説明

ケト化合物の立体選択的酵素還元法

ケト化合物をエナンチオ選択的NADH特異的酸化還元酵素で還元する、ケト化合物を対応するキラルヒドロキシ化合物に立体選択的、特にエナンチオ選択的に酵素還元する方法において、ポリペプチドをケト化合物の還元に使用し、ここでポリペプチドはR-ADH-シグニチャー H-[P;A]-[I;A;Q;V;L]-[G;K]-Rを204-208位に有し、以下の更なる構造的特徴の全てを示す:
(i)N-末端ロスマンフォールド(GxxxGxG)
(ii)87位におけるNAGモチーフ
(iii)S 139、Y 152、およびK 156から成る触媒三元構造
(iv)37位における負に帯電したアミノ酸成分
(v)二量体化ドメインにおける2つのC-末端モチーフ:[A;S]-S-Fおよび[V;I]-DG-[G;A]-Y-[T;C;L]-[A;T;S]-[Q;V;R;L;P]
(vi)159位におけるValまたはLeu(K 156の4位下流)
(vii)178位におけるAsn、および
(viii)188位におけるプロリン成分

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はケト化合物を対応するキラルヒドロキシ化合物に立体選択的、特にエナンチオ選択的に酵素還元する方法に関し、この方法ではエナンチオ選択的NADH特異的酸化還元酵素を用いてケト化合物の還元を行う。本発明は、特に、選択された酸化還元酵素のこの方法における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
光学活性ヒドロキシ化合物は、薬理学的に活性な化合物、芳香族物質、フェロモン、農薬、および酵素阻害剤の合成に幅広く適用できる、有用性の高いカイロンである。将来的に、ラセミ化合物は医薬品としてほとんど使用されなくなるため、キラル化合物ひいてはキラル合成法の需要の増大が特に医薬産業において注目されうる。
【0003】
プロキラルなケト化合物の不斉還元は立体選択的触媒作用の分野に属し、この分野では生体触媒は化学触媒に匹敵する強力な技術となっている。化学的不斉水素化は、毒性が高く環境にも有害な重金属触媒、エネルギー消費量の高い極度の反応条件、および大量の有機溶媒の使用を必要とする。更に、これらの方法は多くの場合、副反応および不十分なエナンチオマー過剰率を特徴とする。
【0004】
自然界では、プロキラル・ケト化合物のヒドロキシ化合物への還元およびその可逆反応である酸化はあらゆる生物において多くの生化学的経路(一次代謝および二次代謝のいずれでも)で起こり、種々のタイプの第二級アルコール脱水素酵素(ADH)および酸化還元酵素によって触媒される。通常、これらの酵素は補助因子依存的である。
【0005】
種々のシークエンシング・プロジェクトにおいてそれぞれ、種々の生物で、活性、機能、エナンチオ選択性、および化学選択性が未知である推定酸化還元酵素である多くのアミノ酸配列が同定されてきた。近年、産業プロセスに使用するための酸化還元酵素の基本的な適合性が多くの実例に基づいて明らかにされた。
【0006】
最近では、有機溶媒を用いる水相/有機相の二相系における単離された酸化還元酵素の使用は、非常に効率的かつ経済的であり、高濃度(>5%)でも実行可能であることが明らかになった。この系では、還元されるケト化合物は通常、水に難溶であるため、有機溶媒と共に有機相を形成する。また、有機溶媒そのものを、部分的に使用せずに済ますこともできる。その場合、有機相は還元すべきケト化合物から構成される(ヨーロッパ特許第1383899号)。補酵素の再生は第二級アルコールの同時酸化によって行われるが、これには多くの場合、安価な水混和性2-プロパノールが使用される(WO2006/087235号)。2-メチル-4-ペンタノールまたは2-オクタノールを使用して補因子NADHまたはNADPHの再生を行うことも同様に有益である(WO2007/036257)。
【0007】
異なる特異性および選択性を有する多くの酸化還元酵素が近年の特許文献で報告されている。高エナンチオ選択性を有するS-特異的酸化還元酵素および脱水素酵素の種々の例が報告されているが、それらはほとんど例外なく補因子としてNADHを使用し、そのため上記のプロセス条件下で非常に経済的に使用することができる。それらのS-特異的酸化還元酵素の例には以下がある:カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)由来カルボニル還元酵素(CPCR)(米国特許第5,523,223号および米国特許第5,763,236号;Enzyme Microb. Technol. 1993 Nov; 15(11):950-8)、ピキア・カプスラータ(Pichia capsulata)由来カルボニル還元酵素(ドイツ特許第10327454.4号)、ロドコッカス・エリスロポロス(Rhodococcus erythropolis)由来カルボニル還元酵素(RECR)(米国特許第5,523,223号)、ノルカルディア・フスカ(Norcardia fusca)由来カルボニル還元酵素(Biosci. Biotechnol. Biochem., 63(10) (1999), p. 1721-1729; Appl. Microbiol. Biotechnol. 2003 Sept; 62(4):380-6; Epub 2003 Apr 26)、およびロドコッカス・ルバー(Rhodococcus ruber)由来カルボニル還元酵素(J. Org. Chem. 2003 Jan 24; 68(2):402-6)。更に、ロドトルラ・ムシラギノーサ(Rhodotorula mucillaginosa)、マイコバクテリウム種、ゴルドニア・ルブリペルティンクタ(Gordonia rubripertincta)、ピキア・スティピティス(Pichia stipitis)、およびピキア・トレハロフィラ(Pichia trehalophila)由来のS-特異的カルボニル還元酵素も報告されている(WO 2007/012428)。
【0008】
R-特異的第二級アルコール脱水素酵素は、例えば以下のラクトバシルス属細菌から同定されている:ラクトバシルス・ケフィア(Lactobacillus kefir)(米国特許第5,200,335号)、ラクトバシルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)(ドイツ公開特許第19610984 A1号;Acta Crystallogr. D Biol. Crystallogr. 2000 Dec; 56 Pt 12:1696-8)、ラクトバシルス・ミノア(Lactobacillus minor)(ドイツ特許第10119274号)、およびリューコノストック・カルノサム(Leuconostoc carnosum)(WO 2007/012428)。これらの酵素は全て、補因子としてNADPHを必要とし、これはNADHよりかなり高価であって処理コストが相対的に高くなるという欠点を有する。
【0009】
「R-特異的」酸化還元酵素は、未置換のカルボニル化合物(例えば2-ブタノン、2-オクタノン、またはアセトフェノン)を還元して対応するR-ヒドロキシ化合物(すなわちR-2-ブタノール、R-2-オクタノール、およびR-2-フェニルエタノール)とするものと理解される。例えば4-ハロ-3-オキソ酪酸エステルはR-特異的酸化還元酵素での還元によってS-4-ハロ-3-ヒドロキシ酪酸エステルとなる。
【0010】
「S-特異的酸化還元酵素」は、未置換のカルボニル化合物(例えば2-ブタノン、2-オクタノン、またはアセトフェノン)を還元して対応するS-ヒドロキシ化合物(すなわちS-2-ブタノール、S-2-オクタノール、およびS-2-フェニルエタノール)とするものと理解される。例えば4-ハロ-3-オキソ酪酸エステルはS-特異的酸化還元酵素での還元によってR-4-ハロ-3-ヒドロキシ酪酸エステルとなる。
【0011】
本明細書では、「特異的」という用語は、相当するエナンチオマーが>95%を占めることであると理解される。
【0012】
更に、カンジダ・マグノリア(Candida magnoliae)属の酵母由来の非特異的NADPH依存性酵素が、最新の特許文献で多数報告されている(ヨーロッパ特許出願公開第1152054号、WO 2007/033928、WO 2006/046455、WO 2005/033094)。それらには、そのNADPH依存性に加え、基質結合型補酵素の再生を伴う過程には使用できず、補酵素再生のために常に第2の酵素系を必要とするという大きな欠点がある。この目的で、グルコース脱水素酵素をグルコース(補助基質として)と共に使用するのが好ましい。更に、これらの酵素には、通常は非特異的である、すなわち未置換のカルボニル化合物(例えば2-ブタノン、2-オクタノン、またはアセトフェノン)の還元によって通常はラセミアルコールが生成されるという欠点がある;これらの酵素は、例外的なケースでのみ、選択的に作用する。従って、基質(例えば4-ハロ-3-オキソ酪酸エステル、3-オキソエステル、または脂肪族ケトン、例えば2-オクタノン)のエナンチオ選択的還元は通常、これらの酵素で行うことはできない。
【0013】
補助基質として第二級アルコール(好ましくは2-プロパノール)を用いる、基質結合型補酵素の再生を伴う方法に使用できる、強力で、NADH依存的かつ明らかにR-特異的である酸化還元酵素はごくわずかしかない。
【0014】
NADH依存性R-特異的酸化還元酵素は、例えばピキア・フィンランディカ(Pichiafinlandica)から同定されている(ヨーロッパ特許出願公開第1179595号)。しかしながら、2-プロパノールでの活性はごくわずかであり、そのため、基質結合型補酵素再生を伴う方法には適していない。
【0015】
ピキア・ファリノーサ(Pichia farinosa)およびカンジダ・ネモデンドラ(Candida nemodendra)由来の2つの更なるNADH依存性R-特異的酸化還元酵素がWO 2007/012428に報告されている。ピキア・ファリノーサ由来酵素について、2-プロパノールでの補酵素再生も可能であるが、最大15%(v/v)の濃度のイソプロパノールでなければならない。
【0016】
更に、レイフソニア(Leifsonia)(米国特許第7,172,894 B2号、Biosci. Biotechnol. Biochem.,70 (2),2006,418-426頁)およびデボシア(Devosia)(WO 2004/027055)由来のNADH依存性酵素が知られており、少なくともレイフソニア由来酵素はR-特異的であり、基質結合型補酵素を再生する能力を有する。
【0017】
しかしながら、現在知られている酸化還元酵素(特に明らかにR-特異的である酵素)は、ケト化合物の立体選択的還元の市場可能性を完全に引き出すには全く不十分である。一方では、これは、個々の酵素の特性が基質スペクトル、至適pH、温度、および溶媒安定性の点で非常に異なっており、多くの場合、互いに補足し合うという事実によって説明できる。従って、相対的に類似したホモログである酵素であっても、ある特定の基質に関して、全く異なる変換挙動を示しうる。他方、報告されている酵素のうち、クローン化されていて十分量の過剰発現が可能なものはほとんど無く、このことはこれらの酵素を産業利用できないことを意味する。
【0018】
従って、できる限り広範に酵素的不斉水素化を利用するためには、できるだけ広範囲にわたる多様な産業利用可能な酸化還元酵素群を保有することが必要である。それと同時に、有利に産業利用できる酵素が必要であることも明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】EP 1383899 B1
【特許文献2】WO2006/087235
【特許文献3】WO2007/036257
【特許文献4】US 5,523,223
【特許文献5】US 5,763,236
【特許文献6】DE 10327454.4
【特許文献7】WO2007/012428
【特許文献8】US 5,200,335 B2
【特許文献9】DE 19610984 A1
【特許文献10】DE 10119274
【特許文献11】EP 1152054 A1
【特許文献12】WO2007/033928
【特許文献13】WO2006/046455
【特許文献14】WO2005/033094
【特許文献15】EP 1179595 A1
【特許文献16】US 7,172,894 B2
【特許文献17】WO2004/027055
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Enzyme Microb. Technol. 1993 Nov; 15(11):950-8
【非特許文献2】Biosci. Biotechnol. Biochem., 63(10) (1999), p. 1721-1729
【非特許文献3】Appl. Microbiol. Biotechnol. 2003 Sept; 62(4):380-6; Epub 2003 Apr 26
【非特許文献4】J. Org. Chem. 2003 Jan 24; 68(2):402-6
【非特許文献5】Acta Crystallogr. D Biol. Crystallogr. 2000 Dec; 56 Pt 12:1696-8
【非特許文献6】Biosci. Biotechnol. Biochem.,70 (2),2006,418-426
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
従って本発明の目的は、基質結合型補酵素再生を用いて、ケト化合物を還元してキラルアルコールとする過程に適した安定なNADH依存性(R)-特異的酸化還元酵素を同定かつ提供することである。
【0022】
この目的のためには、第二級アルコール(特にイソプロパノール)に対してできる限り安定な酸化還元酵素を提供することが必要である。更に、提供する酵素は大腸菌内で良好な発現(>500ユニット/大腸菌湿潤菌体量(g))を示すことを特徴とする必要がある。
【0023】
大腸菌内での安定性および発現性に対する必要性が高いため、本発明においては、酵母由来酵素より細菌酵素の方が好適であると推定される。
【0024】
更に本発明は、組換えによって発現された状態において、安定なNADH依存性(R)-特異的酸化還元酵素を構成し、酵素とカップリングさせた補酵素再生を用いる場合にプロセスエンジニアリングに好適であるアミノ酸配列および遺伝子配列を同定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明者は、そのような配列が一般に「短鎖型」脱水素酵素の既知の特徴、例えば補助因子結合のためのN-末端ロスマンフォールド(GxxxGxG)、中心となるβ-プリーツシート構造を安定化する87位のNAGモチーフ、および、活性中心におけるS 139、Y 152、およびK 156から成る高度に保存された触媒三元構造を有することを発見した。本出願の目的では、タンパク質配列における個々の相同なアミノ酸成分の数的配置は、Score Matrix BLOSUM62および参照としてストレプトミセス・ハイドロゲナンス(Streptomyces hydrogenans)由来3α、20β-水酸化ステロイド脱水素酵素(アクセッション・コード 2bhd_Strex)を用いて、「マルチウェイ・タンパク質アラインメント・アルゴリズム」によって行う。
【発明を実施するための形態】
【0026】
この特徴を示すアミノ酸配列はインターネット上で多数存在するため、更なる特徴を定義してこの配列プールを減縮する必要があった。したがって、記述される特性を有する(R)-特異的酸化還元酵素は更に以下の配列の特徴およびパターンを有する必要があると考えられる:
- 37位における負に帯電したアミノ酸成分
- 二量体化ドメインにおける2つのC-末端モチーフ:[A;S]-S-Fおよび[V;I]-DG-[G;A]-Y-[T;C;L]-[A;T;S]-[Q;V;R;L;P]
- 204から208位におけるR-ADH-シグニチャー:H-[P;A]-[I;A;Q;V;L]-[G;K]-R
- 159位におけるValまたはLeu(K156の4位下流)
- 178位におけるAsn
- 188位におけるプロリン成分
【0027】
このパターンに従って、既存の機能性に基づく分類を用いずに、以下の配列をシーケンシング・プロジェクトから得られる配列プールから選択し、クローン化およびその機能に関するキャラクタリゼーションを行った。
【0028】
【表1−1】

【0029】
【表1−2】

【0030】
意外にも、7つの配列全てについて、これらが特に2-プロパノールに対して十分な安定性を有するNADH依存性R-ADHであることが明らかになった。更に、7つの酵素全てについて、補助基質結合型補酵素再生を伴う酵素還元法に好適であることが明らかになった。
【0031】
これは驚くべき予想外の結果である。なぜなら、特に、それらの配列がごくわずかのホモロジーしか示さず(表2)、配列比較(Pubmed/Blast)においても、このような機能性を示唆するような配列の関連性は同定されなかった(表1)からである。
【0032】
他方、これらの酵素はその酵素特性が十分異なり、特に特定の標的を用いた場合のプロセス安定性の点で、互いに補い合っていることが明らかになった。
【0033】
従って、上記の酸化還元酵素を本発明の方法に使用することは、確立された従来技術と同等の代替物ではなく、現存するスペクトルを拡大するものである。
【0034】
【表2】

【0035】
表2においては、ホモロジーの度合いをアミノ酸成分の同一性%および最適なペアワイズ・アラインメントにおけるシフト数で示す。最適アラインメントはBLASTアルゴリズム(Basic Local Alignement Search Tool)(Altschulら 1990, Proc. Natl. Acd. Sci. USA. 87: 2264-2268)によって決定した。
【0036】
基本的に、配列類似性の評価にはPAM30マトリクスをスコアリング・マトリクスとして使用する(Dayhoff; M.O., Schwarz, R.M., Orcutt, B.C. 1978. “A model of evolutionary change in Proteins” in “Atlas of Protein Sequence and structure” 5(3) M.O. Dayhoff(編)345-352, National Biomedical Research foundation)。
【0037】
本発明は、広範な基質スペクトルを網羅し、プロセス技術的条件下で高いターンオーバーをもたらす、ケト化合物から対応するキラルヒドロキシ化合物へのエナンチオ選択的酵素還元法を提供することを目的とする。
【0038】
本発明によれば、該目的は、ケト化合物を還元するために204-208位におけるR-ADH-シグニチャー H-[P;A]-[I;A;Q;V;L]-[G;K]-R、および以下の更なる構造的特徴の全てを示すポリペプチドを使用することを特徴とする前記の方法によって達成される:
(i)N-末端ロスマンフォールド(GxxxGxG)
(ii)87位におけるNAGモチーフ
(iii)S 139、Y 152、およびK 156から成る触媒三元構造
(iv)37位における負に帯電したアミノ酸成分
(v)二量体化ドメインにおける2つのC-末端モチーフ:[A;S]-S-Fおよび[V;I]-DG-[G;A]-Y-[T;C;L]-[A;T;S]-[Q;V;R;L;P]
(vi)159位におけるValまたはLeu(K 156の4位下流)
(vii)178位におけるAsn
(viii)188位におけるプロリン成分。
【0039】
本発明にかかるプロセスの好ましい態様によれば、以下:
(a)アミノ酸配列SEQ ID NO:1からSEQ ID NO:7の1つを含有する;または
(b)少なくとも70%のアミノ酸がアミノ酸配列SEQ ID NO:1からSEQ ID NO:7の1つと同一である;または
(c)SEQ ID NO:8からSEQ ID NO:14から成る群から選択される核酸配列によってコードされる;または
(d)ストリンジェントな条件下で(c)に記載する核酸配列の1つにハイブリダイズする核酸配列によってコードされる、
のポリペプチドを使用してケト化合物を還元する。
【0040】
例えばストリンジェントな条件下でSEQ ID NO:14にハイブリダイズする核酸配列によって、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法、サザン・ハイブリダイゼーション法、またはそれらに匹敵する方法により、SEQ ID NO:14またはSEQ ID NO:14の部分配列をDNAプローブとして用いて、ポリヌクレオチドを同定できると考えられる。この目的のためには、フィルターに固定化したポリヌクレオチドを、例えば0.7-1 M NaCl溶液中、65℃でSEQ ID NO:14にハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーションを、例えばMolecular Cloning, A Laboratory Manual,第2版(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)のプロトコル32または同様の文献に記載されるように実施する。次いで、フィルターを0.1-2倍SSC溶液(65℃)を用いて洗浄する(1倍SSC溶液は150mM NaClおよび15mM クエン酸ナトリウムから成る混合液である)。
【0041】
上記のストリンジェントな条件下でポリヌクレオチドSEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、またはSEQ ID NO:14にハイブリダイズするポリヌクレオチドは、それぞれポリヌクレオチド配列SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、またはSEQ ID NO:14と少なくとも68%、好ましくは少なくとも80%、更に好ましくは95%の配列同一性を示す。
【0042】
更なる好ましい態様では、式I:
【化1】

(式中、R1、R2、およびR3はそれぞれ独立して以下:
1)-H(ただしR1はHではない);
2)-(C1-C20)-アルキル(式中、アルキルは直鎖または分枝鎖である);
3)-(C2-C20)-アルケニル(式中、アルケニルは直鎖または分枝鎖であり、場合により4個までの二重結合を含有する);
4)-(C2-C20)-アルキニル(式中、アルキニルは直鎖または分枝鎖であり、場合により4個までの三重結合を含有する);
5)-(C6-C24)-アリール;
6)-(C1-C8)-アルキル-(C6-C14)-アリール;
7)-(C5-C14)-複素環;
8)-(C3-C7)-シクロアルキル
(式中、上記2)から8)に記載される成分は未置換であるか、あるいは1、2、または3箇所がそれぞれ独立して-OH、ハロゲン、-NO2、NH2、NHP、および/または-Mで置換されており、式中、Pは-(C1-C7)-アルキル、-(C2-C7)-アルケニル、-(C2-C7)-アルキニル、-(C6-C14)-アリール、または、ベンジルオキシカルボニル、トリフェニルメチル、およびt-ブチルカルボニルから成る群から選択される保護基であり、Mは-(C1-C7)-アルキル、-(C2-C7)-アルケニル、-(C2-C7)-アルキニル、-(C6-C14)-アリール、もしくは-(C1-C8)-アルキル-(C6-C14)-アリールであり、ここで、-(C1-C8)-アルキル-(C6-C14)-アリール中の-(C6-C14)-アリールは未置換であるか、または1、2、もしくは3箇所がハロゲンで置換されている);および
9)-CH2-X-R(式中、XはOまたはSであり、Rは-(C1-C7)-アルキル、フェニル、およびベンジルから選択され、ここで、フェニルおよびベンジルは1、2、または3箇所が-(C1-C7)-アルキル、-S(C1-C3)-アルキル、-O(C1-C3)-アルキル、-NO2、-SCF3、ハロゲン、-C(O)(C1-C3)-アルキル、および/または-CNで置換されている)
から成る群から選択されるか、または、
R1とR2、R1とR3、もしくはR2とR3は3-6個の炭素原子を含む環を形成し、ここで環は未置換であるか、または1、2、もしくは3箇所がそれぞれ独立して-OH、ハロゲン、-NO2、-NH2、-NHP、および/もしくは-Mで置換されており、それ以外の成分は上記1)から9)に記載される成分から選択される)
のケト化合物を使用する。
【0043】
別の好ましい態様では、式II:
【化2】

(式中、R5は(CH2)n(n=0-20)、-(C6-C14)-アリール、または-(C5-C14)-複素環であり、
R4およびR6はそれぞれ独立して-(C1-C20)-アルキルまたはエステル基であり、ここで、R4、R5、およびR6は未置換であるか、または1、2、もしくは3箇所がそれぞれ独立して-(C1-C4)-アルキル、-OH、ハロゲン、-NO2、および/もしくは-NH2で置換されている)
のジケトンを使用する。
【0044】
本発明の方法では、以下が更に好ましい:
- 酸化還元酵素/脱水素酵素によって生成される酸化型補助因子NADが連続的に再生される、そして
- 式RXRYCHOHの第二級アルコールを補助因子の再生に使用する(式中、RXおよびRYはそれぞれ独立して分枝鎖または非分枝鎖のC1-C8-アルキル基であり、Ctotal 3である)。
【0045】
「NAD」とはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを意味し、「NADH」は還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドである。
【0046】
第二級アルコール(=補助基質)は、使用する酸化還元酵素およびNADによって対応するケトンおよびNADHに変換され、それによってNADHの再生が起こる。この場合、再生のための補助基質の割合は5-95容量%、好ましくは10-70容量%、特に好ましくは20-50容量%である。
【0047】
特に好ましくは、2-プロパノールまたは2-ブタノールを補助因子再生のための第二級アルコールとして使用する。好ましくは、2-プロパノールの場合には10-70%(v/v)、特に好ましくは20-50%(v/v)を使用する。
【0048】
「アリール」とは、環(単数)中/(アネレートおよび完全コンジュゲートされた)環(複数)内に6-24個の炭素原子を含有する芳香族炭素成分と理解される。-(C6-C24)-アリール部分は、例えばフェニル、ナフチル(例えば1-ナフチル、2-ナフチル)、ビフェニルイル(例えば2-ビフェニルイル、3-ビフェニルイル、および4-ビフェニルイル)、アントラシル、フルオレニル、フェナントリル、またはシクロペンタノペルヒドロフェナントリルである。ビフェニルイル部分、ナフチル部分、および特にフェニル部分は好ましいアリール部分である。
【0049】
「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素の族の元素である。
【0050】
「-(C1-C20)-アルキル」とは、炭素鎖が直鎖または分枝鎖であり、1から20個の炭素原子を含む炭化水素成分であり、それらには例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デカニルなどがある。
【0051】
「-(C3-C7)-シクロアルキル」とは、環状炭化水素成分、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、またはシクロヘプチルである。
【0052】
「-(C5-C14)-複素環」とは、部分的または完全に飽和した単環式または二環式の5員から14員の複素環を表す。N、O、およびSはヘテロ原子の例である。ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、テトラゾール、1,2,3,5-オキサチアジアゾール-2-オキシド、トリアゾロン、オキサジアゾロン、イソキサゾロン、オキサジアゾリジンジオン、トリアゾールから誘導される成分であって、例えばF、-CN、-CF3、または-C(O)-O-(C1-C4)アルキルで置換されたもの、3-ヒドロキシピロ-2,4-ジオン、5-オキソ-1,2,4-チアジアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、インドール、イソインドール、インダゾール、フタルアジン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キノゾリン、シンノリン、カルボリン、および、該複素環のベンズ-アネレート化、シクロペンタ-、シクロヘキサ-、またはシクロヘプタ-アネレート化誘導体は「-(C5-C14)-複素環」の例である。以下の成分は特に好ましい:2-または3-ピロリル、フェニルピロリル、例えば4-または5-フェニル-2-ピロリル、2-フリル、2-チエニル、4-イミダゾリル、メチルイミダゾリル、例えば1-メチル-2-、-4-、または-5-イミダゾリル、1,3-チアゾール-2-イル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-、3-、または4-ピリジル-N-オキシド、2-ピラジニル、2-、4-、または5-ピリミジニル、2-、3-、または5-インドリル、置換型2-インドリル、例えば1-メチル-、5-メチル、5-メトキシ-、5-ベンジルオキシ-、5-クロロ-、または4,5-ジメチル-2-インドリル、1-ベンジル-2-または-3-インドリル、4,5,6,7-テトラヒドロ-2-インドリル、シクロヘプタ[b]-5-ピロリル、2-、3-、または4-キノリル、1-、3-、または4-イソキノリル、1-オキソ-1,2-ジヒドロ-3-イソキノリル、2-キノキサリニル、2-ベンゾフラニル、2-ベンゾチエニル、2-ベンゾキサゾリル、またはベンゾチアゾリル、またはジヒドロピリジニル、ピロリジニル、例えば2-または3-(N-メチルピロリジニル)、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、テトラヒドロチエニル、またはベンゾジオキソラニル。
【0053】
好ましい式Iの化合物は、例えば以下である:エチル-4-クロロアセトアセテート、メチルアセトアセテート、エチル-8-クロロ-6-オキソオクタン酸、エチル-3-オキソ吉草酸、4-ヒドロキシ-2-ブタノン、エチル-2-オキソ吉草酸、エチル-2-オキソ-4-フェニル酪酸、ピルビン酸エチル、フェニルグリオキシル酸エチル、1-フェニル-2-プロパノン、2-クロロ-1-(3-クロロフェニル)エタン-1-オン、アセトフェノン、2-オクタノン、3-オクタノン、2-ブタノン、1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタン-1-オン、1,4-ジクロロ-2-ブタノン、アセトキシアセトン、塩化フェナシル、4-ブロモアセト酢酸エチル、1,1-ジクロロアセトン、1,1,3-トリクロロアセトン、または1-クロロアセトン。
【0054】
式R-CO-CH2-X(式中、Xはハロゲンであり、Rは上記の式Iに定義する成分を表す)の芳香族化合物または芳香族複素環化合物は特に好ましい化合物である。
【0055】
更に好ましい化合物としてジケトン、例えば2,5-ヘキサンジオン、2,4-ペンタンジオン、2,7-オクタンジオン、2,7-ジメチル-3,6-オクタンジオン、またはジアセチルがある。
【0056】
本発明の方法では、酸化還元酵素を完全に精製した状態もしくは部分的に精製した状態で使用するか、または上記の酸化還元酵素を含有する細胞を用いて処理を行ってもよい。これを行うには、使用する細胞は天然のままの状態であるか、または透過処理もしくは溶解を行った状態であってもよい。好ましくは、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、およびそれらのホモログの酸化還元酵素をクローン化して使用する。
【0057】
変換すべきケト化合物1kg当たり5,000から10,000,000ユニットの酸化還元酵素を使用する(上限はない)。酵素単位「1ユニット」は1分間に1μmolのケト化合物を変換するのに必要な酵素量である。
【0058】
本発明の方法では、ケト化合物を総容量に対して3%-50%、好ましくは5%-40%、特に10%-30%の量で使用する。
【0059】
本発明の方法で得られるTTN(総ターンオーバー数=還元されたケト化合物のモル数/使用した補助因子のモル数)は通常、102から105であるが、好ましくは103である。
【0060】
補助因子の再生のために、アルコール脱水素酵素を更に添加してもよいが、好ましくは本発明の方法は酸化還元酵素(基質結合型補酵素再生)のみで実施する。
【0061】
酵素的還元を行う反応液の水相はバッファー、例えばリン酸カリウム、トリス/HCl、またはトリエタノールアミンバッファーで、pH値5-10、好ましくはpH値6-9のものを含有する。更に、バッファーは酵素の安定化または活性化のためのイオン、例えば亜鉛イオンまたはマグネシウムイオンを含有してもよい。
【0062】
本発明の方法を実施する際、温度は約10℃から70℃、好ましくは20℃から45℃の範囲である。
【0063】
本発明の方法の更なる可能な態様では、酵素的変換は、水と混和しない、または限定された温度でしか水と混和せず、補助因子の再生に関与しない、すなわち酸化可能な水酸基を含有しない有機溶媒の存在下で行う。該溶媒は、例えば対称もしくは非対称ジ(C1-C6)アルキルエーテル、直鎖もしくは分枝鎖アルカン、またはシクロアルカンであってもよい。好ましくは、ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ヘプタン、ヘキサン、トルエン、ジクロロメタン、シクロヘキサン、またはそれらの混合物を更なる有機溶媒として使用する。
【0064】
水相中の補助因子NAD(H)の濃度は一般に、0.001mMから1mM、特に0.01mMから0.1mMである。
【0065】
本発明の方法では、酸化還元酵素/脱水素酵素の安定化剤を使用してもよい。好適な安定化剤は、例えばグリセロール、ソルビトール、1,4-DL-ジチオトレイトール(DTT)、またはジメチルスルホキシド(DMSO)である。
【0066】
その酵素的還元は穏和な条件下で行い、生成されるアルコールがそれ以上反応しないようにする。本発明の方法は耐用期間が長く、エナンチオマー純度が高く(一般に、生成されるキラルアルコールの95%を超える)、使用するケト化合物の量に基づく収率が高い。
【0067】
本発明の方法は、例えばガラスまたは金属製の密閉反応容器内で行う。この目的のためには、成分を個々に反応容器中に移し、例えば窒素または空気雰囲気下で撹拌する。反応時間は1時間から48時間、特に2時間から24時間の範囲である。
【0068】
次いで、反応混液を再処理する。この目的のためには、水相を分離し、有機相をろ過する。場合により、水相を再抽出し、有機相と同様に更に再処理してもよい。その後、場合によりろ過した有機相から溶媒を留去する。
【実施例】
【0069】
以下の実施例により、本発明を更に詳細に例証し、同定された酸化還元酵素の優れた特性を従来技術との比較で例示する。
【0070】
実施例1:酸化還元酵素SEQ ID NO:5のクローニングおよび発現
A)ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)JMP134の培養
ラルストニア・ユートロファDSM4048細胞を、以下の培地(pH7.0)中、微生物培養器内(30℃)で培養した:0.5%ペプトン、0.3%肉エキス。培養3日目に、遠心分離によって細胞を培養液から分離し、-80℃で保存した。
【0071】
B)選択的酸化還元酵素をコードする遺伝子の増幅
ManniatisおよびSambrookの“Molecular Cloning”(上記参照)の方法に従ってゲノムDNAを抽出した。得られた核酸をテンプレートとして使用し、NCBIデータベースの遺伝子配列(No.53760931)から誘導した特定のプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。ここでは、その後の発現ベクターへのクローニングのために、プライマーの5'末端にエンドヌクレアーゼNdeIおよびXhoI制限酵素部位をそれぞれ施与した。
【0072】
増幅は、PCRバッファー(10mM tris-HCl(pH 8.0);50mM KCl;10mM MgSO4;1mM dNTP混合液;20pMolの各プライマー;および2.5UのPlatinum Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen社))中に500ngのゲノムDNAを含有させ、以下の温度サイクルで行った:
サイクル1:94℃、2分間
サイクル2x30:94℃、30秒間;55℃、30秒間;68℃、60秒間
サイクル3:68℃、7分間;4℃、∞
【0073】
得られたPCR産物(サイズ:約750bp)を1%アガロースゲルで精製した後、エンドヌクレアーゼNdeIおよびXhoIで制限消化し、同じエンドヌクレアーゼで処理したpET21aベクター(Novagen)バックボーンにライゲートした。2μlのライゲーション溶液をE.coli Top 10 F'細胞(Invitrogen社)に形質導入した後、プラスミドDNAのアンピシリン耐性コロニーについて、エンドヌクレアーゼNdeIおよびXhoIでの制限消化分析を用いて750bpのサイズの挿入断片の存在を試験した。フラグメントを有するクローンからのプラスミド標品のシーケンシング分析を行った後、大腸菌BL21 Star(Invitrogen社)に形質導入した。
【0074】
実施例2:大腸菌における組み換え酸化還元酵素の発現
発現コンストラクトを形質導入した大腸菌BL21 Star(Invitrogen社、ドイツ、カールスルーエ)およびRB791(大腸菌遺伝子ストック、米国エール)を200mlのLB培地(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、1% NaCl)(アンピシリン(50μg/ml)またはカルベニシリン(50μg/ml)含有)中、550nmでの光学密度が0.5に達するまで培養した。濃度0.1mMのイソプロピルチオガラクトシド(IPTG)を添加して組み換えタンパク質の発現を誘導した。それぞれ誘導の8時間後および16時間後に、遠心分離(25℃、220rpm)によって細胞を回収し、-20℃で凍結した。活性試験を行うため、10mgの細胞を500μlの100mM TEAバッファー(pH7.0)および500μlのガラスビーズと混合し、グローブミルを用いて10分間消化した。その後、得られたライセートを希釈した状態で各測定に使用した。活性試験は以下のように行った:870μlの100mM TEAバッファー(pH7.0)、160μgのNAD(H)、10μlの希釈した細胞ライセート。反応混液に100mMの基質溶液100μlを添加して反応を開始させた。
【0075】
本発明の酸化還元酵素は大腸菌で非常に効率的に発現させることができた。表3に、発現で得られた個々の酵素の活性を示す。
【0076】
【表3】

【0077】
実施例3:組換え酸化還元酵素SEQ ID NO:1-SEQ ID NO:7のキャラクタリゼーション
3a:至適pH
表4に示すバッファーを調製した。各バッファー成分の濃度はそれぞれ50mMである。
【0078】
【表4】

【0079】
測定溶液(30℃)-還元の至適pH:
表3に記載する各バッファー系 890μl
10mM NADH 20μl
希釈した酵素 10μl
約2-3分間のインキュベーション後、
基質溶液(100mM) 100μl
を添加した。
【0080】
各参照基質(表3)をそれぞれの酸化還元酵素の基質として使用した。340nmで1分間、反応を追跡した。至適pHを確認するために、表4に記載する各バッファー中での酵素反応を測定した。酸化反応の至適pHを確認するために、NADを補助因子として使用し、2-プロパノールまたは2-オクタノールを基質として使用した。
【0081】
酸化還元酵素SEQ ID NO:1-SEQ ID NO:7の結果を表5に示す。
【0082】
【表5】

【0083】
3b:pH安定性
組換え酸化還元酵素の安定性の試験を、それらを表4に示すバッファー系中に保存して行った。このために、種々のバッファー(50mM)をpH4-11の範囲に調製し、実施例4で得た酸化還元酵素をこれに希釈した。30、60、および120分のインキュベーション後、試験溶液から10μlを採取し、実施例3aに従って活性試験を行った。
【0084】
初期値は、酵素をリン酸カリウムバッファー(50mM、pH=7.0)に1:20で希釈した直後の測定値とした。所定の条件下において、それらの測定値は、約0.70/分の失活を示し、これを100%とした。その後の測定値は全て、この値との相関で示した。
【0085】
表6に、120分間のインキュベーションで酵素が初期活性の50%以上を示したpH範囲を、酸化還元酵素の名称と共に示す。
【0086】
【表6】

【0087】
3c:至適温度
至適試験温度を決定するために、本発明で使用する酸化還元酵素の酵素活性を、15℃から70℃の温度範囲で標準的な測定溶液中で測定した。確認された至適温度を表7に示す。
【0088】
【表7】

【0089】
3d:温度安定性
実施例3cの記載と同様に、15℃から70℃の範囲で温度安定性を確認した。このために、本発明で使用する酸化還元酵素の希釈液をそれぞれの場合について各温度で60分間および180分間インキュベートした後、上記の試験溶液中、30℃で測定した。表8に、120分間のインキュベーションで酵素が初期活性の50%以上を示した温度範囲を、酸化還元酵素名と共に示す。
【0090】
【表8】

【0091】
3e:2-プロパノールに対する安定性
被験酸化還元酵素の2-プロパノールに対する安定性を試験するために、実施例2で(組換え発現から)得られたライセートを相当するパーセンテージの2-プロパノールを含有するバッファー(KPP 100mM、pH=7.0)に希釈した(約10ユニット/mlバッファー)。試験溶液を持続的に撹拌しながら(サーモミキサー、170rpm)室温でインキュベートした。24時間のインキュベーション後、水相から10μlを採取し、これを用いて標準的な試験溶液(リン酸カリウムバッファー(KPP) 100mM、pH=7.0、0.2mM NADH、10mM基質)中で酵素活性を測定した。この場合も、バッファーに希釈した直後の初期値を100%とし、その後の全ての値はこれとの相関とした。
【0092】
【表9】

【0093】
表9に示すように、試験した配列は全て、2-プロパノール中で驚異的な安定性を示す、すなわち、全ての酸化還元酵素は20%イソプロパノール中で少なくとも24時間は安定であり、ほとんどの酵素は40%(v/v)、24時間後でも、実質的に最高75%の活性の残存を示している。
【0094】
これは配列SEQ ID NO:1-SEQ ID NO:7が2-プロパノールを用いる基質結合法における使用に特に好適であることを示している。
【0095】
3f:酸化還元酵素SEQ ID NO:1-SEQ ID NO:7の基質スペクトルの比較
キャラクタライズすべき配列の基質スペクトルを確認するために、多くのケトンおよびアルコールで還元および酸化に関する酵素活性を測定した。これを行うために、実施例2の標準的な試験溶液を種々の基質と共に使用した。
【0096】
全ての酵素について、アセト酢酸メチルでの活性を100%とし、他の全ての基質をそれとの相関で示した。
【0097】
【表10】

【0098】
所定の基質についてエナンチオマー過剰率を測定した。以下の反応溶液を使用した:
160μl バッファー
100μl NAD(0.4mg/ml)
20-50μl 2-プロパノール
50μl 酵素溶液
2mg 基質
反応条件:28℃、24時間
【0099】
インキュベーション終了後、基質毎にサンプルを溶媒で抽出し、遠心分離した。必要によりアリコートを採取し、抽出剤を完全に除去した後、サンプルを好適な溶媒に溶解し、GCでエナンチオマー過剰率を測定した。
【0100】
【表11】

【0101】
エナンチオマー過剰率は以下のように算出する:
ee(%)=((R-アルコール- S-アルコール)/(R-アルコール + S-アルコール))x100
【0102】
上記の酸化還元酵素の酸化に向かう可能性(すなわち再生へ適合性)を以下の活性試験を実施して比較した:870μlの100mM TEAバッファー(pH8.0)、160μgのNAD、10μlの希釈細胞ライセート。100μlの100mM 基質溶液を反応混液に添加して反応を開始させた。
【0103】
この場合、最も高い活性を有する基質を100%とした。
【0104】
【表12】

【0105】
表10-12に示すように、7つの配列は全て、明らかにR-特異的酸化還元酵素である。しかしながら、試験した酵素は好ましい基質のスペクトルおよび酸化挙動において明らかな相違を示している。相違は、長鎖カルボニル化合物より短鎖、正確には低分子基質を選好することに関連して生じ、同様に、種々の芳香族系または種々の置換基(例えばハロゲン)は異なる程度に容認される。
【0106】
原理的に同様の反応を実際に触媒する種々の酵素が利用可能であるが、それらの個別の基質の中には目的とする反応を非常に高い効率で触媒する酵素、および、目的とする反応を全く触媒しない酵素の両方が見られることが明らかになった。
【0107】
更に、エナンチオマー選択性の相違は一見わずかであるように見られるが、今日の薬物応用で一般的であるee>99.0-99.9%の特異度(specification)を与えるような特異的還元法への個々の酵素の適用性に関しては、これが決定的となりうる。
【0108】
また、酸化特性、ひいては基質結合型補酵素再生を伴う種々の方法の適用性は、試験した酵素間で、また、従来技術における比較において、多様である。
【0109】
従って、記載した酸化還元酵素の本発明の方法における使用は、確立された従来技術と等価の代替物を示すものではなく、既存のスペクトルを拡大するものである。
【0110】
実施例4:特定の方法における酸化還元酵素SEQ ID NO:1-SEQ ID NO:7の比較
以下に記載する実施例に基づき、特定の方法において、酵素SEQ ID NO:1-7によって具体的な疑問に対する解決が与えられ、これは既存の従来技術より明らかに優れていることを示す。
【0111】
4.a:3,6-オクタンジオンからR,R-3,6-オクタンジオールへの還元
3,6-オクタンジオンをR,R-3,6-オクタンジオールに還元するための基質結合型補酵素再生を伴う方法の構築に好適な酵素をスクリーニングするために、全ての酵素を以下の反応溶液で試験した:
450μl バッファー、pH=7.0
0.05mg NAD
50μl 2-プロパノール
10mg 3,6-オクタンジオン
25℃で24時間インキュベートした後、サンプルをジクロロメタン法で抽出し、GC分析を行った。
【0112】
表13に変換率と得られた反応生成物を示す。
【0113】
【表13】

【0114】
表13で明らかなように、可能な酵素の中には、上記の反応条件下で非常に良好に3,6-オクタンジオンを所望のR,R-オクタンジオールに還元する能力のあるもの(SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、およびピキア・フィンランディカ)、実質的に基質を受容しないもの(SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:5、およびカンジダ・ネモデンドラ)、および、単還元化合物を生成すべき場合に使用するのが好ましいもの(SEQ ID NO:4)がある。
【0115】
4.b 2,7-ジメチル-3,6-オクタンジオンから(S,S)-2,7-ジメチルオクタン-3,6-ジオールへの還元
2,7-ジメチル-3,6-オクタンジオンを(S,S)-2,7-ジメチルオクタン-3,6-ジオールに還元するための基質結合型補酵素再生を伴う方法に好適な酵素をスクリーニングするために、酵素を以下の反応溶液で試験した:
450μl バッファー、pH=7.0
0.05mg NAD
50μl 2-プロパノール
10mg 2,7-ジメチル-3,6-オクタンジオン
25℃で24時間インキュベートした後、サンプルをジクロロメタン法で抽出し、GC分析を行った。
【0116】
表14に変換率と得られた反応生成物を示す。
【0117】
【表14】

【0118】
従来技術では所望の反応を触媒できる酵素は存在しなかったが、表14で明らかなように、この問題はSEQ ID NO:2によって解決される。
【0119】
4.c 2,4-ペンタンジオンからR,R-2,4-ペンタンジオールへの還元
2,4-ペンタンジオンをR,R-2,4-ペンタンジオールに還元するための基質結合型補酵素再生を伴う方法に好適な酵素をスクリーニングするために、酵素を以下の反応溶液で試験した:
450μl バッファー、pH=7.0
0.05mg NAD
50μl 2-プロパノール
10mg 2,4-ペンタンジオン
【0120】
25℃で24時間インキュベートした後、サンプルをジクロロメタン法で抽出し、GC分析を行った。
【0121】
表15に変換率と得られた反応生成物を示す。
【0122】
【表15】

【0123】
表15で明らかなように、2,4-ペンタンジオンからR,R-2,4-ペンタンジオールへの変換はSEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:2で可能である。ほとんどの酵素はこの基質を単還元化合物までしか変換しない。従来技術でもこれは解決されていない。
【0124】
他方、単還元化合物の効率的な回収には、酸化還元酵素SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、およびSEQ ID NO:7は従来技術よりはるかに優れている。
【0125】
4.e 1,1,1-トリフルオロアセトンからR-1,1,1,-トリフルオロプロパノールへの還元
1,1,1-トリフルオロアセトンをR-1,1,1,-トリフルオロプロパノールに還元するための基質結合型補酵素再生を伴う方法に好適な酵素をスクリーニングするために、酵素を以下の反応溶液中で試験した。
【0126】
これを行うためには、この揮発性の高い基質の再処理および変換に適合させた反応溶液とする。この場合、イソプロパノールによる再生は行うことができないため、メチルペンタノールを用いることが好ましい。これは、1つには反応中に揮発性(bp=22℃)の基質が漏出することを防ぐためであり、また、反応生成物であるR-1,1,1-トリフルオロプロパノール(bp=80℃)の再処理を可能とするためでもある。(2-プロパノールは沸点が同じであるため分離することができない。)
450μl バッファー、pH=7.0
0.05mg NAD
500μl 2-メチル-4-ペンタノール
20μl 1,1,1-トリフルオロアセトン
【0127】
25℃で24時間インキュベートした後、サンプルをジクロロメタン法で抽出し、GC分析を行った。
【0128】
表16に変換率と得られた反応生成物を示す。
【0129】
【表16】

【0130】
表16から明らかなように、この場合、変換率および選択性の点から、酸化還元酵素SEQ ID NO:1が最も良好である。驚くべきことに、ほとんどの酵素はこの基質をエナンチオマー選択的に還元する能力を有しておらず、このことによっても、記載する酵素が基本的に同じ機能性を有するにもかかわらず多様性を有することが明らかである。
【0131】
4.f 2-クロロ-1-(3-ヒドロキシフェニル)エタン-1-オンから(1S)-2-クロロ-1-(3-ヒドロキシフェニル)エタン-1-オールへの還元
2-クロロ-1-(3-ヒドロキシフェニル)エタン-1-オンを(1S)-2-クロロ-1-(3-ヒドロキシフェニル)エタン-1-オールに還元するための基質結合型補酵素再生を伴う方法に好適な酵素をスクリーニングするために、酵素を以下の反応溶液で試験した:
400μl バッファー、pH=7.0
0.02mg NAD
100μl 2-プロパノール
25mg 2-クロロ-1-(3-ヒドロキシフェニル)エタン-1-オン
【0132】
25℃で24時間インキュベートした後、サンプルをジクロロメタン法で抽出し、GC分析を行った。
【0133】
表17に変換率と得られた反応生成物を示す。
【0134】
【表17】

【0135】
表17から明らかなように、2-クロロ-1-(3-ヒドロキシフェニル)エタン-1-オンから(1S)-2-クロロ-1-(3-ヒドロキシフェニル)エタン-1-オールへの変換は、基本的に酸化還元酵素SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6、およびSEQ ID NO:7で可能であり、これらの酵素によって基質は完全に選択的に変換される。従来技術には、この特定の基質を還元できる酵素はない。
【0136】
4.g エチル-4-クロロアセトアセテートから(S)-エチル-4-クロロ-3-ヒドロキシブチレートへの還元
以下において、エチル-4-クロロアセトアセテートを(S)-エチル-4-クロロ-3-ヒドロキシブチレートに還元するための工業プロセスで被験酵素SEQ ID NO:1-7を試験し、従来技術と比較する。
【0137】
これを行うために、基質エチル-4-クロロアセトアセテートを従来技術(WO 2006/087235)に従って高濃度(200g/l)で使用し、2-プロパノールでの基質結合型再生を伴う方法における酵素の効率を比較した。
600μl バッファー、pH=8.0
0.2mg NAD
200μl 2-プロパノール
200μl エチル-4-クロロアセトアセテート
240μl 大腸菌由来組換え酵素(20-60ユニット)
【0138】
25℃で24時間インキュベートした後、サンプルを抽出し、GC分析を行った。
【0139】
表18に変換率と得られた反応生成物を示す。
【0140】
【表18】

【0141】
表18で明らかなように、特に酵素SEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:3は、既存の一般的にNADPHに依存する方法の代替となるNADH依存性酵素であり、興味深いことに、これはエチル-4-クロロアセトアセテートを(S)-エチル-4-クロロ-3-ヒドロキシブチレートに還元する。対照的に、従来技術の酵素は、プロセス条件下で十分な変換を示さない、または全く変換を示さないため、好適ではない。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケト化合物を対応するキラルヒドロキシ化合物に立体選択的、特にエナンチオ選択的に酵素還元する方法であって、ケト化合物をエナンチオ選択的NADH特異的酸化還元酵素で還元し、ここでケト化合物の還元にポリペプチドを使用することを特徴とし、該ポリペプチドはR-ADHシグニチャー H-[P;A]-[I;A;Q;V;L]-[G;K]-Rを204-208位に有し、以下の更なる構造的特徴の全て:
(i)N-末端ロスマンフォールド(GxxxGxG)
(ii)87位におけるNAGモチーフ
(iii)S 139、Y 152、およびK 156から成る触媒三元構造
(iv)37位における負に帯電したアミノ酸成分
(v)二量体化ドメインにおける2つのC-末端モチーフ:[A;S]-S-Fおよび[V;I]-DG-[G;A]-Y-[T;C;L]-[A;T;S]-[Q;V;R;L;P]
(vi)159位におけるValまたはLeu(K 156の4位下流)
(vii)178位におけるAsn、および
(viii)188位におけるプロリン成分
を示す、上記方法。
【請求項2】
ポリペプチドを用いてケト化合物を還元することを特徴とし、該ポリペプチドは、
(a)アミノ酸配列SEQ ID NO:1からSEQ ID NO:7の1つを含有する、または
(b)少なくとも70%のアミノ酸がアミノ酸配列SEQ ID NO:1からSEQ ID NO:7の1つと同一である、または
(c)SEQ ID NO:8からSEQ ID NO:14から成る群から選択される核酸配列によってコードされる、または
(d)ストリンジェントな条件下で(c)に記載する核酸配列の1つとハイブリダイズする核酸配列によってコードされる、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
式Iのケト化合物:
【化3】

(式中、R1、R2、およびR3はそれぞれ独立して以下:
1)-H(ただしR1はHではない);
2)-(C1-C20)-アルキル(式中、アルキルは直鎖または分枝鎖である);
3)-(C2-C20)-アルケニル(式中、アルケニルは直鎖または分枝鎖であり、場合により4個までの二重結合を含有する);
4)-(C2-C20)-アルキニル(式中、アルキニルは直鎖または分枝鎖であり、場合により4個までの三重結合を含有する);
5)-(C6-C24)-アリール;
6)-(C1-C8)-アルキル-(C6-C14)-アリール;
7)-(C5-C14)-複素環;
8)-(C3-C7)-シクロアルキル
(式中、上記2)から8)に記載される成分は未置換であるか、あるいは1、2、または3箇所がそれぞれ独立して-OH、ハロゲン、-NO2、NH2、NHP、および/または-Mで置換されており、式中、Pは-(C1-C7)-アルキル、-(C2-C7)-アルケニル、-(C2-C7)-アルキニル、-(C6-C14)-アリール、または、ベンジルオキシカルボニル、トリフェニルメチル、およびt-ブチルカルボニルから成る群から選択される保護基であり、Mは-(C1-C7)-アルキル、-(C2-C7)-アルケニル、-(C2-C7)-アルキニル、-(C6-C14)-アリール、もしくは-(C1-C8)-アルキル-(C6-C14)-アリールであり、ここで、-(C1-C8)-アルキル-(C6-C14)-アリール中の-(C6-C14)-アリールは未置換であるか、または1、2、もしくは3箇所がハロゲンで置換されている);および
9)-CH2-X-R(式中、XはOまたはSであり、Rは-(C1-C7)-アルキル、フェニル、およびベンジルから選択され、ここで、フェニルおよびベンジルは1、2、または3箇所が-(C1-C7)-アルキル、-S(C1-C3)-アルキル、-O(C1-C3)-アルキル、-NO2、-SCF3、ハロゲン、-C(O)(C1-C3)-アルキル、および/または-CNで置換されている);
から成る群から選択されるか、または、
R1とR2、R1とR3、もしくはR2とR3は3-6個の炭素原子を含む環を形成し、ここで環は未置換であるか、または1、2、もしくは3箇所がそれぞれ独立して-OH、ハロゲン、-NO2、-NH2、-NHP、および/もしくは-Mで置換されており、それ以外の成分は上記1)から9)に記載される成分から選択される)
を使用することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
ケト化合物として式IIのジケトン:
【化4】

(式中、R5は(CH2)n(n=0-20)、-(C6-C14)-アリール、または-(C5-C14)-複素環であり、
R4およびR6はそれぞれ独立して-(C1-C20)-アルキルまたはエステル基であり、ここで、R4、R5、およびR6は未置換であるか、または1、2、もしくは3箇所がそれぞれ独立して-(C1-C4)-アルキル、-OH、ハロゲン、-NO2、および/もしくは-NH2で置換されている)
を使用することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
- 酸化還元酵素/脱水素酵素によって生成される酸化型補助因子NADが連続的に再生され;かつ
- 式RXRYCHOHの第二級アルコールを補助因子の再生に使用し、ここで、RXおよびRYはそれぞれ独立して分枝鎖または非分枝鎖のC1-C8-アルキル基であり、Ctotal 3である、
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載される方法。
【請求項6】
2-プロパノール、2-ブタノール、2-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-ヘプタノール、および2-オクタノールから成る群から選択されるアルコール、好ましくは2-プロパノールを、補助基質または第二級アルコールとして使用することを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
ケト化合物を総容量に対して3%から50%の範囲、好ましくは5%から40%の範囲、特に10%から30%の範囲の量で使用する、請求項1から6のいずれかに記載される方法。
【請求項8】
TTN(総ターンオーバー数=ケト化合物のモル数/使用した補助因子のモル数)は103以上である、請求項1から7のいずれかに記載される方法。
【請求項9】
水相/有機相の二相系で実施することを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載される方法。
【請求項10】
更にジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ヘプタン、ヘキサン、およびシクロヘキサンから選択される有機溶媒を使用することを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載される方法。



【公表番号】特表2012−519473(P2012−519473A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552434(P2011−552434)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052701
【国際公開番号】WO2010/100195
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(503382003)イーエーペー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (5)
【Fターム(参考)】