説明

ケーブル挿通管内への動物侵入防止具

【課題】ケーブルの管内への取り入れ口からネズミ等の動物の侵入を確実の防止することができながらも、管内の点検を簡単に行えるとともに、管内に他所から侵入したり、管内結露した水分がたまるのを防止することができるケーブル挿通管内への動物侵入防止具を提供できるようにする。
【解決手段】ケーブルを走らせた管の開口部に装着して当該開口部を蓋することにより動物の侵入を防止する管内への動物侵入防止具であって、開口部を蓋する動物侵入防止具が、弾性並びに通気性を有するとともに、当該動物侵入防止具の少なくとも一部にカプサイシン等からなる動物忌避剤が設けて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線ケーブルや光ファイバーケーブルの挿通管内に動物が進入して巣くったり、管内の電線ケーブルや光ファイバーケーブルを齧ったりするのを防止するためのケーブル挿通管内への動物侵入防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電線ケーブルや通信用の光ケーブルは、側道部分にピットを設けこのピットに配管したケーブル挿通管に電線や通信用光ケーブル等をまとめて挿通したり、隧道等の暗渠にブラケットを介して配線用の管を敷設し、この管の中に電線ケーブルや通信用の光ケーブル(以下単にケーブルと言う)をまとめて走らせたりしている。
こうしたケーブルを走らせた管内への取り入れ口取り出し口等の開口部からネズミやアブラムシ等の動物が侵入して巣くったり、ケーブルを齧ったりするのを防止するために、一般的には当該開口部分のパテやシリコンコーキングなどを充填して閉塞するようにしている。
【0003】
上記のパテで開口部を閉塞する場合、パテの劣化や収縮により隙間を生じやすく、耐久性に問題があり、小さな動物の侵入を防止することができないという問題があった。
また、シリコンコーキングで開口部を閉塞した場合、シリコンコーキングがやわらかいことから、ネズミなどに簡単に齧られてしまうという問題や、管内の点検を行う場合、シリコンコーキングを取り除く作業に手間がかかるうえ、シリコンコーキングは気密性ならびに水密性が高いことから他所から侵入したり結露した水分がたまりやすいという問題があった。
【0004】
そこで、こうした問題にマイクロカプセル化した忌避剤を含んだ二液性硬質ウレタン発泡体をケーブルの管内への取り入れ口に充填させるようにしたものが先に提案されている(特許文献1)。
ところが、この先の提案にかかるものでは、管内の点検を行う場合、シリコンコーキングを取り除く作業に手間がかかるという問題やシリコンコーキングは気密性ならびに水密性が高いことから他所の隙間から侵入したり、ケーブル挿通管内で結露した水分がたまりやすいという問題が依然として残されており、実施するのに問題がある。
【特許文献1】特開平7−223907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題点に鑑み提案されたもので、ケーブルの管内への取り入れ口からネズミ等の動物の侵入を確実の防止することができながらも、管内の点検を簡単に行え、管内に他所から侵入したり、結露した水分がたまるのを防止することができるとともに、既存のケーブル挿通管にも簡単に装着可能なケーブル挿通管内への動物侵入防止具を提供できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明にかかるケーブル挿通管内への動物侵入防止具は、ケーブルを走らせた管の開口部に装着して当該開口部を蓋することにより動物の侵入を防止する管内への動物侵入防止具であって、開口部を蓋する動物侵入防止具が、弾性並びに通気性を有するとともに、当該動物侵入防止具の少なくとも一部にカプサイシン等からなる動物忌避剤が設けられていることを最も主要な特徴とするものである。
【0007】
本発明にかかるケーブル挿通管内への動物侵入防止具では、電線を挿通した管の開口部から導出された電線部分を、動物侵入防止具が跨いだ状態に装着するために、一端が解放されたスリットを動物侵入防止具に形成したことや、動物侵入防止具が、繊維をからみ合わせてなるフィルター状のものであって、当該動物侵入防止具に貼着するネットを形成する繊維の少なくとも一部の繊維に動物忌避剤を含有させたこと、さらに、動物侵入防止具が、繊維をからみ合わせてなるフィルター状のものであって、当該繊維の少なくとも一部に動物忌避剤を含有させるようにしたことも特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかるケーブル挿通管内への動物侵入防止具は、ケーブルを走らせた管の開口部に装着して開口部を蓋する動物侵入防止具が、弾性並びに通気性を有するとともに、当該動物侵入防止具の少なくとも一部にカプサイシン等からなる動物忌避剤を設けるようにしてあるので、例えばネズミ等の動物が動物侵入防止具を齧って管内に侵入しようとするとき、カプサイシン等からなる動物忌避剤を舐めたり、齧ったりすることになり、その辛さによってそれ以上齧ることができなくなる。これにより、動物等の管内への侵入を確実の防止することができる。
【0009】
また、本発明にかかるケーブル挿通管内への動物侵入防止具が、弾性を有していることから、ケーブルを走らせた管の開口部への着脱を簡単に行うことができ、管内の点検や動物侵入防止具の交換等の作業を簡単に行うことができる利点もある。
しかも、本発明にかかるケーブル挿通管内への動物侵入防止具が、弾性を有していることにより、径の異なるケーブル挿通管にも対応させることができるのはもちろんのこと、形状が例えば楕円や四角等の異形のケーブル挿通管にも対応させることができる利点もある。
【0010】
さらに本発明にかかるケーブル挿通管内への動物侵入防止具が通気性を有していることから、動物侵入防止具を縮径させることにより、管内に他所から侵入したり、結露した水分を外部に排出したり、蒸散させたりすることができる。これにより、管内に水や水分がたまるのを無くしてケーブルの腐食や漏電、あるいは水分等の浸入によるノイズの発生等の事故をなくすことができる利点もある。
【0011】
加えて、本発明にかかるケーブル挿通管内への動物侵入防止具において、一端が解放されたスリットを動物侵入防止具に形成し、電線を挿通した管の開口部から導出された電線部分を跨がせるように形成したものでは、上記効果に加えて既存・既設のケーブルを走らせた管内への取り入れ口への装着が簡単に行える利点がある。
【0012】
さらに、本発明にかかるケーブル挿通管内への動物侵入防止具において、動物侵入防止具が、繊維をからみ合わせてなるフィルター状のものであって、当該動物侵入防止具に貼着するネットを形成する繊維の少なくとも一部の繊維に動物忌避剤を含有させるようにしたものでは、動物忌避剤の使用量を可及的に少なくすることができ、安価に実施することができる利点がある。
【0013】
また、本発明にかかるケーブル挿通管内への動物侵入防止具において、動物侵入防止具が、繊維をからみ合わせてなるフィルター状のものであって、当該繊維の一部に動物忌避剤を含有させるようにしたものでは、紫外線等で表面部分の動物忌避剤が劣化しても、動物侵入防止具の内部の動物忌避剤により、動物忌避効果が維持されるので耐久性を大幅に向上させる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係るケーブル挿通管内への動物侵入防止具の最も好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1はケーブル挿通管1のケーブル2の管内への出し入れ口(開口部)3と、この取り出し口3に装着される本発明に係る動物侵入防止具4の分解斜視図である。
ケーブル挿通管1は塩化ビニルまたは金属からなる管体5で形成され、図示は省略したが隧道等の天井から吊り下げ金具あるいはブラケットで壁面に支持されており、ケーブル挿通管1の内方には複数の電線ケーブルや通信用の光ケーブル等のケーブル2が束ねられた状態で設けられている。
【0015】
上記動物侵入防止具4は、厚みの厚い円盤状に形成された本体部分6と、この本体部分6と同形状に形成され、本体部分6に貼着されて一体化される動物侵入防止部分7とから成る。
本体部分6は、繊維を絡めてフィルター状乃至不織布またはフェルト状に形成することにより通気性と弾性を有している。
ここでいう弾性は、本体部分6の全体の形状が収縮、拡大可能な弾力性をいう。
そして、この本体部分6には図1に示すように、一端(下端)8aが開口する1条のスリット8が形成されている。
このスリット8は本例では図2に示すように本体部分の径Dに対して2/3の長さに形成してある。
尚、上記スリット8は、動物侵入防止具4の製造時に必ずしも必要とするものではない。
つまり、現場においてケーブルの2の太さにあわせてカッターやハサミ等でスリット8を形成することができるからである。
【0016】
一方、動物侵入防止部分7は、図3に示すようにポリエチレン樹脂からなる繊維9で網状に形成され、前記本体部分6と同径で同じ長さのスリット10が形成されており、この網状に編成されるときに動物侵入防止機能が付与される。
即ち、図3に示すように複数のポリエチレン樹脂からなる繊維9a・9b・9cが縦横に並べられ、その交差部分11が結束されて網状に編成される繊維の内、本例では例えば少なくとも1本の繊維9bの中にカプサイシンからなる動物忌避剤を混練したものを用いて交織することにより動物侵入防止機能が付与されている。
【0017】
ちなみに、本例における動物侵入防止具4を製造する一例を説明しておくと、まず、図4に示すように繊維を絡めて形成されたシート状の素材12の一面(図においては上面)に、上記したにカプサイシンからなる動物忌避剤を混練した繊維9bを用いて交織してなるシート状の網13を貼着する。
このシート状の網13を、繊維を絡めて形成されたシート状の素材12の一面に貼着する場合、当該シート状の網13の上記シート状素材12側の面にPVA等の糊剤を塗布し、この糊剤でシート状の網13を素材12に接合したり、シート状の網13の一部を熱溶着して行うようにしたりすることができる。この場合、シート状の網13を編成する繊維の一部に熱溶融接着繊維をいれておくことが望ましい。
シート状の網13と素材12が接合されると、次に所定の円形とスリットを形成するための刃を有する打ち抜き装置(図示せず)により、所定の円形に打ち抜かれて動物侵入防止具4が形成される。
【0018】
上記のようにして形成された動物侵入防止4をケーブル挿通管1のケーブル2の管体5内への出し入れ口3に装着する手順を次に説明する。
まず、動物侵入防止具4のスリット8の開口する一端8a部分を開き、ケーブル2の上方から動物侵入防止具4が跨ぐように被せつける。
次に被せつけた動物侵入防止具4をその周囲から押圧して縮径させ、動物侵入防止部分7が外側になるようにして管体5からのケーブル2の出し入れ口3部分に挿入した後、縮径させていた動物侵入防止具4を弾性復帰させると、図5に示すように動物侵入防止具4は、ケーブル2の管体5の出し入れ口3部分に広がり、当該開口部を閉塞する。
これにより動物侵入防止具4のケーブル挿通管1のケーブル2の出し入れ口3への装着が完了する。
【0019】
斯くして、ケーブル2の管体5内への出し入れ口3に動物侵入防止具4が装着されると、ここから侵入しようとする例えばネズミ等の動物は、動物侵入防止具4の網状の動物侵入防止部分7を齧ろうとする。
このとき当該動物侵入防止部分7を形成する繊維9bに混練したカプサイシンに触れてその辛さにしびれ、以後当該部分に齧りついたり、寄りついたりしなくなる。
また、動物侵入防止具4は、繊維を絡めて形成された本体部分6と網状の動物侵入防止部分7で形成されていることから、本体部分6を形成する絡んだ繊維による毛細管現象と通気性とが相俟って、ケーブル挿通管1内に他所から侵入したり、結露した水分を速やかに外部に排出したり、蒸散させたりすることができる。
因みに、上記した本例ではケーブル挿通管1を図上、円形にしてあるが、本発明にかかる動物侵入防止具4が、弾性を有していることにより、径の異なるケーブル挿通管にも対応させることができるのはもちろんのこと、形状が例えば楕円や四角等の異形のケーブル挿通管にも大きめの動物侵入防止具4を収縮させれば装着させることができる。
【0020】
尚、上記実施の形態では、動物侵入防止具4の動物侵入防止部分7を本体部分6の一面に貼着するようにしてあるがこうしたものに限られず、本体部分6の全周面に動物侵入防止部分7を設けることも可能である
また、上記実施の形態のように動物侵入防止部分7を本体部分6の一面に貼着して動物侵入具を形成するものに変えて、本体部分6を形成する繊維若しくはその一部に動物忌避剤を混入するようにすれば、本体部分6の一面に貼着する網状の動物侵入防止部分7は省略することができる。
この場合、本体部分6が動物侵入防止部分7を兼ねることになる。
さらに、上記実施の形態では、動物侵入防止具4の本体部分6が、繊維を絡めたフィルター状乃至不織布またはフェルト状に形成するようにしてあるが、こうしたものに限られず、例えば目の粗い連続発泡の素材(図示せず)を動物侵入防止具4の本体部分6に使用することができる。
この場合にも、目の粗い連続発泡の素材中に動物忌避剤を混入するようにすれば、上気したのと同様に、本体部分6の一面に貼着する網状の動物侵入防止部分7は省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】はケーブル挿通管のケーブルの管の開口部に装着される本発明に係る動物侵入防止具の分解斜視図である。
【図2】は本発明にかかる動物侵入防止具の正面図である。
【図3】は本発明にかかる動物侵入防止具を形成する動物侵入防止部分の斜視図である。
【図4】は本発明にかかる動物侵入防止具を形成する過程の斜視図である。
【図5】は本発明にかかる動物侵入防止具の使用状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0022】
1・・・ケーブル挿通管
2・・・ケーブル
3・・・開口部(出し入れ口)
4・・・動物侵入防止具
6・・・本体部分
7・・・動物侵入防止部分
8・・・スリット
8a・・・スリットの一端
9・・・繊維
10・・・動物侵入防止部分のスリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルを走らせた管の開口部に装着して当該開口部を蓋することにより動物の侵入を防止する管内への動物侵入防止具であって、開口部を蓋する動物侵入防止具が、弾性並びに通気性を有するとともに、当該動物侵入防止具の少なくとも一部にカプサイシン等からなる動物忌避剤が設けられていることを特徴とするケーブル挿通管内への動物侵入防止具。
【請求項2】
電線を挿通した管の開口部から導出された電線部分を、動物侵入防止具が跨いだ状態に装着するために、一端が解放されたスリットを動物侵入防止具に形成したことを特徴とする請求項1に記載のケーブル挿通管内への動物侵入防止具。
【請求項3】
動物侵入防止具が、繊維をからみ合わせてなるフィルター状のものであって、当該動物侵入防止具に貼着するネットを形成する繊維の少なくとも一部の繊維に動物忌避剤を含有したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のケーブル挿通管内への動物侵入防止具。
【請求項4】
動物侵入防止具が、繊維をからみ合わせてなるフィルター状のものであって、当該繊維の少なくとも一部に動物忌避剤を含有させたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のケーブル挿通管内への動物侵入防止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−273365(P2009−273365A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124485(P2008−124485)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(391045646)
【出願人】(599052484)
【出願人】(591092992)
【Fターム(参考)】