説明

ケーブル接続部材およびケーブル接続方法

【課題】法令等の規定を遵守しつつ、銅導体用端子台とアルミニウム導体ケーブルとを簡単に接続することができるケーブル接続部材を提供する。
【解決手段】一端側に銅導体が挿入される銅導体挿入凹部12、他端側にアルミニウム導体が挿入されるアルミニウム導体挿入凹部14を有し、銅導体挿入凹部とアルミニウム導体挿入凹部との間に隔壁16が設けられたアルミニウム製導体接続管10と、基端側が銅導体挿入凹部に挿入されて接続された銅導体18と、内方に収縮する残留歪を有し、アルミニウム製導体接続管の外周面に被覆されたプラスチック製絶縁チューブ22とを具備するケーブル接続部材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅導体用端子台とアルミニウム導体ケーブルとを接続するためのケーブル接続部材およびケーブル接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、銅導体用端子台とアルミニウム導体ケーブルとの接続についての制限として、アルミニウム導体ケーブルへの銅導体用端子の使用の禁止、銅導体とアルミニウム導体との直接接触の禁止などが法令等によって定められている(非特許文献1、2)。
【0003】
【非特許文献1】電気設備に関する技術基準を定める省令(平成九年三月二十七日通商産業省令第五十二号)
【非特許文献2】JIS C 2810
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、前述した法令等を遵守しつつ、銅導体用端子台とアルミニウム導体ケーブルとを簡単に接続することができるケーブル接続部材およびケーブル接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記目的を達成するため、一端側に銅導体が挿入される銅導体挿入凹部、他端側にアルミニウム導体が挿入されるアルミニウム導体挿入凹部を有し、前記銅導体挿入凹部とアルミニウム導体挿入凹部との間に隔壁が設けられたアルミニウム製導体接続管と、基端側が前記銅導体挿入凹部に挿入されて接続された銅導体と、内方に収縮する残留歪を有し、前記アルミニウム製導体接続管の外周面に被覆されたプラスチック製絶縁チューブとを具備することを特徴とするケーブル接続部材を提供する。
【0006】
また、本発明は、前記目的を達成するため、上述した本発明ケーブル接続部材の銅導体を銅導体用端子台に接続するとともに、アルミニウム製導体接続管のアルミニウム導体挿入凹部にアルミニウム導体ケーブルのアルミニウム導体を挿入して接続することを特徴とするケーブル接続方法を提供する。この場合、上記銅導体の銅導体用端子台への接続は、銅導体を銅導体用端子台にねじ式などにより直接的に接続してもよく、銅導体用端子を用いて間接的に接続してもよい。
【0007】
本発明では、ケーブル接続部材の銅導体の先端側に予め銅導体用端子を接続しておくことができる。これにより、現場作業の省力化を図ることができる。
【0008】
本発明において、内方に収縮する残留歪を有するプラスチック製絶縁チューブは、塑性加工可能な熱可塑性エンジニアリングプラスチックで形成することにより、アルミニウム製導体接続管の圧着または圧縮接続加工をプラスチック製絶縁チューブ上に施しても、塑性加工可能な故、亀裂等が生じることなく絶縁カバーの役割を果たし、さらにアルミニウム製導体接続管の通電加熱により残留歪が開放され、内方に寸法が小さくなり、アルミニウム製導体接続管を締め付けることになり、アルミニウム製導体接続管と銅導体、アルミニウム導体との接触圧力は維持され通電性能を安定させるという効果を得ることができる。
【0009】
上記塑性加工可能な熱可塑性エンジニアリングプラスチックとしては、例えばポリカーボネイト、ポリアセタール、ポリアリレート等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、上記プラスチック製絶縁チューブの成形方法としては、例えば冷間鍛造法の最も一般的な成形方法である後方押し出しでチューブを成形することにより、内方に収縮する残留歪を与えることができるが、これに限定されるものではない。
【0010】
本発明において、アルミニウム製導体接続管の銅導体挿入凹部およびアルミニウム導体挿入凹部の内面には、それぞれ防錆コンパウンドが塗布されていることが好ましい。これにより、銅導体、アルミニウム導体の電食を効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、下記の作用効果を奏する。
1.導体接続管に予め銅導体を接続してあるので、工事現場において、上記銅導体を銅導体用端子台に通常作業で接続するとともに、アルミニウム導体ケーブルのアルミニウム導体を導体接続管に接続することにより、銅導体用端子台にアルミニウム導体ケーブルを簡単に接続することができる。
2.銅導体とアルミニウム導体ケーブルとを導体接続管を介して接続するので、アルミニウム導体ケーブルへの銅導体用端子の使用を回避することができる。
3.導体接続管と銅導体との接続を工場管理下で行うので、上記接続の信頼性が向上する。
4.ケーブル接続部材の銅導体の先端側に予め工場管理下で銅導体用端子を接続する場合は、上記接続の信頼性が向上するとともに、現場作業の省力化を図ることができる。
5.熱膨張係数の大きいアルミニウムからなる導体接続管に熱膨張係数の小さい銅導体を圧着または圧縮接続することにより、ヒートサイクルを受けても、接触圧力が過度に上昇することなく導体を細めてしまって、接触抵抗が上昇して発熱するといった事故の発生を防止することができる。
6.導体接続管の銅導体挿入凹部とアルミニウム導体挿入凹部との間に隔壁が設けられているので、銅導体とアルミニウム導体との直接接触を確実に防止することができる。
7.内方に収縮する残留歪を有するプラスチック製絶縁チューブが導体接続管の外周面に被覆されているので、このプラスチック製絶縁チューブごと導体接続管に銅導体およびアルミニウム導体を圧着または圧縮接続することにより、通電加熱によって上記プラスチック製絶縁チューブの内方に収縮しようとする歪が開放され、このプラスチック製絶縁チューブが内方に寸法が小さくなり、導体接続管を締め付けるため、導体接続管と銅導体との接続の信頼性、および導体接続管とアルミニウム導体との接続の信頼性が向上するとともに、通電性能が安定する。
8.導体接続管の銅導体挿入凹部およびアルミニウム導体挿入凹部の内面にそれぞれ防錆コンパウンドを塗布した場合は、上記プラスチック製絶縁チューブによる導体接続管の締め付けにより、防錆コンパウンドが外部に流出することが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明するが、本発明は下記例に限定されるものではない。
【0013】
(第1実施形態)
図1は本発明に係るケーブル接続部材の第1実施形態を示すもので、(a)は一部断面平面図、(b)は縦断面図である。図中10はアルミニウム製導体接続管を示す。この導体接続管10は、一端側に銅導体が挿入される略円筒状の銅導体挿入凹部12、他端側にアルミニウム導体が挿入される略円筒状のアルミニウム導体挿入凹部14を有し、銅導体挿入凹部12とアルミニウム導体挿入凹部14との間には隔壁16が設けられている。
【0014】
上記導体接続管10の銅導体挿入凹部12には、銅導体(本例では銅より線)18の基端側が挿入され、工場圧着加工20により接続されている。
【0015】
また、導体接続管10の外周面には、内方に向かって収縮しようとする残留歪を有するプラスチック製絶縁チューブ22が被覆されている。プラスチック製絶縁チューブ22は、塑性加工可能な熱可塑性エンジニアリングプラスチック(本例ではポリカーボネイト)を冷間鍛造成形することにより作製されている。
【0016】
さらに、導体接続管10の銅導体挿入凹部12およびアルミニウム導体挿入凹部14の内面には、それぞれ防錆コンパウンド(図示せず)が塗布されている。
【0017】
また、導体接続管10のアルミニウム導体挿入凹部14の入口部には、入口側に向かうにしたがい内径が大きくなるテーパ部15が形成されている。これにより、アルミニウム導体挿入凹部14の内部にアルミニウム導体30を挿入することが容易になり、工事現場での導体接続管10へのアルミニウム導体30の接続作業を確実に行うことが可能となる。また、上記テーパ部15により、導体接続管10の端部における導体歪緩和を図ることができる。
【0018】
図2は第1実施形態のケーブル接続部材を用いて銅導体用端子台とアルミニウム導体ケーブル(本例では単心ケーブル)とを接続した状態を示すもので、(a)は一部断面平面図、(b)は縦断面図である。本例では、ケーブル接続部材の銅導体18に工事現場圧着加工24により銅導体用端子26を接続し、この銅導体用端子26を銅導体用端子台(図示せず)に接続するとともに、導体接続管10のアルミニウム導体挿入凹部14にアルミニウム導体ケーブル28のアルミニウム導体30を挿入し、工事現場圧着加工32により接続している。なお、図中34はアルミニウム導体ケーブル28のケーブル絶縁体、36はケーブルシースを示す。
【0019】
(第2実施形態)
図3は本発明に係るケーブル接続部材の第2実施形態を示すもので、(a)は一部断面平面図、(b)は縦断面図である。本例のケーブル接続部材は、第1実施形態のケーブル接続部材の銅導体18の先端側に銅導体用端子26を予め工場圧着加工38により接続したものである。その他の点では、第2実施形態のケーブル接続部材は第1実施形態のケーブル接続部材と同様であるため、図3において図1と同一の構成部分には、同一の参照符号を付してその説明を省略する。また、第2実施形態のケーブル接続部材を用いて銅導体用端子台とアルミニウム導体ケーブルとを接続した状態は、図2で示した状態と同様であるため、図示を省略する。
【0020】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記例では銅導体として銅より線を用いたが、銅単線を用いてもよく、アルミニウム導体ケーブルとして単心ケーブルを用いたが、多心ケーブルを用いてもよい。また、銅導体用端子台と銅導体とを銅導体用端子を用いて接続したが、銅導体を銅導体用端子台に直接接続してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るケーブル接続部材の第1実施形態を示すもので、(a)は一部断面平面図、(b)は縦断面図である。
【図2】第1実施形態のケーブル接続部材を用いて銅導体用端子台とアルミニウム導体ケーブルとを接続した状態を示すもので、(a)は一部断面平面図、(b)は縦断面図である。
【図3】本発明に係るケーブル接続部材の第2実施形態を示すもので、(a)は一部断面平面図、(b)は縦断面図である。
【符号の説明】
【0022】
10 アルミニウム製導体接続管
12 銅導体挿入凹部
14 アルミニウム導体挿入凹部
16 隔壁
18 銅導体
20 工場圧着加工
22 プラスチック製絶縁チューブ
24 工事現場圧着加工
26 銅導体用端子
28 アルミニウム導体ケーブル
30 アルミニウム導体
38 工場圧着加工

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に銅導体が挿入される銅導体挿入凹部、他端側にアルミニウム導体が挿入されるアルミニウム導体挿入凹部を有し、前記銅導体挿入凹部とアルミニウム導体挿入凹部との間に隔壁が設けられたアルミニウム製導体接続管と、基端側が前記銅導体挿入凹部に挿入されて接続された銅導体と、内方に収縮する残留歪を有し、前記アルミニウム製導体接続管の外周面に被覆されたプラスチック製絶縁チューブとを具備することを特徴とするケーブル接続部材。
【請求項2】
前記銅導体の先端側に銅導体用端子が接続されていることを特徴とする請求項1に記載のケーブル接続部材。
【請求項3】
前記プラスチック製絶縁チューブは、塑性加工可能な熱可塑性エンジニアリングプラスチックからなることを特徴とする請求項1または2に記載のケーブル接続部材。
【請求項4】
前記銅導体挿入凹部およびアルミニウム導体挿入凹部の内面にはそれぞれ防錆コンパウンドが塗布されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のケーブル接続部材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のケーブル接続部材の銅導体を銅導体用端子台に接続するとともに、アルミニウム製導体接続管のアルミニウム導体挿入凹部にアルミニウム導体ケーブルのアルミニウム導体を挿入して接続することを特徴とするケーブル接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−37906(P2009−37906A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201786(P2007−201786)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(591086843)古河電工産業電線株式会社 (40)
【Fターム(参考)】