説明

ケーブルの分岐配線用接続具

【課題】 ケーブルの増設作業が容易な分岐配線用接続具の提供。
【解決手段】 複数のケーブル挿通開口4a・4bを有して建物の壁面又は床面に固定されるベース体1と、複数のケーブル挿通開口13a・13bを有してベース体1と着脱可能に嵌合するカバー体2とから成り、該カバー体2とベース体1の内側に上記ベース体1とカバー体2の各ケーブル挿通開口と連通する収容空間を画成して、該収容空間内にケーブルを分岐して配線する分岐配線用接続具において、少なくとも上記ベース体1の一個のケーブル挿通開口4aの近傍に対の関係にある切り取り可能な仕切壁8を設けて、該仕切壁8の一方を切り取るだけで、カバー体を取り外さなくとも、ケーブルの押込み工法の下で、ケーブルの増設を可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、光ケーブルを建物の壁面や床面に敷設する際に、該光ケーブルを保護しながら分岐配線する分岐配線用接続具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種分岐配線用接続具は、下記の特許文献1に示すように、平面T字状を呈し且つ断面U字状を呈して建物の壁面又は床面に固定される合成樹脂製のベース体と、同じく平面T字状を呈し且つ断面U字状を呈して該ベース体と着脱可能に嵌合する合成樹脂製のカバー体とから成り、該ベース体とカバー体の対向する各開口を3個のケーブル挿通開口となして、該各ケーブル挿通開口を介して、ベース体とカバー体で画成される収容空間内に光ケーブルを分岐させながら配線できる構成となっている。
【0003】
そして、光ケーブルの敷設工事では、ベース体を建物の壁面又は床面にビスや両面接着テープ等を介して固定した後、該ベース体の収容空間内に光ケーブルを分岐させて収容する状態を得て、該ベース体にカバー体を嵌合すると、光ケーブルは保護されながら分岐配線される。尚、この場合には、ベース体とカバー体で画成される3個のケーブル挿通開口側には直線状の別の接続具が接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−94137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、従来の分岐配線用接続具を使用すれば、光ケーブルを保護しながら分岐配線することは可能となるが、その後の経過で、ケーブルの増設が必要となったような場合には、分岐配線用接続具の内部に増設の光ケーブルを収容するために、全てのカバー体を取り外して光ケーブルをベース体側に収容した後、再度カバー体をベース体に嵌合させなければならないので、作業が自ずと大変となる嫌いがあった。
【0006】
そこで、本発明は、ケーブル挿通開口からケーブルを挿通していくケーブルの押込み工法により、ケーブルの増設の際に、カバー体を取り外すことなく分岐配線を可能とする分岐配線用接続具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑み開発されたもので、複数のケーブル挿通開口を有して建物の壁面又は床面に固定されるベース体と、複数のケーブル挿通開口を有して該ベース体と着脱可能に嵌合するカバー体とから成り、該カバー体とベース体の内側に上記ベース体とカバー体の各ケーブル挿通開口と連通する収容空間を画成して、該収容空間内にケーブルを分岐して配線する分岐配線用接続具において、少なくとも上記ベース体の一個のケーブル挿通開口の近傍に対の関係にある切り取り可能な仕切壁を設ける。
【0008】
これを詳述すると、上記対の関係にある仕切壁をセンター支柱を介して左右に振り分け、該各仕切壁の両側端は対応するベース体の側壁と上記センター支柱に対して結合され、各仕切壁の下端はベース体の下壁に対して非結合又は弱結合されている。
【0009】
又、このセンター支柱を介して左右に振り分けられた各仕切壁のベース体の側壁と対向する一方の側端はベース体の側壁に対して非結合で、各仕切壁の上記センター支柱と対向する他方の側端は該センター支柱に対して結合され、各仕切壁の下端はベース体の下壁に対して非結合又は弱結合されている。
【0010】
更に、対の関係にある仕切壁を左右に連続して振り分け、該連続する各仕切壁の左右の側端は対応するベース体の側壁に対して結合され、連続する各仕切壁の下端はベース体の下壁に対して非結合又は弱結合される。
【0011】
上記仕切壁の高さはベース体の側壁と等しい高さとなすか、又はカバー体の上壁内面に届く高さとなす。
【発明の効果】
【0012】
ケーブルの挿通方向はケーブルを敷設する状況に合わせて決定されるため、本発明にあっては、その状況に従って仕切壁を切り取る箇所を選択できるので、複数種類の分岐配線用接続具を用意する必要がない。更に、ケーブル増設の際には、ケーブルの挿通方向は予め決められているので、従来のように全てのカバー体を外すことなく、ケーブルの押込み工法の下で、分岐配線用接続具の内部に容易に通線することができる。
【0013】
又仕切壁を切り取る場合には、左右一方の仕切壁の両側端を切り取るだけで、その挿通方向に対しケーブルをスムーズに通線することができ、或いは仕切壁のセンター支柱側の他方の側端を切り取るだけで、その挿通方向に対しケーブルをスムーズに通線することができ、且つ連続する仕切壁の中央部と左右いずれか一方の側端を切り取るだけで、その挿通方向に対しケーブルをスムーズに通線することができる。
【0014】
本発明にあって、仕切壁の高さがベース体の側壁と等しい場合には、ベース体側に比較的小さなケーブル収容空間が画成でき、仕切壁の高さがカバー体の上壁内面に届く高さの場合に、ベース体とカバー体の間に跨った比較的大きなケーブル収容空間が画成できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例に係る分岐配線用接続具を内側から示す分解斜視図である。
【図2】同分岐配線用接続具のベース体を外側から示す斜視図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【図4】図1のB−B線断面図である。
【図5】一方の仕切壁を切り取って通線した状態を示す斜視図である。
【図6】ベース体にカバー体を嵌合した状態を示す断面図である。
【図7】(A)(B)は仕切壁の他例を示す断面図である。
【図8】(A)ベース体の別の他例を示す斜視図、(B)はこれにカバー体を嵌合した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を図示する好適な実施例に基づいて詳述する。
【0017】
本実施例に係る分岐配線用接続具は、図1乃至図4に示すように、平面T字状で断面がU字状を呈して建物の壁面又は床面にビスや両面接着テープ等を介して固定されるベース体1と、一回り大きな平面T字状で断面U字状を呈して該ベース体1に着脱可能に嵌合するカバー体2とから成り、これら1・2はいずれも合成樹脂で一体に成形されている。
【0018】
そして、前者のベース体1は、2個の曲線側壁3aと1個の直線側壁3bとを有し、該2個の曲線側壁3a間に画成される開口4aと、直線側壁3bと各曲線側壁3a間に画成される開口4bとを3個のケーブル挿通開口となし、各曲線側壁3aの外面に後述するカバー体2の嵌合爪14を係合する突起5を形成すると共に、直線側壁3bの外面に後述するカバー体2の嵌合爪15に係合する突起6を形成し、且つ、上記2個の曲線側壁3a間の中央にセンター支柱7を一体に立設して、該センター支柱7の両側と各曲線側壁3aの内面とに対の関係にある切り取り可能な仕切壁8を左右に振り分けて円弧状に結合する構成となっている。
【0019】
これに加えて、ベース体1の下壁3cに対しては、センター支柱7を除いた部分に円弧状を呈する一対の分離スリット9を形成して、該各分離スリット9上に上記各仕切壁8の下端を非結合状態をもって臨ましめるものとする。従って、センター支柱7と曲線側壁3aの結合部位をナイフ等で切断すれば、左右に振り分けられた仕切壁8が切り取られ、ここにケーブルの収容空間10が画成される。尚、図中11はビスの取付孔である。
【0020】
又、左右に振り分けられる仕切壁8の高さは、図示するように、ベース体1の側壁3a・3bの高さと等しくなるように設定する。
【0021】
又、後者のカバー体2は、同じく、2個の曲線側壁12aと1個の直線側壁12bとを有し、該2個の曲線側壁12a間の開口13aと、直線側壁12bと各曲線側壁12a間の開口13bとを3個のケーブル挿通開口となし、各曲線側壁12aの内面に上記曲線側壁3a側の突起5を係合する嵌合爪14を形成すると共に、直線側壁12bの内面に上記直線側壁3b側の突起6を係合する嵌合爪15を形成し、且つ、上記円弧状を呈する対の関係にある仕切壁8と対応する上壁12cの内面に円弧状を呈する受壁16を一体に形成する構成となっている。
【0022】
従って、ベース体1にカバー体2を上記各突起5・6と各嵌合爪14・15を介して嵌合すると、センター支柱7を含め左右に振り分けられた仕切壁8と受壁16が当接することとなるが、一方の仕切壁8を切り取った場合には、上記受壁16を残したままその部分に比較的小さな収容空間10が画成される。
【0023】
依って、上記ベース体1とカバー体2とから成る分岐配線用接続具を使用して光ケーブル19を分岐配線する場合には、まず、建物の壁面又は床面の敷設ライン上にベース体1をビス(図示せず)を介して位置決め固定することとなるが、この場合には、ケーブルの挿通方向が予め決められているので、その方向に存する仕切壁8のセンター支柱7と曲線側壁3aの結合部位をナイフ等で切断する。
【0024】
すると、これにより、図5に示すように、左右に振り分けられた一方の仕切壁8が切り取られて、ここにケーブルの収容空間10が画成されるので、この収容空間10を利用して光ケーブル19を収容して、後は、このまま、カバー体2を上記突起5・6と嵌合爪14・15を介して嵌合すれば、これにより、図6に示すように、光ケーブル19がベース体1とカバー体2で覆われて分岐配線される。尚、この場合も、従来と同様に、ベース体1とカバー体2の開口4a・4b・13a・13bで画成される各ケーブル挿通開口には直線状の別の接続具17が接続される。
【0025】
そして、斯かる状態において、光ケーブル19の増設が必要となった場合には、直線状の接続具17などが有する開口等から光ケーブル19を予め決められた方向に押し込んで、該光ケーブル19の先端部が分岐配線用接続具に至ると、当該光ケーブル19の先端部は既に切り取られた仕切壁8の収容空間10内に経てその方向に存するケーブル挿通開口に押し込まれる。尚、決められた方向以外の方向にケーブル19の先端が押込まれた場合には、そこには、切り取られていない仕切壁8が依然として存在しているので、誤った方向に通線されることは決してない。
【0026】
従って、本実施例では、従来のように一々カバー体2を外さなくとも、ケーブル19の押込み工法を採用するだけで、光ケーブル19を予め決められている方向に対してスムーズに通線して増設することが可能となるので、増設作業が頗る容易となる。しかも、仕切壁8の切り取りは現場において選択するので、切り取り作業も容易となる。
【0027】
尚、上記実施例にあっては、左右に振り分けられる対の関係にある仕切壁8の下端をベース体1の下壁3cには結合せずに、各仕切壁8の両側端をセンター支柱7と曲線側壁3a間に結合して、仕切壁8の両側端を切断すれば、いずれか一方の仕切壁8が切り取れるようにしたものであるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0028】
例えば、図7のAに示すように、各仕切壁8の曲線側壁3a側の側端は同側壁3aには分離間隙18を介して結合せず、センター支柱7側のみに対応する側端を結合し、仕切壁8の下端は上記分離スリット9を介した非結合状態とすれば、今度は、センター支柱7側に結合されている結合部位のみを切断するだけで、切り取ることが可能となり、又は、図7のBに示すように、各仕切壁8をセンター支柱7を介在させずに連続して形成して、該連続する各仕切壁8の側端を対応する各曲線側壁3aに結合し、連続する各仕切壁8の下端は分離スリット9を介して非結合状態となせば、今度は、連続する仕切壁8の中央部と一方の側端の結合部位を切断するだけで、所望の仕切壁8を切り取れることとなる。
【0029】
又、上記した結合部位はナイフ等で鋭利に切断できるように結合させたものであるが、特に、この場合には、各仕切壁8の下端側では、手でも簡単に切り取れるように分離スリット9の孔縁に弱結合させても良い。又、この弱結合は、側壁3aやセンター支柱7に対しても応用できる。
【0030】
更に、上記実施例では、各仕切壁8の高さをベース体1の側壁3a・3bと等しい高さとなしたものであるが、これに限定されるものではなく、図8のA・Bに示すように、仕切壁8の高さをカバー体2の上壁12cの内面に届く高さとなして、ベース体1とカバー体2間をこの高さの高い仕切壁8で仕切るように構成することも可能である。特にこの場合には、比較的大きな収容空間10が画成できるので、多数の光ケーブル19の増設には好都合である。
【0031】
又、実施例では、3個のケーブル挿通開口を有する分岐配線用接続具に適用したものであるが、これに限定されるものではなく、同様な原理の下で、4個のケーブル挿通開口を有する十字状の分岐配線用接続具にも容易に実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0032】
1 ベース体
2 カバー体
3a ベース体の曲線側壁
3b ベース体の直線側壁
3c ベース体の下壁
4a ベース体の開口(ケーブル挿通開口)
4b ベース体の開口(ケーブル挿通開口)
5 突起
6 突起
7 センター支柱
8 仕切壁
9 分離スリット
10 収容空間
11 取付孔
12a カバー体の曲線側壁
12b カバー体の直線側壁
12c カバー体の上壁
13a カバー体の開口(ケーブル挿通開口)
13b カバー体の開口(ケーブル挿通開口)
14 嵌合爪
15 嵌合爪
16 受壁
17 直線状の別の接続具
18 分離間隙
19 光ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のケーブル挿通開口を有して建物の壁面又は床面に固定されるベース体と、複数のケーブル挿通開口を有して該ベース体と着脱可能に嵌合するカバー体とから成り、該カバー体とベース体の内側に上記ベース体とカバー体の各ケーブル挿通開口と連通する収容空間を画成して、該収容空間内にケーブルを分岐して配線する分岐配線用接続具において、少なくとも上記ベース体の一個のケーブル挿通開口の近傍に対の関係にある切り取り可能な仕切壁を設けたことを特徴とするケーブルの分岐配線用接続具。
【請求項2】
対の関係にある仕切壁は、センター支柱を介して左右に振り分けられ、該各仕切壁の両側端は対応するベース体の側壁と上記センター支柱に対して結合され、各仕切壁の下端はベース体の下壁に対して非結合又は弱結合されていることを特徴とする請求項1記載のケーブルの分岐配線用接続具。
【請求項3】
対の関係にある仕切壁は、センター支柱を介して左右に振り分けられ、該各仕切壁のベース体の側壁と対向する一方の側端はベース体の側壁に対して非結合で、各仕切壁の上記センター支柱と対向する他方の側端は該センター支柱に対して結合され、各仕切壁の下端はベース体の下壁に対して非結合又は弱結合されていることを特徴とする請求項1記載のケーブルの分岐配線用接続具。
【請求項4】
対の関係にある仕切壁は、左右に連続して振り分けられ、該連続する各仕切壁の左右の側端は対応するベース体の側壁に対して結合され、連続する各仕切壁の下端はベース体の下壁に対して非結合又は弱結合されていることを特徴とする請求項1記載のケーブルの分岐配線用接続具。
【請求項5】
仕切壁の高さはベース体の側壁と等しい高さを有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のケーブルの分岐配線用接続具。
【請求項6】
仕切壁の高さはカバー体の上壁内面に届く高さを有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のケーブルの分岐配線用接続具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−257414(P2012−257414A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129718(P2011−129718)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【特許番号】特許第4917682号(P4917682)
【特許公報発行日】平成24年4月18日(2012.4.18)
【出願人】(390025335)マサル工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】