説明

ケーブル断線検出システム

【課題】 電力ケーブルや通信ケーブルの断線箇所が監視基地から遠方の場合でも大がかりな無線装置を設置することなく、迅速かつ正確に断線箇所を特定でき、安価に実現可能なケーブル断線検出システムを提供すること。
【解決手段】 電力ケーブル2を中継する複数の電柱21〜29のそれぞれに設置されたICタグ31〜39およびケーブル断線検出器41〜49と、監視点に設置された端末装置15とからなり、前記ICタグは無線通信する為のアンテナ、変復調を行うRF部、断線信号を発生させる信号処理部、制御部、電源部から構成され、端末装置15はICタグからの情報を受信する読み取り機と読み取ったICタグの情報から断線箇所を特定する処理ユニットとからなり、ICタグより発信された断線信号およびそのICタグの位置情報をICタグ間で順次伝送させることにより端末装置15に送信し、断線箇所を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力用ケーブルや通信用ケーブルの断線箇所を検出するシステムに関し、特に電柱または中継器に無線通信方式のICタグと断線検出器とを設置したケーブル断線検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の生活に欠かすことができない電力や通信による情報は各地域に張り巡らせた電力ケーブルや通信ケーブルにより事業所や一般家庭へ提供されている。これら生活基盤となるケーブルにおいては、台風や地震等の災害または、不慮の事故などにより断線が発生する可能性があり、万が一、断線が発生した場合は、速やかな復旧作業が求められる。その場合に問題となるのは、断線が発生した箇所または区間を特定することである。電力線の例を挙げると、幹線の要所、要所に開閉器を設け、時限式事故捜査方式にて断線区間を特定している。
【0003】
また、上記の方式を実施する為の開閉器等設備がまだ設置されていない区間については、電力供給業者が直接現場へ赴き断線箇所を捜す作業を行っていた。
【0004】
【特許文献1】実開昭49−35049号公報
【特許文献2】特開平5−281280号公報
【特許文献3】特開平9−288023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の時限式事故捜査方式は、断線区間を特定する為にある時間間隔にて電力供給を行い特定する方式である為、特定までに時間がかかってしまう。また、上記方式を実施する為の設備が設置されていない区間にあっては、作業者が断線があると推測される現場へ行き、断線箇所を捜す必要があり、さらに復旧まで時間が掛かるという問題があった。
【0006】
また、特許文献1〜3に示されるように電柱などにケーブルの張力の異常を検出するセンサーや音波信号の反射などを利用したセンサーなどの断線検出を行うセンサーを取り付けて異常や断線を検出する方法も行われているが、断線箇所を特定するためには常にそれらを監視する手段を設ける必要がある。このため監視基地へ上記センサーの情報を送信する必要があり、センサー情報の送信に電線や光ファイバー等を用いた場合、電力線と同じく断線した場合、通信不可能となる。断線を考慮し無線装置による情報伝達も考えられるが、監視基地までの距離が遠い場合、大出力の装置が必要となり、また、その装置の電源供給を常に確保する手段も必要となるためコストアップになってしまう。
【0007】
そこで、本発明の課題は、電力ケーブルや通信ケーブルの断線箇所が監視基地から遠方の場合でも大がかりな無線装置を設置することなく、迅速かつ正確に断線箇所を特定でき、安価に実現可能なケーブル断線検出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するため、本発明のケーブル断線検出システムは、電力用ケーブルまたは通信用ケーブルを中継する複数の電柱または複数の中継器のそれぞれに設置されたICタグおよびケーブル断線検出器と、前記電力用ケーブルまたは通信用ケーブルの監視点に設置されたケーブルの断線を監視する端末装置とからなり、前記ICタグは無線通信する為のアンテナ、変復調を行うRF部、前記ケーブル断線検出器からの信号により断線信号を発生させる信号処理部、制御部、電源部から構成され、前記端末装置は前記ICタグからの情報を受信する読み取り機と読み取ったICタグの情報から断線箇所を特定する処理ユニットとからなり、前記ICタグより発信された前記断線信号および該断線信号を発生させたICタグの位置情報を前記ICタグ間を順次伝送させることにより前記端末装置に送信し、断線箇所を特定することを特徴とする。
【0009】
また、前記中継器は建物内において敷設された通信用ケーブルや電力用ケーブルの中継器または各階に設置された分電盤であってもよい。
【0010】
また、前記ICタグの電源部として2次電池と太陽電池を組み合わせた電源を使用してもよい。
【0011】
また、前記端末装置には特定された断線箇所の情報を発信するための送信回路が含まれていてもよい。
【0012】
なお、ケーブルの断線を監視する端末装置は監視点(監視基地)となる変電所や幹線の分岐点、電力供給業者や通信業者の営業所等に設置され、送信回路によりその特定された断線箇所は復旧工事作業者などに伝えられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、電力ケーブルや通信ケーブルの断線箇所が監視基地から遠方の場合でも大がかりな無線装置を設置することなく、迅速かつ正確に断線箇所を特定でき、安価に実現可能なケーブル断線検出システムが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本発明によるケーブル断線検出システムの一実施の形態を示す図であり、本発明によるケーブル断線検出システムを利用した電力ケーブル網の一例を示す概念図である。図1において、変電所1から電力ケーブル2により多くの電柱21〜29を経由して各顧客に電力が供給される。本実施の形態においては、各電柱21〜29には、ケーブル断線検出器41〜49と無線通信機能を備えたICタグ31〜39がそれぞれ取り付けられ、また、監視点である変電所1にはケーブルの断線を監視する端末装置15が設置されている。
【0016】
図2は、本実施の形態に用いるケーブル断線検出器と無線通信機能を備えたICタグの一例を示すブロック構成図である。図2において、ICタグ3は、無線通信する為のアンテナ4と変復調等を行うRF部5、信号処理部8、制御部6、電源部7から構成される。ケーブル断線検出器9には従来と同様のケーブルの張力の異常を検出するセンサーや音波信号の反射などを利用したセンサーなどが用いられており、その信号はICタグ3の信号処理部8に入力される。ケーブル断線により電流が遮断される領域が限られ電流遮断によりその場所が特定され易い場合にはケーブル断線検出器9として簡単なコイル等により構成した電流センサーを用いることも可能である。この場合にはICタグ3とケーブル断線検出器9は一体化が可能となる。また、電源部7には電池を用いるが、無交換での使用可能期間を延ばす為に2次電池71と太陽電池72を併用している。
【0017】
図3は、本実施の形態に用いる端末装置15の一例を示すブロック構成図である。端末装置15は最も近いICタグ31または35(図1)からの情報を受信する読み取り機50と、断線箇所を特定するための位置情報データベースを格納し読み取ったICタグの情報から断線箇所を特定する処理ユニット51とからなり、さらに特定された断線箇所の情報を復旧工事作業者などへ発信するための送信回路52が設置されている。
【0018】
図4は、読み取り機50の一実施の形態のブロック構成図である。読み取り機50は、ICタグ3(図2)との無線通信する為のアンテナ10とRF部11、処理ユニット51(図3)と通信を行う為のインターフェイス14、制御部12、各部へ電源を供給する電源部13とから構成される。使用状況に応じて装置の状態を示す表示ランプや液晶表示部等を追加しても良い。インターフェイス14にはLANやシリアル通信ポートを備えてもよい。
【0019】
図5は、処理ユニット51の機器構成の一例を示す構成図である。図5では処理ユニット51はICタグからの情報を元に位置情報を検索するソフトウェアと位置情報データベースが格納されたコンピュータ17とディスプレイ16、プリンタ18等からなり、作業者へ情報を伝える為にはディスプレイ16による表示、プリンタ18による紙面出力、音声による出力などが用いられる。
【0020】
なお、本実施の形態において、設置された各ICタグ間および読み取り装置に近接したICタグと読取装置間の無線通信に必要な距離は、電柱から電柱までの距離をカバーする範囲、すなわち数十mから百m程度であるので十分に実現可能な範囲である。
【0021】
次に、本実施の形態のケーブル断線検出システムの動作について、図1に基づいて説明する。例えば、電柱22と電柱23間で電力ケーブル2の断線が発生した場合、電柱22に取り付けられたケーブル断線検出器42によりケーブルが断線したことが検出されICタグ32の信号処理部により断線信号が作成される。この断線信号とICタグ32自身のID情報とがICタグ32のアンテナを介して送信される。ICタグ32から送信した情報は、ICタグ31にて受信され、ICタグ31から変電所1に設置してある読み取り機50(図3)へ送信される。
【0022】
一方、電柱23に取り付けられたケーブル断線検出器43によっても同様にケーブルが断線したことが検出され、ICタグ33の信号処理部により断線信号が作製される。この断線信号とICタグ33自身のID情報とが、ICタグ33のアンテナを介して送信される。ICタグ33から送信した情報は、ICタグ34にて受信され、ICタグ34からICタグ39、ICタグ37、ICタグ36、ICタグ35を介し変電所1に設置してある端末装置15の読み取り機50へ送信される。すなわち、バトンリレーのごとく断線信号がICタグからICタグへリレーされ最終的に読み取り機50へ送られる。
【0023】
読み取り機50で読み取られたICタグの情報は、インターフェイス14(図4)を介して処理ユニット51へ送信される。処理ユニット51内部では、送られたICタグ32とICタグ33のID情報と格納している住所または、緯度・経度等の位置情報とを照合し断線箇所を特定する。更に、特定した情報は、ディスプレイ16(図5)または、プリンタ18により出力され作業者へ伝えられる。断線の事態を作業者へいち早く伝える為に、端末装置15(図3)には警報発生装置などを付加することもできる。
【0024】
さらに、特定された断線箇所の情報は管理者や復旧工事作業者などへ送信回路52により発信される。
【0025】
以上のように、本発明では断線箇所が監視基地から遠方の場合でも大がかりな無線装置を設置することなく、迅速かつ正確に断線箇所を特定できる。無線通信手段としてICタグを用いているので安価にシステムを構成できる。
【0026】
本実施の形態では、電力ケーブルの断線の検出に本発明を用いた場合について説明したが、電力ケーブルだけでなく通信ケーブルの断線箇所の特定にも本発明を適用することができる。この場合、ケーブル断線検出器としては上述の方式の断線検出器だけでなく、通信ケーブルから放射される信号の有無を検出する手段などを利用することも可能である。また、通信ケーブルに適用する場合は、断線検出器とICタグの設置箇所としては電柱ではなく中継器の方が断線検出に適する場合には中継器に設置することも可能である。
【0027】
また、大電力、大規模の電力ケーブル網、通信ケーブル網への適用だけでなく、集合住宅内、ビル内などの小規模の通信ケーブル網、電力ケーブル網へも本発明を適用することができ、このような場合にはビル等の建物内において敷設された通信用ケーブルや電力用ケーブルの中継器またはフロア毎の分電盤にケーブル断線検出器とICタグを設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明によるケーブル断線検出システムの一実施の形態を示す図、本発明によるケーブル断線検出システムを利用した電力ケーブル網の一例を示す概念図。
【図2】本発明の実施の形態に用いるケーブル断線検出器と無線通信機能を備えたICタグの一例を示すブロック構成図。
【図3】本発明の実施の形態に用いる端末装置の一例を示すブロック構成図。
【図4】読み取り機の一実施の形態のブロック構成図。
【図5】処理ユニットの機器構成の一例を示す構成図。
【符号の説明】
【0029】
1 変電所
2 電力ケーブル
21〜29 電柱
3,31〜39 ICタグ
9,41〜49 ケーブル断線検出器
4,10 アンテナ
5,11 RF部
6,12 制御部
7,13 電源部
8 信号処理部
14 インターフェイス
15 端末装置
16 ディスプレイ
17 コンピュータ
18 プリンタ
50 読み取り機
51 処理ユニット
52 送信回路
71 2次電池
72 太陽電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力用ケーブルまたは通信用ケーブルを中継する複数の電柱または複数の中継器のそれぞれに設置されたICタグおよびケーブル断線検出器と、前記電力用ケーブルまたは通信用ケーブルの監視点に設置されたケーブルの断線を監視する端末装置を備え、前記ICタグは無線通信する為のアンテナ、変復調を行うRF部、前記ケーブル断線検出器からの信号により断線信号を発生させる信号処理部、制御部、電源部から構成され、前記端末装置は前記ICタグからの情報を受信する読み取り機と読み取ったICタグの情報から断線箇所を特定する処理ユニットとから構成され、前記ICタグより発信された前記断線信号および該断線信号を発生させたICタグの位置情報を前記ICタグ間を順次伝送させることにより前記端末装置に送信し、断線箇所を特定することを特徴とするケーブル断線検出システム。
【請求項2】
前記中継器が建物内において敷設された通信用ケーブルや電力用ケーブルの中継器または上記建物の各階に設置された分電盤であることを特徴とする請求項1記載のケーブル断線検出システム。
【請求項3】
前記ICタグの電源部として2次電池と太陽電池を組み合わせた電源を使用したことを特徴とする請求項1または2記載のケーブル断線検出システム。
【請求項4】
前記端末装置には特定された断線箇所の情報を発信するための送信回路が含まれることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のケーブル断線検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−249775(P2007−249775A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−74528(P2006−74528)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】