説明

ゲーム装置及びゲームプログラム

【課題】ユーザが操作可能な姿勢センサを用いて、ディスプレイに表示されている2次元画像を、ユーザの操作でその視点を変化させた形で表現することが出来る、ゲーム装置及びゲームプログラムを提供する。
【解決手段】表示ゲーム画像を表示するディスプレイ3、本体及び、水平面に対する傾きを検出することの出来る姿勢センサ7を有し、水平面に対する傾きα、β、δに応じて、表示ゲーム画像を変化させることの出来るゲーム装置1において、姿勢センサの水平面に対する傾きが所定値以上となったことを判定し、所定の信号を出力する手段12、所定の信号が入力された場合に、複数の情景レイヤの相対位置を、レイヤの設置平面上で所定時間の経過と共に変化させつつ移動制御する手段11,15、及び、情景レイヤの移動に合わせて、移動しつつある情景レイヤから生成される表示ゲーム画像をディスプレイ3に表示する手段10から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のレイヤを重ねて2次元画像を表示するゲーム装置に係わり、特に、姿勢センサなど姿勢を検知することの出来るセンサを用いて姿勢を検出し、該検出された姿勢に応じてそれらのレイヤを移動制御して、ユーザ視点からの画像表現が可能となるようにしたゲーム装置及びゲームプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、3次元仮想空間に配置されたオブジェクトをレンダリングすることで2次元画像を生成表示するゲーム装置では、ゲームをプレイするユーザの3次元仮想空間内での視点を変えることは、オブジェクトをレンダリングする仮想カメラの位置をコントローラ等の入力手段を介して変化させることで容易に行うことが出来る。
【0003】
しかし、複数のレイヤを重ねて1枚の2次元ゲーム画像を生成するゲーム装置の場合、各レイヤの画像は固定的なものなので、画像の立体感、即ち遠近感を表現すること自体、困難を伴う。従来、複数のレイヤを相対的に移動させることで、2次元画像に立体感を与える装置としては、例えば、特許文献1に示すものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−208767
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示す装置では、2次元画像を表現する際に、当該2次元画像を背景、中景、近景といった距離別に区分された複数のレイヤで構成し、それら画像をユーザの視点、即ち、仮想視点に対して遠近方向に相対的に移動させることで立体感を生成している。
【0006】
しかし、この場合、ディスプレイに表示される2次元画像に対するユーザの視点は固定的なものであり、ユーザの入力手段の操作とは無関係である。従って、例えば、ユーザが中景に表示された人物の背後の背景部分に配置された映像を確認するために、コントローラを操作して、当該人物の背後をのぞき見る、即ちディスプレイに表示されている2次元画像におけるユーザの視点を変化させるなどの操作はできなかった。仮に、こうしたことが、複数のレイヤを重ねる形で1枚の画像を生成するように構成されたゲーム装置で可能となると、ゲーム内の謎解きやアイテムの捜索など、各種の変化に富んだシナリオ展開が可能となるばかりか、ユーザ自身がゲームに参加している、またはゲーム世界を自ら操作しているといった没入感に浸ることが可能となり、今までにない表現が可能となるゲーム装置及びゲームプログラムの提供が可能となる。
【0007】
本発明は、ユーザが操作可能な姿勢センサを用いて、ディスプレイに表示されている2次元画像を、ユーザの操作でその視点を変化させた形で表現することが出来る、ゲーム装置及びゲームプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点は、仮想視点(VP)からの距離の大小に応じてそれぞれ描かれた2次元画像からなる、複数の情景レイヤ(DVL,MVL、CVL)を重ね合わせる形で生成される表示ゲーム画像(DGI)を表示することの出来るディスプレイ(3)、該ディスプレイが設けられた本体(2)及び、水平面に対する傾きを検出することの出来る姿勢センサ(7)を有し、該姿勢センサ(7)により検出される水平面に対する傾き(α、β、δ)に応じて、前記ディスプレイに表示される、表示ゲーム画像(DGI)を変化させることの出来る、ゲーム装置(1)において、
前記姿勢センサの水平面に対する傾きが所定値以上となったことを判定し、所定の信号を出力する傾斜演算手段(12)、
前記所定の信号が入力された場合に、前記複数の情景レイヤ(DVL,MVL、CVL)の相対位置を、該情景レイヤの設置平面上で所定時間の経過と共に変化させつつ移動制御するレイヤ制御手段(11、15)、及び、
前記レイヤ制御部による前記情景レイヤの移動に合わせて、該移動しつつある情景レイヤから生成される前記表示ゲーム画像を前記ディスプレイ(3)に表示するゲーム画像表示手段(10)、
から構成されることを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の観点は、前記姿勢センサからの出力に基づいて、前記本体のユーザによる保持姿勢を演算判定する本体保持姿勢演算手段、及び、
前記ディスプレイが前記ユーザに対して横長となるように保持されていると判定された場合、前記表示ゲーム画像を横長の表示ゲーム画像として前記ディスプレイに表示し、前記ディスプレイが前記ユーザに対して縦長となるように保持されていると判定された場合、前記表示ゲーム画像を縦長の表示ゲーム画像として前記ディスプレイに表示するように制御する、表示画像切り替え手段(10)を有し、
前記レイヤ制御手段は、前記複数の情景レイヤの相対位置を前記表示ゲーム画像の上下及び左右方向に対応する方向にそれぞれ移動させることが出来、
前記レイヤ制御手段は、更に、前記横長の表示ゲーム画像が前記ディスプレイに表示されている場合には、前記複数の情景レイヤの、前記表示ゲーム画像の左右方向に対応する方向の最大移動量を、前記表示ゲーム画像の上下方向に対応する方向の最大移動量よりも大きく設定し、前記縦長の表示ゲーム画像が前記ディスプレイに表示されている場合には、前記複数の情景レイヤの、前記表示ゲーム画像の上下方向に対応する方向の最大移動量を、前記表示ゲーム画像の左右方向に対応する方向の最大移動量よりも大きく設定する、
ことを特徴とする。
【0010】
本発明の第3の観点は、前記情景レイヤは、仮想視点からの距離の大小に応じてそれぞれ描かれた少なくとも3枚の情景レイヤ(DVL,MVL、CVL)からなり、
前記レイヤ制御手段(11、15)は、それら情景レイヤの内、1枚の情景レイヤ(DVL又はMVL又はCVL)を固定し、それ以外の情景レイヤを、当該固定された情景レイヤに対してその相対位置を移動させるように制御することを特徴とする。
【0011】
本発明の第4の観点は、前記レイヤ制御手段は、固定された情景レイヤ(例えばDVL)以外の情景レイヤ(例えばMVL、CVL)を移動させる際に、前記固定された情景レイヤ以外の情景レイヤを同時に移動開始させ、また移動中はそれらの情景レイヤをそれぞれ所定の速度で停止させることなく移動させ、また、同時に当該移動を完了するように移動制御することを特徴として構成される。
【0012】
本発明の第5の観点は、前記ゲーム装置は、携帯型のゲーム装置であり、前記姿勢センサ(7)は、前記本体(2)内に設けられており、該姿勢センサは該本体の水平面に対する傾きを検出することのが出来ることを特徴として構成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、姿勢センサ(7)を操作することで、表示ゲーム画像(DGI)を構成する情景レイヤ(DVL,MVL、CVL)の相対位置が時間の経過と共に変化して、それに伴ってディスプレイ(3)表示される表示ゲーム画像(DGI)も変化することとなる。これにより、ユーザによる姿勢センサ(7)の操作で、あたかも視点が変化したような感覚をユーザに与えることが出来る。
【0014】
また、表示ゲーム画像(DGI)を、ユーザの本体(2)の保持姿勢に応じて横長及び縦長に切り替え表示する場合、それぞれの表示ゲーム画像(DGI)に合わせて、横長の表示ゲーム画像の場合は、情景レイヤの最大移動量が、表示ゲーム画像の左右方向のほうが、上下方向よりも大きくなり、縦長の表示ゲーム画像の場合には、情景レイヤの最大移動量が、表示ゲーム画像の上下方向のほうが、左右方向よりも大きくなるように制御すると、横長、縦長に表示された各表示ゲーム画像の表示幅を生かした、視点の変化、即ち覗き込み効果などを演出することが出来る。
【0015】
また、情景レイヤの内、1枚の情景レイヤ(DVL又はMVL又はCVL)を固定し、それ以外の情景レイヤを、当該固定された情景レイヤに対してその相対位置を移動させるように制御すると、ユーザの視点を様々な形で変化させるような表現が可能となる。
【0016】
更に、固定された情景レイヤ以外の情景レイヤを同時に移動開始させ、また移動中はそれらの情景レイヤをそれぞれ所定の速度で停止させることなく移動させ、また、同時に当該移動を完了するように移動制御することで、覗き込みになどに際したユーザの視野移動時の情景の移動表現を自然な形で行うことが出来る。
【0017】
なお、括弧内の番号等は、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明が適用される携帯型ゲーム装置の制御ブロック図。
【図2】図2(a)は、本発明が適用されるゲーム機の一例を示す正面図であり、図2(b)は、図2(a)の底面図、図2(c)は、図2(a)の側面図である。
【図3】図3は、近景レイヤの一例を示す図。
【図4】図4は、中景レイヤの一例を示す図。
【図5】図5は、遠景レイヤの一例を示す図。
【図6】図6は、複数のレイヤを用いたゲーム画像の生成方法を示す模式図。
【図7】図7は、生成されたゲーム画像の一例を示す図。
【図8】図8は、生成されたゲーム画像の別の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づき、本発明の実施例を説明する。
【0020】
図1はコンピュータを構成するゲーム機としての携帯型ゲーム装置を示している。携帯型ゲーム装置1は、図2に示すように、ユーザにより携帯自在な大きさの本体2を有しており、本体2には、ディスプレイ3が配置されている。ディスプレイ3の表示面3aには、該表示面3aに図中紙面の厚さ方向に積層される形で、公知のタッチパネル式の入力部5が、ユーザがディスプレイ3に表示されたボタンなどのグラフィックインターフェース(図示せず)を指先などで触ることで、所定のコマンドを入力することが可能なように設けられている。図1に示す携帯型ゲーム装置1の場合、後述する本発明に係わる視点の変化指令以外の、殆どの入力はディスプレイ3の表示面3a、従って、入力部5を指でタッチすることで行なわれる構成となっている。
【0021】
本体2の内部には、図1に示すように、ゲーム装置1の制御系が格納されており、該制御系は主制御部5を有している。主制御部5には、バス線6を介して、前述した入力部5、姿勢センサ7,ゲームプログラムメモリ9、前述したディスプレイ3に接続された画像表示部10、レイヤ制御部11,傾斜演算部12,レイヤ生成部13,ゲーム画像生成部15が接続している。なお、これらの構成要素は、全て本体2に装備されており、プレーヤが本体2を携帯することで、携帯型ゲーム装置1を携帯することとなる。なお、図2に示すブロック図は、本発明に関係する部分のみを例示的に示したものであり、実際の携帯型ゲーム装置1の全ての構成を示すものではない。
【0022】
また、図1に示す携帯型ゲーム装置1は、実際にはコンピュータが、ゲームプログラムメモリ9等のメモリに格納されたゲームプログラムやその他の公知の制御プログラムを読み出して、実行することで、図示しないCPUやメモリが、マルチタスクにより時分割的に動作し、図1に示す各ブロックに示された機能を実行してゆくこととなる。しかし、携帯型ゲーム装置1を、各ブロックに対応したハードウエアで構成することも可能であり、また各ブロックを各ブロックに分散的に設けられたCPU又はMPUにより制御するように構成することも可能である。
【0023】
携帯型ゲーム装置1は以上のような構成を有するので、ユーザがゲームを行なう場合には、図1に示すタッチパネル式入力部5を操作して、ゲームの開始を指令する。これを受けて主制御部5は、ゲームプログラムメモリ9からゲームプログラムGPRを読み出して、該ゲームプログラムGPRに基づいて種々のゲーム画像を生成してディスプレイ3に表示し、それに対応する形でユーザに入力部5を介して適宜な制御コマンドを入力させる形でゲームを実行してゆく。
【0024】
主制御部5はゲームプログラムGPRに基づいて、ゲーム画像生成部15にディスプレイ3に表示すべきゲーム画像GIを、図2に示すように生成させるが、当該ゲーム画像GIは、レイヤ生成部13により生成される2次元画像である複数のレイヤを重ね合わせた形で生成されている。
【0025】
即ち、ゲーム画像生成部15は、ゲームプログラムGPRに基づいて、モニタ3に表示すべきゲーム画像GIを生成する際に、レイヤ生成部13に対してゲーム画像に使用するレイヤを生成するように指令する。レイヤ生成部13は、これを受けて、ゲームプログラムメモリ9からゲームプログラムGPRに格納されたゲーム画像を構成するレイヤデータを読み出し、当該読み出されたレイヤデータに基づいてゲーム画像GIの元となる複数のレイヤを生成する。
【0026】
ゲーム画像GIは、仮想視点、従って、ゲームをプレイするユーザの視点からの距離の大小に応じた情景がそれぞれ描かれた2次元画像である、複数の情景レイヤから構成されている。即ち、ゲーム画像GIを構成する情景レイヤは、仮想視点からの距離が近距離に設定された近景部分が描かれた、図3に示す近景レイヤCVL、仮想視点からの距離が、近景よりも遠い部分である中距離に設定された中景部分が描かれた、図4に示す中景レイヤMVL及び、仮想視点からの距離が、中景よりも遠い部分である遠距離に設定された遠景部分が描かれた、図5に示す遠景レイヤDVLの3枚のレイヤから構成されている。個々のゲーム画像GIを特定するゲーム画像データには、当該ゲーム画像GIを構成する複数のレイヤに関するレイヤデータLYDがそれぞれ格納されているので、ゲーム画像生成部15によりゲーム画像GIを構成するレイヤの生成を指示されたレイヤ生成部13は、当該ゲーム画像GIのゲーム画像データから該ゲーム画像GIを構成する複数の情景レイヤ、即ち近景、中景及び遠景レイヤCVL、MVL、DVLを特定するレイヤデータLYDを、ゲームプログラムメモリ9内のゲームプログラムGPRから直ちに読み出して、各レイヤCVL、MVL、DVLを生成することが出来る。
【0027】
こうして、レイヤ生成部13は、ゲームプログラムGPRから読み出したレイヤデータLYDから直ちに、3枚の近景、中景及び遠景レイヤCVL、MVL、DVLを生成し、ゲーム画像生成部15に出力する。なお、本発明の実施例では、ゲーム画像GIが近景、中景及び遠景レイヤCVL、MVL、DVLの3枚のレイヤから構成された場合について述べたが、ゲーム画像GIを構成するレイヤの枚数は、3枚に限らず、それぞれ距離別に構成された、例えば、近景、中近景、中景、遠景などからなる、4枚以上のレイヤから構成しても良い。なお、各レイヤCVL、MVL、DVLの大きさは、任意であり、互いに等しい大きさである必要はない。
【0028】
こうして、ゲーム画像GIを構成する、距離別に生成された複数のレイヤが入力されたところで、ゲーム画像生成部15は、図6に示すように、それら入力された複数のレイヤを、メモリ空間内のX−Y座標平面上に互いに少なくとも一部が重なる形で、図中手前、即ちディスプレイ3で表示された際のユーザの視点VPが位置すべき側から近景、中景及び遠景レイヤCVL、MVL、DVLの順に配置する。その際の各レイヤCVL、MVL、DVLの、図6における上下、左右方向の相対位置決め情報は、各ゲーム画像GIを生成するためのゲーム画像データの属性データとして指示されており、ゲーム画像生成部15はそれらの位置決め情報に基づいて各レイヤCVL、MVL、DVLを配置するので、ゲーム画像GIの生成は容易に行うことが出来る。
【0029】
こうして、ゲーム画像生成部15により、複数のレイヤCVL、MVL、DVLが重ね合わされてゲーム画像GIが生成されると、当該生成されたゲーム画像GIは、画像表示部10に出力される。画像表示部10は、ゲーム画像データの属性データで指示された、入力されたゲーム画像GI、即ち、重ね合わされた複数のレイヤCVL、MVL、DVL上の所定位置(即ち、メモリ空間の所定位置)に表示フレームFLを設定し、該表示フレームFLに囲まれた領域をディスプレイ3に表示すべき部分として決定し、当該部分に関する表示データを生成してディスプレイ3に表示する。
【0030】
これにより、ディスプレイ3には、図2及び図7に示すように、複数のレイヤCVL、MVL、DVLが重ね合わされたゲーム画像GIの、フレームFLで切り取られた部分が表示ゲーム画像DGIとして表示される。この表示ゲーム画像DGIは、既に述べたように、ゲームプログラムGPRにより複数のレイヤCVL、MVL、DVLが、ゲーム画像データの属性データで規定されたデフォルトの相対位置でゲーム画像生成部15により重ね合わされた状態で生成されたものである。従って、ゲームプログラムGPRのシナリオ進行に応じて、ゲームプログラムGPRにより当該画像を表示ゲーム画像DGIとしてディスプレイ3に表示するように主制御部5が指示された際には、主制御部5の指示によりゲーム画像生成部15と画像表示部10により、当該表示ゲーム画像DGIがデフォルトの表示ゲーム画像DGIとしてディスプレイ3に表示される。
【0031】
デフォルトの表示ゲーム画像DGIがディスプレイ3に表示されると、ゲームプログラムGPRは主制御部5を介して傾斜演算部12に対して、ゲーム装置1の本体2の、水平面に対する揺動状態を検出するように指令する。本体2の水平面に対する揺動状態とは、例えば、図2(c)に示すように、本体2のディスプレイ3の表示面3aに立てた垂線VLが水平方向に向いた状態、即ち本体2を“立てた”状態では、本体2の矢印A,B方向への揺動状態であり(角度α)、図2(b)に示すように、本体2のディスプレイ3の表示面3aに立てた垂線VLが垂直方向に向いた状態、即ち本体2を“寝せた”状態では、本体2の矢印C,D方向への揺動状態である(角度β)。通常、本体2は、“寝せた”状態と“立てた”状態の中間の状態を取るので、本体2の水平面に対する揺動状態は、矢印A,B及び矢印C,D方向の成分、即ち角度α及びβが合成されたベクトル値として表すことが出来る。
【0032】
傾斜演算部12は、主制御部5からの本体2の揺動状態の検出指令を受けて、姿勢センサ7の出力から、本体2の揺動状態を演算する。姿勢センサ7は、3次元加速度センサ、3次元傾斜センサ、地磁気センサなど、本体2の3次元方向の姿勢をリアルタイムで検出し出力することが出来るセンサであり、傾斜演算部12は、姿勢センサ7の出力から、ゲーム装置1の本体2の、水平面に対する揺動状態を、リアルタイムに検出演算することが出来る。
【0033】
本体2の水平面に対する揺動状態、従って角度α及びβが合成された揺動角度が所定値以上に達したものと判定されると、傾斜演算部12はレイヤ制御部11に対してその旨を、信号として出力する形で通知する。当該信号が入力されたことを受けて、レイヤ制御部11は、ゲーム画像生成部15で生成されたゲーム画像GIに対して、当該ゲーム画像GIを構成する近景、中景及び遠景レイヤCVL、MVL、DVLの相対位置をそれらレイヤの設置面であるX−Y平面内で左右又は上下方向に変化させる制御を行う。
【0034】
即ち、ゲーム装置1の本体2が、水平面に対して本体右側面2aが左側面2bに対して下側に位置する形で所定角度以上、傾けられたものと傾斜演算部12が検出して、その旨をレイヤ制御部11に通した場合、レイヤ制御部11は、図6に示すように、ゲーム画像GIを構成する近景、中景及び遠景レイヤCVL、MVL、DVLの相対位置を、ゲームプログラムGPRのゲーム画像データの属性データで指定されたデフォルトの位置から、遠景レイヤDVLを固定した状態で、中景レイヤMVLを矢印F方向に所定量D1だけ移動させ、更に近景レイヤCVLを、矢印F方向に中景レイヤMVLの移動量よりも大きな移動量である所定量D2(>D1)だけ移動させる。なお、このレイヤの矢印F方向の移動は、レイヤ制御部11が、固定された遠景レイヤDVL以外の、中景レイヤMVL及び近景レイヤCVLを同時に移動開始させ、所定時間t(例えば、3秒程度)の間は、中景レイヤMVL及び近景レイヤCVLの移動をそれぞれ所定の速度で停止させることなく継続させる。そして、所定時間tが経過した時点で、中景レイヤMVL及び近景レイヤCVLが、それぞれ所定量D1,D2の移動を同時に完了するように、同期制御する。なお、中景レイヤMVL及び近景レイヤCVLが3枚以上有る場合には、仮想視点からの距離が近いレイヤほど、移動量(所定量)が多くなるように制御する。
【0035】
レイヤ制御部11がゲーム画像生成部15を介して、遠景レイヤDVLに対して、中景レイヤMVL及び近景レイヤCVLを矢印F方向、従って本体2が傾いた方向である右側面2a方向に移動開始させると、それら複数のレイヤCVL、MVL、DVLからなるゲーム画像GIは、そのまま画像表示部10に出力されているので、メモリ空間内の所定位置に固定的に設けられた表示フレームFLにより切り取られた形で表示される画像は、当所のデフォルト画像である図7の状態から、徐々に、所定時間tの経過と共に、図8に示すように、中景レイヤMVLが所定量D1、近景レイヤCVLが所定量D2だけ矢印F方向に移動してゆく形でディスプレイ3に表示される。即ち、所定時間tの経過と共に、情景レイヤである遠景レイヤDVL、中景レイヤMVL及び近景レイヤCVLがその、図6X−Y平面内での重なり態様を変化させながら移動することで、ディスプレイ3に表示される表示ゲーム画像DGIもその表示態様を刻々と変化させる形で表示される。
【0036】
これにより、ディスプレイ3に表示された表示ゲーム画像DGIを見るユーザからは、中景レイヤMVLが図7の矢印F方向、即ち本体2を下に傾けた方向である右方に所定量D1だけ移動し、近景レイヤCVLが本体2を下に傾けた方向である右方に所定量D2だけ移動する形で表示される。これにより、例えば、中景レイヤMVL上に表示されていた人物PSの画像は、図7の位置P1から右方に距離D1だけずれた、図8の位置P2に移動し、近景レイヤCVL上に表示されていた植物PLの画像は、図7の位置P3から右方に距離D2だけずれた、図8の位置P4に移動した形でディスプレイ3に表示される。これにより、それまで中景レイヤMVL及び近景レイヤCVLで隠されてユーザが見ることの出来なかった遠景レイヤDVLや中景レイヤMVLの部分MP1(例示であり、他にもこうした部分は多数存在し得る)、近景レイヤCVLでディスプレイ3に表示されていなかった部分MP2(例示であり、他にもこうした部分は多数存在し得る)が、図8に示すように、画面上で表示されるようになり、あたかもユーザが画面を図2左方側から覗き込んだような感じで表示される。
【0037】
しかも、近景レイヤCVLの移動量D2のほうが、中景レイヤMVLの移動量D1よりも大きく設定されているので、ユーザが日常生活で、何らかの対象物を覗き込んだ場合に視覚的に感知される、遠景よりも近景が大きく移動する感覚を適切に再現することが可能となり、自然な覗き込み表現か可能となる。また、移動制御される各レイヤMVL、CVLの移動は、その開始時点と終了時点が一致するように所定時間tで制御されるので、覗き込みなどに際したユーザの視野移動時の情景の移動表現を自然な形で行うことが出来る。
【0038】
また、ゲーム装置1の本体2が、図2(a)に示すように、水平面に対して左側面2bが右側面2aに対して下側に位置する形で所定角度以上、傾けられたものと傾斜演算部12が検出して、その旨をレイヤ制御部11に通した場合には、前述の場合とは逆に、レイヤ制御部11は、図6に示すように、ゲーム画像GIを構成する近景、中景及び遠景レイヤCVL、MVL、DVLの相対位置を、ゲームプログラムGPRのゲーム画像データの属性データで指定されたデフォルトの位置から、遠景レイヤDVLを固定した状態で、中景レイヤMVLを矢印E方向に所定量D1だけ移動させ、更に近景レイヤCVLを、矢印E方向に中景レイヤMVLの移動量よりも大きな移動量である所定量D2(>D1)だけ移動させる。なお、このレイヤの、仮想設置平面であるX−Y平面内での矢印E方向(横方向)の移動は、レイヤ制御部11が、中景レイヤMVL及び近景レイヤCVLを同時に移動開始させ、所定時間t(例えば、3秒程度)後に、それぞれ所定量D1,D2の移動を同時に完了するように、同期制御される。
【0039】
すると、ディスプレイ3に表示された表示ゲーム画像DGIを見るユーザからは、図示はしないが、中景レイヤMVLが図7の矢印E方向、即ち本体2を下に傾けた方向である左方に所定量D1だけ移動し、近景レイヤCVLも左方に所定量D2だけ移動する形で表示される。これにより、それまで中景レイヤMVL及び近景レイヤCVLで隠されてユーザが見ることの出来なかった遠景レイヤDVLや中景レイヤMVLの部分(図示せず)及び、近景レイヤCVLでディスプレイ3に表示されていなかった部分(図示せず)が、画面上で表示されるようになり、あたかもユーザが画面を図2右方側から覗き込んだような感じで表示される。
【0040】
なお、上述の実施例では、ゲーム装置1の本体2を水平面に対して傾けた際に、レイヤ制御部11は、遠景レイヤDVLを固定し、中景レイヤMVL及び近景レイヤCVLをX−Y仮想平面内で左右方向である矢印E,F方向に移動させた場合について述べたが、ゲーム画像GIを構成する各レイヤの移動態様は、他にも各種用いることが可能である。例えば、中景レイヤMVLを固定し、遠景レイヤDVL及び近景レイヤCVLを同方向に、例えは遠景レイヤDVLを矢印F方向(レイヤの右方向)に、近景レイヤCVLを矢印F方向(レイヤの右方向)にそれぞれ適宜な量だけ移動させることで、例えば、中景レイヤMVLに表示されている人物PSの背後にある景色を覗き込むような情景を表現することが出来る。更に、近景レイヤCVLを固定して、中景レイヤMVL及び遠景レイヤDVLを同方向に移動させるように制御することで、例えば鍵穴から室内を覗き込むような情景の表現も可能である。この場合、遠景レイヤDVLの移動量を中景レイヤMVLの移動量よりも大きくすると、鍵穴から周囲を覗き込む状況をよりリアルに表現することが出来る。
【0041】
また、本体2の傾け方向と、ゲーム画像GIを構成する各レイヤの移動態様は、前述のように、表現したい内容に応じて、適宜選択することが出来、また、各レイヤの移動方向も、本体2の傾け方向と一致する必要はなく積層されたレイヤの設置されたX−Y仮想平面上で上下又は左右方向いずれの方向にでも可能である。例えば、本体2を図2(c)に示すように、ディスプレイ3の表示面3aに対する垂線VLを水平方向に向けた状態、即ち本体2を立てた状態で、矢印G,H方向に水平面に対して傾けることで、ゲーム画像GIを構成する各レイヤを、図6のレイヤの設置平面であるX−Y平面に平行な矢印I,J方向、即ち上下方向にそれぞれ相対的に移動させ、下から覗き込む又は、上から覗き込むといった異なる表現態様を可能とするように構成することも出来る。また、レイヤの設置方向である2次元方向、即ち、図6のX−Y平面内の上下及び左右方向の両方向に移動させるように制御することも可能である。
【0042】
また、図示しない本体保持姿勢演算部により、ユーザによる携帯型ゲーム装置1の本体2の保持姿勢を姿勢センサ7からの出力に基づいて演算判定し、ユーザが、図2(a)に示すように、ディスプレイを該ユーザに対して横長となるように保持していると判定された場合には、画像表示部10は表示フレームFLを各レイヤDVL、MVL、CVLに対して、図6に示す横長状態に設置して横長の表示ゲーム画像DGIを生成し、また、ディスプレイ3をユーザに対して縦長となるように保持していると判定された場合には、図6の表示フレームFLをX−Y平面内で90°回転させて、各レイヤDVL、MVL、CVLに対して縦長状態に設置して、縦長の表示ゲーム画像DGIを生成する状態に切り替え制御することも出来る。この場合でも、姿勢センサ7で本体の矢印A,B方向及びG,H方向の傾きを検出して、各レイヤDVL、MVL、CVLを、図6矢印E、F方向及び矢印I,J方向、即ち表示ゲーム画像DGIの左右方向及び上下方向にそれぞれ異なる距離を移動させ、上下左右からの覗き込み効果を発揮させるようにすることが出来る。この際、表示ゲーム画像DGIが、図2(a)に示すように、横長画像の場合には、レイヤDVL、MVL、CVLの、表示ゲーム画像DGIの左右方向に対応する矢印E,F方向の最大移動量(図6の場合、近景レイヤCVLのD2に対応)は、表示ゲーム画像DGIの上下方向に対応する矢印I,J方向の最大移量よりも大きく設定することで、横長に表示された画像の左右に長い表示ゲーム画像DGIの表示幅を生かした覗き込み効果などを演出することが出来る。また、同様に表示ゲーム画像DGIが、縦長画像の場合(図示せず)には、レイヤDVL、MVL、CVLの、表示ゲーム画像DGIの上下方向に対応する矢印I,J方向の最大移動量を、表示ゲーム画像DGIの左右方向に対応する矢印E,F方向の最大移量よりも大きく設定することで、縦長に表示された画像の上下に長い表示ゲーム画像DGIの表示幅を生かした覗き込み効果などを演出することが出来る。
【0043】
上述の実施例では、姿勢センサ7が、携帯型ゲーム装置1の本体2に内蔵されている場合について述べたが、姿勢センサ7は必ずしも本体2に内蔵されている必要はなく、本体2とは別にユーザが携帯可能な形で構成されていても良い。この場合、各レイヤCVL、MVL、DVLは本体2の傾きではなく、姿勢センサ7の水平面に対する傾きに応じて移動制御される。また、姿勢センサ7と本体2との間は、赤外線通信などの無線又はワイヤなど有線により接続される。また、この場合、姿勢センサが携帯可能で有れば、ゲーム装置も必ずしも携帯型ゲーム装置である必要はなく、据え置き形のゲーム装置でもよい。
【符号の説明】
【0044】
1……ゲーム装置(携帯型ゲーム装置)
2……本体
3……ディスプレイ
7……姿勢センサ
10……ゲーム画像表示手段、表示画像切り替え手段(画像表示部)
11……レイヤ制御手段(レイヤ制御部)
12……傾斜演算手段(傾斜演算部)
15……レイヤ制御手段(ゲーム画像生成部)
GI……ゲーム画像
VP……仮想視点
DGI……表示ゲーム画像
DVL……遠景レイヤ
MVL……中景レイヤ
CVL……近景レイヤ
α、β、δ……傾き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想視点からの距離の大小に応じてそれぞれ描かれた2次元画像からなる、複数の情景レイヤを重ね合わせる形で生成される表示ゲーム画像を表示することの出来るディスプレイ、該ディスプレイが設けられた本体及び、水平面に対する傾きを検出することの出来る姿勢センサを有し、該姿勢センサにより検出される水平面に対する傾きに応じて、前記ディスプレイに表示される、表示ゲーム画像を変化させることの出来る、ゲーム装置において、
前記姿勢センサの水平面に対する傾きが所定値以上となったことを判定し、所定の信号を出力する傾斜演算手段、
前記所定の信号が入力された場合に、前記複数の情景レイヤの相対位置を、該情景レイヤの設置平面上で所定時間の経過と共に変化させつつ移動制御するレイヤ制御手段、及び、
前記レイヤ制御部による前記情景レイヤの移動に合わせて、該移動しつつある情景レイヤから生成される前記表示ゲーム画像を前記ディスプレイに表示するゲーム画像表示手段、
から構成されることを特徴とするゲーム装置。
【請求項2】
請求項1記載のゲーム装置は、更に、
前記姿勢センサからの出力に基づいて、前記本体のユーザによる保持姿勢を演算判定する本体保持姿勢演算手段、及び、
前記ディスプレイが前記ユーザに対して横長となるように保持されていると判定された場合、前記表示ゲーム画像を横長の表示ゲーム画像として前記ディスプレイに表示し、前記ディスプレイが前記ユーザに対して縦長となるように保持されていると判定された場合、前記表示ゲーム画像を縦長の表示ゲーム画像として前記ディスプレイに表示するように制御する、表示画像切り替え手段を有し、
前記レイヤ制御手段は、前記複数の情景レイヤの相対位置を前記表示ゲーム画像の上下及び左右方向に対応する方向にそれぞれ移動させることが出来、
前記レイヤ制御手段は、更に、前記横長の表示ゲーム画像が前記ディスプレイに表示されている場合には、前記複数の情景レイヤの、前記表示ゲーム画像の左右方向に対応する方向の最大移動量を、前記表示ゲーム画像の上下方向に対応する方向の最大移動量よりも大きく設定し、前記縦長の表示ゲーム画像が前記ディスプレイに表示されている場合には、前記複数の情景レイヤの、前記表示ゲーム画像の上下方向に対応する方向の最大移動量を、前記表示ゲーム画像の左右方向に対応する方向の最大移動量よりも大きく設定する、
ことを特徴とする、請求項1記載のゲーム装置。

【請求項3】
前記情景レイヤは、仮想視点からの距離の大小に応じてそれぞれ描かれた少なくとも3枚の情景レイヤからなり、
前記レイヤ制御手段は、それら情景レイヤの内、1枚の情景レイヤを固定し、それ以外の情景レイヤを、当該固定された情景レイヤに対してその相対位置を移動させるように制御することを特徴する、
請求項1又は2記載のゲーム装置。

【請求項4】
前記レイヤ制御手段は、固定された情景レイヤ以外の情景レイヤを移動させる際に、前記固定された情景レイヤ以外の情景レイヤを同時に移動開始させ、また移動中はそれらの情景レイヤをそれぞれ所定の速度で停止させることなく移動させ、また、同時に当該移動を完了するように移動制御することを特徴とする、
請求項3記載のゲーム装置。
【請求項5】
前記ゲーム装置は、携帯型のゲーム装置であり、
前記姿勢センサは、前記本体内に設けられており、該姿勢センサは該本体の水平面に対する傾きを検出することのが出来る、
ことを特徴とする、請求項1又は2記載のゲーム装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−98015(P2011−98015A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253654(P2009−253654)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(308033283)株式会社スクウェア・エニックス (173)
【Fターム(参考)】