説明

ゲート駆動回路及び表示装置駆動回路

【課題】VDD電圧を上昇させることなく、高速スイッチングを可能にする。
【解決手段】出力素子N31のゲートに接続し、N31を駆動するINV10は、制御信号aを所定の時間遅延させ、反転出力するINV20の生成する制御信号bにより駆動されるPMOS21を介して低電圧電源端子VDDに接続する。制御信号aがオンされると、INV10はN31をオンし、N31のゲートには、VDDが印加される。N31のゲート電位が十分にVDDと同等の電位となる頃、すなわち、INV20の遅延時間経過後、INV20は制御信号bをオンからオフに変化させる。INV20が出力する制御信号bはオフになり、PMOS21はオフされ、VDDとINV10との接続は切り離される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゲート駆動回路及び表示装置駆動回路に関し、特に出力素子を駆動するゲート駆動回路及びこのゲート駆動回路を表示装置の駆動に適用した表示装置駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、急速に普及してきた薄型テレビとして液晶テレビやプラズマテレビがあり、いずれも大画面化、高精細化の方向で開発が進んでいる。特にプラズマテレビは、画面サイズが従来主流であった40インチ程度から、現在では50インチ以上の製品が主流となりつつある。プラズマテレビで画像を表示するための部品のひとつに、スキャンドライバIC(Integrated Circuit)がある。このスキャンドライバICの出力は多出力で、画面表示用のプラズマディスプレイパネル(以下、パネルと略記する)から伸びる複数の電極ごとに直接接続されている。大画面化に伴いスキャンドライバICから見た負荷は、増大する方向にある。
【0003】
このようなパネルを駆動するスキャンドライバICにおける出力段として、プラズマ放電電流が出力トランジスタに流れてドレイン端子の電位が上昇したときに、ゲート端子の電位を上昇させることで、所望のドライブ能力が得られるように構成した表示装置駆動回路がある(たとえば、特許文献1参照)。また、放電時の出力波形の立ち上がりを緩やかにするように構成した表示装置駆動回路もある(たとえば、特許文献2参照)。
【0004】
図7は、従来のスキャンドライバICの出力部の一例を示した回路図である。図は、特許文献1に示されるスキャンドライバICに基づく回路例である。
図7の回路は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などで構成される出力素子121,122(以下、N121,N122と表記する)と、インバータ・バッファ回路INV(以下、単にINVと表記する)130を有している。N121は、エミッタ端子が基準電源端子GND(以下、単にGNDと表記する)に接続(接地)され、コレクタ端子がN122のエミッタ端子と接続されている。N122のコレクタ端子は、高圧電源VDH(以下、単にVDHと表記する)に接続される。また、N121のコレクタ端子(N122のエミッタ端子)は、パネルの電極に接続されており、その負荷分を図では容量150で表す。さらに、N121のゲート端子とGND間には、ツェナーダイオード141が接続されている。スキャンドライバICの場合、ツェナーダイオード141のツェナー電圧は、VDDより高く、かつ、N121のゲート破壊電圧より低い値が設定される。
【0005】
INV130は、pチャンネル型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)(以下、単にPMOSと表記する)131、nチャンネル型MOSFET(以下、単にNMOSと表記する)132とから成るCMOS(Complementary MOS)インバータである。入力端子は信号入力端子161に接続され、出力端子はN121のゲート端子に接続される。また、NMOS132のソース端子はGNDに接続され、PMOS131のソース端子は、ダイオード142を介して低圧電源VDDに接続されている。なお、特許文献2でも、同様な動作を別の回路構成で実現している。
【0006】
このような回路によれば、プラズマ放電電流を流す際、N121のゲート電圧は、N121のコレクタ−ゲート間の帰還容量の影響でVDDよりも高い電圧に上昇する。したがってN121は、比較的小型の素子であっても駆動能力が上昇し、瞬間的に大きなプラズマ放電電流を流すことが可能である。
【特許文献1】特開2001−134230号公報
【特許文献2】特開2005−176298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の表示装置駆動回路の出力部では、スキャンドライバICから見た負荷が増大すると、パネル電極の電位を切り替えるスイッチング時間が延びるという問題点があった。
【0008】
図7に示したスキャンドライバICのN121は、パネルの電極の電位をHiレベル(VDH)からLoレベル(GND)に切り替える働きと、パネル電極をLoレベルに維持した状態でプラズマガス放電電流を流す働きとを担う。
【0009】
ここで、プラズマ放電時のN121のコレクタ電位、コレクタ電流及びゲート電位の時間変化を説明する。図8は、従来のスキャンドライバ回路の出力素子の動作を示した図である。
【0010】
図7に示した回路では、N121がオンすると、コレクタ電位は、Hiレベル(VDH)からLoレベル(GND)に変化する。このとき、パネル容量150に蓄えられた電荷が放電され、コレクタにはパネル容量150の放電電流が流れる。パネル容量150の放電電流が流れ、コレクタ電位がGNDに下がると、プラズマ放電が開始され、プラズマ放電電流が流れる。このN121のコレクタ電位がVDHからGNDに切り替わる時間をスイッチング時間tfと呼ぶ。プラズマ放電電流を流す際、N121のゲート電圧は、N121のコレクタ−ゲート間の帰還容量の影響でVDDよりも高い電圧に上昇する。一方、パネル電極をHiレベルからLoレベルに切り替える際のゲート電位は、ダイオード142の順方向電圧Vfの分だけVDDより低い電圧になる。たとえば、特許文献2に示す表示装置駆動回路の場合、VDD電圧より約2V(Volt)低くなることが記されている。
【0011】
前述したような近年の大画面化によってパネル容量150が増大すると、パネル電極の電位をHiレベルからLoレベルに切り替える時のスイッチング時間tfが従来に比べ長くなる現象が起こる。具体的には、パネルサイズが42インチの場合、パネル容量150が200pF(picoFarad)で、VDD=5V、VDH=120Vのときのスイッチング時間が約120ns(nanosecond)であるのに対し、50インチの場合は、パネル容量150が240pFとなり、電位差が120Vのときにスイッチング時間が約150nsと遅くなる。
【0012】
このようにスイッチング時間が延びると、その分パネル駆動回数を減らす必要があり、高精細化が難しくなる。
これに対応する方法として、従来型のスキャンドライバICにおいては、N121のサイズを大きくするか、VDD電圧を上昇させるか、のいずれかの手法を行って、N121の駆動能力を上げることが考えられる。しかし、いずれもスキャンドライバICが大きくなる為に、製品のコストアップ要因となる。また、VDD電圧の変更は、パネルセットから供給されるもので、変更はパネルセット全体の設計変更となり、困難である。
【0013】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、VDD電圧を上昇させることなく、高速スイッチングが可能なゲート駆動回路及びこのゲート駆動回路を組み込んだ表示装置駆動回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明では上記課題を解決するために、出力素子を駆動するゲート駆動回路において、ロジック用の低電圧を供給する低電圧電源端子と、第1の制御信号に基づいて出力素子を駆動するバッファ回路との間に電気的に接続され、ゲートに印加される出力素子のゲート容量に充電電流を供給する期間を通知する第2の制御信号に基づいて低電圧電源端子とバッファ回路との接続を制御する第1のpチャンネル型MOS電界効果トランジスタと、バッファ回路を構成し、出力素子のゲートと、第1のpチャンネル型MOS電界効果トランジスタとの間に電気的に接続され、ゲートに印加される第1の制御信号により駆動される第2のpチャンネル型MOS電界効果トランジスタと、バッファ回路を構成し、出力素子のゲートと、基準電源端子との間に電気的に接続され、ゲートに印加される第1の制御信号により駆動される第1のnチャンネル型MOS電界効果トランジスタと、を有することを特徴とするゲート駆動回路、が提供される。
【0015】
このようなゲート駆動回路によれば、第2のpチャンネル型MOS電界効果トランジスタと、第1のnチャンネル型MOS電界効果トランジスタによって構成されるバッファ回路は、第1の制御信号に基づいて出力素子を駆動する。出力素子がオンするときには、低電圧電源端子の出力電位に応じた電圧が出力素子のゲートに印加される。そして、出力素子のゲート容量に充電電流が供給され、オンしたことが第2の制御信号によって通知されると、第1のpチャンネル型MOS電界効果トランジスタは、バッファ回路と低電圧電源端子との接続をオフする。
【0016】
また、上記課題を解決するために、ディスプレイパネルを駆動する表示装置駆動回路において、ディスプレイパネルに接続される出力端子と高電圧を供給する高電圧電源端子との間に電気的に接続された第1のトランジスタと、出力端子と基準電源端子との間に接続された第2のトランジスタと、ロジック用の低電圧を供給する低電圧電源端子と、第1の制御信号に基づいて第2のトランジスタを駆動するバッファ回路との間に電気的に接続され、第2のトランジスタのゲート容量に充電電流を供給する期間を通知する第2の制御信号に基づいて低電圧電源端子とバッファ回路との接続を制御する第1のpチャンネル型MOS電界効果トランジスタと、バッファ回路を構成し、第2のトランジスタのゲートと、第1のpチャンネル型MOS電界効果トランジスタとの間に電気的に接続され、ゲートに印加される第1の制御信号により駆動される第2のpチャンネル型MOS電界効果トランジスタと、バッファ回路を構成し、第2のトランジスタのゲートと、基準電源端子との間に電気的に接続され、ゲートに印加される第1の制御信号により駆動される第1のnチャンネル型MOS電界効果トランジスタと、を有することを特徴とする表示装置駆動回路、が提供される。
【0017】
このような表示装置駆動回路によれば、ディスプレイパネルを駆動する第1のトランジスタと、第2のトランジスタのうち、基準電源端子に接続する第2のトランジスタは、第2のpチャンネル型MOS電界効果トランジスタと、第1のnチャンネル型MOS電界効果トランジスタを有するバッファ回路によって駆動される。このバッファ回路は、第1の制御信号に基づいて、第2のトランジスタがオンするときには、低電圧電源端子の出力電位に応じた電圧を第2のトランジスタのゲートに印加する。そして、第1のpチャンネル型MOS電界効果トランジスタは、第2のトランジスタのゲート容量に充電電流が供給され、オンしたことが検出されると、バッファ回路と低電圧電源端子との接続をオフする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のゲート駆動回路では、出力素子のゲートを駆動するバッファ回路と低電圧電源端子との間に、バッファ回路と低電圧電源端子との接続を制御するスイッチとして、第1のpチャンネル型MOS電界効果トランジスタを設ける。出力素子がオフの状態では、スイッチはオンで、該バッファ回路は低電圧電源端子に接続されている。出力素子をオンにする信号が加わると、該出力素子のゲート電位は低電圧電源電圧にまで上昇可能であるので、十分な負荷駆動能力を発揮することができる。出力素子のゲート電位が十分に低電圧電源と同等の電位となった時刻の後に、該スイッチによりバッファ回路を低電圧電源端子から切り離す。これにより、その後のプラズマ放電の際には、出力素子の帰還容量の働きで、自身のゲート電位を先に達していた低電圧電源以上に上昇させることができる。この結果、VDD電圧を上昇させることなく、高速スイッチングが可能となる。また、このようなゲート駆動回路を適用すれば、安価で、かつ、負荷変動に柔軟に対応可能な表示装置駆動回路の提供が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本願発明の第1の実施の形態のゲート駆動回路が組み込まれたスキャンドライバ回路の出力段の回路図である。
【0020】
本発明の実施の形態のゲート駆動回路は、表示装置駆動回路であるスキャンドライバ回路の出力段に組み込まれる。スキャンドライバ回路の出力素子31(以下、N31とする)のゲート端子に接続されてN31を駆動するインバータ・バッファ回路10(以下、INV10と表記する)と、ロジック用のVDDとINV10との間に接続される第1のpチャンネル型MOS電界効果トランジスタ21(以下、PMOS21と表記する)と、インバータ回路20(以下、INV20と表記する)と、を有する。
【0021】
パネルを駆動する出力素子は、GNDにエミッタが接続されるN31と、コレクタが高圧電源VDHに接続される出力素子32(以下、N32と表記する)とで構成される。N31のコレクタとN32のエミッタは接続され、N31のコレクタ(N32のエミッタ)は、パネルの電極に接続されている。パネルの負荷分はパネル容量33で表されている。さらに、N31のゲートとGND間には、ツェナーダイオード34が接続されている。なお、N32側にもゲート駆動回路が接続するが、本願発明とは直接関係がないので、説明及び図示は省略する。
【0022】
INV10は、第2のpチャンネル型MOS電界効果トランジスタ11(以下、PMOS11と表記する)と、第1のnチャンネル型MOS電界効果トランジスタ12(以下、NMOS12と表記する)とを有し、入力端子側が第1の制御信号である制御信号aの入力端子41、出力側がN31のゲート端子に接続される。PMOS11は、ドレインがNMOS12、ソースがPMOS21、そしてゲートが入力端子41に接続される。NMOS12は、ドレインがPMOS11、ソースがGND、そしてゲートが入力端子41に接続される。また、PMOS11のドレインと、NMOS12のドレインとは、N31のゲートに接続される。
【0023】
INV20は、入力端子41とPMOS21のゲート端子との間に接続され、入力端子41を介して入力される制御信号aの値を反転させてPMOS21に出力する。このとき出力される反転信号は、制御信号aを必要な時間遅延させて出力される。その遅延時間は、パネル電極のスイッチング時間tfより僅かに長い時間に設定されることが望ましい。たとえば、スイッチング時間tfが120nsであれば、130nsが設定される。以下の説明では、INV20の出力信号である第2の制御信号を制御信号bと呼ぶ。なお、このようにしてINV10の制御信号aから生成される制御信号bは、正確には、N31の状態を表している信号ではないが、スイッチング時間tfに基づいて設定される信号であるので、N31のゲート電位がVDDに到達した状態を表す信号と見なすことができる。
【0024】
PMOS21は、ドレイン端子がVDD、ソース端子がPMOS11、そしてゲート端子がINV20に接続される。PMOS21は、VDDとINV10との接続をINV20の出力信号に応じて制御するスイッチとして機能する。たとえば、INV20の出力がオンであれば、VDDとINV10とを接続し、INV20の出力がオフであれば、VDDとINV10との接続を切り離す。また、PMOS21の閾値電圧Vth_p21は、ツェナーダイオード34のツェナー電圧Vz_D34と、VDD電位の差程度で、VDDより十分に小さいことが望ましい。すなわち、Vth_p21とVDDとの関係は、{ }が絶対値を表すとして、
{VDD} > {Vth+p21}≒ {(Vz_D34−VDD)}
と表すことができる。
【0025】
この構成を図7に示した従来の構成と比較してみると、INVとVDDとの間に設けられていたダイオード(図7のダイオード142)が、PMOS21に置き換わっている。また、PMOS21のゲートには、INV20が接続され、INV20の入力は入力端子41に接続されている。
【0026】
このような構成のゲート駆動回路の動作について説明する。
制御信号aがオフされているときには、INV10はN31をオフする。N31のゲート電位はGND電位になり、コレクタ電位はVDH電位になる。また、制御信号aがオフであるので、INV20が出力する制御信号bはオンになり、PMOS21はオンされ、VDDとINV10とを接続する。
【0027】
この状態から制御信号aがオンすると、INV10はN31をオンし、N31のゲートには、VDDが印加される。N31のゲート電位が十分にVDDと同等の電位となる頃、すなわち、INV20の遅延時間経過後、INV20は制御信号bをオンからオフに変化させる。INV20が出力する制御信号bはオフになり、PMOS21はオフされ、VDDとINV10との接続は切り離される。
【0028】
この信号変化を図を用いて説明する。図2は、第1の実施の形態における信号タイミングを示した図である。aは入力端子41を介してINV10に入力される制御信号a、bはINV20を介して出力される制御信号bを示している。また、N31−Gateは、出力素子であるN31のゲートに印加される制御信号を示している。
【0029】
N31をオンする信号が入力される。具体的には、制御信号aが、HiレベルからLoレベルに立ち下がる。すると、INV10によって、N31のゲート電位は、LoレベルからHiレベルに立ち上がる。N31のゲート電位は、VDDまで上昇することができるが、VDDに到達するまでには、スイッチング時間tfが必要になる。そして、スイッチング時間tfより僅かに長い時間に設定される遅延時間が経過した後、制御信号aを反転させて制御信号bを出力するINV20は、制御信号bをLoレベルからHiレベルに変化させる。
【0030】
次に、スキャンドライバ回路全体の動作を説明する。図3は、第1の実施の形態のスキャンドライバ回路の出力素子の動作を示した図である。
制御信号aによって、N31がオンされると、N31のコレクタ電位は、Hiレベル(VDH)からLoレベル(GND)に変化する。このとき、INV10によってN31のゲートに印加される電圧は、VDD電圧になる。また、パネル容量33に蓄えられた電荷が放電され、コレクタにはパネル容量33の放電電流が流れることは、従来の回路と同様である。スイッチング時間tf経過後、コレクタ電位がGNDに下がると、プラズマ放電が開始され、プラズマ放電電流が流れる。プラズマ放電電流を流す際、N31のゲート電圧は、N31のコレクタ−ゲート間の帰還容量の影響でVDDよりも高い電圧に上昇し、十分な負荷駆動能力を得ることが可能となる。
【0031】
ここで、図8に示した従来の回路の動作との大きな違いは、N31のゲート電位がVDDに達することと、プラズマ放電時のN31のゲート電位がより高くなることである。これは、従来の回路と異なり、ダイオードの順方向電圧の影響を受けないことによる。
【0032】
まず、第1のゲート電位がVDDに達することについては、N31の駆動能力を大きくし、パネル容量が増加しても高速スイッチングを可能にするという利点がある。また、第2のプラズマ放電時のゲート電位がより高くなることについては、プラズマ放電電流を流す際に、N31の電圧効果を低減する(温度上昇を抑制する)ことが可能となるという利点がある。いずれもパネルの大画面化に対しては有利に働く。
【0033】
このように、N31のゲート電位が十分にVDDと同等の電位となった後に、バッファ回路をVDDから切り離すことで、スイッチング時間を抑えることができる。また、その後のプラズマ放電の際には、出力素子の帰還容量の働きで、自身のゲート電位を先に達していた低電圧電源の電位以上に上昇させることができる。この結果、VDD電圧を上昇させることなく、高速スイッチングが可能となる。
【0034】
ここで、INV20の回路例を説明する。図4は、第1の実施の形態の制御信号を反転させるインバータ回路の一例を示した回路図である。a,bは、図1の制御信号a,bと同じである。
【0035】
図4に示したインバータ回路は、PMOS201と、NMOS202と、から構成されるCMOSインバータである。この回路では、NMOS202のチャネル幅は大きくし、信号が遅れないようにする。一方、PMOS201のチャネル幅は小さくし、PMOS201のゲート駆動に時間がかかるようにする。また、PMOS201のチャネル幅を小さくする代わりに、抵抗203を、PMOS201のドレインに接続してもよい。この場合もPMOS201のチャネル幅を小さくしたときと同様の効果が得られる。
【0036】
このように、INV20内部の遅延時間を設ける手法は、内部のPMOS201とNMOS202との電流駆動能力に差をつけたり、あるいは、一方のゲートもしくはドレイン側に抵抗を設けることなどで対応可能である。
【0037】
なお、以上の説明の第1の実施の形態の回路は、一般的なCMOSプロセスと、高耐圧プロセスとを組み合わせた半導体プロセスで製造可能である。また、INV10を効果的にVDDから切り離すために、現在スキャンドライバICに一般的に用いられているSOI(Silicon on Insulator)ウェハーを用いた誘電体分離技術を用いて回路を構成することが望ましい。
【0038】
ここで、ゲート電位の電圧を上げることの効果を具体例を挙げて説明する。図5は、出力素子におけるゲート電位の違いによる電流−電圧特性を示した図である。
図は、出力素子(図1のN31に対応する)のゲート電位(Vg)が、4.3Vと、5.0Vのときの電流―電圧特性を示している。図から明らかなように、わずか0.7Vのゲート電位の違いでも、電流駆動能力が420mA(Vg=4.3V)と、590mA(Vg=5.0V)と、1.4倍も異なる。したがって、従来の回路構成で大画面化に対応するには、N31の活性領域の面積が1.4倍程度必要になる。同素子(N31)の耐圧構造部分の面積を考慮して、従来のN31の面積を100パーセントとして、約33パーセント面積を増やさなければならない。
【0039】
一方、第1の実施の形態の場合は、従来の回路のダイオード(図7のダイオード142)が減少し、INV20とPMOS21とが加わる。本願発明者による実験の結果では、これらの回路を確保するため、同様の指標で、面積の増加は、5パーセントから6パーセントでよいことがわかった。
【0040】
次に、第2の実施の形態のスキャンドライバ回路について説明する。第1の実施の形態では出力素子を制御する制御信号aに基づいてPMOS21の制御信号bを生成していたが、第2の実施の形態では出力素子のゲート電位をモニタし、モニタ結果に基づいて制御信号bを生成する。
【0041】
図6は、第2の実施の形態のゲート駆動回路を組み込んだスキャンドライバ回路の回路図である。図1と同じものには同じ番号を付し、説明は省略する。
第2の実施の形態のゲート駆動回路では、PMOS21に入力される制御信号bは、インバータ回路22(以下、INV22とする)と、インバータ回路23(以下、INV23とする)とによって生成される。
【0042】
INV22は、ヒステリシスを有しており、入力端子がN31のゲート、出力端子がINV23に接続され、N31のゲートの電位をモニタするモニタ回路として機能する。そして、N31のゲート電位が一定レベルに達したことを検知すると、INV23を動作させる。
【0043】
INV23は、INV22から入力された信号を反転出力する。INV23には、通常のインバータの遅延時間程度の数nsの遅延時間が設定されている。
このような構成の回路では、INV22によってN31のゲート電位が一定のレベルに達したことが検知されると、INV23を介して制御信号bとしてPMOS21に入力される。制御信号bが入力されるPMOS21の動作は、第1の実施の形態と同様である。したがって、第2の実施の形態のスキャンドライバ回路の動作は、図3に示した第1の実施の形態のスキャンドライバ回路の動作と同等である。
【0044】
なお、第1の実施の形態では、予め制御信号bの遅延時間をセットしていたが、第2の実施の形態では、遅延時間は負荷の大きさや、スキャンドライバ回路の温度による駆動能力の変化に追従して変化する。これは、N31がオンしてパネル電極の電位がHiレベルからLoレベルに変化している最中に、N31のコレクタ−ゲート間の帰還容量の働きで、ゲート電位が0からVDDに変化することを抑えるためである。言い換えれば、ゲート電位がVDDに達するのは、出力電位の変化が完了した時点である。したがって、INV22によってゲート電位をモニタすることで、同様の働きをさせることが可能となる。
【0045】
このように、第2の実施の形態では、遅延時間が負荷の大きさや駆動能力の変化に追従するため、パネルメーカーやパネルサイズの違い、または、実際のパネル動作時の温度変化などによるスイッチング時間の違いを意識することなく、適用することができる。
【0046】
以上のように、本実施の形態のゲート駆動回路は、僅かなロジック回路の追加でよいので、コストアップを極力推させることが可能である。また、出力電圧の情報を信号切り替えに利用する第2の実施の形態のゲート駆動回路を組み込んだスキャンドライバICは、パネルの特性の違いなどを特に意識することなく選定することができるなど、汎用性がより高くなる。したがって、量産効果によるコストダウンも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本願発明の第1の実施の形態のゲート駆動回路が組み込まれたスキャンドライバ回路の出力段の回路図である。
【図2】第1の実施の形態における信号タイミングを示した図である。
【図3】第1の実施の形態のスキャンドライバ回路の出力素子の動作を示した図である。
【図4】第1の実施の形態の制御信号を反転させるインバータ回路の一例を示した回路図である。
【図5】出力素子におけるゲート電位の違いによる電流−電圧特性を示した図である。
【図6】第2の実施の形態のゲート駆動回路を組み込んだスキャンドライバ回路の回路図である。
【図7】従来のスキャンドライバICの出力部の一例を示した回路図である。
【図8】従来のスキャンドライバ回路の出力素子の動作を示した図である。
【符号の説明】
【0048】
10 インバータ・バッファ回路(INV)
11 第2のpチャンネル型MOS電界効果トランジスタ(PMOS)
12 第1のnチャンネル型MOS電界効果トランジスタ(NMOS)
20 インバータ回路(INV)
21 第1のpチャンネル型MOS電界効果トランジスタ(PMOS)
31,32 出力素子
33 パネル容量
34 ツェナーダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力素子を駆動するゲート駆動回路において、
ロジック用の低電圧を供給する低電圧電源端子と、第1の制御信号に基づいて前記出力素子を駆動するバッファ回路との間に電気的に接続され、ゲートに印加される前記出力素子のゲート容量に充電電流を供給する期間を通知する第2の制御信号に基づいて前記低電圧電源端子と前記バッファ回路との接続を制御する第1のpチャンネル型MOS電界効果トランジスタと、
前記バッファ回路を構成し、前記出力素子のゲートと、前記第1のpチャンネル型MOS電界効果トランジスタとの間に電気的に接続され、ゲートに印加される第1の制御信号により駆動される第2のpチャンネル型MOS電界効果トランジスタと、
前記バッファ回路を構成し、前記出力素子のゲートと、基準電源端子との間に電気的に接続され、ゲートに印加される前記第1の制御信号により駆動される第1のnチャンネル型MOS電界効果トランジスタと、
を有することを特徴とするゲート駆動回路。
【請求項2】
前記出力素子を駆動する前記第1の制御信号を入力して反転信号を生成するとともに、前記第1の制御信号によって少なくとも前記出力素子がオンするときには、予め設定される前記出力素子のゲート電位が前記低電圧電源端子の出力電位に到達するまでの経過時間を遅延させた後、前記反転信号を前記第2の制御信号として出力するインバータ回路を有することを特徴とする請求項1記載のゲート駆動回路。
【請求項3】
前記インバータ回路は、電流駆動能力に差があるpチャンネル型MOS電界効果トランジスタと、nチャンネル型MOS電界効果トランジスタと、により構成されることを特徴とする請求項2記載のゲート駆動回路。
【請求項4】
前記出力素子のゲートと、前記第1のpチャンネル型MOS電界効果トランジスタとの間に接続され、前記出力素子のゲート電位をモニタして、前記出力素子のゲート電位が所定の電位に到達したことが検知されたときは、検知結果を前記第2の制御信号として前記第1のpチャンネル型MOS電界効果トランジスタに出力するモニタ回路を有することを特徴とする請求項1記載のゲート駆動回路。
【請求項5】
前記モニタ回路は、ヒステリシス機能を有するバッファ回路により構成されることを特徴とする請求項4記載のゲート駆動回路。
【請求項6】
前記第1のpチャンネル型MOS電界効果トランジスタの閾値電圧は、前記出力素子のゲートと前記基準電源端子との間に接続されるツェナーダイオードのツェナー電圧と、前記低電圧電源端子の電位との差と同程度の値に設定されることを特徴とする請求項1記載のゲート駆動回路。
【請求項7】
ディスプレイパネルを駆動する表示装置駆動回路において、
前記ディスプレイパネルに接続される出力端子と高電圧を供給する高電圧電源端子との間に電気的に接続された第1のトランジスタと、
前記出力端子と基準電源端子との間に接続された第2のトランジスタと、
ロジック用の低電圧を供給する低電圧電源端子と、第1の制御信号に基づいて前記第2のトランジスタを駆動するバッファ回路との間に電気的に接続され、前記第2のトランジスタのゲート容量に充電電流を供給する期間を通知する第2の制御信号に基づいて前記低電圧電源端子と前記バッファ回路との接続を制御する第1のpチャンネル型MOS電界効果トランジスタと、
前記バッファ回路を構成し、前記第2のトランジスタのゲートと、前記第1のpチャンネル型MOS電界効果トランジスタとの間に電気的に接続され、ゲートに印加される第1の制御信号により駆動される第2のpチャンネル型MOS電界効果トランジスタと、
前記バッファ回路を構成し、前記第2のトランジスタのゲートと、前記基準電源端子との間に電気的に接続され、ゲートに印加される前記第1の制御信号により駆動される第1のnチャンネル型MOS電界効果トランジスタと、
を有することを特徴とする表示装置駆動回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−48065(P2009−48065A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215766(P2007−215766)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(503361248)富士電機デバイステクノロジー株式会社 (1,023)
【Fターム(参考)】