説明

ケミカルエアフィルタ運転制御システム

【課題】 製品表面に吸着する汚染物質を対象にして、この汚染物質を除去するフィルタの長寿命化を図るケミカルエアフィルタ運転制御システムを提供する。
【解決手段】 ケミカルエアフィルタ運転制御システム30は、清浄空間42を介して循環するエアの浄化に用いられるケミカルエアフィルタ48の運転制御システムにおいて、汚染物質を除去するケミカルエアフィルタ48と、前記ケミカルエアフィルタ48にエアを通気させる風量調整手段とを前記清浄空間42の入力段に設け、前記清浄空間42に生じる前記汚染物質の検知センサ10を前記清浄空間42に設け、前記検知センサ10の出力値変化の差分と予め設定された基準値とを比較し、当該比較値に応じて前記風量調整手段を制御する手段を設けた構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はケミカルエアフィルタ運転制御システムに係り、特にケミカルエアフィルタの通過風量を制御するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの高集積化に伴う微細化、多層化により、多種の不純物が半導体プロセスに種々の影響を与えている。半導体デバイスにおいては、シリコン元素以外の全ての元素、分子がピコグラム(10−12g)程度の極微量レベルで半導体プロセスに多少の影響を与えることは周知の事実である。分子状汚染物質としては、金属、酸性ガス、アルカリ性ガス、ボロンやリンのドーパント、および有機物が挙げられ、半導体デバイス表面に付着しやすいものがデバイスに影響を与えると考えられている。例えば有機物では、クリーンルーム内に50種類程度が存在しているが、その中で付着する有機物は特に沸点が高く、分子量の多い限られた有機物であることがわかっている。
【0003】
この分子状汚染物質の除去手段として、主なものにケミカルエアフィルタがある。このケミカルエアフィルタは、主に活性炭を用いており、雰囲気中ほぼ全ての分子状汚染物質に対し有効な除去手段である。したがってクリーンルーム等の清浄空間を形成するためには、エアが清浄空間に供給される側にケミカルエアフィルタを設けて、清浄空間に供給されるエアから分子状汚染物質を除去している。
【0004】
ところで、ケミカルエアフィルタの終点を検出するには、当該装置は、水晶振動子の電極上に所要のガス成分の吸着膜を設けたセンサをチャンバー内に設置すると共に、周波数検出器をセンサに接続した構成とし、周波数検出器でセンサに付着した汚染物質の量を共振周波数変化として取り出して、この共振周波数変化に基づきガス中成分を定量することによりケミカルエアフィルタの終点検知を行うようにした方法がある(特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2002−168748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ケミカルエアフィルタを常時運転させると、例えば有機物に関してはケミカルエアフィルタの吸着サイトの大半を、製品表面に付着しにくい低・中沸点の有機物で占めてしまうことになり、ケミカルエアフィルタの寿命が短いという問題点があった。
【0006】
また清浄空間内で突発的に製品表面に付着しやすい分子状汚染物質が発生した時、製品表面の汚染付着量をリアルタイムでモニタリングする方法がないため、ケミカルエアフィルタの通過風量は一定のままであり、発生した分子状汚染物質を完全に除去できるまでに時間がかかってしまう虞があった。
そのためケミカルエアフィルタの長寿命化および分子状汚染物質の発生時のすみやかな除去が必要であった。
【0007】
本発明は、清浄空間内にある製品表面に付着する汚染物質をモニタリングすることで、汚染物質を除去するフィルタの長寿命化を図るケミカルエアフィルタ運転制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るケミカルエアフィルタ運転制御システムは、清浄空間を介して循環するエアの浄化に用いられるケミカルエアフィルタの運転制御システムにおいて、汚染物質を除去するケミカルエアフィルタと、前記ケミカルエアフィルタにエアを通気させる風量調整手段とを前記清浄空間の入力段に設け、前記清浄空間に生じる前記汚染物質の検知センサを前記清浄空間に設け、前記検知センサの出力値変化の差分と予め設定された基準値とを比較し、当該比較値に応じて前記風量調整手段を制御する手段を設けた、ことを特徴としている。
また前記清浄空間内に設けられる前記検知センサは、水晶振動子センサまたは表面弾性波センサであることを特徴としている。
【0009】
また前記検知センサは、圧電基板上に電極を形成するとともに前記汚染物質の吸着膜を少なくとも前記電極上に形成してなり、前記吸着膜は、前記清浄空間内の製品表面と同じ物質からなる、ことを特徴としている。ここで前記清浄空間内の製品表面とは、前記清浄空間内で製作や保管される製品の表面のことをいう。
また前記清浄空間は、ミニエンバイロメント、ストッカ、クリーンブースまたはクリーンルームであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
検知センサが汚染物質を検知すると、検知センサの出力値が変化する。この変化の差分と基準値とを比較し、この比較値に応じて風量調整手段を制御すると、ケミカルエアフィルタの通過風量が変化する。そして清浄空間に汚染物質が増加して出力値変化の差分が基準値以上になった際にケミカルエアフィルタの通過風量を増加させると、汚染物質がエアによって清浄空間からすばやく排出されるとともに、排出された汚染物質をケミカルエアフィルタで取除くことができる。したがって清浄空間に何らかの要因により汚染物質が増加した際に、清浄空間から汚染物質をすばやく除去することができる。また汚染物質が減少して差分が基準値未満になった際に、ケミカルエアフィルタの通過風量を少なくするよう制御すると、ケミカルエアフィルタの負荷を最小限に抑えることができ、ケミカルエアフィルタの長寿命化を図ることができる。
【0011】
また水晶振動子センサまたは表面弾性波センサ上に汚染物質が吸着するとセンサからの出力値である発振周波数が変化するので、この発振周波数を測定することにより清浄空間内の汚染物質が増加したか否かを判断することができる。また水晶振動子センサや表面弾性波センサは、センサ上に吸着する物質の質量によって発振周波数が変化するので、センサ表面に吸着する汚染物質の質量を測定することにより清浄空間内の汚染物質が増加したか否かを判断することもできる。
【0012】
また清浄空間内にある製品表面と同じ物質が水晶振動子センサや表面弾性波センサ上にコーティングされているので、製品表面に付着する汚染物質が吸着膜上にも吸着する。したがって製品表面に吸着する汚染物質を対象にして汚染物質のモニタリングができるので、製品表面に吸着する汚染物質が清浄空間に増加したときにケミカルエアフィルタの通過風量を増やすことができ、ケミカルエアフィルタの長寿命化を図ることができる。
【0013】
またミニエンバイロメント、ストッカ、クリーンブースまたはクリーンルーム内の汚染物質をモニタリングすることができ、汚染物質が増加したときでもすばやく除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明に係るケミカルエアフィルタ運転制御システムの最良の実施形態について説明する。本実施形態は、クリーンルームやミニエンバイロメント、ストッカ、クリーンブース等の清浄空間に供給されるエアから分子状汚染物質を除去するためのケミカルエアフィルタの運転制御システムであり、具体的にはケミカルエアフィルタの通過風量を制御するシステムである。
【0015】
まず第1の実施形態について説明する。ケミカルエアフィルタ運転制御システムは、分子状汚染物質の検知センサとして水晶振動子センサまたは表面弾性波(Surface Acoustic Wave:以下、SAWという)センサを用いる構成である。図1は水晶振動子センサの概略断面図である。前記水晶振動子センサ10aは、水晶基板12の中央部両面に励振電極14が設けられ、この励振電極14上に分子状汚染物質を吸着する吸着膜16が設けられている。前記励振電極14は、例えば金等の金属によって形成され、水晶基板12の端部等に形成された接続電極(不図示)と導通している。また吸着膜16は、清浄空間にある製品表面と同一の材料で形成されており、例えば清浄空間においてシリコンを用いた半導体デバイスが製作される場合には、吸着膜16がシリコン膜となる。この吸着膜16は、図1では片方の励振電極14上のみに形成されているが、両方の励振電極14上に形成されてもよい。
【0016】
図2は表面弾性波センサの説明図である。なお図2(a)は概略平面図であり、同図(b)は概略断面図である。前記SAWセンサ10bは、水晶基板20の片面に櫛型電極(Interdigital Transducer:以下、IDTという)22が設けられ、SAWの伝搬方向におけるIDT22の両端に反射器26が設けられている。IDT22は、複数の電極指24を有し、この電極指24の一端を短絡させた構成の電極を備え、この電極を対向させて電極指24を交互にかみ合わせることにより形成されている。このようなIDT22は、水晶基板20上に形成された接続電極(不図示)と導通している。また前記反射器26は、IDT22の電極指24と平行に形成された複数の電極指28を備えた構成である。そしてIDT22および反射器26が設けられた水晶基板20上には、吸着膜29が設けられている。この吸着膜29は、清浄空間にある製品表面と同一の材料で形成されており、例えば清浄空間において、シリコンウエハを用いて半導体デバイスが製作される場合には、吸着膜29がシリコン膜となる。
【0017】
なお水晶振動子センサ10aとSAWセンサ10bとを比較した場合、SAWセンサ10bは水晶振動子センサ10aに比べて高い周波数で発振することが可能である。そしてケミカルエアフィルタ運転制御システムでは、検知センサの発振周波数を高くすると分解能が上がるので、高い検出感度を必要とするときはSAWセンサ10bを用いるのが好ましい。
【0018】
図3はケミカルエアフィルタ運転制御システムを説明するブロック図である。ケミカルエアフィルタ運転制御システム30は、次のような構成になっている。すなわち水晶振動子センサ10aまたはSAWセンサ10bは、これらを発振させるための発振回路32に接続されている。具体的には、発振回路32は検知センサ10(10a,10b)の前記接続電極と電気的に接続されている。そして発振回路32は、検知センサ10の発振周波数を測定する周波数測定手段34に接続されている。なお周波数測定手段34は、後述する演算制御手段36(36a,36b)に接続されており、発振回路32および周波数測定手段34と共にコントローラ38内に設けられている。
【0019】
ここで検知センサ10は、吸着膜16,29上に物質が吸着すると吸着物質の質量によって発振周波数が変化するものである。すなわち検知センサ10の発振周波数は、吸着膜16,29上に物質が吸着していない段階を基準周波数にすると、吸着膜16,29上に物質が吸着することにより前記基準周波数から低下する方向に変化する。
【0020】
図4はケミカルエアフィルタ運転制御システム30を清浄空間設備に適用した説明図である。清浄空間設備40は、半導体の処理製造、製品や治具類の保管等をする清浄空間42と、この清浄空間42の上側に位置して、清浄空間42にエアを供給する上部空間44とを備える。またエアの循環経路として、清浄空間42から排出されるエアを受け入れて、上部空間44へ戻すレタン空間46とを備えている。すなわち清浄空間42は、上部から清浄なエアを取り入れ、清浄空間42の下部側面から清浄空間42内の塵埃と共にエアを排出する構成である。
【0021】
前記清浄空間42の上部、すなわち清浄空間42と上部空間44との間には、エアから分子状汚染物質を除去するケミカルエアフィルタ(CAF)48と、塵埃を除去する高性能(HEPA)フィルタまたは超高性能(ULPA)フィルタとが設けられている。なお以下では、HEPAフィルタまたはULPAフィルタをHEPAフィルタ等50と省略する。そして、これらのCAF48およびHEPAフィルタ等50の上部には、清浄空間42にエアを供給するファン52が設けられている。このファン52がCAF48にエアを通気させる風量調整手段となる。なお図4において、各フィルタ48,50およびファン52は、清浄空間42の上部に1つ設けられた形態で記載されているが、この形態に限定されることはなく、清浄空間42内を清浄に保つように設置位置や数を適宜設定すればよい。
【0022】
そして清浄空間42には、分子状汚染物質の検知センサ10が設けられている。この検知センサ10は、清浄空間42内に1つ設けられてもよく、2つ以上設けられてもよい。なお複数の検知センサ10を設ける場合、各検知センサ10の吸着膜16,29を異なる種類の材料で形成してもよい。前記コントローラ38は、清浄空間設備40の外部に設けられて、検知センサ10およびファン52に接続されている。そしてコントローラ38に設けられた演算制御手段36aは、検知センサ10の発振周波数が変化するときの差分、すなわち発振周波数の変化量(検出値)を求め、この検出値と予め記憶された基準値とを比較するものである。この基準値は、清浄空間42に要求される清浄度に合わせて設定されている。また演算制御手段36aは、検知センサ10で分子状汚染物質を検出したときの発振周波数の変化量、すなわち検出値と基準値との比較結果(比較値)に応じてファン52の回転数を制御するものであり、清浄空間42へ供給するエアの量を調整可能にしている。
また清浄空間42の下部には、清浄空間42内のエアの一部を清浄空間設備40の外部へ排気するための手段54が設けられている。
【0023】
このような清浄空間42の上側、すなわちフィルタ48,50およびファン52の上側は上部空間44であり、この上部空間44には、レタン空間46を介して塵埃等を含むエアが清浄空間42から供給される。また上部空間44には、塵埃等を除去したエアを清浄空間設備40の外部から吸気する手段56が設けられている。
【0024】
次に、ケミカルエアフィルタ運転制御システム30の作用について説明する。清浄空間42は、ファン52が回転することによりCAF48とHEPAフィルタ等50とをエアが通過し、分子状汚染物質および塵埃の除去されたエアが供給される。この供給されたエアは、清浄空間42を通過するときに分子状汚染物質や塵埃を含み、清浄空間42から排出される。そして排出されたエアは、レタン空間46を介して上部空間44へ供給される。これによりエアは清浄空間設備40を循環する。なお清浄空間42へのエア供給量は、通常時は清浄空間42に要求される清浄度を満たす量(最小風量)に設定されている。
【0025】
このとき清浄空間42内、すなわち製品に吸着する分子状汚染物質を検知するために、発振回路32により検知センサ10を発振させ、周波数測定手段34により検知センサ10の発振周波数を測定している。演算制御手段36aは、周波数測定手段34で得られた検知センサ10の発振周波数を入力する。
【0026】
そして検知センサ10に分子状汚染物質が吸着すると検知センサ10の発振周波数が変化し、演算制御手段36aによってこれらの発振周波数の差分、すなわち発振周波数の変化量(検出値)が求められる。演算制御手段36aは、この検出値と予め記憶された基準値とを比較して、検出値が基準値以上であればファン52に対して回転数を上げる信号を出力する。ファン52は、この信号を入力すると回転数を上昇させる。これによりCAF48とHEPAフィルタ等50とを通過する風量が上昇し、清浄空間42に供給されるエア量が増加する。したがって清浄空間42内の分子状汚染物質はエア量の増加に伴って短時間で排出されるので、清浄空間42内の分子状汚染物質を短時間で除去することが可能になる。
【0027】
また清浄空間42内の分子状汚染物質が減少していくと、検知センサ10の発振周波数の変化量が小さくなる。このとき演算制御手段36aは、検知センサ10における検出値と基準値とを比較して、検出値が基準値未満であれば、ファン52に対して回転数を下げる信号を出力する。ファン52は、この信号を入力すると回転数を下降させる。これによりCAF48とHEPAフィルタ等50とを通過する風量が下降し、清浄空間42に供給されるエア量が減少し、通常時のエア供給量に戻すことが可能になる。
【0028】
このように検知センサ10は、水晶基板12,20上に電極を設けるとともに、清浄空間42内にある製品表面と同じ物質からなる吸着膜16,29を少なくとも前記電極上に設けたので、製品表面に付着する分子状汚染物質を対象にして常時測定することができる。この検知センサ10は、吸着膜16,29に分子状汚染物質が吸着すると、発振周波数が変化するので、検知センサ10の発振周波数変化を検知することにより、清浄空間42内に分子状汚染物質が存在していることがわかる。そして検知センサ10の発振周波数の変化量(検出値)を基準値と比較することにより、清浄空間42内が要求されている清浄度になっているか否か、すなわち清浄空間42内において製品表面に付着する分子状汚染物質が多いか少ないかを判断することができる。
【0029】
この検出値と基準値とを比較したときに、検出値が基準値以上であれば清浄空間42に要求される清浄度に到達していないと判断できるので、ファン52を制御してCAF48やHEPAフィルタ等50を通過するエアの風量を多くし、すなわち清浄空間42へのエアの供給量を多くして清浄空間42内から分子状汚染物質を排出し、清浄空間42内の分子状汚染物質を短時間で除去することができる。
【0030】
また清浄空間42内の分子状汚染物質が除去されて清浄空間42が要求される清浄度に到達すると、検知センサ10の発振周波数の変化量は小さくなり、検出値が基準値未満になる。この状態になると、ファン52を制御してCAF48やHEPAフィルタ等50を通過するエアの風量を少なくして、清浄空間42に供給するエアを最小風量に戻すことができる。したがって、CAF48やHEPAフィルタ等50に供給されるエアの量は、常に清浄空間42内の分子状汚染物質を除去するために多くしている必要がなく、清浄空間42内に分子状汚染物質が増えたときに増加するので、CAF48の負荷を最小限に抑えることができ、CAF48の長寿命化を図ることができる。
【0031】
なお上述した実施形態では、水晶振動子センサ10aおよびSAWセンサ10bは水晶基板を用いた形態について説明したが、他の圧電材料からなる圧電基板を用いることもできる。この場合、例えばタンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム、酸化亜鉛等の圧電材料から形成された圧電基板上に励振電極またはIDT等を形成することにより、振動子センサやSAWセンサを形成することができる。
【0032】
また検知センサ10は、検知センサ10上に吸着する分子状汚染物質の質量によって発振周波数が変化するものである。したがって検知センサ10から出力される発振周波数を質量に換算し、質量変化の差分と基準値とを比較し、当該比較値に応じてファン52の回転数を制御してもよい。
また検知センサは、吸着膜を設けない構成にすることもできる。
【0033】
次に、第2の実施形態について説明する。なお第2の実施形態では、第1の実施形態と同構成の部分には同番号を付し、その説明を省略または簡略する。図5はケミカルエアフィルタ運転制御システムを清浄空間設備に適用した説明図である。清浄空間設備60は清浄空間62を備え、この清浄空間62の上部にHEPAフィルタまたはULPAフィルタが設けられている。なお以下では、HEPAフィルタまたはULPAフィルタをHEPAフィルタ等50と省略する。このHEPAフィルタ等50の上側には、HEPAフィルタ等50に一定風量のエアを供給するファン63が設けられている。また清浄空間62には、塵埃等を除去したエアを清浄空間設備60の外部から吸気する手段56が設けられ、下部には、清浄空間62内のエアの一部を清浄空間設備60の外部へ排気するための手段54が設けられている。
【0034】
この清浄空間62の下部側面から清浄空間62内の塵埃と共にエアを排出する構成であり、当該排出口とファン63とがレタンダクト64により接続して、清浄空間62を介してエアが循環する構成である。このレタンダクト64は、その間において2経路に分かれており、一方の経路64aにはモータダンパ66が設けられ、他方の経路64bにはモータダンパ68とその後段にCAF48とが設けられている。この他方の経路64bに設けられたモータダンパ68が、CAF48にエアを通気させる風量調整手段となる。
【0035】
この清浄空間62には、検知センサ10が設けられている。この検知センサ10には、第1の実施形態で説明した水晶振動子センサやSAWセンサを用いればよい。そして検知センサ10は、発振回路32、周波数測定手段34および演算制御手段36bが設けられたコントローラ38に接続されている。前記演算制御手段36bは、検知センサ10の発振周波数が変化するときの差分、すなわち発振周波数の変化量(検出値)を求め、この検出値と予め記憶された基準値とを比較するものである。また演算制御手段36bは、レタンダクト64における2経路のそれぞれに設けられたモータダンパ66,68と接続し、検知センサ10で分子状汚染物質を検出したときの発振周波数の変化量、すなわち検出値と基準値との比較結果(比較値)に応じて各モータダンパ66,68の開度をそれぞれ調整するものである。
【0036】
次に、ケミカルエアフィルタ運転制御システムの作用について説明する。清浄空間62は、ファン63が回転することによりHEPAフィルタ等50をエアが通過し、塵埃の除去されたエアが供給される。この供給されたエアは、清浄空間62を通過するときに塵埃を含み、清浄空間62から排出される。そして排出されたエアは、レタンダクト64における一方の経路64aを介してファン63に供給される。このとき一方の経路64aに設けられたモータダンパ66の開度は100%であり、他方の経路64bに設けられたモータダンパ68は閉止されている。このような清浄空間設備60は、レタンダクト64を介して清浄空間62内のレタンエアをファン63により循環させている。
【0037】
このとき清浄空間62内、すなわち製品に吸着する分子状汚染物質を検知するために、発振回路32により検知センサ10を発振させ、周波数測定手段34により検知センサ10の発振周波数を測定している。演算制御手段36bは、周波数測定手段34で得られた検知センサ10の発振周波数を入力する。
【0038】
そして検知センサ10に分子状汚染物質が吸着すると検知センサ10の発振周波数が変化し、演算制御手段36bによって発振周波数の差分、すなわち発振周波数の変化量(検出値)が求められる。演算制御手段36bは、この検出値と予め記憶された基準値とを比較して、検出値が基準値以上であれば一方の経路64aに設けられたモータダンパ66に対して開度を絞る信号を出力すると共に、他方の経路64bに設けられたモータダンパ68に対して開度を上げる信号を出力する。各モータダンパ66,68は信号を入力すると、信号に応じて開度を調整する。これによりエアがCAF48に供給されるので、このCAF48によって分子状汚染物質が除去される。また検知センサ10の発振周波数の変化量に応じてCAF48の前段にあるモータダンパ68の開度を調整すると、すなわち発振周波数の変化量が大きい程CAF48前段のモータダンパ68の開度を大きくすると、清浄空間62内の分子状汚染物質をすばやく除去することが可能になる。なお各モータダンパ66,68の開度を合計したときに、常に100%になるよう制御すれば、HEPAフィルタ等50の通過風量を一定にすることが可能になる。
【0039】
また清浄空間62内の分子状汚染物質が減少していくと、検知センサ10の発振周波数の変化量が小さくなる。このとき演算制御手段36bは、検知センサ10における検出値と基準値とを比較して検出値が基準値未満であれば、CAF48の前段に設けられたモータダンパ68に対して閉止する信号を出力すると共に、一方の経路64aに設けられたモータダンパ66に対して開度を100%にする信号を出力する。各モータダンパ66,68は信号を入力すると、信号に応じて開度を調整する。これによりエアがCAF48に供給されず、一方の経路64aを介してエアが循環する。
【0040】
このように検知センサ10の発振周波数の変化量と基準値とを比較したときに、変化量が基準値以上であれば清浄空間62に要求される清浄度に到達していないと判断できるので、一方の経路64aに設けられているモータダンパ66の開度を下げると共に、CAF48の前段にあるモータダンパ68の開度を上げてCAF48にエアを供給することで、清浄空間62内の分子状汚染物質を短時間で除去することができる。
【0041】
また清浄空間62内の分子状汚染物質が除去されて清浄空間62が要求される清浄度に到達すると、検知センサ10の発振周波数の変化量は小さくなり、検出値が基準値未満になる。この状態になると、CAF48の前段にあるモータダンパ68を閉止し、一方の経路64aにあるモータダンパ66の開度を100%にするので、CAF48の負荷を最小限に抑えることができ、CAF48の長寿命化を図ることができる。
【0042】
さらに清浄空間62には、常に一定風量のエアを供給することができる。したがって清浄空間に供給されるエアの量が変化する場合、エアの供給量が多くなると、清浄空間に要求される清浄度によっては塵埃等が舞い上がる虞があるが、本実施形態ではこのような塵埃が舞い上がる虞は生じない。
【0043】
また検知センサ10は、検知センサ10上に吸着する分子状汚染物質の質量によって発振周波数が変化するものである。したがって検知センサ10から出力される発振周波数を質量に換算し、質量変化の差分と基準値とを比較し、当該比較値に応じてモータダンパ68の開度を制御してもよい。
また検知センサは、吸着膜を設けない構成にすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】水晶振動子センサの概略断面図である。
【図2】表面弾性波センサの説明図である。
【図3】ケミカルエアフィルタ運転制御システムを説明するブロック図である。
【図4】第1の実施形態に係り、ケミカルエアフィルタ運転制御システムを清浄空間設備に適用した説明図である。
【図5】第2の実施形態に係り、ケミカルエアフィルタ運転制御システムを清浄空間設備に適用した説明図である。
【符号の説明】
【0045】
10………検知センサ、30………ケミカルエアフィルタ運転制御システム、32………発振回路、34………周波数測定手段、36(36a,36b)………演算制御手段、42………清浄空間、48………ケミカルエアフィルタ(CAF)、50………HEPAフィルタ等、52………ファン、62………清浄空間、63………ファン、66,68………モータダンパ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
清浄空間を介して循環するエアの浄化に用いられるケミカルエアフィルタの運転制御システムにおいて、
汚染物質を除去するケミカルエアフィルタと、前記ケミカルエアフィルタにエアを通気させる風量調整手段とを前記清浄空間の入力段に設け、
前記清浄空間に生じる前記汚染物質の検知センサを前記清浄空間に設け、
前記検知センサの出力値変化の差分と予め設定された基準値とを比較し、当該比較値に応じて前記風量調整手段を制御する手段を設けた、
ことを特徴とするケミカルエアフィルタ運転制御システム。
【請求項2】
前記清浄空間内に設けられる前記検知センサは、水晶振動子センサまたは表面弾性波センサであることを特徴とする請求項1に記載のケミカルエアフィルタ運転制御システム。
【請求項3】
前記検知センサは、圧電基板上に電極を形成するとともに前記汚染物質の吸着膜を少なくとも前記電極上に形成してなり、
前記吸着膜は、前記清浄空間内の製品表面と同じ物質からなる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のケミカルエアフィルタ運転制御システム。
【請求項4】
前記清浄空間は、ミニエンバイロメント、ストッカ、クリーンブースまたはクリーンルームであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のケミカルエアフィルタ運転制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−105540(P2006−105540A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295292(P2004−295292)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(000005452)日立プラント建設株式会社 (1,767)
【Fターム(参考)】