説明

ゲートバルブ及びこのゲートバルブを用いた真空装置

【課題】シール部材が装着されている弁体のシール面上にパーティクルや粉塵が直接落下することを防止するとともに、弁箱本体のシール座面上に落下するパーティクルや粉塵の量を減らし、かつ、落下してもこれを回収できる構造とする。
【解決手段】被搬送物を通過させるゲート開口部9a,9bが設けられた弁箱2と、ゲート開口部9a,9bを横方向からスライド往復移動させることによって開閉する弁体5とからなり、弁体5をスライド移動させて弁箱2のゲート開口部9a,9bを閉じたとき、弁体5に形成されたシール面53a,56aが弁箱2のシール座面11,16に当接することによってゲート開口部9a,9bが遮断されるゲートバルブ1において、弁箱2の右シール座面11の下部が傾斜面11aに形成されており、右シール座面11の傾斜面11aの下端部に粉塵を収納するための収納凹部31が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空装置等に使用されるゲートバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
ゲートバルブの従来の構造の一例を図7及び図8に示す。図7は、ゲートバルブの構造の一例を示す分解斜視図、図8はゲートバルブの縦断面図である。このゲートバルブは、特開2004−36762号公報に開示されているゲートバルブ(真空用ゲート弁)である。
【0003】
このゲートバルブ101は、略箱形状の弁箱本体102と、サイドプレート103と、弁箱本体102の下端開口を覆うボンネットフランジ部材104と、軸106に支持された長形の弁体105とから構成されている。
【0004】
弁箱本体102のサイドプレート103が装着される一方の長側壁108と他方の長側壁108との間には、略矩形状のゲート開口部109aが貫通して形成されており、サイドプレート103にも、略矩形状のゲート開口部109bが貫通して形成されている。
【0005】
弁箱本体102内には、ゲート開口部109a,109bを上下に挟む位置関係で、図の上方側に上方シール座面111が、図の下方側に下方シール座面116がそれぞれ形成され、これらのシール座面111,116は、段違いではあっても、全体が変形した環形状となるように、連続して形成されている。これにより、弁箱本体102内部には、上方シール座面111から下方シール座面116に至るまでの連続したシール座面が構成されている。
【0006】
一方、弁体105の先端部105aの端面及び基端部105bの端面には、シール部材113が装着されている。シール部材113は、図9に示すように、長細い環状に形成されており、上方シール座面111と下方シール座面116との連続する段違い部に対応する略U字状部分113a,113aから上下両側に押し開いた姿勢で、弁体105の外周面(すなわち、先端部105aの端面及び基端部105bの端面)に装着されている。
【0007】
そして、弁体105がゲート開口部109a,109bを閉じる方向(図中、上方向)に移動したときに、その先端部105a及び基端部105bに装着されているシール部材113が、弁箱本体102の上方シール座面111及び下方シール座面116にそれぞれ圧接され、これにより、弁箱本体102のゲート開口部109a,109b間の流通が遮断されるようになっている。
【0008】
上記構成において、弁体105の移動は、図示しないエアーシリンダによる駆動手段によって行われており、弁体105をゲート開口部109a,109bを閉じる方向に移動したときにの、シール部材113と上方シール座面111及び下方シール座面116との圧接力(すなわち、シール部材113の潰し量)は、このエアーシリンダによるエアー圧を変えることによって制御されている。
【特許文献1】特開2004−36762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来のゲートバルブ101は、弁体105を上下に動かすことで、ゲート開口部109a,109bを上下方向に開閉する構造となっており、弁体105の先端部105aの端面及び基端部105bの端面は、その両端部を除けばほぼ全体が上を向いた水平面となっている。
【0010】
このような構造のゲートバルブ101を例えばプラズマCVD装置等の真空装置の各室を仕切るゲートバルブとして使用した場合、ゲートバルブ101の弁体105を開いて被搬送物である基板を隣の室に搬送するとき、製造過程で発生したパーティクル等が弁体105の先端部105aの端面上に落下することになる。
【0011】
また、最近はゲートバルブ自体の形状が大きくなり、これに伴って弁体105も大型化する傾向にあるため、この弁体105を駆動するエアシリンダの駆動力も大きくなっている。そのため、その駆動力でシール部材113をシール座面111,116に押し付けてしまうと、シール部材113を押さえ過ぎて余分な力がかかることになる。この場合、設計段階では、シール部材113がシール座面111,116に均等に当たるように設計しているが、使用による経年変化等により、シール部材113とシール座面111,116との当たりに偏りが出てくると、弁体105の先端部105aの端面及び基端部105bの端面が弁箱本体102のシール座面111,116に直接当たって、弁体105の先端部105a及び基端部105bが削れていくといった問題が発生していた。従って、このような削り屑による粉塵も弁体105の先端部105aの端面上に落下することになる。また、削り架すによる粉塵は、弁体105の基端部106aの端面上にも落下することになる。
【0012】
この場合、上記したように、従来のゲートバルブ101では、弁体105の先端部105aの端面及び基端部105bの端面がその両端部を除いてほぼ全体が上を向いた水平面となっているため、落下したパーティクルや粉塵がそのまま端面上に堆積し、これが原因でゲートバルブの遮断性能が低下するといった問題があった。
【0013】
本発明はかかる問題点を解決すべく創案されたもので、その目的は、シール部材が装着されている弁体のシール面上にパーティクルや粉塵が直接落下することを防止するとともに、弁箱本体のシール座面上に落下するパーティクルや粉塵の量を減らし、かつ、落下してもこれを回収することのできる構造とすることで、パーティクルや粉塵による遮断性能の低下を防止したゲートバルブ及びこれを用いた真空装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明のゲートバルブは、被搬送物を通過させるためのゲート開口部が設けられた弁箱と、前記ゲート開口部を一方向からスライド往復移動させることによって開閉する板状の弁体とからなり、前記弁体をスライド移動させて前記弁箱のゲート開口部を閉じたとき、前記弁体に形成されたシール面が前記弁箱のゲート開口部を囲むようにして設けられたシール座面に当接することによって前記ゲート開口部が遮断されるゲートバルブにおいて、前記弁体が前記弁箱に対して横方向にスライド往復移動可能に設けられ、前記弁体のシール面及び前記弁箱のシール座面の下部が傾斜面に形成されていることを特徴としている。また、本発明のゲートバルブは、上記構成においてさらに、前記シール座面の傾斜面の下端部に粉塵を収納するための収納凹部が設けられていることを特徴としている。
【0015】
このように、本発明では、弁体を横方向にスライド移動させることによってゲート開口部を開閉する構造としている。すなわち、ゲートが開いているとき、弁体はゲート開口部の横に位置しているので、例えば被搬送物がゲート開口部を通過するときにパーティクル等の粉塵を落下させたとしても、弁体のシール面に直接落下することがない。一方、ゲート開口部を通過時に落下した粉塵は、弁箱のシール座面上に落下することになるが、本発明では、粉塵が落下する箇所のシール座面が傾斜面に形成されているので、落下した粉塵はこの傾斜面を下方に滑り落ちるように落下し、シール座面上に残ることはない。これにより、粉塵の影響によるゲートバルブの遮断性能の低下を防止することができる。また、傾斜面を下方に滑り落ちるように落下した粉塵は、傾斜面の下端部に設けられた収納凹部内に収納されるので、落下した粉塵がゲートの開閉によって再び舞い上がり、シール座面上に付着するといった心配がない。これにより、粉塵の影響によるゲートバルブの遮断性能の低下をより確実に防止することができる。さらに、粉塵は収納凹部に収納されているので、ゲートバルブのメンテナンス時の粉塵除去作業が容易となる。
【0016】
より具体的に説明すると、前記シール座面の下部はV字状の傾斜面に形成されており、前記収納凹部が前記傾斜面の交差部分に設けられている。ここで、V字状の傾斜面のうち、一方の傾斜面は下向きのシール座面となっており、他方の傾斜面が上向きのシール座面となっている。すなわち、粉塵の落下が遮断性能に影響するのは、傾斜面が上向きの他方のシール座面だけである。すなわち、上方を向いているシール座面が上記従来のゲートバルブに比べて約半分となっている。
【0017】
このように、本発明のゲートバルブは、弁体を横方向にスライド移動させる構造としたこと、及びシール座面の下部をV字状の傾斜面に形成したことによって、従来構造のゲートバルブと比べて、粉塵の落下の影響を極めて受けにくい構造とすることができるものである。
【0018】
なお、本発明のゲートバルブは、真空装置の第1処理室と第2処理室との間を開閉するゲートバルブとして用いることできる。これにより、真空装置自体の耐久性や、第1処理室と第2処理室との遮断性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、弁体を横方向にスライド移動させることによって、ゲートが開いているとき、弁体はゲート開口部の横に位置しているので、被搬送物がゲート開口部を通過するときにパーティクル等の粉塵を落下させたとしても、弁体のシール面に粉塵が直接落下することがない。また、ゲート開口部を通過時に落下した粉塵は、弁箱のシール座面上に落下することになるが、粉塵が落下する箇所のシール座面が傾斜面に形成されているので、落下した粉塵はこの傾斜面を下方に滑り落ちるように落下する。これにより、粉塵がシール座面上に残ることがないので、粉塵の影響によるゲートバルブの遮断性能の低下を防止することができる。また、傾斜面を下方に滑り落ちるように落下した粉塵は、傾斜面の下端部に設けられている収納凹部内に収納されるので、落下した粉塵がゲートの開閉によって再び舞い上がるといった心配がない。これにより、粉塵の影響によるゲートバルブの遮断性能の低下をより確実に防止することができる。さらに、シール座面上にパーティクル等が溜まりにくい構造であるので、リークも起こりにくい構造とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
図1ないし図3は、本発明の実施形態に係るゲートバルブ1の構造を示しており、図1は分解斜視図、図2は縦断面図、図3は、弁箱の一部を切り欠いた状態の分解斜視図である。
【0022】
このゲートバルブ1は、内部が後述する弁板5のスライド空間2a(図3参照)に形成された略箱形状の弁箱2と、サイド板3と、弁箱2の一側面(図3では左側の側面)に形成された、スライド空間2aの開口部2bを覆う蓋部材4と、図示しないエアシリンダの駆動軸(シリンダロッド)6に支持された略板形状の弁体5とから構成されている。ただし、サイド板3は、図1では弁箱2に既に装着した状態で示している。
【0023】
弁箱2のサイド板3が装着される一方の側壁8aと他方の側壁8bとの間には、略矩形状に形成されたゲート開口部9aが貫通して形成されており、サイド板3にも、略矩形状に形成されたゲート開口部9bが貫通して形成されている。すなわち、ゲート開口部9a,9bが、スライド空間2aを貫通するように形成されている。
【0024】
また、弁箱2のスライド空間2aの左右の内壁面には、ゲート開口部9a,9bを左右から挟むような位置関係で、右シール座面11と左シール座面16とがそれぞれ形成されている。各シール座面11,16は、図1に示す正面側から見たときに、左右対称の台形形状に形成されており、全体として六角形状に形成されている。これらのシール座面11,16は、接続部である上部位置及び下部位置において段違いに形成されているが、その段違い部15,15を含めて、全体が厚み方向に段差を有する六角形の環形状となるように、連続して形成されている。これにより、弁箱2の内壁面には、右シール座面11から段違い部15を経て左シール座面16に至るまでの連続した六角形状のシール座面が形成されている。
【0025】
一方、弁体5は、略正方形状の本体部51の右側端面52に、スライド方向(図1及び図3中、矢符X1方向)に延設するようにして台形形状の右側弁体部53が形成されている。この右側弁体部53は、本体部51の半分の厚みに形成されている。すなわち、右側端面52の手前側半分に形成されている。一方、右側端面52の奥側半分には、右側弁体部53と対称な台形形状の切欠き部55が形成されており、この切欠き部55によって囲まれた本体部51の切欠き部分が、六角形状の左側弁体部56となっている。すなわち、右側弁体部53と左側弁体部56は、図1に示す正面側から見たときに、左右対称の台形形状に形成されており、全体として前記シール座面11,16に合致する六角形状に形成されている。すなわち、右側弁体部53の周端面(以下、「右シール面」という。)53a及び左側弁体部56の周端面(以下、「左シール面」という。)56aは、接続部である上部位置及び下部位置において段違いに形成されているが、その段違い部57,57を含めて、全体が厚み方向に段差を有する六角形の環形状となるように、連続して形成されている。
【0026】
また、右側弁体部53のシール面53a及び左側弁体部56のシール面56aには、シール部材13が装着されている。シール部材13は、図4に示すように、長細い環状に形成されており、右側弁体部53の右シール面53aと左側弁体部56の左シール面56aとの連続する段違い部57に対応する略U字状部分13a,13aから上下両側に押し開いた姿勢で、右側弁体部53の右シール面53a及び左側弁体部56の左シール面56aに装着されている。
【0027】
そして、弁体5がゲート開口部9a,9bを閉じる方向(図中、X1方向)にスライド空間2a内を移動したときに、右側弁体部53の右シール面53a及び左側弁体部56の左シール面56aに装着されているシール部材13が、弁箱2の右シール座面11及び左シール座面16にそれぞれ圧接され、これにより、弁箱2のゲート開口部9a,9b間の流通が遮断されるようになっている。
【0028】
なお、弁体5には、本体部51の上面と下面にそれぞれ自由回転可能に複数のローラ58,58,・・・が取り付けられており、このローラ58,58,・・・が、弁箱2のスライド空間2aの上下の内壁面(レール面)2a2,2a2にそれぞれ接触した状態で転動することで、弁体5がスライド空間2a内をスムーズに移動するようになっている。
【0029】
上記したように、弁箱2の内壁面に形成された右シール座面11と左シール座面16は、図1に示す正面側から見たとき、左右対称の台形形状に形成されており、全体として六角形状に形成されている。すなわち、右シール座面11の下側傾斜面11aと、左シール座面16の下側傾斜面16aとで、V字形状の傾斜面が形成されている。このうち、左側傾斜面16aは下向きの傾斜面(シール座面)となっており、右側傾斜面11aが上向きの傾斜面(シール座面)となっている。すなわち、粉塵の落下が遮断性能に影響するのは、傾斜面が上向きの右側傾斜面11aだけであり、上方を向いているシール座面の幅方向の領域が、上記従来のゲートバルブに比べて約半分となっている。
【0030】
そこで、本実施形態では、このV字状の右側傾斜面11aと左側傾斜面16aの交差部分である段違い部15に沿って、その下部に、粉塵等を収納するための収納凹部31を形成している。この収納凹部31は、図5に示すように、ポケット形状となっており、スライド空間2aの下内壁面(レール面)2a2に、粉塵等を収納するための開口部31aが形成されている。このように、段違い部15に沿ってその下部に、収納凹部31を形成することで、右側傾斜面11a上に落下し、この上を滑り落ちてきた粉塵等が、段違い部15に沿って自然落下し、開口部31aから収納凹部31内に落下することになる。
【0031】
なお、収納凹部31の底面部分に開閉可能な蓋体31bを設け、この蓋体31bを開放することで、収納凹部31内に溜まった粉塵等を、弁箱2の底面側から取り出せるようにしておけばよい。具体的には、蓋体31bの構造として、ねじ構造とすることができる。すなわち、蓋体31bを円柱形状に形成し、その外周部に雄ねじを形成する一方、収納凹部31の底面に円筒形状の穴31cを形成し、この穴31cの内周面に雌ねじを形成すればよい。ただし、蓋体31bの開閉構造は、このようなねじ構造に限るものではない。
【0032】
また、本実施形態では、右側弁体部53の右シール面53aと弁箱2の右シール座面11との間に、シール部材13の圧潰量を規制するスペーサ部材21をさらに取り付けてもよい。この場合、スペーサ部材13を右シール座面11に取り付けることも可能であるが、熱の影響による弁体5と弁箱2の温度の上がり方が微妙に異なるため、数ミリ単位で両者がずれるので、両者の位置関係をしっかり出すためには、動く方である弁体5にスペーサ部材21を取り付けておくのがよい。すなわち、シール部材13の潰し量を、従来のようにエアシリンダの圧力で制御するのではなく、このスペーサ部材21の厚み幅で規制するようにしてもよい。これにより、製造過程で発生する熱の影響によって弁体5が伸縮や変形等し、その結果、シール部材13のシール座面11,16への当たりに偏りが生じたとしても、シール部材13はスペーサ部材21の厚み以上には押し潰されないので、シール部材13の先に当たる部分が必要以上に押し潰されてしまうといった事態は発生しない。そのため、仮にこの偏り部分に剪断応力が発生したとしても、その大きさはエアシリンダの圧力によって制御する従来の場合に比べてはるかに小さく、シール部材13を転動させるほどの力とはならないので、シール部材13が破損することもなく、ゲートバルブとしての遮断性能も低下することがない。
【0033】
また、スペーサ部材21は、右側弁体部53の右シール面53aのうち、ゲート開口部を閉じる方向の先端側の垂直面53a1に取り付けるのがよい。熱の影響による弁体5の伸縮等は、エアシリンダのシリンダロッド6が取り付けられている基端側(図1では左側)より先端側(図1では右側)により顕著に現れる。すなわち、エアシリンダのシリンダロッド6が連結される弁体の基端側を基準とした場合、この基端側から最も離れた先端側がより前方に延びた状態となる。従って、最も変化のある先端側、すなわち右側弁体部53の右シール面53aの垂直面53a1にスペーサ部材21を取り付けることで、弁体の横方向のぶれや熱による変形等に十分に対応することが可能となる。すなわち、言い換えると、スペーサ部材21は、右側弁体部53の右シール面53a及び左側弁体部56の左シール面56aのうち、弁体5の温度が最も上昇する部分に取り付けられている。温度が最も上昇する部分が最も熱変形が生じる部分であるので、この部分にスペーサ部材13を取り付けることにより、温度変化に十分対応することが可能となる。
【0034】
さらに、スペーサ部材21は、右シール座面11に面接触するように設けるのがよい。すなわち、スペーサ部材21は直方体形状に形成されており、この直方体形状のスペーサ部材21を、所定の間隔を存して複数個(本実施例では3個)取り付けている。スペーサ部材21と右シール座面11との接触が点接触であった場合、その部分のスペーサ部材21が削れてパーティクルが発生する可能性がある。従って、面接触にしておくことで、このようなパーティクルの発生を防止(低減)することが可能となる。
【0035】
なお、スペーサ部材21は、熱膨張の少ない材質の材料で形成されている。スペーサ部材21はシール部材の潰し量を規制するものであるから、当然のことながら熱変形の少ないものがよい。ここで、スペーサ部材の材料としては、樹脂材料と金属材料とがある。樹脂材料としては、テフロン(登録商標)、ダイフロン、ピークなどの使用が可能である。また、金属材料としては、ステンレス、アルミ合金、チタン合金などの使用が可能である。
【0036】
また、スペーサ部材21は、右側弁体部53の右シール面53aのうち、ゲート開口部9a,9bを閉じる方向の先端側の垂直面53a1のみに取り付けているが、右シール面53aの他の面(傾斜している面)や、左側弁体部56の左シール面56aの適所にも、必要に応じて取り付けてもよい。
【0037】
このように、本実施形態によれば、スペーサ部材21を設けることによって、弁体5の右シール面53aが弁箱2の右シール座面11に直接当たって削り屑が発生することを抑制できるとともに、削り屑による粉塵が発生した場合でも、この粉塵は、右側傾斜面11a上を滑り落ちて段違い部15に沿って自然落下し、開口部31aから収納凹部31内に落下することになる。すなわち、粉塵の発生抑制と、発生した粉塵の回収といった2段構成とすることで、粉塵に対してより強い構造のゲートバルブを実現することができるものである。
【0038】
上記構成のゲートバルブ1は、真空装置の第1処理室と第2処理室との間を開閉するゲートバルブとして用いることできる。これにより、真空装置自体の耐久性や、第1処理室と第2処理室との遮断性能を向上させることができる。
【0039】
図5は、本発明のゲートバルブを搭載した真空装置の概略構成図であり、ここではプラズマCVD装置を例示している。すなわち、このプラズマCVD装置80は、加熱室81、成膜室82、及び取り出し室83を有し、加熱室81と成膜室82との間、及び成膜室82と取り出し室83との間にそれぞれ本発明のゲートバルブ1A,1Bが配置されている。基板は各室内を矢印Y1方向に移動する。
【0040】
まず最初に、ガラスなどからなる透明基板上に、透明導電膜が形成される。次に、この基板をプラズマCVD装置80に搬入する。プラズマCVD装置80に搬入した基板は、加熱室81で成膜温度に一定時間加熱保持される。その後、加熱室81と成膜室82との間との間のゲートバルブ1Aを開き、基板を加熱室81から成膜室82に搬入した後、ゲートバルブ1Aを閉める。そして後、説膜室82にてプラズマCVD法によりpin成膜を行う。成膜後、成膜室82と取り出し室83との間のゲートバルブ1Bを開き、基板を取り出し室83に搬出した後、ゲートバルブ1Bを閉める。この後、取り出し室83にて膜剥離などの異常の有無の確認を行う。
【0041】
このような構成のプラズマCVD装置80によれば、ゲートバルブ1A,1Bは、製造過程において発生する熱によって加熱されることになる。そのため、この熱の影響によって弁体5が伸縮や変形等し、その結果、シール部材13のシール座面11,16への当たりに偏りが生じる可能性がある。すなわち、ゲートバルブ自体の経年変化に加え、熱による変形等によっても当たりに偏りが生じる可能性があるが、本発明のゲートバルブ1A,1Bによれば、シール部材13はスペーサ部材21の厚み以上には押し潰されないので、シール部材13の先に当たる部分が必要以上に押し潰されてしまうといった事態は発生しない。従って、シール部材13が破損することもなく、ゲートバルブ1A,1Bの遮断性能も低下しないので、耐久性に優れたプラズマCVD装置80を実現することができるものである。なお、請求項に記載の第1処理室は、ゲートバルブ1Aから見た場合には加熱室81となり、第2処理室は成膜室82となる。また、ゲートバルブ1Bから見た場合には、第1処理室が成膜室82となり、第2処理室が取り出し室83となる。
【0042】
なお、本実施形態では、真空装置としてプラズマCVD装置を例示しているが、ドライエッチング装置やスパッタリング装置などのガス導入を伴うプラズマ処理装置に本発明のゲートバルブを適用した場合においても同様の効果を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係るゲートバルブの分解斜視図である。
【図2】本発明に係るゲートバルブの縦断面図である。
【図3】本発明に係るゲートバルブの弁箱の一部を切り欠いた状態の分解斜視図である。
【図4】本発明に係るゲートバルブのシール部材の形状を示す斜視図である。
【図5】図3のV−V線に沿う断面図である。
【図6】本発明のゲートバルブを搭載した真空装置の一構成例を示す概略図である。
【図7】従来のゲートバルブの構造の一例を示す分解斜視図である。
【図8】従来のゲートバルブの縦断面図である。
【図9】従来のゲートバルブのシール部材の形状を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
1 ゲートバルブ
2 弁箱
2a スライド空間
2b 開口部
3 サイド板
4 蓋部材
5 弁体
6 エアシリンダの駆動軸(シリンダロッド)
8a,8b 側壁
9a,9b ゲート開口部
11右シール座面
11a 右側傾斜面
13 シール部材
13a,13b 略U字状部分
15 段違い部
16 左シール座面
16a 左側傾斜面
21 スペーサ部材
31 収納凹部
31a 開口部
31b 蓋体
51 本体部
52 右側端面
53 右側弁体部
55 切欠き部
56 左側弁体部
53a 右シール面(周端面)
56a 左シール面(周端面)
57 段違い部
80 プラズマCVD装置
81 加熱室
82 成膜室
83 取り出し室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物を通過させるためのゲート開口部が設けられた弁箱と、前記ゲート開口部を一方向からスライド往復移動させることによって開閉する板状の弁体とからなり、前記弁体をスライド移動させて前記弁箱のゲート開口部を閉じたとき、前記弁体に形成されたシール面が前記弁箱のゲート開口部を囲むようにして設けられたシール座面に当接することによって前記ゲート開口部が遮断されるゲートバルブにおいて、
前記弁体が前記弁箱に対して横方向にスライド往復移動可能に設けられ、前記弁体のシール面及び前記弁箱のシール座面の下部が傾斜面に形成されていることを特徴とするゲートバルブ。
【請求項2】
請求項1に記載のゲートバルブにおいて、
前記シール座面の傾斜面の下端部に粉塵を収納するための収納凹部が設けられていることを特徴とするゲートバルブ。
【請求項3】
請求項2に記載のゲートバルブにおいて、
前記シール座面の下部がV字状の傾斜面に形成されており、前記収納凹部が前記傾斜面の交差部分に設けられていることを特徴とするゲートバルブ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のゲートバルブが、被搬送物の第1処理室と第2処理室との間を開閉するゲートバルブとして設けられていることを特徴とする真空装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−264421(P2009−264421A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111501(P2008−111501)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】