説明

ケーブルシステム

【課題】ケーブルのたるみを防止し、ケーブルの巻き取り、繰り出しを円滑に行うリール装置付きケーブルシステムを提供。
【解決手段】探査装置と基地装置とをケーブルで接続し、ケーブルのリール装置4とを装備し、リール装置4は、リール11と、リール11に連結されたモータ15と、リール11の回転方向と回転速度を検出する回転検出手段16と、モータ15のコイル電流を検出する電流検出手段17aと、モータ制御手段18と、加速度センサ19を備え、モータ制御手段18は、リール11が繰り出し時には第1制御モードを実行し、モータフリーにし、リール11が停止または巻取り時には第2制御モードを実行し、電流検出手段17aにより検出される電流が設定電流になるようにモータ15を制御し、これら制御モードを加速度センサ19からの加速度情報に基づいて補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リール装置を装備したケーブルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
運搬装置にカメラ等の探査装置(移動可能な装置)を載せて管内等を探査するシステムは公知である。このシステムでは管外にコントローラやモニター等を含む基地装置を設置し、この基地装置と探査装置とを長尺のケーブルで接続している。このケーブルを介して、基地装置から運搬装置へ操縦信号および電力が伝送され、探査装置から基地装置へ映像信号等の探査信号が伝送される。
【0003】
上記ケーブルは長いので、探査装置または基地装置の近傍にリール装置が配置されている。このリール装置は、ケーブルを巻くリールと、このリールに連結されたモータとを備えている。このモータは、ケーブルがたるみ過ぎたり張りすぎないように制御される。
【0004】
特許文献1に記載された探査システムでは、運搬装置に探査装置とリール装置が設置されている。このリール装置は、モータを適切に制御するため、たるみ検出手段を備えている。このたるみ検出手段は、先端に滑車を有するアームと、このアームを下方に付勢するバネと、アームの角度を検出する角度センサとを有している。ケーブルは上記滑車により案内されてリールに巻かれるようになっている。
【0005】
上記たるみ検出手段において、ケーブルがたるんでいる時にはアームが大きく下を向いており、ケーブルが張っている時にはバネに抗してアームが水平姿勢に近づく方向に回動される。
【0006】
上記アームの傾斜角度が適正範囲にある時には、モータを停止し、適正範囲より下向きにある時には、モータを巻き取り方向に回転してたるみを無くし、適正範囲より上向きにある時には、モータを繰り出し方向に回転させて張力を弱める。このようにして、ケーブルに常時適度な張力が付与されている状態を維持する。
【0007】
特許文献2に記載された探査システムでは、運搬装置に探査装置が設置され、リール装置は基地装置近傍に設置されている。このリール装置でも、たるみ検出手段が用いられる。このたるみ検出手段は、先端にステーが取り付けられたアームと、このアームを下方に付勢するバネと、アームの角度を検出する角度センサとを有し、特許文献1と似た構成をなしている。
【0008】
上記リール装置において、ケーブルは、アーム先端のステーによって上から抑えられている。アームの角度範囲において、下半分の領域ではバネの付勢力がアームに付与されず、上半分の領域でのみバネの付勢力が働くようになっている。
【0009】
特許文献2のリール装置では、運搬装置が前進する際(すなわちリールからケーブルが繰り出される際)には、上記アームの角度が上記下半分の領域にあるようにモータを繰り出し方向に制御することにより、ケーブルの張力が運搬装置の走行の負荷とならないようにする。
【0010】
また、運搬装置が後退する際には、上記アームの角度が上記上半分の領域にあるようにモータを巻き取り方向に制御することにより、ケーブルに適度な張力を持たせ、運搬装置の後退を助ける。
【特許文献1】特開平11−116136号公報
【特許文献2】特開2004−261903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1、2に開示されたリール装置では、たるみ検出手段を必要とするため、探査装置の後退の際にケーブルにたるみ検出手段のバネの力が作用し、リール装置のモータの負荷が増大する不都合があった。さらに、特許文献1では、探査装置の前進の際にもケーブルにたるみ検出手段のバネの力が作用するため、探査装置の前進の抵抗になる不都合があった。
【0012】
しかも、特許文献1、2では、上記たるみ検出手段だけでリール装置のモータを制御するため、探査装置の移動状況に応じた応答性の良い制御を行うことができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、その一態様は、ケーブルと、このケーブルの一端に接続された基地装置と、このケーブルの他端に接続され、ケーブルを介して基地装置への信号の送信または基地装置からの信号の受信の少なくとも一方を行う移動可能な装置と、上記移動可能な装置と一緒に移動し上記ケーブルを巻くリール装置とを備えたケーブルシステムにおいて、上記リール装置は、本体と、この本体に回転可能に支持されて上記ケーブルを巻くリールと、上記リールに連結されたモータと、上記リールの回転方向を検出する回転検出手段と、上記モータのコイル電流を検出する電流検出手段と、上記モータを制御するモータ制御手段とを備え、上記モータ制御手段は、上記回転検出手段により上記リールがケーブル繰り出し方向に回転している状態を検出した時に、第1制御モードを実行し、上記回転検出手段により上記リールがケーブル巻き取り方向に回転している状態または停止している状態を検出した時に、第2制御モードを実行し、上記第1制御モードでは、基本的に、モータの駆動回路を開くか、モータへの供給電流をゼロにし、上記第2制御モードでは、基本的に、巻き取り方向のトルクを発生させるように、かつ上記電流検出手段により検出される電流が第1設定電流になるように上記モータを制御し、さらに、上記移動可能な装置または上記リール装置に設けられた加速度センサを備え、この加速度センサは、上記リール装置に巻かれたケーブルを引き出すような上記移動可能な装置の第1方向の移動の加速度か、第1方向とは逆の第2方向の加速度の少なくとも一方を検出し、上記モータ制御手段は、上記加速度センサからの加速度情報に基づき、上記第1、第2制御モードの少なくともいずれか一方の制御に補正を加えることを特徴とする。
【0014】
本発明の他の態様は、ケーブルと、このケーブルの一端に接続された基地装置と、このケーブルの他端に接続され、ケーブルを介して基地装置への信号の送信または基地装置からの信号の受信の少なくとも一方を行う移動可能な装置と、上記基地装置の近傍に設けられて上記ケーブルを巻くリール装置とを備えたケーブルシステムにおいて、上記リール装置は、本体と、この本体に回転可能に支持されて上記ケーブルを巻くリールと、上記リールに連結されたモータと、上記リールの回転方向を検出する回転検出手段と、上記モータのコイル電流を検出する電流検出手段と、上記モータを制御するモータ制御手段とを備え、 上記モータ制御手段は、上記回転検出手段により上記リールがケーブル繰り出し方向に回転している状態を検出した時に、第1制御モードを実行し、上記回転検出手段により上記リールがケーブル巻き取り方向に回転している状態または停止している状態を検出した時に、第2制御モードを実行し、 上記第1制御モードでは、基本的に、モータの駆動回路を開くか、モータへの供給電流をゼロにし、上記第2制御モードでは、基本的に、巻き取り方向のトルクを発生させるように、かつ上記電流検出手段により検出される電流が第1設定電流になるように上記モータを制御し、さらに、上記移動可能な装置に設けられた加速度センサを備え、この加速度センサは、上記リール装置に巻かれたケーブルを引き出すような上記移動可能な装置の第1方向の移動の加速度か、第1方向とは逆の第2方向の加速度の少なくとも一方を検出し、上記モータ制御手段は、上記加速度センサからの加速度情報に基づき、上記第1、第2制御モードの少なくともいずれか一方の制御に補正を加えることを特徴とする。
【0015】
上述した本発明の2つの態様によれば、モータ制御手段は、回転検出手段からの回転方向情報と電流検出手段からの検出電流情報に基づいて上記モータを制御するため、特許文献1,2に示すようなたるみ検出手段を必要とせず、リール装置のモータが巻き取り方向に回転する際の負荷を軽減することができるとともに移動可能な装置の移動の抵抗を少なくすることができる。
しかも、ケーブル巻き取りの際に第1設定電流でモータを制御するので、適度な張力でケーブルを巻き取って、たるみの発生を解消できる。また、ケーブル繰り出しの際に、リール装置のモータがフリー状態となり、このモータがケーブルの繰り出しの抵抗とならず、ケーブルの繰り出しを円滑に行うことができる。
さらに、移動可能な装置の加速度情報に基づき当該装置の移動状況に応じて応答性良くリール装置のモータを制御することができる。
【0016】
上述した本発明の一態様において、好ましくは上記移動可能な装置が運搬装置を含み、上記リール装置がこの運搬装置に搭載されている。
これによれば、ケーブルが障害物に接してもリールの巻き取り、繰り出しを円滑に行え、移動可能な装置の移動に支障が生じない。
【0017】
好ましくは、上記モータ制御手段は、上記第1制御モードにおいて、上記回転方向が繰り出し方向であっても、上記加速度センサが上記第2方向の設定加速度以上の加速度を検出した時には、電流検出手段からの検出電流が上記第1設定電流またはそれより小さい第2設定電流になるように、モータを巻き取り方向に制御する。
上記構成によれば、移動可能な装置がケーブルを引き出す第1方向に移動している状況で急停止した場合等に、加速度センサでこれを感知して、モータを巻き取り方向に制御するので、ケーブルのたるみを応答性良く解消できる。しかも、この巻き取り時のモータコイル電流は第1設定電流またはそれより小さい第2設定電流であるので、ケーブルを引っ張りすぎることもない。なお、この巻き取り時の電流を第2設定電流にすれば、再び移動可能な装置が第1方向に移動する際の瞬間的なケーブル引っ張り荷重の増大を抑えることができる。
【0018】
好ましくは、上記モータ制御手段は、上記加速度センサからの加速度情報から上記移動可能な装置の移動速度を演算し、上記第2制御モードにおいて、この移動速度が上記第1方向の場合または上記第2方向であっても設定移動速度より遅い場合には、上記電流検出手段からの検出電流が上記第1設定電流より小さい第3設定電流になるように、モータを巻き取り方向に制御する
上記構成によれば、移動可能な装置が第2方向に移動してリールが巻き取り制御されている状況において、その移動速度が低下した時には、モータコイル電流を上記第1設定電流より小さい第3設定電流にしてその巻き取りトルクを減じ、ケーブルを引っ張り過ぎないようにできる。また、その後で移動可能な装置が急停止したり第1方向に移動方向を転換する際に、ケーブルへの瞬間的な引っ張り荷重の増大を抑えることができる。
【0019】
好ましくは、上記モータ制御手段は、上記第2制御モードにおいて、上記加速度センサからの検出加速度が上記第1方向であってしかも設定加速度以上の場合には、上記電流検出手段からの検出電流が上記第1設定電流より小さい第3設定電流になるようにモータを巻き取り方向に制御する。
上記構成によれば、移動可能な装置が第2方向に移動してリールが巻き取り制御されている状況において、急停止した時には、巻き取りトルクを減じることにより、ケーブルの引っ張り過ぎを回避することができる。また、その後で移動可能な装置が急停止したり第1方向に移動方向を転換する際に、ケーブルへの瞬間的な引っ張り荷重の増大を抑えることができる。
【0020】
好ましくは、上記回転検出手段は上記リールの回転速度も検出し、上記モータ制御手段は、上記第1制御モードにおいて、上記回転方向が繰り出し方向であっても、検出された回転速度が設定回転速度未満の場合には、上記第2制御モードを実行する。
上記構成によれば、移動可能な装置がケーブルを引き出す第1方向に移動している状況で急停止した場合等のように、ケーブルへの繰り出し方向の力が急に解除された場合には、モータフリー状態にあるリールから慣性によりケーブルが繰り出され、リールが繰り出し方向に回転し続けるが、この繰り出し方向の回転速度が設定回転速度より低下した時に、モータは巻き取り方向のトルクを発生させるので、未然にケーブルのたるみを解消できるか即座にたるみを解消することができる。しかも、この巻き取り時のモータコイル電流は第1設定電流以下であるので、ケーブルを引っ張りすぎることもない。なお、この巻き取り時の電流を第1設定電流より小さい第3設定電流にすれば、再び移動可能な装置が第1方向に移動する際の瞬間的なケーブル引っ張り力の増大を抑えることができる。
ちなみに、特許文献1,2では、ケーブルのたるみが生じてから角度センサで検出し、モータを巻き取り方向に回転させるまでの間、たるみを解消できない。
【0021】
好ましくは、上記リール装置はさらに、上記リールに巻かれたケーブルの残量を検出するケーブル残量検出手段を備え、上記モータ制御手段は、上記ケーブル残量検出手段で検出されたケーブル残量が多いほど上記設定電流を大きく、ケーブル残量が少ないほど設定電流を小さくする。
リールの巻取りトルクは、質量を有するリールを回すトルク分と、ケーブルの張力に抗してケーブルを引っ張るトルク分とに分配される。そのため、巻き取りトルクが一定であると、リール質量が大きい場合にはケーブル張力が低減し、リール質量が小さい場合にはケーブル張力が増大する。しかし、この構成によれば、ケーブル残量が多くリールが重い場合には設定電流を大きくして巻き取りトルクを増大させることにより、ケーブル張力の減少を回避できる。また、ケーブル残量が少なくリールが軽い場合には設定電流を小さくして巻き取りトルクを減少させることにより、ケーブル張力の増大を回避できる。
【0022】
好ましくは、上記ケーブル残量検出手段は、上記リール装置の本体に上下方向の回動を可能にして支持された接触アームと、このアームを上記リールに向かって付勢してリールに巻かれたケーブルに接触させる付勢手段と、上記アームの回動角を検出する角度検出手段とを備え、上記モータ制御手段は、上記角度検出手段からのアームの回動角をケーブル残量の情報として用いる。
この構成によれば、距離センサ等の非接触型のケーブル残量検出手段に比べて、安価に提供できる。
【0023】
さらに、警告手段を備え、この警告手段は上記ケーブル残量検出手段で検出されたケーブル残量が閾値未満になった時に、警告信号を発する。
これにより、ケーブルがリールから全て引き出されて根元から断線するのを防止できる。具体的には、この警告により移動可能な装置の第1方向への移動を抑制ないしは禁止することができる。
【0024】
好ましくは、上記リールの近傍には上記ケーブルを通す整列機構が配置され、この整列機構はリールの回転に伴って上記ケーブルをリールの軸方向に往復動させる。
好ましくは、さらに、整列機構の近傍にリング形状のガイドを配置し、上記ケーブルがこのガイドを通り整列機構を経てリールに巻かれる。これによれば、ガイドにより整列機構から延びるケーブルの上下左右の角度を適正範囲に制限することができ、整列機構でのケーブルの整列作業を円滑に行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のケーブルシステムによれば、リール装置のモータの負荷や移動可能な装置の移動抵抗を軽減でき、しかも移動可能な装置の移動状況に応じて応答性良くリールを制御でき、ケーブルの巻き取り、繰り出しを円滑に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図4を参照しながら説明する。図1に示すように、探査システム(ケーブルシステム)は、モニター1aを含むコントローラ1(基地装置)と、探査装置2と、これらコントローラ1と探査装置2を接続する長いケーブル3と、ケーブル3を巻き取ったり繰り出したりするリール装置4とを備えている。
【0027】
本実施形態では、上記探査装置2はビデオカメラにより構成されているが、これに制約されるものではなく、このビデオカメラに加えて、あるいはビデオカメラの代わりに赤外線センサ、化学物質検出センサ、温度センサ等のセンサを含む構成であってもよい。
【0028】
本実施形態の探査システムは、さらにクローラ装置5(運搬装置)を備えており、上記リール装置4は探査装置2の近傍に配置され探査装置2とともにこのクローラ装置5に搭載されている。このクローラ装置5はモータおよびバッテリ(図示しない)を備えている。
本実施形態では、上記探査装置2、クローラ装置5およびこれら装置と一緒に移動する付属部材により、本発明の移動可能な装置を構成する。
【0029】
上記コントローラ1は、クローラ装置5のモータを制御するための制御手段を含んでいる。すなわち、コントローラ1を操作しケーブル3を介してクローラ装置5のモータを遠隔制御し、クローラ装置5を前進、後退させる。
【0030】
上記リール装置4は、図1〜図3に示すように、ハウジング10(本体)と、リール11と、整列機構12と、ガイド13とを備えている。
【0031】
上記ハウジング10内の一対の側壁にはリール11が回転可能に支持されている。リール11の軸芯は、クローラ装置5の前進、後退方向と直交する方向に延びている。
上記ハウジング10には、このリール11の軸芯と平行に延びる開口10aが形成されている。
【0032】
上記整列機構12は、ハウジング10内に収容され、上記リール11とハウジング10の開口10aに配置されている。
上記整列機構12は周知のものであるので、簡単に説明する。整列機構12はケーブル3を挿通させるガイド部材を有しており、リール11の1回転毎にケーブル3をケーブル径だけリール11の軸方向に移動させ、その移動行程の終端位置に達したらケーブルの移動方向を逆転させるようになっている。
【0033】
上記ガイド13は、リール11の軸芯方向に細長いリング形状、例えば楕円形をなしている。ガイド13は、開口10aに距離をおいて対峙し、ステー14によりハウジング10に支持されている。
【0034】
上記リール装置4はさらに、図3に示すようにモータ15と、ロータリーエンコーダ16(回転検出手段)と、モータドライバ17と、マイコンを含む制御デバイス18(モータ制御手段)と、加速度センサ19とを備えている。
【0035】
上記モータ15は例えばブラシ付きDCモータであり、ハウジング10の側壁に固定され、内蔵のギアトレインを介して上記リール11に同軸をなして連結されている。
【0036】
上記ロータリーエンコーダ16は、モータ15(ひいてはリール11)の回転方向すなわち巻き取り方向か繰り出し方向かを検出するとともに、その回転速度を検出するものである。
【0037】
モータ15の近傍に配置された上記モータドライバ17は、モータ15への駆動電流を供給する駆動回路を含むとともに、モータ15のコイルを流れる電流を検出する電流検出回路(電流検出手段)17aを含んでいる。
【0038】
同じくモータ15の近傍に配置された上記制御デバイス18は、ロータリーエンコーダ16からの回転方向、回転速度の検出情報と、加速度センサ19からの加速度の検出情報と、電流検出回路17aからのモータ15のコイル電流の検出情報に基づき、モータドライバ17に制御信号を送り、モータ15をデューティ制御する。
【0039】
上記加速度センサ19は、上記リール装置10の他に、探査装置2、クローラ装置5のいずれかに設置してもよい。加速度センサ19は、クローラ装置5の前進、後退方向の加速度(探査装置2の加速度でもある)を検出するようになっている。なお通常の使用形態では、クローラ装置5の前進(第1方向の移動)の際に、ケーブル3がリール11から引き出され、後退(第2方向の移動)の際に、ケーブル3がリール11に巻き取られるようになっている。
【0040】
上記ケーブル3は光ファイバーを内蔵している。このケーブル3の基端はコントローラ1に内蔵されたコンバータを介してコントローラ1に接続されている。ケーブル3は上記リール装置4のガイド13を通り整列機構12を通ってリール11に巻かれており、その先端はリール11に設けられたロータリージョイント(図示しない)に接続され、さらにコンバータ、ハブを介して複数系統の電気信号線に接続されている。
【0041】
上記複数系統の電気信号線は、クローラ装置5のモータのモータドライバへの制御信号の伝送、探査装置2のビデオカメラからコントローラ1への映像信号(探査信号)の伝送のために提供される。
【0042】
操作者は、探査装置2のビデオカメラからの映像をモニター1aで観察しながら、コントローラ1を操作して、クローラ装置5の前進、後退の遠隔制御を行う。
【0043】
上記制御デバイス18は、図4に示すフローチャートにしたがってリール装置4のモータ15を制御する。まずステップS1で、ロータリーエンコーダ16からのモータ15の回転方向、回転速度Rの検出情報を読み込む。
【0044】
次にステップS2で、モータ15の回転方向が繰り出し方向か否かを判断する。肯定判断の場合(すなわちリール11が繰り出し方向に回転していると判断した場合)には、原則として第1制御モードM1を実行し、否定判断の場合(すなわちリール11が巻き取り方向に回転しているか停止していると判断した場合)には、第2制御モードM2を実行する。
【0045】
上記第1制御モードM1では、基本的にモータ15をフリー状態にする(ステップS10)。すなわち、モータ15のコイルに接続される駆動回路の一部を開いてコイルに電流が流れないようにする。これにより、ケーブル3の繰り出しを円滑に行える。
上記第2制御モードM2では、基本的に、巻き取り方向にトルクを発生させるように、かつ上記電流検出回路17aでの検出電流が第1設定電流Iuになるように、モータ15への供給電流をデューティ制御する(ステップ20)。これにより適度な張力を持ってケーブル3を巻き取ることができる。
【0046】
上記第1制御モードM1および第2制御モードM2には、下記の情報に基づき補正が加えられる。
(1)ロータリーエンコーダ16からのモータ15の回転速度Rの情報。
(2)加速度センサ19からのクローラ装置5(探査装置2)の移動加速度Aの情報。
(3)上記加速度センサ19の加速度に基づく移動速度Vの情報。この移動速度Vは、制御デバイス18において別ルーチンで加速度センサ19からの加速度情報に基づき積分演算により求められる。
【0047】
上記ステップS2でリール11が繰り出し方向であると判断した時には、ステップS3で、リール11の回転速度Rが設定回転速度R以上か否かを判断する。この設定回転速度Rは、クローラ装置5の通常の前進状態でのリール11の回転速度に比較して遥かに低い回転速度(微速)であり、クローラ5が通常の前進状態にある時には、このステップS3では肯定判断される。
【0048】
上記ステップS3で肯定判断した場合(すなわちリール11が繰り出し方向に所定回転速度R以上で回転していると判断した場合)には、以下の第1の制御モードM1を実行する。
まず、ステップS11に進んで加速度センサ19からの加速度Aを読み込み、次のステップS12でこの加速度Aが後退方向の加速度でありかつ設定加速度A以上であるか否かを判断する。
【0049】
上記ステップS11で否定判断した時、すなわち前進方向の加速度か、加速度ゼロか、後退方向の加速度であっても設定加速度A未満の場合には、前述した基本制御を実行する。すなわちモータ15をフリー状態にする(ステップS10)。
【0050】
上記ステップS12で肯定判断した場合には、ステップS10の基本制御(モータフリー)を実行せずに、ステップS13に進み、ここで、検出電流が第2設定電流Id’になるように、モータ15を巻き取り方向に制御する。なお、Id’<Iuである。
【0051】
次に第2制御モードM2について説明する。まず、ステップS21に進み、ここでクローラ装置5(換言すれば探査装置2)の移動速度Vを読み込む。
【0052】
次に、ステップS22に進み、クローラ装置5の移動速度Vが後退方向に設定移動速度V以上であるか否かを判断する。この設定移動速度Vは、通常の後退速度より遥かに低い速度(微速)である。したがって、クローラ装置5が通常の後退をしている状況では、ステップS22で肯定判断し、ステップS20に進んで基本制御を実行する。すなわち、巻き取り方向にトルクを発生させるように、かつ上記電流検出回路17aでの検出電流が設定電流Iuになるように、モータ15への供給電流をデューティ制御する。
【0053】
上記ステップS22で否定判断した場合、すなわちクローラ装置5が前進しているか後退方向に設定移動速度V未満(速度ゼロも含む)であると判断した場合には、ステップS23に進み、ここで巻き取り方向にトルクを発生させるように、かつ上記電流検出回路17aでの検出電流が第3設定電流Idになるように制御する。この第3設定電流Idは上述した第1設定電流Iuより小さい。したがって、基本制御での巻き取りトルクより小さくなる。
なお、この第3設定電流Idは第2設定電流Id’と等しくてもよいし、異なっていてもよい。
【0054】
次に、上記モータ15の制御をクローラ装置5の走行状況(探査装置2の移動状況)と関連させて説明する。
【0055】
クローラ装置5が後退した時には、第2制御モードM2を実行し、リール11に巻き取り方向のトルクを付与する。この際、常にモータ15に第1設定電流Iuを供給し、この第1設定電流Iuに見合った巻き取り方向のトルクをリール11に付与するため、ケーブル3の巻き取りを継続して行うことができる。ステップS20参照。
【0056】
クローラ装置5が停止状態から後退方向に発進したり、後退速度が増大して、ケーブル3の張力が低下した時には、モータ15の負荷が軽くなってコイル電流が急低下するが、この場合にはコイル電流を第1設定電流Iuにするためにデューティ比が増大する。このようにして、第1設定電流Iuに見合った巻き取り方向のトルクを維持するため、ケーブル3のたるみを解消することができる。
【0057】
クローラ装置5が停止している時にも第2制御モードM2を実行し、リール11に巻き取り方向のトルクを付与する。この際、モータ15に比較的小さい第3設定電流Idを供給し、この第3設定電流に見合った比較的小さいトルクをリール11に付与するため、ケーブル3にたるみが無く、この停止状態からクローラ装置5を前進させても後退させても走行に支障は生じない。ステップS23参照。
【0058】
クローラ装置5が前進している時には、ケーブル3がリール11から強制的に繰り出され、リール3が繰り出し方向に回転する。この際、基本的には第1制御モードM1を実行し、モータ15をフリー状態にする。このケーブル3の繰り出しによりモータ15で発電がなされないので、モータ15が負荷となることはない。ステップS10参照。このケーブル3の繰り出しは、モータ15とリール11との間のギアトレイン等で若干の抵抗を受けるだけであるので、円滑に行うことができる。
【0059】
次にクローラ装置5の特殊な走行状況でのリール制御について説明する。
クローラ装置5が前進し、ステップS2、S3で肯定判断し、第1制御モードM1の基本制御を実行している状況(ステップ10でモータフリーリーにしてケーブル3を繰り出している状況)で、クローラ装置5が急停止したり階段を昇り終わって急に傾き状態から水平状態になった直後には、繰り出し状態にあったケーブル3が瞬間的にたるむ。この場合には、ステップS12で肯定判断してステップS13を実行し、モータ15に第2設定電流Id’を供給しリール11に巻き取り方向の小さなトルクを付与する。その結果、ケーブル3のたるみ状態を即座に解消することができる。
【0060】
クローラ装置5が後退し、ステップS2で否定判断して第2制御モードの基本制御を実行している状況(ステップ20で供給電流が第1設定電流Iuになるようにモータ15を制御し、適正なトルクでケーブル3を巻き取っている状況)で、後退速度が低くなった時には、供給電流を第3設定電流Idまで下げ、巻き取りトルクを低下させる。これにより、後退から急停止した時にケーブル3を引っ張り過ぎるのを回避できる。また、クローラ装置が後退から前進に切り替わった時でも、ケーブル3の引っ張り荷重の一時的増大を回避ないしは抑制できる。
【0061】
クローラ装置5が前進しモータ15がフリー状態にありリール11が繰り出し方向に設定速度V以上で回転している状況で、クローラ装置5が急減速または急停止すると、慣性によりケーブル3は繰り出され、リール3も繰り出し方向に回転し続けようとする。この場合、モータ15の繰り出し方向の回転速度Rが設定回転速度Rを下回った時に、ステップS3で否定判断して第2制御モードM2を実行し、リール11に比較的小さな巻取りトルクを付与する。ステップ23参照。これにより、ケーブル3のたるみ状態を即座に解消することができる。また、クローラ装置5が急停止後に後退する場合にも、ケーブル3が障害となることなく円滑に後退することができる。
【0062】
上述したように、クローラ装置5の前進時にはケーブル3が引き出されるためケーブルのたるみは無く、またクローラ装置5の後退時にはほぼ一定の張力が働くとともにたるみは即座に解消され、しかも前進状態での急停止時にもたるみをも即座に解消するようになっているので、整列機構3は円滑にケーブル3をリール11に整列させることができる。
【0063】
本実施形態では、整列機構12の近傍にリング形状のガイド13が配置されており、このガイド13がケーブル3の移動範囲(上下方向、左右方向の角度範囲)を制約するため、整列機構12にケーブル3が噛み込むことが無く、整列機構12によるケーブル3の整列作業を円滑に行うことができる。
【0064】
本発明の制御態様は上記実施形態に制約されず、種々採用可能である。例えば、上記ステップS23では、移動速度Vが低くなるにしたがって、上記電流検出回路17aでの検出電流が設定電流Iuから徐々に(リニアにあるいは段階的に)小さくなるように第3設定電流Idを設定してもよい。
【0065】
上記実施形態の第2制御モードM2において、ステップS21、S22の代わりに図5のステップS21’、S22’を実行してもよい。ステップS21’では加速度Aを読み込み、ステップS22’では前進方向の加速度であって設定加速度A’以上か否かを判断する。ここで肯定判断した場合にはステップS23を実行し、否定判断した場合にはステップS20を実行する。これにより、後退時に急停止した場合でも、ケーブル3の引っ張り過ぎが一時的に生じるのを回避できる。
【0066】
上記ステップS3は省いてもよい。また、ステップS3で否定判断した時ステップS21、S22を実行せずに、ステップS23またはステップS13を実行するようにしてもよい。
同様にステップS12で肯定判断した時、モータ15を第1設定電流Iuで巻き取り方向に制御してもよい。
【0067】
上記実施形態では、第1制御モードM1と第2制御モードM2の両方ともクローラ装置5の走行状況等に応じて基本制御を補正したが、いずれか一方の制御モードのみを補正するようにしてもよい。
【0068】
クローラ装置5を旋回させて、前進により基地装置1に向かったり(ケーブル3をたるませる方向に移動)、後退により基地装置1から離れたり(ケーブル3を引っ張る方向に移動)する状況も発生する。この場合、後退時にケーブル3が繰り出され、前進時にケーブル3が巻き取られることになるが、このような状況では、後退方向が第1方向となり、前進方向が第2方向となる。この場合、操作者がコントローラ1から切り替え信号を送信して、ステップS12、S22を「後退方向」から「前進方向」に置き換えればよい。
【0069】
次に、本発明の他の実施形態について図を参照しながら説明する。これら実施形態において、第1実施形態に対応する構成部には同番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0070】
図6〜図9に示す第2実施形態では、リール装置4がケーブル残量検出手段50を備えている。図6、図7に示すように、このケーブル残量検出手段50は接触アーム51を備えており、この接触アーム51は、リール11の軸芯と平行をなす回転シャフト52を介してハウジング10(本体)の両側壁に回転可能に支持されている。
【0071】
上記接触アーム51は、基端が回転シャフト52に固定された左右一対のアーム部51aと、このアーム部51aの先端に掛け渡され、回転シャフト52およびリール11の軸芯と平行をなす接触ロッド51b(接触部)とを有している。
【0072】
ケーブル残量検出手段50は、さらに、つるまきバネ53(付勢手段)と、ポテンショメータ等からなる角度センサ54とを備えている。
つるまきバネ53は、上記回転シャフト52の一端部に巻かれ、その一端が回転シャフト52に係止され、他端が本体10に係止されている。このつるまきバネ53の弾性力により、接触アーム51は下方に、すなわちリール11に向かって付勢されており、これにより接触アーム51の接触ロッド51bは常時リール11に巻かれた最外周のケーブル3に接するようになっている。
したがって、上記接触アーム51は、リール11に巻かれたケーブル3の残量が多いほど水平に近い角度になる。なお、図7ではケーブル3の図示を省略している。
【0073】
上記角度センサ54は、上記回転シャフト52の他端部近傍に配置され、ブラケットを介してハウジング10の側壁に取り付けられている。この角度センサ54は、ギア55,56を介して回転シャフト52の他端部に連結され、接触アーム51の角度を検出し、ひいてはケーブル3の残量を検出できるようになっている。
【0074】
上記第2実施形態では、制御デバイス18は図8の制御を実行する。この図8のフローチャートにおいて、図4に示す第1実施形態のフローチャートに相当するステップには同番号を付して説明をその詳細な説明を省略する。
【0075】
まず、上記角度センサ54で検出された接触アーム51の角度情報からリール径(ケーブル3を巻きつけた状態でのケーブル3を含むリール11の径)を演算する(ステップS4)。このリール径Dはケーブル残量の情報に相当する。
【0076】
次に、リール径Dが閾値d0を超えるか否かを判断する(ステップS5)。この閾値d0は、僅かなケーブル残量に対応する値である。ここで肯定判断した場合には、リール径に対応した電流補正係数kを算出する(ステップS6)。本実施形態では、図9に示すようにリール径に比例して(ケーブル残量に比例して)電流補正係数kを増大させる。なお、電流補正係数kは1以下の数値である。
【0077】
上記ステップS5で否定判断した場合には、ケーブル残量無しの警告信号を出力し(ステップS7)、それから上記ステップS6を実行する。この警告信号は、ケーブル3を介して基地装置1に送られ、ディスプレイ1aや音声で警告表示される。このステップS7は警告手段を構成する。
【0078】
図8のステップS20でのモータ電流制御において、第1設定電流Iuは、第1所定電流Iu0に上記電流補正係数kを乗じて決定される。同様に、ステップS13でのモータ電流制御において、第2所定電流Id’は、第2所定電流値Id'0に上記電流補正係数kを乗じて決定される。ステップS23でのモータ電流制御において、第3設定電流Idは、第3所定電流値Id0に上記電流補正係数kを乗じて決定される。
なお、上記第1〜第3の所定電流Iu0,Id'0,Id0は、第1実施形態での第1〜第3設定電流Iu,Id',Idよりそれぞれ小さい。
【0079】
上述のように、第2実施形態のステップS20、S13、S23において、ケーブル残量が多いほど電流補正係数kを大きく、ケーブル残量が少ないほど電流補正係数kを小さくすることにより、第1〜第3設定電流を調節し、リール11に付与すべき巻き取りトルクを調節する。これは、ケーブル残量の変化(すなわち巻かれたケーブル3を含むリール11の質量の変化)に起因したリール11の回転に要するトルク分の変化に対応して、巻き取りトルクを増減することを意味する。その結果、ケーブル3の張力を、ケーブル残量に拘わらずに各ステップS20、S13、S23で要求される範囲にすることができる。
【0080】
上述した第1実施形態の種々の変形例(図5の変形例を含む)は、第2実施形態にも適用され、さらに後述の第3〜6実施形態にも適用される。
また、第2実施形態の特徴は後述する第3〜6実施形態にも適用できる。
【0081】
図10(A)に示す第3実施形態では、リール装置4が基地側のコントローラ1の近傍に配置されていて移動しない。ケーブル3は、リール11に設けられたスリップリングおよび補助的な光ケーブル3aを介してコントローラ1に接続されている。
【0082】
この第3実施形態では、ケーブル3の先端は、クローラ装置5(移動可能な装置)に設置されたコンバータおよびハブを介して、クローラ装置5のモータへの制御信号伝送用の電線および探査装置2(移動可能な装置)からの映像信号伝送用の電線に接続されている。この場合、加速度センサが探査装置2またはクローラ装置5に設けられ、その加速度信号がケーブル3を介してリール装置4の制御デバイス18に送られる。
【0083】
図10(B)に示す第4実施形態では、探査装置2の運搬手段がクローラ装置から人に置き換わっただけで、他の構成は図10(A)の第3実施形態と同様である。この場合、基地装置2は走行制御機能を有さず、探査装置2(移動可能な装置)からの映像信号を監視するためのモニターだけの構成とすることもできる。加速度センサは探査装置2に設けられ、その加速度信号がケーブル3を介してリール装置4の制御デバイス18に送られる。
【0084】
図10(C)に示す第5実施形態では、探査装置2およびリール装置4の運搬手段がクローラ装置から人に置き換わっただけで、他の構成は図1〜図4の第1実施形態と同様である。この場合、加速度センサは探査装置2(移動可能な装置)またはリール装置4に設けられる。本実施形態において、探査装置2とリール装置4は図示しない取付部材を介して一体化するのが好ましい。
【0085】
図1に示す第1実施形態における探査装置2およびリール装置4の運搬装置、または図10(A)に示す第3実施形態における探査装置2の運搬装置として、クローラ装置5の代わりにラジコンカーや小型ヘリコプター等の他の運搬装置を用いてもよい。これら運搬装置は、ケーブル3の信号経路を介して遠隔操作する。
【0086】
図11に示す第6実施形態では、クローラ装置5に、リール装置4、探査装置2の他に無線装置20(中継装置)が搭載されている。この無線装置20は、探査装置2と同様にしてリール装置4を介してケーブル3に接続されている。この無線装置20は、探査装置2およびクローラ装置5とともに本発明の移動可能な装置を構成する。
【0087】
さらに第6実施形態の探査システムでは、小型ヘリコプター21(搬送体)と、この小型ヘリコプター21に搭載された他の探査装置22と無線装置23とを有している。無線装置20は、基地装置1からケーブル3を経て送られてきた操縦信号を小型ヘリコプター21の無線装置23に送信するとともに、探査装置22からの探査信号を無線装置23から受信しケーブル3を介して基地装置1へと送るようになっている。
第6実施形態において、上記小型ヘリコプター21の代わりにラジコンカーを用いてもよい。また、探査装置2は省略してもよい。
【0088】
本発明は上記実施形態に制約されず、さらに種々の態様を採用可能である。例えば、ステップS10でモータの駆動回路を開く代わりに、デューテイ比をゼロに(モータへの供給電流をゼロに)にしてもよい。
【0089】
全ての実施形態において、リール装置のモータの制御を基地装置のコントローラで行ってもよい。また、移動可能な装置は、探査装置に加えて作業ロボット等の特殊な作業を行う装置を装備してもよい。作業ロボットは基地装置のコントローラによりケーブルの信号経路を介して遠隔制御することができる、
【0090】
上記実施形態では、ケーブルは信号伝送だけを行う光ファイバーにより構成したが、給電線を含んでいてもよい。この場合、クローラ装置、リール装置の電源は、基地装置近傍に配置される。
【0091】
上記第2実施形態では、ケーブル残量検出手段としてレーザー距離計等の距離センサを用い、リール11に巻かれた最外周のケーブルまでの距離情報から、ケーブル残量を非接触式で検出するようにしてもよい。
さらに、バッテリ電圧の低下にしたがって設定電流を増大させてもよい。
【0092】
モータ制御手段はデューティ制御以外の制御方式によりモータのコイル電流を制御してもよい。回転検出手段は、リールの回転方向、回転速度をリール回転から直接検出してもよい。
第1実施形態においてクローラ装置が移動可能な装置となり、探査装置が無い場合も本発明が適用される。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明のリール装置を備えた探査システムの第1実施形態を示す概略側面図である。
【図2】同リール装置の平面図である。
【図3】同リール装置の平断面図であり、リール用モータ制御のための構成をブロックで付加して示す。
【図4】同リール装置のモータ制御の概要を示すフローチャートである。
【図5】同モータ制御の他の態様の一部を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2実施形態をなす探査システムを示す図1相当図である。
【図7】同第2実施形態のシステムで用いられるケーブル残量検出手段の断面図である。
【図8】同第2実施形態で実行されるリール用モータ制御のフローチャートである。
【図9】同第2実施形態でモータ制御に用いられる電流補正係数の演算を示す図である。
【図10】(A)〜(C)は本発明の探査システムの第3〜第5実施形態をそれぞれ示す概略側面図である。
【図11】本発明の探査システムの第6実施形態を示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0094】
1 コントローラ(基地装置)
2 探査装置(移動可能な装置)
3 ケーブル(ケーブル)
4 リール装置
5 クローラ装置(運搬装置、移動可能な装置)
10 ハウジング(本体)
11 リール
15 モータ
16 ロータリーエンコーダ(回転検出手段)
17a 電流検出回路(電流検出手段)
18 制御デバイス(モータ制御手段)
19 加速度センサ
20 無線装置(中継装置、移動可能な装置)
21 小型ヘリコプター(搬送体)
22 探査装置
50 ケーブル残量検出手段
51 接触アーム
53 つるまきバネ(付勢手段)
54 角度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルと、このケーブルの一端に接続された基地装置と、このケーブルの他端に接続され、ケーブルを介して基地装置への信号の送信または基地装置からの信号の受信の少なくとも一方を行う移動可能な装置と、上記移動可能な装置と一緒に移動し上記ケーブルを巻くリール装置とを備えたケーブルシステムにおいて、
上記リール装置は、本体と、この本体に回転可能に支持されて上記ケーブルを巻くリールと、上記リールに連結されたモータと、上記リールの回転方向を検出する回転検出手段と、上記モータのコイル電流を検出する電流検出手段と、上記モータを制御するモータ制御手段とを備え、
上記モータ制御手段は、上記回転検出手段により上記リールがケーブル繰り出し方向に回転している状態を検出した時に、第1制御モードを実行し、上記回転検出手段により上記リールがケーブル巻き取り方向に回転している状態または停止している状態を検出した時に、第2制御モードを実行し、
上記第1制御モードでは、基本的に、モータの駆動回路を開くか、モータへの供給電流をゼロにし、
上記第2制御モードでは、基本的に、巻き取り方向のトルクを発生させるように、かつ上記電流検出手段により検出される電流が第1設定電流になるように上記モータを制御し、
さらに、上記移動可能な装置または上記リール装置に設けられた加速度センサを備え、この加速度センサは、上記リール装置に巻かれたケーブルを引き出すような上記移動可能な装置の第1方向の移動の加速度か、第1方向とは逆の第2方向の加速度の少なくとも一方を検出し、
上記モータ制御手段は、上記加速度センサからの加速度情報に基づき、上記第1、第2制御モードの少なくともいずれか一方の制御に補正を加えることを特徴とするケーブルシステム。
【請求項2】
上記移動可能な装置が運搬装置を含み、上記リール装置がこの運搬装置に搭載されていることを特徴とする請求項1に記載のケーブルシステム。
【請求項3】
ケーブルと、このケーブルの一端に接続された基地装置と、このケーブルの他端に接続され、ケーブルを介して基地装置への信号の送信または基地装置からの信号の受信の少なくとも一方を行う移動可能な装置と、上記基地装置の近傍に設けられて上記ケーブルを巻くリール装置とを備えたケーブルシステムにおいて、
上記リール装置は、本体と、この本体に回転可能に支持されて上記ケーブルを巻くリールと、上記リールに連結されたモータと、上記リールの回転方向を検出する回転検出手段と、上記モータのコイル電流を検出する電流検出手段と、上記モータを制御するモータ制御手段とを備え、
上記モータ制御手段は、上記回転検出手段により上記リールがケーブル繰り出し方向に回転している状態を検出した時に、第1制御モードを実行し、上記回転検出手段により上記リールがケーブル巻き取り方向に回転している状態または停止している状態を検出した時に、第2制御モードを実行し、
上記第1制御モードでは、基本的に、モータの駆動回路を開くか、モータへの供給電流をゼロにし、
上記第2制御モードでは、基本的に、巻き取り方向のトルクを発生させるように、かつ上記電流検出手段により検出される電流が第1設定電流になるように上記モータを制御し、
さらに、上記移動可能な装置に設けられた加速度センサを備え、この加速度センサは、上記リール装置に巻かれたケーブルを引き出すような上記移動可能な装置の第1方向の移動の加速度か、第1方向とは逆の第2方向の加速度の少なくとも一方を検出し、
上記モータ制御手段は、上記加速度センサからの加速度情報に基づき、上記第1、第2制御モードの少なくともいずれか一方の制御に補正を加えることを特徴とするケーブルシステム。
【請求項4】
上記モータ制御手段は、上記第1制御モードにおいて、上記回転方向が繰り出し方向であっても、上記加速度センサが上記第2方向の設定加速度以上の加速度を検出した時には、電流検出手段からの検出電流が上記第1設定電流またはそれより小さい第2設定電流になるように、モータを巻き取り方向に制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のケーブルシステム。
【請求項5】
上記モータ制御手段は、上記加速度センサからの加速度情報から上記移動可能な装置の移動速度を演算し、上記第2制御モードにおいて、この移動速度が上記第1方向の場合または上記第2方向であっても設定移動速度より遅い場合には、上記電流検出手段からの検出電流が上記第1設定電流より小さい第3設定電流になるように、モータを巻き取り方向に制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のケーブルシステム。
【請求項6】
上記モータ制御手段は、上記第2制御モードにおいて、上記加速度センサからの検出加速度が上記第1方向であってしかも設定加速度以上の場合には、上記電流検出手段からの検出電流が上記第1設定電流より小さい第3設定電流になるようにモータを巻き取り方向に制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のケーブルシステム。
【請求項7】
上記回転検出手段は上記リールの回転速度も検出し、上記モータ制御手段は、上記第1制御モードにおいて、上記回転方向が繰り出し方向であっても、検出された回転速度が設定回転速度未満の場合には、上記第2制御モードを実行することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のケーブルシステム。
【請求項8】
上記リール装置はさらに、上記リールに巻かれたケーブルの残量を検出するケーブル残量検出手段を備え、
上記モータ制御手段は、上記ケーブル残量検出手段で検出されたケーブル残量が多いほど上記設定電流を大きく、ケーブル残量が少ないほど設定電流を小さくすることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のケーブルシステム。
【請求項9】
上記ケーブル残量検出手段は、上記リール装置の本体に上下方向の回動を可能にして支持された接触アームと、このアームを上記リールに向かって付勢してリールに巻かれたケーブルに接触させる付勢手段と、上記アームの回動角を検出する角度検出手段とを備え、
上記モータ制御手段は、上記角度検出手段からのアームの回動角をケーブル残量の情報として用いることを特徴とする請求項8に記載のケーブルシステム。
【請求項10】
さらに、警告手段を備え、この警告手段は上記ケーブル残量検出手段で検出されたケーブル残量が閾値未満になった時に、警告信号を発することを特徴とする請求項8または9に記載のケーブルシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−254927(P2008−254927A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−59080(P2008−59080)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
【Fターム(参考)】