説明

ケーブル用パッキン押さえ

【課題】従来技術の欠点を除去し、かつ組み付けが簡単で、長期にわたり信頼性ある密封性が保証されるケーブル用パッキン押さえを得ること。
【解決手段】結合手段7,8,9がスナップばめ式結合部を形成している。この結合部は、ケーブル用パッキン押さえの組み付け時に、押さえリング部分6とパッキン体2とを一緒に軸線方向に押し込むことにより結合可能であり、かつ結合状態にされると、押さえリング部分6とパッキン体2と解離不能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載されたケーブル用パッキン押さえ及びケーブル用パッキン押さえを備えたカプセル入りセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
壁にケーブルを密封貫通させる場合、パッキン体を貫通してケーブルを案内し、シールリングをパッキン体と、パッキン体に同心配置された押さえリング部分との間にクランプすることで、シールリングの内面がケーブルに押し付けられる。スイス特許明細書CH480747に開示されたケーブル用パッキン押さえでは、押さえリング部分が、パッキン体にねじ付けられた連結ナットの底部によって形成され、かつシールリングは、連結ナットを締結することで圧縮される。
この種のケーブル用パッキン押さえの場合、密封シールは、連結ナットが十分に堅く締結されている場合にのみ保証される。パッキン押さえが取り付けられた状態では、十分に堅く締結されているかどうかは目視できず、このため組立体の欠陥を検知することが難しい。更に、連結ナットが不適切な扱いによって緩むことで押さえパッキン密封性に悪影響が及ぼされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、前記欠点が除去され、かつ組み立てが簡単で、長期にわたり信頼性ある密封性が保証されるケーブル用パッキン押さえを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1の特徴部分に記載されたケーブル用パッキン押さえにより達せられた。従属請求項には好適実施例が定義されている。
以下で、本発明を典型的な実施例につき図面を参照して詳説する。
【実施例1】
【0005】
図1及び図2には、ケーブル用パッキン押さえ1が、取り付けた状態で略示されている。パッキン押さえ1はパッキン体2を含み、円形横断面のケーブル3がパッキン体2の孔を貫通して案内されている。パッキン体2は、破線により示された壁部4に挿入され、その結果、パッキン体2と、したがってケーブル3も壁部4を貫通することになる。あるいはまた、パッキン体2は、壁部4に一体結合させてもよい。
【0006】
パッキン体2内でのケーブル3の密封シールを保証するために、パッキン押さえ1は、このほか、弾性的なシールリング5と押さえリング部分6とを含んでいる。この取り付けた状態では、シールリング5の内径はケーブル3の外径に事実上合致し、シールリング5の前面はパッキン体2に当接される。同様に押さえリング部分6は、パッキン体とは反対側でシールリングに当て付けられ、かつシールリングが押さえリング部分とパッキン体との間にクランプできる程度の、パッキン体からの軸線方向間隔のところに結合手段により維持される。これにより、シールリングの半径方向内面はケーブルに押し付けられる。
前記結合手段には円形ジャケット部分7が含まれ、このジャケット部分7が押さえリング部分6の外縁からパッキン体2のところへ延び、かつジャケット部分内側が円形突出部8を備え、パッキン体2の外側に備えられた対応するカム9が、組み立て状態ではカム9の背面に係止される。押さえリング部分6と隣接ジャケット部分7とは、シールリング5を保有するケージを一緒に形成する。
【0007】
図3及び図4には、ケーブル用パッキン押さえが組み付け前の状態で示され、図5及び図6には、組み付け中の同じパッキン押さえが示されている。組み付けは、パッキン体2と押さえリング部分6とを一緒に軸線方向に押圧し、ジャケット部分7が弾性変形される間に、突出部8をカム9上でスライドさせることで行われる(図5及び図6参照)。突出部8がカム9を通過すると、ジャケット部分は元の形状に戻る結果、突出部はカムの背面にスナップばめされた状態となる。
この組み付け状態では、隣接位置にあるカム9と円形突出部8との係止面は、好ましくは、軸線12と直角の平面内にあるか、又は該平面に対し僅かにアンダカットされることで、ジャケット部分は、かなり骨を折ってもパッキン体から外すことはできない。後で結合を外すには、ジャケット部分7を破壊するほかはなく、このため、この結合は、ここで理解される言葉の意味で解離不能である。
【0008】
ねじ結合に比較した場合の、押さえリング部分6とパッキン体2との間のこのスナップばめ式結合の利点は、シールリング5の前圧縮が対応結合手段の位置によって予め決められる結果、例えばねじ結合部の不十分な締結に起因する密封性の不足というようなことは生じ得ない。このスナップばめ式結合は解離不能なため、組み付け済みのパッキン押さえ1に何らかの操作を加えることは起こりえない。ジャケット部分7と押さえリング部分6は、双方とも滑らかな外表面を有するように作られている。なぜなら、回転工具を使用できる構造部、例えば特に開放端のレンチを使用するための平行な複数表面は不要だからである。これによって得られる付加的な利点は、ジャケット部分7の壁部が特に薄手でよい点である。結局、スナップばめ式結合の構成部材は、製造が簡単であり、かつパッキン押さえ1の迅速かつ安全な組み付けを可能にする。
【0009】
パッキン体の断面で見ると、カム9は丸みをつけられ、組み付け中に生じるジャケット部分7の変形が出来るだけ円滑に行われるように、特に、その弾性限度を超えないように保証されている。カムの先端を越えて延び、図2の軸線方向に見た図ではパッキン体の輪郭に対応する周線13は、好ましくは、丸みを付けた先端を有する凸正多辺形の形状を有している。同じことは、2つのだけのカム9を有するパッキン体2にも当てはまる。すなわち、ここで理解される言葉の意味で、2つの先端を有する多辺形は、等寸法の交差する2円の輪郭に合致する。
隣接カム9の丸みを付けた部分は、好ましくは接線方向に隣接することにより、周線13のすべての部分が丸くなる。図1及び図2の例では、パッキン体には、対向位置に2つのカムが設けられ、これらのカムは、前記周線13が楕円形状を有するように丸みを付けられている。
【0010】
カムの頂点を越えて延びる周線の長さは、ジャケット部分7が組み付け中に引き伸ばされないように、ジャケット部分の内側の円形突出部8の内周を超えないのが好ましい。
ジャケット部分7は、組み付けのために十分に弾性変形できる材料で作られている。適当な材料は、例えば鋼、アルミニウム、工業用プラスチックである。パッキン体2及び押さえリング部分6には、これらの材料の何らかの組み合わせも使用できる。押さえリング部分6とジャケット部分7は、好ましくは同じ材料で一体に作るのが好ましい。
シールリング5は第1部分を含み、該第1部分が、パッキン体内へ押し込まれ、パッキン体の内側前面14に当接され、この第1部分に続く第2部分がパッキン体の外側前面15に当接される。シールリングのこの第2部分は、パッキン体の外側に位置し、押さえリング部分6の円錐形クランプ面16によって半径方向内側へ、つまり組み付け状態でケーブル6に押し付けられる。
【実施例2】
【0011】
図7及び図8には、図1及び図2に示した実施例とは異なるケーブル用パッキン押さえ1´が組み立てられた状態で略示されている。この場合、2個ではなく3個のカム9´がパッキン体の周部に等間隔に分配形成されている。パッキン体の周線13´は、カム突起を越えて延び、図8に示されているが、頂点を丸くされた正3角形の形状を有している。頂点が丸くされていることにより、周線13´は、かどを丸くされたルロー(Releaux)3角形の形状を有している。
図9には、管状の囲い17を有するカプセル入りセンサが示されており、囲い17の一端が、図1から図6を参照して説明した種類のケーブル用パッキン押さえのパッキン体2を形成し、パッキン体2を貫通して接続ケーブル3が囲い内へ案内されている。センサは誘導近位センサであり、該近位センサは、囲いの一端に配置された測定コイル18を有し、測定回路19を介して接続ケーブル3に接続されている。
【0012】
囲い17は、第1スリーブ20と対応第2スリーブ21とから構成され、第1スリーブは、一端が閉じられ、内部に測定コイル18が配置され、センサを取り付けるための雄ねじを備えており、対応第2スリーブ21の一端は、第1スリーブ20の開放端に挿入され、Oリング23により第1スリーブに対してシールされ、第2スリーブの他端はケーブル用パッキン押さえのパッキン体2を形成している。ケーブル用パッキン押さえの最大外径は、この場合、ジャケット部分の外径だが、この外径は第1スリーブ20の外径より小さく、また好ましくは雄ねじのコア直径より小さくすることで、第1スリーブ20用の取り付け孔内に、最初にケーブルと一緒にセンサが挿入可能にされている。
押さえリング部分6と、この部分に続く、円形内側突出部8を有する円筒形ジャケット部分7とは、好ましくは鋼、アルミニウム、工業用プラスチック材料のいずれかにより一体に形成されている。突出部8は、パッキン体2の外側の対向位置に設けられた2個の対応カムの背面に係止される。これらのカム9は、カム先端を越えて延びる周線13が、図2に見られる通り、楕円形となるように形成されている。
【0013】
図1及び図2にも示されているが、シールリング5は、パッキン体内へパッキン体の内側前面まで挿入される第1部分と、パッキン体の外側前面に当接される第2部分とを含んでいる。パッキン体外面とジャケット部分内面との間の隙間は、カム9とジャケット部分の対応突出部8との後方でOリング23によりシールされている。同時に、Oリング23は、パッキン体2に対するジャケット部分7の半径方向位置を安定化している。このことは、特に、軸線方向の接続に2個だけのカムしか備えられていない場合に有益である。パッキン体2を形成する第2スリーブ21の端部分は、その中間部分より薄手であり、該中間部分の外径はジャケット部分7の外径と等しい。
以上、説明した個々の典型的な実施例の変更態様として、パッキン体は、円筒形の内面の代わりに、押さえリング部分に向って円錐形に開いた内面を有するようにし、パッキン体内へ挿入されるシールリングの一部によって当接されるようにすることもできる。その場合には、図示のパッキン体の内側前面14は、除去される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】組み立てた状態でのケーブル用パッキン押さえの略示縦断面図。
【図2】図1のケーブル用パッキン押さえの軸方向図。
【図3】図1及び図2ケーブル用パッキン押さえを組み立て前の状態で略示した従断面図。
【図4】図3のケーブル用パッキン押さえの軸方向図。
【図5】図1及び図2のケーブル用パッキン押さえを組み付け中の状態で略示した従断面図。
【図6】図5のケーブル用パッキン押さえの軸方向図。
【図7】ケーブル用パッキン押さえの別の実施例を組み立て状態で略示した従断面図。
【図8】図7のケーブル用パッキン押さえの軸方向図。
【図9】囲いと、ケーブル用パッキン押さえを貫通して囲い内へ案内されている接続ケーブルとを有するカプセル入り誘導近位センサの図。
【符号の説明】
【0015】
1 ケーブル用パッキン押さえ
2 パッキン体
3 ケーブル
4 壁部
5 シールリング
6 押さえリング部分
7 ジャケット部分
8 円形突出部
9 カム
9´ カム
10,11 係止面
12 軸線
13 周線
13´ 周線
14 パッキン体の内側前面
15 パッキン体の外側前面
16 押さえリング部分のクランプ面
17 囲い
18 測定コイル
19 測定回路
20 囲いの第1スリーブ
21 囲いの第2スリーブ
23 Oリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル用パッキン押さえであって、該ケーブル用パッキン押さえ(1)が、ケーブルを貫通させるためのパッキン体(2)と、パッキン体(2)の前側に当て付け可能で、内径がケーブル(3)の直径に合致する弾性的なシールリング(5)と、押さえリング部分(6)とを含み、該押さえリング部分(6)が、パッキン体(2)とは反対側でシールリング(5)に当て付け可能であり、かつまた組み付け状態で、シールリング(5)が押さえリング部分(6)とパッキン体(2)との間にクランプされるだけの、パッキン体(2)からの軸線方向間隔のところに押さえリング部分(6)が結合手段(7,8,9)により維持されることで、シールリングの半径方向内面がケーブル(3)に押し付けられる形式のものにおいて、
前記結合手段がスナップばめ式結合部を形成し、この結合部は、ケーブル用パッキン押さえを組み付けるさい、押さえリング部分(6)とパッキン体(2)とを一緒に軸線方向に押し込むことにより結合でき、かつまた結合状態となれば、押さえリング部分(6)とパッキン体(2)とが解離不能となることを特徴とする、ケーブル用パッキン押さえ。
【請求項2】
円形のジャケット部分(7)が押さえリング部分(6)の外縁部から延び、該ジャケット部分が、その内面に少なくとも1つの連結突出部(8)を備え、パッキン体(2)及び押さえリング部分(6)が一緒に押し込まれることにより、該突出部(8)が、パッキン体(2)の外側の少なくとも1つの対応連結部(9)上をスライド可能である一方、ジャケット部分(7)が、弾性変形され、連結部(9)の背面に係止可能であることを特徴とする、請求項1に記載されたケーブル用パッキン押さえ。
【請求項3】
前記パッキン体(2)が半径方向に突出するカム(9)を含み、該カムがパッキン体の周囲に分配され、ジャケット部分(7)の内面には対応円形突出部(8)が備えられ、パッキン体(2)と押さえリング部分(6)とが一緒に押し込まれることにより、該突出部(8)がカム(9)上をスライド可能である一方、ジャケット部分(7)が、弾性変形され、カム(9)の背面に係止可能であることを特徴とする、請求項2に記載されたケーブル用パッキン押さえ。
【請求項4】
前記カム(9)がパッキン体(2)の周部に規則的に分配され、カムの先端を回って延びるパッキン体周線(13)が、丸みを付けた頂点を有する正凸多辺形の形状を有していることを特徴とする、請求項3に記載されたケーブル用パッキン押さえ。
【請求項5】
前記周線(13)の長さが、ジャケット部分(7)の内面に設けられた突出部(8)の内周を超えず、好ましくは該内周と等しいことを特徴とする、請求項4に記載されたケーブル用パッキン押さえ。
【請求項6】
前記正多辺形が2角状であり、周線(13)は、好ましくは楕円形を有していることを特徴とする、請求項4又は請求項5に記載されたケーブル用パッキン押さえ。
【請求項7】
前記正多辺形が3角状であり、周線(13´)が、好ましくは丸みを付けた頂点を有するルロー3角形の形状を有することを特徴とする、請求項4又は請求項5に記載された、ケーブル用パッキン押さえ。
【請求項8】
前記シールリングがパッキン体(2)内へ挿入可能な第1部分と、続く第2部分とを含み、該第2部分が、組み付け状態では、パッキン体(2)の外側前面(15)に当接されることを特徴とする、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載されたケーブル用パッキン押さえ。
【請求項9】
前記押さえリング部分(6)が円錐形クランプ面(16)を含み、組み付け状態では、該クランプ面がシールリング(5)を半径方向内方へ押圧することを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載されたケーブル用パッキン押さえ。
【請求項10】
カプセル入りセンサ、より詳しく言えば誘導近位センサにおいて、
該センサが管状の囲いを含み、該囲いの一端が請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載されたケーブル用パッキン押さえのパッキン体(2)を形成し、該パッキン体を貫通して接続ケーブル(3)が囲い内へ案内される、カプセル入りセンサ。
【請求項11】
前記囲いが、第1スリーブ(20)と、対応する第2スリーブ(21)とを含み、該第1スリーブは、一方の側が閉じられ、かつセンサを取り付けるための雄ねじを備え、第2スリーブ(21)の一端が第1スリーブ(20)の開放端に密封挿入され、かつまた第2スリーブ(21)の他端がケーブル用パッキン押さえのパッキン体(2)を形成しており、該ケーブル用パッキン押さえの最大外径が、好ましくは第1スリーブ(20)の雄ねじのコア直径より小さく、これによりセンサを最初にケーブル(3)と共に取り付け孔内へ挿入可能であることを特徴とする、請求項10に記載されたカプセル入りセンサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−68397(P2007−68397A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−234771(P2006−234771)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(596116628)オプトシイス ソシエテ アノニム (8)
【Fターム(参考)】