説明

ケーブルストリッパ

【課題】構造が簡単で軽量なケーブルストリッパを得る。
【解決手段】ケーブルを所定距離離間した二箇所の挟持位置PPで挟持してケーブル空間CSに位置付ける一対の輪切り刃保持体102(下保持体102a、上保持体102b)に、挟持位置PPで組み合わされて円形形状をなし、ケーブル空間CSに位置するケーブルの被覆を輪切りする輪切り刃104(104a、104b)を設け、一方の輪切り刃保持体(上保持体102b)を介してもう一方の輪切り刃保持体(下保持体102a)に近接離反自在に設けられている縦切り刃保持体103に、この縦切り刃保持体103がもう一方の輪切り刃保持体(下保持体102a)に近接する動作に応じて二箇所の挟持位置PPの間の領域を横切ることでケーブルの被覆を縦切りする縦切り刃105を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば光自動検針器等の電源線接続工事に際して、ケーブルの中間被覆剥ぎのために使用されるケーブルストリッパに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば光自動検針器等の電源線接続工事に際しては、電源線となるケーブルの端部ではない中間部分においてその被覆を剥離させる作業、いわゆるケーブルの中間被覆剥ぎという作業が発生する。この作業の手順としては、図10に示すように、ケーブルCBの二箇所でその被覆TをカッタCによって輪切りする(図10(a)参照)。次に、輪切した二箇所を繋ぐようにカッタCによって被覆Tを縦切りする(図10(b)参照)。その後、被覆Tにおいて輪切り及び縦切りによって脱落可能となった被覆の破片TFをニッパNで摘んで除去し、被覆Tに覆われていた導線LLを露出させる(図10(c)参照)。これにより、ケーブルの中間被覆剥ぎを行なうことができる。
【0003】
これに対して、図10(a)〜(c)に作業手順を示すように、ケーブルの中間被覆剥ぎをするには複数の手順を必要とする。このため、中間被覆剥ぎを必要とする箇所が増えれば増えるほど、図10(a)〜(c)に示すような作業手順を何度も繰り返さなければならず、極めて非効率で作業性が悪いという問題がある。このようなことから、ケーブルの中間被覆剥ぎを行なうことができるようにしたケーブルストリッパと呼ばれる器具が開発され、実用化されている。
【0004】
特許文献1は、ケーブルストリッパの一例を開示している。特許文献1が開示するケーブルストリッパは、ケーブルの被覆を輪切り(周方向の切込みを形成)するための複数個の第1のブレードと、縦切り(軸方向の切込みを形成)するための第2のブレードとを円筒形状のケーブルガイド部に備え、それらの第1及び第2のブレードを共通の操作レバーによって移動操作するように構成したものである(段落0006〜0007等参照)。そこで、ガイド孔にケーブルを挿入し、この状態でガイド孔内に複数個の第1のブレードを進入させることによってケーブルの被覆を輪切りし、その後、ガイド孔から第1のブレードを退避させると共に第2のブレードを進入させてケーブルの被覆を縦切りする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−049135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ケーブルの中間被覆剥ぎを行なうに際して、図10(a)〜(c)に例示するような作業を繰り返すことは、前述したように、極めて非効率で作業性が悪い。これに対して、特許文献1に例示するようなケーブルストリッパを用いれば、効率的に作業を進めることができる。しかしながら、特許文献1に示すケーブルストリッパを見れば分かるように、その構造が非常に複雑であり、また、構造の複雑さや部品点数の多さ等から重量が重くなってしまうという問題がある。これは、輪切りをするに際しては第1のブレードに対してケーブルを回転させる必要があり、縦切りをするにはケーブルに対して第2のブレードを移動させる必要があり、これらの全く異なる動作を単一の操作レバーの操作によっていずれも実現させなければならないからである。また、重量が重くなればなるほど、多くのケーブルについてその中間被覆剥ぎを行なうと作業者への負担が増大してしまうため、甚だ不都合である。このようなことから、構造が簡単で軽量なケーブルストリッパの実現が望まれている。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、構造が簡単で軽量なケーブルストリッパを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のケーブルストリッパは、近接離反自在に設けられて被覆剥ぎの対象であるケーブルを少なくともその長手方向に所定距離離間した二箇所の挟持位置で挟持してケーブル空間に位置付ける一対の輪切り刃保持体と、前記二箇所の挟持位置に位置させて前記一対の輪切り刃保持体のそれぞれに形成され、組み合わされることによって円形形状をなすことで、前記ケーブル空間に位置するケーブルの被覆を前記挟持位置で輪切り可能な二箇所一対の輪切り刃と、一方の前記輪切り刃保持体を介してもう一方の前記輪切り刃保持体に近接離反自在に設けられている縦切り刃保持体と、前記縦切り刃保持体に設けられ、前記縦切り刃保持体が前記もう一方の輪切り刃保持体に近接する動作に応じて前記二箇所の挟持位置の間の領域を横切ることで、前記ケーブル空間に位置するケーブルの被覆を前記二箇所の挟持位置の間で縦切り可能な縦切り刃と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、一対の輪切り刃保持体でケーブルを挟持するだけで、輪切り刃によるケーブルの輪切りを行なうことができ、また、縦切り刃保持体を一方の輪切り刃保持体を介してもう一方の輪切り刃保持体に近接させるだけで、縦切り刃によるケーブルの縦切りを行なうことができ、したがって、極めて構造が簡単で軽量なケーブルストリッパを得ることができ、多くのケーブルについてその中間被覆剥ぎを行なった場合に生ずる作業者への負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施の形態のケーブルストリッパの一例を示す側面図である。
【図2】ケーブルストリッパの縦断側面図である。
【図3】ケーブルストリッパの分解斜視図である。
【図4】(a)はケーブル空間にケーブルがセットされてその被覆が輪切りされている状態を示す縦断側面図、(b)は縦切り刃によってケーブルの被覆が縦切りされている状態を示す縦断側面図である。
【図5】(a)は輪切り及び縦輪切りされた後のケーブル及び被覆の状態を示す縦断側面図、(b)は輪切り及び縦切りされた後のケーブル及び被覆の状態を示す平面図である。
【図6】第2の実施の形態のケーブルストリッパの一例を示す側面図である。
【図7】ケーブルストリッパの縦断側面図である。
【図8】第3の実施の形態のケーブルストリッパの一例を示す側面図である。
【図9】ケーブルストリッパの縦断側面図である。
【図10】従来の中間被覆剥ぎの作業手順を示し、(a)はケーブルの被覆を輪切りしている工程を、(b)は輪切りされたケーブルを縦切りしている工程を、(c)は輪切り及び縦切りされた被覆の破片を除去する工程を、それぞれ示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態を図1ないし図5に基づいて説明する。
【0013】
図1は、ケーブルストリッパ101の一例を示す側面図である。本実施の形態のケーブルストリッパ101は、ホチキスに類似した構造を有している。つまり、軸AXを中心に回動自在に連結されて近接離反自在に設けられた一対の輪切り刃保持体102が設けられ、この輪切り刃保持体102には縦切り刃保持体103も軸AXを中心に回動自在に取り付けられている。
【0014】
一対の輪切り刃保持体102は、下保持体102aと上保持体102bとからなる。これらの下保持体102aと上保持体102bとは、被覆剥ぎの対象であるケーブルCB(図4参照)をその長手方向に所定距離離間した二箇所の挟持位置PP(図3参照)で挟持して溝状のケーブル空間CSに位置付けるよう、軸AXを中心に回動自在に連結されている。ケーブル空間CSは、丸棒形状のケーブルCBを収納できるよう、筒状に形成されている。ケーブルストリッパ101は、このようなケーブル空間CSを二組有している。一つは比較的細いケーブルCB用、もう一つは比較的太いケーブルCB用である。二箇所の挟持位置PPは、個々のケーブル空間CSの両端部に形成されている。そして、これらの挟持位置PPには、輪切り刃104が設けられている。これらの輪切り刃104は、下保持体102aに形成された部分と上保持体102bに形成された部分とが組み合わされることによって円形形状をなし、ケーブル空間CSに位置するケーブルCBの被覆を挟持位置PPで輪切り可能な構造をなしている。ここでは、理解の容易上、下保持体102aに設けられた輪切り刃104を輪切り刃104a、上保持体102bに設けられた輪切り刃104を輪切り刃104bとして説明し、図面にも表示する。
【0015】
次いで、刃保持体103は、軸AXを中心に回動することで、上保持体102bを介して下保持体102aに近接離反自在に設けられている。このような刃保持体103には、二組のケーブル空間CSに対応させた二組の縦切り刃105が取り付けられている。各組の縦切り刃105は、一対の刃部105aが対面して形成されている。このような縦切り刃105は、縦切り刃保持体103が上保持体102bに近接する動作に応じて二箇所の挟持位置PPの間の領域を横切るように位置付けられている(図3参照)。これにより、縦切り刃105は、ケーブル空間CSに位置するケーブルCBの被覆T(図4参照)を二箇所の挟持位置PPの間で縦切り可能な構造をなしている。この場合、縦切り刃105は一対の対面する刃部105aを有しているため、ケーブルCBにおいて被覆Tに覆われている導線LLの両側で被覆Tを切断することができる。
【0016】
図2は、ケーブルストリッパ101の縦断側面図である。ケーブルストリッパ101には、板バネ106が取り付けられている。板バネ106は、下保持体102aに対して上保持体102bを離反方向に付勢する第1の付勢部106aをなす領域と、上保持体102bに対して縦切り刃保持体103を離反方向に付勢する第2の付勢部106bをなす領域とを含んでいる。より詳細には、板バネ106は、軸AXを形成する軸棒107を取り囲むようにして軸棒107にラッチされる包囲部106cを中心に備える。そして、板バネ106は、包囲部106cを中心として下方の一端側に平坦部106dと下作用部106eとを順に備え、上方の一端側に上作用部106fを備えている。
【0017】
板バネ106の平坦部106dは下保持体102aの上面に支持されており、下作用部106eは上保持体102bの下面を支えている。そこで、包囲部106cから平坦部106dを介して下作用部106eに至る領域は、下保持体102aに対して上保持体102bを離反方向に付勢する第1の付勢部106aとしての役割を果たしている。
【0018】
これに対して、板バネ106の上作用部106fは、上保持体102bを貫通して縦切り刃保持体103の下面に沿ってこの縦切り刃保持体103の先端部に固定されている。そこで、平坦部106dから包囲部106cを介して上作用部106fに至る板バネ106の領域は、上保持体102bに対して縦切り刃保持体103を離反方向に付勢する第2の付勢部106bとしての役割を果たしている。
【0019】
ここで、板バネ106の上作用部106fを貫通させるために、上保持体102bには板バネ挿通孔108が形成されている。また、板バネ106の上作用部106fを固定するために、縦切り刃保持体103の裏面には二つのボス109が形成されている。図2に示すように、板バネ106の上作用部106fは、縦切り刃105と共に、ネジ110によってボス109にネジ止めされている。
【0020】
また、図2に示すように、下保持体102aはバルク体であり、上保持体102bは折り曲げ形成された板金部材である。このような上保持体102bには、縦切り刃105を挿通させるための挿通孔111が開口形成されている。そして、下保持体102aは、一例として硬質樹脂によって成形されており、挿通孔111を挿通して進入してきた縦切り刃105を挿入させて退避させるための複数個の退避孔112を一体に有している。
【0021】
図3は、ケーブルストリッパ101の分解斜視図である。下保持体102aには、その後端両側部に一対の連結板113が固定されている。これらの連結板113には、軸AXとなる軸棒107を挿通させるための軸孔114aが形成されている。上保持体102bにも、その回転中心となる位置に軸孔114bが形成されている。縦切り刃保持体103にも、その回転中心となる位置に軸孔114cが形成されている。そして、一対の連結板113の対向配置間隔は、上保持体102bの外幅よりも僅かに広く、縦切り刃保持体103の内幅よりも僅かに狭く形成されている。そこで、連結板113と上保持体102bと縦切り刃保持体103とのそれぞれの軸孔114a〜114cの位置を一致させた状態で、これらの軸孔114a〜114cに軸棒107を挿通する。この際に重要なことは、上保持体102bの板バネ挿通孔108に板バネ106の包囲部106cから平坦部106dを経て下作用部106eに至る部分を挿通しておき、その包囲部106cにも軸棒107を挿通させるということである。これにより、下保持体102aと上保持体102bと縦切り刃保持体103と板バネ106とが、それぞれ回動自在に一体的に組み付けられる。そして、軸棒107の脱落防止のために、軸棒107をEリング115によって抜け止めする。つまり、軸棒107は、その一端に大径の頭部107aを有し、他端にEリング115を装着するための装着溝107bを有している。そこで、連結板113と上保持体102bと縦切り刃保持体103とのそれぞれの軸孔114a〜114c及び板バネ106の包囲部106cに軸棒107を挿通してから装着溝107bにEリング115を装着すれば、軸棒107を抜け止めすることができ、各部を脱落することなく確実に組み付けることができる。
【0022】
完成したケーブルストリッパ101は、図2に示すように、板バネ106の下作用部106eが上保持体102bを下保持体102aから離反した位置に位置付け、板バネ106の上作用部106fが縦切り刃保持体103を上保持体102bから離反した位置に位置付けている。そこで、縦切り刃保持体103を下保持体102aに近接させると、板バネ106が撓み、第1の付勢部106aが下保持体102aに対して上保持体102bを離反方向に付勢し、第2の付勢部106bが上保持体102bに対して縦切り刃保持体103を離反方向に付勢する。ここで重要なことは、板バネ106は、第1の付勢部106aと第2の付勢部106bとでその付勢力が相違しているという点である。つまり、第1の付勢部106aの付勢力は第2の付勢部106bの付勢力よりも小さく設定されている。より詳細には、第1の付勢部106aと第2の付勢部106bとの付勢力は、縦切り刃保持体103を下保持体102aに近接させる動作に応じて、二箇所の挟持位置PPの間の領域を縦切り刃105が横切る前に下保持体102a側の輪切り刃104aと上保持体102b側の輪切り刃104bとが円形形状に組み合わされる関係に設定されている。
【0023】
なお、第1の付勢部106aの付勢力と第2の付勢部106bの付勢力とを変化させるには、各種の手法を採用することができる。一例として、板バネ106の厚みを変化させてその剛性を相違させるという手法を採用することができる。別の一例として、付勢力を小さくする領域に打ち抜き部を設けて板バネとして作用する面積を小さくするという手法を採用することができる。更に別の一例としては、剛性がことなる二種類の鋼を溶接等で接合固定するという手法を採用することができる。
【0024】
図4(a)は、ケーブル空間CSにケーブルCBがセットされてその被覆Tが輪切りされている状態を示す縦断側面図である。前述したように、第1の付勢部106aの付勢力は第2の付勢部106bの付勢力よりも小さく設定されているので、縦切り刃保持体103を下保持体102aに近接させた場合、二箇所の挟持位置PPの間の領域を縦切り刃105が横切る前に、下保持体102a側の輪切り刃104aと上保持体102b側の輪切り刃104bとが円形形状に組み合わされる。このため、状況に応じて、この時点でケーブルCBの被覆Tが二箇所の挟持位置PPで切断される。あるいは、この時点では被覆Tが切断されない場合、作業者がケーブルCBを回転させることで被覆Tを容易に切断することができる。こうして、ケーブルCBの被覆Tが輪切りされる。
【0025】
図4(b)は、縦切り刃105によってケーブルCBの被覆Tが縦切りされている状態を示す縦断側面図である。下保持体102a側の輪切り刃104aと上保持体102b側の輪切り刃104bとが円形形状に組み合わされた後、更に、縦切り刃保持体103を下保持体102aに近接させると、終には縦切り刃105の一対の刃部105aが二箇所の挟持位置PPの間の領域を横切り、その先端部が下保持体102aに形成された退避孔112に挿入される。この時には、図4(b)に示すように、縦切り刃105の刃部105aはケーブルCBの被覆Tを完全に横切っており、被覆Tを切断している。こうして、ケーブルCBの被覆Tが縦切りされる。
【0026】
図5は、輪切り及び縦輪切りされた後のケーブルCB及び被覆Tの状態を示す図面であり、(a)は縦断側面図、(b)は平面図である。ケーブルCBでは、輪切りされた部分が縦切りされ、輪切りによる被覆Tの破片TF1と縦切りによる被覆Tの破片TF2とが発生する。これらの破片TF1、TF2は、ケーブルストリッパ101から取り外したケーブルCBから自然と脱落し、ケーブルCBの中間部分で導線LLを露出させる。図5(b)を参照することで、ケーブルCBの中間部分で導線LLが露出している様子が良く分かる。こうして、ケーブルCBの中間被覆剥ぎを容易に行なうことができる。
【0027】
以上説明したように、本実施の形態のケーブルストリッパ101によれば、一対の輪切り刃保持体102(下保持体102a、上保持体102b)でケーブルCBを挟持するだけで、輪切り刃104(104a、104b)によるケーブルCBの輪切りを行なうことができる。また、縦切り刃保持体103を下保持体102aに近接させるだけで、縦切り刃105によるケーブルCBの縦切りを行なうことができる。したがって、極めて構造が簡単であり、しかも重量物がないために軽量なケーブルストリッパ101を得ることができ、多くのケーブルCBについてその中間被覆剥ぎを行なった場合に生ずる作業者への負担を大幅に軽減することができる。
【0028】
また、ケーブルストリッパ101では、一対の輪切り刃保持体102(下保持体102a、上保持体102b)と縦切り刃保持体103とは、軸棒107によって同一の軸AXに回動自在に取り付けられている。このため、ケーブルストリッパ101は、ホチキスに類似した構造を有することになり、誰でもが使い慣れているホチキスと同様の操作性でケーブルCBの中間被覆剥ぎを行なうことができる。この面からも、作業性の向上を図ることができる。
【0029】
また、板バネ106は第1の付勢部106aと第2の付勢部106bとを含んでいる。第1の付勢部106aは、下保持体102aに対して上保持体102bを離反方向に付勢する。第2の付勢部106bは、上保持体102bに対して縦切り刃保持体103を離反方向に付勢する。これにより、第1の付勢部106aは下保持体102aと上保持体102bとの間に空間を維持し、第2の付勢部106bは下保持体102aと縦切り刃保持体103との間に空間を維持する。このため、ケーブル空間CSにケーブルCBを位置付けるに際して、また、ケーブル空間CSに位置付けられたケーブルCBの被覆Tを剥ぐために縦切り刃保持体103を下保持体102aに近接させるに際して、それらの作業の作業性が格段に良好になる。
【0030】
加えて、第1の付勢部106aと第2の付勢部106bとの付勢力は、縦切り刃保持体103を下保持体102aに近接させる動作に応じて、二箇所の挟持位置PPの間の領域を縦切り刃105が横切る前に一対の輪切り刃104(104a、104b)が円形形状に組み合わされる関係に設定されている。これにより、一対の輪切り刃104(104a、104b)が円形形状に組み合わされた状態でケーブルCBの被覆Tが完全に輪切りされない場合には、輪切り刃104(104a、104b)に対してケーブルCBを手動回転させることが可能となり、この作業によって被覆Tを完全に輪切りすることができる。
【0031】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態を図6及び図7に基づいて説明する。第1の実施の形体と同一部分は同一符号で示し説明も省略する。
【0032】
図6はケーブルストリッパ101の一例を示す側面図、図7はケーブルストリッパ101の縦断側面図である。本実施の形態は、板バネ106の構造に関する。つまり、本実施の形態では、輪切り刃保持体102の一方をなす上保持体102bの上面に補助板バネ131を固定している。補助板バネ131の固定は、一例として、リベット132による。別の一例として、溶接によって補助板バネ131を上保持体102bの上面に固定するようにしても良い。このような補助板バネ131は、上保持体102bに対して縦切り刃保持体103を離反方向に付勢する付勢力を強める。この意味で、補助板バネ131は、第2の付勢部106bをなす。
【0033】
ここで、第1の付勢部106aと補助板バネ131を含む第2の付勢部106bとの付勢力は、縦切り刃保持体103を下保持体102aに近接させる動作に応じて、二箇所の挟持位置PPの間の領域を縦切り刃105が横切る前に一対の輪切り刃104(104a、104b)が円形形状に組み合わされる関係に設定されている。これにより、一対の輪切り刃104(104a、104b)が円形形状に組み合わされた状態でケーブルCBの被覆Tが完全に輪切りされない場合には、輪切り刃104(104a、104b)に対してケーブルCBを手動回転させることが可能となり、この作業によって被覆Tを完全に輪切りすることができる。
【0034】
しかも、第2の付勢部106bを構成するのに補助板バネ131を用いれば、板バネ106それ自体を工夫して第1の付勢部106aと第2の付勢部106bとの機能を板バネ106それ自体に持たせる必要がなくなる。これにより、板バネ106の構造を単純化することができる。
【0035】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態を図8及び図9に基づいて説明する。第1の実施の形体と同一部分は同一符号で示し説明も省略する。
【0036】
図8はケーブルストリッパ101の一例を示す側面図、図9はケーブルストリッパ101の縦断側面図である。本実施の形態は、輪切り刃保持体102の一方をなす上保持体102bの上面に輪切り操作部151を取り付けた一例である。つまり、上保持体102bの上面には輪切り操作部151をネジ152によって固定し、輪切り刃保持体103の中央部分には輪切り操作部151を挿通させて外部に露出させるための操作部挿通孔153を形成する。
【0037】
このような構造のものは、作業者が輪切り操作部151を持って上保持体102bを下保持体102aに向けて回動させると、二箇所の挟持位置PPの間の領域に縦切り刃105を横切らせることなく、下保持体102aが備える輪切り刃104aと上保持体102bが備える輪切り刃104bとを円形形状に組み合わせることができる。これにより、一対の輪切り刃104(104a、104b)が円形形状に組み合わされた状態でケーブルCBの被覆Tが完全に輪切りされない場合には、輪切り刃104(104a、104b)に対してケーブルCBを手動回転させることが可能となり、この作業によって被覆Tを完全に輪切りすることができる。その後、作業者は、縦切り刃保持体103を下保持体102aに近接させることで、縦切り刃105によってケーブルCBの被覆Tを縦切りすることができる。
【0038】
このように、本実施の形態によれば、第1の付勢部106aと第2の付勢部106bとの付勢力を相違させることで板バネ106によって自動で行なっていた操作を作業者が手動でできるようにした。このため、板バネ106として、第1の付勢部106aと第2の付勢部106bとの付勢力を相違させたような特殊なものを用いる必要がなくなり、板バネ106の構造を単純化することができる。
【符号の説明】
【0039】
102 輪切り刃保持体
103 縦切り刃保持体
104 輪切り刃
105 縦切り刃
106a 第1の付勢部
106b 第2の付勢部
151 輪切り操作部
CB ケーブル
CS ケーブル空間
PP 挟持位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近接離反自在に設けられて被覆剥ぎの対象であるケーブルを少なくともその長手方向に所定距離離間した二箇所の挟持位置で挟持してケーブル空間に位置付ける一対の輪切り刃保持体と、
前記二箇所の挟持位置に位置させて前記一対の輪切り刃保持体のそれぞれに形成され、組み合わされることによって円形形状をなすことで、前記ケーブル空間に位置するケーブルの被覆を前記挟持位置で輪切り可能な二箇所一対の輪切り刃と、
一方の前記輪切り刃保持体を介してもう一方の前記輪切り刃保持体に近接離反自在に設けられている縦切り刃保持体と、
前記縦切り刃保持体に設けられ、前記縦切り刃保持体が前記もう一方の輪切り刃保持体に近接する動作に応じて前記二箇所の挟持位置の間の領域を横切ることで、前記ケーブル空間に位置するケーブルの被覆を前記二箇所の挟持位置の間で縦切り可能な縦切り刃と、
を備えるケーブルストリッパ。
【請求項2】
前記一対の輪切り刃保持体と前記縦切り刃保持体との三者は、同軸に回動自在に取り付けられている、請求項1記載のケーブルストリッパ。
【請求項3】
前記もう一方の輪切り刃保持体に対して前記一方の輪切り刃保持体を離反方向に付勢する第1の付勢部と、
前記一方の輪切り刃保持体に対して前記縦切り刃保持体を離反方向に付勢する第2の付勢部と、
を備える請求項1又は2記載のケーブルストリッパ。
【請求項4】
前記第1の付勢部と前記第2の付勢部との付勢力は、前記縦切り刃保持体を前記もう一方の輪切り刃保持体に近接させる動作に応じて、前記二箇所の挟持位置の間の領域を前記縦切り刃が横切る前に前記輪切り刃が円形形状に組み合わされる関係に設定されている、請求項3記載のケーブルストリッパ。
【請求項5】
前記縦切り刃保持体を変位させることなく前記一対の輪切り刃保持体を近接させる操作を受け付ける輪切り操作部を備える、請求項3記載のケーブルストッパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−220386(P2010−220386A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64286(P2009−64286)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】