した。その後の5分間で、1モルの塩酸を添加してpH3とし、10分間保持した。
【0116】
酸処理後、洗浄濾過して120℃で乾燥処理することにより、シリカ多孔質凝集体を得た。このシリカ多孔質凝集体の平均粒子径、BET比表面積、及び嵩密度を表1に、透過率(Darcy)、タンパク質の吸着量、ホルムアルデヒドの吸着量、及びホルムアルデヒドの分解量を表2に示す。
【0117】
〔実施例6:ハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体の製造〕
実施例5で得られたケイ酸カルシウムスラリー濃度から計算して10g程度ケイ酸カルシウムを含有する量のスラリ−を分取した。それに水を加えて全体量を400ml程度にしたスラリ−を攪拌しながら70℃に加熱して、0.2モルのNaOH溶液水の反応及びケイ酸カルシウム中の酸化カルシウムと反応してハイドロキシアパタイトを生成するのに必要なリン酸水素二アンモニウム量の1.3倍を添加し、1時間撹拌しながら保持した。
【0118】
その後、洗浄濾過して120℃で乾燥処理することにより、ハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体を得た。このハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体の平均粒子径、BET比表面積、及び嵩密度を表1に、透過率(Darcy)、タンパク質の吸着量、ホルムアルデヒドの吸着量、及びホルムアルデヒドの分解量を表2に示す。
【0119】
〔実施例7:シリカ多孔質凝集体の製造〕
ケイ酸原料にはシリコンウエハー製造工程で使用されるルツボを粉砕した非晶質シリカ(平均粒子径3.7μm)を使用した。当該非晶質シリカと生石灰原料とを、CaO/SiOモル比が0.3になるように反応容器に直接投入し、原料全量100gに対して、重量比で20倍の0.2モルのNaOH溶液水を加えてかきまぜ、スラリーを調製した。
【0120】
次いで、このスラリーを冷却管と撹拌機を取り付けた3Lのセバラブルフラスコに入れ、さらにこのセバラブルフラスコをウォーターバスに入れ、撹拌速度が200rpm、昇温速度が2.0℃/minとして95℃まで昇温して、95℃で8時間水熱反応を行い、ケイ酸カルシウムスラリーを得た。
【0121】
このスラリ−濃度から計算して10g程度ケイ酸カルシウムを含有する量のスラリ−を分取した。それに水を加えて全体量を400ml程度にしたスラリ−を攪拌しながら70℃に加熱して、pHコントローラに接続された液送ポンプを使用し、0.2モルのNaOH溶液水の中和及びケイ酸カルシウム中の酸化カルシウムを除去するのに必要な1モルの塩酸を徐々に添加し、30分間撹拌しながら保持した。
【0122】
その後、洗浄濾過して120℃で乾燥処理することにより、シリカ多孔質凝集体を得た。このシリカ多孔質凝集体の平均粒子径、BET比表面積、及び嵩密度を表1に、透過率(Darcy)、タンパク質の吸着量、ホルムアルデヒドの吸着量、及びホルムアルデヒドの分解量を表2に示す。
【0123】
〔実施例8:ハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体の製造〕
実施例7で得られたケイ酸カルシウムスラリー濃度から計算して10g程度ケイ酸カルシウムを含有する量のスラリ−を分取した。それに水を加えて全体量を400ml程度にしたスラリ−を攪拌しながら70℃に加熱して、0.2モルのNaOH溶液水の反応及びケイ酸カルシウム中の酸化カルシウムと反応してハイドロキシアパタイトを生成するのに必要なリン酸水素二アンモニウム量の1.3倍を添加し、30時間撹拌しながら保持した。
【0124】
その後、洗浄濾過して120℃で乾燥処理することにより、ハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体を得た。このハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体の平均粒子径、BET比表面積、及び嵩密度を表1に、透過率(Darcy)、タンパク質の吸着量、ホルムアルデヒドの吸着量、及びホルムアルデヒドの分解量を表2に示す。
【0125】
〔比較例1〕
ケイ酸原料には、市販の石英粒子を粉砕した結晶質シリカ(平均粒子径4.2μm)を用いた。当該結晶質シリカと生石灰原料とを、CaO/SiOモル比が0.5になるように反応容器に直接投入し、原料全量100gに対して、重量比で20倍の0.05モルのNaOH溶液を加えてかきまぜ、スラリーを調製した。
【0126】
次いで、このスラリーを冷却管と撹拌機とを取り付けた3Lのセバラブルフラスコに入れ、さらにこのセバラブルフラスコをウォーターバスに入れ、撹拌速度が200rpm、昇温速度が2.0℃/minとして95℃まで昇温して、95℃で8時間水熱反応を行い、ケイ酸カルシウムスラリーを得た。
【0127】
こうして得られたケイ酸カルシウムスラリーについて、X線回折による解析を行った。その結果、図1中のスペクトル(a)に示すように、ケイ酸原料として結晶質シリカを使用するとほとんど反応せず、未反応の石英と水酸化カルシウムとが多量に残っていた。
【0128】
このスラリ−濃度から計算して10g程度ケイ酸カルシウムを含有する量のスラリ−を分取した。それに水を加えて全体量を400ml程度にしたスラリ−を攪拌しながら70℃に加熱して、0.05モルのNaOH溶液水の中和及びケイ酸カルシウム中の酸化カルシウムを除去するのに必要な1モルの塩酸を以下のようにして添加した。この酸処理では、pHコントローラと、それに接続された液送ポンプを使用した。pHコントローラのpHを7に設定し、pH7までは20分間をかけ、1モルの塩酸を液送ポンプにより徐々に添加し、pH7で10分間保持した。その後1モルの塩酸を徐々に添加し、pH6で10分間保持した。その後の5分間で、1モルの塩酸を添加してpH3とし、15分間保持した。
【0129】
酸処理後、洗浄濾過して120℃で乾燥処理することにより、シリカ多孔質凝集体を得た。このようにして得られたシリカ多孔質凝集体について、X線回折による解析を行った。その結果、図2中のスペクトル(a)に示すように、石英のみで、シリカ多孔体の存在を示すブロードなピークは認められなかった。また、この試料の嵩密度は0.83g/cm、BET比表面積は19m/gであった。
【0130】
さらに、このシリカ多孔質凝集体の平均粒子径、BET比表面積、及び嵩密度を表1に、透過率(Darcy)、タンパク質の吸着量、ホルムアルデヒドの吸着量、及びホルムアルデヒドの分解量を表2に示す。
【0131】
〔比較例2〕
比較例1で得られたケイ酸カルシウムスラリー濃度から計算して10g程度ケイ酸カルシウムを含有する量のスラリ−を分取した。それに水を加えて全体量を400ml程度にしたスラリ−を攪拌しながら70℃に加熱して、0.05モルのNaOH溶液水の反応及びケイ酸カルシウム中の酸化カルシウムと反応してハイドロキシアパタイトを生成するのに必要なリン酸水素二アンモニウム量の1.3倍を添加し、1時間撹拌しながら保持した。
【0132】
リン酸化合物処理後、洗浄濾過して120℃で乾燥処理することにより、ハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体を得た。このハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体の平均粒子径、BET比表面積、及び嵩密度を表1に、透過率(Darcy)、タンパク質の吸着量、ホルムアルデヒドの吸着量、及びホルムアルデヒドの分解量を表2に示す。
【0133】
〔比較例3〕
ケイ酸原料には、シリコンウエハー製造工程で使用されるルツボを粉砕した非晶質シリカ(平均粒子径3.7μm)を使用した。当該非晶質シリカと生石灰原料とを、CaO/SiOモル比が0.8になるように反応容器に直接投入し、原料全量100gに対して、重量比で20倍の0.2モルのNaOH溶液を加えてかきまぜ、スラリーを調製した。
【0134】
次いで、このスラリーを冷却管と撹拌機とを取り付けた3Lのセバラブルフラスコに入れ、さらにこのセバラブルフラスコをウォーターバスに入れ、撹拌速度が200rpm、昇温速度が2.0℃/minとして95℃まで昇温して、95℃で8時間水熱反応を行い、ケイ酸カルシウムスラリーを得た。
【0135】
このスラリ−濃度から計算して10g程度ケイ酸カルシウムを含有する量のスラリ−を分取した。それに水を加えて全体量を400ml程度にしたスラリ−を攪拌しながら70℃に加熱して、0.2モルのNaOH溶液水の中和及びケイ酸カルシウム中の酸化カルシウムを除去するのに必要な1モルの塩酸を以下のようにして添加した。なお、この酸処理には、pHコントローラと、それに接続された液送ポンプを使用した。pHコントローラのpHを8に設定し、pH8までは15分間をかけ、1モルの塩酸を液送ポンプにより徐々に添加し、pH8で10分間保持した。その後1モルの塩酸を徐々に添加し、pH7で10分間保持した。さらに、1モルの塩酸を徐々に添加し、pH6で10分間保持した。その後の5分間で、1モルの塩酸を添加してpH3とし、10分間保持した。
【0136】
酸処理後、洗浄濾過して120℃で乾燥処理することにより、シリカ多孔質凝集体を得た。このシリカ多孔質凝集体の平均粒子径、BET比表面積、及び嵩密度を表1に、透過率(Darcy)、タンパク質の吸着量、ホルムアルデヒドの吸着量、及びホルムアルデヒドの分解量を表2に示す。
【0137】
〔比較例4〕
比較例3で得られたケイ酸カルシウムスラリー濃度から計算して10g程度ケイ酸カルシウムを含有する量のスラリ−を分取した。それに水を加えて全体量を400ml程度にしたスラリ−を攪拌しながら70℃に加熱して、0.05モルのNaOH溶液水の反応及びケイ酸カルシウム中の酸化カルシウムと反応してハイドロキシアパタイトを生成するのに必要なリン酸水素二アンモニウム量の1.3倍を添加し、1時間撹拌しながら保持した。その際、pH7.5以下にならないように注意し、pHが7.5以下になったら水酸化ナトリウムを添加しながら処理を行った。
【0138】
リン酸化合物処理後、洗浄濾過して120℃で乾燥処理することにより、ハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体を得た。このハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体の平均粒子径、BET比表面積、及び嵩密度を表1に、透過率(Darcy)、タンパク質の吸着量、ホルムアルデヒドの吸着量、及びホルムアルデヒドの分解量を表2に示す。
【0139】
〔参考例1〜3〕
市販のケイソウ土系濾過助剤(参考例1)、市販のビール安定化処理用シリカゲル(参考例2)及び市販のVOCガス吸着用ハイドロキシアパタイト(参考例3)の性能を表1及び2に示す。
【0140】
なお、本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【産業上の利用可能性】
【0141】
以上のように、本発明では、100℃以下、常圧下でケイ酸カルシウム二次粒子凝集体を製造するため、ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体を簡便に、かつ安価に生産性よく製造することが可能となる。そのため、本発明は、ケイ酸カルシウム多孔質凝集体や、シリカ多孔質凝集体、ハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体を用いた触媒担体、化粧品、タンパク質、VOCガスなどの吸着剤、吸臭剤、濾過助剤やその製造に利用することができる。さらに、そのような吸着剤や、吸臭剤、濾過助剤を用いる産業、例えば、ビール産業、医療産業、食品産業、農薬産業、及び化粧品産業など広範な産業に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】図1は、本発明の実施例および比較例におけるケイ酸カルシウム二次粒子凝集体のX線回折の結果を示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施例および比較例におけるシリカ多孔質凝集体のX線回折の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ケイ酸原料と石灰原料とを、それぞれSiO及びCaOに換算したときのモル比CaO/SiOが0.2〜0.7の範囲内で混合し、水又は水酸化アルカリ水溶液に分散させ、水性スラリーを調製する工程と、
(B)上記水性スラリーを、常圧下、100℃以下で加熱することによって、ケイ酸カルシウム二次粒子凝集体を水熱合成する工程とを含み、
上記ケイ酸原料は、非晶質ケイ酸原料であることを特徴とするケイ酸カルシウム二次粒子凝集体の製造方法。
【請求項2】
上記ケイ酸原料は、非晶質ガラス、非晶質ケイ酸、水ガラス、及びホワイトカーボンからなる群より選択されるSiO少含有物質を少なくとも1つ含むことを特徴とする請求項1に記載のケイ酸カルシウム二次粒子凝集体の製造方法。
【請求項3】
上記石灰原料は、生石灰、消石灰、又は生石灰と消石灰との混合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のケイ酸カルシウム二次粒子凝集体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のケイ酸カルシウム二次粒子凝集体の製造方法を1工程に含み、
(C)上記(B)工程後の水性スラリーを酸処理する工程をさらに含むことを特徴とする、シリカ多孔質凝集体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のケイ酸カルシウム二次粒子凝集体の製造方法を1工程に含み、
(D)上記(B)工程後の水性スラリーをリン酸化合物処理する工程をさらに含むことを特徴とするハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体の製造方法。
【請求項6】
シリカ多孔質凝集体又はハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体を製造するための製造装置であって、
ケイ酸原料と石灰原料とを混合し、水又は水酸化アルカリ水溶液に分散させる混合手段と
ケイ酸原料と石灰原料とが水又は水酸化アルカリ水溶液に分散された水性スラリーを、常圧下、100℃以下で加熱するための加熱手段と、
上記加熱手段によって加熱された水性スラリーを、酸処理もしくはリン酸化合物処理するための酸処理手段と、
上記酸処理手段によって酸処理もしくはリン酸化合物処理されたスラリーを、固液分離し、固形物を乾燥させる分離乾燥手段とを備えることを特徴とする製造装置。
【請求項7】
箔状又は繊維状の一次粒子が三次元的に絡み合って二次粒子を形成したシリカ多孔質凝集体であって、
平均粒子径が5〜20μmであり、嵩密度が0.08〜0.30g/cmであり、BET比表面積が200〜900m/gであり、透過率が0.15Darcy以上であり、VOC吸着量が1.5mg/g以上であることを特徴とするシリカ多孔質凝集体。
【請求項8】
箔状又は繊維状の一次粒子が三次元的に絡み合って二次粒子を形成したハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体であって、
平均粒子径が5〜20μmであり、嵩密度が0.10〜0.40g/cmであり、BET比表面積が50〜300m/gであり、透過率が0.15Darcy以上であり、VOC吸着量が1.5mg/g以上であることを特徴とするハイドロキシアパタイト被覆シリカ多孔質凝集体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−238412(P2007−238412A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66777(P2006−66777)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】