ケーブル案内装置
【課題】汎用性に優れたケーブル案内装置を提供する。
【解決手段】ケーブル案内装置10は、互いに摺動可能に連結される第1、第2ガイド部材20、50を備える。第1、第2ガイド部材20、50にはケーブル90が貫通され、その状態で、第1、第2ガイド部材20、50が互いに摺動することにより、第1、第2ガイド部材20、50間の連結角度が随時変化し、かつケーブル90の振れ角が随時変化する。第1、第2ガイド部材20、50間には、ケーブル90の振れ角が最大値を示す範囲で第1、第2ガイド部材20、50の角度変位を許容する変位許容空間80が確保されている。変位許容空間80内には、前記最大値よりも小さい範囲に第1、第2ガイド部材20、50の角度変位を規制する角度規制部40が選択的に設けられる。
【解決手段】ケーブル案内装置10は、互いに摺動可能に連結される第1、第2ガイド部材20、50を備える。第1、第2ガイド部材20、50にはケーブル90が貫通され、その状態で、第1、第2ガイド部材20、50が互いに摺動することにより、第1、第2ガイド部材20、50間の連結角度が随時変化し、かつケーブル90の振れ角が随時変化する。第1、第2ガイド部材20、50間には、ケーブル90の振れ角が最大値を示す範囲で第1、第2ガイド部材20、50の角度変位を許容する変位許容空間80が確保されている。変位許容空間80内には、前記最大値よりも小さい範囲に第1、第2ガイド部材20、50の角度変位を規制する角度規制部40が選択的に設けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のスライドドアに搭載されたパワーウィンドやドアロック等の電装品に対して常時給電するためのケーブルに関する技術が知られている。例えば、特許文献1には、スライドドアと車体との間に配線されたケーブルがスライドドアの開閉動作に応じて追従するようにケーブルを支持案内する案内装置が開示されている。このものは、ケーブルが貫通され、かつ互いに摺動可能に連結される第1、第2ガイド部材を備えている。
【0003】
第1ガイド部材は、ボール状の枠体を有し、第2ガイド部材は、枠体を回転可能に挟持する一対の支持材を有している。スライド部材の開閉動作に応じてケーブルが上下、左右のいずれの方向に振れても、その振れに応じて枠体の球面が第2ガイド部材の内面を摺動することにより、第1、第2ガイド部材の連結角度が随時変化し、ケーブルの角度変位に対応することが可能となっている。
【0004】
なお、第1ガイド部材には、筒部が形成され、第2ガイド部材には、筒部との間に変位許容空間を確保した軸受部が形成されている。第1、第2ガイド部材は、変位許容空間の範囲でその角度変位が許容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−118849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ケーブルの振れ角は、スライドドアの開閉態様に応じて車種毎に異なっている。したがって、変位許容空間の範囲も車種毎に異なっており、車種に応じて変位許容空間の範囲を増減させることが求められる。しかし、変位許容空間の範囲を増減させる場合に、該空間を区画する軸受部、筒部のうち、例えば軸受部(又は筒部)の形態を変更するとなると、第2ガイド部材(又は第1ガイド部材)の形態全体を変更しなければならない。このため、第2ガイド部材全体を新設するための金型費用が加算され、コスト高になるという問題がある。また、軸受部の形態の変更前と変更後とで第2ガイド部材の全体形状が類似するため、本来とは異なる車種での使い間違いを起こす可能性があり、それを回避するべく部品管理を厳格に行わねばならない。このように、車種毎に異なるケーブルの振れ角に対し、上記のように軸受部の形態を変更して対応するのでは、コスト面や部品管理面等で汎用性に欠けるという事情がある。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、汎用性に優れたケーブル案内装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、互いに摺動可能に連結される第1、第2ガイド部材を備え、前記第1、第2ガイド部材の双方にケーブルが貫通され、前記ケーブルの振れに応じて前記第1、第2ガイド部材が互いに摺動することにより、前記第1、第2ガイド部材間の連結角度が随時変化するケーブル案内装置であって、前記第1、第2ガイド部材間には、前記第1、第2ガイド部材の角度変位を許容する変位許容空間が確保され、前記変位許容空間内には、同空間の一部を埋めて、前記第1、第2ガイド部材の角度変位を規制する角度規制部が選択的に設けられるところに特徴を有する。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記第1、第2ガイド部材には、それぞれ、前記変位許容空間を区画する第1、第2壁部が設けられ、前記角度規制部が、前記第1壁部に設けられ、かつ前記第2壁部に当接することにより、前記第1、第2ガイド部材の角度規制がなされるところに特徴を有する。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2に記載のものにおいて、前記第2壁部の内面に前記第1壁部の外面が当接可能とされ、前記第1壁部の外面に前記角度規制部が設けられているところに特徴を有する。
【0011】
請求項4の発明は、請求項2又は3に記載のものにおいて、前記角度規制部が、前記第1壁部とは別体であって前記第1壁部に着脱可能に取り付けられるところに特徴を有する。
【0012】
請求項5の発明は、請求項2又は3に記載のものにおいて、前記角度規制部が、前記第1壁部に破断可能に設けられているところに特徴を有する。
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のものにおいて、前記第1、第2ガイド部材の少なくとも一方が、曲面状の摺動面を有し、他方に対し前記摺動面に沿って三次元的に変位可能とされているところに特徴を有する。
請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のものにおいて、前記ケーブルが車体とスライドドアとの間に配線され、前記第2ガイド部材がスライドドア内に固定され、前記第1ガイド部材が前記第2ガイド部材に対して可動な構成とされ、かつ前記ケーブルの配線方向と直交する上下方向で前記第1、第2ガイド部材の角度規制がなされるところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0013】
<請求項1の発明>
ケーブルの振れ角が大きい場合には、変位許容空間内に角度規制部を設けないようにして、第1、第2ガイド部材の角度変位が最大となるようにする。一方、ケーブルの振れ角が小さい場合には、変位許容空間内に角度規制部を設けることで、第1、第2ガイド部材の角度変位が上記よりも小さく規制されるようにする。すなわち、変位許容空間内に角度規制部を選択的に設けることにより、ケーブルの振れ角の変更に対応することが可能となり、汎用性に優れる。
【0014】
<請求項2の発明>
角度規制部が、第1壁部に設けられ、第2壁部に当接することにより、第1、第2ガイド部材の角度規制がなされるため、角度規制部を設けるにあたり、第2ガイド部材の形状変更を伴わずに済む。
【0015】
<請求項3の発明>
角度規制部が第1壁部の外面に設けられているから、角度規制部を設ける際の組み付け性、成形性等に優れる。
【0016】
<請求項4の発明>
角度規制部が第1壁部とは別体であって第1壁部に着脱可能に設けられているため、角度規制部を設けるにあたり、第1ガイド部の形状が格別複雑になることもない。
【0017】
<請求項5の発明>
角度規制部が第1壁部に破断可能に設けられているため、部品点数が増加するのが回避される。
【0018】
<請求項6の発明>
第1、第2ガイド部材が三次元的に変位可能とされているため、ケーブルが上下、左右のいずれの方向に振れても、それに追従して対応できる。
【0019】
<請求項7の発明>
ケーブルが車体とスライドドアとの間に配線され、第2ガイド部材がスライドドア内に固定され、第1ガイド部材が第2ガイド部材に対して可動な構成とされ、かつケーブルの配線方向と直交する上下方向で第1、第2ガイド部材の角度規制がなされるため、スライドドア側におけるケーブルの上下方向の振れに柔軟に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態1に係り、角度規制部が取り付けられたケーブル案内装置の斜視図である。
【図2】角度規制部が取り付けられたケーブル案内装置の断面図である。
【図3】角度規制部が取り付けれられた第1ガイド部材の斜視図である。
【図4】角度規制部が取り付けられないケーブル案内装置の斜視図である。
【図5】角度規制部が取り付けられない状態で、ケーブルが略水平に配置されるケーブル案内装置の断面図である。
【図6】角度規制部が取り付けられない状態で、ケーブルが上方に振られるケーブル案内装置の断面図である。
【図7】角度規制部が取り付けられない状態で、ケーブルが下方に振られるケーブル案内装置の断面図である。
【図8】第1ガイド部材の斜視図である。
【図9】第1ガイド部材の平面図である。
【図10】角度規制部の斜視図である。
【図11】ケーブルの配線構造図である。
【図12】実施形態2に係る第1ガイド部材及び角度規制部の断面図である。
【図13】実施形態3に係る角度規制部の取付け状況を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図11によって説明する。本実施形態に係るケーブル案内装置10は、自動車の車体100とスライドドア200との間に配線されたケーブル90を案内する場合に使用される装置を例示するものである。なお、以下の説明において前後方向については、車体100からスライドドア200に向かう側を前方とし、スライドドア200から車体100に向かう側を後方とする。
【0022】
このケーブル案内装置10は合成樹脂製であって、図1に示すように、互いに摺動可能に連結される第1、第2ガイド部材20、50を備えている。
第1ガイド部材20は、第1ガイド本体21と、第1ガイド本体21の下面を覆う底部22とからなり、第1ガイド本体21に対して底部22が着脱可能とされている。底部22の外縁には、複数の係止片23が上方に突出して形成され、第1ガイド本体21の外面には、各係止片23と対応して複数の係止受け部24が突出して形成されている。各係止片23が係止受け部24を弾性的に係止することにより、底部22が第1ガイド本体21に保持されて、第1ガイド部材20が構成される。
【0023】
また、第1ガイド部材20は、図8及び図9に示すように、略四角筒状の角筒部25と、角筒部25の前端部に連なる略円筒状の円筒部26とを有している。上記第1ガイド本体21及び底部22は、角筒部25及び円筒部26に共用されるものである。
【0024】
円筒部26は上下方向に延出して上端に開口する形態とされ、角筒部25は前後方向に延出して後端に開口する形態とされている。角筒部25の後端には、導入口27が開口され、円筒部26の上端には、引出口28が開口されている。第1ガイド部材20の内部には、導入口27から引出口28にかけて、図2に示すように、案内路29が貫通して形成されている。この場合に、ケーブル90は、導入口27から案内路29内に挿入され、さらに円筒部26の内面に沿うよう略直角に屈曲され、その状態で引出口28から上方へ引き出される。さらに、ケーブル90は、引出口28から後述する包囲部79内に挿入されて、外部へ導出される。
【0025】
円筒部26(第1ガイド本体21)の上端における引出口28の開口縁部には、上端摺動部30が膨出して形成されている。上端摺動部30の外周面には、凸曲面状の上側の摺動面31が全周に亘って形成されている。また、円筒部26(底部22)の下端部には、下端摺動部32が膨出して形成され、下端摺動部32の外周面には、凸曲面状の下側の摺動面33が全周に亘って形成されている。
【0026】
角筒部25の後端部には、導入口27を挟んだ上下両端に、一対の連結片34が略平行に突出して形成されている。両連結片34にはリンク部材301の板材が上下方向で重ね合わされる。このリンク部材301は、第1ガイド部材20に対して左右方向に回動可能に支持され、同様のリンク部材を多数連結してなる連鎖状リンク材300の端末部を構成している。連鎖状リンク材300は、スライドドア200と車体100との間に配置され、その内部に挿通されるケーブル90の動きに応じ、左右方向に首振り可能とされている。
【0027】
角筒部25の上端面には、凹陥部35が形成され、凹陥部35の底面には、小円形の装着孔36が貫通して形成されている。そして、角筒部25の上端面には、角度規制部40が選択的に装着される。
【0028】
角度規制部40は合成樹脂製であって、図10に示すように、角ブロック状の規制本体41を有する。規制本体41は、凹陥部35内に適合可能な形態とされ、その下面が凹陥部35の底面に沿って当接可能なフラット面42とされている。また、規制本体41の上面は、第1ガイド部材20への装着時に、前端側へ向けて下り勾配で傾斜するテーパ状の規制面43とされている。
【0029】
規制本体41の下面には、係止脚44が突出して形成されている。係止脚44は、略円柱状をなし、その下端部に、係止突縁45が周方向に張り出して形成されている。第1ガイド部材20への装着時には、規制本体41が凹陥部35内に嵌合されるとともに、係止脚44が装着孔36内に上方から挿入される。そして、係止突縁45が装着孔36の下側の開口縁部を係止することにより、角度規制部40が第1ガイド部材20に抜け止め状態で保持される。このとき、角度規制部40の規制面43は、角筒部25の上端面よりも上方に露出して配置される。
【0030】
続いて第2ガイド部材50について説明すると、第2ガイド部材50は、図4に示すように、互いに合体可能な前側支持部51及び後側支持部52で構成されている。前側支持部51及び後側支持部52はいずれも横長板状をなし、両支持部51、52間に、第1ガイド部材20の円筒部26が回動可能に挟持されている。
【0031】
後側支持部52は、後側支持本体53と、後側支持本体53の両側縁から側方に突出する一対の後側取付部54とを有する。後側支持本体53には、略矩形の窓孔55が開口して形成されている。また、後側支持本体53における窓孔55を区画する上下部分には、一対の後側架橋部56が後方へ略U字状に膨出して形成されている。後側架橋部56の内縁には、凹曲面状の後側の摺動受面57が略半円弧に亘って形成されている。そして、上側の後側架橋部56の上面には、角U字状の後側包囲部58が立ち上げて形成されている。後側包囲部58は、後側架橋部56の周りを取り囲みつつ前方に開放された形態とされている。また、後側支持本体53には、後側包囲部58を挟んだ両側に、一対の係止突片59が前方に突出して形成されている。両係止突片59は上下方向に撓み変形可能とされ、その内部に、係止孔60が保有されている。
両後側取付部54には、それぞれ、円形の後側取付孔61が開口して形成されている。そして、後側取付部54の周縁には、その周縁に沿って板状の囲繞部62が前後方向に突出して形成されている。
【0032】
前側支持部51は、前側支持本体63と、前側支持本体63の両側縁から側方に突出する一対の前側取付部76とを有する。前側支持本体63には、略四角筒状の嵌合筒部64が前方に突出して形成されている。図5に示すように、嵌合筒部64の上下部分には、一対の前側架橋部65が形成されている。両前側架橋部65の内縁には、凹曲面状の前側の摺動受面66が略半円弧に亘って形成されている。そして、上側の前側架橋部65の上面には、角U字状の前側包囲部67が立ち上げて形成されている。前側包囲部67は、摺動受面66の周りを取り囲みつつ後方に開放された形態とされている。前側包囲部67の上端部には、別体のエルボ管68が嵌着されている。また、前側支持本体63には、前側包囲部67を挟んだ両側でかつ嵌合筒部64の上方に、一対の係止突部69が前方に突出して形成されている。係止突部69の上面には、係止突起70が突出して形成されている。そして、両前側取付部76には、それぞれ、円形の前側取付孔(図示せず)が開口して形成されている。
【0033】
ここで、前側支持部51と後側支持部52との間に円筒部26を配した状態で、前側支持部51と後側支持部52とが重ね合わされる。すると、嵌合筒部64及び角筒部25が窓孔55内を貫通して後方に露出して配置されるとともに、前側包囲部67に後方から後側包囲部58が被さって前側包囲部67の後端開口が閉止され、もって四角筒状の包囲部79が形成される。また、囲繞部62が前側取付部76の周縁を外側から覆うとともに、係止突片59の撓み動作を伴った後、係止孔60に係止突起70が下方から弾性的に嵌ることにより、両支持部51、52が一体に保持される。このとき、前側取付部76と後側取付部54とが板厚方向で密着させられ、前側取付孔と後側取付孔61とが前後方向に整合して連通される。その状態で、前側取付孔及び後側取付孔61にボルト(図示せず)が挿通されることで、ボルトを介して、前側支持部51がスライドドア200内の取付面202に固定される。
【0034】
また、両支持部51、52の合体時には、円筒部26の摺動面31、33の略前半部が前側支持部51の摺動受面66に摺動可能に支持されるとともに、円筒部26の摺動面31、33の略後半部が後側支持部52の摺動受面57に摺動可能に支持される。この場合に、角筒部25の上端面と上側の後側架橋部56の下端面との間、及び角筒部25の下端面と下側の後側架橋部56の上端面との間には、第2ガイド部材50に対して第1ガイド部材20が上下方向に角度変位するのを許容する変位許容空間80が確保されている。したがって、ケーブル90が振られた場合には、摺動面31、33が摺動受面57、66を摺動し、変位許容空間80の範囲で第1、第2ガイド部材20、50の双方の連結角度が随時変化するようになっている。なお、上側の後側架橋部56の下端面は後方へ向けて上り勾配となる上側の規制受面77とされ、下側の後側架橋部56の上端面は後方へ向けて下り勾配となる下側の規制受面78とされている。
【0035】
一方、第1ガイド部材20に角度規制部40が取り付けられた状態では、角度規制部40の突出分、変位許容空間80の上下方向の範囲が狭められる。このため、第2ガイド部材50に対する第1ガイド部材20の角度変位量は、上記した角度規制部40が取り付けられる場合よりも小さくなる。
【0036】
次に、本実施形態に係るケーブル案内装置10の作用を説明する。
図11に示すように、ケーブル90は、連鎖状リンク材300に外装されつつスライドドア200と車体100との間に配線され、スライドドア200側でケーブル案内装置10に挿入され、車体100側で別のケーブル案内装置500に挿入される。そして、ケーブル90の前端部は、ケーブル案内装置10のエルボ管68から導出されてコネクタ600を介してドアハーネス(図示せず)と接続され、ケーブル90の後端部は、ケーブル案内装置500から導出されてコネクタ700を介してフロアハーネス(図示せず)と接続される。これにより、ドアハーネスとフロアハーネスとが電気的に接続される。
【0037】
スライドドア200が開閉されると、ケーブル90の動きに応じて、連鎖状リンク材300及びケーブル案内装置10が左右方向に追従変位するとともに、ケーブル案内装置10が上下方向に追従変位する。ここで、ケーブル90の上下方向の振れ角が大きい車種にケーブル案内装置10が搭載される場合には、図4に示すように、第1ガイド部材20に角度規制部40を取り付けないようにする。そうすると、ケーブル90が上方に振れたときには、図6に示すように、角筒部25の上端面が後側架橋部56の上側の規制受面77に当接して、第2ガイド部材50に対する第1ガイド部材20のそれ以上上方への角度変位が規制される。また、ケーブル90が下方に振れたときには、図7に示すように、角筒部25の下端面が後側架橋部56の下側の規制受面78に当接して、第2ガイド部材50に対する第1ガイド部材20のそれ以上下方への角度変位が規制される。これにより、第1ガイド部材20は、第2ガイド部材50に対して変位許容空間80の範囲で最大限に角度変位される。
【0038】
一方、ケーブル90の上下方向の振れ角が上記よりも小さい車種にケーブル案内装置10が搭載される場合には、図1に示すように、第1ガイド部材20に角度規制部40を取り付ける。つまり、角筒部25の凹陥部35に角度規制部40を嵌め込み、装着孔36に係止脚44を係着させることで、第1ガイド部材20に角度規制部40を固定させる。そうすると、ケーブル90が上方に振れたときには、図2に示すように、角度規制部40の規制面43が後側架橋部56の上側の規制受面77に当接して、第2ガイド部材50に対する第1ガイド部材20のそれ以上上方への角度変位が規制される。また、ケーブル90が下方に振れたときには、上記同様、角筒部25の下端面が後側架橋部56の下側の規制受面78に当接して、第2ガイド部材50に対する第1ガイド部材20のそれ以上下方への角度変位が規制される。この場合、第2ガイド部材50に対する第1ガイド部材20の変位量は、変位許容空間80内への角度規制部40の突出分、上記よりも小さくされる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、ケーブル90の振れ角が大きい場合には、変位許容空間80内に角度規制部40を設けないことで、第1、第2ガイド部材20、50の角度変位が最大となる一方、ケーブル90の振れ角が小さい場合には、変位許容空間80内に角度規制部40を設けることで、第1、第2ガイド部材20、50の角度変位が上記よりも小さく規制されるため、ケーブル90の振れ角の変更に対応することが可能となる。この場合、角度規制部40の付け替えだけで対応でき、第2ガイド部材50の形態全体を変更せずに済むため、汎用性に優れる。
【0040】
また、角度規制部40が第1ガイド部材20の角筒部25に設けられ、この角度規制部40が第2ガイド部材50の後側架橋部56に当接することにより、第1、第2ガイド部材20、50の角度規制がなされるため、角度規制部40を設けるにあたり、第2ガイド部材50の形状変更を伴わずに済む。
【0041】
また、角度規制部40が角筒部25の外面に設けられているため、角度規制部40を設ける際の組み付け性に優れる。しかも、角度規制部40が角筒部25とは別体であって角筒部25に着脱可能に設けられているため、角度規制部40を設けるにあたり、第1ガイド部の形状が格別複雑になることもない。
【0042】
また、第1、第2ガイド部材20、50が三次元的に変位可能とされているため、ケーブル90が上下、左右のいずれの方向に振れても、それに追従して対応できる。
【0043】
さらに、ケーブル90が車体100とスライドドア200との間に配線され、第2ガイド部材50がスライドドア200内に固定され、第1ガイド部材20が第2ガイド部材50に対して可動な構成とされ、かつケーブル90の配線方向と直交する上下方向で第1、第2ガイド部材20、50の角度規制がなされるため、スライドドア200側におけるケーブル90の上下方向の振れに柔軟に対応できる。
【0044】
<実施形態2>
本発明の実施形態2を図12によって説明する。実施形態2では、角度規制部40Aが第1ガイド部材20Aと一体に設けられており、その点で、実施形態1とは異なる。その他は、実施形態1と同様であり、実施形態1と同様の構成には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0045】
第1ガイド部材20Aの角筒部25Aの上端面には、ブロック状の角度規制部40Aが破断可能に設けられている。角度規制部40Aは、実施形態1と違って、係止脚44を有しておらず、代わりに、破断部49を有している。破断部49は、角筒部25Aの上端面に対して所定以上の外力を受けた場合に破断可能に連結されている。
【0046】
ケーブル90の上下方向の振れ角が小さい車種に対しては、角度規制部40Aを角筒部25Aにそのまま残し、角度規制部40Aによって変位許容空間80の一部を埋めるようにする。そうすると、角度規制部40Aの規制面43Aが後側架橋部56の上側の規制受面77に当接して、第1、第2ガイド部材20A、50の角度変位が規制される。一方、ケーブル90の上下方向の振れ角が大きい車種に対しては、角筒部25Aに対して角度規制部40Aを斜めに持ち上げて破断部49を破断し、変位許容空間80内に角度規制部40Aを設けないようにする。そうすると、変位許容空間80の範囲内で第1、第2ガイド部材20A、50の角度変位が最大限に許容される。
【0047】
実施形態2によれば、角度規制部40Aが第1ガイド部材20Aに一体に設けられているから、部品点数の増加を招くことがなく、部品管理の煩わしさから解消される。
【0048】
<実施形態3>
図13は、本発明の実施形態3を示す。実施形態3は、第1ガイド部材20Bに対する角度規制部40の取付位置が実施形態1とは異なる。角筒部25Bの上端面及び下端面には、凹陥部35Bが設けられ、凹陥部35Bの底面には、小円形の装着孔36Bが貫通して形成されている。凹陥部35B及び装着孔36Bは、それぞれ、実施形態1の凹陥部35及び装着孔36と同様の形態とされる。
【0049】
実施形態3によれば、角度規制部40が角筒部25Bの上端面と下端面のいずれかに選択的に取り付け可能とされるとともに、2つの角度規制部40が角筒部25の上下両端面に同時に取り付け可能とされるため、角度規制を行う際のバリエーションの幅が広がる。
【0050】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)連鎖状リンク材において互いに連結し合うリンク部材のうちの一方が第1ガイド部材、他方が第2ガイド部材とされ、上記同様、第1、第2ガイド部材間に変位許容空間、及び同空間の一部を埋める角度規制部が選択的に設けられ、角度規制部によって第1、第2ガイド部材の角度変位が規制される構成であってもよい。
(2)第1ガイド部材に、円筒部に代えて、ボール状の枠体(特開2007−118849号公報を参照)が設けられ、枠体の球面が摺動面を構成するものであってもよい。
(3)角度規制部が第2ガイド部材に設けられるものであってもよい。
(4)角度規制部が複数ピース用意され、これらの中からケーブルの振れ量に応じた角度規制部が選択される構成であってもよい。
(5)第2ガイド部材に対して第1ガイド部材が複数パターンで取り付け可能とされ、その取り付け姿勢に応じて角度規制部の配置が変更されるものであってもよい。
(6)円筒部が上下方向に貫通する形態であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
10…ケーブル案内装置
20、20A、20B…第1ガイド部材
25、25A、25B…角筒部(第1壁部)
26…円筒部
31、33…摺動面
40、40A…角度規制部
50…第2ガイド部材
56…後側架橋部(第2壁部)
67、66…摺動受面
80…変位許容空間
90…ケーブル
100…車体
200…スライドドア
300…連鎖状リンク材
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のスライドドアに搭載されたパワーウィンドやドアロック等の電装品に対して常時給電するためのケーブルに関する技術が知られている。例えば、特許文献1には、スライドドアと車体との間に配線されたケーブルがスライドドアの開閉動作に応じて追従するようにケーブルを支持案内する案内装置が開示されている。このものは、ケーブルが貫通され、かつ互いに摺動可能に連結される第1、第2ガイド部材を備えている。
【0003】
第1ガイド部材は、ボール状の枠体を有し、第2ガイド部材は、枠体を回転可能に挟持する一対の支持材を有している。スライド部材の開閉動作に応じてケーブルが上下、左右のいずれの方向に振れても、その振れに応じて枠体の球面が第2ガイド部材の内面を摺動することにより、第1、第2ガイド部材の連結角度が随時変化し、ケーブルの角度変位に対応することが可能となっている。
【0004】
なお、第1ガイド部材には、筒部が形成され、第2ガイド部材には、筒部との間に変位許容空間を確保した軸受部が形成されている。第1、第2ガイド部材は、変位許容空間の範囲でその角度変位が許容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−118849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ケーブルの振れ角は、スライドドアの開閉態様に応じて車種毎に異なっている。したがって、変位許容空間の範囲も車種毎に異なっており、車種に応じて変位許容空間の範囲を増減させることが求められる。しかし、変位許容空間の範囲を増減させる場合に、該空間を区画する軸受部、筒部のうち、例えば軸受部(又は筒部)の形態を変更するとなると、第2ガイド部材(又は第1ガイド部材)の形態全体を変更しなければならない。このため、第2ガイド部材全体を新設するための金型費用が加算され、コスト高になるという問題がある。また、軸受部の形態の変更前と変更後とで第2ガイド部材の全体形状が類似するため、本来とは異なる車種での使い間違いを起こす可能性があり、それを回避するべく部品管理を厳格に行わねばならない。このように、車種毎に異なるケーブルの振れ角に対し、上記のように軸受部の形態を変更して対応するのでは、コスト面や部品管理面等で汎用性に欠けるという事情がある。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、汎用性に優れたケーブル案内装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、互いに摺動可能に連結される第1、第2ガイド部材を備え、前記第1、第2ガイド部材の双方にケーブルが貫通され、前記ケーブルの振れに応じて前記第1、第2ガイド部材が互いに摺動することにより、前記第1、第2ガイド部材間の連結角度が随時変化するケーブル案内装置であって、前記第1、第2ガイド部材間には、前記第1、第2ガイド部材の角度変位を許容する変位許容空間が確保され、前記変位許容空間内には、同空間の一部を埋めて、前記第1、第2ガイド部材の角度変位を規制する角度規制部が選択的に設けられるところに特徴を有する。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記第1、第2ガイド部材には、それぞれ、前記変位許容空間を区画する第1、第2壁部が設けられ、前記角度規制部が、前記第1壁部に設けられ、かつ前記第2壁部に当接することにより、前記第1、第2ガイド部材の角度規制がなされるところに特徴を有する。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2に記載のものにおいて、前記第2壁部の内面に前記第1壁部の外面が当接可能とされ、前記第1壁部の外面に前記角度規制部が設けられているところに特徴を有する。
【0011】
請求項4の発明は、請求項2又は3に記載のものにおいて、前記角度規制部が、前記第1壁部とは別体であって前記第1壁部に着脱可能に取り付けられるところに特徴を有する。
【0012】
請求項5の発明は、請求項2又は3に記載のものにおいて、前記角度規制部が、前記第1壁部に破断可能に設けられているところに特徴を有する。
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のものにおいて、前記第1、第2ガイド部材の少なくとも一方が、曲面状の摺動面を有し、他方に対し前記摺動面に沿って三次元的に変位可能とされているところに特徴を有する。
請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のものにおいて、前記ケーブルが車体とスライドドアとの間に配線され、前記第2ガイド部材がスライドドア内に固定され、前記第1ガイド部材が前記第2ガイド部材に対して可動な構成とされ、かつ前記ケーブルの配線方向と直交する上下方向で前記第1、第2ガイド部材の角度規制がなされるところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0013】
<請求項1の発明>
ケーブルの振れ角が大きい場合には、変位許容空間内に角度規制部を設けないようにして、第1、第2ガイド部材の角度変位が最大となるようにする。一方、ケーブルの振れ角が小さい場合には、変位許容空間内に角度規制部を設けることで、第1、第2ガイド部材の角度変位が上記よりも小さく規制されるようにする。すなわち、変位許容空間内に角度規制部を選択的に設けることにより、ケーブルの振れ角の変更に対応することが可能となり、汎用性に優れる。
【0014】
<請求項2の発明>
角度規制部が、第1壁部に設けられ、第2壁部に当接することにより、第1、第2ガイド部材の角度規制がなされるため、角度規制部を設けるにあたり、第2ガイド部材の形状変更を伴わずに済む。
【0015】
<請求項3の発明>
角度規制部が第1壁部の外面に設けられているから、角度規制部を設ける際の組み付け性、成形性等に優れる。
【0016】
<請求項4の発明>
角度規制部が第1壁部とは別体であって第1壁部に着脱可能に設けられているため、角度規制部を設けるにあたり、第1ガイド部の形状が格別複雑になることもない。
【0017】
<請求項5の発明>
角度規制部が第1壁部に破断可能に設けられているため、部品点数が増加するのが回避される。
【0018】
<請求項6の発明>
第1、第2ガイド部材が三次元的に変位可能とされているため、ケーブルが上下、左右のいずれの方向に振れても、それに追従して対応できる。
【0019】
<請求項7の発明>
ケーブルが車体とスライドドアとの間に配線され、第2ガイド部材がスライドドア内に固定され、第1ガイド部材が第2ガイド部材に対して可動な構成とされ、かつケーブルの配線方向と直交する上下方向で第1、第2ガイド部材の角度規制がなされるため、スライドドア側におけるケーブルの上下方向の振れに柔軟に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態1に係り、角度規制部が取り付けられたケーブル案内装置の斜視図である。
【図2】角度規制部が取り付けられたケーブル案内装置の断面図である。
【図3】角度規制部が取り付けれられた第1ガイド部材の斜視図である。
【図4】角度規制部が取り付けられないケーブル案内装置の斜視図である。
【図5】角度規制部が取り付けられない状態で、ケーブルが略水平に配置されるケーブル案内装置の断面図である。
【図6】角度規制部が取り付けられない状態で、ケーブルが上方に振られるケーブル案内装置の断面図である。
【図7】角度規制部が取り付けられない状態で、ケーブルが下方に振られるケーブル案内装置の断面図である。
【図8】第1ガイド部材の斜視図である。
【図9】第1ガイド部材の平面図である。
【図10】角度規制部の斜視図である。
【図11】ケーブルの配線構造図である。
【図12】実施形態2に係る第1ガイド部材及び角度規制部の断面図である。
【図13】実施形態3に係る角度規制部の取付け状況を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図11によって説明する。本実施形態に係るケーブル案内装置10は、自動車の車体100とスライドドア200との間に配線されたケーブル90を案内する場合に使用される装置を例示するものである。なお、以下の説明において前後方向については、車体100からスライドドア200に向かう側を前方とし、スライドドア200から車体100に向かう側を後方とする。
【0022】
このケーブル案内装置10は合成樹脂製であって、図1に示すように、互いに摺動可能に連結される第1、第2ガイド部材20、50を備えている。
第1ガイド部材20は、第1ガイド本体21と、第1ガイド本体21の下面を覆う底部22とからなり、第1ガイド本体21に対して底部22が着脱可能とされている。底部22の外縁には、複数の係止片23が上方に突出して形成され、第1ガイド本体21の外面には、各係止片23と対応して複数の係止受け部24が突出して形成されている。各係止片23が係止受け部24を弾性的に係止することにより、底部22が第1ガイド本体21に保持されて、第1ガイド部材20が構成される。
【0023】
また、第1ガイド部材20は、図8及び図9に示すように、略四角筒状の角筒部25と、角筒部25の前端部に連なる略円筒状の円筒部26とを有している。上記第1ガイド本体21及び底部22は、角筒部25及び円筒部26に共用されるものである。
【0024】
円筒部26は上下方向に延出して上端に開口する形態とされ、角筒部25は前後方向に延出して後端に開口する形態とされている。角筒部25の後端には、導入口27が開口され、円筒部26の上端には、引出口28が開口されている。第1ガイド部材20の内部には、導入口27から引出口28にかけて、図2に示すように、案内路29が貫通して形成されている。この場合に、ケーブル90は、導入口27から案内路29内に挿入され、さらに円筒部26の内面に沿うよう略直角に屈曲され、その状態で引出口28から上方へ引き出される。さらに、ケーブル90は、引出口28から後述する包囲部79内に挿入されて、外部へ導出される。
【0025】
円筒部26(第1ガイド本体21)の上端における引出口28の開口縁部には、上端摺動部30が膨出して形成されている。上端摺動部30の外周面には、凸曲面状の上側の摺動面31が全周に亘って形成されている。また、円筒部26(底部22)の下端部には、下端摺動部32が膨出して形成され、下端摺動部32の外周面には、凸曲面状の下側の摺動面33が全周に亘って形成されている。
【0026】
角筒部25の後端部には、導入口27を挟んだ上下両端に、一対の連結片34が略平行に突出して形成されている。両連結片34にはリンク部材301の板材が上下方向で重ね合わされる。このリンク部材301は、第1ガイド部材20に対して左右方向に回動可能に支持され、同様のリンク部材を多数連結してなる連鎖状リンク材300の端末部を構成している。連鎖状リンク材300は、スライドドア200と車体100との間に配置され、その内部に挿通されるケーブル90の動きに応じ、左右方向に首振り可能とされている。
【0027】
角筒部25の上端面には、凹陥部35が形成され、凹陥部35の底面には、小円形の装着孔36が貫通して形成されている。そして、角筒部25の上端面には、角度規制部40が選択的に装着される。
【0028】
角度規制部40は合成樹脂製であって、図10に示すように、角ブロック状の規制本体41を有する。規制本体41は、凹陥部35内に適合可能な形態とされ、その下面が凹陥部35の底面に沿って当接可能なフラット面42とされている。また、規制本体41の上面は、第1ガイド部材20への装着時に、前端側へ向けて下り勾配で傾斜するテーパ状の規制面43とされている。
【0029】
規制本体41の下面には、係止脚44が突出して形成されている。係止脚44は、略円柱状をなし、その下端部に、係止突縁45が周方向に張り出して形成されている。第1ガイド部材20への装着時には、規制本体41が凹陥部35内に嵌合されるとともに、係止脚44が装着孔36内に上方から挿入される。そして、係止突縁45が装着孔36の下側の開口縁部を係止することにより、角度規制部40が第1ガイド部材20に抜け止め状態で保持される。このとき、角度規制部40の規制面43は、角筒部25の上端面よりも上方に露出して配置される。
【0030】
続いて第2ガイド部材50について説明すると、第2ガイド部材50は、図4に示すように、互いに合体可能な前側支持部51及び後側支持部52で構成されている。前側支持部51及び後側支持部52はいずれも横長板状をなし、両支持部51、52間に、第1ガイド部材20の円筒部26が回動可能に挟持されている。
【0031】
後側支持部52は、後側支持本体53と、後側支持本体53の両側縁から側方に突出する一対の後側取付部54とを有する。後側支持本体53には、略矩形の窓孔55が開口して形成されている。また、後側支持本体53における窓孔55を区画する上下部分には、一対の後側架橋部56が後方へ略U字状に膨出して形成されている。後側架橋部56の内縁には、凹曲面状の後側の摺動受面57が略半円弧に亘って形成されている。そして、上側の後側架橋部56の上面には、角U字状の後側包囲部58が立ち上げて形成されている。後側包囲部58は、後側架橋部56の周りを取り囲みつつ前方に開放された形態とされている。また、後側支持本体53には、後側包囲部58を挟んだ両側に、一対の係止突片59が前方に突出して形成されている。両係止突片59は上下方向に撓み変形可能とされ、その内部に、係止孔60が保有されている。
両後側取付部54には、それぞれ、円形の後側取付孔61が開口して形成されている。そして、後側取付部54の周縁には、その周縁に沿って板状の囲繞部62が前後方向に突出して形成されている。
【0032】
前側支持部51は、前側支持本体63と、前側支持本体63の両側縁から側方に突出する一対の前側取付部76とを有する。前側支持本体63には、略四角筒状の嵌合筒部64が前方に突出して形成されている。図5に示すように、嵌合筒部64の上下部分には、一対の前側架橋部65が形成されている。両前側架橋部65の内縁には、凹曲面状の前側の摺動受面66が略半円弧に亘って形成されている。そして、上側の前側架橋部65の上面には、角U字状の前側包囲部67が立ち上げて形成されている。前側包囲部67は、摺動受面66の周りを取り囲みつつ後方に開放された形態とされている。前側包囲部67の上端部には、別体のエルボ管68が嵌着されている。また、前側支持本体63には、前側包囲部67を挟んだ両側でかつ嵌合筒部64の上方に、一対の係止突部69が前方に突出して形成されている。係止突部69の上面には、係止突起70が突出して形成されている。そして、両前側取付部76には、それぞれ、円形の前側取付孔(図示せず)が開口して形成されている。
【0033】
ここで、前側支持部51と後側支持部52との間に円筒部26を配した状態で、前側支持部51と後側支持部52とが重ね合わされる。すると、嵌合筒部64及び角筒部25が窓孔55内を貫通して後方に露出して配置されるとともに、前側包囲部67に後方から後側包囲部58が被さって前側包囲部67の後端開口が閉止され、もって四角筒状の包囲部79が形成される。また、囲繞部62が前側取付部76の周縁を外側から覆うとともに、係止突片59の撓み動作を伴った後、係止孔60に係止突起70が下方から弾性的に嵌ることにより、両支持部51、52が一体に保持される。このとき、前側取付部76と後側取付部54とが板厚方向で密着させられ、前側取付孔と後側取付孔61とが前後方向に整合して連通される。その状態で、前側取付孔及び後側取付孔61にボルト(図示せず)が挿通されることで、ボルトを介して、前側支持部51がスライドドア200内の取付面202に固定される。
【0034】
また、両支持部51、52の合体時には、円筒部26の摺動面31、33の略前半部が前側支持部51の摺動受面66に摺動可能に支持されるとともに、円筒部26の摺動面31、33の略後半部が後側支持部52の摺動受面57に摺動可能に支持される。この場合に、角筒部25の上端面と上側の後側架橋部56の下端面との間、及び角筒部25の下端面と下側の後側架橋部56の上端面との間には、第2ガイド部材50に対して第1ガイド部材20が上下方向に角度変位するのを許容する変位許容空間80が確保されている。したがって、ケーブル90が振られた場合には、摺動面31、33が摺動受面57、66を摺動し、変位許容空間80の範囲で第1、第2ガイド部材20、50の双方の連結角度が随時変化するようになっている。なお、上側の後側架橋部56の下端面は後方へ向けて上り勾配となる上側の規制受面77とされ、下側の後側架橋部56の上端面は後方へ向けて下り勾配となる下側の規制受面78とされている。
【0035】
一方、第1ガイド部材20に角度規制部40が取り付けられた状態では、角度規制部40の突出分、変位許容空間80の上下方向の範囲が狭められる。このため、第2ガイド部材50に対する第1ガイド部材20の角度変位量は、上記した角度規制部40が取り付けられる場合よりも小さくなる。
【0036】
次に、本実施形態に係るケーブル案内装置10の作用を説明する。
図11に示すように、ケーブル90は、連鎖状リンク材300に外装されつつスライドドア200と車体100との間に配線され、スライドドア200側でケーブル案内装置10に挿入され、車体100側で別のケーブル案内装置500に挿入される。そして、ケーブル90の前端部は、ケーブル案内装置10のエルボ管68から導出されてコネクタ600を介してドアハーネス(図示せず)と接続され、ケーブル90の後端部は、ケーブル案内装置500から導出されてコネクタ700を介してフロアハーネス(図示せず)と接続される。これにより、ドアハーネスとフロアハーネスとが電気的に接続される。
【0037】
スライドドア200が開閉されると、ケーブル90の動きに応じて、連鎖状リンク材300及びケーブル案内装置10が左右方向に追従変位するとともに、ケーブル案内装置10が上下方向に追従変位する。ここで、ケーブル90の上下方向の振れ角が大きい車種にケーブル案内装置10が搭載される場合には、図4に示すように、第1ガイド部材20に角度規制部40を取り付けないようにする。そうすると、ケーブル90が上方に振れたときには、図6に示すように、角筒部25の上端面が後側架橋部56の上側の規制受面77に当接して、第2ガイド部材50に対する第1ガイド部材20のそれ以上上方への角度変位が規制される。また、ケーブル90が下方に振れたときには、図7に示すように、角筒部25の下端面が後側架橋部56の下側の規制受面78に当接して、第2ガイド部材50に対する第1ガイド部材20のそれ以上下方への角度変位が規制される。これにより、第1ガイド部材20は、第2ガイド部材50に対して変位許容空間80の範囲で最大限に角度変位される。
【0038】
一方、ケーブル90の上下方向の振れ角が上記よりも小さい車種にケーブル案内装置10が搭載される場合には、図1に示すように、第1ガイド部材20に角度規制部40を取り付ける。つまり、角筒部25の凹陥部35に角度規制部40を嵌め込み、装着孔36に係止脚44を係着させることで、第1ガイド部材20に角度規制部40を固定させる。そうすると、ケーブル90が上方に振れたときには、図2に示すように、角度規制部40の規制面43が後側架橋部56の上側の規制受面77に当接して、第2ガイド部材50に対する第1ガイド部材20のそれ以上上方への角度変位が規制される。また、ケーブル90が下方に振れたときには、上記同様、角筒部25の下端面が後側架橋部56の下側の規制受面78に当接して、第2ガイド部材50に対する第1ガイド部材20のそれ以上下方への角度変位が規制される。この場合、第2ガイド部材50に対する第1ガイド部材20の変位量は、変位許容空間80内への角度規制部40の突出分、上記よりも小さくされる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、ケーブル90の振れ角が大きい場合には、変位許容空間80内に角度規制部40を設けないことで、第1、第2ガイド部材20、50の角度変位が最大となる一方、ケーブル90の振れ角が小さい場合には、変位許容空間80内に角度規制部40を設けることで、第1、第2ガイド部材20、50の角度変位が上記よりも小さく規制されるため、ケーブル90の振れ角の変更に対応することが可能となる。この場合、角度規制部40の付け替えだけで対応でき、第2ガイド部材50の形態全体を変更せずに済むため、汎用性に優れる。
【0040】
また、角度規制部40が第1ガイド部材20の角筒部25に設けられ、この角度規制部40が第2ガイド部材50の後側架橋部56に当接することにより、第1、第2ガイド部材20、50の角度規制がなされるため、角度規制部40を設けるにあたり、第2ガイド部材50の形状変更を伴わずに済む。
【0041】
また、角度規制部40が角筒部25の外面に設けられているため、角度規制部40を設ける際の組み付け性に優れる。しかも、角度規制部40が角筒部25とは別体であって角筒部25に着脱可能に設けられているため、角度規制部40を設けるにあたり、第1ガイド部の形状が格別複雑になることもない。
【0042】
また、第1、第2ガイド部材20、50が三次元的に変位可能とされているため、ケーブル90が上下、左右のいずれの方向に振れても、それに追従して対応できる。
【0043】
さらに、ケーブル90が車体100とスライドドア200との間に配線され、第2ガイド部材50がスライドドア200内に固定され、第1ガイド部材20が第2ガイド部材50に対して可動な構成とされ、かつケーブル90の配線方向と直交する上下方向で第1、第2ガイド部材20、50の角度規制がなされるため、スライドドア200側におけるケーブル90の上下方向の振れに柔軟に対応できる。
【0044】
<実施形態2>
本発明の実施形態2を図12によって説明する。実施形態2では、角度規制部40Aが第1ガイド部材20Aと一体に設けられており、その点で、実施形態1とは異なる。その他は、実施形態1と同様であり、実施形態1と同様の構成には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0045】
第1ガイド部材20Aの角筒部25Aの上端面には、ブロック状の角度規制部40Aが破断可能に設けられている。角度規制部40Aは、実施形態1と違って、係止脚44を有しておらず、代わりに、破断部49を有している。破断部49は、角筒部25Aの上端面に対して所定以上の外力を受けた場合に破断可能に連結されている。
【0046】
ケーブル90の上下方向の振れ角が小さい車種に対しては、角度規制部40Aを角筒部25Aにそのまま残し、角度規制部40Aによって変位許容空間80の一部を埋めるようにする。そうすると、角度規制部40Aの規制面43Aが後側架橋部56の上側の規制受面77に当接して、第1、第2ガイド部材20A、50の角度変位が規制される。一方、ケーブル90の上下方向の振れ角が大きい車種に対しては、角筒部25Aに対して角度規制部40Aを斜めに持ち上げて破断部49を破断し、変位許容空間80内に角度規制部40Aを設けないようにする。そうすると、変位許容空間80の範囲内で第1、第2ガイド部材20A、50の角度変位が最大限に許容される。
【0047】
実施形態2によれば、角度規制部40Aが第1ガイド部材20Aに一体に設けられているから、部品点数の増加を招くことがなく、部品管理の煩わしさから解消される。
【0048】
<実施形態3>
図13は、本発明の実施形態3を示す。実施形態3は、第1ガイド部材20Bに対する角度規制部40の取付位置が実施形態1とは異なる。角筒部25Bの上端面及び下端面には、凹陥部35Bが設けられ、凹陥部35Bの底面には、小円形の装着孔36Bが貫通して形成されている。凹陥部35B及び装着孔36Bは、それぞれ、実施形態1の凹陥部35及び装着孔36と同様の形態とされる。
【0049】
実施形態3によれば、角度規制部40が角筒部25Bの上端面と下端面のいずれかに選択的に取り付け可能とされるとともに、2つの角度規制部40が角筒部25の上下両端面に同時に取り付け可能とされるため、角度規制を行う際のバリエーションの幅が広がる。
【0050】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)連鎖状リンク材において互いに連結し合うリンク部材のうちの一方が第1ガイド部材、他方が第2ガイド部材とされ、上記同様、第1、第2ガイド部材間に変位許容空間、及び同空間の一部を埋める角度規制部が選択的に設けられ、角度規制部によって第1、第2ガイド部材の角度変位が規制される構成であってもよい。
(2)第1ガイド部材に、円筒部に代えて、ボール状の枠体(特開2007−118849号公報を参照)が設けられ、枠体の球面が摺動面を構成するものであってもよい。
(3)角度規制部が第2ガイド部材に設けられるものであってもよい。
(4)角度規制部が複数ピース用意され、これらの中からケーブルの振れ量に応じた角度規制部が選択される構成であってもよい。
(5)第2ガイド部材に対して第1ガイド部材が複数パターンで取り付け可能とされ、その取り付け姿勢に応じて角度規制部の配置が変更されるものであってもよい。
(6)円筒部が上下方向に貫通する形態であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
10…ケーブル案内装置
20、20A、20B…第1ガイド部材
25、25A、25B…角筒部(第1壁部)
26…円筒部
31、33…摺動面
40、40A…角度規制部
50…第2ガイド部材
56…後側架橋部(第2壁部)
67、66…摺動受面
80…変位許容空間
90…ケーブル
100…車体
200…スライドドア
300…連鎖状リンク材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに摺動可能に連結される第1、第2ガイド部材を備え、前記第1、第2ガイド部材の双方にケーブルが貫通され、前記ケーブルの振れに応じて前記第1、第2ガイド部材が互いに摺動することにより、前記第1、第2ガイド部材間の連結角度が随時変化するケーブル案内装置であって、
前記第1、第2ガイド部材間には、前記第1、第2ガイド部材の角度変位を許容する変位許容空間が確保され、前記変位許容空間内には、同空間の一部を埋めて、前記第1、第2ガイド部材の角度変位を規制する角度規制部が選択的に設けられることを特徴とするケーブル案内装置。
【請求項2】
前記第1、第2ガイド部材には、それぞれ、前記変位許容空間を区画する第1、第2壁部が設けられ、前記角度規制部が、前記第1壁部に設けられ、かつ前記第2壁部に当接することにより、前記第1、第2ガイド部材の角度規制がなされる請求項1記載のケーブル案内装置。
【請求項3】
前記第2壁部の内面に前記第1壁部の外面が当接可能とされ、前記第1壁部の外面に前記角度規制部が設けられている請求項2記載のケーブル案内装置。
【請求項4】
前記角度規制部が、前記第1壁部とは別体であって前記第1壁部に着脱可能に取り付けられる請求項2又は3記載のケーブル案内装置。
【請求項5】
前記角度規制部が、前記第1壁部に破断可能に設けられている請求項2又は3記載のケーブル案内装置。
【請求項6】
前記第1、第2ガイド部材の少なくとも一方が、曲面状の摺動面を有し、他方に対し前記摺動面に沿って三次元的に変位可能とされている請求項1ないし5のいずれか1項記載のケーブル案内装置。
【請求項7】
前記ケーブルが車体とスライドドアとの間に配線され、前記第2ガイド部材がスライドドア内に固定され、前記第1ガイド部材が前記第2ガイド部材に対して可動な構成とされ、かつ前記ケーブルの配線方向と直交する上下方向で前記第1、第2ガイド部材の角度規制がなされる請求項1ないし6のいずれか1項記載のケーブル案内装置。
【請求項1】
互いに摺動可能に連結される第1、第2ガイド部材を備え、前記第1、第2ガイド部材の双方にケーブルが貫通され、前記ケーブルの振れに応じて前記第1、第2ガイド部材が互いに摺動することにより、前記第1、第2ガイド部材間の連結角度が随時変化するケーブル案内装置であって、
前記第1、第2ガイド部材間には、前記第1、第2ガイド部材の角度変位を許容する変位許容空間が確保され、前記変位許容空間内には、同空間の一部を埋めて、前記第1、第2ガイド部材の角度変位を規制する角度規制部が選択的に設けられることを特徴とするケーブル案内装置。
【請求項2】
前記第1、第2ガイド部材には、それぞれ、前記変位許容空間を区画する第1、第2壁部が設けられ、前記角度規制部が、前記第1壁部に設けられ、かつ前記第2壁部に当接することにより、前記第1、第2ガイド部材の角度規制がなされる請求項1記載のケーブル案内装置。
【請求項3】
前記第2壁部の内面に前記第1壁部の外面が当接可能とされ、前記第1壁部の外面に前記角度規制部が設けられている請求項2記載のケーブル案内装置。
【請求項4】
前記角度規制部が、前記第1壁部とは別体であって前記第1壁部に着脱可能に取り付けられる請求項2又は3記載のケーブル案内装置。
【請求項5】
前記角度規制部が、前記第1壁部に破断可能に設けられている請求項2又は3記載のケーブル案内装置。
【請求項6】
前記第1、第2ガイド部材の少なくとも一方が、曲面状の摺動面を有し、他方に対し前記摺動面に沿って三次元的に変位可能とされている請求項1ないし5のいずれか1項記載のケーブル案内装置。
【請求項7】
前記ケーブルが車体とスライドドアとの間に配線され、前記第2ガイド部材がスライドドア内に固定され、前記第1ガイド部材が前記第2ガイド部材に対して可動な構成とされ、かつ前記ケーブルの配線方向と直交する上下方向で前記第1、第2ガイド部材の角度規制がなされる請求項1ないし6のいずれか1項記載のケーブル案内装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−50190(P2012−50190A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187835(P2010−187835)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
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