説明

ケーブル貯蔵機器及びそれを備えたケーブルセット

【課題】ケーブルを繰り出したり巻き取ったりする際に、リールの回転を止める機構部にケーブルが干渉しにくいようにして円滑に操作できるケーブル貯蔵機器を提供する。
【解決手段】出入口(108,109)を有する貯蔵ケース(1)と、貯蔵ケース(1)内部に取り付けられケーブル(4)の繰り出し方向に回転すると逆回転方向に付勢される回転駆動体(2)と、回転駆動体(2)を中心として一体となって回転できるよう着脱自在に装着され、ケーブル(4)を巻き取ることができるリール(3)と、回転駆動体(2)の回転をロックする機構部(R)とを備えており、ロック機構部(R)は回転駆動体(2)の外周部に設けられている爪車(23)と弾性を有する素材で形成された貯蔵ケース(1)に一体に設けられている爪(100)とで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル貯蔵機器及びそれを備えたケーブルセットに関するものである。更に詳しくは、電気機器用のケーブルを繰り返し繰り出し及び巻き戻しする機器であって、ケーブルを繰り出したり巻き取ったりする際に、リールの回転を止める機構部にケーブルが干渉しにくいようにして円滑に操作できるようにすると共に、部品点数を少なくしてより簡易な構造とすることで、故障や不具合が起こりにくいようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年においては、携帯電話や音楽プレーヤー等の携帯機器の普及に伴い、外出先でイヤフォンケーブルを使用する機会も多くなっている。イヤフォンケーブルは、比較的長尺で、そのままでは取り扱いがしにくいため、イヤフォンケーブルを巻き取って貯蔵し、使用時には繰り出して長さを調整できる器具が使用されている。
【0003】
このような器具としては、例えば特許文献1に開示された「携帯電話用イヤフォンコード巻取装置」がある。
この携帯電話用イヤフォンコード巻取装置は、薄い箱形の収納ケース<2>内に、イヤフォンコード<3>を巻き取るリール<22>を回転自在に支承すると共に、引き出されたイヤフォンコード<3>を巻き戻すよう付勢する渦巻ばね<23>と、リール<22>の回転を阻止するロックレバー<11>と、ロックレバー<11>を解除方向に動かせる操作片<10>とを備えており、携帯電話に用いるイヤフォンコードの引き出し及び収納を容易に行うことができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−237349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の携帯電話用イヤフォンコード巻取装置には、次のような課題があった。
すなわち、巻取装置は、<図2、図3>に示されているように、リール<22>の外周部にロックレバー<11>を押し付けることで、イヤフォンコードを繰り出したときのリール<22>のロックを行う構造となっている。このため、イヤフォンコードが巻き取られる部分とロックレバー<11>の位置が近接しており、イヤフォンコードを繰り出したり巻き取ったりする際にイヤフォンコードが振れたり緩んだりすると、ロックレバー<11>に干渉しやすく、イヤフォンコードが絡まって操作ができなくなるおそれがあった。
【0006】
また、ロックレバー<11>と操作片<10>は、操作の頻度が高い部品であるが、取り付け構造は、収納ケース<2>にピン<14>で回動自在に取り付け、ロックレバー<11>をリール<22>の外周部に押し付ける方向へばね<13>で付勢されている構造である。この構造では、部品点数が多い分だけ可動部が不安定になりやすく、故障や不具合が起こりやすい。また、製造時の組み立てにも比較的手間を要する。
【0007】
(本発明の目的)
本発明は、電気機器用のケーブルを繰り返し繰り出し及び巻き戻しする機器であって、ケーブルを繰り出したり巻き取ったりする際に、リールの回転を止める機構部にケーブルが干渉しにくいようにして円滑に操作できるケーブル貯蔵機器及びケーブルセットを提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明の他の目的は、前記目的に加えて、リールの回転を止める機構部の部品点数を少なくしてより簡易な構造とすることで、機械的な故障や不具合が起こりにくいようにすると共に、製造時において組み立てに要する手間を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
【0010】
(1)本発明は、
電気機器用のケーブルを繰り返し繰り出し及び巻き戻しする機器であって、
弾性変形する素材で形成されている基板と当該基板と連設されている側板とで囲まれて形成されている収容部と、当該収容部につながる開口と、を有するケース本体と、
当該ケース本体の前記開口を塞ぐ蓋と、
中央部分に凹みを有し、前記ケース本体の収容部に収容されてケーブルを巻き取って貯蔵するリールと、
前記側板の相対向する二箇所に形成されており、前記リールに貯蔵されたケーブルを通す第1の出入口及び第2の出入口と、
中央部分に前記リールの凹みに収容される凸筒状部を備え、当該凸筒状部の周りに設けられ複数の歯を有し前記リールと共に回転する爪車と、
当該爪車の歯と噛み合い前記リールの回転を制御する爪と、
前記爪車の凸筒状部内に収納されており、前記リールに巻き取られたケーブルを繰り出すとリールの回転に伴って弾力を蓄積し、前記リールにケーブルを巻き戻すときに前記蓄積された弾力を利用する渦巻きばねと、
を備え、
前記爪は、前記基板と一体に成型されており、常態では前記爪の係合部が前記爪車と噛み合っており、前記爪を前記基板の外側から操作して弾性変形させて前記係合部と前記爪車との噛み合いを解除できることを特徴とする、
ケーブル貯蔵機器である。
【0011】
(2)本発明は、
リールは、両端にそれぞれフランジを有し、当該両フランジ間の中間部分に区画フランジを備え、両端のフランジと区画フランジの間に、第1の区画と第2の区画を有しており、第1の区画にはケーブルの長さ方向の何れか一方側が巻き取られ、第2の区画には他方側が巻き取られるようにした、
前記(1)のケーブル貯蔵機器である。
【0012】
(3)本発明は、
前記第1の出入口と第2の出入口は、前記ケース本体の開口縁から基板に向かって切り欠いて設けられており、第1の出入口はリールの第1の区画と対応する深さに、第2の出入口は第2の区画と対応する深さを有し、前記蓋のうち、第2の出入口と対応する箇所には、閉蓋時に第2の出入口の第1の区画に対応する箇所を部分的に閉鎖する閉鎖突片が形成されている、
前記(2)のケーブル貯蔵機器である。
【0013】
(4)本発明は、
前記(1)、(2)又は(3)のケーブル貯蔵機器にケーブルが貯蔵されている、
ケーブルセットである。
【0014】
特許請求の範囲及び明細書にいう「ケーブル」の用語は、例えばイヤフォンケーブルの他、各種電気機器のUSBケーブル、電話ケーブル、LANケーブル等、他のケーブルを含む意味で使用している。なお、後記実施の形態では、イヤフォンケーブルを例にとり説明している。
【0015】
(作用)
本発明に係るケーブル貯蔵機器及びケーブルセットの作用を説明する。
ケーブル貯蔵機器は、各種電気機器用のケーブルを巻き取って、ケース本体と蓋からなる貯蔵ケース内に貯蔵することができると共に、使用時には貯蔵ケースからケーブルを必要なだけ繰り出して長さを調整することができる。
【0016】
まず、ケーブル貯蔵機器のリールにケーブルを巻き取って貯蔵ケース内に収容した状態としておく。常態においては、ケーブルはリールに巻き取られた状態で、ケーブル両端の一部が貯蔵ケースの二箇所に設けられた第1、第2の出入口からそれぞれ外側へ出されており、凸筒状部には、渦巻きばねによるケーブルを巻き取る回転方向の弾力(付勢力)は作用していない。
【0017】
この状態から、ケーブル両端を引っ張り、ケーブルを繰り出すと、リールは、渦巻きばねによる弾力に抗して回転する凸筒状部と一体となって回転する。そして、ケーブルの引っ張り操作をやめると、リールと凸筒状部は渦巻きばねによる弾力でケーブルを巻き取る方向へ僅かに回転することにより凸筒状部の爪車の歯に爪が係合し、リールと凸筒状部の回転を止めるロック状態となる。このようにして、ケーブルの長さを必要な長さに調整することができる。
【0018】
ケーブルの使用をやめて貯蔵ケース内に貯蔵するときは、爪を貯蔵ケースの外側から動かして爪車の歯との係合状態を解除すれば、ロック状態も解除され、リールは、渦巻きばねの弾力によって回転する凸筒状部と一体となって回転し、ケーブルをもとの貯蔵状態まで巻き取ることができる。
【0019】
また、凸筒状部を中心として凸筒状部と一体となって回転するリールは、凸筒状部がリールの中央部に設けられている凹みに収容されている構造上、外周部に爪車を有する凸筒状部より、ケーブルが出入りする口縁部となる外周部の外径が大きくなるように形成されている。つまり、リールと凸筒状部の回転を止める機構部を構成する爪車と爪の位置がリールの外周部とはリールの半径線方向へ一定距離だけ離れている。
【0020】
これにより、前記のようにケーブルを繰り出したり巻き取ったりする際に、ケーブルが振れたり緩んだりしても、リールの回転を止める機構部にケーブルが干渉しないようになっており、ケーブルが前記機構部に絡まって操作ができなくなることを防止できる。
【0021】
また、常態においては爪が爪車の歯と係合し、爪車に対する係合を解除する方向へ弾性変形することができるように、爪が、弾性変形する素材で形成されている貯蔵ケースの基板に設けられている。
この構造により、リールの回転を止める機構部の部品点数を少なくして、より簡易な構造とすることができるので、機械的な故障や不具合が起こりにくいようにすることができる。また、製造時において組み立てに要する手間を軽減することができる。
【発明の効果】
【0022】
(a)本発明は、電気機器用のケーブルを繰り返し繰り出し及び巻き戻しする機器であって、凸筒状部を中心として凸筒状部と一体となって回転するリールは、凸筒状部がリールの中央部に設けられている凹みに収容されている構造上、外周部に爪車を有する凸筒状部より、ケーブルが出入りする口縁部となる外周部の外径が大きくなるように形成されている。つまり、リールと凸筒状部の回転を止める機構部を構成する爪車と爪の位置がリールの外周部とはリールの半径線方向へ一定距離だけ離れている。
これにより、前記のようにケーブルを繰り出したり巻き取ったりする際に、ケーブルが振れたり緩んだりしても、リールの回転を止める機構部にケーブルが干渉しないようになっており、ケーブルが前記機構部に絡まって操作ができなくなることを防止できる。
【0023】
(b)常態においては爪が爪車の歯と係合し、爪車に対する係合を解除する方向へ弾性変形することができるように、爪が、弾性変形する素材で形成されている貯蔵ケースの基板に設けられている。
この構造により、リールの回転を止める機構部の部品点数を少なくして、より簡易な構造とすることができるので、機械的な故障や不具合が起こりにくいようにすることができる。また、製造時において組み立てに要する手間を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るケーブル貯蔵機器の構造を示し、リールに巻き掛けられたイヤフォンケーブルの一部を省略した分解斜視説明図。
【図2】ケーブル貯蔵機器の外観を示し、リールに巻き掛けられたイヤフォンケーブルの一部を省略した斜視図。
【図3】ケーブル貯蔵機器の外観を示し、リールに巻き掛けられたイヤフォンケーブルの一部を省略しており、(a)は底面側から視た説明図、(b)は側面側から視た説明図。
【図4】イヤフォンケーブルを一部巻き取っている状態を示す図3(a)におけるC−C線断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔実施の形態〕
【0026】
本発明を図面に示した実施の形態に基づき詳細に説明する。
図1乃至図4を参照する。
【0027】
符号Eはイヤフォンケーブルセットで、ケーブル貯蔵機器Aとイヤフォンケーブル4を備えてなるものである。
ケーブル貯蔵機器Aは、イヤフォンケーブル4を巻き取って貯蔵ケース1内にコンパクトに貯蔵(収容)し、使用時にはイヤフォンケーブル4を繰り出して適当な長さに調整でき、その操作を繰り返し行うことができるものである。
【0028】
ケーブル貯蔵機器Aは、貯蔵ケース1、凸筒状部である回転駆動体2、リール3を備えている。回転駆動体2には、ロック機構部Rを構成する爪車23を備え、貯蔵ケース1には同じくロック機構部Rを構成する爪100を備えている。ロック機構部Rは、いわゆるラチェット機構を構成する。
【0029】
貯蔵ケース1は例えば合成樹脂製で、ケース本体10と蓋11を備えている。ケース本体10は、円形の基板101の周縁部に側板102を形成した、図1に示すように厚さがやや薄いほぼ有底円筒形状(一方側が閉鎖している形状)の成形体である。この構造によりケース本体10の内部は基板101と反対側が開口した収容部12となっている。
ケース本体10の基板101の中心部には、基板101とは直角方向に後記回転駆動体2を回転自在に装着する所要長さの軸棒体103が一体に形成されている。軸棒体103には、直径線方向かつ軸線方向に全長にわたり割り溝104が設けられている。
【0030】
軸棒体103の先端において割り溝104を挟む位置にある部分(符号は省略)の二箇所には、放射方向へ突出した係合部105が形成されている。前記構造により、軸棒体103は、前記割り溝104を挟んだ部分が内側へ弾性変形し、各係合部105の間隔を狭めることにより回転駆動体2の装着孔25に通すことができ、さらにその後、各係合部105の間隔が拡がることで、装着孔25が軸棒体103から抜けないようにすることができる。また、割り溝104は、後記渦巻きばね28の中心側の一端を掛ける部分となる。
【0031】
ケース本体10の側板102の一箇所には、後記蓋11をヒンジ構造により開閉方向へ回動自在に取り付ける蓋取付部106が形成されている。また、側板102の蓋取付部106と相対向する箇所には、係合穴107が形成されている。さらに、側板102の蓋取付部106と係合穴107間のそれぞれの中間部には、側板102の端面から基板101方向へ切り欠いて第1の出入口108及び第2の出入口109が相対向して形成されている。
【0032】
なお、一方側の第1の出入口108はやや浅く、ケース本体10に収容した状態の後記リール3の第1の巻取部37に対応する位置に形成され、他方側の第2の出入口109は第1の出入口108より深く、リール3の第2の巻取部38に対応する位置まで形成されている。これは、蓋11を閉じたときに、第1の出入口108及び第2の出入口109の開口部(符号省略)の位置が、後記リール3の厚さ方向の二箇所にある第1の巻取部37、第2の巻取部38の位置に合うようにするためである。
【0033】
また、ケース本体10の基板101には、後記する回転駆動体2の爪車23と共にロック機構部Rを構成する爪100が形成されている。爪100は、基板101の半径線方向のほぼ中間部にケース本体10と一体成形により、前記軸棒体103を中心とした部分円弧状に形成されている。爪100は、基板101の半径線方向に弾性変形ができるように、表裏面へ貫通した空隙101aを設けて形成されている。
【0034】
爪100は、先端部に尖った係合部である爪部100a(図3(a)、図4に図示)を有し、爪部100aと後記回転駆動体2の爪車23を噛み合わせるため、爪部100a側がケース本体10内部側へやや入り込むように形成されている。また、爪100の先端部外面側(図3(a)で手前側)には、基板101の外面からやや突出するように操作部100bが形成されている。
【0035】
ケース本体10の蓋取付部106には、ケース本体10と同じ外径の円形の蓋板111を有する蓋11が、取付部112を係合させて回動自在に取り付けられている。なお、蓋取付部106と取付部112の取付構造は、穴に突部を回転自在に嵌め入れる一般的な構造であるので、構造の詳細な説明は省略する。
【0036】
蓋板111の取付部112とは相対向する側には、蓋11が閉じたときに前記係合穴107と係合する係合爪113が形成されている。また、蓋板111の取付部112と係合爪113間において第2の出入口109に対応する箇所には、閉鎖突片114が形成されている。閉鎖突片114は、蓋11を閉じたときに、前記第2の出入口109において貯蔵ケース1に収まっている状態の後記リール3の第1の巻取部37に対応する側を部分的に閉鎖することで、第2の出入口109において後記第2の巻取部38に対応する部分に開口部(符号省略)を形成することができる。
【0037】
前記ケース本体10の軸棒体103には、回転駆動体2が着脱自在に取り付けられている。回転駆動体2は合成樹脂製で、円形の上板21の周縁部に側板22を形成し、さらに側板22の端部には、歯230が放射方向へ突出するように前記爪100と共にロック機構部Rを構成する爪車23が形成されている。なお、側板22の爪車23側は円形に開口しており、内部は渦巻きばね28を収める空間24(図4参照)となっている。
【0038】
回転駆動体2の上板21の中心部には、前記軸棒体103に嵌め込まれる装着孔25が貫通して形成されている。側板22の外周面には、周方向へ等間隔で四箇所に係合突条26が形成されている。係合突条26は、後記リール3の嵌合凹部35に形成されている係合溝36と係合するものである。
【0039】
また、回転駆動体2の側板102の内面の一箇所には、付勢手段である渦巻きばね28の外周側の一端を掛けるバネ掛け片27が形成されている。そして、回転駆動体2は、空間24に渦巻きばね28をセットした状態で、装着孔25を軸棒体103に回転自在に装着されている。
【0040】
前記渦巻きばね28のセットは次のように行う。まず、巻回して径小にした渦巻きばね28の中心部の一端の掛け部281を軸棒体103の割り溝104に掛け、次に渦巻きばね28の外周側の一端の掛け部282を回転駆動体2のバネ掛け片27に掛け、渦巻きばね28を空間24に収めるようにして軸棒体103に回転駆動体2を回転自在に装着する(図4参照)。
【0041】
なお、渦巻きばね28は、後記するようにイヤフォンケーブル4を繰り出し、繰り出し回転方向に後記リール3が回転したとき、イヤフォンケーブル4を巻き取る巻き取り回転方向に蓄積された弾力が作用するようにセットされる。この回転駆動体2の装着状態においては、爪車23の歯230と前記爪100の爪部100aとが噛み合うようになっている。
【0042】
回転駆動体2には、合成樹脂製のリール3が着脱自在に取り付けられている。リール3は、同じ外径を有する三枚のフランジ30、31、32を同心に所要間隔で平行に配し、これらの中心を軸部材33でつないだ構造を有している。軸部材33は、ほぼ円筒形状に形成されており(図4参照)、軸部材33の内部には区画板34が形成されている。区画板34の中心には、軸棒体103の頂部が収まる通し孔340が形成されている。
【0043】
軸部材33の内部において、区画板34で隔てられた大きい側には、前記回転駆動体2の上板21と側板22が嵌入される凹みである嵌合凹部35が形成されている。嵌合凹部35の内周部には、前記各係合突条26と嵌合する係合溝36が四箇所に形成されている。各係合突条26と各係合溝36が係合することにより、リール3と回転駆動体2は、一体となって回転する。
【0044】
また、各フランジ30、31、32の間の二箇所の空間は、イヤフォンケーブル4を巻き取る第1の区画である第1の巻取部37及び第2の区画である第2の巻取部38となっている。区画フランジである中間のフランジ31には、相対向する位置にケーブル掛け溝39が形成されている。各ケーブル掛け溝39は、フランジ31の半径線方向から前記軸部材33の外周面に沿うように曲がって形成されており、イヤフォンケーブル4のケーブル40の中間部分を外れないように掛けることができるようにしてある。
【0045】
このように、各部品をケース本体10に取り付けて蓋11を閉じると、図4に示すように、リール3は貯蔵ケース1内にちょうど収まり、内部で貯蔵ケース1の内面に対し摺動しながら、どちらの回転方向へも自在に回転することができる。
【0046】
なお、本実施の形態では、第1の出入口108及び第2の出入口109を貯蔵ケース1の側板102に相対向して二箇所に設けた構造としたが、例えば前記した特許文献1の図1に示されているように、出入口を一箇所だけに設けて、この出入口からイヤフォンケーブル4のケーブル40両端のプラグ41とイヤフォン42を外側へ出すようにした構造としてもよい。
【0047】
(作用)
図1乃至図4を参照してケーブル貯蔵機器Aを備えたイヤフォンケーブルセットEの作用を説明する。
まず、ケーブル貯蔵機器Aのリール3に、使用者が使用したいイヤフォンケーブル、例えば市販されている汎用のインナーイヤー型のイヤフォンケーブル4を巻き取って、貯蔵ケース1内に収容した状態とする。イヤフォンケーブル4は、他のイヤフォンケーブルとの交換又は故障したときの交換も任意に行うことができる。
【0048】
なお、前記イヤフォンケーブル4の巻き取りにおいては、まず、ケーブル40の中間部をリール3のフランジ31に形成してあるケーブル掛け溝39の奥側に掛け、ケーブル40のプラグ41側とイヤフォン42側をそれぞれ第1の巻取部37及び第2の巻取部38に同じ方向に巻き付けるようにする。
【0049】
常態においては、イヤフォンケーブル4は前記のようにしてリール3に巻き取られた状態で、イヤフォンケーブル4のケーブル40両端のプラグ41とイヤフォン42が貯蔵ケース1の各出入口108、109からそれぞれ外側へ出してある(図2参照)。このとき、回転駆動体2に対しては、渦巻きばね28によるイヤフォンケーブル4を巻き取る回転方向の弾力は作用していない。
【0050】
この状態から、イヤフォンケーブル4のケーブル40両端のプラグ41側とイヤフォン42側を引っ張り、ケーブル40を繰り出すと、リール3は、渦巻きばね28による蓄積された弾力に抗して回転する回転駆動体2と一体となって回転する。この際のリール3の回転方向は、図1に示したリール3のフランジ30上面二箇所に表示されている矢印方向である。
【0051】
そして、イヤフォンケーブル4の引っ張り操作をやめると、リール3と回転駆動体2は渦巻きばね28による弾力でイヤフォンケーブル4を巻き取る方向(前記矢印方向とは逆方向)へ僅かに回転することにより回転駆動体2の爪車23の歯230に爪100の爪部100aが係合し、リール3と回転駆動体2の回転を止めるロック状態となる。このようにして、イヤフォンケーブル4の長さを必要な長さに調整することができる。
【0052】
また、イヤフォンケーブル4の使用をやめて貯蔵ケース1内に収容するときは、貯蔵ケース1の基板101外面から突出している爪100の操作部100bを基板101外面に表示してある矢印の方向(図3(a)参照)へ弾性変形させて動かすと、爪100の爪部100aと爪車23の歯230との係合状態が解除され、ロック状態も解除される。これにより、リール3は、渦巻きばね28の弾力によって回転する回転駆動体2と一体となって回転し、イヤフォンケーブル4をもとの収容状態まで巻き取ることができる。
【0053】
また、回転駆動体2に装着され、回転駆動体2を中心として一体となって回転するリール3は、外周部に爪車23を有する回転駆動体2より外径が大きくなっている。つまり、ロック機構部Rを構成する爪車23と爪100が、イヤフォンケーブル4のケーブル40が繰り出されたり巻き取られたりするリール3の外周部とはリール3の半径線方向へ一定距離だけ離れている(図4参照)。
【0054】
これにより、前記したようにイヤフォンケーブル4を繰り出したり巻き取ったりする際に、イヤフォンケーブル4が振れたり緩んだりしても、リール3の回転を止めるロック機構部Rにイヤフォンケーブル4が干渉しないようになっており、イヤフォンケーブル4がロック機構部Rに絡まって操作ができなくなることを防止できる。
【0055】
また、本実施の形態では、常態においては爪車23の歯230と係合し、爪車23に対するロックを解除する方向へ弾性変形することができる爪100が、貯蔵ケース1のケース本体10に一体成形により設けられている。このように、リール3の回転を止めるロック機構部Rの部品点数を少なくして、より簡易な構造とすることで、故障や不具合が起こりにくいようにすることができ、信頼性も向上する。また、製造時において組み立てに要する手間も軽減することができる。
【0056】
なお、本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形が可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0057】
E イヤフォンケーブルセット
A ケーブル貯蔵機器
1 貯蔵ケース
10 ケース本体
100 爪
100a 爪部
100b 操作部
101 基板
101a 空隙
102 側板
103 軸棒体
104 割り溝
105 係合部
106 蓋取付部
107 係合穴
108 第1の出入口
109 第2の出入口
11 蓋
111 蓋板
112 取付部
113 係合爪
114 閉鎖突片
12 収容部
2 回転駆動体
21 上板
22 側板
23 爪車
230 歯
24 空間
25 装着孔
26 係合突条
27 バネ掛け片
28 渦巻きばね
281 掛け部
282 掛け部
3 リール
30、31、32 フランジ
33 軸部材
34 区画板
340 通し孔
35 嵌合凹部
36 係合溝
37 第1の巻取部
38 第2の巻取部
39 ケーブル掛け溝
R ロック機構部
4 イヤフォンケーブル
40 ケーブル
41 プラグ
42 イヤフォン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器用のケーブルを繰り返し繰り出し及び巻き戻しする機器であって、
弾性変形する素材で形成されている基板(101)と当該基板(101)と連設されている側板(102)とで囲まれて形成されている収容部(12)と、当該収容部(12)につながる開口と、を有するケース本体(10)と、
当該ケース本体(10)の前記開口を塞ぐ蓋(11)と、
中央部分に凹み(35)を有し、前記ケース本体(10)の収容部(12)に収容されてケーブルを巻き取って貯蔵するリール(3)と、
前記側板(102)の相対向する二箇所に形成されており、前記リール(3)に貯蔵されたケーブルを通す第1の出入口(108)及び第2の出入口(109)と、
中央部分に前記リール(3)の凹み(35)に収容される凸筒状部(2)を備え、当該凸筒状部(2)の周りに設けられ複数の歯(230)を有し前記リール(3)と共に回転する爪車(23)と、
当該爪車(23)の歯(230)と噛み合い前記リール(3)の回転を制御する爪(100)と、
前記爪車(23)の凸筒状部(2)内に収納されており、前記リール(3)に巻き取られたケーブルを繰り出すとリール(3)の回転に伴って弾力を蓄積し、前記リール(3)にケーブルを巻き戻すときに前記蓄積された弾力を利用する渦巻きばね(28)と、
を備え、
前記爪(100)は、前記基板(1)と一体に成型されており、常態では前記爪(100)の係合部が前記爪車(23)と噛み合っており、前記爪(100)を前記基板(1)の外側から操作して弾性変形させて前記係合部と前記爪車(23)との噛み合いを解除できることを特徴とする、
ケーブル貯蔵機器。
【請求項2】
リール(3)は、両端にそれぞれフランジ(30,32)を有し、当該両フランジ(30,32)間の中間部分に区画フランジ(31)を備え、両端のフランジ(30,32)と区画フランジ(31)の間に、第1の区画(37)と第2の区画(38)を有しており、第1の区画(37)にはケーブルの長さ方向の何れか一方側が巻き取られ、第2の区画(38)には他方側が巻き取られるようにした、
請求項1記載のケーブル貯蔵機器。
【請求項3】
前記第1の出入口(108)と第2の出入口(109)は、前記ケース本体(10)の開口縁から基板(101)に向かって切り欠いて設けられており、第1の出入口(108)はリール(3)の第1の区画(37)と対応する深さに、第2の出入口(109)は第2の区画(38)と対応する深さを有し、前記蓋(11)のうち、第2の出入口(109)と対応する箇所には、閉蓋時に第2の出入口(109)の第1の区画(37)に対応する箇所を部分的に閉鎖する閉鎖突片(114)が形成されている、
請求項2記載のケーブル貯蔵機器。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載のケーブル貯蔵機器にケーブルが貯蔵されている、
ケーブルセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−75756(P2013−75756A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217749(P2011−217749)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(311011564)株式会社ビフォーアフターグループ (1)
【Fターム(参考)】