説明

ケーブル

【課題】本発明では、数GHz程度の高周波も含めた広い帯域のノイズが、ケーブルに沿って伝播することを抑制するための技術を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明では、信号線1と、信号線1の外周を覆う第1の誘電体層2と、第1の誘電体層2の外周を覆う第1の導体3と、第1の導体3の外周を覆う第2の誘電体層と、第2の誘電体層の外周を部分的に覆う島状導体を有する第2の導体5と、を有するケーブルを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
信号線と、この信号線の外周を覆う誘電体層と、この誘電体層の外周を覆う導体と、を有するケーブルがある。このようなケーブルは、例えば、2つの機器どうしを接続し、1つの機器から他の機器に信号を伝播するために用いられる。
【0003】
ここで、上記機能を有するケーブルは、意図せずノイズを伝播してしまうという問題がある。例えば、機器内のプリント回路基板で発生したノイズ電流がコネクタを経由してケーブルに移り、誘電体層の外周を覆う導体を介して伝播したり、電磁波として誘電体層やビニルなどからなるケーブルの被覆層およびその周辺の空気を介して伝播したりする場合がある。
【0004】
近年、電子機器に利用される周波数が高くなるに伴い、発生するノイズの帯域は高周波方向にシフトし、例えば数GHzに達するものもある。
【0005】
そこで、高周波も含めた広い帯域のノイズがケーブルに沿って伝播することを抑制する手段が望まれる。
【0006】
ここで、特許文献1には、プリント回路基板上のコネクタ周辺部に、EBG(Electromagnetic Band Gap:電磁バンドギャップ)構造体を配置することで、高周波も含めた広い帯域のノイズがコネクタに移るのを防止する手段が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−236027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の技術では、予期せぬ理由によりケーブルにノイズが移ってしまった場合、ケーブルに沿ったノイズの伝播を抑制することができない。
【0009】
本発明は、数GHz程度の高周波も含めた広い帯域のノイズがケーブルに移ってしまった場合に、そのケーブルに沿ったノイズの伝播を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、信号線と、前記信号線の外周を覆う第1の誘電体層と、前記第1の誘電体層の外周を覆う第1の導体と、前記第1の導体の外周を覆う第2の誘電体層と、前記第2の誘電体層の外周を部分的に覆う島状導体を有する第2の導体と、を有するケーブルが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、数GHz程度の高周波も含めた広い帯域のノイズが、ケーブルに沿って伝播することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態1のケーブルの一例を模式的に示す斜視図である。
【図2】実施形態1のケーブルの一例を模式的に示す断面図である。
【図3】実施形態1のケーブルの一例を模式的に示す斜視図である。
【図4】実施形態1のケーブルが有するEBG構造体の一例を模式的に示す断面図である。
【図5】実施形態1のケーブルが有するEBG構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
【図6】実施形態2のケーブルの第2の導体の一例を模式的に示す平面図である。
【図7】実施形態3のケーブルの一例を模式的に示す斜視図である。
【図8】実施形態4のケーブルの第2の導体の一例を模式的に示す平面図である。
【図9】実施形態4のケーブルが有するEBG構造体の一例を模式的に示す断面図である。
【図10】実施形態4のケーブルが有するEBG構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
【図11】実施形態4のケーブルが有するEBG構造体の単位セルの等価回路図である。
【図12】実施形態5のケーブルの第2の導体の一例を模式的に示す平面図である。
【図13】実施形態5のケーブルが有するEBG構造体の単位セルの等価回路図である。
【図14】実施形態6のケーブルの第2の導体の一例を模式的に示す平面図である。
【図15】実施形態6のケーブルが有するEBG構造体の単位セルの等価回路図である。
【図16】実施形態7のケーブルの第2の導体の一例を模式的に示す平面図である。
【図17】実施形態7のケーブルが有するEBG構造体の単位セルの等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、上述の問題を解決した本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0014】
<実施形態1>
図1に本実施形態のケーブルの一部の一例を模式的に示した斜視図を示す。また、図2に、図1のケーブルの断面図を示す。
【0015】
図1および図2に示すように、本実施形態のケーブルは、信号線1と、信号線1の外周を覆う第1の誘電体層2と、第1の誘電体層2の外周を覆う第1の導体3と、第1の導体3の外周を覆う第2の誘電体層4(図1中、図示せず)と、第2の誘電体層4の外周を覆い、少なくとも一部領域に繰り返し構造を有している第2の導体5と、第2の誘電体層4の内部に設けられる接続部材6と、を有する。第1の導体3と第2の導体5とは、第2の誘電体層4を挟んで対向している。
【0016】
信号線1は、信号を伝播するための線であり、銅などの導電性の材料で構成することができる。本実施形態のケーブルにおける信号線の数は、図1および図2に示す1本に限られず、2本以上であってもよい。
【0017】
第1の誘電体層2は、信号線1の外周を覆うように構成される。信号線1が2本以上ある場合、第1の誘電体層2は2本以上の信号線のすべてを内部に包含するように構成される。第1の誘電体層2の材料は特段制限されないが、例えばポリエチレン、空気などで構成することができる。
【0018】
第1の導体3は、第1の誘電体層2の外周を覆うように構成される。第1の導体3は、銅などの導電性の材料で構成することができる。なお、第1の導体3は、屈曲性向上などの目的で、編込み形状に構成されてもよい。また、第1の導体3は2層以上の導体を積層した積層体であってもよい。
【0019】
なお、上述した本実施形態の信号線1、第1の誘電体層2、および、第1の導体3は、周知の技術を利用したあらゆる構成とすることができる。当該前提は、以下のすべての実施形態において同様である。
【0020】
第2の誘電体層4は、第1の導体3の外周を覆うよう構成される。第2の誘電体層4の材料は特段制限されず、ポリエチレン、空気などであってもよいし、または、一般的にケーブルの最も外側の被覆層として使用されているビニル、ゴム、ウレタン、などであってもよい。第2の誘電体層4の厚さは設計事項である。
【0021】
第2の導体5は、第2の誘電体層4の外周を覆い、少なくとも一部領域に繰り返し構造を有している。本実施形態の繰り返し構造は、図1に示すような、ケーブルの長手方向沿いに分離した複数の島状導体からなる。すなわち、島状導体が、ケーブルの長手方向沿いに繰り返し、例えば周期的に配列されることで、繰り返し構造を構成している。なお、島状導体の「繰り返し」には、島状導体が部分的に欠落している場合も含まれる。また、島状導体の「周期的」には、一部の島状導体そのものの配置がずれている場合も含まれる。この島状導体は、以下で説明する通り、EBG構造体の構成要素の一部となるが、島状導体の「周期的」が厳密な意味での「周期的」を満たさない場合においても、島状導体を構成要素の一部とするEBG構造体のメタマテリアルとしての特性を得ることができる。このため、島状導体の「周期的」にはある程度の欠陥が許容される。なお、島状導体が繰り返し配置されるのでなく、1つだけ配置された場合であっても、島状導体を構成要素の一部とするEBG構造体のメタマテリアルとしての特性を得ることができる場合がある。このような実施形態は、以下で示す。
【0022】
また、「少なくとも一部領域に」とは、ケーブルの全長に亘って繰り返し構造を有してもよいし、一部に繰り返し構造を有してもよいことを意味する。すなわち、島状導体(第2の導体5)は、ケーブルの全長に亘って繰り返し設けられてもよいし、一部領域にのみ繰り返し設けられてもよい。このように一部領域のみに設けた場合であっても、島状導体(第2の導体5)を構成要素の一部とするEBG構造体のメタマテリアルとしての特性を得ることができる。
【0023】
第2の導体5の原料は特段制限されず、例えば銅等を選択できる。島状導体(第2の導体5)の平面形状についても特段制限されず、図1および図2に示すような、長方形のほか、三角形、その他の四角形、五角形、それ以上の頂点を有する多角形、円形等、あらゆる形状を選択できる。本実施形態のケーブルは、このような平面形状の島状導体(第2の導体5)が、第2の誘電体層4の外周沿いに巻き付けられた構成である。なお、図1および図2において、第2の誘電体層4の外周沿いに巻き付けられた各島状導体(第2の導体5)は外周沿いにスリットを有しているが、このような構成に限定されず、図3に示すように、スリットを有さない構成とすることも可能である。また、図1においては、スリット位置は直線状に並んでいるが、このような構成に限定されない。
【0024】
さらに、島状導体(第2の導体5)は、大きさおよび/または形状が異なる2種類以上の島状導体(第2の導体5)からなってもよい。かかる場合、2種類以上の島状導体(第2の導体5)は、各種それぞれ周期的に配列されるのが望ましい。なお、「周期的」は、一部の島状導体(第2の導体5)が欠けている場合や、配置がずれている場合、すなわち厳密な意味での「周期的」を満たさない場合も含む概念である。島状導体(第2の導体5)の大きさ、相互間隔等は、伝播を抑制するノイズの周波数に応じて定められる設計事項である。
【0025】
接続部材6は、第2の誘電体層4の内部に設けられ、第1の導体3と、島状導体(第2の導体5)と、を電気的に接続するよう構成される。接続部材6は、例えば、銅、アルミニウム、ステンレス等の金属で構成することができる。この接続部材6は、ケーブルの長手方向に沿って繰り返し配列されることとなるが、全部の島状導体(第2の導体5)それぞれに対応するよう設けられてもよいし、一部の島状導体(第2の導体5)に対応するよう設けられてもよい。すなわち、すべての島状導体(第2の導体5)を第1の導体3と電気的に接続してもよいし、一部の島状導体(第2の導体5)を第1の導体3と電気的に接続してもよい。
【0026】
この接続部材6は、以下で説明するように、EBG構造体の構成要素の一部となるが、周期的に設けられるのが望ましい。ここでの「周期的」には、一部の接続部材6そのものの配置がずれている場合、すなわち厳密な意味での「周期的」を満たさない場合も含む概念である。
【0027】
本実施形態のケーブルは、第2の導体5の外周を覆い、ケーブルの最も外側の層となる被覆層(図示せず)を設けてもよい。被覆層は、一般的なケーブルの最も外側の層と同様に、ビニル、ゴム、ウレタン、などの材料で構成することができる。
【0028】
このような本実施形態のケーブルの製造方法は特段制限されないが、以下のような製造方法であってもよい。
【0029】
例えば、従来技術に準じて、信号線1と、信号線1の外周を覆う第1の誘電体層2と、第1の誘電体層2の外周を覆う第1の導体3と、からなる積層体を形成した後、さらに、第1の導体3の外周を覆う第2の誘電体層4を形成する。
【0030】
第2の誘電体層4を一般的なケーブルの最も外側の層として使用されているビニル、ゴム、ウレタン、などの材料で構成する場合には、従来技術に準じて第2の誘電体層4を形成することができる。一方、第2の誘電体層4をポリエチレンで構成する場合には、第1の誘電体層2として信号線1の外周を覆うポリエチレンの層を形成する従来技術に準じて、第2の誘電体層4を形成することができる。
【0031】
その後、ドリルなどを用いて、第2の誘電体層4に、第1の導体3に到達する穴を形成する。この穴は、ケーブルの長手方向に沿って繰り返し(例えば周期的に)設けられる。この穴は、ケーブルの全長に亘って設けられてもよいし、または、一部領域に設けられてもよい。
【0032】
次に、上記処理で設けた穴に、銅、アルミニウム、ステンレス等の金属で構成される接続部材6を挿入する。接続部材6の長さは、誘電体層4の厚さと同一またはそれよりわずかに長く構成するのが望ましい。
【0033】
その後、複数の島状導体(第2の導体5)を誘電体層4の外周に、ケーブルの長手方向に沿って繰り返し配列されるように巻き付ける。この島状導体(第2の導体5)の巻き付けにより、接続部材6は、第1の導体3と接するとともに、島状導体(第2の導体5)とも接する状態で固定される。なお、島状導体(第2の導体5)のケーブル外周方向の長さと、第2の誘電体層4の外周の長さを適当に調節することで、図1に示すようなスリットを設ける構成や、図3に示すようなスリットを設けない構成を実現することができる。
【0034】
ここで、第2の誘電体層4を一般的なケーブルの最も外側の層として使用されているビニル、ゴム、ウレタン、などの材料で構成した場合の本実施形態のケーブルの製造方法によれば、一般的に流通しているケーブルを加工することで、本実施形態のケーブルを実現することも可能となる。
【0035】
次に、本実施形態のケーブルの作用効果について説明する。
【0036】
本実施形態のケーブルは、第1の導体3と、第2の導体5と、接続部材6と、により、図4および図5に示すようなEBG構造体を構成している。図4は、EBG構造体の構成を模式的に示す断面図であり、図5は、図4のEBG構造体の斜視図である。
【0037】
以下、図4および図5に示すEBG構造体について説明する。なお、図4および図5に示すEBG構造体は一般的に知られている構造体であるため、等価回路図を用いた説明は省略する。
【0038】
図4および図5に示すEBG構造体は、シート状導体3Aと、島状導体5Aと、接続部材6Aと、を有する。図4および図5に示すEBG構造体の島状導体5Aは、平面視でシート状導体3Aと重なる領域であって、シート状導体3Aから離れた位置に、誘電体層(図示せず)を挟んで配置されている。また、島状導体5Aは、周期的に配列されている。なお、配列する島状導体5Aの数は図示するものに限定されず、縦1列以上×横1列以上であらゆる設計が可能である。接続部材6Aは、島状導体5Aと、シート状導体3Aとを導通している。このEBG構造体は、1つの島状導体5Aと、この島状導体5Aと接続する接続部材6Aと、シート状導体3Aの中のこの島状導体5Aに対向する領域を含む一部領域と、を含むEBG構造を構成する単位セルAを有し、単位セルAが複数存在する場合には、複数の単位セルAは繰り返し配置される。例えば、図示するように、単位セルAは周期性をもって配列されてもよい。このような1つの単位セルA、および、単位セルAが繰り返し、例えば周期的に配置された構造体は、メタマテリアル、例えばEBG(Electromagnetic Band Gap)として機能する。
【0039】
ここで、単位セルAの「繰り返し」には、いずれかの単位セルAにおいて構成の一部が欠落している場合も含まれる。また単位セルAが2次元配列を有している場合には、「繰り返し」には単位セルAが部分的に欠落している場合も含まれる。また「周期性」には、一部の単位セルAにおいて構成要素(島状導体5A、接続部材6A)の一部がずれている場合や、一部の単位セルAそのものの配置がずれている場合も含まれる。すなわち厳密な意味での周期性が崩れた場合においても、単位セルAが繰り返し配置されている場合には、メタマテリアルとしての特性を得ることができるため、「周期性」にはある程度の欠陥が許容される。なお、上述の前提は、以下のすべてのEBG構造体において同様である。
【0040】
このEBG構造体は、いわゆるマッシュルーム構造を有するEBG構造体であり、島状導体5Aとシート状導体3Aとの間隔、接続部材6Aの太さおよび/または長さ、島状導体5Aが複数存在する場合にはこれらの相互間隔等を調節することで、バンドギャップとなる周波数帯を調節することができる。このEBG構造体によれば、シート状導体3Aの表面におけるノイズの伝播を抑制することが可能となる。また、島状導体5Aが複数存在する場合には、隣り合う島状導体5AどうしがC(キャパシタンス)を構成することで、EBG構造体付近におけるノイズの伝播を抑制できる。
【0041】
本実施形態のケーブルは、図4および図5に示すEBG構造体を有している。すなわち、第1の導体3が図4および図5に示すEBG構造体のシート状導体3Aとして機能し、島状導体(第2の導体5)が図4および図5に示すEBG構造体の島状導体5Aとして機能し、接続部材6が図4に示すEBG構造体の接続部材6Aとして機能する。
【0042】
このような本実施形態のケーブルによれば、第1の導体3の表面におけるノイズ電流の伝播を抑制することが可能となる。また、隣り合う島状導体(第2の導体5)どうしがC(キャパシタンス)を構成することで、EBG構造体付近におけるノイズ電磁波の伝播、例えば第2の誘電体層4や第2の導体5の外周を覆う被覆層(図示せず)やその付近の空気を介したノイズ電磁波の伝播を抑制できる。本実施形態のケーブルでは、複数の島状導体(第2の導体5)と第1の導体3との間隔、接続部材6の太さおよび長さ、隣り合う島状導体(第2の導体5)の相互間隔等を調節することで、バンドギャップとなる周波数帯を調節することができる。
【0043】
なお、ケーブルと、EBG構造体と、を単に組み合わせただけでは、本実施形態のケーブルの作用効果を実現することはできない。
【0044】
信号線と、この信号線の外周を覆う誘電体層と、この誘電体層の外周を覆う導体と、を有するケーブルに、図4および5に示すような、シート状導体3Aと、互いに分離した複数の島状導体5Aと、複数の接続部材6Aと、を有するEBG構造体を組み合わせる場合、例えば、誘電体層の外周を覆う導体の外側に新たな誘電体層を設け、その外側に、図4および5に示すようなEBG構造体を設ける手段が考えられる。しかし、このような、誘電体層の外周を覆う導体と、EBG構造体との間に誘電体層が介在する場合、すなわち、誘電体層の外周を覆う導体と、EBG構造体とが電気的に分離した状態となる場合には、この誘電体層の外周を覆う導体とEBG構造体との間に存在する誘電体層を介してノイズが伝播してしまうことを、本発明者は発見した。すなわち、信号線と、この信号線の外周を覆う誘電体層と、この誘電体層の外周を覆う導体と、を有するケーブルの外側にEBG構造体を単に設けただけでは、ケーブルに沿ったノイズの伝播を抑制することができないことを、本発明者は見出した。
【0045】
本実施形態のケーブルは、誘電体層の外周を覆う導体を、EBG構造体の構成要素の一部とすることで、上記問題をも解決している。
【0046】
<実施形態2>
本実施形態のケーブルは実施形態1の構成を基本とし、島状導体(第2の導体5)の構成が異なる。
【0047】
図6に、本実施形態の島状導体(第2の導体5)の平面形状の一例を示す。図6に示すように、本実施形態の島状導体(第2の導体5)には開口7が設けられ、この開口7の中には、一端が島状導体(第2の導体5)と電気的に接続し、他端側が接続部材6と電気的に接続する第1の配線8が設けられている。
【0048】
開口7の形状は、図示する長方形に限定されず、三角形、その他の四角形、五角形、それ以上の頂点を有する多角形、円形等、あらゆる形状を選択できる。また、開口7は図示するようにすべての島状導体(第2の導体5)に設けられてもよいがこれに限定されず、一部の島状導体(第2の導体5)に設けられてもよい。一部の島状導体(第2の導体5)に開口7を設ける場合には、周期的(例:1個おきなど)に設けるのが望ましい。なお、「周期的」は、一部の開口7が欠けている場合や、配置がずれている場合、すなわち厳密な意味での「周期的」を満たさない場合も含む概念である。
【0049】
第1の配線8は例えば銅などの導電性の材料で構成することができる。その形状は図示するような直線に限定されず、曲線などその他の形状とすることもできる。また、第1の配線8は、開口7の内部でスパイラル形状を構成してもよい。第1の配線8は、一端が島状導体(第2の導体5)と電気的に接続し、他端側が接続部材6と電気的に接続するが、図6に示すように他端が接続部材6と電気的に接続するのが望ましい。このように構成すれば、島状導体(第2の導体5)と、接続部材6と、の間の距離を長くすることが可能となる。その結果、EBG構造体におけるL(インダクタンス)をより大きくすることが可能となる。
【0050】
このような本実施形態のケーブルの製造方法は特段制限されず、例えば、実施形態1で説明した製造方法に準じて実現することができる。
【0051】
すなわち、信号線1と、第1の誘電体層2と、第1の導体3と、第2の誘電体層4と、接続部材6と、からなる構造体を形成した後、第2の誘電体層4の外周に、本実施形態の島状導体(第2の導体5)、例えば図6に示すような形状に形成された複数の島状導体(第2の導体5)を、ケーブルの長手方向に沿って繰り返し配列されるように巻き付けることで製造することができる。なお、第2の誘電体層4の外周に巻き付ける島状導体(第2の導体5)の向きは特段制限されない。すなわち、図6に示すような直線状の第1の配線8の長手方向がケーブルの長手方向と略並行になってもよいし、この第1の配線8の長手方向がケーブルの長手方向と略垂直になってもよい。
【0052】
なお、図6に示すような形状に形成された複数の島状導体(第2の導体5)は、片面にテープなどを張り付けて、第1の配線8の位置を固定してもよい。かかる場合、島状導体(第2の導体5)は、このテープがケーブルの外周側に位置するように巻き付けられる。
【0053】
次に、本実施形態のケーブルの作用効果について説明する。
【0054】
本実施形態のケーブルは、第1の導体3と、第2の導体5と、第1の配線8と、接続部材6と、により、図4および図5に示すようなEBG構造体の単位セルAと同じ等価回路となる単位セルAを有するEBG構造体を構成している。しかし、本実施形態のケーブルが有するEBG構造体は、複数の島状導体(第2の導体5)に開口7を設け、開口7の中に設けられた第1の配線8を介して複数の島状導体(第2の導体5)と接続部材6とを接続するよう構成することで、図4および図5に示すEBG構造体の接続部材6Aの長さを、実施形態1のケーブルよりも長くすることを実現している。すなわち、接続部材6の長さが実施形態1と同じである場合、本実施形態のEBG構造体の方が、実施形態1のEBG構造体よりも、図4および図5に示す接続部材6AによるL(インダクタンス)が大きくなっている。
【0055】
このような本実施形態のケーブルによれば、実施形態1と同様に、第1の導体3の表面におけるノイズの伝播を抑制することが可能となる。また、隣り合う島状導体(第2の導体5)どうしがC(キャパシタンス)を構成することで、EBG構造体付近におけるノイズの伝播、例えば第2の誘電体層4や第2の導体5の外周を覆う被覆層(図示せず)やその付近の空気を介したノイズの伝播を抑制できる。本実施形態のケーブルでは、複数の島状導体(第2の導体5)と第1の導体3との間隔、接続部材6の太さおよび長さ、複数の島状導体(第2の導体5)の相互間隔、開口7の大きさ、第1の配線8の太さおよび長さ等を調節することで、バンドギャップとなる周波数帯を調節することができる。
【0056】
また、本実施形態のケーブルは、接続部材6のみならず、第1の配線8によってもL(インダクタンス)を形成することができるので、所望のL(インダクタンス)を形成するための接続部材6の長さを、実施形態1のケーブルに比べて短くすることが可能となる。かかる場合、第2の誘電体層4の厚さを薄くすることが可能となり、結果、実施形態1のケーブルに比べて細く、軽量なケーブルが実現される。
【0057】
<実施形態3>
本実施形態のケーブルは実施形態1の構成を基本とし、島状導体(第2の導体5)の構成が異なる。
【0058】
図7に本実施形態のケーブルの一部の一例を模式的に示した斜視図を示す。図7に示すように、本実施形態の島状導体(第2の導体5)は帯状に形成され、一端側において接続部材6と電気的に接続し、第1の導体3の外周を覆う第2の誘電体層4(図示せず)の外周を周回している。帯状の島状導体(第2の導体5)の長さおよび幅は、伝播を抑制するノイズの周波数に応じて定められる設計事項である。なお、すべての島状導体(第2の導体5)が帯状に形成されてもよいし、一部の島状導体(第2の導体5)が帯状に形成されてもよい。一部の島状導体(第2の導体5)を帯状に形成する場合には、帯状の島状導体(第2の導体5)が周期的(例:1個おきなど)に配列されるのが望ましい。なお、「周期的」は、一部の帯状の島状導体(第2の導体5)が欠けている場合や、配置がずれている場合、すなわち厳密な意味での「周期的」を満たさない場合も含む概念である。
【0059】
このような本実施形態のケーブルの製造方法は特段制限されず、例えば、実施形態1で説明した製造方法に準じて実現することができるので、ここでの説明は省略する。
【0060】
次に、本実施形態のケーブルの作用効果について説明する。
【0061】
本実施形態のケーブルは、第1の導体3と、第2の導体5と、接続部材6と、により、EBG構造体を構成している。本実施形態のEBG構造体の単位セルAは、実施形態1で説明したEBG構造体の単位セルAを一部変形したものとなる。
【0062】
このような本実施形態のケーブルによれば、実施形態1と同様に、第1の導体3の表面におけるノイズの伝播を抑制することが可能となる。また、隣り合う島状導体(第2の導体5)どうしがC(キャパシタンス)を構成することで、EBG構造体付近におけるノイズの伝播、例えば第2の誘電体層4や第2の導体5の外周を覆う被覆層(図示せず)やその付近の空気を介したノイズの伝播を抑制できる。本実施形態のケーブルでは、複数の島状導体(第2の導体5)と第1の導体3との間隔、接続部材6の太さおよび長さ、帯状の島状導体(第2の導体5)の太さおよび長さ等を調節することで、バンドギャップとなる周波数帯を調節することができる。
【0063】
<実施形態4>
本実施形態のケーブルは実施形態1の構成を基本とし、島状導体(第2の導体5)の構成が異なる点と、接続部材6を有さない点が異なる。
【0064】
図8に、本実施形態の島状導体(第2の導体5)の平面形状の一例を示す。図8に示すように、本実施形態の島状導体(第2の導体5)には開口7が設けられ、この開口7の中には、一端が島状導体(第2の導体5)と電気的に接続している第2の配線9が設けられている。
【0065】
開口7の形状は、図示する正方形に限定されず、三角形、その他の四角形、五角形、それ以上の頂点を有する多角形、円形等、あらゆる形状を選択できる。また、開口7は図示するようにすべての島状導体(第2の導体5)に設けられてもよいがこれに限定されず、一部の島状導体(第2の導体5)に設けられてもよい。一部の島状導体(第2の導体5)に開口7を設ける場合には、周期的(例:1個おきなど)に設けるのが望ましい。なお、「周期的」は、一部の開口7が欠けている場合や、配置がずれている場合、すなわち厳密な意味での「周期的」を満たさない場合も含む概念である。
【0066】
第2の配線9は例えば銅などの導電性の材料で構成することができる。その形状は図示するような直線に限定されず、曲線などその他の形状とすることもできる。また、第2の配線9は、開口7の内部でスパイラル形状を構成してもよい。
【0067】
このような本実施形態のケーブルの製造方法は特段制限されず、例えば、実施形態1、2で説明した製造方法に準じて実現することができる。すなわち、信号線1と、信号線1の外周を覆う第1の誘電体層2と、第1の誘電体層2の外周を覆う第1の導体3と、第1の導体3の外周を覆う第2の誘電体層4と、からなる構造体を形成した後、第2の誘電体層4の外周を覆うように、本実施形態の島状導体(第2の導体5)例えば図8に示すような島状導体(第2の導体5)を、ケーブルの長手方向に沿って繰り返し配列されるように巻き付けることで、製造することができる。
【0068】
次に、本実施形態のケーブルの作用効果について説明する。
【0069】
本実施形態のケーブルは、第1の導体3と、第2の導体5と、第2の配線9と、により、図9および図10に示すようなEBG構造体を構成している。図9は、EBG構造体の構成を模式的に示す断面図であり、図10は、図9のEBG構造体の斜視図である。
【0070】
このEBG構造体は、シート状導体3Aと、島状導体5Aと、島状導体5Aに設けられた開口7Aと、開口7Aの中に設けられた配線9Aと、により構成される。複数の島状導体5Aは、平面視でシート状導体3Aと重なる領域であって、シート状導体3Aから離れた位置に、誘電体層(図示せず)を挟んで配置されている。また、複数の島状導体5Aは、周期的に配列されている。なお、配列する島状導体5Aの数は図示するものに限定されず、縦1列以上×横1列以上であらゆる設計が可能である。島状導体5Aには開口7Aが設けられ、開口7Aの中には、一端が島状導体5Aに接続している配線9Aが設けられている。
【0071】
配線9Aはオープンスタブとして機能しており、シート状導体3Aのうち配線9Aに対向する部分及び配線9Aが、伝送線路、例えばマイクロストリップ線路を形成している。
【0072】
このEBG構造体は、1つの島状導体5Aと、この島状導体5Aの開口7Aの中に設けられた配線9Aと、シート状導体3Aの中のこれらに対向する領域を含む一部領域と、を含むEBG構造を構成する単位セルAが構成され、単位セルAが複数存在する場合には、複数の単位セルAは繰り返し配置される。例えば、図示するように、単位セルAは周期性をもって配列されてもよい。このような1つの単位セルA、および、単位セルAが繰り返し、例えば周期的に配置された構造体は、メタマテリアル、例えばEBG(Electromagnetic Band Gap)として機能する。図9および図10に示す例では、単位セルAは平面視において2次元配列を有している。
【0073】
図示する複数の単位セルAは互いに同一の構造を有し、同一の向きに配置されている。また、島状導体5Aおよび開口7Aは正方形で、中心が互いに重なるように配置されている。配線9Aは、開口7Aの一辺の略中央からこの辺に対して略垂直に延伸している。
【0074】
ここで、図11に、本実施形態のケーブルが有するEBG構造体の単位セルAの等価回路図を示す。
【0075】
図11に示すように、シート状導体3Aと島状導体5Aとの間にはC(キャパシタンス)が形成される。また、隣り合う島状導体5Aの相互間にもC(キャパシタンス)が形成される。そして、開口7Aを有する島状導体5AにはL(インダクタンス)が形成される。
【0076】
また、上記したように配線9Aはオープンスタブとして機能しており、シート状導体3Aのうち配線9Aに対向する部分と配線9Aとが、伝送線路(I)、例えばマイクロストリップ線路を形成している。伝送線路の他端は開放端になっている。
【0077】
このEBG構造体は、島状導体5Aとシート状導体3Aとの間隔、島状導体5Aが複数存在する場合にはこれらの相互間隔、開口7Aの大きさ、配線9Aの太さおよび長さ等を調節することで、バンドギャップとなる周波数帯を調節することができる。このEBG構造体によれば、シート状導体3Aの表面におけるノイズの伝播を抑制することが可能となる。また、島状導体5Aが複数存在する場合には、隣り合う島状導体5AどうしがC(キャパシタンス)を構成することで、EBG構造体付近におけるノイズの伝播を抑制できる。
【0078】
本実施形態のケーブルは、図9および図10に示すEBG構造体を有している。すなわち、第1の導体3が図9および図10に示すEBG構造体のシート状導体3Aとして機能し、島状導体(第2の導体5)が図9および図10に示すEBG構造体の島状導体5Aとして機能し、第2の配線9が図10に示すEBG構造体の配線9Aとして機能する。
【0079】
このような本実施形態のケーブルによれば、第1の導体3の表面におけるノイズ電流の伝播を抑制することが可能となる。また、隣り合う島状導体(第2の導体5)どうしがC(キャパシタンス)を構成することで、EBG構造体付近におけるノイズ電磁波の伝播、例えば第2の誘電体層4や第2の導体5の外周を覆う被覆層(図示せず)やその付近の空気を介したノイズ電磁波の伝播を抑制できる。本実施形態のケーブルでは、複数の島状導体(第2の導体5)と第1の導体3との間隔、複数の島状導体(第2の導体5)の相互間隔、開口7の大きさ、第2の配線9の太さおよび長さ等を調節することで、バンドギャップとなる周波数帯を調節することができる。
【0080】
なお、本実施形態のケーブルは、接続部材6を有さないので、軽量化を実現することができる。また、接続部材6と、第1の導体3および第2の導体5との電気的接続を確保する必要がないため、実施形態1乃至3のケーブルと比べて、比較的容易に製造することができるほか、品質安定性も高い。
【0081】
<実施形態5>
本実施形態のケーブルは実施形態4の構成を基本とし、島状導体(第2の導体5)の構成が異なる。
【0082】
図12に、本実施形態の島状導体(第2の導体5)の平面形状の一例を示す。図12に示すように、本実施形態の複数の島状導体(第2の導体5)には開口7が設けられ、この開口7の中には、一端が島状導体(第2の導体5)と電気的に接続している第2の配線9と、開口内導体10とを有し、第2の配線9の他端側は、開口内導体10と電気的に接続している。
【0083】
開口内導体10は、例えば銅などの導電性の材料で構成することができる。その形状は、図示する正方形に限定されず、三角形、その他の四角形、五角形、それ以上の頂点を有する多角形、円形等、あらゆる形状を選択できる。また、開口内導体10は図示するようにすべての開口7に設けられてもよいがこれに限定されず、一部の開口7に設けられてもよい。一部の開口7に開口内導体10を設ける場合には、周期的(例:1個おきなど)に設けるのが望ましい。なお、「周期的」は、一部の開口内導体10が欠けている場合や、配置がずれている場合、すなわち厳密な意味での「周期的」を満たさない場合も含む概念である。
【0084】
このような本実施形態のケーブルの製造方法は特段制限されず、例えば、実施形態4で説明した製造方法に準じて実現することができるので、ここでの説明は省略する。
【0085】
次に、本実施形態のケーブルの作用効果について説明する。
【0086】
本実施形態のケーブルは、第1の導体3と、第2の導体5と、第2の配線9と、開口内導体10と、によりEBG構造体を構成している。このEBG構造体は、1つの島状導体(第2の導体5)と、この島状導体(第2の導体5)の開口7内に設けられた第2の配線9および開口内導体10と、第1の導体3の中のこの島状導体(第2の導体5)、第2の配線9および開口内導体10に対向する領域を含む一部領域と、を含むEBG構造を構成する単位セルAが構成され、単位セルAが複数存在する場合には、複数の単位セルAは繰り返し配置される。例えば、単位セルAは周期性をもって配列されてもよい。このような1つの単位セルA、および、単位セルAが繰り返し、例えば周期的に配置された構造体は、メタマテリアル、例えばEBG(Electromagnetic Band Gap)として機能する。
【0087】
ここで、図13に、本実施形態のケーブルが有するEBG構造体の単位セルAの等価回路図を示す。
【0088】
図13に示すように、島状導体(第2の導体5)と第1の導体3との間には、C(キャパシタンス)が形成される。また、隣り合う島状導体(第2の導体5)の相互間にもC(キャパシタンス)が形成される。さらに、開口内導体10と第1の導体3との間にもC(キャパシタンス)が形成される。そして、開口7を有する島状導体(第2の導体5)にはL(インダクタンス)が形成される。また、島状導体(第2の導体5)と開口内導体10とを接続する第2の配線9は、L(インダクタンス)を有する。
【0089】
このようなEBG構造体を有する本実施形態のケーブルによれば、第1の導体3の表面におけるノイズ電流の伝播を抑制することが可能となる。また、隣り合う島状導体(第2の導体5)どうしがC(キャパシタンス)を構成することで、EBG構造体付近におけるノイズ電磁波の伝播、例えば第2の誘電体層4や第2の導体5の外周を覆う被覆層(図示せず)やその付近の空気を介したノイズ電磁波の伝播を抑制できる。本実施形態のケーブルでは、複数の島状導体(第2の導体5)と第1の導体3との間隔、複数の島状導体(第2の導体5)の相互間隔、開口7の大きさ、第2の配線9の太さおよび長さ、開口内導体10の大きさ等を調節することで、バンドギャップとなる周波数帯を調節することができる。
【0090】
なお、本実施形態のケーブルは、接続部材6を有さないので、軽量化を実現することができる。また、接続部材6と、第1の導体3および第2の導体5との接触を確保する必要がないため、実施形態1乃至3のケーブルと比べて、比較的容易に製造することができるほか、品質安定性も高い。
【0091】
<実施形態6>
本実施形態のケーブルは実施形態4の構成を基本とし、島状導体(第2の導体5)の構成が異なる。
【0092】
図14に、本実施形態の島状導体(第2の導体5)の平面形状の一例を示す。図14に示すように、本実施形態の島状導体(第2の導体5)には開口7が複数設けられ、この開口7の中には、一端が島状導体(第2の導体5)と電気的に接続している第2の配線9が設けられている。そして、このような島状導体(第2の導体5)は、複数の開口7がケーブルの長手方向沿いに並ぶように設けられる。
【0093】
開口7の形状は、図示する正方形に限定されず、三角形、その他の四角形、五角形、それ以上の頂点を有する多角形、円形等、あらゆる形状を選択できる。また、開口7はケーブルの長手方向に沿って繰り返し、例えば周期的に設けられるが、ケーブルの全長に亘って設けられてもよいし、一部領域に設けられてよい。なお、「周期的」は、一部の開口7が欠けている場合や、配置がずれている場合、すなわち厳密な意味での「周期的」を満たさない場合も含む概念である。
【0094】
第2の配線9は例えば銅などの導電性の材料で構成することができる。その形状は図示するような直線に限定されず、曲線などその他の形状とすることもできる。また、第2の配線9は、開口7の内部でスパイラル形状を構成してもよい。
【0095】
このような本実施形態のケーブルの製造方法は特段制限されず、例えば、実施形態4で説明した製造方法に準じて実現することができるので、ここでの説明は省略する。
【0096】
次に、本実施形態のケーブルの作用効果について説明する。
【0097】
本実施形態のケーブルは、第1の導体3と、第2の導体5と、第2の配線9と、によりEBG構造体を構成している。このEBG構造体は、1つの開口7の周辺の第2の導体5と、開口7内に設けられた第2の配線9と、第1の導体3の中の1つの開口7の周辺の第2の導体5および第2の配線9に対向する領域と、によりEBG構造を構成する単位セルAが構成されており、単位セルAが複数存在する場合には、複数の単位セルAは繰り返し配置される。例えば、単位セルAは周期性をもって配列されてもよい。このような1つの単位セルA、および、単位セルAが繰り返し、例えば周期的に配置された構造体は、メタマテリアル、例えばEBG(Electromagnetic Band Gap)として機能する。
【0098】
ここで、図15に、本実施形態のケーブルが有するEBG構造体の単位セルAの等価回路図を示す。
【0099】
図15に示すように、本実施形態のケーブルが有するEBG構造体の等価回路図は、図11に示す実施形態4のケーブルが有するEBG構造体の等価回路図を基本とし、隣り合う島状導体(第2の導体5)の相互間に形成されるC(キャパシタンス)がなくなったものである。
【0100】
すなわち、第1の導体3と島状導体(第2の導体5)との間にはC(キャパシタンス)が形成される。また、開口7を有する島状導体(第2の導体5)にはL(インダクタンス)が形成される。そして、第2の配線9はオープンスタブとして機能しており、第1の導体3のうち第2の配線9に対向する部分と第2の配線9とが、伝送線路(I)、例えばマイクロストリップ線路を形成している。伝送線路の他端は開放端になっている。
【0101】
このようなEBG構造体を有する本実施形態のケーブルによれば、第1の導体3の表面におけるノイズ電流の伝播を抑制することが可能となる。本実施形態のケーブルでは、第2の導体5と第1の導体3との間隔、第2の配線9の太さおよび長さ、開口7の大きさなどを調節することで、バンドギャップとなる周波数帯を調節することができる。
【0102】
なお、本実施形態のケーブルは、接続部材6を有さないので、軽量化を実現することができる。また、接続部材6と、第1の導体3および第2の導体5との接触を確保する必要がないため、実施形態1乃至3のケーブルと比べて、比較的容易に製造することができるほか、品質安定性も高い。
【0103】
<実施形態7>
本実施形態のケーブルは実施形態6の構成を基本とし、島状導体(第2の導体5)の構成が異なる。
【0104】
図16に、本実施形態の島状導体(第2の導体5)の平面形状の一例を示す。図16に示すように、本実施形態の島状導体(第2の導体5)には複数の開口7が設けられ、この開口7の中には、一端が第2の導体5と電気的に接続している第2の配線9と、開口内導体10とを有し、第2の配線9の他端側は、開口内導体10と電気的に接続している。
【0105】
開口内導体10は、例えば銅などの導電性の材料で構成することができる。その形状は、図示する正方形に限定されず、三角形、その他の四角形、五角形、それ以上の頂点を有する多角形、円形等、あらゆる形状を選択できる。また、開口内導体10は図示するようにすべての開口7に設けられてもよいがこれに限定されず、一部の開口7に設けられてもよい。一部の開口7に開口内導体10を設ける場合には、周期的(例:1個おきなど)に設けるのが望ましい。なお、「周期的」は、一部の開口内導体10が欠けている場合や、配置がずれている場合、すなわち厳密な意味での「周期的」を満たさない場合も含む概念である。
【0106】
このような本実施形態のケーブルの製造方法は特段制限されず、例えば、実施形態4で説明した製造方法に準じて実現することができるので、ここでの説明は省略する。
【0107】
次に、本実施形態のケーブルの作用効果について説明する。
【0108】
本実施形態のケーブルは、第1の導体3と、第2の導体5と、第2の配線9と、開口内導体10と、によりEBG構造体を構成している。このEBG構造体は、1つの開口7の周辺の第2の導体5と、開口7内に設けられた第2の配線9および開口内導体10と、第1の導体3の中の1つの開口7の周辺の第2の導体5、当該開口7の中の第2の配線9および開口内導体10に対向する領域と、によりEBG構造を構成する単位セルAが複数構成されており、複数の単位セルAは繰り返し配置されている。例えば、単位セルAは周期性をもって配列されてもよい。このような1つの単位セルA、および、単位セルAが繰り返し、例えば周期的に配置された構造体は、メタマテリアル、例えばEBG(Electromagnetic Band Gap)として機能する。
【0109】
ここで、図17に、本実施形態のケーブルが有するEBG構造体の単位セルAの等価回路図を示す。
【0110】
図17に示すように、本実施形態のケーブルが有するEBG構造体の等価回路図は、図13に示す実施形態5のケーブルが有するEBG構造体の等価回路図を基本とし、隣り合う島状導体(第2の導体5)の相互間に形成されるC(キャパシタンス)がなくなったものである。
【0111】
このようなEBG構造体を有する本実施形態のケーブルによれば、第1の導体3の表面におけるノイズ電流の伝播を抑制することが可能となる。本実施形態のケーブルでは、第2の導体5と第1の導体3との間隔、第2の配線9の太さおよび長さ、開口7の大きさなどを調節することで、バンドギャップとなる周波数帯を調節することができる。
【0112】
なお、本実施形態のケーブルは、接続部材6を有さないので、軽量化を実現することができる。また、接続部材6と、第1の導体3および第2の導体5との接触を確保する必要がないため、実施形態1乃至3のケーブルと比べて、比較的容易に製造することができるほか、品質安定性も高い。
【0113】
<実施形態8>
本実施形態のケーブルは、実施形態1乃至7のいずれか1つの構成を基本とし、第2の導体5が有する島状導体は、1つのみ設けられる点で異なる。
【0114】
このような本実施形態のケーブルの場合も、上記各実施形態と同様の効果を実現することができる。
【符号の説明】
【0115】
1 信号線
2 第1の誘電体層
3 第1の導体
4 第2の誘電体層
5 第2の導体
6 接続部材
7 開口
8 第1の配線
9 第2の配線
10 開口内導体
3A シート状導体
5A 島状導体
6A 接続部材
7A 開口
9A 配線
A 単位セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号線と、
前記信号線の外周を覆う第1の誘電体層と、
前記第1の誘電体層の外周を覆う第1の導体と、
前記第1の導体の外周を覆う第2の誘電体層と、
前記第2の誘電体層の外周を部分的に覆う島状導体を有する第2の導体と、
を有するケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載のケーブルにおいて、
前記第2の導体は、複数の前記島状導体が前記ケーブルの長手方向沿いに繰り返し設けられているケーブル。
【請求項3】
請求項1または2に記載のケーブルにおいて、
前記第2の誘電体層の内部に設けられ、前記第1の導体と、前記島状導体と、を電気的に接続する接続部材を有するケーブル。
【請求項4】
請求項3に記載のケーブルにおいて、
前記島状導体には開口が設けられ、前記開口の中には、一端が前記島状導体と電気的に接続し、他端側が前記接続部材と電気的に接続する第1の配線を有するケーブル。
【請求項5】
請求項3に記載のケーブルにおいて、
前記島状導体は帯状に形成され、一端側において前記接続部材と電気的に接続し、前記第2の誘電体層の外周を周回しているケーブル。
【請求項6】
請求項1または2に記載のケーブルにおいて、
前記島状導体には開口が設けられ、前記開口の中には、一端が前記島状導体と電気的に接続している第2の配線を有するケーブル。
【請求項7】
請求項6に記載のケーブルにおいて、
前記島状導体の前記開口の中には開口内導体を有し、
前記第2の配線の他端側は、前記開口内導体と電気的に接続しているケーブル。
【請求項8】
請求項6または7に記載のケーブルにおいて、
前記島状導体が有する前記開口は、前記ケーブルの長手方向沿いに複数設けられているケーブル。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のケーブルにおいて、
前記第1の導体と前記第2の導体とは、前記第2の誘電体層を挟んで対向しているケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−222253(P2011−222253A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89414(P2010−89414)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、総務省、「マイクロ波帯、ミリ波帯の利用拡大のための機器雑音抑制技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】