説明

ケーブル接続箱及びその管理方法

【課題】ケーブル接続箱の密閉状態をより容易に管理する。
【解決手段】密閉構造体100の密閉状態を管理する際、接続管2の給油口2eから挿入したファイバースコープ80で、ケーブル接続箱3内部の軸部材51と封止管部2bとを撮像することで、接続管2(封止管部2b)に対する軸部材51の相対的な移動量を測定することができるので、その測定した移動量が密閉構造体100の設計上の適正値か否かを容易に確認することができる。そして、密閉構造体100の密閉構造を、接続管2に対する軸部材51の相対的な移動量に基づき確認することで、密閉構造体100の密閉状態の良否を判断することができるので、密閉構造体100の密閉状態を容易に管理することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル接続箱及びその管理方法に係り、特に絶縁油が充填された密閉構造を有するケーブル接続箱とその管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーブル接続箱の内部に封入されている絶縁油の漏れを防止するために、ケーブルとケーブルを被覆する接続管との間にパッキングを装着し、そのパッキングをケーブルと接続管に密着させるようにパッキング締付金具で締め付けてなる密閉構造体が知られている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照。)。
このような密閉構造体がケーブルと接続管との間で所定の密閉状態を維持しているか否かを検査する場合、X線撮影装置を用いてケーブル接続箱の内部を撮像し、X線画像からパッキング締付金具の位置を確認していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−191551号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】昭和63年電気学会全国大会一般講演 講演論文集pp.1722-1723、275KV低損失OFケーブル用無鉛工接続箱の実用化、神野光生ほか
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ケーブル接続箱を設けた現場にX線撮影装置を設置する作業は煩雑であり、X線撮影装置の操作には特殊技能が必要であるため、密閉構造体の密閉状態を確認する作業は容易ではなく、必要な状況になったときに検査や管理を行なっている状況であった。
【0006】
本発明の目的は、ケーブル接続箱の密閉状態をより容易に管理できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決する本発明のケーブル接続箱は、
電力ケーブルの接続部を被う接続管と、
前記電力ケーブルと前記接続管の間に介装されるパッキング部材と、
前記パッキング部材の少なくとも一部を挟持して、前記パッキング部材の内面を前記電力ケーブルに密着させ、前記パッキング部材の外面を前記接続管に密着させる一対の挟持部材と、
前記一対の挟持部材における一方の挟持部材と前記接続管との間に配され、前記一方の挟持部材を、前記パッキング部材を挟んで対向する他方の挟持部材に向けて弾性的に付勢する付勢部と、
前記一対の挟持部材における他方の挟持部材を、前記パッキング部材を挟んで対向する前記一方の挟持部材に向けて押し付ける押付部と、
を有するケーブル接続箱であって、
前記付勢部は、前記一対の挟持部材が対向する方向に伸縮可能なばね部材と、前記ばね部材の伸縮に応じて前記接続管に対して相対移動する軸部材と、を有しており、
前記接続管は、前記電力ケーブルと前記接続管の間に絶縁油を給油するための給油口を有しており、
前記接続管に対する前記軸部材の相対的な位置を接続管内で観察できることを特徴とする。
【0008】
このケーブル接続箱では、接続管の給油口からファイバースコープをケーブル接続箱内部に挿入するなどして軸部材と接続管とを観察することで、接続管に対する軸部材の相対的な移動量を知ることができるので、この情報から密閉状態が適正か否かを容易に確認することができる。
【0009】
好ましくは、前記軸部材は、その軸方向の長さ位置を示すスケールを有しており、前記接続管は、前記軸部材を出没可能に軸支している。
【0010】
密閉構造体の付勢部における軸部材が、その軸方向の長さ位置を示すスケールを有しているので、軸部材の接続管に対する相対的な位置をスケールを基準に容易に測定することができ、ケーブル接続部の密閉状態をより的確に推定できる。
【0011】
前記課題を解決するケーブル接続箱の密閉状態の管理方法は、
前記ケーブル接続箱に設けられた給油口からファイバースコープを挿入し、前記軸部材と前記接続管を撮像して、前記接続管に対する前記軸部材の移動量を測定し、その移動量により前記ケーブル接続箱の密閉状態を確認することを特徴とする。
【0012】
また、好ましくは、前記移動量が適正な値でないことを確認した場合、前記ケーブル接続箱の前記押付部が前記他方の挟持部材を前記一方の挟持部材に向けて押し付ける程度を調整することによって、前記軸部材の移動量を適正に修正して、前記密閉構造体の密閉状態を適正にする。
【0013】
ファイバースコープで、ケーブル接続箱内部の軸部材と接続管とを撮像することによって、接続管に対する軸部材の相対的な移動量が適正値でないことを確認した場合、ファイバースコープで軸部材の位置を確認しつつ、押付部の組み付けを調整することで、軸部材の相対的移動量が適正値になるように調整して、密閉構造体の密閉構造および密閉状態を適正な状態に修正することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ケーブル接続箱内部で軸部材と接続管とを観察することにより、接続管に対する軸部材の相対的な位置から密閉状態の良否を確認し判断することができるので、ケーブル接続部の密閉状態をより容易に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ケーブル接続箱の密閉構造体を示す断面図である。
【図2】密閉構造体におけるバネユニットの軸部材近傍の拡大図である。
【図3】密閉構造体の一部を分解して示した説明図である。
【図4】密閉構造体の密閉状態をファイバースコープを用いて確認する方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0017】
図1は、ケーブル接続箱の要部である密閉構造体を示す断面図であり、図2は、その密閉構造体におけるバネユニットの軸部材近傍の拡大図である。図3は、密閉構造体の一部を分解して示した説明図である。
【0018】
ケーブル接続箱3は、図1に示すように、電力ケーブル1を被覆する接続管2の両端側に密閉構造体100を設けて成る。なお、図1では、接続管2の一端側の密閉構造体100を図示している。
このケーブル接続箱3における電力ケーブル1と接続管2の間に絶縁油を収容しており、その絶縁油がケーブル接続箱3から漏れ出ないように、密閉構造体100が接続管2の端部で、電力ケーブル1と接続管2の間を密閉している。
【0019】
電力ケーブル1は、例えば、OFケーブル(油浸紙絶縁ケーブル)であり、中心導体、内部半導電層、絶縁紙巻層、外部半導電層、アルミ被覆層、防食シース等から構成されている。この電力ケーブル1に密閉構造体100を設ける部分では、ケーブルの外周面にアルミ被覆層が露出している。
【0020】
接続管2は、例えば、銅製の円筒管2aと、円筒管2aの端部に一体に設けられている封止管部2bとを備えている。
円筒管2aは、接続管2内に絶縁油を給油するための給油口2eを有しており、その給油口2eは、その開口を閉じる蓋体2fを備えている。電力ケーブル1と接続管2の間に絶縁油を給油して満たした後、給油口2eを閉蓋した蓋体2fを封着部材2gで給油口2eに封着し、給油口2eから蓋体2fの脱落を防止するとともに、絶縁油の漏れを防止している。
封止管部2bは、一端側内周に内側に膨出するフランジが形成されたほぼ円筒状のものであって、一端側のフランジには、密閉構造体100のバネユニット50を支持するガイド部2cと、そのガイド部2cにおいてバネユニット50の軸部材1が貫入する貫通孔2hとを設けてある。
封止管部2bの他端の端面は、密閉構造体100の締付ユニット60を取り付けるための締付ボルト62を螺入する螺子穴2dを有している。
【0021】
ケーブル接続箱の密閉構造体100は、図1に示すように、電力ケーブル1の外周面に密接しているケーブル側パッキング10と、ケーブル側パッキング10と接続管2(封止管部2b)との間でそれぞれに密接している台形パッキング20と、台形パッキング20の一方の傾斜面と当接する第1傾斜面31を有する第1締付部材30と、台形パッキング20の他方の傾斜面と当接する第2傾斜面41を有する第2締付部材40と、第1締付部材30を台形パッキング20に向けて付勢する付勢部として機能するバネユニット50と、第2締付部材40を台形パッキング20に向けて押し付ける押付部として機能する締付ユニット60等を備えている。この密閉構造体100は、ばね式メカニカルシールと称される密閉構造体である。
なお、ケーブル側パッキング10と台形パッキング20が、電力ケーブル1と接続管2の間に介装されるパッキング部材として機能する。
また、第1締付部材30と第2締付部材40が、パッキング部材の一部である台形パッキング20を挟持する一対の挟持部材として機能する。第1締付部材30と第2締付部材40はケーブルの軸方向に対向しており、第1締付部材30が一方の挟持部材であり、第2締付部材40が他方の挟持部材である。
【0022】
ケーブル側パッキング10は、電力ケーブル1の外周面に密着する環状のパッキングである。ケーブル側パッキング10は、パッキング固定具11a、11bに挟まれた状態で保持されている。これらパッキング固定具11a、11bは、例えば、エポキシパテなどの接着材料12で電力ケーブル1の外周面に貼着することで、ケーブル側パッキング10を電力ケーブル1の外周面に固定されている。なお、ケーブル側パッキング10の内周面は、電力ケーブル1のアルミ被覆層の外周面に対応する凹凸を有しており、ケーブル側パッキング10がアルミ被覆層に密着しやすい形状になっている。
また、パッキング固定具11bは、ケーブルと交差する方向に延在する固定フランジ部13と、その固定フランジ部13に螺着している固定ボルト14を備えている。この固定ボルト14で固定フランジ部13と封止管部2bを締結することで、パッキング固定具11a、11bを介して接続管2を電力ケーブル1に固定することができる。
【0023】
台形パッキング20は、ケーブル側パッキング10と密接する内面が、接続管2と密接する外面よりも幅が広く、その断面が台形形状を呈する環状のパッキングである。
また、この台形パッキング20の内面の縁から外面の縁に亘るテーパー状の面は、それぞれ電力ケーブル1とは反対側にその面を向けた傾斜面になっている。
【0024】
第1締付部材30は、台形パッキング20の一方の傾斜面と対向するように、電力ケーブル1側に向けた第1傾斜面31を有している。
この第1締付部材30は、ケーブル側パッキング10と接続管2(封止管部2b)との間に介装されている。
そして、第1締付部材30は、バネユニット50によって台形パッキング20側に付勢されて、第1締付部材30の第1傾斜面31と台形パッキング20の一方の傾斜面とが密着するようになっており、相対的に第1締付部材30が台形パッキング20を押圧する構造を成している。
【0025】
第2締付部材40は、台形パッキング20の他方の傾斜面と対向するように、電力ケーブル1側に向けた第2傾斜面41を有している。
この第2締付部材40は、ケーブル側パッキング10と接続管2(封止管部2b)との間に介装されている。
そして、第2締付部材40は、締付ユニット60によって台形パッキング20側に押し付けられて、第2締付部材40の第2傾斜面41と台形パッキング20の他方の傾斜面とが密着するようになっており、相対的に第2締付部材40が台形パッキング20を押圧する構造を成している。
【0026】
バネユニット50は、封止管部2bのガイド部2cが軸支する軸部材51と、軸部材51を軸心にして連設されているばね部材としての複数の皿バネ52とを備えている。
軸部材51は、その軸方向に進退可能にガイド部2cに挿通している。この軸部材51の一端部はガイド部2cの貫通孔2hに貫入しており、他端が第1締付部材30の基面の孔部30aに嵌入している。そして、軸部材51は、第1締付部材30の移動に伴い、接続管2に対して相対移動する。この軸部材51が第1締付部材30の移動に伴いガイド部2cで進退するとこれに応じて、第1締付部材30と封止管部2bとの間で複数の皿バネ52が弾性変形するとともに、貫通孔2hの表側開口から軸部材51の一端部が出没するようになっている。
そして、弾性変形して縮んだ皿バネ52が復元する反発力によって、バネユニット50が第1締付部材30を、台形パッキング20を挟んで対向する第2締付部材40に向けて弾性的に付勢する。そして、バネユニット50は、台形パッキング20の一方の傾斜面に第1傾斜面31が密着するように、第1締付部材30を台形パッキング20に向けて弾性的に押圧する。こうして第1締付部材30と第2締付部材40とで台形パッキング20を挟み込んでいる。
特に、この軸部材51の一端部には、図2に示すように、軸部材51の軸方向の長さ位置(基準位置)を示すスケールとしての段差部53を設けている。段差部53は、例えば、軸部材51の太さを段階的に異なるように形成した複数(本実施形態では3つ)の段差であって、一端部の先端から9mmの位置にある第1段差53aと、先端から10mmの位置にある第2段差53bと、先端から11mmの位置にある第3段差53cとを有している。各段差(53a、53b、53c)は軸方向の1mm間隔を示している。
この軸部材51の一端部が封止管部2bの貫通孔2hから出没する移動量を、封止管部2b(接続管2)に対する段差部53の配置を確認することで測定できるようになっている。つまり、封止管部2b(接続管2)に対する段差部53の配置に基づき、封止管部2b(接続管2)の端面に対して軸部材51が出没した移動量を計測することができる。この封止管部2b(接続管2)に対する軸部材51の相対的な移動量が、密閉構造体100の密閉状態を確認する基準になっており、封止管部2b(接続管2)に対する軸部材51の移動量を測定することによって、密閉構造体100の密閉状態の良否を確認することが可能になっている。
【0027】
締付ユニット60は、ボルト用ねじ穴61aとビス用ねじ穴61bを有する締付フランジ61と、ボルト用ねじ穴61aに螺着している締付ボルト62と、ビス用ねじ穴61bに螺着している止めねじ型の締付ビス63とを備えている。
締付ボルト62は、ボルト用ねじ穴61aを通じて、封止管部2bの螺子穴2dに螺合しており、締付ボルト62が締付フランジ61を接続管2に締結している。接続管2(封止管部2b)に取り付けた締付フランジ61は、ケーブル側パッキング10と封止管部2bとの間に介装されている第2締付部材40が抜け出ないように第2締付部材40の基面に当接している。その締付フランジ61におけるビス用ねじ穴61bは、第2締付部材40に対応する位置にあって、そのビス用ねじ穴61bに螺着している締付ビス63が、第2締付部材40の基面に接触可能になっている。
そして、締付ユニット60の締付ビス63を第2締付部材40に向けて螺入することで、締付ビス63が第2締付部材40を、台形パッキング20を挟んで対向する第1締付部材30に向けて押し付ける。そして、締付ユニット60は、台形パッキング20の他方の傾斜面に第2傾斜面41が密着するように、第2締付部材40を台形パッキング20に向けて押圧する。こうして第1締付部材30と第2締付部材40とで台形パッキング20を挟み込んでいる。
【0028】
なお、固定ボルト14と締付ボルト62を共通のボルトとしてもよく、その共通ボルトで固定フランジ部13と封止管部2bを締結するとともに、締付フランジ61を封止管部2bに締結するようにしてもよい。
【0029】
次に、ケーブル接続箱の密閉構造体100の組み付け工程と、密閉構造体100の密閉状態の確認作業について説明する。
【0030】
まず、電力ケーブル1同士を所定の手順で接続し、その接続部分を覆う配置に接続管2をセットする。
次いで、電力ケーブル1のアルミ被覆層にパッキング固定具11a、11bを貼着して、その電力ケーブル1の外周面にケーブル側パッキング10を固定する。
【0031】
次いで、図3に示すように、接続管2における封止管部2bの貫通孔2hに軸部材51の一端部を貫通させるように、封止管部2bのガイド部2cにバネユニット50を配設した後、ケーブル側パッキング10と接続管2(封止管部2b)との間に、第1締付部材30、台形パッキング20、第2締付部材40の順に各部材を押し込み、ケーブル側パッキング10と封止管部2bの間に各部材を配設する。
なお、封止管部2bには、例えば、ケーブルを軸心にする円周に沿って等間隔となる8箇所にガイド部2cを設けており、8つのバネユニット50が第1締付部材30を弾性的に付勢している。その各ガイド部2cにおいてバネユニット50の軸部材51の一端部が貫通孔2hを出没可能になっている。
【0032】
次いで、ビス用ねじ穴61bに締付ビス63を取り付けた締付フランジ61を締付ボルト62で封止管部2bに締結する。なお、締付フランジ61を封止管部2bに締結した後に、締付ビス63をビス用ねじ穴61bに螺入してもよい。
なお、締付フランジ61には、例えば、ケーブルを軸心にする円周に沿って等間隔となる8箇所にビス用ねじ穴61bを設けており、それぞれのビス用ねじ穴61bに螺入した締付ビス63がバネユニット50に対応する位置で、第2締付部材40と接触可能になっている。
【0033】
さらに、固定ボルト14で固定フランジ部13と封止管部2bを締結することで、図4に示すように、電力ケーブル1と接続管2の間を密閉する密閉構造体100が組みあがる。
こうして組み付けたケーブル接続箱の密閉構造体100の密閉状態を、図4に示すように、工業用内視鏡などのファイバースコープ80を用いて検査する。
【0034】
ケーブル接続箱3の密閉構造体100の密閉状態を管理するための検査は、例えば、図4に示すように、接続管2の円筒管2aにおける給油口2eから、ファイバースコープ80をケーブル接続箱3の内部に挿入し、バネユニット50の軸部材51と接続管2の封止管部2bとを撮像して、封止管部2bに対する軸部材51の移動量を測定し、その測定した移動量に応じて、密閉構造体100の密閉状態の良否を確認する。
具体的には、給油口2eから挿入したファイバースコープ80によって、封止管部2bの貫通孔2hから突き出した軸部材51を撮像して、その撮像した画像に基づき、貫通孔2hから突き出た軸部材51の一端部の突出量を移動量として計測し、その計測した移動量に応じて、密閉構造体100の密閉状態の良否を確認する。
より具体的には、給油口2eから挿入したファイバースコープ80によって、貫通孔2hから突き出た軸部材51の段差部53を撮像して、封止管部2b(接続管2)に対する段差部53の配置に基づき、封止管部2b(接続管2)に対して軸部材51が出没した移動量を計測し、その計測した移動量に応じて、密閉構造体100の密閉状態の良否を確認する。
【0035】
ここで、この密閉構造体100において、例えば、図2に示すように、封止管部2bの貫通孔2hから軸部材51の一端部が10mm突き出て、段差部53の第2段差53bが封止管部2bの端面に位置した状態が、密閉構造体100における適正な密閉構造となるように設計されている。
具体的に、密閉構造体100における締付ユニット60の締付ビス63を第2締付部材40に向けて螺入して、締付ビス63が第2締付部材40を第1締付部材30に向けて押し込み、第1締付部材30と封止管部2bの間に位置するバネユニット50の皿バネ52が収縮して軸部材51の一端部が貫通孔2hから10mm突き出た状態が、適正な密閉構造となる。
つまり、この密閉構造体100が、軸部材51の一端部が貫通孔2hから10mm突き出した配置をとる際に、密閉構造体100における最適な密閉状態をなすように設計されている。換言すれば、最適な密閉状態をなす密閉構造体100において、封止管部2b(接続管2)に対する軸部材51の移動量の適正値は10mmに設計されている。
【0036】
特に、この密閉構造体100では、バネユニット50の軸部材51の一端部に段差部53を設けたので、封止管部2b(接続管2)に対して軸部材51が出没した移動量は、段差部53の段差53a、53b、53cで容易に測定することができる。
そして、密閉構造体100における軸部材51の一端部が貫通孔2hから設計通り、例えば10mm突き出ているか否か容易に測定することができる。
【0037】
例えば、ファイバースコープ80で封止管部2bと段差部53を撮像して、段差部53の第1段差53aが封止管部2bの端面に位置していることを観測して確認した場合、軸部材51の一端部は貫通孔2hから9mm突き出ていることがわかる。そして、軸部材51の一端部があと1mm貫通孔2hから突き出せば、軸部材51の移動量が10mmの適正値になるので、皿バネ52を収縮させて軸部材51をあと1mm図中右側に移動させるように、締付ユニット60の締付ビス63の螺入を調整する。
具体的に、ファイバースコープ80で封止管部2bと段差部53を撮像して観測しつつ、締付ビス63を第2締付部材40に向けて締め付けるように螺入し、段差部53の第2段差53bが封止管部2bの端面に位置するように調整することで、軸部材51の一端部が貫通孔2hから10mm突き出た適正な密閉構造とすることができる。
【0038】
また、例えば、ファイバースコープ80で封止管部2bと段差部53を撮像して、段差部53の第3段差53cが封止管部2bの端面に位置していることを観測して確認した場合、軸部材51の一端部は貫通孔2hから11mm突き出ていることがわかる。そして、軸部材51の一端部があと1mm貫通孔2h内に引っ込めば、軸部材51の移動量が10mmの適正値になるので、皿バネ52を伸長させて軸部材51をあと1mm図中左側に移動させるように、締付ユニット60の締付ビス63の螺入を調整する。
具体的に、ファイバースコープ80で封止管部2bと段差部53を撮像して観測しつつ、締付ビス63を第2締付部材40から離間する方向に緩めて、段差部53の第2段差53bが封止管部2bの端面に位置するように調整することで、軸部材51の一端部が貫通孔2hから10mm突き出た適正な密閉構造とすることができる。
【0039】
このように、ファイバースコープ80で、ケーブル接続箱3内部の封止管部2bと段差部53を撮像することで、封止管部2b(接続管2)に対する軸部材51の相対的な移動量を測定することができるので、その移動量が10mmの適正値か否かを容易に確認することができる。
そして、封止管部2bに対する軸部材51の相対的移動量が適正な値でないことを確認した場合、ファイバースコープ80で封止管部2bに対する段差部53(第2段差53b)の位置を確認しつつ、締付ユニット60の締付ビス63の螺入を調整して、軸部材51の一端部が貫通孔2hから10mm突き出た適正な密閉構造に容易に修正することができる。
なお、密閉構造体100における8箇所のバネユニット50毎にファイバースコープ80による撮像を行い、バネユニット50毎に封止管部2b(接続管2)に対する軸部材51の相対的な移動量を測定する。そして、8箇所のバネユニット50毎に軸部材51の移動量が10mmの適正値か否かの確認を行うとともに、それぞれの軸部材51が貫通孔2hから10mm突き出た適正な密閉状態に修正する。
【0040】
こうして軸部材51の一端部が貫通孔2hから10mm突き出た密閉構造を有する密閉構造体100において、第1締付部材30と第2締付部材40とで挟み込んだ台形パッキング20の内面がケーブル側パッキング10に圧着して、そのケーブル側パッキング10の内周面を電力ケーブル1に密着させるとともに、台形パッキング20の外面を接続管2(封止管部2b)に密着させている。
このような密閉構造体100は、電力ケーブル1と接続管2の間を良好に密閉しており、良好なオイルシール性能を奏する。
【0041】
以上のように、ケーブル接続箱の密閉構造体100は、バネユニット50と締付ユニット60の協働によって第1締付部材30と第2締付部材40とで挟み込んだ台形パッキング20をケーブル側パッキング10と接続管2とに密着させて、電力ケーブル1と接続管2の間を密閉状態にすることができる。
特に、この密閉構造体100が、より良好な密閉状態を成すために、ファイバースコープ80で封止管部2bと軸部材51を撮像して互いの配置を観測しつつ、締付ビス63の螺入を調節し、軸部材51の段差部53の第2段差53bが封止管部2bの端面に位置するように調整することによって、密閉構造体100の設計上、最適な密閉構造にすることができる。
つまり、密閉構造体100の設計上、最適な密閉状態とするために、軸部材51の段差部53の第2段差53bを封止管部2bの端面に合わせる際、ファイバースコープ80で封止管部2bと軸部材51(段差部53)を撮像して観測することができるので、外部からのX線撮影などを行わなくても、その位置合わせをより確実に、より容易に行うことができる。
【0042】
そして、ファイバースコープ80を用いて、密閉構造体100の密閉構造を接続管2に対する軸部材51の相対的な移動量に基づき確認することで、ケーブル接続部の密閉状態の良否を確認し判断することができるので、ケーブル接続部の密閉状態をより容易に管理することができる。また、ファイバースコープ80による観測の結果、密閉構造が適正でないことを確認した場合には、締付ビス63の螺入を調節することで容易に密閉構造およびその密閉状態を修正できるので、この密閉構造体100の管理は容易である。
【0043】
なお、以上の実施の形態においては、軸部材51におけるスケールを段差部53を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、スケールは、軸部材51の軸方向に沿って付された、例えば1mm間隔の目盛などであってもよい。
また、上記の実施形態では、軸部材51とバネ52とを組み合わせたバネユニット(付勢部)50を用いたが、軸部材51とバネ52は周方向の異なる位置に別々に配置してもよい。
【0044】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0045】
1 電力ケーブル
2 接続管
2a 円筒管
2b 封止管部
2e 給油口
2f 蓋体
2h 貫通孔
3 ケーブル接続箱
10 ケーブル側パッキング(パッキング部材)
20 台形パッキング(パッキング部材)
30 第1締付部材(一方の挟持部材)
31 第1傾斜面
40 第2締付部材(他方の挟持部材)
41 第2傾斜面
50 バネユニット(付勢部)
51 軸部材
52 皿バネ(ばね部材)
53 段差部(スケール)
53a 第1段差
53b 第2段差
53c 第3段差
60 締付ユニット(押付部)
61 締付フランジ
62 締付ボルト
63 締付ビス
80 ファイバースコープ
100 ケーブル接続箱の密閉構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力ケーブルの接続部を被う接続管と、
前記電力ケーブルと前記接続管の間に介装されるパッキング部材と、
前記パッキング部材の少なくとも一部を挟持して、前記パッキング部材の内面を前記電力ケーブルに密着させ、前記パッキング部材の外面を前記接続管に密着させる一対の挟持部材と、
前記一対の挟持部材における一方の挟持部材と前記接続管との間に配され、前記一方の挟持部材を、前記パッキング部材を挟んで対向する他方の挟持部材に向けて弾性的に付勢する付勢部と、
前記一対の挟持部材における他方の挟持部材を、前記パッキング部材を挟んで対向する前記一方の挟持部材に向けて押し付ける押付部と、
を有するケーブル接続箱であって、
前記付勢部は、前記一対の挟持部材が対向する方向に伸縮可能なばね部材と、前記ばね部材の伸縮に応じて前記接続管に対して相対移動する軸部材と、を有しており、
前記接続管に対する前記軸部材の相対的な位置を接続管内で観察できることを特徴とするケーブル接続箱。
【請求項2】
前記軸部材は、その軸方向の長さ位置を示すスケールを有しており、
前記接続管は、前記軸部材を出没可能に軸支していることを特徴とする請求項1に記載のケーブル接続箱。
【請求項3】
請求項1又は2のケーブル接続箱の密閉状態の管理する方法であって、
前記ケーブル接続箱に設けられている給油口からファイバースコープを挿入し、前記軸部材と前記接続管を撮像して、前記接続管に対する前記軸部材の移動量を測定し、その移動量により前記ケーブル接続箱の密閉状態を確認することを特徴とするケーブル接続箱の管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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