説明

ケーブル接続構造

【課題】ケーブルを保持した複数個の金具を電子機器の筐体外壁にネジ止め固定する際に、金具が占有するスペースを最小限に抑えて効果的に取り付けることを可能にする。
【解決手段】ケーブル接続スペースS内に配置される略長方形を有した少なくとも2個の略同サイズのケーブル接続金具10と、を有し、平行姿勢にある所定個数のケーブル接続金具を、ケーブル接続スペースの長辺、又は短辺と平行な姿勢で配置した場合には各接続金具をスペース内に配置できない場合に、平行姿勢にある所定個数のケーブル接続金具を、ケーブル接続スペースの長辺、又は短辺の何れとも平行とならない傾斜姿勢にて配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル接続構造の改良に関し、例えばオーディオ機器、通信機器、OA機器等の各種電子機器に信号を供給するフライリードケーブルを当該電子機器に省スペースにて接続するためのケーブル接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オーディオ機器、通信機器、OA機器等の各種電子機器に電気信号を供給するフライリードケーブルは、通常、電子機器の筐体の背面に設けた挿入穴から機器内部に挿入されて内部のプリント基板等と接続される。
従来、電子機器の背面板等に設けた挿入穴内にフライリードケーブルを挿入固定するための方法として、ケーブルを保持したブッシュを挿入穴に差込み固定する方法(特許文献1)や、ケーブルをカシメ固定した金具を縦又は横向きで背面板等にネジ固定する方法が用いられている。
しかし、ブッシュによる固定方法の場合、静電気等の逃げ道であるグランドの確保をするためにグランドリード線を追加する必要があるためにケーブルの保持力が弱くなり、一定以上の引っ張り荷重をケーブルに加えると、ブッシュから引き抜けてしまうことがあり、品質が安定しなかった。また、ケーブル保持力を高めるための補強構造を採用するとすれば、部品点数の増大、構造の複雑化によりコストがアップする虞があった。ブッシュは特定の線径を有したケーブルの専用ブッシュとならざるを得なかったため、ブッシュを製造する金型を線径の異なるケーブル毎に用意する必要があり、製造、管理すべき部品点数が増大してコスト高となっている。
この為、最近ではブッシュタイプの欠点を有していない金具カシメタイプが主流となってきている。
【0003】
図12(a)(b)は夫々従来の金具カシメタイプによるフライリードケーブルの係止構造を示す説明図であり、電子機器の背面を示している。
電子機器100の筐体(シャーシ)101は板金から成る外壁102を備えており、外壁102の背面板102aにはフライリードケーブルCを機器内部に挿入するための挿入穴102bが形成されている。フライリードケーブルCは、金具105によって背面板102aに固定される。金具105は、フライリードケーブルCを保持するケーブル保持部106と、取付け穴107aを有した取付け部107と、を備え、背面板102aに形成したネジ穴102cに対してネジ108を用いて取付け部107が締結固定される。
しかしながら、金具105は短辺と長辺を有した略長円形状を有しており、限られたスペースS内に2個以上の金具を近接配置する必要がある場合、各金具毎にネジ固定をする為のスペースが更に必要となり、スペースS内の配置したい箇所に必要な個数の金具を配置できないといった不具合が生じていた。
【0004】
例えば、図13(a)では水平姿勢とした2個の金具105を上下位置関係で平行に配置しているが、金具の一部がスペースS外へはみ出してしまい、2個の金具を設置できなくなる。また、図13(b)のように垂直姿勢とした2個の金具105を横方向に平行に配置したい場合にも同様にスペースSから金具105の一部がはみ出すことがある。
このように限られたスペース内に二個以上の金具を水平な姿勢、或いは垂直な姿勢にして配置した場合には当該スペースからはみ出すことが多々あった。
このように従来のネジ止めによる金具は、筐体外壁の限られたスペースを占有する面積が大きくなるため、レイアウト自由度を低下させるという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−299819公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように従来は、電子機器の筐体を構成する板金製外壁に設けた挿入穴からフライリードケーブルを引き込んで固定する際に、金具を用いてフライリードケーブルを保持しつつ外壁にネジ止めしていたため、金具をネジ止めするためのスペースを外壁に確保する必要があった。このため、ケーブルを保持した複数個を近接状態で上記スペース内に配置しようとすると、金具の一部がスペース外にはみ出し、組付け不能となる虞があった。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、ケーブルを保持した複数個の金具を電子機器の筐体外壁にネジ止め固定する際に、金具が占有するスペースを最小限に抑えて効果的に取り付けることを可能にしたケーブル接続構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、電子機器の外面に設けた略長方形のケーブル接続スペースと、該ケーブル接続スペース内に配置される略長方形、略長円形、或いは楕円形を有した少なくとも2個の略同サイズのケーブル接続金具と、を有したケーブル接続構造であって、前記各ケーブル接続金具は、その長手方向一端寄りに前記ケーブル接続スペースに設けた被締結部と締結される締結部を備えると共に、長手方向他端寄りにはケーブルを接続する接続部を備え、平行姿勢にある所定個数の前記ケーブル接続金具を、前記ケーブル接続スペースの長辺、又は短辺と平行な姿勢で配置した場合には前記各接続金具を前記ケーブル接続スペース内に配置できない場合に、前記ケーブル接続スペース内には共通利用される前記被締結部を少なくとも一個備え、複数の前記ケーブル接続金具の各締結部を重ねた状態で、前記被締結部に締結したことを特徴とする。
電子機器の外壁に設けた挿入穴からケーブルを引き込んで固定するために金具を用いてケーブルを保持しつつ外壁にネジ止めする場合に、金具を外壁にネジ止めするためのスペースを外壁に確保する必要があるが、ケーブル接続スペースの形状、サイズと、金型の形状、サイズ、本数との関係で、ケーブルを保持した複数個の金具を近接状態で上記スペース内に配置しようとすると、金具の一部がスペース外にはみ出し、組付け不能となることがあった。本発明では、共通の単一の被締結部に対して、複数個のケーブル接続金具の締結部を重ねた状態で螺子止め固定するようにしたので、金具が占有するスペースを最小限に抑えて、少ない労力によって効果的に取り付けることが可能となる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、2個の前記ケーブル接続金具をV字状に配置したことを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1において、2個の前記ケーブル接続金具を直線状に配置したことを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか一項において、前記ケーブル接続金具は、前記接続部を有した金具本体と、該金具本体の一端部から該金具本体と略平行に突出した板状部を含む前記締結部と、を有し、前記締結部は、前記板状部と、該板状部に形成された締結穴と、該板状部の外側端縁から屈曲した屈曲小片と、該板状部の内側端縁に形成された切欠き部と、を備え、一方の前記ケーブル接続金具の締結部を、他方の前記ケーブル接続金具の締結部に重ねた際に、一方の締結部の屈曲小片が他方の締結部の切欠き部内に嵌合するように構成されていることを特徴とする。
締結部の板状部に屈曲小片と切欠き部を設けたので、複数のケーブル接続金具の締結部同士を重ねた際に屈曲小片を切欠き部内に嵌合させて位置決めすることが可能となる。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1乃至3の何れか一項において、前記ケーブル接続金具は、前記接続部を有した金具本体と、該金具本体の一端部から該金具本体と略平行に突出した板状部を含む前記締結部と、を有し、前記締結部は、前記板状部と、該板状部に形成された締結穴と、該締結穴の周縁に沿って該板状部の一面に突設された環状突部と、該締結穴の周縁に沿って該板状部の他面に形成された環状凹部と、を備え、一方の前記ケーブル接続金具の締結部を、他方の前記ケーブル接続金具の締結部に重ねた際に、一方の前記環状突部が他方の環状凹部内に嵌合するように構成されていることを特徴とする。
締結部の板状部に環状突部と環状凹部を設けたので、複数のケーブル接続金具の締結部同士を重ねた際に環状突部を環状凹部に嵌合させて位置決めすることが可能となる。
請求項6の発明は、請求項1乃至3の何れか一項において、前記ケーブル接続金具は、前記接続部を有した金具本体と、該金具本体の一端部から該金具本体と略平行に突出した板状部を含む前記締結部と、を有し、前記締結部は、前記板状部と、該板状部に形成された締結穴と、該板状部の外側端縁と該締結穴との間に形成された位置決め凹所と、該位置決め凹所の外面に形成された外側突所と、該板状部の内側端縁に形成された切欠き部と、を備え、一方のケーブル接続金具の締結部を、他方のケーブル接続金具の締結部に重ねた際に、一方の締結部の外側突所が他方の締結部の切欠き部内に嵌合するように構成されていることを特徴とする。
締結部の板状部に位置決め凹所と外側突所を設けたので、複数のケーブル接続金具の締結部同士を重ねた際に位置決め凹所内に外側突所を嵌合させて位置決めすることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明によれば、ケーブル接続スペース内に金具が占有するスペースを最小限に抑えて効果的に取り付けることが可能となる。
また、ケーブル接続金具の一端に設けた締結部同士を重ねた状態で電子機器側に螺子止めできるように構成したので、ケーブル接続金具をV字状等の交差状態、或いは直線状に配置することが可能となる。この際、一本の螺子により複数のケーブル接続金具を接続できるので、省スペース化と、部品点数の削減、並びに作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るケーブル接続構造を示す機器背面図、及び側面図である。
【図2】ケーブル接続金具の一例の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係るケーブル接続構造を示す機器背面図、及び側面図である。
【図4】ケーブル接続金具の他の配置例を示す説明図である。
【図5】(a)乃至(d)は締結部の構成を示す平面図、左側面図、断面図、及び締結部同士の接続状態を示す断面図である。
【図6】締結部の構成を示す斜視図である。
【図7】(a)(b)及び(c)は締結部の構成を示す平面図、左側面図、及び断面図である。
【図8】締結部の構成を示す斜視図である。
【図9】(a)(b)及び(c)は他の実施形態に係る締結部の構成を示す平面図、断面図、及び締結部を重ねる直前状態の拡大断面図である。
【図10】締結部の構成を示す斜視図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係るケーブル接続金具の締結部の構成を示す斜視図である。
【図12】(a)及び(b)は従来例の説明図である。
【図13】(a)及び(b)は他の従来例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るケーブル接続構造を示す機器背面図、及び側面図である。
本実施形態に係るケーブル接続構造1は、電子機器の筐体を構成する板金製外壁に設けた挿入穴からフライリードケーブルを引き込んで固定する際に、金具を用いてフライリードケーブルを保持しつつ外壁にネジ止めする際に使用するケーブル接続金具の配置構造に関するものである。
本発明のケーブル接続構造1は、オーディオ機器、OA機器等々の電子機器2の外側面(本例では背面=シャーシ)3に設けられた横長で略長方形のケーブル接続スペースSと、ケーブル接続スペースS内に配置される略長円形を有した少なくとも2個の略同サイズのケーブル接続金具10と、を有している。なお、本例では、略長円形状のケーブル接続金具10を例示したが、略長方形、或いは楕円形であってもよい。
ケーブル接続スペースSは、電子機器の矩形の背面3の角隅部に設けた段差部に相当する横長矩形の領域に極限されており、このスペース内に2個のケーブル接続金具10をはみ出すことなく配置する必要がある。
【0013】
ケーブル接続金具10は、図2の斜視図に示すように板金製であり、ケーブルの端部を機器内部に挿入するための挿入穴を含んだ接続部11と、接続部11の一端縁から延びる板状部16を含む締結部15と、を有している。締結部15は、板状部16と、板状部16に設けた締結穴17と、を有し、締結穴17はケーブル接続スペースSに設けた被締結部(螺子穴)と連通した状態で図示しない螺子によって締結される。
本実施形態におけるケーブル接続スペースSの形状(サイズ)と、ケーブル接続金具10の形状(サイズ)との関係は、図13(a)及び(b)のように、互いに平行な2個のケーブル接続金具10を、ケーブル接続スペースSの長辺、又は短辺と平行な姿勢(水平姿勢、又は垂直姿勢)で配置した場合には、各接続金具をケーブル接続スペースSの範囲内に配置し切れない状態となっている。
【0014】
本発明では上記の如き形状、面積を有したケーブル接続スペースS内に2個のケーブル接続金具10を完全に収容し得るようにするために、略平行な位置関係にある2個のケーブル接続金具10を、ケーブル接続スペースSの長辺、又は短辺の何れとも平行とならない傾斜姿勢にてケーブル接続スペース内に配置している。
このように平行に配置された2個のケーブル接続金具10を略長方形状を有したケーブル接続スペースSの長辺、或いは短辺の何れとも平行とならない傾斜姿勢にて配置したので、限られたスペース内に2個のケーブル接続金具を配置することが可能となる。
なお、上記実施形態では2個のケーブル接続金具を配置する例を示したが、3個以上のケーブル接続金具をケーブル接続スペース内に配置する場合にも本発明の構成をそのまま適用することができる。
【0015】
次に、図3は本発明の他の実施形態に係るケーブル接続構造を示す機器背面図、及び側面図である。
この実施形態に係るケーブル接続構造1は、電子機器2の外側面3に設けた略長方形のケーブル接続スペースSと、ケーブル接続スペースS内に配置される略長方形(略長円形、楕円形を含む)を有した少なくとも2個のケーブル接続金具10と、を有している。
各ケーブル接続金具10は、その長手方向一端寄りにケーブル接続スペースに設けた被締結部と締結される締結部15を備えると共に、長手方向他端寄りにはケーブルを接続する接続部11を備えている。
本実施形態におけるケーブル接続スペースSの形状(サイズ)と、ケーブル接続金具10の形状(サイズ)との関係は、図13(a)及び(b)の場合と同様に、互いに平行な2個のケーブル接続金具10を、ケーブル接続スペースSの長辺、又は短辺と平行な姿勢(水平姿勢、又は垂直姿勢)で配置した場合には、各接続金具をケーブル接続スペースSの範囲内に配置し切れない状態となっている。
本発明では上記の如き形状、面積を有したケーブル接続スペースS内に2個のケーブル接続金具10を完全に収容し得るようにするために、ケーブル接続スペース内には共通利用される単一の被締結部(螺子穴)を設け、2個のケーブル接続金具の各締結部15を重ねた状態で、単一の被締結部に締結するように構成している。
【0016】
図3の例においては、単一の被締結部としての螺子穴に対して、各締結穴17が連通するように各板状部16を重ねた状態で、螺子穴と各締結穴17内に図示しない螺子を締結することにより機器背面に対してケーブル接続金具10を固定する。
図3の例では、2個のケーブル接続金具10をV字状に配置しており、ケーブル接続金具を交差させて取り付けることで、更に少ない面積を有したケーブル接続スペース内に効率よく配置することが可能となる。また、機器の外側面3に二本のケーブルを接続するに際して使用する螺子の本数を減らして部品代、組付け工数を低減することが可能となる。なお、組み立て工数の削減が可能となったことで製品トータルのコストダウンも可能となった。
或いは、一個の螺子を用いて共通の被締結部(螺子穴)に対して2個のケーブル接続金具の締結部を螺子止めする構成を採用することにより、図4のように2個のケーブル接続金具をケーブル接続スペースSの長手方向に沿って直線状に配置することも可能となる。
【0017】
このように2つのケーブル接続金具を直線状に配置する場合、締結部15の構成として、図5(a)乃至(d)、並びに図6に示した如き構成を採用してもよい。即ち、図5(a)乃至(d)は締結部の構成を示す平面図、左側面図、断面図、及び締結部同士の接続状態を示す断面図であり、図6は締結部の構成を示す斜視図である。
本実施形態に係るケーブル接続金具10は、図示しないケーブルを挿入する穴を含む接続部11を有した金具本体12と、金具本体の一端部から一旦上方に延びてから金具本体と平行に突出したL字状の板状部16を含む締結部15と、を備えている。締結部15は、板状部16と、板状部に形成された締結穴17と、板状部の外側端縁中央部から90度下方へ屈曲して形成された位置決め用の屈曲小片18と、板状部の内側端縁中央部から金具本体にかけて形成された切欠き部19と、を備え、(d)に示すように一方のケーブル接続金具の締結部(板状部)を、他方のケーブル接続金具の締結部(板状部)に重ねた際に、一方の締結部の屈曲小片18が他方の締結部の切欠き部19内に嵌合するように構成されている。
【0018】
金具本体12は環状の外枠12aの内部に接続部11を配置した構成を有している。接続部11はケーブル端部を電気機器の外壁に設けた挿入穴に連通させつつケーブルを保持する構成を備えている。
締結部15を構成する板状部16は、金具本体12の一端縁を図5の上方に向けてL字状に突出させることにより形成されており、屈曲小片18と切欠き部19とは対向した位置関係にある。従って、図5(d)のように締結穴17同士を連通させた状態で一方のケーブル接続金具の板状部16上に他方のケーブル接続金具を重ねた際に、各接続金具の屈曲小片18が相手方の接続金具の切欠き部19内に嵌合して脱落、位置ずれが防止される。しかも、直線状に配置される2つのケーブル接続金具10の合計長を最短とすることができる。
【0019】
次に、図7(a)(b)及び(c)は締結部の構成を示す平面図、左側面図、及び断面図であり、図8は締結部の構成を示す斜視図である。
本実施形態に係るケーブル接続金具10は、接続部11を有した金具本体12と、金具本体の一端部から金具本体と平行に突出した板状部16を含む締結部15と、を備えている。締結部15は、板状部16と、板状部に形成された締結穴17と、板状部の外側端縁の角隅部から下方へ90度屈曲して形成された位置決め用の屈曲小片18と、板状部の内側端縁の角隅部から金具本体にかけて形成された切欠き部19と、を備え、一方のケーブル接続金具の締結部を、他方のケーブル接続金具の締結部に重ねた際に、一方の締結部の屈曲小片18が他方の締結部の切欠き部19内に嵌合するように構成されている。
この実施形態に係るケーブル接続金具が図5、図6の実施形態と異なる点は、屈曲小片18と切欠き部19が板状部16の中央部ではなく一方の端部に偏った位置(対角位置)にある点であり、一方の金具の屈曲小片18と他方の金具の切欠き部19が互いに嵌合可能な構成を有している点では、上記実施形態と同様である。
【0020】
金具本体12は環状の外枠12aの内部にケーブル接続、保持用の接続部11を配置した構成を有している。
締結部15を構成する板状部16は、金具本体12の一端縁を図7の上方に向けてL字状に突出させることにより形成されており、屈曲小片18と切欠き部19とは対角線上に対向した位置関係にある。従って、締結穴17同士を連通させた状態で一方のケーブル接続金具の板状部16上に他方のケーブル接続金具を重ねた際に、各接続金具の屈曲小片18が相手方の接続金具の切欠き部19内に嵌合して脱落、位置ずれが防止される。しかも、直線状に配置される2つのケーブル接続金具10の合計長を最短の長さとすることができる。
【0021】
次に、図9(a)(b)及び(c)は他の実施形態に係る締結部の構成を示す平面図、断面図、及び締結部を重ねる直前状態の拡大断面図であり、図10は締結部の構成を示す斜視図である。
この実施形態に係るケーブル接続金具10は、接続部11を有した金具本体12と、金具本体の一端部から金具本体と平行に突出した板状部16を含む締結部15と、を有している。締結部15は、板状部16と、板状部に形成された締結穴17と、締結穴17の周縁に沿って板状部の一面に突設された環状突部20と、締結穴17の周縁に沿って板状部の他面に形成された環状凹部21と、を備え、一方のケーブル接続金具の締結部(板状部)を他方のケーブル接続金具の締結部(板状部)に重ねた際に、一方の環状突部20が他方の環状凹部21内に嵌合するように構成されている。このように締結穴17の外周に沿ってハーフピアス形状を形成したので、ケーブル接続金具同士を交差状態で、又は直線状に配置する時に、板状部面に設けたハーフピアス形状20、21が合わせガイドの役割を担うこととなり、組み立て時によりスムーズに金具同士を合わせることが可能となる。
【0022】
このように一方の環状突部20が他方の環状凹部21内に嵌合することにより、板状部16同士を面接触状態で密着させることができ、機器の背面3に設けた共通の被締結部(螺子穴)に対して一つの螺子を用いて2個のケーブル接続金具10を締結固定することが可能となる。両ケーブル接続金具の位置関係は、図3のようにV字状にすることもできるし、図4のように直線状にすることもできる。特に、環状突部20の外形を多角形状とする一方で、環状凹部21の内形を環状突部に整合する多角形状とすることにより、2つのケーブル接続金具を任意の多段階的な角度で確実に固定することが可能となる。
なお、図7、図8に示した実施形態に係る締結部の板状部16の面上に、図8の実施形態に係るハーフピアス形状20、21を採用するようにしてもよい。このようにハーフピアス形状を組み合わせることで、2つのケーブル接続金具を任意の位置関係(例えば、図3、図4の位置関係)で交差させて、螺子にて機器側へ固定することが可能となる。
【0023】
次に、図11は本発明の他の実施形態に係るケーブル接続金具の締結部の構成を示す斜視図であり、位置決め手段として図5の実施形態に係る屈曲小片に代えてダボを設けた構成が特徴的である。
本実施形態に係るケーブル接続金具10は、接続部11を有した金具本体12と、金具本体の一端部から金具本体と平行に突出した板状部16を含む締結部15と、を備えている。締結部15は、板状部16と、板状部に形成された締結穴17と、締結穴17と板状部の端縁との間に形成された位置決め凹所25と、板状部の内側端縁中央部から金具本体にかけて形成された切欠き部19と、を備え、一方のケーブル接続金具の締結部を、他方のケーブル接続金具の締結部に重ねた際に、一方の締結部の位置決め凹所25が他方の締結部の切欠き部19内に嵌合して板状部16同士を密着させるように構成されている。なお、位置決め凹所25の反対面は位置決め突所26となっている。
金具本体12は環状の外枠12aの内部に接続部11を配置した構成を有している。
【0024】
締結部15を構成する板状部16は、金具本体12の一端縁を上方に向けてL字状に突出させることにより形成されており、位置決め凹所25(位置決め突所)と切欠き部19とは対向した位置関係にある。従って、締結穴17同士を連通させた状態で一方のケーブル接続金具の板状部16の面上に他方のケーブル接続金具の板状部を重ねた際に、各接続金具の位置決め突所(外側突所)26が相手方の接続金具の切欠き部19内に嵌合して脱落、位置ずれが防止される。しかも、直線状に配置される2つのケーブル接続金具10の合計長を最短とすることができる。
なお、位置決め凹所25の位置を板状部の一方の角隅部に偏った位置に配置する一方で、対応する切欠き部19も板状部の角隅部に偏った対角位置とすることにより(図7の例を参照)、2つの接続金具をV字状に交差させることが可能となる。
【0025】
以上のように本発明のケーブル接続金具を用いた接続構造によれば、電子機器の外面からのケーブル引き出し本数が多い場合に、金具を接続スペースからはみ出すことなく接続することができ、しかも部品代、組み立て工数を削減することが可能となる。また、金具は螺子固定されるため、保守・分解性も良好で、環境にも対応した設計となっている。
即ち、本発明の一つの実施形態では、略長方形のケーブル接続スペース内に斜めの状態で複数個のケーブル接続金具を配置するようにしたので、金具が占有するスペースを最小限に抑えて効果的に取り付けることが可能となる。
また、他の実施形態では、共通の単一の被締結部に対して、複数個のケーブル接続金具の締結部を重ねた状態で螺子止め固定するようにしたので、金具が占有するスペースを最小限に抑えて、少ない労力によって効果的に取り付けることが可能となる。
また、締結部の板状部に屈曲小片と切欠き部を設けることにより、複数のケーブル接続金具の締結部同士を重ねた際に屈曲小片を切欠き部内に嵌合させて位置決めすることが可能となる。
また、締結部の板状部に環状突部と環状凹部を設けることにより、複数のケーブル接続金具の締結部同士を重ねた際に環状突部を環状凹部に嵌合させて位置決めすることが可能となる。
また、締結部の板状部に位置決め凹所と外側突所を設けることにより、複数のケーブル接続金具の締結部同士を重ねた際に位置決め凹所内に外側突所を嵌合させて位置決めすることが可能となる。
【符号の説明】
【0026】
1…ケーブル接続金具、2…電子機器、3…背面、10…ケーブル接続金具、11…接続部、12…金具本体、12a…外枠、15…締結部、16…板状部、17…締結穴、18…屈曲小片、20…環状突部、21…環状凹部、25…凹所、26…突所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の外面に設けた略長方形のケーブル接続スペースと、該ケーブル接続スペース内に配置される略長方形、略長円形、或いは楕円形を有した少なくとも2個の略同サイズのケーブル接続金具と、を有したケーブル接続構造であって、
前記各ケーブル接続金具は、その長手方向一端寄りに前記ケーブル接続スペースに設けた被締結部と締結される締結部を備えると共に、長手方向他端寄りにはケーブルを接続する接続部を備え、
前記ケーブル接続スペース内には共通利用される前記被締結部を少なくとも一個備え、
複数の前記ケーブル接続金具の各締結部を重ねた状態で、前記被締結部に締結したことを特徴とするケーブル接続構造。
【請求項2】
2個の前記ケーブル接続金具をV字状に配置したことを特徴とする請求項1に記載のケーブル接続構造。
【請求項3】
2個の前記ケーブル接続金具を直線状に配置したことを特徴とする請求項1に記載のケーブル接続構造。
【請求項4】
前記ケーブル接続金具は、前記接続部を有した金具本体と、該金具本体の一端部から該金具本体と略平行に突出した板状部を含む前記締結部と、を有し、
前記締結部は、前記板状部と、該板状部に形成された締結穴と、該板状部の外側端縁から屈曲した屈曲小片と、該板状部の内側端縁に形成された切欠き部と、を備え、
一方の前記ケーブル接続金具の締結部を、他方の前記ケーブル接続金具の締結部に重ねた際に、一方の締結部の屈曲小片が他方の締結部の切欠き部内に嵌合するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のケーブル接続構造。
【請求項5】
前記ケーブル接続金具は、前記接続部を有した金具本体と、該金具本体の一端部から該金具本体と略平行に突出した板状部を含む前記締結部と、を有し、
前記締結部は、前記板状部と、該板状部に形成された締結穴と、該締結穴の周縁に沿って該板状部の一面に突設された環状突部と、該締結穴の周縁に沿って該板状部の他面に形成された環状凹部と、を備え、
一方の前記ケーブル接続金具の締結部を、他方の前記ケーブル接続金具の締結部に重ねた際に、一方の前記環状突部が他方の環状凹部内に嵌合するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のケーブル接続構造。
【請求項6】
前記ケーブル接続金具は、前記接続部を有した金具本体と、該金具本体の一端部から該金具本体と略平行に突出した板状部を含む前記締結部と、を有し、
前記締結部は、前記板状部と、該板状部に形成された締結穴と、該板状部の外側端縁と該締結穴との間に形成された位置決め凹所と、該位置決め凹所の外面に形成された外側突所と、該板状部の内側端縁に形成された切欠き部と、を備え、一方のケーブル接続金具の締結部を、他方のケーブル接続金具の締結部に重ねた際に、一方の締結部の外側突所が他方の締結部の切欠き部内に嵌合するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のケーブル接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−49459(P2011−49459A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198245(P2009−198245)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】