説明

ゲニピンで化学的に処理した薬物担持生体材料

薬物を凝固性生体材料と混合し、薬物と生体材料を架橋剤で化学的に処理し、薬物含有凝固性生体材料を医療用具上に担持させ、薬物含有生体材料を凝固させ、組織を治療するために医療用具を標的組織に送達することを合わせて含む、患者の標的組織を治療する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、「ゲニピンで化学的に処理した薬物担持生体材料」と題した2002年8月2日に提出した米国特許出願番号10/211656の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、一般的にコラーゲンのような医用材料の天然に存在する架橋剤ゲニピンによる化学的修飾に関する。より具体的には、本発明は、治療の目的に有効な薬物の徐放に適するように構成された薬物を担持(装填)した凝固性コラーゲン含有および/またはキトサン含有生体材料であって、架橋剤ゲニピン、その誘導体または類似体で化学的に処理された生体材料、ならびにその製造の方法に関する。
【背景技術】
【0003】
生体材料の架橋
生物医学的用途における最適な有効性のために、生体分子の架橋が望ましいことが多い。例えば、生体組織の構造的骨組みを構成するコラーゲンは、バイオプロテーゼおよび他の移植構造、例えば人工血管のようなの製造に広く用いられ、細胞浸潤および増殖の良好な媒体を提供している。しかし、膠原組織由来の医用材料は、化学的に修飾し、その後、ヒトに植え込むことができる前に滅菌しなければならない。膠原組織の固定または架橋は、強度を増加させ、抗原性および免疫原性を減少させる。本発明の一態様において、薬物含有生体材料のゲニピンによる架橋は、得られる物質(「生体物質」)がより低い抗原性または免疫原性を有することを可能にする。この場合、生体材料は、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、キトサン、N,O,カルボキシメチルキトサン(NOCC)等の、ゲニピンと反応する少なくとも1つのアミノ官能基を有するものを含む。
【0004】
コラーゲンシートは、創傷包帯としても使用されており、水蒸気に対する高い透過性と迅速な創傷治癒という利点を提供する。欠点は、引張強さが低いこと、コラーゲンがコラゲナーゼより容易に分解されることなどである。コラーゲンシートを架橋することにより、コラゲナーゼによる分解が減少し、引張強さが改善される。本発明の一態様において、架橋した薬物含有コラーゲンシートから得られるコラーゲンストリップを、再狭窄または他の異常を緩和するための薬物溶出ステントとしてのステントの周縁部に装着するのに用いることができる。本発明のさらなる態様において、コラーゲンシートまたはコラーゲンストリップは、凝固性コラーゲンからなるものであってよい。
【0005】
臨床的には、生体組織は、とりわけ、心臓弁プロテーゼ、小径人工血管、靭帯置換および生物学的パッチの製造に用いられている。しかし、生体組織は、架橋または化学的修飾剤で固定し、その後、ヒトに植え込むことができる前に滅菌しなければならない。生体組織またはコラーゲンの固定は、抗原性および免疫原性を低減させ、酵素分解を防ぐためである。様々な架橋剤が生体組織の固定に使用されている。これらの架橋剤は、主として、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ジアルデヒドデンプン、グリセルアルデヒド、シアナミド、ジイミド、ジイソシアナート、ジメチルアジピミダート、カルボジイミド、エポキシ化合物のような合成化学物質である。しかし、これらの化学物質はすべて、生体組織の生体適合性を損なう可能性がある高度な細胞毒である。これらのうち、グルタルアルデヒドは、職業性皮膚炎を引き起こすアレゲン性を有することが知られており、10〜25ppm以上の濃度で、また組織培養において3ppmと低い濃度で細胞毒である。したがって、許容できる細胞毒性の範囲内にあり、安定で、生体適合性を有する架橋生成物を生成する生物医学的用途における使用に適する架橋剤(架橋試薬と同義語)を提供することが望ましい。
【0006】
ゲニピン架橋心臓弁の例は、全内容が参照して本明細書に組み込まれる「イヌモデルにおける天然に存在する架橋剤(ゲニピン)で固定したウシ頚静脈グラフトによる右室流出路の再構成(Reconstruction of the right ventricular outflow tract with a bovine jugular vein graft fixed with a naturally occurring crosslinking agent(genipin)in a canine model)と題する(Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery、第122巻、1208〜1218頁、2001年)に本発明の共同研究者であるSungらにより報告されている。Sungらは、ここでゲニピンおよびコラーゲン含有生体組織心臓弁へのその架橋能力を開示している。
【0007】
この目標を達成するために、天然に存在する架橋剤(ゲニピン)が生体組織を固定するために用いられた。「医用材料のゲニピンによる化学修飾(Chemical modification of biomedical materials with genipin)」と題する1997年11月4日に提出された同時係属出願番号09/297808およびそのPCT対応出願WO98/19718は、参照して本明細書に組み込まれ、引用される。ゲニピンの細胞毒性が以前に3T3線維芽細胞を用いてin vitroで試験され、ゲニピンはグルタルアルデヒドよりも実質的に細胞毒性が低いことが示された(Sung HWら、J Biomater Sci Polymer Edn、1999年、第10巻、63〜78頁)。さらに、ゲニピンの遺伝毒性がチャイニーズハムスター卵巣(CHO−K1)細胞を用いてin vitroで試験され、ゲニピンはCHO−K1細胞において染色体異常反応を引き起こさないことが示唆された(参照して本明細書に組み込まれる、Tsai CCら、J Biomed Master Res、2000年、第52巻、58〜65頁)。許容できる細胞毒性をもたらすゲニピンで処理した生体材料(コラーゲン含有またはキトサン含有基材を含む)は、生物医学的用途に対する第1の要件である。
【0008】
本出願の1名の発明者による同時係属出願、すなわち、全内容が参照して本明細書に組み込まれる、ゲニピンで化学的に処理した無細胞性生体材料(Acellular Biological Material Chemically Treated with Genipin)と題する2000年2月4日に提出された米国特許出願番号10/067130において、組織再生を加速するための宿主細胞移動、in vitro内皮形成またはin vivo内皮形成のための天然微小環境を提供する無細胞性組織が開示されている。ゲニピン処理生物学的医用材料は、低い抗原性および免疫原性を有する。
【0009】
血管形成術およびステント留置術における再狭窄
アテローム動脈硬化は、心臓に栄養素を供給する血管の部分的閉塞を引き起こす。血管のアテローム動脈硬化性閉塞は、しばしば高血圧、虚血性損傷、脳卒中または心筋梗塞につながる。一般的に血管形成術および/またはステント留置術は、そのような疾患の療法であるが、内膜平滑筋細胞の過形成に起因する再狭窄が30〜40%の患者に発生する。内膜平滑筋細胞の過形成の基礎をなす原因は、主として血管平滑筋損傷および内皮裏層の破壊である。
【0010】
内膜肥厚をもたらす血管損傷は、血管形成術および/またはステント留置術に起因する機械的損傷による可能性がある。バルーンカテーテル損傷の後の内膜損傷は、バルーン血管形成術後にヒト患者において発生する動脈再狭窄のモデルとしての動物において試験された。損傷の後に中膜平滑筋細胞の増殖が起り、その後、それらの多くが内部弾性膜における窓を通して内膜に移動し、増殖して新内膜病変を形成する。
【0011】
血管狭窄は、血管造影または超音波画像法を用いて検出し、評価することができ、しばしば経皮経管冠動脈形成術(バルーンカテーテル法)により治療される。しかし、血管形成術の数か月後に、上述のような血管形成術またはステント留置術の施行中に受けた機械的な血管損傷に対する反応よって引き起こされた再狭窄のため、これらの患者の約30〜40%において血流が減少する。
【0012】
血管形成術の後の再狭窄を予防、または内膜平滑筋細胞増殖を減少させようとして、血管形成術と同時にまたはその後に多くの薬剤が臨床的に用いられた。再狭窄を予防またはその程度を低減しようとして用いられたほとんどの薬剤が不成功であった。次のリストは良好な臨床結果が報告されたいくつかの薬剤を明らかにしたものである。すなわち、ロバスタチン、DP−1904のようなトロンボキサンAシンテターゼ阻害薬、エイコサペンタエン酸、シプロステン(プロスタサイクリン類似体)、トラピジル(血小板由来成長因子)、アンギオテンシン変換酵素阻害薬および低分子量ヘパリン。上記の薬剤およびそれらの治療効果の全内容は、参照して本明細書に組み込まれる。ゲニピン架橋コラーゲン含有またはキトサン含有生物学的担体を介して、有効な治療のために損傷部位への本発明で開示した薬剤の部位特異的投与を提供することが本発明の一態様である。
【0013】
多くの化合物が標準的な動物モデルにおいて評価された。免疫抑制剤シクロスポリンAが評価され、矛盾する結果が得られた。Jonassonは、シクロスポリンAはin vivoでの動脈バルーンカテーテル導入後の内膜増殖病変を阻害したが、in vitroでの平滑筋細胞の増殖は抑制しなかったことを報告した。内皮除去ウサギにシクロスポリンAを投与したとき、内膜増殖の有意な減少はin vivoで認められなかったことが報告された。さらに、泡沫状マクロファージの内膜蓄積とともに内部弾性膜に隣接した部位における多くの空胞化平滑筋細胞が認められ、シクロスポリンAが動脈損傷の部位に生じた病変を変化させ、増強する可能性があることが示された。
【0014】
Morrisらは米国特許第5516781号において、アルブミンのアレルギー誘発に応答した体液性(IgE様)抗体の生成を妨げることが示されており、ストレプトミセスハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)により産生された大環状トリエン抗生物質であるラパマイシン(シロリムスとしても知られている)が、マウスT細胞の活性化を阻害し、組織不適合性げっ歯類における提供臓器(organ gratis)の生存時間を延長し、哺乳類における移植拒絶反応を抑制することを開示した。ラパマイシンは、G1−S界面におけるカルシウム依存性、カルシウム非依存性、サイトカイン非依存性および構成的TおよびB細胞分裂を阻害する。ラパマイシンは、Il−1により誘導されるγインターフェロン産生を阻害し、膜抗原のγインターフェロン誘発性発現も阻害する。CGAとして知られている移植後の動脈肥厚は、移植受容者の免疫系による移植血管に対する慢性免疫応答によってもたらされる移植片生着における制限因子である。
【0015】
さらに、Morrisらは米国特許第5516781号において、CGAが受容者自身の血管の損傷に関係しない点で、当発明がCGAを予防するためのラパマイシンの使用と異なることを主張している。それは、拒絶型応答である。開示された特許781号は、自生血管の血管損傷に関する。発生する内膜平滑筋細胞増殖は、免疫系に関係せず、成長因子媒介性である。例えば、バルーンカテーテル損傷後の動脈内膜肥厚は、成長因子(PGDF、bFGF、TGFb、IL−1およびその他)誘発性平滑筋細胞増殖および移動によって引き起こされると考えられている。上で引用した特許第5516781号は、参照して本明細書に組み込まれる。
【0016】
過去には、高分子またはプラスチック材料が再狭窄を治療するためのステントの辺縁部への薬物または薬剤の沈着のための担体として用いられた。例は、全内容が参照して本明細書に組み込まれるHunterらへの米国特許第5886016号である。Hunterらは、当該部位における癌の局所的再発および新血管の形成が抑制されるように患者の摘出後の腫瘍の切除縁にパクリタキセルまたはその類似体もしくは誘導体を含む組成物を施すことを含む腫瘍摘出部位を治療する方法を開示している。組成物はさらに、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、エチレン−酢酸ビニル共重合体および乳酸グリコール酸共重合体を含む高分子を含む。
【0017】
他の例において、Biocompatibles PC(Biocompatibles、ロンドン、英国のホスホリルコリン)が血管形成術および/またはステント留置術に起因した組織損傷を治療するための薬物担体または表面修飾物質として加えられた。方法は、ステンレススチール基材上への高分子の初期の付着および膜形成を促進する疎水性化合物、ならびに強固な固定を達成するための高分子内およびステント表面との架橋を可能にする他の基を含む。それにより、コーティングは、ステントに強固に付着し、バルーン拡張にもかかわらず損傷を受けずに残存することができる。治療薬をホスホリルコリンのような被覆基材内に担持(装填)させることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
薬物は通常、薬物の徐放のために高分子骨格内に物理的に担持、混合または封じ込められている。薬物担体として適するプラスチック高分子は、生体適合性でないことがあり、一方、ある種の生体適合性プラスチック高分子は、有効な治療のために特定の薬物を含み、有効な時宜を得た量の薬物を放出することができないことがある。したがって、長期の治療効果を得るためにある期間にわたって有効な量の薬物を放出する生体適合性薬物担体が臨床上必要である。
【0019】
本発明により、最適な治療上の機能に重要な多くの所望の特性を示すことが知られている移植および他の外科的用途に用いられる薬物を担持(装填、以下省略。)したゲニピン処理コラーゲン含有またはキトサン含有生体材料が提供される。特に、薬物徐放能を有する架橋コラーゲン−薬物化合物は、アテローム動脈硬化症の治療および他の治療用途における抗再狭窄薬として適していると思われる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
一般的に、薬物徐放のために構成し、適合させた生物学的物質を提供することが本発明の目的である。本発明の一態様において、生物学的物質がステント表面に接着的に担持され、それによりステントが生物学的物質から薬物を徐放することができるようになる。「生物学的物質」は、本明細書では、薬物含有生体材料からなる物質を意味し、1つの好ましい実施形態においては、環境条件の変化によって凝固可能であり、ゲニピン、その誘導体、類似体、立体異性体およびその混合物のような架橋剤による架橋後に生体適合性である。一実施形態において、架橋剤は、さらにエポキシ化合物、ジアルデヒドデンプン、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、ジメチルスベルイミダート、カルボジイミド、スクシンイミジル、ジイソシアナート、アシルアジド、紫外線照射、脱水熱処理、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィン、アスコルビン酸銅、グルコースリシンおよび光酸化剤等を含んでいてよい。「生体材料」は、本明細書では、架橋剤(橋かけ剤としても知られている)で架橋結合させることが可能であるコラーゲン、ゼラチン、エラスチン、キトサン、NOCC(N,O,カルボキシメチルキトサン)等を意味する。
【0021】
一実施形態において、生物学的物質を調製する方法は、生体材料に薬物を担持させるステップ、薬物含有生体材料を成形するステップの後、ゲニピンで架橋させるステップを合わせて含む。ここでいうゲニピンは、広く、図1に示す天然に存在する化合物ならびにその誘導体、類似体、立体異性体およびその混合物を含む。他の実施形態において、薬物含有生体材料を、架橋剤(ゲニピンのような)による架橋の前または後に物理的構造体または用具上にさらに被覆、付着または担持させる。生体材料は、本明細書では広く一般的にコラーゲン、エラスチン、ゼラチン、キトサン、NOCC、その混合物、ならびに誘導体、類似体およびその混合物を指す。生体材料は、その後に凝固性である溶液、ペースト、ゲル、懸濁液、コロイドまたは乳漿の形または相であってよい。
【0022】
本発明の他の目的は、ゲニピンで架橋させた生体材料内に薬物を封じ込めることを含む、医療用具から薬物を徐放する方法を提供することである。医療用具は、薬物徐放用のステント、非ステントインプラントもしくはプロテーゼ、またはカテーテル、ワイヤー、カニューレ、内視鏡機器のような経皮用具等であってよい。一実施形態において、非ステントインプラントは、生体インプラント、非生体インプラント、輪状形成リング、心臓弁プロテーゼ、静脈弁バイオプロテーゼ、整形外科用インプラント、歯科用インプラント、眼科用インプラント、心血管インプラントおよび脳インプラントを含む。
【0023】
本発明のさらなる目的は、アミンまたはアミノ基側鎖を有する薬物を、ゲニピンで架橋された生体材料内にイオン結合または共有結合により化学的に結合させることを含む、インプラントから薬物を徐放する方法を提供することである。本発明の一態様において、薬物のアミンまたはアミノ基を架橋剤によりコラーゲンのアミノ基と反応させる。
【0024】
添付図面に関連させて読むときに、本発明のさらなる目的および特徴がより明らかになり、また発明自体は以下の例示的実施形態の詳細な説明から最もよく理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下の詳細な説明は、本発明の実施の現在考えられる最良の態様の説明である。この説明は、限定的な意味で解釈すべきでないが、本発明の実施形態の一般的な原理を例示する目的のためにだけ行うものである。
【0026】
本発明における「ゲニピン」は、図1に示す天然に存在する化合物ならびにその誘導体、類似体、立体異性体およびその混合物を指すことを意味する。
【0027】
「架橋剤」は、本明細書ではホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ジアルデヒドデンプン、グリセルアルデヒド、シアナミド、ジイミド、ジイソシアナート、ジメチルアジピミダート、カルボジイミドおよびエポキシ化合物のような2つの分子を架橋することができる化学物質を示すことを意味する。
【0028】
「生体材料」は、本明細書では、コラーゲン抽出物、可溶性コラーゲン、エラスチン、ゼラチン、キトサン、キトサン含有および他のコラーゲン含有生体材料を指すことを意味する。本発明の好ましい態様では、生体材料は、アミノ基等の少なくともゲニピンで架橋することが可能な官能基を含む凝固性生物学的基材を示すことを意味する。
【0029】
「生体インプラント」は、長期放出薬物送達用具、薬物溶出ステント、人工血管もしくは皮膚、または骨、靭帯、腱、軟骨および筋肉のような整形外科用プロテーゼなどのある期間にわたって留めるために身体組織に挿入または移植する医療用具を指す。
【0030】
特に、薬物徐放能を有する架橋コラーゲン−薬物用具または化合物は、アテローム動脈硬化症の治療および他の治療用途における抗再狭窄薬として適していると思われる。本発明の一態様では、表面を有する器具(例えば、冠動脈ステント)、生理活性物質および前記器具の表面の少なくとも一部に担持された生体材料を含む医療用具が提供され、生体材料は、前記生理活性物質を含み、その後、架橋剤で架橋される。他の態様において、生体材料が凝固性基材を含み、用具が凝固性基材を凝固させる段階をさらに含む。他の態様において、表面を有する器具(例えば、冠動脈ステントまたは心臓弁)、生理活性物質および架橋剤で架橋され、その後、前記生理活性物質と混合され、前記器具の表面の少なくとも一部に担持された生体材料を含む医療用具が提供される。
【0031】
本発明における「薬物」は、in vivoで治療、診断または予防効果をもたらす化学分子、生物学的分子または生理活性物質を広く指す。「薬物」および「生理活性物質」は、合成化学物質、バイオテクノロジーにより得られた分子、薬草、細胞、遺伝子、成長因子、健康食品および/または代替医薬品を含むが、これらに限定されない。本発明では、「薬物」と「生理活性物質」は同義で用いる。
【0032】
血管は、一般的に血液を輸送するための支持構造および内皮細胞の層で裏打ちされた管腔血液接触面とからなる。露出血管表面上では、隣接組織から露出管腔表面への内皮細胞の移動を伴う内皮形成が治癒過程の一部として起る。残念ながら、自己内皮形成は限られた程度に起るにすぎず、起る限られた内皮形成は徐々に起る。内皮層の速やかな形成を促進するために、インプラントを受容者に挿入する前に、内皮細胞をインプラント、例えば、本発明の薬物溶出用具上に種付けしまたは載せることができる。インプラントを受容者に挿入し、生理的血流に曝露させるとき、用具の表面の内皮細胞の一部は内皮形成の過程を開始し、一方、内皮細胞の他の一部は用具の表面に徐放され、遅延型内皮形成を示す。
【0033】
「生物学的物質」は、本明細書では1つの好ましい実施形態において、環境条件の変化によって凝固可能であり、ゲニピン、エポキシ化合物、ジアルデヒドデンプン、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、ジメチルアジピミダート、カルボジイミド等のような架橋剤による架橋後に生体適合性である薬物含有生体材料からなる物質を意味する。
【0034】
「生体材料」は、本明細書では、架橋剤(橋かけ剤としても知られている)で架橋結合させることが可能であるコラーゲン、ゼラチン、エラスチン、キトサン、N,O,カルボキシメチルキトサン(NOCC)、キトサン含有材料、コラーゲン含有材料等を意味する。
【0035】
ゲニピンの調製および特性
図2Aの構造Iに示すゲニピンは、果実(クチナシ(Gardenia jasmindides Ellis))に存在するイリドイドグリコシドである。これは、他所に記載されているように天然供給源から分離することができる構造II(図2B)の親化合物ゲニポシドから得ることができる。ゲニポシドのアグリコンであるゲニピンは、前者から、酸化した後、還元および加水分解または酵素加水分解により調製することができる。あるいは、ラセミゲニピンを合成により調製することができる。構造Iはゲニピンの天然の立体配置を示すが、後に示すようなゲニピンの立体異性体または立体異性体の混合物は、いずれも本発明による橋かけ剤として用いることができる。
【0036】
ゲニピンは、マウスにおける静脈内投与でのLD50が382mg/kgと低い急性毒性を有する。したがって、それは、グルタルアルデヒドおよび他の多くの一般的に用いられている合成架橋試薬より毒性がはるかに低い。下で述べるように、ゲニピンは、プロテーゼおよび他のインプラント、創傷包帯および代用品のようなin vivo生物医学的用途を対象とした生体材料の処理用の有効な架橋剤であることが示されている。
【0037】
周囲組織または体腔の内腔への薬物の徐放を可能にする心血管ステントの辺縁部に担持されている薬物−コラーゲン−ゲニピンおよび/または薬物−キトサン−ゲニピン化合物を提供することが本発明の1つの目的である。1つの好ましい実施形態において、化合物をステントの外周に担持させて周囲組織への薬物の徐放を可能にする。
【0038】
以前に、Changは米国特許第5929038号において5員炭化水素環と1つの共通の結合を共有する6員炭化水素環を含む一般式のイリドイド化合物によりB型肝炎ウイルス感染を治療する方法を開示している。さらに、Moonらは米国特許第6162826号および第6262083号において抗B型肝炎ウイルス活性および肝臓保護活性を有するゲニピン誘導体を開示している。前記の3つの特許は、すべて参照して本明細書に組み込まれる。これらの特許には、組織工学のための原料が許容できるほどにわずかな細胞毒性を有するゲニピン、ゲニピン誘導体またはその類似体により化学的に修飾されている、組織工学用の望ましい多孔性を有する骨格またはコラーゲンマトリックスを用いた組織/用具の調製は開示されていない。
【0039】
ゲニピン誘導体および/またはゲニピン類似体は以下の化学式(式1〜4)を有していてよい。
【0040】
【化1】

【0041】
[式中、
は低級アルキルを表し、
は低級アルキル、ピリジルカルボニル、ベンジルまたはベンゾイルを表し、
はホルミル、ヒドロキシメチル、アジドメチル、1−ヒドロキシエチル、アセチル、メチル、ヒドロキシ、ピリジルカルボニル、シクロプロピル、(1,3−ベンゾジオキソラン−5−イル)カルボニルまたは3,4,5−トリメトキシベンゾイルで置換または非置換アミノメチル、1,3−ベンゾジオキソラン−5−イル、3,4,5−トリメトキシフェニルまたは2−クロロ−6−メチル−3−ピリジルで置換または非置換ウレイドメチル、アセチルまたは2−アセチルアミノ−2−エトキシカルボニルエチルで置換または非置換チオメチル、ベンゾイル、ピリジルカルボニルまたは3,4,5−トリメトキシベンゾイルで置換または非置換オキシメチルを表し、
但し、Rがメチルであるとき、Rはメチル、ホルミル、ヒドロキシメチル、アセチル、メチルアミノメチル、アセチルチオメチル、ベンゾイルオキシメチルまたはピリジルカルボニルオキシメチルでない]および
その薬理上許容できる塩または立体異性体。
【0042】
【化2】

[式中、
は低級アルコキシ;ベンジルオキシ;ベンゾイルオキシ;フェニルチオ;t−ブチル、フェニル、フェノキシ、ピリジルまたはチエニルで置換した、または非置換のC〜C12アルカニルオキシを表し、
はメトキシカルボニル、ホルミル、ヒドロキシイミノメチル、メトキシイミノメチル、ヒドロキシメチル、フェニルチオメチルまたはアセチルチオメチルを表し、
但し、Rがアセチルオキシであるとき、Rはメトキシカルボニルでない]および
その薬理上許容できる塩または立体異性体。
【0043】
【化3】

【0044】
[式中、
は水素原子、低級アルキルまたはアルカリ金属を表し、
は低級アルキルまたはベンジルを表し、
は水素原子または低級アルキルを表し、
はヒドロキシ、低級アルコキシ、ベンジルオキシ、ニコチノイルオキシ、イソニコチノイルオキシ、2−ピリジルメトキシまたはヒドロキシカルボニルメトキシを表し、
但し、Rがメチルであり、Rが水素原子であるとき、Rはヒドロキシヒドロキシまたはメトキシでない]および
その薬理上許容できる塩または立体異性体。
【0045】
【化4】

[式中、
10は低級アルキルを表し、
11は低級アルキルまたはベンジルを表し、
12は低級アルキル;ハロゲン置換または非置換ピリジル;低級アルキルまたはハロゲンで置換した、または非置換のピリジルアミノ;1,3−ベンゾジオキソラニルを表し、
13およびR14はそれぞれ独立に水素原子を表すか、またはいっしょに結合してイソプロピリデンを形成する]および
その薬理上許容できる塩または立体異性体。
【0046】
Kyogokuらは、3つのすべての全内容が参照して本明細書に組み込まれる米国特許第5037664号、米国特許第5270446号および欧州特許第0366998号においてゲニピンによるアミノ基を含む化合物の架橋およびキトサンによるゲニピンの架橋を教示している。彼らはまた、植物、動物(コラーゲン、ゼラチン)または微生物由来であってよいタンパク質によるイリドイド化合物の架橋を教示している。しかし、彼らは、薬物を徐放するための生体適合性薬物担体としてのゲニピンで架橋したコラーゲン含有生体材料への薬物の担持は教示していない。
【0047】
Smithは、すべてが参照して本明細書に組み込まれる米国特許第5322935号において、キトサン重合体の架橋およびグルタルアルデヒドなどの共有結合性架橋剤による再度のさらなる架橋を教示している。しかし、Smithは薬物を徐放するための生体適合性薬物担体としてのゲニピンで架橋したキトサン含有生体材料への薬物の担持は教示していない。
【0048】
Noishikiらは米国特許第4806595号において架橋剤ポリエポキシ化合物による組織処理法を開示している。当特許に用いられているコラーゲンは、不溶性コラーゲン、可溶性コラーゲン、コラゲナーゼ以外のプロテアーゼを用いてコラーゲン分子末端上のテロペプチドを除去することにより調製されるアテロコラーゲン、上述のコラーゲンのスクシニル化またはエステル化により得られた化学的に修飾されたコラーゲン、ゼラチンのようなコラーゲン誘導体、コラーゲンの加水分解により得られたポリペプチドおよび天然組織(尿管、血管、心膜、心臓弁等)に存在する天然コラーゲンなどである。Noishikiらの特許は、参照して本明細書に組み込まれる。本発明における「生体材料」は、上記のコラーゲン、コラーゲン種、天然組織におけるコラーゲン、および成形可能かつ/または凝固性である生体インプラント前成形品におけるコラーゲンを指すためにもさらに用いられる。
【0049】
Voytik−Harbinらは米国特許第6264992号において細胞の成長基体としての粘膜下組織を開示している。より詳細には、粘膜下組織を酵素的に消化し、ゲル化して、in vivoおよびin vitroで細胞増殖および成長を誘導するのに適するゲルマトリックスを保持した形状とする。Voytik−Harbinらの特許は、参照して本明細書に組み込まれる。本発明のゲニピンまたは他の架橋剤により化学的に修飾または処理されているさらに粘膜下組織を含む生体材料は、in vivoおよびin vitroで細胞増殖および内殖を誘導するだけでなく酵素分解に対して抵抗性も示すようになされた生物学的物質を調製するための成形可能な原料とすることができる。本発明のさらなる態様において、薬物を粘膜下組織生体材料に担持させ、ゲニピンのような架橋剤で架橋する。
【0050】
Cookらは米国特許第6206931号において、汚染物質を不活性化し、除去するための消毒および除去段階により精製された粘膜下組織源から除去された精製コラーゲンベースのマトリックス構造を含む移植プロテーゼ材料を開示している。Cookらの特許は、参照して本明細書に組み込まれる。同様に、この開示において「生体材料」としても知られているコラーゲンベースのマトリックス構造は、本発明のゲニピンによる化学修飾の後の医療用具用途に適合された医用材料とすることができる。
【0051】
Leveneらは米国特許第6103255号において、開放細孔径が高度に相互連結された双峰分布を有する実質的に連続的な固相を特徴とする、組織工学用の多孔性高分子骨格を開示している。Leveneらの特許は、参照して本明細書に組み込まれる。本発明は、組織工学に適合した無細胞工程および酸/酵素処理による生物学的骨格材料を開示している。薬物含有生物学的物質上の抗原性の低減、細胞毒性の低減および生体内耐久性の増大のためのゲニピン組織処理のさらなる利点が、本発明において開示されている。本発明のいくつかの態様は、宿主細胞移動、in vitro内皮形成、または組織再生を加速するためのin vivo内皮形成のための天然または拡大された微小環境を有する無細胞組織を提供する。
【0052】
現在利用可能な技術は、いくつかの短所を伴っている。第1に、従来技術は、適切な架橋を用いない薬物送達用途におけるコラーゲンまたはキトサンを教示している。コラーゲンまたはキトサンマトリックス内の薬物は、薬物の周りに架橋バリアがないため、短期間で浸出する傾向があり得る。他の従来技術は、薬物徐放特性を有さない架橋コラーゲンまたはキトサンを教示している。薬物含有コラーゲン/キトサンを架橋させる前に薬物をコラーゲンまたはキトサン内に適切に担持させて、薬物の徐放を可能にすることは必須である。したがって、前述の2つの従来技術を通常の方法で組合わせたとしても、その組合せは、本発明の新規の物理的特長および予期しない結果のすべてを示さないであろう。
【0053】
コラーゲン−薬物−ゲニピン化合物
本発明の一実施形態において、薬物含有生体材料を器具または医療用具上に担持させる工程、薬物含有生体材料を凝固させる任意選択の工程、薬物含有生体材料を架橋剤で化学的に処理する工程、薬物を放出させて組織を治療するために医療用具を標的組織まで送る工程を合わせて含む患者の組織を治療する方法が開示されている。下の実施例において開示され、裏付けられているコラーゲン−薬物−ゲニピン化合物またはキトサン−薬物−ゲニピン化合物および製造方法は、新規かつ予期しない結果をもたらし、したがって、従来技術からは明白ではない。医療用具は、薬物をゆっくりと放出することが意図されるものであり、ステント、非ステントインプラントもしくはプロテーゼ、またはカテーテル、ワイヤー、カニューレ、内視鏡機器のような経皮用具等であってよい。さらに、医療用具は、生物学的用具であっても、または非生物学的用具であってよい。好ましい態様において、コラーゲン−薬物−ゲニピン化合物またはキトサン−薬物−ゲニピン化合物を用いるステント用途は、リンパ管、胃腸管(肝管、胆管、膵管等のような種々の管を含む)、尿管(輸尿管、尿道等)および生殖管(すなわち、卵管等)における使用を含む。一態様において、非ステントインプラントは、輪状形成リング、心臓弁プロテーゼ、静脈弁バイオプロテーゼ、整形外科用インプラント、歯科用インプラント、眼科用インプラント、心血管インプラントおよび脳インプラントを含む。本発明の他の態様において、標的組織は、脆弱な斑、アテローム斑、腫瘍または癌、脳組織、血管または組織、整形外科組織、眼科組織等を含んでいてよい。脆弱な斑は、脆弱で患者の体内で破裂しやすいアテローム斑である。
【0054】
本発明の他の実施形態において、薬物の徐放により患者の組織を治療するための生物学的物質が開示されている。この生物学的物質は、環境条件の変化によって凝固可能であり、ゲニピン、エポキシ化合物、ジアルデヒドデンプン、ジメチルアジピミダート、カルボジイミド、グルタルアルデヒド等のような架橋剤による架橋後に生体適合性である薬物含有生体材料で作られる。
【0055】
本発明の他の実施形態において、薬物を生体材料と混合し、薬物と生体材料を架橋剤で化学的に処理し、薬物含有生体材料を器具または医療用具に担持させることを合わせて含む、患者の組織を治療する方法が開示されている。1つの好ましい実施形態において、方法はさらに薬物含有生体材料を凝固させる段階を含む。
【0056】
方法がさらに少なくも架橋可能な官能基、例えば、アミノ基を含む薬物を架橋剤により生体材料に化学的に結合させることを含むことが本発明のいくつかの態様である。
【0057】
薬物含有生体材料を医療用具上に担持させ、薬物含有生体材料を架橋剤により化学的に処理し、血管再狭窄を治療するために医療用具を血管再狭窄部位に送達することを合わせて含む血管再狭窄を治療する方法を提供することが本発明のさらなる態様である。一実施形態において、方法はさらに、少なくとも一部が凝固性物質または材料を含む薬物含有生体材料を凝固させる段階を含む。
【0058】
コラーゲン−薬物−ゲニピン化合物用の薬物
現世代の薬物溶出心血管ステントに用いられている薬物は、2つの主要な機構、すなわち細胞毒性および細胞増殖抑制性を含む。細胞毒性機構のカテゴリーのコラーゲン−薬物−ゲニピン化合物に用いられる薬物に関する本発明のいくつかの態様は、アクチノマイシンD、パクリタキセル、ビンクリスチン、メトトレキサートおよびアンギオペプチンを含む。細胞増殖抑制機構のカテゴリーのコラーゲン−薬物−ゲニピン化合物に用いられる薬物に関する本発明のいくつかの態様は、バチマスタット、ハロフギノン、シロリムス、タクロリムス、エベロリムス、トラニラスト、デキサメタゾンおよびマイコフェノール酸(MPA)を含む。本発明のいくつかの態様は、生理活性物質溶出用具におけるアクチノマイシンD、パクリタキセル、ビンクリスチン、メトトレキサートおよびアンギオペプチン、バチマスタット、ハロフギノン、シロリムス、タクロリムス、エベロリムス、トラニラスト、デキサメタゾンおよびマイコフェノール酸からなる群から選択される生理活性物質を提供する。
【0059】
958の分子量を有するエベロリムス(化学式C5383NO14)は、水に対する溶解性が不十分であり、新規の増殖抑制薬である。エベロリムスの明確な治療上限は存在しない。しかし、腎移植受容者において7.8ng/ml以上のエベロリムスのトラフ血清濃度で血小板減少症が17%の率で発生する(Expert Opin Investig Drugs 2002年、第11巻(12号)、1845〜1857頁)。患者において、エベロリムスは細胞質ゾル中のイムノフィリンFKBP12に結合して、成長因子誘発性細胞増殖を抑制する。エベロリムスは、動物試験において有望な結果を示し、対照露出金属ステントと比較して新内膜増殖の50%の低下を示した。
【0060】
Straubらは、米国特許第6395300号において様々な薬物を開示しており、それらは、本明細書に記載した方法および組成物に有用である。その全内容は参照して本明細書に組み込まれる。第6395300号に記載され、本明細書に開示した組成物における使用が検討された薬物は、以下の薬物のカテゴリーおよび例、ならびに別の塩の形態、遊離酸の形態、遊離塩基の形態および水和物のようなこれらの薬物の別の形態を含む。
【0061】
鎮痛薬/解熱薬(例えば、アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセンナトリウム、ブプレノルフィン、塩酸プロポキシフェン、プロポキシフェンナフシレート、塩酸メペリジン、塩酸ヒドロモルホン、モルフィン、オキシコドン、コデイン、酒石酸ジヒドロコデイン、ペンタゾシン、酒石酸ヒドロコドン、レボルファノール、ジフルニサル、サリチル酸トロラミン、塩酸ナルブフィン、メフェナム酸、ブトルファノール、サリチル酸コリン、ブタルビタール、クエン酸フェニルトロキサミン、クエン酸ジフェンヒドラミン、メトトリメプラジン、塩酸シンナメドリンおよびメプロバメート);
【0062】
抗喘息薬(例えば、ケトチフェンおよびトラキサノックス);
【0063】
抗生物質(例えば、ネオマイシン、ストレプトマイシン、クロラムフェニコール、セファロスポリン、アンピシリン、ペニシリン、テトラサイクリンおよびシプロフロキサシン);
【0064】
抗うつ薬(例えば、ネオパム、オキシペルチン、ドキセピン、アモクサピン、トラゾドン、アミトリプチリン、マプロチリン、フェネルジン、デシプラミン、ノルトリプチリン、トラニルシプロミン、フルオキセチン、ドキセピン、イミプラミン、イミプラミンパモエート、イソカルボキサジド、トリミプラミンおよびプロトリプチリン);
【0065】
抗糖尿病薬(例えば、ビグアニドおよびスルホニル尿素誘導体);
【0066】
抗真菌薬(例えば、グリセオフルビン、ケトコナゾール、イトラコニゾール、アンホテリシンB、ナイスタチンおよびカンジシジン);
【0067】
抗高血圧薬(例えば、プロパノロール、プロパフェノン、オキシプレノロール、ニフェジピン、レセルピン、トリメタファン、フェノキシベンザミン、塩酸パルギリン、デセルピジン、ジアゾキシド、モノ硫酸グアネチジン、ミノキシジル、レシンナミン、ニトロプルシドナトリウム、インドジャボク、アルセロキシロンおよびフェントラミン);
【0068】
抗炎症薬(例えば、(非ステロイド)インドメタシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ナプロキセン、イブプロフェン、ラミフェナゾン、ピロキシカム、(ステロイド)コルチゾン、デキサメタゾン、フルアザコルト、セレコキシブ、レフェコキシブ、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロンおよびプレドニゾン);
【0069】
抗腫瘍薬(例えば、シクロホスファミド、アクチノマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、塩酸ドキソルビシン、エピルビシン、マイトマイシン、メトトレキサート、フルオロウラシル、カルボプラチン、カルムスチン(BCNU)、メチル−CCNU、シスプラチン、エトポシド、カムプトテシンおよびその誘導体、フェネステリン、パクリタキセルおよびその誘導体、ドセタキセルおよびその誘導体、ビンブラスチン、ビンクリスチン、タモキシフェン、ピポスルファン);
【0070】
抗不安薬(例えば、ロラゼパム、ブスピロン、プラゼパム、クロルジアゼポキシド、オキサゼパム、クロラゼペート二カリウム、ジアゼパム、ヒドロキシジンパモエート、塩酸ヒドロキシジン、アルプラゾラム、ドロペリドール、ハラゼパム、クロルメザノンおよびダントロレン);
【0071】
免疫抑制薬(例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、ミゾリビンおよびFK506(タクロリムス));
【0072】
抗片頭痛薬(例えば、エルゴタミン、プロパノロール、イソメテプテンムチン酸塩、およびジクロラールフェナゾン);
【0073】
鎮静薬/催眠薬(例えば、ペントバルビタール、ペントバルビタールおよびセコバルビタールのようなバルビツレート;ならびに塩酸フルラゼパム、トリゾラムおよびミダゾラムのようなベンゾジアゼピン);
【0074】
抗狭心症薬(例えば、βアドレナリン遮断薬;ニフェジピンおよびジルチアゼムのようなカルシウムチャンネル遮断薬;ならびにニトログリセリン、イソソルビドジナイトレート、ペンタエリトリトールテトラナイトレートおよびエリトリチルテトラナイトレートのような硝酸塩);
【0075】
抗精神病薬(例えば、ハロペリドール、コハク酸ロクサピン、塩酸ロクサピン、チオリダジン、塩酸チオリダジン、チオチキセン、フルフェナジン、デカン酸フルフェナジン、エナント酸フルフェナジン、トリフルオペラジン、クロルプロマジン、ペルフェナジン、クエン酸リチウムおよびプロクロルペラジン);
【0076】
抗躁病薬(例えば、炭酸リチウム);
【0077】
抗不整脈薬(例えば、ブレチリウムトシレート、エスモロール、ベラパミル、アミオダロン、エンカイニド、ジゴキシン、ジギトキシン、メキシレチン、リン酸ジソピラミド、プロカインアミド、硫酸キニジン、グルコン酸キニジン、ポリガラクツロン酸キニジン、酢酸フレカイニド、トカイニドおよびリドカイン);
【0078】
抗関節炎薬(例えば、フェニルブタゾン、スリンダク、ペニシラニン、サルサレート、ピロキシカム、アザチオプリン、インドメタシン、メクロフェナメート、金チオリンゴ酸ナトリウム、ケトプロフェン、オーラノフィン、オーロチオグリコースおよびトルメチンナトリウム);
【0079】
抗痛風薬(例えば、コルヒチンおよびアロプリノール);
【0080】
抗凝固薬(例えば、ヘパリン、ヘパリンナトリウムおよびワルファリンナトリウム);
【0081】
血栓溶解薬(例えば、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼおよびアルテプラーゼ);
【0082】
抗線維素溶解薬(例えば、アミノカプロン酸);
【0083】
ヘモレオロジー薬(例えば、ペントキシフィリン);
【0084】
抗血小板薬(例えば、アスピリン);
【0085】
抗けいれん薬(例えば、バルプロ酸、ジバルプロックスナトリウム、フェニトイン、フェニトインナトリウム、クロナゼパム、プリミドン、フェノバルビトール、カルバマゼピン、アモバルビタールナトリウム、メトスクシミド、メタルビタール、メホバルビタール、メフェニトイン、フェンスクシミド、パラメタジオン、エトトイン、フェナセミド、セコバルビトールナトリウム、クロラゼペート二カリウムおよびトリメタジオン);
【0086】
抗パーキンソン病薬(例えば、エトスクシミド);
【0087】
抗ヒスタミン薬/止痒薬(例えば、ヒドロキシジン、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、マレイン酸ブロムフェニラミン、塩酸シプロヘプタジン、テルフェナジン、フマル酸クレマスチン、トリプロリジン、カルビノキサミン、ジフェニルピラリン、フェニンダミン、アザタジン、トリペレナミン、d−マレイン酸クロルフェラミン、メトジラジンおよび);
【0088】
カルシウム調節に有用な薬剤(例えば、カルシトニンおよび上皮小体ホルモン);
【0089】
抗菌薬(antibacterial agents)(例えば、硫酸アミカシン、アズトレオナム、クロラムフェニコール、パルミチン酸クロラムフェニコール、シプロフロキサシン、クリンダマイシン、パルミチン酸クリンダマイシン、リン酸クリンダマイシン、メトロニダゾール、塩酸メトロニダゾール、硫酸ゲンタマイシン、塩酸リンコマイシン、硫酸トブラマイシン、塩酸バンコマイシン、硫酸ポリミキシンB、コリスチンメタナトリウムおよび硫酸コリスチン);
【0090】
抗ウイルス薬(例えば、インターフェロンα、βまたはγ、ジドブジン、塩酸アマンタジン、リバビリンおよびアシクリビル);
【0091】
抗微生物薬(antimicrobials)(例えば、セファゾリンナトリウム、セフラジン、セファクロール、セファピリンナトリウム、セフチゾキシムナトリウム、セフォペラゾンナトリウム、セフォテタン二ナトリウム、セフロキシムアゾチル、セフォタキシムナトリウム、セファドロキシル一水和物、セファレキシン、セファロチンナトリウム、塩酸セファレキシン一水和物、セファマンドールナファート、セフォキシチンナトリウム、セフォニシドナトリウム、セフォラニド、セフトリアキソンナトリウム、セフタジジム、セファドロキシル、セフラジンおよびセフロキシムナトリウムのようなセファロスポリン類;アンピシリン、アモキシシリン、ペニシリンGベンザチン、シクラシリン、アンピシリンナトリウム、ペニシリンGカリウム、ペニシリンVカリウム、ピペラシリンナトリウム、オキサシリンナトリウム、塩酸バカンピシリン、クロキサシリンナトリウム、チカルシリン二ナトリウム、アズロシリンナトリウム、カルベニシリンインダリルナトリウム、ペニシリンGプロカイン、メチシリンナトリウムおよびナフシリンナトリウムのようなペニシリン類;エチルコハク酸エリスロマイシン、エリスロマイシン、エリスロマイシンエストレート、エリスロマイシンラクトビオネート、ステアリン酸エリスロマイシンおよびエチルコハク酸エリスロマイシンのようなエリスロマイシン類;ならびに塩酸テトラサイクリン、ドキシサイクリンhyclate、および塩酸ミノサイクリン、アジトロマイシン、クラリスロマイシンのようなテトラサイクリン類);
【0092】
抗感染薬(例えば、GM−CSF);
【0093】
気管支拡張薬(例えば、塩酸エピネフリン、硫酸メタプロテレノール、硫酸テルブタリン、イソエタリン、イソエタリンメシラート、塩酸イソエタリン、硫酸アルブテロール、アルブテロール、ビトルテロールメシラート、塩酸イソプロテレノール、硫酸テルブタリン、酒石酸エピネフリン、硫酸メタプロテレノール、エピネフリンおよび酒石酸エピネフリンのような交感神経作用薬;臭化イプラトロピウムのような抗コリン薬、アミノフィリン、ジフィリン、硫酸メタプロテレノールおよびアミノフィリンのようなキサンチン類;クロモリンナトリウムのようなマスト細胞安定薬;二プロピオン酸ベクロメタゾン(BDP)および二プロピオン酸ベクロメタゾン一水和物のような吸入コルチコステロイド類;サルブタモール;臭化イプラトロピウム;ブデソニド;ケトチフェン;サルメテロール;キシナフォアート;硫酸テルブタリン;トリアムシノロン;テオフィリン;ネドクロミルナトリウム;硫酸メタプロテレノール;アルブテロール;フルニソリド;プロピオン酸フルチカゾン);
【0094】
ステロイド化合物およびホルモン(例えば、ダナゾール、テストステロンシピオネート、フルオキシメステロン、エチルテストステロン、テストステロンエナテート、メチルテストステロン、フルオキシメステロンおよびテストステロンシピオネートのようなアンドロゲン類;エストラジオール、エストロピペートおよび抱合エストロゲンのようなエストロゲン類;酢酸メトキシプロゲステロンおよび酢酸ノルエチンドロンのようなプロゲスチン類;トリアムシノロン、ベタメタゾン、ベタメタゾンリン酸ナトリウム、デキサメタゾン、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、酢酸デキサメタゾンリン、プレドニゾン、酢酸メチルプレドニゾロン懸濁液、トリアムシノロンアセトニド、メチルプレドニゾロン、プレドニゾンリン酸ナトリウム、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、トリアムシノロンヘキサアセトニド、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンシピオネート、プレドニゾロン、酢酸フルドロコルチゾン、酢酸パラメタゾン、プレドニゾロンテブテート、酢酸プレドニゾロン、プレドニゾロンリン酸ナトリウムおよびコハク酸ヒドロコルチゾンナトリウムのようなコルチコステロイド類;ならびにレボサイロキシンナトリウムのような甲状腺ホルモン);
【0095】
血糖降下薬(例えば、ヒトインスリン、精製ウシインスリン、精製ブタインスリン、グリブリド、クロルプロパミド、グリピジド、トルブタミドおよびトラザミド);
【0096】
抗脂血薬(例えば、クロフィブレート、デキストロサイロキシンナトリウム、プロブコール、プラバスチチン、アトルバスタチン、ロバスタチンおよびナイアシン);
【0097】
タンパク質(例えば、DNase、アルギナーゼ、スーパーオキシドジスムターゼおよびリパーゼ);
【0098】
核酸(例えば、治療上有用な任意のタンパク質(本明細書に記載したタンパク質を含む)をコードするセンスまたはアンチセンス核酸);
【0099】
赤血球産生刺激に有用な薬物(例えば、エリスロポエチン);
【0100】
抗潰瘍/抗逆流薬(例えば、ファモチジン、シメチジンおよび塩酸ラニチジン);
【0101】
制吐/抗嘔吐薬(例えば、塩酸メクリジン、ナビロン、プロクロルペラジン、ジメンヒドリネート、塩酸プロメタジン、チエチルペラジンおよびスコポラミン);
【0102】
ならびに本明細書に記載した組成物および方法に有用な他の薬物としては、ミトタン、ハロニトロソ尿素、アントロサイクリン、エリプチシン、セフトリアキソン、ケトコナゾール、セフタジジム、オキサプロジン、アルブテロール、バラシクロビル、ウロフォリトロピン、ファムシクロビル、フルタミド、エナラプリル、メフォルミン、イタコナゾール、ブスピロン、ガバペンチン、フォシノプリル、トラマドール、アカルボス、ロラゼパン、フォリトロピン、グリピジド、オメプラゾール、フルオキセチン、リシノプリル、トラムスドール、レボフロキサシン、ザフィルルカスト、インターフェロン、成長ホルモン、インターロイキン、エリスロポイエチン、顆粒球刺激因子、ニザチジン、ブプロピオン、ペリンドプリル、エルブミン、アデノシン、アレンドロネート、アルプロスタジル、ベナゼプリル、ベタキソロール、硫酸ブレオマイシン、デキスフェンフルラミン、ジルチアゼム、フェンタニル、フレカイニド、ゲムシタビン、酢酸グラチラマー、グラニセトロン、ラミブジン、マンガフォジピル三ナトリウム、メサラミン、フマル酸メトプロロール、メトロニダゾール、ミグリトール、モエキシプリル、モンテロイカスト、酢酸オクトレチド、オロパタジン、パリカルシトール、ソマトロピン、コハク酸スマトリプタン、タクリン、ベラパミル、ナブメトン、トロバフロキサシン、ドラセトロン、ジドブジン、フィナステリド、トブラマイシン、イスラジピン、トルカポン、エノキサパリン、フルコナゾール、ランソプラゾール、テルビナフィン、パミドロネート、ジダノシン、ジクロフェナク、シサプリド、ベンラファキシン、トログリタゾン、フルバスタチン、ロサルタン、イミグルセラーゼ、ドネペジル、オランザピン、バルサルタン、フェキソフェナジン、カルシトニンおよび臭化イプラトロピウムなどがある。これらの薬物は一般に水溶性であると考えられている。
【0103】
本発明に有用な好ましい薬物としては、アルブテロール、アダパレン、ドキサゾシンメシレート、フロ酸モメタゾン、ウルソジオール、アンホテリシン、マレイン酸エナラプリル、フェロジピン、塩酸ネファゾドン、バルルビシン、アルベンダゾール、抱合エストロゲン、酢酸メドロキシプロゲステロン、塩酸ニカルジピン、酒石酸ゾルピデム、アムロジピンベシレート、エチニルエストラジオール、オメプラゾール、ルビテカン、アムロジピンベシレート/塩酸ベナゼプリル、エトドラク、塩酸パロキセチン、パクリタキセル、アトバクオン、フェロジピン、ポドフィロックス、パリカルシトール、二プロピオン酸ベタメタゾン、フェンタニル、二塩酸プラミペキソール、ビタミンDおよび関連類似体、フィナステリド、フマル酸キエチアピン、アルプロスタジル、カンデサルタン、シレキセチル、フルコナゾール、リトナビル、ブスルファン、カルバマゼピン、フルマゼニル、リスペリドン、カルベマゼピン、カルビドーパ、レボドーパ、ガンシクロビル、サキナビル、アムプレナビル、カルボプラチン、グリブリド、塩酸セルトラリン、ロフェコキシブカルベジロール、クロブスタゾール、ジフルコルトロン、ハロベタソルプロプリネート、クエン酸シデナフィル、セレコキシブ、クロルタリドン、イミキモド、シムバスタチン、シタロプラム、シプロフロキサシン、塩酸イリノテカン、スパルフロキサシン、エファビレンツ、シサプリド一水和物、ランソプラゾール、塩酸トラムスロシン、モファフィニル、クラリスロマイシン、レトロゾール、塩酸テルビナフィン、マレイン酸ロシグリタゾン、ジクロフェナクナトリウム、塩酸ロメフロキサシン、塩酸チロフィバン、テルミサルタン、ジアゼパム、ロラタジン、クエン酸トレミフェン、タリドミド、ジノプロストン、塩酸メフロキン、トランドラプリル、ドセタキセル、塩酸ミトキサントロン、トレチノイン、エトドラク、酢酸トリアムシノロン、エストラジオール、ウルソジオール、ネルフィナビルメシレート、インジナビル、二プロピオン酸ベクロメタゾン、オキサプロジン、フルタミド、ファモチジン、ニフェジピン、プレドニゾン、セフロキシム、ロラゼパム、ジゴキシン、ロバスタチン、グリセオフルビン、ナプロキセン、イブプロフェン、イソトレチノイン、クエン酸タモキシフェン、ニモジピン、アミダロンおよびアルプラゾラムなどが挙げられる。
【0104】
上のカテゴリーに入るいくつかの薬物の特定の非限定的な例としては、パクリタキセル、ドセタキセルおよび誘導体、エポチロン、一酸化窒素放出薬物、ヘパリン、アスピリン、クマジン、PPACK、ヒルジン、アンギオスタチンおよびエンドスタチンからのポリペプチド、メトトレキサート、5−フルオロウラシル、エストラジオール、P−セレクチン糖タンパク質リガンド−1キメラ、アブシキマブ、エキソチェリン、エレウテロビンおよびサルコジクチイン、フルダラビン、シロリムス、トラニラスト、VEGF、トランスフォーミング成長因子(TGF)−β、インスリン様成長因子(IGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、RGDペプチド、βまたはγ線放射(放射性)物質、およびデキサメタゾン、タクロリムス、アクチノマイシン−D、バチマスタット等が挙げられる。
【0105】
シロリムスは、イースター島に見つかった真菌ストレプトミセスにより産生される天然に存在するマクロライド系抗生物質である。これは、1974年に発酵産物のスクリーニング中にWyeth−Ayestによって発見された。916の分子量を有するシロリムス(化学式C5179NO13)は、水に不溶性であり、サイトカインおよび成長因子媒介性細胞増殖の有力な阻害物質である。FDAは、2〜5mg/投与の製剤を用いる経口免疫抑制薬としてのその使用を承認した。提案される薬物溶出効率は約140μg/cmであり、90日目の薬物の放出は95%であり、薬物対高分子の比率は30%である。
【0106】
本発明のある態様において、薬物(生理活性物質とも呼ぶ)は、広く合成化学物質、バイオテクノロジーにより得られた分子、薬草、健康食品、エキスおよび/または代替医薬品を含むが、これらに限定されない。例えば、アリシンおよびその対応するガーリックエキス、ジンセノシドおよび対応するニンジンエキス、フラボン/テルペンラクトンおよび対応するイチョウエキス、グリシルレチン酸および対応するカンゾウエキス、ならびにポリフェノール/プロアントシアニドおよび対応するブドウ種エキスを含む。
【0107】
前記の治療用物質、作用物質、薬物または生理活性物質の予防および治療特性は当業者によく知られているが、物質または作用物質は、例として記載するものであり、限定されることを意味しない。他の治療用物質は、開示した方法、用具および組成物との使用に同等に適用できる。
【0108】
本発明においては、組織に関する「架橋」、「固定」、「化学的修飾」および「化学処理」という用語は、交換可能に用いられる。
【0109】
図1に本開示の化学処理例に用いるグルタルアルデヒドおよびゲニピンの化学構造を示す。他の架橋剤は、本明細書に開示したコラーゲン−薬物−ゲニピンおよび/またはキトサン−薬物−ゲニピン化合物と同様に適用できる。
【0110】
本発明の化学処理に用いることができるゲニピンおよびグルタルアルデヒド以外の架橋剤としては、ホルムアルデヒド、ジアルデヒドデンプン、グリセルアルデヒド、シアナミド、ジイミド、ジイソシアナート、ジメチルアジピミダート、カルボジイミドおよびエポキシ化合物などである。
【0111】
図3にコラーゲン分子間および/または分子内の架橋剤グルタルアルデヒド(GA)の提案される架橋機構を示す。
【0112】
図4Aにゲニピンと反応物(コラーゲンまたは本発明の特定の種類の薬物を含む)のアミノ基と間の提案される反応機構を示し、一方、図4Bにコラーゲン分子間および/または分子内の架橋剤ゲニピン(GP)の提案される架橋機構を示す。
【0113】
図5はゲニピンがアミノ含有コラーゲンとアミノ含有薬物とを架橋するゲニピンの概略図を示す。また、ゲニピンのような架橋剤が、アミン含有基材とアミノ含有薬物を結合させることも考えられる。アミン含有基材の例としては、ポリウレタン等が挙げられる。
【0114】
グルタルアルデヒド架橋
グルタルアルデヒドは、生体組織を固定するための架橋剤として広範に使用されてきた。そのアルデヒド官能基により、グルタルアルデヒドは、生体組織内のリシルまたはヒドロキシリシル残基のε−アミノ基と主として反応する。グルタルアルデヒドによる生体組織または生物学的マトリックスの固定の機構は、他の所でも見い出すことができる。遊離アルデヒドの観察できる減少を伴う水溶液中のグルタルアルデヒド分子の重合は、以前に報告されている(Nimni MEら、Nimni ME編、COLLAGEN 第III巻、Boca Raton(FL)、CRC Press 1998年、1〜38頁)。重合に際して、2つのグルタルアルデヒド分子のアルデヒド官能基はアルドール縮合を受ける可能性がある(図3)。固定に続いて起るグルタルアルデヒドの重合に関して、ネットワーク架橋構造がコラーゲン繊維内の分子内および分子間で形成されると考えられる(図3)。
【0115】
アミンまたはアミノ官能基を有する物質(例えば、薬物)は上に例示したようにグルタルアルデヒドと反応すると考えられる。コラーゲン、グルタルアルデヒドおよびアミンまたはアミノ基を有する薬物を混合することにより、架橋化合物はコラーゲンを架橋剤としてのグルタルアルデヒドを介して薬物に結合させていると思われる。
【0116】
アミノ基を有するポリマーの架橋
いくつかの生体適合性プラスチックポリマーまたは合成ポリマーは、それらの化学構造に1つまたは複数のアミン基を有する。そのアミン基は、グルタルアルデヒド、ゲニピンまたはエポキシ化合物のような架橋剤に対して反応性になる可能性がある。したがって、アミン基を有するポリマー、グルタルアルデヒドおよび少なくともアミンまたはアミノ基を有する薬物を混合することにより、架橋化合物は、架橋剤としてのグルタルアルデヒドを介して、ポリマーが薬物に連結することがあると考えられる。他の架橋剤も適用できる。
【0117】
ゲニピン架橋
ゲニピンは生体組織内のリシン、ヒドロキシリシンまたはアルギニン残基の遊離アミノ基と反応することができることがSung HW(Biomaterials 1999年、第20巻、1759〜72頁)によって見い出された。以前の試験では、ゲニピンと最も単純な一級アミンであるメチルアミンとから生成する青色顔料につながる中間体の構造が報告されている。ゲニピン−メチルアミン単量体が、ゲニピンのC−3位のオレフィン炭素へのメチルアミンによる求核攻撃の後、ジヒドロピラン環の開環および生成したアルデヒド基への第二級アミノ基による攻撃により生成するという機構が示唆される(図4A)。青色顔料は、酸素ラジカル誘発性重合といくつかの中間体顔料の脱水素により生成すると考えられた。
【0118】
Sung HW(J Thorac Cardiovasc Surg 2001年、第122巻、1208〜1218頁)によって開示されたように、青色顔料における最も単純な化合物は、1:1付加化合物であった。ゲニピンはアミノ酸と自発的に反応して窒素イリドイドを生成し、これが脱水を受けて、芳香族単量体が生成することが示唆された。二量体化が第2段階でおそらくラジカル反応により起る。その結果から、ゲニピンは、生体組織(図4B)内のコラーゲン繊維または凝固性コラーゲン含有生体材料の中にある環状構造と、分子内および分子間架橋を形成することが示唆される。
【0119】
本明細書にゲニピンはアミンまたはアミノ基を有する薬物と反応することができることが開示されている。コラーゲン(または生体材料またはマトリックス)、ゲニピンおよびアミンまたはアミノ基を有する薬物を混合することにより、架橋化合物は、架橋剤としてのゲニピンを介して薬物に結合したコラーゲンを有することができる(図5)。
【0120】
本願発明者の1名による「ゲニピンで化学処理した無細胞性生体材料」と題する2002年2月4日に提出した同時係属特許出願番号10/067130に開示し、略述したように、ゲニピン固定細胞性および無細胞性組織の動物試験における炎症反応の程度は、それらのグルタルアルデヒド固定対応物より有意に低かった。さらに、グルタルアルデヒド固定細胞性および無細胞性組織における炎症反応は、それらのゲニピン固定対応物より有意に長く持続したことが認められた。これらの知見は、ゲニピン固定細胞性および無細胞性組織の生体適合性がグルタルアルデヒド固定細胞性および無細胞性組織より良好であることを示している。ゲニピン固定細胞性および無細胞性組織で認められたより低い炎症反応は、グルタルアルデヒド固定対応物と比較して残存残基の細胞毒性が低いことに起因すると推定される。以前の試験において、ゲニピンがグルタルアルデヒドより細胞毒性がかなり低いことが認められた(J Biomater Sci Polymer Edn 1999年、第10巻、63〜78頁)。細胞性および無細胞性のグルタルアルデヒド固定組織で認められた細胞毒性は、未反応グルタルアルデヒドが徐々に浸出することとグルタルアルデヒド架橋が可逆性であることに起因すると思われる。0.05%以上の濃度のグルタルアルデヒドを用いて材料を架橋させた場合、持続性の異物反応が起ることが認められた(J Biomater Sci Polymer Edn 1999年、第10巻、63〜78頁)。
【0121】
本発明のいくつかの態様は、薬物担体としてのゲニピン架橋ゼラチンに関する。一実施形態において、薬物含有凝固性ゼラチンを器具または医療用具上に担持させ、薬物含有ゼラチンを凝固させ、ゼラチンを架橋剤で化学的に処理し、組織を治療するために医療用具を組織に送達することを合わせて含む患者の組織を治療する方法を提供する。ゼラチンミクロスフェアは、薬物担体として広く用いられている。しかし、ゼラチンは水性環境にかなり速やかに溶解するため、長期の薬物送達系の製造にゼラチンを用いることが困難である。Hsingと共同研究者らは、ゲニピン架橋ミクロスフェアの分解速度はかなり高いことを報告した(J Biomed Mater Res 2003年、65A、271〜282頁)。
【実施例】
【0122】
<実施例1>
キトサン粉末を約pH4の酢酸に溶解する。キトサン(MW:約70000)は、スイスのFluka Chemical Co.から購入した。用いたキトサンの脱アセチル化の程度は、約85%であった。その後、キトサン溶液をNaOHで約pH5.5(ゲル化する直前)に調整する。問題とする薬物をキトサン溶液に加える。薬物含有キトサンをステント上に担持させている間に環境をNaOHでpH7に調節してステント上のキトサンを凝固させる。この工程は、用具が通過するときに、pHが徐々に上昇している複数のゾーンを設けることによって、連続アセンブリライン工程で達成することができる。それをさらに架橋剤、例えば、ゲニピンで処理して生体内耐久性および生体適合性を高める。キトサンの化学式はMi FL、Tan YC、Liang HF、およびSung HW、「新規の注入型キトサンベースインプラントのin vivo生体適合性および分解性(In vivo biocompatibility and degradability of a novel injectable−chitosan based implant)」、Biomaterials 2002年、第23巻、181〜191頁に見い出すことができることに注意すること。
【0123】
<実施例2>
問題とする少なくとも1つの薬物を4℃のコラーゲン溶液に加える。薬物含有コラーゲンをステント上に担持させている間に、環境温度を約37℃に調節してステント上のコラーゲンを凝固させる。この工程は、用具が通過するときに、温度を徐々に上昇させた複数のゾーンを設けることによって連続アセンブリライン工程で達成することができる。担持ステップを数回繰り返して、薬物含有コラーゲンの厚さまたは総量を増加させることができる。担持ステップは高用量の薬物含有コラーゲンで開始し、次いで、より低い用量の薬物含有コラーゲンを用いる;または逆で担持することもできる。それをさらに架橋剤、例えば、ゲニピンで処理して生体内耐久性および生体適合性を高める。固定の詳細は、Sungらによる別の所に見い出すことができる(Sung HW、Chang Y、Liang IL、Chang WH、およびChen YC、「天然に存在する架橋剤による生体組織の固定:固定速度ならびにpH、温度および初期固定剤濃度の影響(Fixation of biological tissues with a naturally occurring crosslinking agent: fixation rate and effects of pH, temperature and initial fixative concentration)」、J Biomed Master Res 2000年、第52巻、77〜87頁)。
【0124】
<実施例3>
薬物とステントをNOCC溶液に室温で加える。NOCC(「窒素酸素カルボキソメチルキトサン(Nitrogen Oxygen carboxylmethyl chitosan)により命名」)は、キトサン由来化合物であってpHに敏感であり、薬物送達に用いることができる。NOCCは、pH7で水溶性である。NOCCおよび薬物を架橋剤、例えば、ゲニピンによりステント上に架橋させる。これは凝固のステップである。本発明の一態様において、架橋後に、薬物含有NOCCは、必要な場合、約4の低pHにすることにより、より硬くまたはより固体状にすることができる。ほぼ中性のpHの体内にあるとき、最終ステントは薬物を徐放する。
【0125】
<実施例4>
タキソール(パクリタキセル)は、本開示における問題とする他のいくつかの薬物と同様に水にほとんど溶けない。したがって、最初にパクリタキセルをコラーゲン溶液に約4℃で機械的に分散させる。薬物含有コラーゲンをステント上に担持させ、その後、温度を約37℃に上昇させて、ステント上のコラーゲン繊維を凝固させる。担持ステップを複数回繰り返す。その後、被覆済みステントを水性ゲニピンで架橋する。薬物担体、すなわちコラーゲンまたはキトサン上の架橋は、架橋の程度に応じて薬物の拡散または溶出速度を実質的に変化させる。
【0126】
<実施例5>
タキソール(パクリタキセル)は、本開示における問題とする他のいくつかの薬物と同様に水にほとんど溶けない。したがって、最初にパクリタキセルをコラーゲン溶液に約4℃で機械的に分散させる。薬物含有コラーゲンをステント上に担持させ、その後、温度を約37℃に上昇させて、ステント上のコラーゲン繊維を凝固させる。担持には、スプレーコーティング、浸漬コーティング、プラズマコーティング、塗布または他の既知の技術を含むことができる。担持ステップを複数回繰り返す。生体材料(すなわち、薬物担体、すなわちコラーゲンまたはキトサン)上の架橋は、架橋の程度に応じて薬物の拡散または溶出速度を実質的に変化させる。ここで、ステントの第1の部分の生体材料の架橋の程度は、ステントの第2の部分または第3の部分の生体材料の架橋の程度と異なっている。
【0127】
<実施例6>
この実施例ではシロリムスを生理活性物質として用いる。最初にシロリムスをコラーゲン溶液に約4℃で機械的に分散させる。シロリムス含有コラーゲンをステント上に担持させ、その後、温度を約37℃に上昇させて、ステント上のコラーゲン繊維を凝固させる。担持は、スプレーコーティング、浸漬コーティング、プラズマコーティング、塗布または他の既知の技術を含むことができる。担持ステップは複数回繰り返すことができ、各担持ステップの後に架橋ステップが続き、各架橋ステップは、本質的に同じ架橋の程度を用いるか、または実質的に異なる架橋の程度を用いる。1つの別の実施形態において、ステントの第1の部分のコラーゲンの架橋の程度は、ステントの第2の部分のコラーゲンの架橋の程度と異なっている。コラーゲンを化学的に架橋させることにより得られるシロリムス含有ステントは、臨床使用のために滅菌し、包装する。例として、1つの好ましい滅菌条件は、1分間から数時間にわたる室温での0.2%過酢酸および4%エタノールを含んでいてよい。
【0128】
本発明のいくつかの態様は、表面を有する器具、生理活性物質、および前記器具の表面の少なくとも一部に担持され、前記生理活性物質を含み、その後架橋剤で架橋された生体材料を含む医療用具を提供する。本発明の医療用具は、約0.1〜5%の過酢酸および約1〜20%のアルコール(好ましくはエタノール)の滅菌剤で5〜50℃の温度にて約1分〜5時間さらに滅菌される。
【0129】
<実施例7>
コーティングの均一性に対する溶液の表面張力の影響を評価するために、コラーゲン溶液を使用して冠動脈ステントに浸漬またはスプレーコーティングする。10mg/mlの対照コラーゲン溶液を用いてステンレススチール製ステントに室温で浸漬コーティングする。その高い表面張力のため、コラーゲンはステントの隅(2つの支持材が交わる)に薄い膜状で密集または蓄積する傾向がある。乾燥または凝固ステップの後でさえ、ステントの隅のコラーゲンは依然として直線状の支持材の部分より不釣合いに厚い。第2の実験では、1μlのオクタノール界面活性剤(表面張力低下剤)を対照コラーゲン溶液に加える。得られるコラーゲン被覆ステントでは、対照実験よりもステントの隅において密集が低い。
【0130】
液体分子間の凝集力が表面張力として知られている現象の原因である。表面の分子は、そのすべての側に他の同様な分子を有しておらず、したがって、表面でそれらと直接結合しているものにより強く凝集する。これが、物体が完全に沈んでいるときにそれを移動させるよりも表面を経て物体を移動させることを困難にしている表面「膜」を形成する。表面張力は、一般的に、接触角法を用いて、1cmの長さの膜を破るのに必要なダイン単位の力であるダイン/cmの単位で測定される。同等なものとして、それは平方センチメートル当たりのエルグ単位の表面エネルギーと言うことができる。20℃の水は72.8ダイン/cmの表面張力を有するのに対して、エチルアルコールでは22.3、水銀では465である。本発明のいくつかの態様は、生体材料の表面張力を低下させることを含み、担持のステップが浸漬コーティング、スプレーコーティング、同時押出し成形、同時成形、プラズマコーティングまたは同様な手法を含む、医療用具の表面の少なくとも一部に凝固性生体材料を担持させる方法を提供する。
【0131】
本発明の薬物含有生体材料および/またはステント上のコラーゲン−薬物−ゲニピン化合物で作られた「生物学的物質」は、凍結乾燥、エチレンオキシド滅菌、または数時間にわたり20%から75%に濃度を徐々に増加させる、一連のエタノール溶液中の滅菌により使用前に滅菌することができる。最後に、薬物担持ステントを滅菌済み生理食塩水で洗浄し、包装する。薬物担体であるコラーゲンおよびキトサンは、完全または部分的に架橋させることができる。本発明の一態様において、部分的に架橋させたコラーゲン/キトサンは、薬物を徐放するために、生分解性または生体侵食性である。
【0132】
図6に、本発明の原理によりゲニピンで架橋させた薬物含有コラーゲン3を被覆した、血管ステント1の医療用具の断面図の具体例を示す。ステントは一般的に、ステンレススチール、ニチノール、金、他の金属またはプラスチック材料製の網目型の管状プロテーゼである。血管ステント1または血管以外の用途用のステント支持材2は、薬物含有コラーゲン層3と組成がわずかに異なる他の層4をさらに含んでいてよい。ある態様において、層4は、より高い薬物担持量とステント支持材2または医療用具上にこの層が強固に被覆されることを可能にするより高い接着性を有することができる。架橋したコラーゲンのバリア特性のため、薬物は架橋したマトリックスから徐々に拡散することができるにすぎないであろう。
【0133】
薬物含有コラーゲン接着性層4の特別な特徴は、層4がステント支持材上に強固に接着され、薬物が数週間または数か月で徐放するために薬物がしっかり担持され、安定性を目的としてコラーゲンがゲニピンにより部分的に架橋または完全に架橋されていることによって特徴づけられる。
【0134】
薬物含有コラーゲン層3の特別な特徴は、層3が層4に強固に接着され、また逆も同じであり、薬物が数日または数週間で徐放するために薬物がさほどしっかり担持されていないか、またはコラーゲンがより低い架橋の程度で架橋されていてよいことによって特徴づけられる。
【0135】
ゲニピンにより架橋された薬物担持コラーゲンおよび/または薬物担持キトサンの特別な特徴は、完全に浸透した薬物を含む架橋されたコラーゲン/キトサンが薬物が制御された速度で拡散することを可能にし、コラーゲンが組織に優しく、留置に際して柔軟性があり、架橋されたコラーゲン/キトサン材料が生体適合性を増大させ、生分解性を制御することによって特徴づけられる。コラーゲン−薬物−ゲニピンまたはキトサン−薬物−ゲニピン化合物を製造する全工程は、環境が制御された施設で自動化することができる。再狭窄の軽減または他の治療効果を得るために、十分な量のコラーゲンまたは薬物をステント支持材の外側に担持させることができる。
【0136】
本発明の1つの好ましい態様は、(a)生体材料を架橋剤で架橋する工程、(b)生理活性物質を生体材料と混合する工程、(c)生体材料を医療用具または器具の表面の少なくとも一部に担持させる工程、(d)医療用具を標的組織に送達し、標的組織を治療するために生理活性物質を放出させる工程を含む患者の標的組織を治療する方法を提供する。一実施形態において、方法は、送達段階の前に生体材料を凝固させる段階を含む。他の実施形態において、方法はさらに、凝固段階の前に、少なくとも架橋性官能基を含む生理活性物質を架橋剤により生体材料に化学的に結合させる段階を含む。
【0137】
本発明のより広い範囲において、「薬物」はさらに、例えば、薬理上活性な化合物、タンパク質、オリゴヌクレオチド、リボザイム、アンチセンス遺伝子、DNA凝縮剤(compacting agent)、遺伝子/ベクターシステム(すなわち、核酸の取り込みおよび発現を可能にするもの)、核酸{例えば、ペプチド標的配列を結合した場合もある非感染ベクターまたはウイルスベクターにおける裸のDNA、cDNA、RNA、DNA、cDNAまたはRNA、アンチセンス核酸(RNAまたはDNA)、ならびに膜転位配列(「MTS」)および単純ヘルペスウイルス−1(「VP22」)のようなフェリータンパク質の遺伝子配列を含み、コードするDNAキメラを含む)、ならびにレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、単純ヘルペスウイルス等を含む、所望の用途によって多くの種類から選択されるウイルス、リポソームおよび陽イオン性ポリマーなどの本発明に用いることができる生理活性物質または材料を含む。
【0138】
例えば、生物学的に活性な溶質としては、ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、PPACK(デキストロフェニルアラニン プロリン アルギニン クロロメチルケトン)、ラパマイシン、プロブコールおよびベラパミルのような抗トロンボゲン形成薬;血管形成および抗血管形成薬;エノキサパリン、アンギオペプチン、または平滑筋細胞増殖を阻害することができるモノクローナル抗体、ヒルジンおよびアセチルサリチル酸のような抗増殖薬;デキサメタゾン、プレドニソロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジンおよびメサラミンのような抗炎症薬;パクリタキセル、5−フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポシロン、エンドスタチン、アンギオスタチンおよびチミジンキナーゼ阻害薬のような抗腫瘍/抗増殖/抗有糸分裂薬;リドカイン、ブピバカインおよびロピバカインのような麻酔薬;D−Phe−ArgクロロメチルケトンおよびRGDペプチド含有化合物、ヘパリン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗薬、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、プロスタグランジン阻害薬、血小板阻害薬およびダニ抗血小板因子のような抗凝固薬;成長因子類、成長因子受容体拮抗薬、転写活性化因子および翻訳促進因子のような血管細胞成長促進因子類;成長因子阻害薬、成長因子受容体拮抗薬、転写抑制因子、翻訳抑制因子、複製阻害薬、抑制抗体、成長因子に対する直接的抗体、成長因子および細胞毒素からなる二機能性分子、抗体および細胞毒素からなる二機能性分子のような血管細胞成長阻害薬;コレステロール降下薬;血管拡張薬;内因性血管作動機構を妨げる薬物、ならびにその組合せなどが挙げられる。これらおよび他の化合物は、本発明の用具および方法に適用可能である。
【0139】
両方の全内容が参照して本明細書に組み込まれる2002年7月23日に発行された米国特許第6423682号および2002年11月26日に発行された米国特許第6485920号は、新規ヒト成長因子拮抗タンパク質およびその活性変異体の組成物、組換えDNA分子を含むそのようなポリペプチドをコードする分離ポリヌクレオチド、クローン化遺伝子またはその縮重変異型、特に、対立遺伝子変異型のような天然に存在する変異型、アンチセンスポリヌクレオチド分子、およびそのようなポリペプチドに存在する1つまたは複数のエピトープを特異的に認識する抗体、ならびにミトコンドリアのそのような抗体機能をもたらすハイブリドーマおよび細胞のミトコンドリア内の代謝副産物として合成された有毒物質を開示している。本発明のいくつかの態様は、用具の表面の少なくとも一部に担持させた後、架橋剤で架橋させた、上で挙げた遺伝子の少なくとも1つを含む生理活性物質を含有する凝固性生体材料を含む用具を提供する。
【0140】
全内容が参照して本明細書に組み込まれる、2002年11月5日に提出された米国特許第6476211号は、ヒト胎児肝臓−脾臓およびマクロファージのcDNAライブラリーから分離されたヒトCD39様タンパク質ポリヌクレオチドならびにこれらのポリヌクレオチドおよびその突然変異体または変異体によりコードされたポリペプチドを開示している。CD39(cluster of differentiation 39)は、リンパ球の分化の系列またはステージを特定し、それにより1つのクラスのリンパ球と他を識別するのに用いることができるモノクローナル抗体の「クラスター」により認識される細胞表面分子である。本発明のいくつかの態様は、用具の表面の少なくとも一部に担持させた後、架橋剤で架橋させた、上に示したヒトCD39様タンパク質ポリヌクレオチド等を含む生理活性物質を含有する凝固性生体材料を含む用具を提供する。
【0141】
全内容が参照して本明細書に組み込まれる、1998年7月14日に提出された米国特許第5780052号は、破壊された細胞膜を有する標的細胞を、特異的親和性の試薬−リポソーム複合体と細胞膜の破壊に起因する細胞死を複合体が防止するのに有効な量で、十分な時間接触させることを含む、標的細胞を細胞死から救助する方法を開示している。この特許は、診断および治療のために損傷した標的細胞に選択される因子を送達する方法を開示している。この場合、複合体は、線維芽細胞成長因子−β、血管形成因子、心筋の高エネルギー基質、抗酸化剤、サイトカインおよび造影剤からなる群から選択される生体作用剤を含む。本発明のいくつかの態様は、用具の表面の少なくとも一部に担持させた後、架橋剤で架橋させた、上に示した線維芽細胞成長因子−β、血管形成因子、心筋の高エネルギー基質、抗酸化剤、サイトカイン等を含む生理活性物質を含有する凝固性生体材料を含む用具を提供する。
【0142】
全内容が参照して本明細書に組み込まれる、2002年11月5日に提出された米国特許第6475784号は、抗血管形成活性を有するポリペプチドおよびこれらのポリペプチドをコードする核酸に関する方法を開示している。抗血管形成ポリペプチドは、少なくともプラスミノーゲンのクリングル1〜3を含む。特許第784号はまた、血管形成および望ましくない内皮細胞増殖によって特徴づけられる他の状態を抑制するためにポリペプチドおよび核酸を使用する方法を提供している。血管形成阻害物質であるアンギオスタチンは、天然に存在するプラスミノーゲンの内部切断産物である。ヒトプラスミノーゲンは、「クリングル構造」と呼ばれる5つの特有のタンパク質ドメインを有する。本発明のいくつかの態様は、用具の表面の少なくとも一部に担持させた後、架橋剤で架橋させた、上に示した抗血管形成ポリペプチド、アンギオスタチン、血管形成阻害物質等を含む生理活性物質を含有する凝固性生体材料を含む用具を提供する。
【0143】
全内容が参照して本明細書に組み込まれる、2002年8月20日に提出された米国特許第6436703号は、新規の分離ポリペプチド、組換えDNA分子、クローン化遺伝子またはその縮重変異型、特に、対立遺伝子変異型のような天然に存在する変異型、アンチセンスポリヌクレオチド分子を含むそのようなポリペプチドをコードする新規の分離ポリヌクレオチド、およびそのようなポリペプチド上に存在する1つまたは複数のエピトープを特異的に認識する抗体ならびにそのような抗体を産生するハイブリドーマを含む方法および組成物を開示している。第’703号における組成物はさらに、本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含むベクター、そのようなポリヌクレオチドを含むように遺伝子工学的に処理された細胞およびそのようなポリヌクレオチドを発現するように遺伝子工学的に処理された細胞を含む。本発明のいくつかの態様は、用具の表面の少なくとも一部に担持させた後、架橋剤で架橋させた、上に示したアンチセンスポリヌクレオチド分子等を含む生理活性物質を含有する凝固性生体材料を含む用具を提供する。
【0144】
全内容が参照して本明細書に組み込まれる、2002年9月17日に提出された米国特許第6451764号は、哺乳類にVRP(血管内皮成長因子関連タンパク質)を含む有効な量の組成物を投与することを含む、哺乳類における血管組織を処理し、血管形成を促進する方法を開示している。開示第‘764号はさらに、外傷に罹っている哺乳類にVRPを含む有効な量の組成物を投与することを含む血管内皮の外傷を治療する方法、または哺乳類におけるVRPの受容体の活性化の欠如もしくは阻害の欠如によって特徴づけられる機能不全状態を治療する方法を提供している。本発明のいくつかの態様は、用具の表面の少なくとも一部に担持させた後、架橋剤で架橋させた、上に示した血管内皮成長因子関連タンパク質の阻害物質または受容体等を含む生理活性物質を含有する凝固性生体材料を含む用具を提供する。
【0145】
前述の説明から、薬物徐放用の例示的コラーゲン−薬物−ゲニピン化合物またはキトサン−薬物−ゲニピン化合物を含む生物学的物質を調製する新規かつ明白でない方法が組織治療適用分野用に開示されたことを今や認識すべきである。この方法は、薬物を凝固性生体材料と混合し、生体材料および/または薬物を架橋剤で化学的に処理し、薬物含有凝固性生体材料を医療用具上に担持させ、薬物含有生体材料を凝固させることを合わせて含む。得られる生物学的物質は、一般的に、低い抗原性、低い免疫原性および低い酵素分解を有し、薬物を徐放することができることを特徴とする。本発明を特定の実施形態に関して記述したが、この記述は、本発明を例示するものであり、本発明を限定するものと解釈すべきではない。本発明の真の精神と範囲から逸脱することなしに、当業者は様々な変更形態および用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本開示の化学処理実施例に用いるグルタルアルデヒドおよびゲニピンの化学構造を示す図である。
【図2A】クチナシ(Gardenia jasmindides Ellis)の果実に存在するイリドイドグリコシド(構造I)を示す図である。
【図2B】ゲニピンが誘導される親化合物ゲニポシド(構造II)を示す図である。
【図3】コラーゲン分子間および/または分子内の架橋剤グルタルアルデヒド(GA)の提案される架橋機構を示す図である。
【図4A】ゲニピンとコラーゲンまたは本発明の特定の種類の薬物を含む反応物のアミノ基との提案される反応機構を示す図である。
【図4B】コラーゲン分子間および/または分子内の架橋剤ゲニピン(GP)の提案される架橋機構を示す図である。
【図5】ゲニピンがアミノ含有コラーゲンとアミノ含有薬物とを架橋するゲニピンの概略図を示す図である。
【図6】本発明の原理によりゲニピンで架橋させた薬物含有コラーゲンを被覆した血管ステントの断面図の具体例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を有する器具、
生理活性物質、および
前記器具の表面の少なくとも一部に担持され、前記生理活性物質を含み、その後架橋剤で架橋された生体材料
を含む医療用具。
【請求項2】
表面を有する器具、
生理活性物質、および
架橋剤で架橋され、その後、前記生理活性物質と混合され、前記器具の表面の少なくとも一部に担持された生体材料
を含む医療用具。
【請求項3】
生体材料が凝固性基材であり、前記凝固性基材を凝固させる段階をさらに含む請求項1または2に記載の用具。
【請求項4】
架橋剤がゲニピン、その類似体、誘導体およびその組合せである請求項1または2に記載の用具。
【請求項5】
架橋剤がホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ジアルデヒドデンプン、グリセルアルデヒド、シアナミド、ジイミド、ジイソシアナート、ジメチルアジピミダート、カルボジイミド、エポキシ化合物およびその混合物からなる群から選択される請求項1または2に記載の用具。
【請求項6】
器具がステントである請求項1または2に記載の用具。
【請求項7】
器具が非ステントインプラントである請求項1または2に記載の用具。
【請求項8】
器具が輪状形成リング、心臓弁プロテーゼ、静脈弁バイオプロテーゼ、整形外科用インプラント、歯科用インプラント、眼科用インプラント、心血管インプラントおよび脳インプラントからなる群から選択される請求項1または2に記載の用具。
【請求項9】
器具がカテーテル、ワイヤー、カニューレおよび内視鏡機器からなる群から選択される、経皮用具である請求項1または2に記載の用具。
【請求項10】
生体材料がコラーゲン、ゼラチン、エラスチン、キトサン、N,O,カルボキシメチルキトサンおよびその混合物からなる群から選択される請求項1または2に記載の用具。
【請求項11】
生体材料が溶液、ペースト、ゲル、懸濁液、コロイドおよび乳漿からなる群から選択される相から凝固可能である請求項3に記載の用具。
【請求項12】
生理活性物質が鎮痛薬/解熱薬、抗喘息薬、抗生物質、抗うつ薬、抗糖尿病薬、抗真菌薬、抗高血圧薬、抗炎症薬、抗腫瘍薬、抗不安薬、免疫抑制薬、抗片頭痛薬、沈静/催眠薬、抗精神病薬、抗躁病薬、抗不整脈薬、抗関節炎薬、抗痛風薬、抗凝固薬、血栓溶解薬、抗線維素溶解薬、抗血小板薬および抗菌薬、抗ウイルス薬、抗微生物薬および抗感染薬からなる群から選択される請求項1または2に記載の用具。
【請求項13】
生理活性物質がアクチノマイシンD、パクリタキセル、ビンクリスチン、メトトレキッサート、およびアンギオペプチン、バチマスタート、ハロフギノン、シロリムス、タクロリムス、エベロリムス、トラニラスト、デキサメタゾンおよびマイコフェノール酸からなる群から選択される請求項1または2に記載の用具。
【請求項14】
生理活性物質がロバスタチン、トロンボキサンAシンテターゼ阻害薬、エイコサペンタン酸、シプロステン、トラピジル、アンギオテンシン変換酵素阻害薬およびヘパリンからなる群から選択される請求項1または2に記載の用具。
【請求項15】
生理活性物質がアリシン、ニンジンエキス、フラボン、イチョウエキス、グリチルレチン酸およびプロアントシアニド類からなる群から選択される請求項1または2に記載の用具。
【請求項16】
生理活性物質が生体細胞を含む請求項1または2に記載の用具。
【請求項17】
生体細胞が内皮細胞を含む請求項16に記載の用具。
【請求項18】
生理活性物質が成長因子を含む請求項1または2に記載の用具。
【請求項19】
成長因子が血管内皮成長因子、トランスフォーミング成長因子−β、インスリン様成長因子、血小板由来成長因子、線維芽細胞成長因子およびその組合せからなる群から選択される請求項18に記載の用具。

【図1】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−500975(P2006−500975A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−526437(P2004−526437)
【出願日】平成15年8月1日(2003.8.1)
【国際出願番号】PCT/US2003/024445
【国際公開番号】WO2004/012676
【国際公開日】平成16年2月12日(2004.2.12)
【出願人】(505041287)ジーピー メディカル (1)
【Fターム(参考)】