説明

ケーブルドラム支持装置

【課題】大小様々なケーブルドラムを対象として、容易な操作でケーブルドラムを回転可能に支持し、ケーブル引出し作業を容易に行うことができるケーブルドラム支持装置を提供すること。
【解決手段】ケーブルドラムAの中心穴A1に回転軸1を挿入し、ケーブルドラムAを回転可能に支持するケーブルドラム支持装置において、ケーブルドラムAを挟んで対向するように1対の回転軸支持台2を立設し、回転軸支持台2に、回転軸1を装着する軸支持部3を高さ方向に複数設置するとともに、回転軸支持台2を昇降可能に支持する昇降機構4を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラム巻きしたケーブルドラムからケーブルを引き出す際に使用するケーブルドラム支持装置に関し、特に、大小様々なケーブルドラムを対象として、容易な操作でケーブルドラムを回転可能に支持し、ケーブル引出し作業を容易に行うことができるケーブルドラム支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ワイヤや電線等のケーブルは、巻芯と側板(フランジ)を備えたケーブルドラムに巻回されており、このケーブルドラムをケーブルドラム支持装置で回転可能に支持することにより、ケーブルの繰り出しを容易にしている。
【0003】
従来、公知のケーブルドラム支持装置としては、1対のジャッキの上部に軸受を備え、ケーブルドラムの巻芯内に挿通し嵌着した横軸を、これらの軸受に螺着することによりケーブルドラムを回転可能に支持する構造としたものがある(特許文献1参照)。
また、ケーブルドラムの巻芯内に横軸を通すことによって回転可能に支持し、ケーブル引出し作業終了時には揺動可能に垂下させた揺動枠が降下し、その制動部がケーブルドラムの側板に接することで慣性回転を停止させる構造としたものもある(特許文献2参照)。
【0004】
上記のような従来のケーブルドラム支持装置は、後者の昇降機構を用いない装置では、ケーブルドラムを横軸に通す際に持ち上げる必要があり、また、前者の昇降機構を用いる装置でも、使用できるケーブルドラムの大きさが昇降機構の大きさ及びストロークによってある程度限定されるという問題があった。
【特許文献1】特開2002−241050号公報
【特許文献2】特開2006−160465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来のケーブルドラム支持装置が有する問題点に鑑み、大小様々なケーブルドラムを対象として、容易な操作でケーブルドラムを回転可能に支持し、ケーブル引出し作業を容易に行うことができるケーブルドラム支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のケーブルドラム支持装置は、ケーブルドラムの中心穴に回転軸を挿入し、該ケーブルドラムを回転可能に支持するケーブルドラム支持装置において、ケーブルドラムを挟んで対向するように1対の回転軸支持台を立設し、該回転軸支持台に、回転軸を装着する軸支持部を高さ方向に複数設置するとともに、回転軸支持台を昇降可能に支持する昇降機構を設けたことを特徴とする。
【0007】
この場合において、回転軸の両端に、該回転軸を回動可能に支持する軸受を設けることができる。
【0008】
また、昇降機構により下降したケーブルドラムの側板と接触し、該ケーブルドラムの回転を制動する滑り止め部材を床側に設けることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のケーブルドラム支持装置によれば、ケーブルドラムの中心穴に回転軸を挿入し、該ケーブルドラムを回転可能に支持するケーブルドラム支持装置において、ケーブルドラムを挟んで対向するように1対の回転軸支持台を立設し、該回転軸支持台に、回転軸を装着する軸支持部を高さ方向に複数設置するとともに、回転軸支持台を昇降可能に支持する昇降機構を設けることから、ケーブルドラムの使用時には、ケーブルドラムの中心穴に回転軸を挿入して回転軸支持台の間に転がし入れ、回転軸を適当な高さの軸支持部に装着し、昇降機構を駆動して回転軸支持台を上昇させるだけで、ケーブルドラムのセッティングが完了する。
このため、大きなケーブルドラムでも容易に支持することができ、また、回転軸支持台に軸支持部を複数設けたことにより、大小様々なケーブルドラムを支持することができる。
これにより、必要な各種ケーブルを巻きつけているケーブルドラムが大小様々である作業現場において、1台のケーブルドラム支持装置でケーブル引出し作業を行うことができ、また、クレーン等がなくても一人で容易にケーブル引出し作業を行うことができる。
【0010】
この場合、回転軸の両端に、該回転軸を回動可能に支持する軸受を設けることにより、軸支持部の構成を簡略にしてコストの低減を図るとともに、回転軸の軸支持部への装着作業を容易にすることができる。
【0011】
また、昇降機構により下降したケーブルドラムの側板と接触し、該ケーブルドラムの回転を制動する滑り止め部材を床側に設けることにより、ケーブル引出し作業の終了時に、回転軸支持台を下降させることによってケーブルドラムの側板と滑り止め部材を接触させ、ケーブルドラムの慣性回転を停止させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明のケーブルドラム支持装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
このケーブルドラム支持装置は、ケーブルドラムAの中心穴A1に回転軸1を挿入し、該ケーブルドラムAを回転可能に支持するものであり、ケーブルドラムAを挟んで対向するように1対の回転軸支持台2を立設し、該回転軸支持台2に、回転軸1を装着する軸支持部3を高さ方向に複数設置するとともに、回転軸支持台2を昇降可能に支持する昇降機構4を設けている。
【0014】
ケーブルドラムAは、電線ケーブル(図示省略)が巻回された所定径の巻芯A2と、巻芯A2のフランジとなる側板A3とを備え、円形をなす側板A3の中心に、回転軸1が挿入される中心穴A1を備えている。
【0015】
回転軸1は、軸支持部3から独立しており、軸本体11には丸鋼を用い、両端の軸支持部3に接する箇所が軸受12によって滑らかに回転するものとしている。
具体的には、回転軸1は取り扱いやすいようにアルミ製とし、両端の回転部分は、軸本体と筒状のアルミ材13との間に樹脂製滑り軸受12を挟むことで、無給油で簡易な構造としている。
【0016】
回転軸支持台2は、ケーブルドラムAを挟んで対向するように柱状のものが1対が立設されており、鉛直方向に昇降できるように、昇降機構4により支持されている。
各回転軸支持台2には、回転軸1を装着する軸支持部3が同じ高さで鉛直方向に複数設置されている。
軸支持部3は、上部が開放されたフック状をなし、これにより、ケーブルドラムAに挿入された回転軸1の着脱を容易にしている。
【0017】
昇降機構4は、回転軸支持台2の下部を昇降可能に支持するガイド部41と、回転軸支持台2の中間部に連結され、回転軸支持台2を昇降駆動する電動油圧シリンダ42とを備えている。
電動油圧シリンダ42は、回転軸支持台2ごとに1台ずつ配設されており、それぞれが同期して動作するとともに、安全のために離れた位置から昇降操作を行えるようにしている。
電動油圧シリンダ42は、上昇ボタンと下降ボタンのみで回転軸支持台2の昇降操作を行うことができ、また、小型の装置で大型のケーブルドラムに対応することができる。
【0018】
一方、昇降機構4が設置されたベース5の下には、昇降機構4により下降したケーブルドラムAの側板A3と接触し、該ケーブルドラムAの回転を制動する滑り止めシート6が配設されている。
このように、ベースや床面に滑り止めシート6を敷き、ケーブルの引出し作業終了時に回転軸支持台2を下降させることにより、ケーブルドラムAの側板A3と滑り止めシート6を接触させ、ケーブルドラムAの慣性回転を停止させることができる。
【0019】
また、ベース5には、ケーブルドラムAの側板A3を外側から押さえ、ケーブルドラムAの左右の移動を規制する1対のガイドローラ7が配設されている。
ガイドローラ7は、ケーブルドラムAが作業中に左右に移動して、昇降機構4や回転軸支持台2に接触することを防止する。
【0020】
また、使用中に軸支持部3から回転軸1が脱落した場合を考慮して、ベース5に着脱可能な安全バー8を設けている。
ベース5は、ケーブルドラムAの搬入・搬出側が開口するコ字状を呈しているが、この安全バー8を装着して段差を設けることにより、ケーブルドラムAが意図せず転がっていくのを防止する。
なお、ケーブルドラムAの搬入・搬出時には、安全バー8を取り外すことにより、ケーブルドラムAの移動を容易にする。
【0021】
以下、電線ケーブルが巻かれているケーブルドラムAから、電線ケーブルを必要分切り取る作業について説明する。
電動油圧シリンダ42の電源を入れる。ケーブルドラムAの中心穴A1に回転軸1を通し、ケーブルドラムAを転がして回転軸支持台2の間に搬入する。
回転軸1が軸支持部3に乗る位置になるようにケーブルドラムAを置き、昇降機構4を動作させ、ケーブルドラムAが床から十分離れるまで回転軸支持台2を上昇させる。
【0022】
次に、ケーブルドラムAから電線ケーブルを必要分引き出し、その後、回転軸支持台2を下降させ、ケーブルドラムAの側板A3と滑り止めシート6を接触させ、ケーブルドラムAの慣性回転を停止させる。
そして、電線ケーブルを切り取った後、回転軸1が軸支持部3から外れるまで回転軸支持台2を下降させ、ケーブルドラムAを転がしてケーブルドラム支持装置から外に搬出し、回転軸1を抜き取って、ケーブルドラムAを元の場所へ転がして戻す。
【0023】
このように、本実施例のケーブルドラム支持装置によれば、ケーブルドラムAの中心穴A1に回転軸1を挿入し、該ケーブルドラムAを回転可能に支持するケーブルドラム支持装置において、ケーブルドラムAを挟んで対向するように1対の回転軸支持台2を立設し、該回転軸支持台2に、回転軸1を装着する軸支持部3を高さ方向に複数設置するとともに、回転軸支持台2を昇降可能に支持する昇降機構4を設けることから、ケーブルドラムAの使用時には、ケーブルドラムAの中心穴A1に回転軸1を挿入して回転軸支持台2の間に転がし入れ、回転軸1を適当な高さの軸支持部3に装着し、昇降機構4を駆動して回転軸支持台2を上昇させるだけで、ケーブルドラムAのセッティングが完了する。
このため、大きなケーブルドラムでも容易に支持することができ、また、回転軸支持台2に軸支持部3を複数設けたことにより、大小様々なケーブルドラムを支持することができる。
これにより、必要な各種ケーブルを巻きつけているケーブルドラムAが大小様々である作業現場において、1台のケーブルドラム支持装置でケーブル引出し作業を行うことができ、また、クレーン等がなくても一人で容易にケーブル引出し作業を行うことができる。
【0024】
この場合、回転軸1の両端に、該回転軸1を回動可能に支持する軸受を設けることにより、軸支持部3の構成を簡略にしてコストの低減を図るとともに、回転軸1の軸支持部3への装着作業を容易にすることができる。
また、昇降機構4により下降したケーブルドラムAの側板A3と接触し、該ケーブルドラムAの回転を制動する滑り止めシート6を床側に設けることにより、ケーブル引出し作業の終了時に、回転軸支持台2を下降させることによってケーブルドラムAの側板A3と滑り止め部材を接触させ、ケーブルドラムAの慣性回転を停止させることができる。
【0025】
以上、本発明のケーブルドラム支持装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のケーブルドラム支持装置は、大小様々なケーブルドラムを対象として、容易な操作でケーブルドラムを回転可能に支持し、ケーブル引出し作業を容易に行うという特性を有していることから、例えば、必要な各種ケーブルを巻きつけているケーブルドラムが大小様々である作業現場において、1台のケーブルドラム支持装置でケーブル引出し作業を行う用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のケーブルドラム支持装置の一実施例を示す側面図である。
【図2】同正面図である。
【図3】同平面図である。
【図4】ケーブルドラムを外した同ケーブルドラム支持装置の側面図である。
【図5】回転軸の一例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0028】
A ケーブルドラム
A1 中心穴
A2 巻芯
A3 側板
1 回転軸
11 軸本体
12 軸受
13 筒状アルミ材
2 回転軸支持台
3 軸支持部
4 昇降機構
41 ガイド部
42 電動油圧シリンダ
5 ベース
6 滑り止めシート
7 ガイドローラ
8 安全バー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルドラムの中心穴に回転軸を挿入し、該ケーブルドラムを回転可能に支持するケーブルドラム支持装置において、ケーブルドラムを挟んで対向するように1対の回転軸支持台を立設し、該回転軸支持台に、回転軸を装着する軸支持部を高さ方向に複数設置するとともに、回転軸支持台を昇降可能に支持する昇降機構を設けたことを特徴とするケーブルドラム支持装置。
【請求項2】
回転軸の両端に、該回転軸を回動可能に支持する軸受を設けたことを特徴とする請求項1記載のケーブルドラム支持装置。
【請求項3】
昇降機構により下降したケーブルドラムの側板と接触し、該ケーブルドラムの回転を制動する滑り止め部材を床側に設けたことを特徴とする請求項1又は2記載のケーブルドラム支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−222425(P2008−222425A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67128(P2007−67128)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】