説明

ケトン類からオレフィンを製造するための触媒

【課題】ケトン類からオレフィンを製造するための触媒であって、触媒活性に優れ且つオレフィンの選択率の高い触媒を提供する。
【解決手段】結晶径が100nm以下のZSM−5型ゼオライトから成るケトン類からオレフィンを製造するための触媒。本発明の好ましい態様においては、結晶の外表面の酸点を不活性化され、不活性化はジフェニルシランによる表面処理によって行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はケトン類からオレフィンを製造するための触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、「ゼオライト触媒によるバイオマス由来アセトンからのオレフィンの製造」と題する研究報告を発表している(非特許文献1)。この報告においては、触媒としてZSM−5型ゼオライトが使用されているが、その結晶径については十分な注意は払われていない。一般にゼオライトの結晶径は数百nm〜数μmである。
【非特許文献1】第36回石油・石油化学討論会予稿集(2006年11月30日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者らは、触媒活性に優れ且つオレフィンの選択率の高い触媒について研究を行った結果、ZSM−5型ゼオライトのナノサイズ化に成功し、更に、結晶の外表面の酸点を不活性化して生成するオレフィン(特にプロピレン)の選択率を高めることに成功し、本発明の完成に至った。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち、本発明の第1の要旨は、結晶径が100nm以下のZSM−5型ゼオライトから成ることを特徴とするケトン類からオレフィンを製造するための触媒に存し、本発明の好ましい態様においては、結晶の外表面の酸点が不活性化される。
【0005】
本発明の第2の要旨は、界面活性剤と有機溶媒とを含有し且つ界面活性剤の濃度が0.1〜0.75mol/Lの溶液中に、少なくとも、アルミナ源、シリカ源およびテンプレートを含有し、アルミナ源の濃度が0.004〜0.125mol/L、シリカ源の濃度が0.4〜2.5mol/L、Si/Alモル比が20〜200、Si/テンプレートモル比が3〜10である母液を添加し、この際、界面活性剤に対する母液の重量比を0.67〜40とし、母液のエマルジョンを形成した後、水熱合成を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の触媒の製造方法に存する。
【0006】
そして、本発明の第3の要旨は、ケトン類を上記の第1の要旨に係る触媒と接触させることを特徴とするオレフィンの製造方法に存する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ケトン類からオレフィンを製造するための触媒であって、触媒活性に優れ且つオレフィンの選択率の高い触媒が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
先ず、説明の便宜上、本発明の触媒の製造方法について説明する。本発明の触媒はZSM−5型ゼオライトから成る。本発明においては、ZSM−5型ゼオライトは、基本的には、界面活性剤と有機溶媒の溶液に、少なくとも、アルミナ源、シリカ源およびテンプレートを含有する母液を添加し、母液のエマルジョンを形成した後、水熱合成を行う方法によって製造することが出来る。そして、本発明の好ましい態様においては、母液の調製の際、安定剤としてカチオン源が使用される。
【0009】
アルミナ源としては、特に限定されず、アルミニウムアルコキシド、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミナホワイト、フッ化アルミニウム等が挙げられるが、これらの中ではアルミニウムアルコキシドが好ましい。アルミニウムアルコキシドの具体例としては、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド等が挙げられる。
【0010】
シリカ源としては、特に限定されず、ケイ素アルコキシド、コロイダルシリカ、湿式シリカ、無定形シリカ、ヒュームドシリカ、ケイ酸ナトリウム、シリカゾル、シリカゲル、カオリナイト、珪藻土、ケイ酸アルミニウム、ホワイトカーボン等が挙げれるが、これらの中ではケイ素アルコキシドが好ましい。ケイ素アルコキシドの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。
【0011】
テンプレートとしては、特に制限されず、水酸化テトラプロピルアンモニウム(TPAOH)、臭化テトラプロピルアンモニウム(TPABr)、水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAOH)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAOH)、塩化テトラメチルアンモニウム(TMACl)等が挙げられる。
【0012】
カチオン源としては、特に限定されず、通常、アルカリ金属、アルカリ金属などの塩化物、硫酸塩などの各種金属の塩が使用され、その具体例としては、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化マグネシウム等が挙げられるが、通常は塩化ナトリウムが使用される。
【0013】
界面活性剤としては、特に限定されず、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレン硫酸ナトリウム、ジアルキルベンゼンアルキル、サルフェート、スルホネ−トを含む陰イオン性界面活性剤;ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロマイド、ベンズアルコニウムクロライド、セチルピリジニウムブロマイド、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、ラウリルアミン酢酸、ステアリルアミンアセテート、及びラウリルトリメチルアンモニウムクロライドを含む陽イオン性界面活性剤;ラウリルジメチルアミンオキサイドを含む両性イオン性界面活性剤;ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、メタローズ、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、トリスチリルフェノールエトキシレートフォスフェートエステル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ジアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノールを含む非イオン性界面活性剤などが挙げられる。これらの中では、非イオン性界面活性剤、特にポリオキシエチレンオレイルエーテルが好ましい。
【0014】
有機溶媒としては、例えば、非水溶性の有機溶媒、例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル、ハロゲン化炭化水素、エステル等が挙げられる。脂肪族炭化水素の具体例としては、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、イソヘプタン、流動パラフィン、n−オクテン、イソオクテン、ガソリン、石油エーテル、灯油、ベンジン、ミネラルスピリット等が挙げられる。脂環式炭化水素の具体例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロノナン等が挙げられる。芳香族炭化水素の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、クメン、メシチレン、テトラリン、スチレン等が挙げられる。エーテルの具体例としては、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素の具体例としては、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン等が挙げられる。エステルの具体例としては、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、酢酸イソアミル、乳酸n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸n−ブチル等が挙げられる。これらの中では、脂環式炭化水素が好ましく、特にシクロヘキサンが好ましい。これらの有機溶剤は2種以上を併用してもよい。
【0015】
界面活性剤と有機溶媒の溶液において、有機溶媒中の界面活性剤の濃度(mol/L)は、0.1〜0.75mol/Lである。母液において、アルミナ源の濃度は0.004〜0.125mol/L、シリカ源の濃度は0.4〜2.5mol/L、Si/Alモル比は20〜200、Si/テンプレートモル比は3〜10である。カチオン源の濃度は、通常0.012〜0.375mol/Lである。
【0016】
先ず、本発明においては、面活性剤と有機溶媒の溶液に母液を添加し、母液のマイクロエマルジョン(O/W型)を形成する。マイクロエマルジョンの形成は、常法に従い、各種のホモジナイザーを含む各種の攪拌装置を使用して行うことが出来る。
【0017】
本発明においては、界面活性剤と有機溶媒の溶液に母液を添加してマイクロエマルジョンを形成する際、界面活性剤に対する母液の重量比を0.67〜40の範囲にすることが重要である。界面活性剤に対する母液の重量比を上記の範囲に選定することにより、水熱合成によって得られるZSM−5型ゼオライトのナノサイズ化が達成され、その結晶径を100nm以下にすることが出来る。
【0018】
次いで、本発明においては、水熱合成を行ってZSM−5型ゼオライトを得るが、水熱合成の条件としては、一般にZSM−5類を合成する条件を採用することが出来る。具体的には、オートクレーブを使用し、通常373〜453K、好ましくは393〜443Kの温度で、通常10〜100時間、好ましくは24〜72時間処理する。
【0019】
水熱合成の後、焼成を行ってテンプレートを除去し、更に、焼成後のゼオライトがNa型であるため、必要に応じ、H型にイオン交換する。テンプレートを除去やイオン交換の条件は、特に制限されず、公知の条件を採用することが出来る。テンプレートの除去のため焼成には例えばマッフル炉を使用することか出来る。また、イオン交換は、NH型を経由してH型へ変換する方法が好適である。
【0020】
次に、本発明の触媒について説明する。本発明の触媒は、ケトン類からオレフィンを製造するための触媒であり、結晶径が100nm以下のZSM−5型ゼオライトから成ることを特徴とする。本発明の触媒は、前記の製造方法で得ることが出来る。結晶径は、SEM写真(倍率50,000)により測定することが出来、ZSM−5型の構造確認はX線回折測定より行うことが出来る。本発明において、結晶径は60nm以下であることが好ましい。結晶径の下限は、特に制限されないが、実際的には20nmである。また、粒径分布に関しては、結晶サイズ50〜70nmの範囲に約90%の粒子が存在し、非常に単分散である。
【0021】
本発明の触媒は次のような利点を有する。すなわち、従来のマイクロサイズのゼオライト触媒では結晶内の酸点で反応が進行する際、拡散律速となり易く、コーキングによる活性劣化が起こる。これに対し、本発明のナノサイズのゼオライト触媒では活性劣化が起こり難い。これは、結晶の外表面積が増大し、原料・生成物の拡散抵抗が低減しているためと考えられる。
【0022】
本発明においては結晶の外表面の酸点を不活性化するのが好ましい。外表面の酸点の不活性化は、例えば、ゼオライトの細孔より大きなシラン化合物、例えば、ジフェニルメチルシラン等の各種のジフェニルシランによる表面処理が好適である。例えば、窒素雰囲気下、ZSM−5型ゼオライトの表面にジフェニルシランを吸着させた後に空気中で焼成する。これにより、ゼオライトの酸点に化学吸着したジフェニルシランは酸点上で酸化ケイ素(SiO)に変換される。
【0023】
上記の方法は具体的には次のように行うことが出来る。H−ZSM−5型ゼオライト0.5〜2gを固定床型石英反応管に充填し、窒素雰囲気下、773K、1時間焼成した。その後、窒素気流中、373Kまで温度を下げ、ジフェニルシランを供給し、ゼオライトとジフェニルシラン蒸気とを接触させる。この際、窒素気流中におけるジフェニルシラン分圧は1〜10%、接触時間は30〜90分で十分である。次いで、ジフェニルシランの供給を停止し、窒素気流中、723〜873Kまで昇温する。この際、昇温速度は1〜10K/minが好ましい。そして、20〜90分間同雰囲気で焼成し、シラン化合物をゼオライトの外表面の酸点上へ固定化する。雰囲気ガスを窒素から空気に切り替え、同温度で30〜120分間焼成し、炭素成分を除去する。上記の一連の操作は複数回(例えば2〜6回)繰り返えすのが好ましい。
【0024】
外表面の酸点を不活性化した本発明の触媒は次のような利点を有する。すなわち、外表面の酸点が反応に利用される場合は、空間的な制限を受けないことから、芳香族炭化水素が生成し易い。これに対し、結晶の外表面の酸点を不活性化した場合は、結晶細孔内の酸点が反応に利用されるため、芳香族炭化水素の生成が抑制され、生成するオレフィン(特にプロピレン)の選択率が高められる。
【0025】
次に、本発明に係るオレフィンの製造方法について説明する。本発明の製造方法は触媒とケトン類とを接触させることを特徴とする。原料のケトン類としては、代表的には、アセトン、メチルエチルケトンが挙げられる。特にバイオマス由来のアセトンは好適である。
【0026】
オレフィンの製造反応は、触媒反応の常法に従って、例えば、固定層流通式反応器を使用し、ガス化したケトン類を流通させて触媒と接触させる方法を採用することが出来る。反応温度は、通常523〜873Kであり、原料ガスの供給速度(SV)は通常1000〜100000h−1である。原料ガスの濃度は通常0.1〜10000ppmである。通常、濃度調節のためのガス(キャリヤーガス)としては窒素が使用される。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例により限定されるものではない。
【0028】
実施例1:
[触媒の製造]
<ナノクリスタルZSM−5型ゼオライトの製造>
アルミニウムイソプロポキシド(アルミナ源:和光純薬工業(株)製、95.0%)0.5145g、塩化ナトリウム(カチオン源(安定剤):和光純薬工業(株)製、99.5%)0.442g、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(テンプレート:和光純薬工業(株)製、10%水溶液)、蒸留水129.5gを混合した後、攪拌し、均一な水溶液となったのを確認した後、テトラエトキシシラン(シリカ源:和光純薬工業(株)製、95.0%)42gを添加し、室温で24時間攪拌し、SiO−テンプレート複合体(母液)を得た。
【0029】
一方、ポリオキシエチレン(15)オレイルエーテル(非イオン性界面活性剤:日本サーファクタント工業(株)製)とシクロヘキサン(有機溶媒:和光純薬工業(株)製、99.5%)とを使用し、界面活性剤濃度が0.5mol/Lの界面活性剤/有機溶媒溶液1960mlを調製した。
【0030】
次いで、上記の界面活性剤/有機溶媒溶液を323Kの水浴中に保持し、これに前記の母液280mlを約1時間かけて少量づつ滴下した。そして、そのまま1時間攪拌することにより系を均一にした後、オートクレーブに移し、393Kで24時間水熱合成を行った。
【0031】
水熱合成後、室温まで冷却し、ビーカーに移し、収率を上げるために硝酸を使用してpHを7〜8に調節した。この際、粒状のものが析出した。その後、少量の2−プロパノールを加えて5分間攪拌洗浄した後、遠心分離(2500rpm、10分間)により、ナノクリスタルZSM−5型ゼオライトを沈殿物として回収した。上記の攪拌洗浄・遠心分離操作を合計3回繰り返した。SEM写真の結果上記のゼオライトの平均粒径は50nmであった。また、ZSM−5型の構造確認はX線回折測定によって行った。
【0032】
次いで、上記で得られたゼオライトを373Kの乾燥機中で一昼夜乾燥した後、残存するテンプレートを除去するため、マッフル炉で焼成し、Na型のゼオライトを得た。この際、昇温過程は、(1)室温から623Kまで3時間かけて昇温、(2)623Kで8時間保持、(3)623Kから773Kまで3時間かけて昇温、(4)773Kで6時間保持、となるように行った。
【0033】
<イオン交換>
次いで、次の要領に従ってNa型ゼオライトのH型ゼオライトに変換した。すなわち、Na型ゼオライトに5wt%硝酸アンモニウム水溶液を10重量倍量添加し、373Kの温浴中で還流条件下に約8時間攪拌した後に遠心分離によって上澄み液とゼオライトとを分離した。この攪拌・遠心分離処理を合計3回繰り返した。この際、硝酸アンモニウム水溶液の濃度は、5wt%→8wt%→10wt%となるように漸次高めた。次いで、十分な量の蒸留水で約1時間攪拌した後に遠心分離によって上澄み液とゼオライトとを分離する洗浄操作を合計3回繰り返した後、373Kの乾燥機中で約12時間乾燥した。そして、マッフル炉で、773K、4時間焼成し、NH型をH型へ変換すると共に、細孔内に残存する水分を十分に除去した。焼成時の昇温速度は0.5K/minとした。
【0034】
[オレフィンの製造]
<反応装置>
図1に示す固定層型流通反応器を使用した。この装置は、概略、円筒状に形成された触媒反応器(1)と、当該触媒反応器に収容されたゼオライト触媒(2)と、触媒反応器(1)の外周側に配置され且つ当該触媒反応器を加熱するヒーター(3)とを備え、キャリアガスと共にケトン類を触媒反応器(1)に供給し、触媒反応器(1)を加熱しながらゼオライト触媒(2)にケトン類を接触させることによりオレフィンを生成し、得られたオレフィンを触媒反応器(1)から取り出す様に構成されている。
【0035】
具体的には、触媒反応器(1)は、耐熱性、耐腐食性を備えた円筒状容器(10)と、当該円筒状容器の中心線を分断する状態に仕切って円筒状容器(1)の中央部に触媒収容部を構成する多孔構造の目皿(11)、(11)とから成り、これら目皿(11)、(11)の間の触媒収容部には、ゼオライト触媒(2)が収容されている。そして、触媒反応器(1)の一端には原料供給用の配管(5)が接続され、触媒反応器(1)の他端には生成物取出用の配管(7)が接続されている。
【0036】
配管(5)の上流部には、マイクロシリンジ(図示省略)から伸長され且つ原料としてのケトン類を供給する配管(51)が接続され、また、配管(5)の更に上流部には、希釈用および移送用のキャリアガスを供給する配管(52)が接続されている。斯かる配管(52)は、窒素などの不活性ガスの容器(図示省略)から流量調整弁(61)及び流量計(62)を介して配管(5)に接続されている。すなわち、触媒反応容器(1)は、マイクロフィーダーから定量供給され且つ一定流量の窒素で希釈されたケトン類を配管(5)から導入し、そして、触媒反応で得られたオレフィンを配管(7)から取り出す様になされている。
【0037】
ヒーター(3)としては、円筒状加熱部を備え且つ当該円筒状加熱部に上記の触媒反応容器(1)を収容可能なブロックヒーター等が使用される。ヒーター(3)の円筒状加熱部には、触媒反応容器(1)の加熱温度を検出する温度センサー(4)が配置されており、ヒーター(3)は、別途設けられた温度調節器により、温度センサー(4)で検出された温度に基づき、触媒反応容器(1)の温度が設定温度となる様に通電制御される。なお、触媒反応器(1)の上流側の配管(5)には、原料を予備加熱するためのテープ状ヒーター(8)が巻回され、触媒反応器(1)の下流側の配管(7)には、結露を防止するためのテープ状ヒーター(9)が巻回されていてもよい。
【0038】
<反応条件>
上記の反応装置を使用し、表1に示す条件で反応を行った。反応ガスの分析はガスクロマトグラフィー(島津製作所製「GC8A」:検出器FID)で行った。カラムには、GLサイエンス社製のポラパック充填カラム「ポラパックQ」(80〜100メッシュ:3m)を使用した。分析条件は、カラム温度:323〜503K(3K/min昇温)、試料気化室および検出器(INJ/DET)温度:503Kとした。
【0039】
【表1】

【0040】
<反応結果>
反応結果は以下の表2に示す通りであった。
【0041】
【表2】

【0042】
実施例2:
[触媒の製造]
実施例1と同様にしてH−ZSM−5型ゼオライトを得、その外表面の酸点をジフェニルメチルシランを使用し、次の要領で不活性化した。
【0043】
<外表面の酸点の不活性化>
実施例1で得られたH−ZSM−5型ゼオライトの外表面酸点を以下の方法により不活性化した。すなわち、先ず、H−ZSM−5型ゼオライト1gを固定床型石英反応管に充填し、窒素雰囲気下、773K、1時間焼成した。その後、窒素気流中、373Kまで温度を下げ、ジフェニルシランを供給し、ゼオライトとジフェニルシラン蒸気とを接触させた。この際、窒素気流中におけるジフェニルシラン分圧は2%とし、接触時間は60分間とした。次いで、ジフェニルシランの供給を停止し、窒素気流中、773Kまで昇温した。この際、昇温速度は5K/minとした。そして、60分間同雰囲気で焼成し、シラン化合物をゼオライトの外表面の酸点上へ固定化した。雰囲気ガスを窒素から空気に切り替え、同温度で90分間焼成し、炭素成分を除去した。上記の一連の操作を3回繰り返した。
【0044】
[オレフィンの製造]
実施例1と同様にオレフィンの製造を行い、反応ガスの分析を行った。
【0045】
<反応結果>
反応結果は以下の表3に示す通りであった。
【0046】
【表3】

【0047】
比較例1:
触媒として、通常の水熱合成条件により合成したマイクロサイズH−ZSM−5型ゼオライト(1μm)を使用した以外は、実施例1と同様にオレフィンの製造を行い、反応ガスの分析を行った。
【0048】
<反応結果>
反応結果は以下の表4に示す通りであった。
【0049】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施例および比較例で使用したオレフィンの製造のための反応装置の模式図
【符号の説明】
【0051】
1:触媒反応器
2:ゼオライト触媒
3:ヒーター
4:温度センサー
5:配管
51:配管
52:配管
61:流量調整弁
62:流量計
7:配管
8:テープ状ヒーター
9:テープ状ヒーター
10:円筒状容器
11:目皿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶径が100nm以下のZSM−5型ゼオライトから成ることを特徴とするケトン類からオレフィンを製造するための触媒。
【請求項2】
結晶径が60nm以下である請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
結晶の外表面の酸点を不活性化して成る請求項1又は2に記載の触媒。
【請求項4】
不活性化がジフェニルシランによる表面処理によって行われる請求項3に記載の触媒。
【請求項5】
界面活性剤と有機溶媒とを含有し且つ界面活性剤の濃度が0.1〜0.75mol/Lの溶液中に、少なくとも、アルミナ源、シリカ源およびテンプレートを含有し、アルミナ源の濃度が0.004〜0.125mol/L、シリカ源の濃度が0.4〜2.5mol/L、Si/Alモル比が20〜200、Si/テンプレートモル比が3〜10である母液を添加し、この際、界面活性剤に対する母液の重量比を0.67〜40とし、母液のエマルジョンを形成した後、水熱合成を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の触媒の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4の何れかに記載の記載の触媒とケトン類とを接触させることを特徴とするオレフィンの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−208006(P2009−208006A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−53919(P2008−53919)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年9月5日 触媒学会発行の「触媒 Vol.49 No.6 触媒討論会特集号(No.100)」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年9月17日 触媒学会発行の「第100触媒討論会 討論会A予稿集」に発表
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】