説明

ケーブル接続構造及び連結金具

【課題】2つのケーブルを簡潔かつ容易に接続することができ、破損が生じにくいため1つのケーブルを他のケーブルに対して確実に固定することが可能なケーブル接続構造及び連結金具を提供すること。
【解決手段】水平に又は傾斜して配置された第1のケーブル90と、鉛直下方向に引張力が作用した第1のケーブルと異なる第2のケーブル92とを備え、第1のケーブルの上部を被覆して第1のケーブルに支持される支持部114と、第1のケーブルに載置されたとき、第1のケーブルの軸方向に対して垂直方向に位置する支持部の両端からそれぞれ下方向に延設し、第2のケーブルと接続されるケーブル連結部118とを有する連結金具100とを更に備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル接続構造及び連結金具に関し、少なくとも2つのケーブルを連結して好適なケーブル接続構造及び連結金具に関する。
【背景技術】
【0002】
吊り構造物、例えば吊り橋等は、主ケーブルが主塔、柱材などの主構造体に支持される。そして、主ケーブルと吊りケーブルが連結金具を介して連結され、吊りケーブルが桁部材等の構成要素を吊りながら支持する。
【0003】
主ケーブルと吊りケーブルとを連結する連結金具については、例えば、特許文献1及び2に開示されている。特許文献1及び2の連結金具は、主ケーブルの長手方向に長い部材であり、主ケーブルにボルト結合によって取り付けられ、下部で吊りケーブルと接続されて吊りケーブルを吊持する。
【0004】
図1及び図2を参照して、従来の連結金具10について説明する。図1は、従来の連結金具10を示す斜視図である。図2は、従来の連結金具10を示す分解斜視図であり、図1の連結金具10を分解して各構成要素を上方から見た図である。
【0005】
連結金具10は、例えば、対向して設置される1対の固定部材12A、12Bと、ボルト22と、ナット24と、ワッシャー26と、ピン32などからなる。固定部材12A、12Bは、主ケーブル90にボルト結合で取り付けられる。連結金具10は、固定部材12A、12Bに設けられた連結部14で、ピン32を介して吊りケーブル92と接続される。なお、固定部材12A、12Bは、例えば鋼製の部材であり、主ケーブル90や吊りケーブル92は、例えば鋼製のワイヤーロープである。
【0006】
【特許文献1】特開平11−323824号公報
【特許文献2】特開2002−371515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、図1及び図2で示した連結金具10は、固定部材12A、12Bが、主ケーブル90断面の上下方向に割れるように互いに対向しており、吊りケーブル92は固定部材12A、12Bに挟持されたピン32によって支持されている。そのため、固定部材12A、12Bのボルト結合が外れると、ピン32も外れ、吊りケーブル92が主ケーブル90から脱落してしまうという問題があった。
【0008】
更に、固定部材12A、12Bは、主ケーブル90に対して移動しないように固定される必要がある。従来の連結金具10では、固定部材12A、12Bと主ケーブル90との間は摩擦力で固定されている。従って、固定部材12A、12Bは、摩擦力が発生するように、主ケーブル90を締め付けている。
【0009】
このとき、主ケーブル90に所定の締め付け圧力が与えられなければならないため、固定部材12A、12Bは弾性設計となる。即ち、固定部材12A、12Bがボルト結合の締め付けで降伏すると、所定の締め付け圧力を与えることができない。そのため、固定部材12A、12Bが降伏しないように、固定部材12A、12Bは厚く形成されている。
【0010】
また、ボルト結合の締め付けが強いと、固定部材12A、12Bから主ケーブル90の接触表面に高い締め付け圧力(側圧)が加わってしまう。従って、固定部材12A、12Bが主ケーブル90を傷めないように側圧を下げる必要がある。そのため、固定部材12A、12Bは、主ケーブル90と接触する面が主ケーブル90の長手方向に長くなければならなかった。上記の理由により、従来の連結金具10は、容量が大きく、かつ重量が重かった。
【0011】
更に、主ケーブル90は、構造物に設置される前、ねじれた状態にある。従って、主ケーブル90に複数の吊りケーブル92を吊るす場合、通常、吊り方向を一定にするためには、主ケーブル90のねじれをほどくか、主ケーブル90に予め長手方向に沿ってマーキングを施しておいてマーキングを基準に吊り方向を一定にする必要があった。そして、これらの手順を経ることで従来の連結金具を設置することができるため、連結金具の接地に手間がかかるという問題があった。
【0012】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、2つのケーブルを簡潔かつ容易に接続することができ、破損が生じにくいため1つのケーブルを他のケーブルに対して確実に固定することが可能な、新規かつ改良されたケーブル接続構造及び連結金具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、水平に又は傾斜して配置された第1のケーブルと、鉛直下方向に引張力が作用した第1のケーブルと異なる第2のケーブルとを備え、第1のケーブルの上部を被覆して第1のケーブルに支持される支持部と、第1のケーブルに載置されたとき、第1のケーブルの軸方向に対して垂直方向に位置する支持部の両端からそれぞれ下方向に延設し、第2のケーブルと接続されるケーブル連結部とを有する連結金具とを更に備えることを特徴とする、ケーブル接続構造が提供される。
【0014】
上記連結金具は、第1のケーブルに載置されたとき、第1のケーブルの軸方向に対する垂直断面形状が、逆U字型であってもよい。
上記連結金具は、支持部とケーブル連結部とが一体的に形成されてもよい。
上記連結金具は、第1のケーブルに対して回転可能であってもよい。
【0015】
上記連結金具は、支持部が、第1のケーブルに面する内部面において、中央付近が第1のケーブルの軸方向端部に比べて第1のケーブル側に膨出して形成され、第1のケーブルに支持されてもよい。
【0016】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、水平に又は傾斜して配置された第1のケーブルの上部を被覆して第1のケーブルに支持される支持部と、第1のケーブルに載置されたとき、第1のケーブルの軸方向に対して垂直方向に位置する支持部の両端からそれぞれ下方向に延設し、鉛直下方向に引張力が作用した第1のケーブルと異なる第2のケーブルと接続されるケーブル連結部とを備えることを特徴とする連結金具が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、2つのケーブルを簡潔かつ容易に接続することができ、破損が生じにくいため1つのケーブルを他のケーブルに対して確実に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態に係るケーブル接続構造について説明する。
図3は、本実施形態に係る連結金具100を示す斜視図である。図4は、本実施形態に係る連結金具100を示す側面図であり、図3の連結金具を左側から見た図である。図5は、本実施形態に係る連結金具100を示す正面図である。図6は、本実施形態に係る連結金具100を示す断面図であり、連結金具100の中央で、主ケーブル90の長さ方向(軸方向)に対して垂直方向に切断した図である。図7は、本実施形態に係る連結金具100を示す断面図であり、連結金具100の中央で、取り付け時に主ケーブル90の長さ方向と平行となる方向に切断した図である。
【0020】
本発明の第1の実施形態に係るケーブル接続構造は、主ケーブル90(第1のケーブル)と、吊りケーブル92(第2のケーブル)と、連結金具100などからなる。
【0021】
主ケーブル90や吊りケーブル92は、例えば鋼製のワイヤーロープであり、複数の鋼線が撚られたロープである。主ケーブル90は、吊り構造物、例えば吊り橋等における主塔、柱材などの主構造体に支持され、水平に又は傾斜して配置される。主ケーブル90の表面は、通常、鋼線が撚られたことによる螺旋状の凹凸が形成されている。吊りケーブル92は、本実施形態の連結金具100を介して主ケーブル90と接続され、吊り構造体の桁部材等の構成要素を吊持する。吊りケーブル92には、鉛直下方向に引張力が作用する。
【0022】
本実施形態の連結金具100は、例えば、主ケーブル90と被覆するように接触し主ケーブル90に支持される支持部114と、吊りケーブル92と接続されるケーブル連結部118と、ピン142、ピン止め部材144などからなる。連結金具100は、例えば、鋼製部材である。連結金具100は、表面処理がされてもよい。表面処理には、例えば、電気めっき、無電解めっき、溶融亜鉛めっきなどによるめっき処理、溶射処理などがある。連結金具100が表面処理されることによって、主ケーブル90と連結金具100との摩擦抵抗が増加する。
【0023】
連結金具100の支持部114及びケーブル連結部118は、例えば一体的に形成される。支持部114及びケーブル連結部118は、例えば、平板部材を加工して図3〜図7に示すような形状に形成されてもよいし、鋳造又は削り出し等の加工方法によって形成されてもよい。連結金具100は、ケーブル連結部118で、ピン142を介して吊りケーブル92と接続される。
【0024】
支持部114は、例えば半筒形状であり、取り付け時、半筒の内部側で主ケーブル90と接触する。なお、支持部114の形状は、半筒形状に限定されず、外部側は曲面ではなく、多角形柱を軸方向と平行に切断した形状でもよい。支持部114は、主ケーブル90に載置されたとき、主ケーブル90の軸方向に対して垂直方向に位置する両端でケーブル連結部118と接続される。支持部114は、ケーブル連結部118を介して伝達される吊りケーブル92からの荷重を、主ケーブル90で支持する。
【0025】
ケーブル連結部118は、例えば平面状である。ケーブル連結部118は、連結金具100が主ケーブル90に載置されたとき、主ケーブル90の軸方向に対して垂直方向に位置する支持部114の両端から下方向に延設する。ケーブル連結部118は、中央付近に貫通したピン用穴119が形成される。ケーブル連結部118は、ピン142にかかる吊りケーブル92からの荷重を支持し、その荷重を上方の支持部114に伝達する。ケーブル連結部118は、2つ設けられ、互いに対向して配設される。
【0026】
ピン142、ピン止め部材144は、互いに組み合わされて、吊りケーブル92を支持する。ピン142は、ケーブル連結部118に形成されたピン用穴119を貫通する。吊りケーブル92の端部はトヨロック方式の端部加工がされており、ピン142が吊りケーブル92で形成された輪とピン用穴119を貫通することで、吊りケーブル92がケーブル連結部118と接続される。
【0027】
上記のとおり、本実施形態のケーブル接続構造は、主ケーブル90と、鉛直下方向の引張力が作用した吊りケーブル92と、主ケーブル90と吊りケーブル92を接続する連結金具100からなる。図5に示すように、主ケーブル90が水平に配置されているとき、連結金具100には、吊りケーブル92によって鉛直下方向に引張力が作用している。そのため、連結金具100は、主ケーブル90上で滑らない。
【0028】
また、図8に示すように、主ケーブル90が傾斜している場合でも、傾斜角度や吊りケーブル92によって作用する鉛直下方向の引張力の大きさによっては、連結金具100は、主ケーブル90上で滑らない。図8は、本実施形態に係る連結金具100を示す正面図である。即ち、連結金具100は、主ケーブル90の傾斜に合わせて下方向に滑ろうとするが、吊りケーブル92によって下方向に引っ張られている。そして、連結金具100に作用する下向きの引張力によって、連結金具100と主ケーブル90との間には摩擦力が発生する。従って、連結金具100は、傾斜角度や引張力の大きさによって、主ケーブル90上で滑らない。その結果、本実施形態の連結金具100を有するケーブル接続構造は、従来と同様に、吊り構造を有する構造物に適用できる。
【0029】
また、本実施形態のケーブル接続構造に用いられる連結金具100は、図1及び図2で示した従来の連結金具10と異なり、ボルト結合を行っていない。図1及び図2に示すような従来の連結金具10は、主ケーブル90断面の上下方向に割れるように互いに対向し、吊りケーブル92を挟持する固定部材12A、12Bからなる。そのため、固定部材12A、12Bのボルト結合が外れると、吊りケーブル92も脱落してしまった。一方、本実施形態によれば、連結金具100は、ボルト結合を使用していない。そして、連結金具100は、主ケーブル90の軸方向に対する垂直断面形状が、逆U字型を有しており、主ケーブル90をまたぐように主ケーブル90に設置される。また、連結金具100は、連結金具100の下端部側で吊りケーブル92が接続され、主ケーブル90を囲む構成となる。そのため、本実施形態では、連結金具100や吊りケーブル92が、主ケーブル90から脱落することはない。
【0030】
また、連結金具100は、主ケーブル90の周囲を回動することができる。その結果、連結金具100の設置を従来比べて簡潔かつ迅速に行うことができる。即ち、例えば、主ケーブル90は、構造物に設置される前、ねじれた状態にある。従って、主ケーブル90に複数の吊りケーブル92を吊るす場合、通常、吊り方向を一定にするためには、主ケーブル90のねじれをほどくか、主ケーブル90に予め長手方向に沿ってマーキングを施しておいてマーキングを基準に吊り方向を一定にする必要があった。そして、これらの手順を経ることで従来の連結金具10を設置することができた。
【0031】
一方、本実施形態によれば、連結金具100は主ケーブル90の周囲を回動するので、固定金具100は主ケーブル90のねじれと関係なく主ケーブル90と接続することができる。従って、連結金具100の設置を従来比べて簡潔かつ迅速に行うことができる。
【0032】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係るケーブル接続構造について説明する。
図9は、本実施形態に係る連結金具200を示す斜視図である。図10は、本実施形態に係る連結金具200を示す分解斜視図であり、図9の連結金具200を分解して各構成要素を上方から見た図である。
また、図11は、本実施形態に係る連結金具200を示す側面図であり、図9の連結金具を左側から見た図である。図12は、本実施形態に係る連結金具200を示す正面図である。図13は、本実施形態に係る連結金具200を示す断面図であり、連結金具200の中央で、主ケーブル90の長さ方向(軸方向)に対して垂直方向に切断した図である。
【0033】
本発明の第2の実施形態に係るケーブル接続構造は、主ケーブル90と、吊りケーブル92と、連結金具200などからなる。本実施形態の連結金具200は、例えば、固定部材210と、2つの固定部材120と、ボルト132、ナット134、ワッシャー136、138と、ピン142、ピン止め部材144などからなる。固定部材210、120は、ボルト結合によって主ケーブル90に取り付けられる。固定部材210、120は、例えば、平板部材を加工して図9〜図13に示すような形状に形成されてもよいし、鋳造又は削り出し等の加工方法によって形成されてもよい。連結金具200は、固定部材210のケーブル連結部218で、ピン142を介して吊りケーブル92と接続される。
【0034】
ここで、主ケーブル90や吊りケーブル92は、例えば鋼製のワイヤーロープであり、複数の鋼線が撚られたロープである。主ケーブル90は、吊り構造物、例えば吊り橋等における主塔、柱材などの主構造体に支持される。主ケーブル90の表面は、通常、鋼線が撚られたことによる螺旋状の凹凸が形成されている。吊りケーブル92は、本実施形態の連結金具200を介して主ケーブル90と接続され、吊り構造体の桁部材等の構成要素を吊持する。
【0035】
以下、連結金具200の各構成要素について詳細に説明する。
固定部材210は、板状の鋼製部材である。固定部材210は、例えば、ボルト132が接続される接続部212と、主ケーブル90と被覆するように接触し主ケーブル90に支持される支持部214と、吊りケーブル92と接続されるケーブル連結部218とに分けることができる。
【0036】
接続部212は、例えば平面状であり、中央付近に貫通したボルト締結用穴216が形成される。接続部212は、本実施形態では、固定部材210の端部の両端に、支持部214と接続されて2つずつ設けられており、合計4つ設けられる。接続部212は、固定部材120の接続部122と対向して配置される。接続部212は、ボルト結合による締め付け力を支持部214に伝達する。
【0037】
支持部214は、例えば半筒形状であり、取り付け時、半筒の内部側で主ケーブル90と接触する。支持部214は、更に、支持領域214Aと連結領域214Bに分けられる。
【0038】
支持領域214Aは、両側で接続部212と接続される。支持領域214Aは、固定部材210がボルト結合によって締め付けられると、主ケーブル90の表面に沿って塑性変形する。支持領域214Aは、ボルト結合の締め付けによって塑性変形する板厚で構成されている。例えば、図9〜図13に示す例では、直径約40mmの主ケーブル90に対し、支持領域214Aの板厚は約10mmである。なお、本発明はこのサイズに限定されない。主ケーブル90の表面には、鋼線が撚られたことによる螺旋状の凹凸が形成されているため、支持領域214Aは、主ケーブル90の凹凸に沿った形状で塑性変形する。その結果、支持領域214Aが主ケーブル90の凹部に入り込み、結果的に固定部材210が主ケーブル90に固定される。支持領域214Aの主ケーブル90に接続される前の形状は、塑性変形による部材の伸長を考慮した長さであるとよい。
【0039】
連結領域214Bは、主ケーブル90に載置されたとき、主ケーブル90の軸方向に対して垂直方向に位置する両端でケーブル連結部218と接続される。連結領域214Bは、ケーブル連結部218を介して伝達される吊りケーブル92からの荷重を、主ケーブル90で支持する。
【0040】
ケーブル連結部218は、例えば平面状である。ケーブル連結部218は、連結金具100が主ケーブル90に載置されたとき、主ケーブル90の軸方向に対して垂直方向に位置する支持部114の両端から下方向に延設する。ケーブル連結部218は、中央付近に貫通したピン用穴119が形成される。ケーブル連結部218は、ピン142にかかる吊りケーブル92からの荷重を支持し、その荷重を上方の支持部214に伝達する。ケーブル連結部218は、2つ設けられ、互いに対向して配設される。
【0041】
固定部材120は、板状の鋼製部材である。固定部材120は、例えば、ボルト132が接続される接続部122と、主ケーブル90と接触する支持部124とに分けることができる。
【0042】
接続部122は、例えば平面状であり、中央付近に貫通したボルト締結用穴126が形成される。接続部122は、本実施形態では、固定部材120の両側に、支持部124と接続されて2つずつ設けられる。接続部122は、固定部材210の接続部212と対向して配置される。接続部122は、ボルト結合による締め付け力を支持部124に伝達する。
【0043】
支持部124は、例えば半筒形状であり、取り付け時、半筒の内部側で主ケーブル90と接触する。支持部124は、両側で接続部122と接続される。支持部124は、固定部材210の支持領域214Aと同様に、固定部材120がボルト結合によって締め付けられると、主ケーブル90の表面に沿って塑性変形する。支持部124は、ボルト結合の締め付けによって塑性変形する板厚で構成されている。支持部124は、主ケーブル90の凹凸に沿った形状で塑性変形する。その結果、支持部124が主ケーブル90の凹部に入り込み、結果的に固定部材120が主ケーブル90に固定される。
【0044】
ボルト132、ナット134、ワッシャー136、138は、それぞれ組み合わされて、固定部材210、120をボルト結合する。ボルト132は、ボルト締結用穴216、126を貫通する。本実施形態では、4箇所でボルト結合される。ボルト結合による締め付け力で、固定部材210、120を塑性変形させる。
【0045】
ピン142、ピン止め部材144は、互いに組み合わされて、吊りケーブル92を支持する。ピン142は、ケーブル連結部218に形成されたピン用穴119を貫通する。吊りケーブル92の端部はトヨロック方式の端部加工がされており、ピン142が吊りケーブル92で形成された輪とピン用穴119を貫通することで、吊りケーブル92がケーブル連結部218と接続される。
【0046】
上記の通り、支持領域214A、支持部124が塑性変形することによる固定方法は、摩擦力以外の支持力でも固定部材210を支持することになる。そのため、従来の連結金具のように摩擦力のみで主ケーブル90を締め付ける場合に比べて、部材を薄くすることができる。例えば、図1、図2に示す従来の例では、塑性変形しないように固定部材12A、12Bが構成される必要があるため、直径約40mmの主ケーブル90に対し、例えば固定部材12A、12Bの板厚は約25mmであった。これに対して、本実施形態の固定部材210、120は、例えば約10mmでよい。また、摩擦力のみで固定する場合に比べて、締め付け圧力を低減することができるため、固定部材210、120は主ケーブル90の長さ方向に長くする必要がない。
【0047】
また、本実施形態のケーブル接続構造に用いられる連結金具200は、連結領域214Bとケーブル連結部218が一体的に形成されて、連結領域214Bとケーブル連結部218は、主ケーブル90の軸方向に対する垂直断面形状が、逆U字型を有しており、主ケーブル90をまたぐように主ケーブル90に設置される。
【0048】
一方、図1及び図2に示すような従来の連結金具10は、主ケーブル90断面の上下方向に割れるように互いに対向し、吊りケーブル92を挟持する固定部材12A、12Bからなる。そのため、固定部材12A、12Bのボルト結合が外れると、吊りケーブル92も脱落してしまった。一方、本実施形態によれば、連結金具100は、ボルト132が破損などにより脱落したとしても、連結金具200は、主ケーブル90をまたぐように主ケーブル90に設置される。また、連結金具200は、連結金具200の下端部側で吊りケーブル92が接続され、主ケーブル90を囲む構成となる。そのため、本実施形態では、連結金具100や吊りケーブル92が、主ケーブル90から脱落することはない。
【0049】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係るケーブル接続構造について説明する。
図14は、本実施形態に係る連結金具300を示す正面図である。図15は、本実施形態に係る連結金具300を示す断面図であり、連結金具300の中央で、取り付け時に主ケーブル90の長さ方向と平行となる方向に切断した図である。
【0050】
本発明の第3の実施形態に係るケーブル接続構造は、主ケーブル90と、吊りケーブル92と、連結金具300などからなる。本実施形態の連結金具300は、支持部317とケーブル連結部318と、ピン142、ピン止め部材144などからなる。
【0051】
連結金具300は、図14及び図15に示すように、支持部317の主ケーブル90の軸方向の両端部側が、主ケーブル90への取り付け時の上部に反った形状(鞍型の形状)を有している。支持部317は、主ケーブル90に面する内部面において、中央付近が主ケーブル90の軸方向(長さ方向)端部に比べて主ケーブル90側に膨出して形成され、主ケーブル90に支持される。また、ケーブル連結部318は、一端は支持部317と接続され、他端は吊りケーブル92と接続される。
【0052】
これにより、連結金具300が主ケーブル90に取り付けられたとき、連結金具300の主ケーブル90に対する角度を自由に決定することができる。例えば、主ケーブル90は、ある勾配を持って構造体と接続される場合が多い。従って、従来の連結金具では、吊りケーブル92を垂直に下ろすため、勾配に応じた複数の型が用意される場合があった。一方、本実施形態によれば、図10に示すような簡潔な構成で、主ケーブル90の勾配に対応することができる。従って、勾配に応じた複数の型を用意する必要がなく、1つの形状のみを用意しておけばよい。
【0053】
また、本実施形態によれば、取り付け時、主ケーブル90は、支持部317の膨出形状によって屈曲して変形するため、連結金具300は、主ケーブル90に対して摩擦力により滑らずに固定される。更に、図1及び図2に示すような従来の連結金具10は、主ケーブル90断面の上下方向に割れるように互いに対向し、吊りケーブル92を挟持する固定部材12A、12Bからなる。そのため、固定部材12A、12Bのボルト結合が外れると、吊りケーブル92も脱落してしまった。一方、本実施形態によれば、連結金具300は、鞍型形状を有しているため、固定部材210、220のボルト結合が外れたとしても、連結金具300から吊りケーブル92が脱落することはない。
【0054】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0055】
上記実施形態では、吊りケーブル92の端部はトヨロック方式の端部加工がされているが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、吊りケーブル92の端部は、ソケット方式又はシングルロック方式の端部加工がされてもよい。このとき、ケーブル連結部の形状は、それぞれの端部加工に応じた形状となるが、詳細な説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】従来の連結金具を示す斜視図である。
【図2】従来の連結金具を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る連結金具を示す斜視図である。
【図4】同実施形態に係る連結金具を示す側面図である。
【図5】同実施形態に係る連結金具を示す正面図である。
【図6】同実施形態に係る連結金具を示す断面図である。
【図7】同実施形態に係る連結金具を示す断面図である。
【図8】同実施形態に係る連結金具を示す正面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る連結金具を示す斜視図である。
【図10】同実施形態に係る連結金具を示す分解斜視図である。
【図11】同実施形態に係る連結金具を示す側面図である。
【図12】同実施形態に係る連結金具を示す正面図である。
【図13】同実施形態に係る連結金具を示す断面図である。
【図14】本発明の第3の実施形態に係る連結金具を示す正面図である。
【図15】同実施形態に係る連結金具を示す断面図である。
【符号の説明】
【0057】
90 主ケーブル
92 吊りケーブル
100,200,300 連結金具
114,214,124,317 支持部
118,218,318 ケーブル連結部
119,219,319 ピン用穴
120,210 固定部材
122,212 接続部
126,216 ボルト締結用穴
132 ボルト
134 ナット
136,138 ワッシャー
142 ピン
144 ピン止め部材
214A 支持領域
214B 連結領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平に又は傾斜して配置された第1のケーブルと、
鉛直下方向に引張力が作用した前記第1のケーブルと異なる第2のケーブルと
を備え、
前記第1のケーブルの上部を被覆して前記第1のケーブルに支持される支持部と、
前記第1のケーブルに載置されたとき、前記第1のケーブルの軸方向に対して垂直方向に位置する前記支持部の両端からそれぞれ下方向に延設し、前記第2のケーブルと接続されるケーブル連結部と
を有する連結金具と
を更に備えることを特徴とする、ケーブル接続構造。
【請求項2】
前記連結金具は、前記第1のケーブルに載置されたとき、前記第1のケーブルの軸方向に対する垂直断面形状が、逆U字型であることを特徴とする、請求項1に記載のケーブル接続構造。
【請求項3】
前記連結金具は、前記支持部と前記ケーブル連結部とが一体的に形成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のケーブル接続構造。
【請求項4】
前記連結金具は、前記第1のケーブルに対して回転可能であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のケーブル接続構造。
【請求項5】
前記連結金具は、前記支持部が、前記第1のケーブルに面する内部面において、中央付近が前記第1のケーブルの軸方向端部に比べて前記第1のケーブル側に膨出して形成され、前記第1のケーブルに支持されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のケーブル接続構造。
【請求項6】
水平に又は傾斜して配置された第1のケーブルの上部を被覆して前記第1のケーブルに支持される支持部と、
前記第1のケーブルに載置されたとき、前記第1のケーブルの軸方向に対して垂直方向に位置する前記支持部の両端からそれぞれ下方向に延設し、鉛直下方向に引張力が作用した前記第1のケーブルと異なる第2のケーブルと接続されるケーブル連結部と
を備えることを特徴とする、連結金具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−18994(P2010−18994A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180094(P2008−180094)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(000003528)東京製綱株式会社 (139)
【Fターム(参考)】