説明

ケラチン繊維のパーマネント変形方法

本発明は、ケラチン繊維に変形用の機械的張力を提供する工程;



(式中、
XはO、OH、NH、O-OH、及び、O-COOからなる群から選択される基を表す)
のイオンの1以上の供給源を含む組成物をケラチン繊維に塗布する工程;
ケラチン繊維を閉鎖空間に載置する工程;及び、
ケラチン繊維を加熱する工程
を含む、ケラチン繊維のパーマネント変形方法に関する。また、本発明は、上記方法に使用される変形剤及びキットにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪等のケラチン繊維のパーマネント変形方法、並びに、当該方法に使用される変形剤及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
容易にスタイルを整え、所望の質感を与え、また、毛髪、特に薄い毛髪に重量感を与えるために、近頃、多くのヘアケア製品が販売されており、例えば、フォーム剤、スタイリングゲル又はヘアラッカーがその例として挙げられる。これらの製品は毛髪の整形を可能とするが、シャンプーで除去されるので、毎日、使用される必要がある。
【0003】
毛髪の変形を長持ちさせる最も一般的な技術は、最初の段階で、適当な還元剤を含む組成物でケラチンのS-Sジスルフィド結合(シスチン結合)を開裂し(還元工程)、次に、このように処理された毛髪を一般には水ですすぎ、第2の段階で、例えばカーラーを用いて張力下に予め置かれた毛髪に酸化用組成物を塗布して、上記ジスルフィド結合を再形成し(酸化工程:固定工程とも称される)、最終的に、所望の形状を毛髪に与えることからなる。
【0004】
上記のような化学的処理によって毛髪に付与された新しい形状は、フォーム剤、スタイリングゲル又はラッカーを用いて毛髪を一時的に再整形する通常の単純な方法と比べて、比較的長持ちし、水又はシャンプーによる洗浄操作に対して特に抵抗性である。
【0005】
上記化学的処理については多くの組成物及び方法が提案されている。一般に、これらは処理当日については、良好な性能を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−208115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の化学的処理には、消費者の期待の観点からは好適とはいえないかもしれない、下記の様々な欠点が存在する。
− 環境ストレス(ブラッシングによる機械的束縛、頻繁なシャンプー、光への曝露、高湿度等)に対して不十分な長持ち効果
− 天然毛髪への不十分なパーマ効果
− 特に、酸化染色等の他の化学的処理との組み合わせ、又は、繰り返し処理による、高度の毛髪の劣化
− 長い処理時間
− パーマ工程中又は工程後のチオール化合物の悪臭
【0008】
したがって、本発明の目的は、良好なカール持続性を提供する、毛髪等のケラチン繊維の新たなパーマネント変形方法を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、ケラチン繊維の上記の新たなパーマネント変形方法によって、天然毛髪に強力なパーマ効果を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、ケラチン繊維のパーマネント変形方法による毛髪の高度のダメージを防止することである。
【0011】
本発明の更なる目的は、ケラチン繊維の従来のパーマネント変形方法に必要であった時間を短縮して、ケラチン繊維の迅速なパーマネント整形方法を提供することである。
【0012】
本発明の更なる目的は、ケラチン繊維の従来のパーマネント変形方法で広く使用されるチオール化合物に由来する悪臭を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、ケラチン繊維に変形用の機械的張力を提供する工程;

【化1】

(式中、
XはO、OH、NH、O-OH、及び、O-COOからなる群から選択される基を表す)
のイオンの1以上の供給源を含む組成物をケラチン繊維に塗布する工程;
ケラチン繊維を閉鎖空間に載置する工程;及び、
ケラチン繊維を加熱する工程
を含む、ケラチン繊維のパーマネント変形方法によって達成することができる。
【0014】
前記方法は、前記組成物をケラチン繊維に塗布する工程の後、及び/又は、前記ケラチン繊維を加熱する工程の後に、前記ケラチン繊維をすすぐ工程を更に含んでもよい。
【0015】
前記閉鎖空間は少なくとも1つの被覆手段によって形成されてよい。前記被覆手段は硬質又は軟質でありうる。前記被覆手段はフィルム及びシートからなる群から選択される少なくとも1つの部材を含むことができる。
【0016】
前記機械的張力は、カーラー、ローラー、プレート及びアイロンからなる群から選択される少なくとも1つの再整形手段によって提供されうる。
【0017】
前記方法では、ケラチン繊維を加熱する工程において、ケラチン繊維が50〜250℃に加熱されうる。ケラチン繊維は、熱風、熱蒸気、高周波誘導加熱、マイクロ波加熱、赤外線照射、レーザー及びフラッシュランプ照射からなる群から選択される少なくとも1つを提供する少なくとも1つのヒーターによって加熱されうる。前記被覆手段及び/又は前記再整形手段が前記ヒーターを含んでもよい。
【0018】
前記方法において使用される前記組成物は、当該組成物の全重量を基準として、前記イオンの供給源を0.1〜40重量%含むことができる。前記組成物のpHは6〜11であってよい。前記イオンの供給源は炭酸塩、炭酸水素塩、カルバメート塩、及び、ぺルオキシ炭酸塩からなる群から選択されることができる。
【0019】
前記方法は、ケラチン繊維を酸化する工程を含まなくともよい。
【0020】
本発明の他の側面は、
【化2】

(式中、
XはO、OH、NH、O-OH、及び、O-COOからなる群から選択される基を表す)
のイオンの1以上の供給源を含む、閉鎖空間で加熱されるケラチン繊維の一段階パーマネント変形剤である。
【0021】
本発明は、ケラチン繊維に機械的張力を提供する少なくとも1つの再整形手段;
閉鎖空間を形成する少なくとも1つの被覆手段、及び、
前記閉鎖空間中のケラチン繊維を加熱する少なくとも1つのヒーター
を備えるデバイス、並びに、
【化3】

(式中、
XはO、OH、NH、O-OH、及び、O-COOからなる群から選択される基を表す)
のイオンの1以上の供給源を含む組成物
を備える、ケラチン繊維のパーマネント変形用キットにも関する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
良好な性能を達成するために、毛髪等のケラチン繊維の従来のパーマ製品は、比較的高濃度の還元剤を含み、高いアルカリ度を有する。例えば、当該分野で汎用の還元剤の1つであるチオグリコール酸は典型的には6〜11重量%の濃度で使用され、また、11以上のpHで使用される。
【0023】
更に、そのような還元剤の化学作用を増大するためにケラチン繊維の還元工程中に加熱プロセスを設ける幾つかの技術が存在する。これらの技術は、例えば、プラスチック製ローラーに巻きつけられたケラチン繊維を熱風/熱蒸気/遠赤外線で加熱する。この加熱プロセスは開放環境下で行われるので、ケラチン繊維は最大でも50℃未満にしか加熱されず、ケラチン繊維中の水又は水分の気化のために、これ以上に加熱することはできない。加熱ステップの最後に、還元されたケラチン繊維は濯がれて、酸化され、再度、濯がれる。この加熱プロセスを採用する利点は、古典的なコールドパーマ法に比べてパーマ性能及びカール持続性が僅かに改善することである。
【0024】
しかし、より優れた性能を達成するためには、高濃度の強力な還元剤及び強アルカリ条件が必要である。したがって、パーマを繰り返し行う、又は、化学処理を更に行う(例えばパーマと着色)場合に、使用者には好ましくない有意な又は致命的な劣化をケラチン繊維は受けてしまう。
【0025】
鋭意検討の結果、本発明者らは、特定のイオンの供給源を含む組成物及びケラチン繊維のパーマネント変形中の特定の加熱プロセスの組み合わせを使用することによって、ケラチン繊維の有意な又は致命的な劣化を生じることなく、より優れたパーマ性能を達成可能であることを見出した。
【0026】
上記の特定の加熱プロセスが、閉じた、すなわち、閉鎖環境で実施されると、ケラチン繊維からの水又は水分の蒸発が制限され、ケラチン繊維を湿った状態でより高い温度に維持することができる。したがって、処理されたケラチン繊維は良好なカール持続性及び良好なパーマ効果を示すことができる。
【0027】
本発明で使用される組成物はチオール化合物等の還元剤を含む必要がない。したがって、還元剤に由来する悪臭を防止することができる。
【0028】
しかも、強アルカリは最早不要であるので、ケラチン繊維の劣化も防止される。
【0029】
本発明によれば、古典的なパーマ法とは異なり、安定的なパーマネントウェーブ形成の達成のための酸化工程が最早不要である。したがって、上記の新しい規組成物及び新しい加熱プロセスの組み合わせによって、一段階の工程が達成できる。これは、ケラチン繊維のパーマネント変形工程に要する時間をかなり短縮することができる。
【0030】
(組成物)
本発明で使用される組成物は、
【化4】

(式中、
XはO、OH、NH、O-OH、及び、O-COOからなる群から選択される基を表す)のイオンの1以上の供給源を含む。
【0031】
これらのイオンの好適な供給源は、炭酸イオン、ぺルオキシ炭酸イオン、カルバメートイオン、炭酸水素イオン、及び、これらの混合物のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、及び、アンモニウム塩等の無機塩でありうる。上記無機塩の例として、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、及び、これらの混合物が挙げられる。
【0032】
これらのイオンの好適な供給源は、炭酸イオン、ぺルオキシ炭酸イオン、カルバメートイオン、炭酸水素イオン、及び、これらの混合物の有機塩基塩等の有機塩でありうる。上記有機塩の例として、アミノ酸炭酸塩及びグアニジン炭酸塩が挙げられる。
【0033】
炭酸塩としては、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、グアニジン炭酸塩、及び、その誘導体が好ましい。
【0034】
炭酸水素塩(重炭酸塩)としては、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸アンモニウム、並びに、重炭酸テトラエチルアンモニウム、重炭酸トリエチルアンモニウム等のその誘導体が好ましい。
【0035】
カルバメート塩としては、アンモニウムカルバメートが好ましい。
【0036】
ぺルオキシ炭酸塩としては、ぺルオキシ炭酸ナトリウム及びぺルオキシ炭酸カリウムが好ましい。
【0037】
イオン源としては、炭酸塩及び炭酸水素塩が好ましい。特に、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム)が最も好ましい。
【0038】
上記のイオン源は、その溶解性によって、組成物の全重量を基準にして、0.1〜40重量%、好ましくは0.2〜30重量%、より好ましくは0.3〜20重量%の範囲の全重量で使用することができる。
【0039】
組成物のpHは6〜11、好ましくは7.5〜9.5、より好ましくは8.0〜9.0の範囲であることができる。組成物のpHは比較的高くないので、組成物によるケラチン繊維へのダメージを低減することができる。
【0040】
pHを調節するために、本発明で使用されるイオン源以外の酸性化剤又はアルカリ化剤を単独で又は組み合わせて使用することができる。酸性化剤又はアルカリ化剤の量は限定されないが、組成物の全重量を基準にして、0.1〜5重量%の範囲とすることができる。酸性化剤としては、クエン酸、乳酸、リン酸又は塩酸(HCl)等の化粧品に広く使用される任意の無機酸又は有機酸が挙げられる。HClが好ましい。アルカリ化剤としては、アンモニア;イソプロパノールアミン、モノ−、ジ−及びトリ−エタノールアミン等のアルカノールアミン;水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム;尿素、グアニジン、及び、これらの誘導体;リジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸;及び
【化5】

(式中、Rは水酸基又はC−Cアルキル基で任意に置換されたプロピレン等のアルキレンを表し、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基又はC−Cヒドロキシアルキル基を表す)の構造で表される、1,3−プロパンジアミン等のジアミン等の化粧品に広く使用される任意の無機塩基性化剤又は有機塩基性化剤が挙げられる。
【0041】
本発明で使用される組成物は、1以上の美容成分を含むことができる。美容成分の量は限定されないが、組成物の全重量を基準にして0.1〜10重量%の範囲とすることができる。美容成分は、揮発性又は不揮発性、直鎖状又は環状、アミン型又は非アミン型の、シリコーン、カチオン性、非イオン性又は両性ポリマー、ペプチド及びその誘導体、タンパク質加水分解物、合成又は天然ワックス、特に脂肪アルコール、膨潤剤、及び、浸透剤、並びに、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性又は双イオン性の界面活性剤、抜毛防止剤、抗フケ剤、会合性又は非会合性、天然又は合成の増粘剤、懸濁剤、キレート化剤、不透明化剤、染料、サンスクリーン剤、フィラー、ビタミン又はプロビタミン、ミネラル、植物又は動物油、更に、香料、防腐剤、安定剤、還元剤、これらの混合物からなる群から選択することができる。
【0042】
本発明で使用される組成物用のビヒクルは、好ましくは水からなる水性媒体であり、有利には、化粧品として許容される1以上の有機溶媒を含有してもよく、より具体的には、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、およびフェニルエチルアルコールなどのアルコール、またはポリオールもしくはポリオールエーテル、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、およびモノブチルエーテル、プロピレングリコールもしくはそのエーテル、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、およびジエチレングリコールアルキルエーテル、例えばジエチレングリコールモノエチルエーテルもしくはモノブチルエーテルも含んでもよい。水は組成物の全重量を基準にして10〜90重量%の濃度で存在してよい。次いで、有機溶媒は、組成物の全重量を基準にして、0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%の濃度で存在してよい。
【0043】
前記組成物は、ケラチン繊維のパーマネント変形に使用される従来のヘアケア製品に使用されているチオグリコール酸等の従来の還元剤を含んでもよい。好ましくは、前記組成物は悪臭を回避するためにこの種の成分を含まない。
【0044】
本発明で使用される組成物は、ローション、ゲル、増粘された又は増粘されていない、フォーム又はクリーム等の任意の形態で存在することができる。
【0045】
(加熱プロセス)
本発明では、毛髪等のケラチン繊維が閉鎖空間内で実施される特定の加熱プロセスに付される。
【0046】
加熱プロセスは上記の組成物中の水等の揮発性成分のケラチン繊維からの気化を制限し、当該プロセスの間、加熱デバイス内の温度を所定の値に維持する閉鎖空間を形成可能な特別なデバイスを用いて実施されることが好適でありうる。
【0047】
上記の組成物中の水等の揮発性成分がケラチン繊維から気化すると、ケラチン繊維に与えられた熱エネルギーの大部分は気化によって消費され、ケラチン繊維の温度は、当該組成物中の全ての揮発性成分が気化するまで、所定の値にまで上昇できない。
【0048】
上記加熱デバイスはケラチン繊維に接触するか、或いは、ケラチン繊維から離れた熱エネルギー源;及び、ケラチン繊維を取り囲む少なくとも1つの閉鎖空間形成手段を備えることができる。
【0049】
前記熱エネルギー源はケラチン繊維を加熱するために使用される。前記熱エネルギー源は、熱風、熱蒸気、高周波誘導加熱、マイクロ波加熱、赤外線照射、レーザー及びフラッシュランプ照射からなる群から選択される少なくとも1つを提供する少なくとも1つのヒーターでありうる。
【0050】
前記閉鎖空間は少なくとも1つの被覆手段によって形成されうる。前記被覆手段は硬質又は軟質であってよい。
【0051】
前記被覆手段は、フィルム及びシートからなる群から選択される少なくとも1つの部材を含むことができる。前記フィルム又はシートの材質は限定されない。例えば、前記フィルム又はシートは熱可塑性又は熱硬化性の樹脂、紙、織物、アルミニウム箔等の金属箔等を備えることができる。
【0052】
例えば、前記フィルム又はシートは、ケラチン繊維によって被覆された加熱ロッド、加熱バー、又は、加熱プレートの上にセットすることができる。
【0053】
本発明では、前記被覆手段は前記熱エネルギー源を含むことができる。したがって、例えば、ヒーターを含む前記フィルム又はシートがケラチン繊維によって被覆されたロッド、バー又はプレート上にセットされてもよい。
【0054】
前記閉鎖空間は、ケラチン繊維に塗布された上記組成物中の水等の揮発性成分の気化を制限することができ、開放条件でケラチン繊維を加熱する従来の加熱プロセス又は加熱デバイスによって得られうる温度よりも高い温度にケラチン繊維の温度を上昇させることができる。したがって、ケラチン繊維は効率的に再整形可能であり、ケラチン繊維に付与された形状は長持ちすることができる。
【0055】
ケラチン繊維は、ケラチン繊維の加熱工程の間、50℃〜250℃、好ましくは60℃〜200℃、より好ましくは60℃〜150℃、更により好ましくは60℃〜90℃に加熱されうる。
【0056】
加熱プロセスは、ケラチン繊維の形状を変形させるのに要する時間実施することができる。加熱プロセスの時間は限定されないが、1分から2時間、好ましくは1分から1時間、より好ましくは1分から30分でありうる。
【0057】
(ケラチン繊維のパーマネント変形プロセス)
本発明のケラチン繊維のパーマネント変形方法は以下のようにして実施することができる。
【0058】
まず、ケラチン繊維に変形用の機械的張力を付与する。機械的張力は、ケラチン繊維を意図する形状に変形する任意の手段によってケラチン繊維に適用することができる。例えば、機械的張力は、カーラー、ローラー、プレート及びアイロンからなる群から選択される少なくとも1つの再整形手段によって提供されることができる。前記再整形手段は上記のヒーターを少なくとも1つ含むことができる。
【0059】
次に、上記の組成物をケラチン繊維に塗布する。前記組成物の塗布はブラシ又は櫛等の任意の手段で実施することができる。前記機械的張力が付与されたケラチン繊維が前記組成物で処理されるべきである。
【0060】
最後に、上記の加熱プロセスが実施される。上記の閉鎖区間下のケラチン繊維に上記の熱エネルギーが与えられる。
【0061】
本発明のケラチン繊維のパーマネント変形方法は、ケラチン繊維を酸化する工程がなくとも実施することができる。したがって、本発明の方法を実施するために要する時間は酸化工程を必要とする従来の方法に要する時間よりも短くなりうる。更に、酸化工程によるケラチン繊維へのダメージも回避することができる。
【0062】
前記組成物をケラチン繊維に塗布する工程の後、及び/又は、前記ケラチン繊維を加熱する工程の後に、前記ケラチン繊維をすすいでもよい。
【0063】
必要であれば、機械的張力をケラチン繊維にかける前に、ケラチン繊維に上記組成物を塗布してもよい。
【0064】
(変形剤及びキット)
本発明は、
【化6】

(式中、
XはO、OH、NH、O-OH、及び、O-COOからなる群から選択される基を表す)
のイオンの1以上の供給源を含む、閉鎖空間で加熱されるケラチン繊維の一段階パーマネント変形剤を用いて実施することができる。
【0065】
前記変形剤は、ケラチン繊維の従来のパーマネント変形に使用される酸化剤と組み合わせて使用される必要がない。したがって、ケラチン繊維の従来のパーマネント変形では(還元工程及び酸化工程の)2段階が必要であるのに対し、前記変形剤は一段階で使用することができる。
【0066】
また、本発明は、
ケラチン繊維に機械的張力を提供する少なくとも1つの再整形手段;
閉鎖空間を形成する少なくとも1つの被覆手段、及び、
前記閉鎖空間中のケラチン繊維を加熱する少なくとも1つのヒーター
を備えるデバイス、並びに、
【化7】

(式中、
XはO、OH、NH、O-OH、及び、O-COOからなる群から選択される基を表す)
のイオンの1以上の供給源を含む組成物
を備える、ケラチン繊維のパーマネント変形用キットを使用して実施することができる。
【0067】
前記キット中の前記再整形手段、前記被覆手段、前記ヒーター、及び、前記組成物は上記のとおりである。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、実施例は、本発明を何ら限定するものではない。
【0069】
[組成物1−5]
下記の組成物を調製した(数値は有効成分の重量%ベース)。炭酸塩又は重炭酸塩の濃度は0.8Mに固定された。
【0070】
【表1】

【0071】
[実施例1〜5及び比較例1〜5]

実施例1

1.7cm径のパーマローラー上に予め巻かれた日本人の毛髪束1gに組成物1を塗布して15分間放置した。次に、前記パーマローラーをプラスチックフィルムで覆い、デジタルパーマ装置(Oohiro ODIS-2型)に接続した。90℃で15分間加熱後、毛髪を濯いで乾燥した。
【0072】
比較例1

1.7cm径のパーマローラー上に予め巻かれた日本人の毛髪束1gに組成物1を塗布して15分間放置した。放置後、毛髪を濯いだ。次に、前記パーマローラーから毛髪を除去し、再度濯いで、乾燥した。
【0073】
実施例2

1.7cm径のパーマローラー上に予め巻かれた日本人の毛髪束1gに組成物2を塗布して15分間放置した。次に、前記パーマローラーをプラスチックフィルムで覆い、デジタルパーマ装置(Oohiro ODIS-2型)に接続した。90℃で15分間加熱後、毛髪を濯いで乾燥した。
【0074】
比較例2

1.7cm径のパーマローラー上に予め巻かれた日本人の毛髪束1gに組成物2を塗布して15分間放置した。放置後、毛髪を濯いだ。次に、前記パーマローラーから毛髪を除去し、再度濯いで、乾燥した。
【0075】
実施例3

1.7cm径のパーマローラー上に予め巻かれた日本人の毛髪束1gに組成物3を塗布して15分間放置した。次に、前記パーマローラーをプラスチックフィルムで覆い、デジタルパーマ装置(Oohiro ODIS-2型)に接続した。90℃で15分間加熱後、毛髪を濯いで乾燥した。
【0076】
比較例3

1.7cm径のパーマローラー上に予め巻かれた日本人の毛髪束1gに組成物3を塗布して15分間放置した。放置後、毛髪を濯いだ。次に、前記パーマローラーから毛髪を除去し、再度濯いで、乾燥した。
【0077】
実施例4

1.7cm径のパーマローラー上に予め巻かれた日本人の毛髪束1gに組成物4を塗布して15分間放置した。次に、前記パーマローラーをプラスチックフィルムで覆い、デジタルパーマ装置(Oohiro ODIS-2型)に接続した。90℃で15分間加熱後、毛髪を濯いで乾燥した。
【0078】
比較例4

1.7cm径のパーマローラー上に予め巻かれた日本人の毛髪束1gに組成物4を塗布して15分間放置した。放置後、毛髪を濯いだ。次に、前記パーマローラーから毛髪を除去し、再度濯いで、乾燥した。
【0079】
実施例5

1.7cm径のパーマローラー上に予め巻かれた日本人の毛髪束1gに組成物5を塗布して15分間放置した。次に、前記パーマローラーをプラスチックフィルムで覆い、デジタルパーマ装置(Oohiro ODIS-2型)に接続した。90℃で15分間加熱後、毛髪を濯いで乾燥した。
【0080】
比較例5

1.7cm径のパーマローラー上に予め巻かれた日本人の毛髪束1gに組成物5を塗布して15分間放置した。放置後、毛髪を濯いだ。次に、前記パーマローラーから毛髪を除去し、再度濯いで、乾燥した。
【0081】
実施例1〜5及び比較例1〜5の毛髪束についてカール保持試験を実施した。この試験では、100%の相対湿度、40℃の環境下に、毛髪をまっすぐにして5時間保持した。そして、この試験の前後での人工的な形状を比較することでカールの長持ち度を評価した。結果を表1に示す。
【0082】
【表2】

++: 非常に良好なカール性能
+: 良好なカール性能
-: 低いカール性能
--: 非常に低いカール性能
【0083】
表1は、本発明が、より優れたカール性能及びカール保持効果を与えることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン繊維に変形用の機械的張力を提供する工程;

【化1】

(式中、
XはO、OH、NH、O-OH、及び、O-COOからなる群から選択される基を表す)
のイオンの1以上の供給源を含む組成物をケラチン繊維に塗布する工程;
ケラチン繊維を閉鎖空間に載置する工程;及び、
ケラチン繊維を加熱する工程
を含む、ケラチン繊維のパーマネント変形方法。
【請求項2】
前記組成物をケラチン繊維に塗布する工程の後、及び/又は、前記ケラチン繊維を加熱する工程の後に、前記ケラチン繊維をすすぐ工程を更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記閉鎖空間が少なくとも1つの被覆手段によって形成される、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記被覆手段が硬質又は軟質である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記被覆手段がフィルム及びシートからなる群から選択される少なくとも1つの部材を含む、請求項3又は4記載の方法。
【請求項6】
前記機械的張力が、カーラー、ローラー、プレート及びアイロンからなる群から選択される少なくとも1つの再整形手段によって提供される、請求項1乃至5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記ケラチン繊維を加熱する工程において、ケラチン繊維が50〜250℃に加熱される、請求項1乃至6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
熱風、熱蒸気、高周波誘導加熱、マイクロ波加熱、赤外線照射、レーザー及びフラッシュランプ照射からなる群から選択される少なくとも1つを提供する少なくとも1つのヒーターによってケラチン繊維が加熱される、請求項1乃至7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記被覆手段及び/又は前記再整形手段が前記ヒーターを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、当該組成物の全重量を基準として、前記イオンの供給源を0.1〜40重量%含む、請求項1乃至9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記組成物のpHが6〜11である、請求項1乃至10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記イオンの供給源が炭酸塩及び炭酸水素塩からなる群から選択される、請求項1乃至11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
ケラチン繊維を酸化する工程が含まれない、請求項1乃至12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
【化2】

(式中、
XはO、OH、NH、O-OH、及び、O-COOからなる群から選択される基を表す)
のイオンの1以上の供給源を含む、閉鎖空間で加熱されるケラチン繊維の一段階パーマネント変形剤。
【請求項15】
ケラチン繊維に機械的張力を提供する少なくとも1つの再整形手段;
閉鎖空間を形成する少なくとも1つの被覆手段、及び、
前記閉鎖空間中のケラチン繊維を加熱する少なくとも1つのヒーター
を備えるデバイス、並びに、
【化3】

(式中、
XはO、OH、NH、O-OH、及び、O-COOからなる群から選択される基を表す)
のイオンの1以上の供給源を含む組成物
を備える、ケラチン繊維のパーマネント変形用キット。
【請求項16】
前記イオンが、炭酸イオン、炭酸水素イオン、カルバメートイオン、及び、ぺルオキシ炭酸イオンからなる群から選択される、請求項1乃至15のいずれかに記載の、方法、変形剤又はキット。

【公表番号】特表2012−532864(P2012−532864A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519128(P2012−519128)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【国際出願番号】PCT/JP2009/062936
【国際公開番号】WO2011/004505
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】