説明

ゲーム装置、データ処理方法、及び記録媒体

【課題】画像処理に必要な分の背景データを確実にその都度、先読みして、スムーズで、安定した、高品質のゲーム画像を提供する。
【解決手段】仮想3次元空間を移動させる車両の状態を背景と共に表示するゲームに必要な背景データを画像処理に先だってCD−ROM(記録媒体)からメインメモリに読み込ませるようにしたゲーム装置である。この装置は、表示の視野方向の限界ラインよりも所定距離だけ遠方位置に設定した読込み開始ライン(参照ライン)が新たなエリアに掛かったときに記録媒体から背景データを先読みする先読み手段を設けた。記録媒体は背景データを予め複数のエリアに分割して記録している媒体であり、先読み手段は、参照ラインがエリアの何れに掛かっているかを判断する手段と、参照ラインに掛かっていると判断されたエリアの背景データをメモリに読み込む手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビデオゲーム装置に関する。特に、アミューズメントセンターや家庭に設置されたゲーム装置でよりリアルな画像表現を行い得るようにしたゲーム装置及びこれに用いられる画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ技術の進歩に伴い、コンピュータグラフィックス技術を用いたビデオゲーム装置が広く利用されるようになってきた。この種のビデオゲーム装置はユーザに広く受け入れられている。そして、多種多様なゲーム装置が数多く案出され、それ等に対応した様々なゲームソフトが供給されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ユーザがビデオゲームをより楽しむことができるようにするために、画像がよりリアルな表現で画面に表示されることが望まれる。例えば、カーレースのような車両競走においては、車両や背景の動きが自然に表現されることが望ましい。
【0004】
この自然な動きを表現するための1つの要素として、広いゲーム空間のデータをCD−ROMなどの記録媒体からゲーム装置内のメモリに読み込んで表示する場合のデータ読込みの制御が挙げられる。
【0005】
同じゲーム空間であっても、RPG(ロールプレイングゲーム)のようにキャラクタがゆっくり移動したり、一瞬で別の場所に移動するようなゲームの場合、一旦、画像処理を止めてデータ読込みを行うことが許されるので、かかるデータの読込み制御は非常に楽である。
【0006】
しかしながら、キャラクタの連続移動がゲーム性に大きな影響を与える、例えばカーレースゲーム等の場合、車両の移動に伴って読込まなければならない背景データが膨大な量に及ぶので、かかるデータの読込み制御は非常に面倒になる。例えば、RPGのように画像処理を一旦止めてデータ読込みを行うと、ゲームが止まってしまって、カーレースゲームとして成立しなくなってしまう。一方、広いゲーム空間の背景データをCD−ROM等から全てメモリに読込んでおくことは、メモリ容量の観点や読み込み時間が膨大にかかる点から、実際問題として不可能である。
【0007】
そこで、従来のカーレースゲームのようにキャラクタが高速で移動する画面を表現するゲームの場合、走行路に沿って背景データをエリア毎に分割しておき、必要な分のエリアの背景データを先読みしながら画像処理していた。
【0008】
しかし、この先読みの手法で対処可能なゲームは、例えば移動オブジェクトとしての車両が予め決まっているコース(走行路)を走るカーレースゲームである。この場合、コース中のある地点を車両が通過すると、次のエリアの背景データを空きメモリ領域に記憶させていくという単純なものであった。近年のカーレースゲーム或いはカーゲームには、遊戯者がゲーム空間内で如何なる方向にも車両を走らせることが可能なことを特徴とするゲームが登場し始めている。このようなゲームの場合、車両の走行する方向は複数に枝分かれした走行路や、元来、走行路ではない草原などを走行することが遊戯者の操作に任されている。つまり、装置にとって、現在の車両速度や車両位置から近い将来走る走行路のブロックを単純に割り出し、背景データを先読みすることは非常に難しくなる。
【0009】
よって、本発明は、遊戯者が車両などのオブジェクトをゲーム空間内で任意の方向に移動可能なゲームにおいて、比較的簡単な手法ながら、画像処理に必要な分の背景データを確実にその都度、先読みして、スムーズで、安定した、高品質のゲーム画像を提供できるようにすることを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、本発明は、仮想3次元空間を移動する移動体を背景と共に表示するゲームに必要な背景データを画像処理に先だって記憶手段からワーク用メモリに読み込ませるようにしたゲーム装置において、前記表示の視野方向の限界ラインよりも所定距離だけ遠方位置に設定した参照ラインを用いて前記記憶手段から前記背景データを先読みする先読み手段を設けたことを特徴とする。
【0011】
本発明の他の形態は、このゲーム装置において、前記記憶手段は前記背景データを予め複数のエリアに分割して記憶しているものであり、前記先読み手段は、前記参照ラインが前記エリアの何れに掛かっているかを判断する判断手段と、この判断手段により前記参照ラインに掛かっていると判断されたエリアの背景データを前記ワーク用メモリに読み込む読込み手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明のさらに他の形態は、このゲーム装置において、前記複数のエリアは前記記憶手段に背景データの内容を背景の種類毎に且つほぼ等面積で分割して夫々記憶されており、且つ、前記ワーク用メモリは、同じ記憶容量に設定した複数のメモリブロックを有する一方で、前記読込み手段は、前記各エリアの背景データをそのデータ量に応じてn個以上(nは正の整数値)の前記メモリブロックに記憶させる手段である。
【0013】
さらに他の形態は、前記読込み手段は、前記ワーク用メモリメモリブロックが空き領域か否かを判断する手段と、この判断により空き領域であると認識されたときに前記エリア毎の背景データをn個以上の前記メモリブロックに順次記憶させる手段とを有する。
【0014】
さらに他の形態は、このゲーム装置において、前記ワーク用メモリの背景データ記憶済みのメモリブロックに相当した前記各エリア内に前記移動体が存在する、あるいは視界の範囲内にエリアが存在するか否かを検出してこれを定期的にカウントするカウント手段を備える一方で、前記読込み手段は、前記メモリブロックに空き領域が無いと判断されたときに、前記カウンタ手段による前記メモリブロックそれぞれに対するカウント値に基づき前記背景データを記憶させる記憶先のメモリブロックを決める決定手段を備える。
【0015】
さらに他の形態は、このゲーム装置において、前記読み込み手段は、記憶させる背景データが複数個のメモリブロックを必要とするときには、前記複数個の連続したメモリブロックを決定する決定手段を備える。
【0016】
さらに他の形態は、前記決定手段は、前記複数個の連続するメモリブロックに対する前記カウント値を比較して最も高い値あるいは低い値を呈する前記複数個の連続したメモリブロックを決める手段である。
【0017】
さらに本発明の他の形態は、既述のゲーム装置において、前記決定手段が、前記複数個の連続するメモリブロックに対する前記カウント値の平均値を演算してこの演算値が最も高い値あるいは低い値を呈する前記複数個の連続したメモリブロックを決める手段である。さらに他の形態は、このゲーム装置において、前記移動体が前記仮想3次元空間を移動する車両である。
【0018】
前記目的を達成する他の発明は、仮想3次元空間を移動する移動体を背景と共に表示するゲームに必要な背景データを画像処理に先だって記憶手段からワーク用メモリに読み込ませるようにしたゲーム装置のデータ処理方法において、前記表示の視野方向の限界ラインよりも所定距離だけ遠方位置に設定した参照ラインを用いて前記記録媒体から前記背景データを先読みするようにしたことを特徴とする。
【0019】
本発明はさらに、前記背景データと各手段を実行するプログラムが記録された情報記録媒体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上述べたように、本発明によれば、遊戯者が車両などのオブジェクトをゲーム空間内で任意の方向に移動可能なゲームにおいて、比較的簡単な手法ながら、画像処理に必要な分の背景データを確実にその都度、先読みして、スムーズで、安定した、高品質のゲーム画像を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係わる実施形態のゲーム装置の全体斜視図である。
【図2】このゲーム装置の電気的な概略構成を示すブロック図である。
【図3】ゲーム空間に作成される地形(背景)の一例をエリア分けした図である。
【図4】地形マップをエリア分けした一例を示す模式図である。
【図5】ワーク用メモリとしてのメインメモリに設定されるメモリブロックの一部を模式的に説明する図である。
【図6】先読みに係る読込み開始ライン(参照ライン)とエリアとの位置的な係わり具体を説明する図である。
【図7】CPUにより実行される先読み制御処理の概要を示すフローチャートである。
【図8】先読みに伴うメモリブロックへのデータ記憶の一例を説明する図である。
【図9】先読みに伴うメモリブロックへのデータ記憶の別の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態に係るゲーム装置を図1〜9に基づき説明する。
【0023】
この実施形態のゲーム装置は、仮想3次元空間(ゲーム空間)内をオブジェクトとしての車両を移動させるカーレースゲームであって、とくに、車両の走行路が沢山、枝分かれしていて、目的地に達するのに幾通りもの道順が存在し、どの走行路を選択するか特定が困難であったり、草原や村など、走行路が明確に規定されていない場所を任意の方向に走行可能なカーゲームを提供する。
【0024】
以下、このゲーム装置を説明する。図1に、この実施形態に係るゲーム装置の概観図を、図2にその電気的なハードウェアブロック図を示す。
【0025】
本ゲーム装置は、図1に示すように、ゲーム装置本体1、コントローラ2およびサブユニット3を相互に接続して構成される。
【0026】
ゲーム装置本体1はゲーム進行を司る制御装置本体である。ゲーム装置本体1は、複数のコントローラ2がコネクタCを介して接続可能になっている。またゲーム装置本体1はCD−ROM用ドライブ11を備え、CD−ROM等の記録媒体(記憶手段)を着脱自在に装着できるようになっている。
【0027】
コントローラ2は、遊戯者が操作する操作部としての構成を備えており、操作ボタン群21、十字キー22、アナログ方向キー23、Rトリガースイッチ24などを備え、コネクタPを備えた接続コード4でゲーム装置本体1と接続可能になっている。これらの操作部は、移動オブジェクトとしての車両を3次元仮想空間内で移動させるのに必要なハンドル、アクセル、ブレーキ、シフトレバーなどを構成している。遊戯者はゲーム中にモニタ画面を見ながら、これらの操作部を適宜に操作する。これにより、その操作情報がゲーム装置本体1の後述するCPUに伝えられ、CPUの制御の元に、車両をゲーム空間内で任意の方向に走行させることができる。
【0028】
また、コントローラ2は、バックアップメモリ3を着脱自在に備えている。
【0029】
ゲーム装置本体1はコンピュータ装置類似の構成を備え、図2に示すように、CPUブロック30、ビデオブロック31、サウンドブロック32および通信装置33などを備えている。
【0030】
CPUブロック30は、バスアビータ300、CPU301、メインメモリ302、ROM303およびCD−ROMドライブ11を備えている。バスアビータ300は、バスを介して相互に接続されるデバイスにバス占有時間を割り振ることにより、データの送受信を制御可能に構成されている。CPU301は、メインメモリ302、ROM303、CD−ROMドライブ11、ビデオブロック31およびサウンドブロック32、コントローラ2を介してバックアップメモリ3にアクセス可能に構成されている。
【0031】
CPU301は、ゲームを遂行するのに必要な各種の処理及び制御を行い、画像データをグラフィックメモリ311に転送し、また音声データをサウンドメモリ321に転送可能になっている。ROM303は、イニシャルプログラムローダの格納領域である。ROM303は、記録媒体を構成する要素であり、CPU301の処理に必要なプログラムが予め記録されている。なお、この記録媒体としては他に、CD−ROMなどを用いてもよい。
【0032】
CD−ROM用ドライブ11は、外部から供給されるデータの記録媒体としてCD−ROMを用いている。このCD−ROMには、主ゲームプログラム、必要な各種のデータ、及び背景データ(テクスチャデータあるいはポリゴンデータ)が格納されており、これらのデータは必要に応じてメインメモリ302に読み込まれる。なお、このCD−ROMの代わりに、他の各種記録媒体を使用してもよい。また通信装置33を経由して、プログラムや背景データをメインメモリに転送するように構成してもよい。このように設定すれば遠隔地のサーバの固定ディスクなどからデータの転送が可能である。
【0033】
ビデオブロック31は、VDP(Video Display Processor)310、グラフィックメモリ311およびビデオエンコーダ312を備えている。これらの構成により、ビデオブロック31は、ポリゴン画像データ(オブジェクトとての車両)の生成、背景画像の描画(テクスチャデータのマッピング)、背景画像にポリゴン画像データの合成、クリッピング処理等を行う。ビデオエンコーダ312は、VDP310が生成した画像データをNTSC方式やPAL方式等の所定のテレビジョン信号に変換し外部に接続されるメインモニタ35(テレビ受像機のブラウン管等)に出力可能に構成されている。
【0034】
サウンドブロック32は、サウンドプロセッサ320、サウンドメモリ321およびD/Aコンバータ322を備えている。これらの構成によりサウンドブロック32は、波形データに基づく音声合成を行って音響信号を出力可能に構成されている。D/Aコンバータ322は、サウンドプロセッサ320により生成された音声データをアナログ信号に変換し、外部に接続されるスピーカ34(テレビ受像機のスピーカまたは音響装置のスピーカ)に出力可能に構成されている。
【0035】
通信装置33は、例えばモデムやターミナルアダプタであり、本ゲーム装置本体1に接続可能に構成され、本ゲーム装置本体1と外部回線とを接続するアダプターとして機能可能になっている。通信装置33は、公衆回線網に接続されるインターネットサーバ等のゲーム供給用サーバから送信されたデータを受信し、CPUブロック30のバスに供給可能になっている。公衆回線網としては、加入者回線、専用線、有線無線の別を問わない。
【0036】
続いて、本実施形態の動作を、背景データのCD−ROMからメインメモリ302への読込みを中心に説明する。この読込みは、CPU301の制御の元に、本発明に係る先読みの手法で実行される。
【0037】
最初に、この先読みを行うために設定される、背景データとしての地形マップとメインメモリ302の所定領域に割り当てられるそれぞれが同じ記憶容量に設定されたメモリブロックとの関係から説明する。
【0038】
いま、本ゲーム装置のカーレースゲームで使用可能な仮想3次元空間に描写された地形マップを図3に例示する。同図はワールド座標系のxz面を示すもので、このマップ上の太い黒線はメインの走行路Rを表している。この走行路Rは、通常の一定ルートを周回するカーレースゲームのものに比べて、非常に分岐路が多いのが特徴である。また、走行路Rは都会、村、草原といった非常に多くの種類及び数のフィールド内を回っており、しかも、走行路Rから外れて、それらのフィールドを任意の方向に走行できるようになっている。
【0039】
いま、走行路を含む地形マップを、そのフィールドの種類毎に且つほぼ同じ広さとなるように区分けして複数のエリアを想定する。これにより、図3中に細線で区分けされたエリアAR1,AR2,AR3,…が作成される。これら複数のエリアの内、一例として、16個の相互に隣接するエリアAR1,AR2,…,AR16を地形マップ(背景データ)として図4のように表す。例えば、エリアAR1は草原のフィールドを、エリアAR2は村のフィールドなどと決まる。そして、フィールドの種類に応じて配置されるオブジェクト等が異なることから、データ量(背景データ量)も異なる点を考慮し、メインメモリに書き込むときに必要な記憶領域のブロック数を、エリアが草原であるときはメモリ内の1ブロックを、エリアが村又は町であるときはメモリ内の2ブロックを、そして、エリアが都市であるときはメモリ内の3ブロックとする。
【0040】
図5に、このデータ書込みの一例を示す。同図の上から、草原エリアの地形データは1ブロックを使って、村エリアの地形データは2ブロックを連続して使って、さらに都市エリアの地形データは3ブロックを連続して使って格納される。各ブロックMBは同一の記憶容量を有する。このブロックMBには、それぞれ、CPU301で処理されるソフトウエアカウンタCTのカウント値領域が設定され、そのカウント値が書き込まれる。このカウンタCTは、メインメモリ内の各ブロックMBに相当する各エリアARに車両が存在しているか否か或いはカメラの視界に背景エリアが存在するか否かを定期的に判断し、車両が存在していないあるいは視界内に存在していないそのエリアの地形データを記憶しているブロックMBのカウンタCTのカウント値を、かかる判断毎にインクリメントする。このため、車両の走行が少ないエリアARほど、それに対応するブロックMBのカウンタCTのカウント値は高くなる。したがって、このカウント値を確認することで、その対応するエリアARを車両がどの程度頻繁に走行するかが分かる。なお、1つのエリアARに対応するブロックMBが複数個であっても、そのブロック相互間でカウント値は同一である。
【0041】
このように区分けした地形データに対し、先読みするためのエリアを探すことになるが、この探索の手法を図6に例示する。いま、車両VLがエリアAR6の村エリアを走行しているとする。この車両VLには、その進行方向に沿った所定視野角θの視野が設定される。この視野の前方の所定距離には、表示時のクリッピング位置となる視野限界ラインLN1が設定される。さらに、この視野において、視野限界ラインLN1の前方の所定距離には本発明の先読み機能の一部を成す読込み開始ラインLN2が設定される。
【0042】
この読込み開始ラインLN2は、地形データを先読み開始するエリアを決めるために先行する検出体である。このラインLN2が、各エリアをその外接円で表したときに、視野内のラインLN2がどの外接円(エリア)に掛かるか(又は入っているか)を特定し、その特定した外接円を持つエリアを先読み対象エリアとして決める手法を採っている。図6の場合は、読込み開始ラインLN2は、都市エリアAR10とその横の村エリアAR11の外接円に共に掛かるので、現時点での先読みエリアはその両者AR10及びAR11であると判断できる。
【0043】
この先読みの手法に基づいて、CPU301によって実行される地形データ(背景データ)読込みの処理例を図7に基づき説明する。この処理は一定時間毎の例えばタイマ割込み方式で実行される。
【0044】
CPU301は、まず、遊戯者の操作情報を読み込み、現在の車両位置及び進行方向をワールド座標系のxz面上で特定する。
【0045】
次いで、CPU301は、現在の車両位置(視点)からその進行方向に沿った視野を見たとき、何れかの新たな(未だ背景データを読み込んでいない)エリアARの中に読込み開始範囲、すなわち読込み開始ラインLN2が入ったか否かを、前述したエリアの外接円を用いる方法で判断する(ステップS3)。この判断がNOとなるときは、読込み開始ラインLN2が未だ新たなエリアARには入っていないので、そのまま処理をメインルーチンに戻す。
【0046】
これに対し、ステップS3でYESの判断となるとき、すなわち読込み開始ラインLN2が新しい1個以上のエリアARに入ったときは、メインメモリ302において未使用であって且つ必要数だけ連続したメモリブロックMBが在るか否かを判断する(ステップS4)。ただし、背景データを記憶させるのに必要なメモリブロック数=1の場合は、「必要数だけ連続したメモリブロック」は1個のメモリブロックを意味する。このステップS4の判断がYESであるときは、新たなエリアARからその背景データ(地形データ)を読み出し、その空いているメモリブロックに書き込む。
【0047】
一方、CPU301は、ステップS4でNOの判断が出たとき、すなわち必要数の連続した未使用のメモリブロックが無いときは、使用済みのメモリブロックMB、…、MBの中で、例えば都市ならば、1つの都市エリアの背景データを連続して記憶している必要数のメモリブロックがあるか否かを判断する(ステップS6)。この判断がYESのときは、メモリブロックMBに対応させているカウント値同士を比較し、その値が最も大きい値を呈するメモリブロックに、新たなエリアARの背景データを記憶させる(ステップS7)。カウント値が大きいということは、そのメモリブロックの背景データの使用頻度がこれまでは少なく、これからも少ないであろうと推測できる。このため、そのようなメモリブロックの背景データを優先的に新規の背景データに更新する。
【0048】
これに対して、ステップS6の判断がNOとなるときは、複数種のエリアに跨って背景データが連続して記憶されているメモリブロックを検索し、これらを結合して必要なブロック数を1組以上、確保する(ステップS8)。次にかかる連続するメモリブロックの組夫々について、各組のメモリブロックのカウント値の平均値を演算する(ステップS9)。次いで、CPU301は演算したカウント値同士を比較して、最もカウント値が大きいメモリブロックの組を判断し、その組のメモリブロック夫々に新たなエリアARの背景データを記憶させる(ステップS10)。カウント値が最も大きいメモリブロックの組を探す理由は上述と同じである。
【0049】
図8及び図9に、上述の先読み処理の例を模式的に示す。これらの図において、一重の丸印は、過去に読み込まれた背景データ(地形データ)が記憶されているブロックを示し、二重の丸印は、現在車両が存在するエリアの背景データが記憶されている、又は、そのエリアから視界の範囲内にあるエリアの背景データが記憶されているブロックを示す。また、*印は、ブロックが1つのエリアの背景データを連続して記憶していることを示す(−印で結んでいる)。さらに、+記号は未使用のブロックであることを示す。
【0050】
図8の例は、メインメモリ302に未使用(空き)のメモリブロックMBがあるので、これを使って、新たなエリアARの背景データが記憶されていく様子を示している(図7のステップS3〜S5参照)。なお、車両は既に新たなエリアに移動しているものとする。
【0051】
これに対し、図9の例は、過去に記憶した背景データを有するメモリブロックMBが新たな背景データで更新される様子を示す。すなわち、新たなエリアが検出され、その背景データで過去の連続した背景データが更新された後、その新たなエリア内に車両が既に移動している様子を示す。とくに、この図9の例は、新たなエリアの背景データの確保先として、連続した4個のメモリブロックが必要になった状態を説明している。このため、図7のステップS3,S4,S6,S8〜S10の処理を介してカウント値の平均値が演算され、メモリブロックNO.6〜9が選択された。このとき、隣のメモリブロックNO.10は空きブロックとして扱われる。このように先に読み込まれた背景データ(例えばブロックNO.1〜5の背景データ)よりも後に読み込まれた背景データ(例えばブロックNO.6〜10の背景データ)の方が先に消去されるのは、車両のコースが直線的でなく、別のコースから過去に読み込まれたエリアに直接、進入するという、いわゆる蛇行走行やジグザグ走行で進んでいることが多いからである。
【0052】
このように背景データ(地形データ)が先読みされるので、CPU301はは、これと操作情報を用いてカーレースゲームの画像処理を制御・指令することができる。かかる先読み処理では、先読み開始ラインを視界限界ラインよりも所定距離遠方に設定して、車両が進むエリアを確実に検知しているので、先読みを力任せに読み込むのとは異なり、確実で安定したエリア検知、すなわち先読みを行うことができる。したがって、装置内のメインメモリの記憶容量を格別アップさせる必要も無いし、勿論、画像処理を止めて背景データ読み込みを行う必要もない。したがって、この背景データを用いた画像処理によりモニタ35に表示される画面では、画像欠落等も無く、高品質で安定した車両走行の画面を表示することができる。
【0053】
なお、上述した実施形態において先読み検知のための先読み開始ラインは直線状であるとして説明したが、視点に対して円弧状であってもよい。この先読み開始ラインが新たなエリアに入ったか否かの判断は、エリアにその外接円を設定しなくても、矩形のエリアそのものと先読み開始ラインの位置とを比較してもよい。
【0054】
さらに、メモリブロックの背景データの使用頻度を表すカウンタのカウント値の扱いは、車両が対応するエリアに存在しないことを一定時間毎に検知した後、前述とは反対に、カウント値を一定値からデクリメントするようにしてもよい。また、カウント値の領域は、ブロックMB内に設定せず、メインメモリの所定の領域に各ブロックMBと関連づけて設定するようにしても良い。
【符号の説明】
【0055】
1 ゲーム装置本体
2 コントローラ
11 CD−ROMドライバ
30 CPUブロック
31 ビデオブロック
32 サウンドブロック
35 モニタ
301 CPU(カウンタ手段も兼ねる)
302 メインメモリ(ワーク用メモリを兼ねる)
312 ビデオエンコーダ
303 ROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲーム実行手段と画像処理手段とワークメモリと操作部とを備え、着脱自在に装着された記憶手段からゲームの実行に必要なプログラムとデータを読み出して実行しゲームの画面を表示手段に表示するように構成されたゲーム装置であって、
前記記憶手段にはゲームプログラムと地形データを含むゲーム装置においてゲームの実行に必要なプログラムとデータが格納されており、
前記ゲームプログラムの実行により任意の方向に移動進路の選択が可能なフィールドが仮想三次元空間に設定されるように構成されており、
前記画像処理手段は、遊技者の操作に応答して操作部から入力される操作データに基づき前記フィールドを移動する移動体の進行方向前方に展開される地形を、視点を前記移動体の位置に、前記視点からみた視野を前記移動体の進行方向に沿ってその前方に、それぞれ設定し、前記視野の視野角内において前記視点から所定距離の位置に設定された限界ラインを越えた範囲の表示を省略して、前記表示手段に表示するように構成されており、
前記記憶手段には、前記フィールドを複数のエリアに区分けし、前記複数のエリア毎に対応する前記地形データが予め格納されており、
前記ゲーム装置は、遊技者の操作に応答して前記ゲームプログラムの実行により、
(a)前記移動体の前記フィールド内における現在位置および進行方向を特定し、
(b)前記視野角内において前記視点から見て前記限界ラインよりもさらに所定距離だけ離間して遠方にある位置に参照ラインを設定し、
(c)前記移動体の現在位置に対する視点および進行方向から見た前記視野角内であって前記参照ラインが含まれる全ての前記エリアを検出し、
(d)前記(c)で検出された全ての前記エリアに対応する前記地形データのうち新たに検出されたエリアの地形データを前記記憶手段から読み出し前記ワークメモリに読み込む
処理を一定時間毎に実行し、
前記移動体の移動により現在位置及び/または進行方向が変更され前記(c)で検出された前記エリアが前記視野角内に入ったとき前記(d)で前記ワークメモリ内に先読みされていた前記エリアに対応する前記地形データを用いて変更後の現在位置における限界ライン内の地形を表示するように構成されてなることを特徴とするゲーム装置。
【請求項2】
請求項1記載のゲーム装置において、
前記複数のエリアは前記記憶手段に地形データの内容を地形の種類毎に分割して夫々記憶されており、
前記ワークメモリは、同じ記憶容量の複数のメモリブロックに分割設定されており、
前記記憶手段から読み出された前記各エリアの地形データをそのデータ量に応じてn個以上(nは正の整数値)の前記メモリブロックに記憶させることを特徴とするゲーム装置。
【請求項3】
請求項2記載のゲーム装置において、
前記(d)では、
前記ワーク用メモリメモリブロックが空き領域か否かを判断し、
この判断により空き領域であると認識されたときに前記エリア毎の地形データをn個以上の前記メモリブロックに順次記憶させる
処理を実行することを特徴とするゲーム装置。
【請求項4】
請求項3記載のゲーム装置において、
前記ゲーム装置はさらにカウント手段を備え、
前記(d)では、
地形データ記憶済みのメモリブロックに対応する前記エリア内に前記移動体が存在するか否か、あるいは当該エリアが視界の範囲内に存在するか否かを定期的に照合し、存在していない頻度をカウントし当該頻度を表すカウント値として記憶し、
前記メモリブロックに空き領域が無いと判断されたときに、前記頻度がより高いことを表す前記カウント値を有する前記メモリブロックを前記地形データを記憶させる記憶先のメモリブロックとして決定する処理を実行することを特徴とするゲーム装置。
【請求項5】
請求項3記載のゲーム装置において、
前記(d)では、
記憶させる地形データが複数個のメモリブロックを必要とするときには、前記複数個の連続したメモリブロックを決定するように構成されることを特徴とするゲーム装置。
【請求項6】
請求項4記載のゲーム装置において、
複数個の連続するメモリブロックに対する前記カウント値を比較して最も高い値あるいは低い値を呈する連続した複数個のメモリブロックを決めることを特徴とするゲーム装置。
【請求項7】
請求項4記載のゲーム装置において、
前記複数個の連続するメモリブロックに対する前記カウント値の平均値を演算してこの演算値が最も高い値あるいは低い値を呈する連続した複数個のメモリブロックを決めることを特徴とするゲーム装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項記載のゲーム装置において、
前記移動体は遊技者の操作に応答して前記仮想三次元空間を任意の方向に移動可能に設定された車両であるゲーム装置。
【請求項9】
ゲーム実行手段と画像処理手段とワークメモリと操作部とを備え、着脱自在に装着された記憶手段からゲームの実行に必要なプログラムとデータを読み出して実行しゲームの画面を表示手段に表示するように構成されたコンピュータ装置において実行されるデータ処理方法であって、
前記記憶手段にはゲームプログラムと地形データを含むゲームの実行に必要なプログラムとデータが格納されており、
前記ゲームプログラムとデータは前記ゲームプログラムの実行により任意の方向に移動進路の選択が可能なフィールドが仮想三次元空間に設定されるように構成されており、
前記記憶手段には、前記フィールドを複数のエリアに区分けし、前記複数のエリア毎に対応する前記地形データが予め格納されており、
前記画像処理手段は、遊技者の操作に応答して操作部から入力される操作データに基づき前記フィールドを移動する移動体の進行方向前方に展開される地形を、視点を前記移動体の位置に、前記視点からみた視野を前記移動体の進行方向に沿ってその前方に、それぞれ設定し、前記視野の視野角内において前記視点から所定距離の位置に設定された限界ラインを越えた範囲の表示を省略して、前記表示手段に表示するように構成されており、
前記コンピュータ装置上において遊技者の操作に応じて前記ゲームプログラムの実行により、
(a)前記移動体の前記フィールド内における現在位置と進行方向を特定する段階と、
(b)前記視野角内において前記視点から見て前記限界ラインよりもさらに所定距離だけ
離間して遠方にある位置に参照ラインを設定する段階と、
(c)前記移動体の現在位置および進行方向に対する視点から見た前記視野角内であって
前記参照ラインが含まれる全ての前記エリアを検出する段階と、
(d)前記段階(c)で検出された全ての前記エリアに対応する前記地形データのうち新たに検出されたエリアの地形データを前記記憶手段から読み出し前記ワークメモリに読み込む段階と、
を含む処理を一定時間毎に逐次実行し、
前記移動体の移動により現在位置及び/または進行方向が変更され前記(c)で検出された前記エリアが前記視野角内に入ったとき前記(d)で前記ワークメモリ内に先読みされていた前記エリアに対応する前記地形データを用いて変更後の現在位置および進行方向における限界ライン内の地形を表示することを特徴とするデータ処理方法。
【請求項10】
地形を表示するためのデータと、移動体を表示するためのデータと、ゲームプログラムとがコンピュータ装置に読み取り可能に記憶された記録媒体であって、
前記コンピュータ装置は、ゲーム実行手段とワークメモリと操作部とを備え、着脱自在に装着された前記記録媒体からゲームの実行に必要なゲームプログラムとデータを読み出して実行しゲームの画面を表示手段に表示するように構成されてなり、
前記ゲームプログラムとデータは、前記コンピュータ装置に読み込まれ実行されたとき任意の方向に移動進路の選択が可能なフィールドを仮想三次元空間に設定するように構成されており、
前記地形データは、前記フィールドを複数のエリアに区分けし、前記複数のエリア毎に対応して予め前記記録媒体に格納されており、
前記ゲームプログラムとデータは、前記コンピュータ装置に読み込まれ実行されたとき、遊技者の操作に応答して操作部から入力される操作データに基づき、前記フィールドを移動する移動体の進行方向前方に展開される地形を、視点を前記移動体の位置に、前記視点からみた視野を前記移動体の進行方向に沿ってその前方に、それぞれ設定し、前記視野の視野角内において前記視点から所定距離の位置に設定された限界ラインを越えた範囲の表示を省略して前記表示手段に表示し、
(a)前記移動体の前記フィールド内における現在位置と進行方向を特定する段階と、
(b)前記視野角内において前記視点から見て前記限界ラインよりもさらに所定距離だけ離間して遠方にある位置に参照ラインを設定する段階と、
(c)前記移動体の現在位置および進行方向に対する視点から見た前記視野角内であって前記参照ラインが含まれる全ての前記エリアを検出する段階と、
(d)前記段階(c)で検出された全ての前記エリアに対応する前記地形データのうち新たに検出されたエリアの地形データを前記記録媒体から読み出し前記ワークメモリに読み込む段階と、
を含む処理を一定時間毎に逐次実行し、
前記移動体の移動により現在位置及び/または進行方向が変更され前記(c)で検出された前記エリアが前記視野角内に入ったとき前記(d)で前記ワークメモリ内に先読みされていた前記エリアに対応する前記地形データを用いて変更後の現在位置および進行方向における限界ライン内の地形を表示する各段階が前記コンピュータ装置によって実行されるように構成されてなる記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−165878(P2009−165878A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111997(P2009−111997)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【分割の表示】特願平11−262807の分割
【原出願日】平成11年9月16日(1999.9.16)
【出願人】(000132471)株式会社セガ (811)
【Fターム(参考)】