説明

ケーブルアセンブリ形成用テープおよびその製造方法

【課題】仮止めと結束の両方に好適に使用することのできるケーブルアセンブリ結束用テープを提供する。
【解決手段】ケーブルアセンブリの形成に用いられるケーブルアセンブリ形成用テープ1は、ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜2と、このポリテトラフルオロエチレン多孔質膜2の一方面上に形成された粘着層とを備えている。ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜2は、テープ1の長手方向にフィブリルが伸びかつテープ1の幅方向にノードが伸びた構造を有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルアセンブリの形成に用いられるケーブルアセンブリ形成用テープおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば携帯電話では、図3に示すような2つの筐体6A,6Bがヒンジ部60で連結されて、一方の筐体6Aに対して他方の筐体6Bが図中の矢印aで示すように横方向に回動可能となった構造が採用されている。このような構造では、ヒンジ部60に挿通穴60aが設けられていて、この挿通穴60aを通じてケーブルアセンブリ9が配設されている。
【0003】
ケーブルアセンブリ9は、所定方向に延びる一対のコネクタ8が複数本のケーブル7で接続されるとともに、ケーブル7の挿通穴60aを通過する部分が結束テープ10で略円柱状に結束されたものである。結束テープ10は、例えば特許文献1に記載されているように基材の一方面上に粘着層が形成されたものであり、その基材としては、結束後のケーブルが曲げ易くしかも挿通穴60a内をスムーズに動くように、柔軟性に優れるとともに低摩擦特性を有するポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」という。)フィルムがよく用いられる。
【0004】
このようなケーブルアセンブリ9を形成するには、複数本のケーブル7を挿通穴60aに挿通した後に、ケーブル7を所定のピッチに整列させた状態で仮止めテープに固定(仮止め)し、ケーブル7をコネクタ8に接続する。その後、仮止めテープを剥がして、ケーブル7の所定位置に粘着テープ10を巻き付ける。仮止めテープとしては、ケーブル7のピッチがずれないように寸法安定性のあるものが好ましく、基材にポリエステルフィルムを用いたものがよく用いられる。
【特許文献1】特開2002−28859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、ケーブルアセンブリ9の形成には目的に応じて2種類のテープが使われているため、1つのテープでケーブルアセンブリを形成できるようにしたいという要望がある。ところが、PTFEフィルムは伸び易いために仮止めに使用するとケーブルのピッチがずれるおそれがあり、またポリエステルフィルムは伸び難いために結束に使用すると結束後のケーブルが曲げ難くなる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、仮止めと結束の両方に好適に使用することのできるケーブルアセンブリ結束用テープおよびこのテープの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、所定の延伸倍率で一軸方向にのみ延伸したPTFE多孔質膜を基材として用いることにより、前記目的を達成し得ることを見出した。すなわち、本発明は、ケーブルアセンブリの形成に用いられるケーブルアセンブリ形成用テープであって、前記テープの長手方向にフィブリルが伸びかつ前記テープの幅方向にノードが伸びた構造を有するPTFE多孔質膜と、このPTFE多孔質膜の一方面上に形成された粘着層とを備えるケーブルアセンブリ形成用テープを提供する。
【0008】
また、本発明は、ケーブルアセンブリの形成に用いられるケーブルアセンブリ形成用テープを製造する方法であって、PTFEからなる所定方向に延びるシート状成形体を前記所定方向にのみ4倍以上30倍以下の倍率で延伸してPTFE多孔質膜を作成し、このPTFE多孔質膜の一方面上に粘着剤を塗布して粘着層を形成するケーブルアセンブリ形成用テープの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、長手方向に伸び難く幅方向に伸び易いケーブルアセンブリ形成用テープを得ることができる。従って、仮止めに使用すれば、ケーブルのピッチが保たれるようになり、結束に使用すれば、結束後のケーブルの屈曲性が良好になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るケーブルアセンブリ形成用テープ1(以下、単に「テープ1」という。)は、PTFE多孔質膜2と、このPTFE多孔質膜2の一方面上に形成された粘着層3とを備えている。
【0012】
PTFE多孔質膜2は、テープ1の長手方向(図1の紙面と直交する方向)にフィブリルが伸びかつテープ1の幅方向(図1の左右方向)にノードが伸びた構造を有する未焼成のものである。焼成されたPTFE多孔質膜を用いると、ケーブルに巻き付けたときの自背面(PTFE多孔質膜の他方面)に対する粘着面(粘着層の表面)の粘着力が弱く、テープが剥れ易くなるおそれがあるが、未焼成のPTFE多孔質膜であれば、十分な粘着力が得られるようになる。
【0013】
粘着層3を有するPTFE多孔質膜2のテープ1の長手方向における破断伸びは200%以下であることが好ましい。前記の破断伸びが200%を超えるテープでは、ケーブルを所定のピッチで仮止めする際に、当該テープが伸びてケーブルのピッチが大きく乱れるおそれがあるからである。より好ましくは、前記の破断伸びは100%以上200%以下である。
【0014】
また、粘着層3を有するPTFE多孔質膜2のテープ1の長手方向における破断強度は50MPa以上80MPa以下であることが好ましい。前記の破断強度が50MPa未満のテープでは、貼り合せ加工時に伸びが発生して厚さが不均一となるおそれがあり、前記の破断強度が80MPa超えのテープでは、貼り合せ加工後に収縮が発生してケーブルのピッチが大きく乱れるおそれがあるからである。
【0015】
PTFE多孔質膜2の厚さは、20μm以上60μm以下であることが好ましい。厚さが小さすぎると、取り扱いの最中でテープが破れるおそれが高くなり、厚さが大きすぎると、ヒンジ部の挿通穴にケーブルを通すためにテープにケーブルを貼合し、そのテープを丸めたときに、その外径が大きくなってしまうからである。
【0016】
粘着層3は、シリコーン系粘着剤またはアクリル系粘着剤が塗布されて形成されたものである。なお、図2に示すように、テープ1を芯材の回りに巻き回して巻回体を構成する場合には、少なくとも一方面上にフッ化シリコーンなどの離型剤が塗布されて離型層4が形成されたセパレータ5で粘着層3を覆うようにしてもよい。
【0017】
次に、テープ1を製造する方法を説明する。
【0018】
まず、PTFEファインパウダーに液状潤滑剤を加えたペースト状の混和物を予備成形する。PTFEファインパウダーは、ペースト押出の容易さから、PTFE原料として好適である。液状潤滑剤は、PTFEファインパウダーの表面を濡らすことができ、抽出や加熱により除去できるものであれば特に制限されず、例えば、流動パラフィン、ナフサ、ホワイトオイルなどの炭化水素を使用することができる。液状潤滑剤の添加量は、PTFEファインパウダー100重量部に対して5〜50重量部程度が適当である。上記予備成形は、液状潤滑剤が絞り出されない程度の圧力で行う。
【0019】
ついで、得られた予備成形体を、好ましくはペースト押出により、所定方向に延びるシート状成形体とするとともに、加熱法または抽出法により、シート状成形体から液状潤滑剤を除去する。
【0020】
その後、シート状成形体を、当該シート状成形体が延びる方向である長手方向の一軸方向にのみ4倍以上30倍以下の倍率、より好ましくは6倍以上20倍以下(さらに好ましくは10倍以上20倍以下)の倍率で延伸して、厚さ15〜100μmのPTFE多孔質膜2を作製する。この延伸は、未焼成のPTFE多孔質膜2を得るためにPTFEの融点未満の温度で行うが、延伸温度は、通常240〜300℃、好ましくは270〜290℃の範囲内の温度である。240℃未満の温度で延伸を行うと、高倍率の延伸が困難となって破断が生じたり、長手方向や長手方向と直交する幅方向に延伸ムラが発生し、均一な延伸が行えなくなったりするおそれがある。一方、300℃超えの温度で延伸を行うと、PTFEの融点に近くなることで構造が変化するおそれがある。
【0021】
PTFE多孔質膜2を得た後は、PTFE多孔質膜2の一方面上に粘着剤を塗布して粘着層3を形成する。粘着剤としては、シリコーン系粘着剤とアクリル系粘着剤のどちらも使用可能であるが、ケーブル外皮がフッ素系樹脂である場合にはアクリル系粘着剤よりも高い接着力が得られるという観点から、シリコーン系粘着剤を用いることが好ましい。
【0022】
最後に、ポリエステルフィルムからなるセパレータ5であって一方面上に離型層4が形成されたセパレータ5を、粘着層3の表面と離型層4の表面とが接触するようにPTFE多孔質膜2に積層し、この積層体を一対の圧着ロールで0.1〜0.3MPaの圧力をかけながら搬送する。こうして、セパレータ5を除く厚さ(以下、「総厚さ」という。)が25〜110μmのテープ1を得ることができる。
【0023】
なお、得られたテープ1を幅方向に所望の幅(10〜150mm)で切断してもよい。また、図2に示すような巻回体を構成するには、切断前または切断後のテープ1をPTFE多孔質膜2の他方面とセパレータ5の他方面とが接触するように巻き回していけばよい。
【実施例】
【0024】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制限されるものではない。
【0025】
(実施例1)
PTFEファインパウダーを用い、ペースト押出により厚さ0.17mmのシート状成形体を成形し、このシート状成形体を280℃で一軸方向にのみ20倍に延伸して厚さ20μmのPTFE多孔質膜を作製した。得られたPTFE多孔質膜の一方面上にシリコーン系粘着剤を用いて粘着層を形成するとともに、その上にポリエステルフィルムからなる厚さ50μmのセパレータであって一方面上に離型層が形成されたセパレータを積層し、この積層体を一対の圧着ロール間に通して、総厚さ30μmのケーブルアセンブリ形成用テープを得た。
【0026】
(実施例2)
シート状成形体の延伸倍率を15倍にして厚さ30μmのPTFE多孔質膜を作製した以外は実施例1と同様にして、総厚さ40μmのケーブルアセンブリ形成用テープを得た。
【0027】
(実施例3)
シート状成形体の延伸倍率を6倍にして厚さ60μmのPTFE多孔質膜を作製した以外は実施例1と同様にして、総厚さ70μmのケーブルアセンブリ形成用テープを得た。
【0028】
(実施例4)
シート状成形体の延伸倍率を4倍にして厚さ100μmのPTFE多孔質膜を作製した以外は実施例1と同様にして、総厚さ110μmのケーブルアセンブリ形成用テープを得た。
【0029】
(実施例5)
シート状成形体の延伸倍率を30倍にして厚さ15μmのPTFE多孔質膜を作製した以外は実施例1と同様にして、総厚さ25μmのケーブルアセンブリ形成用テープを得た。
【0030】
(試験)
1)粘着力
実施例1〜実施例5のテープを、当該テープの長手方向に延びる長さ250mm、幅19mmの短冊状に切断した後にセパレータを剥がし、ステンレス板上に重ねてその上から質量2kgのゴムローラを1往復させて接着を行った。接着してから20〜40分経過した後に、テープを300mm/分の速度で剥離させながら引張って、粘着力(引張り力)を測定した。
【0031】
2)破断強度および破断伸び
実施例1〜実施例5のテープを、当該テープの長手方向に延びる長さ100mm、幅20mmの短冊状に切断した後にセパレータを剥がし、その両端部を引張測定機(エーアンドデー社製RTG−1310)のチャックに固定し、200mm/分の速度で引張って、破断した時の強度および伸びを次式から求めた。
【0032】
強度(MPa)=破断時の引張り力(N)÷断面積(厚さ×幅)(mm2
伸び(%)=破断時のチャック間距離÷初期のチャック間距離×100
3)ケーブル仮止め試験
実施例1〜実施例5のテープ上に、当該テープ1の長手方向に並ぶように、40本の直径0.3mmのケーブルを0.3mmピッチで一列に整列させ、圧着ロールを用いてそれらを貼り合せた。その後、テープを端から長手方向に丸めていってケーブル束を形成し、そのケーブル束の外径を測定した。
【0033】
以上の試験の結果は、表1に示す通りであった。
【0034】
【表1】

【0035】
実施例1〜実施例5のテープは、長手方向に延び難く幅方向に伸び易いために、ケーブルの仮止めおよび結束に好適に使用することができた。
【0036】
また、表1から分かるように、ケーブル束の外径は3mm未満であるので、このケーブル束を、ヒンジ部の直径3mmの挿通穴を通過させることができた。その後、テープを真っ直ぐに伸ばしてみると、ケーブルのピッチにほとんど乱れがなく、略0.3mmに保たれていた。このため、ケーブルを再度整列させることなく、ケーブルをコネクタに接続することができた。なお、実施例4では、ケーブル束の外径が2.9mmとなっていて、直径3mmの挿通穴には通過させ難かった。また、実施例5では、ケーブル束の外径が2.38mmとなっているものの、総厚さが25μmと非常に薄いために、丸めたときにシワが発生し易かった。
【0037】
すなわち、本発明のテープを用いれば、ケーブルを仮止めした後にヒンジ部の挿通穴に通すことができ、しかも挿通穴を通過させた後にテープを広げれば仮止めした状態を復元することができるため、コネクタへの接続が容易となる。
【0038】
ただし、延伸倍率を6〜20倍とした実施例1〜実施例3では、セパレータを剥がしたときの長手方向の破断伸びを200%以下、長手方向の破断強度を50MPa以上80MPa以下と好ましい値に保つことができた。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係るケーブルアセンブリ形成用テープの断面図である。
【図2】図1のテープが巻き回された状態を示す説明図である。
【図3】従来のケーブルアセンブリを示す説明図である。
【符号の説明】
【0040】
1 ケーブルアセンブリ形成用テープ
2 PTFE多孔質膜
3 粘着層
4 離型層
5 セパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルアセンブリの形成に用いられるケーブルアセンブリ形成用テープであって、
前記テープの長手方向にフィブリルが伸びかつ前記テープの幅方向にノードが伸びた構造を有するポリテトラフルオロエチレン多孔質膜と、このポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の一方面上に形成された粘着層とを備えるケーブルアセンブリ形成用テープ。
【請求項2】
前記テープの長手方向において、前記粘着層を有する前記ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の破断伸びが200%以下であり、かつ、破断強度が50MPa以上80MPa以下である請求項1に記載のケーブルアセンブリ形成用テープ。
【請求項3】
前記ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の厚さが20μm以上60μm以下である請求項1または2に記載のケーブルアセンブリ形成用テープ。
【請求項4】
前記粘着層は、シリコーン系粘着剤が塗布されて形成されたものである請求項1〜3のいずれか一項に記載のケーブルアセンブリ形成用テープ。
【請求項5】
前記ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜は未焼成のものである請求項1〜4のいずれか一項に記載のケーブルアセンブリ形成用テープ。
【請求項6】
少なくとも一方面上に離型層が形成されたセパレータをさらに備え、前記粘着層の表面と前記離型層の表面とが接触するように前記ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜と前記セパレータとが積層され、前記ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の他方面と前記セパレータの他方面とが接触するように巻き回された請求項1〜5のいずれか一項に記載のケーブルアセンブリ形成用テープ。
【請求項7】
ケーブルアセンブリの形成に用いられるケーブルアセンブリ形成用テープを製造する方法であって、
ポリテトラフルオロエチレンからなる所定方向に延びるシート状成形体を前記所定方向にのみ4倍以上30倍以下の倍率で延伸してポリテトラフルオロエチレン多孔質膜を作製し、このポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の一方面上に粘着剤を塗布して粘着層を形成するケーブルアセンブリ形成用テープの製造方法。
【請求項8】
前記シート状成形体を延伸する倍率は、6倍以上20倍以下である請求項7に記載のケーブルアセンブリ形成用テープの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−96817(P2009−96817A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−266705(P2007−266705)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】