説明

ケイ酸カルシウム水和物の製造方法および製造装置

ケイ酸カルシウム水和物の製造方法と装置である。カルシウム材料を懸濁剤またはゲル化剤と結合させる。生成ゲルをケイ酸含有材料と結合させて、好ましくは均一な反応性マトリックスを形成する。その後、このマトリックスは、高温高圧を受けて、混合または撹拌の必要なしにケイ酸カルシウム水和物を形成する。生成したケイ酸カルシウム水和物は、約35%以上の高反応後固形分を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ酸カルシウム水和物の製造に関するものであり、限定するものではないが、特に高固形分(high solids content)のケイ酸カルシウム水和物の製造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
中密度繊維セメント(fiber cement)製品は、固有の特性および繊維セメントを適用できる応用範囲のために、建設工業において高い需要がある。繊維セメントの有益な特性のいくつかとしては、曲げ、腐食、火および湿気に対する耐性があげられ、それらは、内部湿潤領域のライニング、外部被覆加工、装飾(trim)、外棚工事、床工事、軒および甲板に用いる材料のような多様の応用に有用である。中密度繊維セメントの制限の1つは、木材やビニルのような代替物に対する製品の重量である。
【0003】
全ての中密度繊維セメント製品を低密度に変換するための製造業者の能力は、密度低減繊維セメントの製造に使用される低密度添加剤を提供するコストにより制限されている。そのような添加剤の1つに、ケイ酸カルシウム(水和物)の頭文字である、「Calsil」があり、それは、典型的には、消石灰とシリカとを結合し、それを高温高圧で所定の時間、容器中で撹拌することにより製造されている。このプロセス(および同等法)は、高コストの撹拌反応器を使用しており、またスラリーが、低い固体含有量、典型的には10%で形成されているという事実のために、相対的に高コストでCalsilを製造している。
【0004】
先行技術においては、ケイ酸カルシウム製品の製造は、撹拌反応器中において、水中でカルシウム材料と砂などのケイ酸含有材料とを混合することにより、希薄なスラリーを形成することを含んでいる。この混合物は、オートクレーブ中で加熱され、温度、圧力、反応時間、および使用される水の濃度に応じて、種々の結晶形状のケイ酸カルシウムを形成する。ケイ酸カルシウム水和物の熱水形成およびそれらの処理の種々の形態を記載している関係特許としては、米国特許第4574012、第4427611、第4490320、第4490320、第4629508、第4447380、第4131638、第6346146、および欧州特許第0562112およびWO96/11877が、挙げられる。
【0005】
いくつかのケースにおいて、先行技術は、反応条件によって悪影響を及ぼさないアスベストなどの繊維状材料が、加工の前に混合物中に組み入れられても良く、あるいは感温繊維を、後処理でスラリーに直接添加できることを示している。この処理の製品は、一般的には、所望の繊維質成分と混合されたケイ酸カルシウム水和物結晶の水性スラリーである。このスラリーを金型に鋳込み、通常は加熱して乾燥し、所望の最終形状物を形成する。
【0006】
ケイ酸カルシウム水和物結晶あるいは凝集体は、成型製品あるいは形状製品(molded or shaped products)以外の多くの目的に利用できる。たとえば、米国特許第5100643、第5401481および第5047222では、該物を形成し、結晶を得て、有毒ガス成分を除去するために、気流中での吸着剤として使用する。他の応用としては、形成されたケイ酸カルシウムスラリーを、不透明化剤として製紙に直接使用すること(PCT特許第WO01/14274)、あるいはハチェク(Hatschek)機械中にスラリーを直接使用し、低密度繊維セメントボードを形成すること(米国特許第6346146)などが、挙げられる。
【0007】
先行技術における共通点は、ケイ酸カルシウム水和物が、撹拌反応器を用いて、全て希薄スラリー(dillute slurries)(典型的には、ほぼ10%固形分)で製造されていることであり、また該物は、スラリーから回収され、最終製品中で使用されるということである。驚くべきことに、数人の発明者のみが、ケイ酸カルシウム水和物のスラリーの乾燥要件を削減しあるいは除去するという課題に打ち勝つことをこれまで試みてきただけであった。これらの方法のいくつかとしては、形状を設けられたケイ酸カルシウム本体から水分を追い出すために、オートクレーブを振動させること(欧州特許番号EP0624561)、スラリーの粘度を変えて高固形分スラリーを可能にし、オートクレーブ中で反応させること(米国特許第4545970)、および粉状のカルシウム材料およびケイ酸含有材料をスチームと反応させることにより、高固形分(75%)で比較的大きな粒度の(2から40ミリ)ケイ酸塩造粒体を製造する方法(米国特許第4394176)が、挙げられる。
【0008】
高固形分のケイ酸カルシウム物を達成するための他のルートは、製造の種々の段階における水の使用を最小限にすることである。これらの技術は、カルシウムのおよびケイ酸含有の出発材料の一部を「ゲル化」し、その後、このゲル中に処方(formulation)のバランスを結びつけることを目的としている(米国特許第5330573)。米国特許第4523955および第4477397中には、さらにフィルタープレスされ絶縁製品を製造するケイ酸カルシウムゲルが記載され、また最後に、PCT特許番号WO96/34839には、絶縁性材料の製造のための「安定化試薬」の使用が記載されている。
【0009】
以上リストアップした先行技術は、Calsilを作るのに適した可能な処方をカバーしているのみならず、オートクレーブ条件の範囲を適当にする処方をカバーしている。さらに、カルシウム材料およびケイ酸含有材料との予備反応をして、最初にゲルを形成させ、その後このゲルをさらにケイ酸含有材料と反応させることは、先行技術でカバーされている。しかし、先行技術は、スラリーを脱水する必要なしに直接Calsilを製造することを、述べていない。さらに、この文献は、高価な撹拌オートクレーブを必要としないCalsilの製造法を提供していない(特に粒体を作成する米国特許第4394176を除く)。さらには、この文献は、微細な粒度、すなわち粒体ではない高固形分で作られたCalsilを製造する方法をも提供していない(前記理由で、再び米国特許第4394176を除く)。
【0010】
本出願人らは、ケイ酸カルシウム水和物が、特定の建設用製品において、優れた密度改質材料であることを見出した。不幸にも、ケイ酸カルシウム水和物用の従来の製造方法は、相対的に低固形分、たとえば約10%を持ったスラリー形状の材料を提供している。このスラリー形状の低密度添加剤は、生産プロセス技術が、脱水工程たとえば、ハチェックを含むという条件で、繊維強化セメント複合材などの建設材料を生産するプロセスに好ましく受け入れられている。しかし、このような高含水率により、低固体スラリー形状の他プロセスへの応用が、制限されている。たとえば、その製造プロセスが、脱水工程を含まない場合には、そのプロセスに包含される前に、低密度添加剤のスラリーを脱水しなければならない。このことは、撹拌あるいはろ過および他の乾燥プロセスを用いて、過剰の水分を煮沸して除去することにより達成できる。明らかに、そのような初期脱水工程は、エネルギー集中であり、このため全生産コストに跳ね返る。
【0011】
さらに、コストの大きな割合が、スラリー中に含まれる水の重量に関係しているので、低固体スラリー形状の輸送は、一般的に実行できるものではない。一方、この低固体スラリーは、このような輸送コストを避けるために、現場で製造されているが、このことは、撹拌反応槽を必要とし、代わりに、高い資本投資を必要とする。
【0012】
本発明の目的は、先行技術の少なくも1つの不利な点を克服しあるいは改良することであり、あるいは有用な代替法を提供することである。
【発明の開示】
【0013】
[発明が解決しようとする課題]
第1の態様においては、本発明は、高温高圧下において、カルシウム材料(calcareous material)をケイ酸含有材料に水性環境中で充分な時間接触させ、カルシウム材料とケイ酸含有材料とを反応させ、ケイ酸カルシウム水和物を形成することからなるケイ酸カルシウム水和物の製造方法であって、該反応の前に、所定量の懸濁剤を加えて、少しの撹拌をして、あるいは撹拌せずに該反応を起こさせる製造方法を提供することである。
【0014】
好ましくは、上記の方法において、前記成分は、次のように組み合わされる。カルシウム材料を、水、好ましくは予熱(pre-heated)された水と混合することにより、カルシウム材料のスラリーを形成し、消石灰スラリーが形成される。懸濁剤は、好ましくは、スラリーを形成するために水と混合され、必要に応じて加熱される。以下に述べる理由のために、懸濁剤は、少なくともいくらかのシリカ、好ましくは非晶質シリカを含んでいることが好ましい。
【0015】
好ましい実施の形態においては、懸濁剤は、カルシウム材料および/またはケイ酸含有材料、および/または水と接触させることにより、ゲルを形成するために適用されるゲル形成剤である。
【0016】
消石灰スラリーを、懸濁剤のスラリーと結合させてゲルを形成する前に、さらに水を用いて希釈しても良い。好ましい実施の形態においては、懸濁剤中のシリカは、消石灰スラリー中のカルシウムと反応することができ、ゲルの形成に役立つ。その後、この中間ゲルは、ケイ酸含有材料と結合し、高温高圧下でケイ酸カルシウム水和物を形成する。ケイ酸含有材料は、乾燥粉末状態で、あるいはスラリーとして、中間ゲルに添加されても良い。この反応を受ける材料が、実質的に均一になるように、ケイ酸含有材料をゲル中に混合することが好ましい。しかし、消石灰またはカルシウム材料とケイ酸含有材料との反応は、撹拌の必要も無く、成分の混合の必要も無く起きることを強調しておく。
【0017】
懸濁剤を適切に投与することにより、消石灰およびケイ酸含有材料は、懸濁液中に残り、撹拌の必要も無く、成分の混合の必要も無く行われるケイ酸カルシウム水和物の形成反応を起こさせる。
【0018】
生成したケイ酸カルシウム水和物は、たとえば、35〜60%という高固形分を有する。
【0019】
第2の態様においては、本発明は、35%をこえる反応後固形分(post-reaction solids content)をもつケイ酸カルシウム水和物を提供する。「反応後固形分」という言葉は、追加の脱水/乾燥をしていない反応直後のCSH材料の固形分を言う。
【0020】
ケイ酸カルシウム水和物製品の密度は、添加されたケイ酸含有材料の量に、大いに依存している。化学量論的量を使用する場合には、生成品は、ほぼ120〜200kg/m3のバルク密度を有している。過剰のシリカが添加される場合には、最終製品のバルク密度は、380〜460kg/m3に高められる。
【0021】
当業者なら容易に理解されるように、混合しないでケイ酸カルシウム水和物を製造する能力は、先行技術よりも著しく進んでいる。通常は、ケイ酸カルシウム水和物は、オートクレーブ中で混合/撹拌して形成されなければならない。このことが、まったく高価になりうる。他の変数、すなわち、混合/撹拌のレベルが制御されなければならないので、ある程度まで、この反応も予測できない。本発明の好ましい実施の形態は、混合/撹拌の必要なしにケイ酸カルシウム水和物を製造することにより、従来技術に対する代替法を提供する。この発明プロセスは、従来の非撹拌オートクレーブ中で行うことが出来る。
【0022】
本発明の好ましい実施の形態として、混合あるいは撹拌を必要としないが、やはり、撹拌反応容器中で行うことが適当であることは、理解されよう。
【0023】
第3の態様では、本発明は、ケイ酸カルシウム水和物の製造におけるゲルの使用を提供するものであり、該ゲルは、あらかじめ定められた温度/圧力プロファイルで、カルシウムスラリーとゲル形成剤とを組み合わせることにより形成され、またケイ酸含有材料と結合するような濃度(consistency)を有するものであり、該ケイ酸含有材料は、高温高圧でゲルとの次の反応のために、その中で懸濁され、ケイ酸カルシウム水和物を形成するものである。好ましくは、ゲル形成剤は、珪藻土あるいは粘土などの非晶質シリカ源である。
【0024】
他の態様においては、本発明は、懸濁され、かつ高温高圧を受けるように、さらにはカルシウムゲルとケイ酸含有材料とのあいだの反応を行わせてケイ酸カルシウム水和物を形成するように適用されたケイ酸含有材料の均一分布をもつカルシウムゲルからなる反応性マトリックスを提供する。
【0025】
さらなる他の態様において、本発明は、ケイ酸カルシウム水和物の製造における懸濁剤の使用を提供するものであって、この懸濁剤は、カルシウム成分およびケイ酸含有成分と結合して、該成分を懸濁液中に保持し、かつ混合あるいは撹拌の必要も無く該成分間の反応を行わせるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は、以下の工程を含む高固体(high solids)ケイ酸カルシウム水和物を作る方法を示す。
【0027】
工程100:消石灰の製造
本工程では、消石灰を従来の方法で製造する。通常のカルシウム反応剤のいずれも使用しても良いが、好ましい反応剤は、大きな表面積を生じるように消和された生石灰である。これは、生石灰を粉砕し、標準44ミクロン(No.325)メッシュ篩を通過させ、この粉体化生石灰を、約4倍重量の水、好ましくは約100℃に予熱された水と混合することにより達成される。好ましい実施の態様の場合に使用するのに適した他のカルシウム源としては、石灰、ドロマイト石灰石、方解石石灰石、廃棄炭化物、貝殻、および他に知られている酸化カルシウム源が、挙げられる。
【0028】
およそ5〜30分のあいだの混合時間が典型的であり、また撹拌翼(impeller)付きの基本的な混合容器で充分である。この工程においては、混合物を均一にし、また固体が沈降しないことを確かなものとするために、十分な混合のみが必要とされ、高せん断力は必要ではない。固形分は、典型的には、おおよそ10〜50%の間、最適にはおおよそ20%である。
【0029】
工程150:水を用いた消石灰スラリーの希釈
石灰を消和した後、必要な場合には、消石灰スラリーに追加の水を添加する。水の量は、典型的には、工程100で使用される水のさらに6.5倍であり、全消石灰固体:水の比は、ほぼ1:26重量比となる。固形分は、典型的には、約2〜6%であり、最適には約3%である。そのような追加の水は、固体:水の含有量を望みの値にするために含まれることを注意するべきである。勿論、それらの全ての水は、消和工程100中に包含されていても良い。
【0030】
5〜30分のあいだの混合時間が典型的であって、工程100で使用されるのと同一の混合装置が使用される。
【0031】
工程200:懸濁剤の製造
本工程では、懸濁剤は、水と、必要により他の反応性ゲル化剤とを用いて高粘度スラリーを形成させることにより、製造される。懸濁剤は、カルシウム材料、ケイ酸含有材料(以下に述べる)あるいは水と接触する時に懸濁液あるいはゲルを形成するいずれの材料であってもよく、それにより、撹拌することなしに、懸濁液中に反応剤粒子(シリカおよび石灰)を保持することができ、懸濁剤として使用できることが、理解されよう。適当な懸濁剤としては、限定されるものではないが、珪藻土、シリカフューム(silica fume)あるいは他の非晶質シリカ含有材料(石灰は、これらに対するゲル化剤として必要)、粘土あるいは他の膨潤性ケイ酸含有材料あるいは鉱物、セルロースパルプあるいは他の類似の材料、あるいはこれらの組み合わせなどが、挙げられる。使用される懸濁剤にもよるが、処理する前に、懸濁剤スラリーを加熱することが好ましく、たとえば、珪藻土を使用するときには、ゲル化プロセスを加速するためにスラリーを加熱することが出来るが、粘土を使用するときには、加熱する必要は無い。
【0032】
好ましい粘土は、高膨潤性グレードのベントナイト(粘土1gに対して11mlの水を吸収する)であろう。このスラリーは、典型的には約7〜20%、最適には約14%の固形分で製造される。
【0033】
約5〜30分の混合時間が典型的であり、また撹拌翼付きの基本的な混合容器で充分である。しかし、集合体を分離破壊し、かつ完全に粒子を分散させるためには、高せん断撹拌翼が望ましい。
【0034】
工程300:消石灰と懸濁剤との結合
本工程では、懸濁剤スラリーが、消石灰スラリーに添加される。混合物は、集合体の沈降の無いことが確かめられるまで、低速度で撹拌される。固形分は、約5%重量比未満である。
【0035】
この点に関して、この実施の態様は、懸濁剤が最初に消石灰に添加され、その後続いてケイ酸含有材料に添加される場合を示しているが、カルシウム材料およびケイ酸含有材料と同時に等しく添加できるし、あるいは、最初は、ケイ酸含有材料と結合させ、続いてカルシウム材料と結合させてもよい。
【0036】
ゲルを形成する時間は、使用する懸濁剤および混合物の温度プロファイルと共に変化する。たとえば、珪藻土を懸濁剤として使用する場合には、懸濁剤スラリーを約100℃に近い温度にし、かつその温度で低速度撹拌を続けて、主としてケイ酸カルシウム水和物(CSH)であるゲルを形成する。粘土を懸濁剤として使用するときには、加熱することなく、低速度あるいは周期的撹拌(約10分毎)して、約15分から6時間(好ましくは、約30分)スラリーを放置する。いずれの技術においても、スラリーは、約30分後に「豆腐(bean curd)」の濃度(consistency)を持つことになる。
【0037】
適当な懸濁剤としては、限定されるものではないが、珪藻土、シリカフュームあるいは他の非晶質シリカ含有材料、粘土あるいは他の膨潤性ケイ酸含有材料あるいは鉱物、セルロースパルプあるいは他の類似の材料、あるいはこれらの組み合わせなどが、挙げられる。
【0038】
工程400:ケイ酸含有材料の添加
本工程では、さらなるケイ酸含有材料を、工程300で形成されたゲル中に添加する。適当なケイ酸含有源としては、ケイ砂、珪藻土、粘土、ケイ酸、石英岩粉塵、シリコン粉塵、あるいは活性アルミナなどの天然資源が、挙げられる。好ましくは、粒度D(90)が約70ミクロン以下の粉状石英が使用される。本工程で添加されるケイ酸含有材料は、工程200でも添加できる。
【0039】
生成物に対する意図された用途にもよるが、もし最終製品に必要な場合には、完全な反応に必要以上のケイ酸含有材料を添加することも出来る。
【0040】
ケイ酸含有材料は、乾燥粉末状態で、あるいはスラリーとして、ゲル中に混合できる。いずれの方法においても、追加のケイ酸含有材料は、ゲルにダメージを与えないように、緩やかにゲル中に混合するべきであるが、均一性を確かなものとするために、混合は充分に行うべきである。
【0041】
図1のプロセスに使用される原料の可能で、好ましく、かつ最適な範囲を、以下の表1に示す。示されたこの値は、単なる例であり、本発明のプロセスあるいは製品に対して、なんらかの制限を加えると考えるべきでない。
【0042】
【表1】

【0043】
石灰:消和水(slake water)の比
石灰:消和水の比は、生石灰の重量と、石灰を水和するあるいは消和するのに使用した水の重量との比である。石灰:消和水の比は、約1:2〜1:10の範囲が可能であり、好ましくは約1:3〜1:5の範囲、および最適には約1:4である。
【0044】
工程500:混合物のオートクレーブ処理
工程400からの結合混合物は、その後、カルシウム材料とケイ酸含有材料とのあいだの反応を起こし、かつケイ酸カルシウム水和物を形成するために充分な時間、たとえばオートクレーブ中で高温高圧処理を受ける。このオートクレーブは、通常の方法で操作しても良いが、たとえば表2中に並べたあらかじめ定められた温度プロファイルにしたがうことが好ましい。
【0045】
【表2】

【0046】
オートクレーブ中での反応のあいだ、好ましくは全反応時間のあいだ、混合物(520)から水を抜いても差し支えない。この反応中、水がスラリー混合物から連続して放出されるので、固体濃度は徐々に増加する。換言すれば、スラリーは反応の進行にしたがって脱水する。
【0047】
スラリー混合物から除去される水は、水蒸気トラップを経由してオートクレーブ(540)から抜き出しても良い。これは、システム中の自由水を除去し、オートクレーブの熱を、オートクレーブ中に形成されたケイ酸カルシウム水和物から水を蒸発させるために使用する。オートクレーブから抜き出された加熱された水は、所望により、循環しても良く、またケイ酸カルシウム水和物の次のバッチ用の消石灰の製造に使用しても良い。
【0048】
オートクレーブ内での適当な期間の後、オートクレーブ圧力を、温度プロファイルにしたがって、従来通りに吐き出しても良い(560)。このことが、さらにケイ酸カルシウム水和物本体から水を蒸発させ、それの準乾燥粉末フォームを与える。この生成した材料は、その後オートクレーブから除去される。
【0049】
本プロセスにより形成されたケイ酸カルシウム水和物ケーキは、さらに、たとえばさらなる水分を除去するためにさらに乾燥するなどの処理(580)を受け、後の使用あるいは出荷のために包装しても良く、また貯蔵し、製品を製造するための原料としてすぐに使用しても良い。
【0050】
生成ケイ酸カルシウム水和物本体の典型的な特性を、表3に示す。
【0051】
【表3】

【0052】
Ca:Si供給比およびそれによるAIR%は、材料の適用(application)に依存するものである。供給比を化学量論的比に設定できるということは、AIR%は低くなるだろうが、もし最終製品中に過剰のシリカを必要とするときには、AIR%は、もっと高い値になるであろう。
【0053】
Ca:Si供給モル比
Ca:Si(全)モル比は、全カルシウム対全シリカのモル比である。Ca:Si供給モル比は、ケイ酸カルシウム水和物の応用の処方(formulation)に依存している。それは、上記の表2中に与えられた例に対して、約0.05:1〜0.75:1の範囲が可能であり、好ましくは約0.1:1〜1:1の範囲、および最適には約0.15:1である。
【0054】
Ca:Si反応比
Ca:Si反応比は、ケイ酸カルシウム水和物中の全カルシウム対全反応シリカのモル比である。Ca:Si反応比は、約0.3〜1.4の範囲が可能であり、好ましくは約0.7〜1.0の範囲、および最適には約0.83である。
【0055】
水:固体(全)
水:固体(全)は、水の重量対固体の重量の比である。水:固体(全)は、約1:1〜7:1の範囲が可能であり、好ましくは約1.25:1〜4:1の範囲、および最適には約1.5:1である。
【0056】
酸不溶残渣(A.I.R.)%
AIR%は、ケイ酸カルシウム水和物中の未反応石英シリカの尺度である。この方法は、サンプル2gを粉砕し、水を用いてペースト状とし、その後水を用いて200mLに希釈し、25mLの分析試薬級塩酸(32重量%、密度1.16g/mL(1:1))を加えることを包含する。この混合物を、90〜95℃で15分間加熱し、No.40ワットマン(Whatman)濾紙を通してろ過する。残渣を沸騰水および沸騰Na2CO3(50g/L)で洗浄する。その後、残渣と濾紙とを、900〜1000℃で燃やし、デシケータ中で冷却して、残渣を計量する。初期サンプル塊の百分率として表示された残渣塊(residue mass)が、AIR%である。
【0057】
つき固めた(tamped)バルク密度
ケイ酸カルシウム水和物を、オーブン中で一晩105℃にて乾燥させ、その後、乾燥したケーキを、モルタルと乳棒を用いて砕き、250ミクロンのスクリーンに通過させ、塊を除去する。篩を通過しない集塊状の材料は、手で砕きかつ再び篩にかけられる。(100±1cm3)の篩い分けられたサンプルを、あらかじめ計量した測定シリンダー中に置き、その後、ワイアー片で周期的に撹拌して、10〜15分間振動台上で振動させる。体積減少が止まったら、体積および質量を記録する。サンプルの質量をサンプルの体積で割って、kg/cm3で表される値をつき固めたバルク密度として記録する。
【0058】
DTA−珪灰石転化(wollastonite conversion)ピーク温度
示差熱分析(DTA)は、ケイ酸カルシウム水和物を評価するために使用される方法である。この試験方法は、ほぼ30mgのサンプルを窒素気流下、周囲の温度から1000℃まで1分あたり20℃の速度で加熱することを包含する。空の参照サンプルホルダーとサンプルの温度との温度差を測定する。ケイ酸カルシウム水和物のトバモライト(tobermorite)相について、824℃から840℃のあいだの温度における珪灰石(wollastonite)相への発熱転化による評価を行った。840℃から900℃までの珪灰石転化温度は、トバモライト相へと進行しなかった反応の典型である。
【0059】
含水率
ケイ酸カルシウム水和物は、105℃において30分間自動水分バランス(an automatic moisture balance)中で乾燥される。含水率は、((湿潤質量−乾燥質量)/湿潤質量)×100で計算される。サンプルの含水率は、百分率で表される。
【0060】
本発明の好ましい実施の態様により製造されたケイ酸カルシウム水和物は、先行技術に比べて、相対的に高い固形分を持っている。それは、特に製品とプロセスにおいて適している。それは、従来のケイ酸カルシウム水和物スラリーの高い含水率を含んでいないので、1ドルあたりのケイ酸カルシウム水和物の量から判断すると、輸送することもより安価になる。
【0061】
当業者は、本発明を行うために適した種々の装置を知ることになるであろう。カルシウム材料、ケイ酸含有材料および懸濁剤を保持することが出来る容器は、いずれも適している。この容器は、必要により、状況に応じて脱水装置を含んでいても良い。
【0062】
カルシウム材料およびケイ酸含有材料と懸濁剤との混合物を容器中に入れた後、この容器をオートクレーブ中に置く。このオートクレーブ容器を入れること、および前述の所定の温度プロファイルに従い高温高圧処理を受けることにより、カルシウム材料とケイ酸含有材料とが反応して、ケイ酸カルシウム水和物を形成し、状況に応じて、水がケイ酸カルシウム水和物から抜き出される。
【0063】
この容器は、典型的には、スチール製であるが、オートクレーブの温度および圧力、およびケイ酸カルシウム水和物の化学反応に耐えることが出来る材料ならどれでもよい。
【0064】
本発明は、上記の例を参照にして述べてきたが、他の実施の態様、形状あるいは変更は、ここに広く述べてきた本発明の精神と範囲から逸脱することなく、作られることを理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態にしたがったケイ酸カルシウム水和物の製造方法のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温高圧下において、カルシウム材料をケイ酸含有材料に水性環境中で充分な時間接触させ、カルシウム材料とケイ酸含有材料とを反応させて、ケイ酸カルシウム水和物を形成することからなるケイ酸カルシウム水和物の製造方法であって、該反応の前に、所定量の懸濁剤を加えて、少しの撹拌をして、あるいは撹拌せずに該反応を起こさせる方法。
【請求項2】
懸濁剤および/またはケイ酸含有材料の添加の前に、カルシウム材料を水と混合し、消石灰スラリーを形成する請求項1記載の方法。
【請求項3】
カルシウム材料および/またはケイ酸含有材料と混合する前に、懸濁剤を、好ましくは水と混合し、スラリーを形成する請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つのスラリーを形成するために使用される水を予熱する請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
懸濁剤が、カルシウム材料、ケイ酸含有材料および/または水を接触させてゲルを形成させるために適用されるゲル形成剤である請求項1、2、3または4記載の方法。
【請求項6】
ゲル形成剤が、非晶質シリカ源である請求項1、2、3、4または5記載の方法。
【請求項7】
ゲル形成剤は、珪藻土、粘土、シリカフューム、セルロースパルプあるいはそれらの混合物からなる群から選択される請求項1、2、3、4、5または6記載の方法。
【請求項8】
ゲル形成剤を、消石灰スラリーと結合し、必要に応じて、さらに水で希釈してゲル形成の反応をし、そして続いて、ケイ酸含有材料と結合し、高温高圧を受けてケイ酸カルシウム水和物を形成する請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の方法。
【請求項9】
ケイ酸含有材料を、乾燥粉末状態で、あるいはスラリーとして、カルシウム材料および懸濁剤と結合させる請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の方法。
【請求項10】
ケイ酸含有材料をゲル中に混合して、実質的に均一な反応性混合物を与える請求項7、8または9記載の方法。
【請求項11】
35重量%以上の反応後固形分を有するケイ酸カルシウム水和物。
【請求項12】
35重量%から60重量%のあいだの反応後固形分を有する請求項11記載の方法。
【請求項13】
生成物がほぼ120〜200kg/m3のバルク密度を有するように、ほぼ化学量論的量のカルシウム材料とケイ酸含有材料とを反応させて、ケイ酸カルシウム水和物を形成する請求項11記載のケイ酸カルシウム水和物。
【請求項14】
生成物がほぼ380〜460kg/m3のバルク密度を有するように、過剰のシリカを、カルシウム材料とケイ酸含有材料との反応物に添加する請求項11記載のケイ酸カルシウム水和物。
【請求項15】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の方法により製造される請求項11、12、13または14記載のケイ酸カルシウム水和物。
【請求項16】
ケイ酸カルシウム水和物の製造におけるゲルの使用であって、該ゲルは、所定の温度/圧力プロファイルで、カルシウムスラリーとゲル形成剤とを結合することにより形成され、ケイ酸含有材料と結合するような濃度を有するものであり、該ケイ酸含有材料は、高温高圧でのゲルとの次の反応のためにその中で懸濁され、混合あるいは撹拌する必要なしにケイ酸カルシウム水和物を形成するものであるゲルの使用。
【請求項17】
ゲル形成剤が、非晶質シリカ源である請求項16記載のゲルの使用。
【請求項18】
ゲル形成剤は、珪藻土、粘土、シリカフューム、セルロースパルプあるいはそれらの混合物からなる群から選択される請求項16または17記載のゲルの使用。
【請求項19】
ケイ酸含有材料をゲル中に混合して、実質的に均一な反応性混合物を与える請求項16、17または18記載のゲルの使用。
【請求項20】
ケイ酸含有材料を、乾燥粉末状態で、あるいはスラリーとして、ゲルと結合させる請求項16、17、18または19記載のゲルの使用。
【請求項21】
懸濁され、かつ高温高圧を受けるように、さらにはカルシウムゲルとケイ酸含有材料とのあいだの反応を行わせてケイ酸カルシウム水和物を形成するように適用されたケイ酸含有材料の均一分布をもつカルシウムゲルからなる反応性マトリックス。
【請求項22】
カルシウムゲルが、カルシウム材料とゲル形成剤との結合により製造され、必要に応じて、水で希釈して、反応させてゲルを形成する請求項21記載の反応性マトリックス。
【請求項23】
ケイ酸含有材料をゲル中に混合して、実質的に均一な反応性マトリックスを与える請求項21または22記載の反応性マトリックス。
【請求項24】
ケイ酸含有材料を、乾燥粉末状態で、あるいはスラリーとして、カルシウムゲルと結合させる請求項21、22または23記載の反応性マトリックス。
【請求項25】
ケイ酸カルシウム水和物の製造における懸濁剤の使用であって、該懸濁剤は、充分な量のカルシウム材料およびケイ酸含有材料と結合して、該成分を懸濁液中に保持し、それにより混合あるいは撹拌する必要なしに該材料の反応を起こさせるものである懸濁剤の使用。
【請求項26】
懸濁剤および/またはケイ酸含有材料の添加の前に、カルシウム材料を水と混合して、消石灰のスラリーを形成する請求項25記載の方法。
【請求項27】
カルシウム材料および/またはケイ酸含有材料と混合する前に、懸濁剤を、好ましくは水と混合して、スラリーを形成する請求項25または26記載の方法。
【請求項28】
少なくとも1つのスラリーを形成するために使用される水を予熱する請求項26または27記載の方法。
【請求項29】
懸濁剤が、カルシウム材料、ケイ酸含有材料および/または水と接触させてゲルを形成させるために適用されるゲル形成剤である請求項26、27または28記載の方法。
【請求項30】
ゲル形成剤が、非晶質シリカ源である請求項26、27、28または29記載の方法。
【請求項31】
ゲル形成剤は、珪藻土、粘土、シリカフューム、セルロースパルプあるいはそれらの混合物からなる群から選択される請求項26、27、28、28、29または30記載の方法。
【請求項32】
ゲル形成剤を、消石灰スラリーと結合し、必要に応じて、さらに水で希釈してゲル形成の反応をし、そして続いて、ケイ酸含有材料と結合し、高温高圧を受けてケイ酸カルシウム水和物を形成する請求項26、27、28、29、30または31記載の方法。
【請求項33】
ケイ酸含有材料を、乾燥粉末状態で、あるいはスラリーとして、カルシウム材料および懸濁剤と結合させる請求項26、27、28、29、30、31または32記載の方法。
【請求項34】
ケイ酸含有材料をゲル中に混合して、実質的に均一な反応性混合物を与える請求項30または31記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−504610(P2006−504610A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−548926(P2004−548926)
【出願日】平成15年11月5日(2003.11.5)
【国際出願番号】PCT/AU2003/001456
【国際公開番号】WO2004/041720
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(504163759)ジェームズ ハーディー インターナショナル ファイナンス ベスローテン フェンノートシャップ (4)
【Fターム(参考)】