説明

ケーブルハーネス

【課題】極僅かな配線スペースに配線が可能であり、且つ、スライドを伴う動作に対して優れた耐性を有するケーブルハーネスを提供する。
【解決手段】複数本の電線2からなる電線群3と電線群3の外周を一括して覆う編組スリーブ4とを有するケーブル本体5と、ケーブル本体5の端部に接続された接続端末6とを備えたケーブルハーネス1において、編組スリーブ4は、押し込み回復率が90%以上の高張力体11と高張力体11の表面に巻き付けられた金属条12とからなる編組用素線8を編組して形成されているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機、ノートパソコン、小型ビデオカメラ等の情報通信電子機器(電子機器)の可動部に使用されるケーブルハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機、ノートパソコン、小型ビデオカメラ、携帯情報端末(Personal Digital Assistant:PDA)等の電子機器において、電子機器の操作等を行うための本体部と液晶ディスプレイ等の表示部とを繋ぐ連結部は、折り畳み構造(開閉式)となっている場合が多い。このような構造の連結部の場合、本体部と表示部との間を接続する信号伝送用の配線材には、従来、比較的可撓性があると共に、フラット状で薄型化された電子機器の内部に配置可能なフレキシブルプリント基板(Flexible Printed Circuit:FPC)がよく用いられている。
【0003】
一方、近年の電子機器は、その電子機器の本体部と表示部とが回動式、捻回式に連結された構造のものが採用されるようになった上、信号線から放射される電磁波によって回路間に電磁干渉(Electro-Magnetic Interference:EMI)が生じるのを抑制することが必要とされる。
【0004】
これら回動、捻回を行う可動部に適用される配線材として、複数の細径化された電線(例えば、極細同軸ケーブル)と、高張力繊維糸の表面に銅箔テープをラップ巻きにして形成された複数本の銅箔糸からなり、これら電線の外周を覆う編組スリーブとを有するケーブルハーネスがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1によれば、電線によるインピーダンス整合とEMI特性を確保し、電線に並列に設けた銅箔糸により屈曲、捻回特性を損なうことなく、電線の外部導体の両端でのグランド電位差を軽減することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−24372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年の電子機器では、表示部が本体部に対してスライドするような構造のものが採用されることが多くなってきている。このため、このようなスライドを伴う構造の電子機器に配線される配線材は、表示部と本体部との間で、屈曲しながら配線材自体がスライドするように動作することになる。また、近年の電子機器では、更なる薄型化が急速に求められているのに伴い、表示部と本体部との間に配線される配線材の配線スペースにおいても薄型化が求められている。このため、配線材は、例えば、約3.0mm未満の高さの配線スペースに配線され、可動時にはこの高さの範囲の配線スペース内で屈曲やスライドを伴う動作をさせるような厳しい使用環境となる。
【0008】
ところが、従来のケーブルハーネスでは、屈曲とスライドとを伴う動作についてまで考慮されていないため、編組スリーブで覆われた部分の直進性が弱く、スライドを伴う動作に対する耐性が不十分である。このため、上述した高さの配線スペース内でスライドを伴う動作をさせる配線材として用いることが難しい。仮に配線ができたとしても、スライドを伴う動作がスムーズにできないと言う問題があった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、極僅かな配線スペースに配線が可能であり、且つ、スライドを伴う動作に対して優れた耐性を有するケーブルハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、複数本の電線からなる電線群と前記電線群の外周を一括して覆う編組スリーブとを有するケーブル本体と、前記ケーブル本体の端部に接続された接続端末とを備えたケーブルハーネスにおいて、前記編組スリーブは、押し込み回復率が90%以上の高張力体と前記高張力体の表面に巻き付けられた金属条とからなる編組用素線を編組して形成されているケーブルハーネスである。
【0011】
前記編組用素線は、押し込み回復率が80%以上であると良い。
【0012】
前記金属条は、前記高張力体の表面に突合せ巻きにて螺旋状に巻き付けられると良い。
【0013】
前記高張力体は、引張強度が700MPa以上のPETからなり、前記金属条は、引張強度が700MPa以上の銅合金からなると良い。
【0014】
前記金属条は、表面に錫めっきが施されていると良い。
【0015】
前記高張力体は、単線であると良い。
【0016】
前記金属条は、線状の銅合金線を圧延加工、あるいは引抜加工して形成された銅合金条からなると良い。
【0017】
前記金属条は、前記銅合金線の圧延加工後における引張強度が前記銅合金線の圧延加工前における引張強度よりも大きいと良い。
【0018】
前記金属条は、前記銅合金線の圧延加工後における破断伸びが前記銅合金線の圧延加工前における破断伸びよりも大きいと良い。
【0019】
前記金属条は、銅合金線の圧延加工前における破断伸びに対する前記銅合金線の圧延加工後における破断伸びと前記銅合金線の圧延加工前における破断伸びとの差の割合が10%以上60%以下であると良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、極僅かな配線スペースに配線が可能であり、且つ、スライドを伴う動作に対して優れた耐性を有するケーブルハーネスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るケーブルハーネスを示す側面図である。
【図2】図1のケーブルハーネスの編組スリーブで覆われた部分を示す拡大図である。
【図3】図1のケーブルハーネスの編組スリーブを構成する編組用素線を示す図である。
【図4】押し込み回復率の測定方法を説明する図である。
【図5】実施例におけるスライド試験の方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0023】
図1は、本実施の形態に係るケーブルハーネスを示す側面図である。
【0024】
図1に示すように、本実施の形態に係るケーブルハーネス1は、複数本の電線2からなる電線群3と電線群3の外周を一括して覆う編組スリーブ4とを有するケーブル本体5と、ケーブル本体5の端部に接続された接続端末6とを備える。編組スリーブ4の端部には、機器内のグランド部に電気的に接続されるグランド接続部7が固定される。
【0025】
ここで電線群3に用いる電線2としては、中心導体の外周を絶縁被覆で絶縁された絶縁被覆線の外周に、外部導体とジャケットとを有する同軸ケーブル、あるいはこの同軸ケーブルを複数本用いて形成されたLVDS用4心対角同軸線(Quad-X)や、2心平行同軸ケーブル(Twinaxケーブル)、及びツイストペアケーブルが考えられ、これらの電線の内いずれか一種類のみを複数本集めたもの、又は、少なくとも二種類以上の電線を集めたものを用いることができる。なお、絶縁被覆線のみからなる電線群3を用いる場合には、編組スリーブ4の端部のみを機器のグランド部に電気的に接続する。
【0026】
編組スリーブ4は、導電性の編組用素線8を編組して形成され、その端末においてほどけないようにするための固定部材である粘着テープ9で巻かれて電線群3と共に固定されている。図2に示すように、編組用素線8を複数本用い、電線群3の周囲に所定の内径かつ所定の編組ピッチで、編組用素線8が交差するようにすることで編組用素線8を編組して筒状の編組スリーブ4が構成される。なお、編組用素線8を編組して編組スリーブ4を形成した後、編組スリーブ4の内部に電線群3を挿通させることであってもよい。
【0027】
グランド接続部7は、スライドを行う可動部を有する機器(図示せず)のグランド部に電気的に接続しやすいように、編組用素線8の延長部10が粘着テープ9よりも外側(接続端末6側)に延ばして設けられる。
【0028】
このケーブルハーネス1では、ケーブル本体5の端部に接続された接続端末6が、その接続方向がケーブル本体5の長手方向に直交するように配置されている。電線群3を構成する各電線2は、粘着テープ9の図示左右から左又は右に伸び、接続端末6の各極に対向する位置で1本ずつ略直角(図1では上側)に曲げられて分離され、そのまま真っ直ぐ接続端末6の各極まで伸びている。
【0029】
さて、ケーブルハーネス1は、図3に示すように、押し込み回復率が90%以上の高張力体11と高張力体11の表面に突き合わせ巻きで巻き付けられた金属条12とからなる編組用素線8を編組して編組スリーブ4が形成される。特に、編組スリーブ4に用いる編組用素線8は、押し込み回復率が80%以上であることが好ましい。なお、編組用素線8の押し込み回復率は、高張力体11の表面に巻き付けられる金属条12の巻き付け方法、巻き付ける際のピッチ、厚さ等を適宜調整することにより変更が可能である。
【0030】
ここで、高張力体の押し込み回復率の測定方法について説明する。
【0031】
図4に示すように、(1)真っ直ぐに置いた初期長さL1mm(A点とB点との間の距離)の高張力体40の片側(A点)を固定し、(2)高張力体40の他端(B点)をA点の方向にB’点まで(L2mm=0.9×L1mm)移動させて押し込んだ後、高張力体40の片側(A点)を固定した状態で高張力体40の他端(B’点)の押し込みを解除する。
【0032】
そして、(3)押し込みを解除したことによる弾力で戻された高張力体40の他端の位置(点B’’)から高張力体40の片側(A点)までの直線距離AB’’を押し込み回復長とし、初期長さAB(L1mm)に対する押し込み回復長AB’’の比率を高張力体40の押し込み回復率とする。
【0033】
なお、編組用素線8の押し込み回復率は、上述した高張力体40の押し込み回復率の測定方法と同様にして得られる。
【0034】
高張力体11は、単線であっても良いし、複数本の繊維を束ねたものであっても良い。但し、複数本の繊維を束ねてなる高張力体は柔らかいため、90%以上の押し込み回復率を得るためには、単線の高張力体11に比べて外径を大きくしなければならないことや、複数本の繊維を束ねてなる高張力体は単線の高張力体11に比べて外観が凸凹しており、表面に金属条12を巻き付けた際に金属条12の表面も凸凹になって、ケーブルハーネス1を屈曲させたときに、編組された編組用素線8において金属条12の凸凹な表面同士が擦れてしまうことを考えると、単線であった方がより好ましい。
【0035】
高張力体11の外径は、0.05mm以上0.10mm以下とすることが好ましい。高張力体11の外径が0.05mm未満であると、高張力体11の剛性が弱いため、編組スリーブ4の伸縮弾性が低下し、ケーブルハーネス1を屈曲させたときに、編組スリーブ4の網目が開きやすくなり、容易に電線2の表面が露出して、断線が生じてしまう問題やEMI特性が低下してしまう問題が生じる。また、高張力体11の外径が0.10mmを超える場合、編組スリーブ4の厚さが厚くなるため、ケーブルハーネス1の外径が太くなって、極僅かな高さの配線スペースで屈曲やスライドを行うことが難しくなる。
【0036】
この編組用素線8において、スライドを伴う動作に対する耐性等を考慮すると、高張力体11は、線状に形成された引張強度が700MPa以上のPETやPEEKからなり、金属条12は、線状に形成された引張強度が700MPa以上の銅合金(例えば、99.3Cu−0.7Sn、あるいは99.7Cu−0.3Snの銅合金条)からなると良い。このような材質にすることにより、ケーブルハーネス1を屈曲させたときにその曲げ部で高張力体11や金属条12が断線したりすることを防止できる。なお、金属条には、上記の引張強度を有する断面が円形状の銅合金線に圧延加工あるいは引抜加工を施して断面が略四角形状にしたものが好適である。
圧延などの加工を施して得られる金属条は、銅合金線の圧延加工後における引張強度(σ1)が銅合金線の圧延加工前における引張強度(σ0)よりも大きいことが好ましい。特に、銅合金線の圧延加工前における引張強度(σ0)に対する銅合金線の圧延加工後における引張強度(σ1)と銅合金線の圧延加工前における引張強度(σ0)との差の割合(加工による引張強度の増加率=100×(σ1−σ0)/σ0)が0%より大きく50%以下(0%<100×(σ1−σ0)/σ0≦50%)であると良い。なお、銅線又は銅合金線の圧延加工前における引張強度(σ0)は、300MPa以上であると良い。
また、加工を施して得られる金属条は、銅合金線の圧延加工後における破断伸び(δ1)が銅合金線の圧延加工前における破断伸び(δ0)よりも大きいことが好ましい。特に、銅合金線の圧延加工前における破断伸び(δ0)に対する銅合金線の圧延加工後における破断伸び(δ1)と銅合金線の圧延加工前における破断伸び(δ0)との差の割合(加工による破断伸びの増加率=100×(δ1−δ0)/δ0)が10%以上60%以下(10%≦100×(δ1−δ0)/δ0≦60%)であると良く、20%以上50%以下であるとさらによい。なお、銅線又は銅合金線の圧延加工前における破断伸び(δ0)は、0.50%以上であると良い。
このような引張強度、破断伸びを有する金属条を用いることにより、編組用素線8を編組して形成した編組スリーブに、スライド動作に追従するための剛性(硬さと柔らかさとのバランス)を付与することができる。このため、ケーブルハーネスを極僅かな配線スペースに配線した場合であっても、スライドを伴う動作に対して優れた耐性を効果的に発現することができる。なお、上述した銅合金線の引張強度(σ)および破断伸び(δ)は、JIS規格(JIS Z 2241「金属材料引張試験方法」)に準拠した試験方法によって得られる。
【0037】
また、金属条12は、金属条12の酸化によるシールド特性の劣化等を防止すべく、表面に錫めっきが施される。また、錫めっきにより半田濡れ性を向上させることもできる。
【0038】
金属条12は、高張力体11の表面に突合せ巻きにて(金属条12の側面同士が接するように)螺旋状に巻き付けられると良い。このような構成とすることにより、金属条12の表面に段差のない均一な外観を付与することができるため、ケーブルハーネス1を屈曲させながらスライドさせたときに、電線2のジャケット(外部被覆)との擦れ摩擦を低減することができる。これにより、狭いスペースでの金属条12の断線へ達するまでの寿命を上げ、20万回以上のスライド動作に耐えることができる。なお、図3では、編組用素線8が高張力体11上に金属条12を巻き付けたものからなることを明確となるよう、便宜上、金属条12の側面同士が接触しない状態とした。
【0039】
金属条12の厚さは、0.005mm以上0.013mm未満であると良い。金属条12の厚さが0.005mm未満であると、金属条12の導体抵抗が大きいため、低周波(100MHz以下)での編組スリーブ4のEMI特性が十分とは言えず、また、電子機器筐体との擦れ等で金属条12が断線してしまう虞がある。金属条12の厚さが0.013mm以上であると、金属条12の剛性が強くなり、高張力体11への巻き付けが難しくなる。また、編組用素線8が太くなってしまうので、極僅かな高さの配線スペースで屈曲やスライドを行うことが難しくなる。
【0040】
この編組用素線8は、外径が0.13mm以下であり、電線2は、外径が0.27mm以下であることが好ましい。通常、電線2(同軸ケーブル)が50本使用されることから、電線2の1本当たりの外径を0.27mm以下、編組用素線8の1本当たりの外径を0.13mm以下とすることにより、ケーブルハーネス1を高さ3.0mm未満の狭い配線スペースに配線することができる。
【0041】
このような構成の編組スリーブ4を用いることにより、ケーブルハーネス1に高い直進性と可撓性を付与することができるため、極僅かな高さの配線スペースにおいてケーブルハーネス1を20万回以上繰り返しスライドさせても断線が生じないようにすることができる。
【0042】
また、高張力体11の高い剛性によって編組スリーブ4全体がバネのように伸縮弾性を持つことができ、スライドを伴う可動部において編組スリーブ4の網目が開きにくく、ケーブルハーネス1のEMI特性が低下しにくい(従来と同等のEMI特性を得られる)。
【0043】
また、編組スリーブ4と電線2のジャケットが直接接触された可動部においても、ジャケットと金属条12との擦れによるジャケット割れが発生しにくくなる。
【0044】
以上要するに、複数本の電線からなる電線群と前記電線群の外周を一括して覆う編組スリーブとを有するケーブル本体と、前記ケーブル本体の端部に接続された接続端末とを備え、前記編組スリーブは、押し込み回復率が90%以上の高張力体と前記高張力体の表面に巻き付けられた金属条とからなる編組用素線を編組して形成されているケーブルハーネス1とすることにより、極僅かな配線スペースに配線が可能となり、且つ、20万回以上のスライド動作が可能であるケーブルハーネスを提供することができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例を説明する。本実施例では、以下の方法にて、スライド特性の評価を行った。
【0046】
なお、試料に用いた電線としては、外径0.02mmの銅合金線を7本より合わせて形成された中心導体の外周に、PFAからなる絶縁被覆(厚さ0.05mm)が形成されており、この絶縁被覆の外周に、複数本の錫めっき銅合金線(外径0.025mm、引張強度700MPa)を螺旋状に横巻きして形成された外部導体と、外部導体の周囲に形成されたPFAからなるジャケットとを有する同軸ケーブル(外径0.27mm)を用いた。
【0047】
また、編組スリーブとしては、表1に示す押し込み回復率を有するPETからなる線状の高張力体(外径0.08mm、引張強度800MPa)の外周に、断面が円形状の銅合金線(外径0.05mm)に圧延加工を施して断面が略四角形状である錫めっき銅合金(99.7Cu−0.3Sn、引張強度σ0:800MPa、σ1:840MPa、破断伸びδ0:1.08%、δ1:1.44%)からなる金属条(厚さ0.012mm)を突き合わせ巻きで巻き付けして形成された表1に示す押し込み回復率を有する編組用素線(外径0.104mm)を複数本用意し、これらの編組用素線を交差するように編組して形成したものを用いた。
【0048】
先ず、電線(同軸ケーブル)を編組スリーブに挿入した外径約1.5mmの試料を作製し、約2.0mmの高さの配線スペース内に試料を配線した後、図5に示すように、この試料50の片端を固定し、固定していない他端をスライド内幅15mmになるように曲げ、ストローク長は60mmとし、矢印(1)、(2)の順で1サイクル(1回)として、U字スライドの動作をさせた。
【0049】
試験速度は、単位時間に行われるサイクルの回数が30回/分とする。また、ケーブルに常時数Vの電圧を加え、電流値が試験開始時に比べて20%低下した時点をケーブルの寿命とし、試料50が何サイクルで寿命となるかを求めた。その結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
本試験においては、スライド回数が20万回以上のものを「○:合格」、20万回未満のものを「×:不合格」とした。
【0052】
表1に示す通り、高張力体の押し込み回復率が90%以上である実施例1〜2では、スライド回数は20万回以上をクリアしていることが判る。
【0053】
一方、高張力体の押し込み回復率が85%(90%未満)である比較例1では、スライド回数は20万回を大きく下回っていた。
【0054】
従って、高張力体の押し込み回復率は90%以上が望ましい。
【0055】
以上より、本発明によれば、複数本の電線からなる電線群と前記電線群の外周を一括して覆う編組スリーブとを有するケーブル本体と、前記ケーブル本体の端部に接続された接続端末とを備え、前記編組スリーブは、押し込み回復率が90%以上の高張力体と前記高張力体の表面に巻き付けられた金属条とからなる編組用素線を編組して形成されているケーブルハーネスとしたことにより、極僅かな配線スペースに配線が可能であり、且つ、スライドを伴う動作に対して優れた耐性を有するケーブルハーネスを提供することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 ケーブルハーネス
2 電線
3 電線群
4 編組スリーブ
5 ケーブル本体
6 接続端末
8 編組用素線
11 高張力体
12 金属条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の電線からなる電線群と前記電線群の外周を一括して覆う編組スリーブとを有するケーブル本体と、前記ケーブル本体の端部に接続された接続端末とを備えたケーブルハーネスにおいて、
前記編組スリーブは、押し込み回復率が90%以上の高張力体と前記高張力体の表面に巻き付けられた金属条とからなる編組用素線を編組して形成されていることを特徴とするケーブルハーネス。
【請求項2】
前記編組用素線は、押し込み回復率が80%以上である請求項1に記載のケーブルハーネス。
【請求項3】
前記金属条は、前記高張力体の表面に突合せ巻きにて螺旋状に巻き付けられる請求項1又は2に記載のケーブルハーネス。
【請求項4】
前記高張力体は、引張強度が700MPa以上のPETからなり、前記金属条は、引張強度が700MPa以上の銅合金からなる請求項1〜3のいずれかに記載のケーブルハーネス。
【請求項5】
前記金属条は、表面に錫めっきが施されている請求項1〜4のいずれかに記載のケーブルハーネス。
【請求項6】
前記高張力体は、単線である請求項1〜5のいずれかに記載のケーブルハーネス。
【請求項7】
前記金属条は、線状の銅合金線を圧延加工、あるいは引抜加工して形成された銅合金条からなる請求項1〜6のいずれかに記載のケーブルハーネス。
【請求項8】
前記金属条は、前記銅合金線の圧延加工後における引張強度が前記銅合金線の圧延加工前における引張強度よりも大きい請求項7に記載のケーブルハーネス。
【請求項9】
前記金属条は、前記銅合金線の圧延加工後における破断伸びが前記銅合金線の圧延加工前における破断伸びよりも大きい請求項7に記載のケーブルハーネス。
【請求項10】
前記金属条は、銅合金線の圧延加工前における破断伸びに対する前記銅合金線の圧延加工後における破断伸びと前記銅合金線の圧延加工前における破断伸びとの差の割合が10%以上60%以下である請求項9に記載のケーブルハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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