説明

コア−シェル型ナノ粒子

本発明は、光学コーティングの形成に好適な、コア−シェル型ナノ粒子を含む組成物であって、上記ナノ粒子が、(a)ポリマーを含むコア材料と、(b)金属酸化物を含むシェル材料とを含む、組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、新規なナノ粒子を含むコーティングに関する。より具体的には、本発明は、ポリマー−金属酸化物または中空金属酸化物のコア−シェル型ナノ粒子を含む光学コーティング、その調製方法、およびその潜在的用途に関する。
【0002】
ナノ粒子を使用して光学コーティングを作製することは周知である。このようなコーティングを用いて様々な光学機能を達成することができる。例えば、反射防止コーティングは、基材よりも低い効果的な屈折率を有する多孔質のコーティングを形成することにより得られる(米国特許第2,432,484号明細書)。典型的には、この反射防止系はバインダーおよびナノ粒子を含んでいる。例えば、米国特許第6,921,578号明細書には、ナノ粒子の存在下に酸触媒を用いてバインダー(例えば、オルトケイ酸テトラエチルTEOS)を加水分解する、反射防止コーティング系の調製方法が記載されている。このような手法により反射防止特性を有するコーティングを得ることが可能であるが、幾つかの欠点にも悩まされている。例えば、再現性のある光学および機械特性を有するコーティングが得られる安定なコーティング組成物を作製することは容易ではないので、このようなコーティングを工業規模で作製することが困難な可能性がある。同様に、好適な光学特性(屈折率等)を有するコーティングを製造するためには、高い多孔性を実現する必要がある。これは、バインダー中に空隙を組み込むことにより達成することができるが、そうすることにより機械特性が失われてしまう。
【0003】
コーティング中で中空または多孔質の粒子を利用することが提案されている(例えば、欧州特許第1674891号明細書、米国特許公開第2004/058177号明細書、国際公開第2005021259号パンフレット、国際公開第2005/059601号パンフレット、国際公開第2006/030720号パンフレット、および国際公開第2006/033456号パンフレット参照)。こうすることにより、バインダーネットワーク内ではなく粒子内部に空隙が設けられ、その結果として、反射防止コーティングの機械的安定性が向上する。このような中空粒子系には明らかな利点があるにも拘わらず、ここにも幾つかの欠点がある。例えば、先行技術の中空粒子は、寸法および形態の制御が難しいことが示されている。このことにより、適切かつ再現性のある特性を有するコーティングを製造することが困難になる。また、このような粒子の製造を特に工業規模で行う場合は問題が生じやすくなる可能性がある。さらに、特定の場合においては単分散系が望ましく、これは、先行技術の方法では得ることが困難な可能性がある。加えて、粒子中に空隙を生じさせる方法は、光学コーティング中に使用するのに必ずしも適合するわけではない。
【0004】
意外にも、ポリマーコア−金属酸化物シェル粒子のバッチを再現性のある方法で製造し、反射防止コーティング等の光学コーティング中に使用することが可能であることが見出された。このようなコーティングは、ナノ粒子を同程度に充填した同程度の反射率を示すコーティングよりも高い機械的安定性を示す。
【0005】
本発明の一態様によれば、
(a)ポリマーを含むコア材料と、
(b)金属酸化物を含むシェル材料と
を含むコア−シェル型ナノ粒子を含む、光学コーティングの形成に好適な組成物が提供される。
【0006】
本発明の特定の実施形態においては、
(a)ポリマーを含むコア材料と、
(b)金属酸化物、好ましくはシリカを含むシェル材料と
を含むコア−シェル型ナノ粒子を含むコーティング組成物であって、上記ナノ粒子がロッド状または芋虫状の形態を有する、組成物が提供される。特定の実施形態においては、ポリマーは、カチオン的に安定化されたコポリマーミセル、より好ましくは、ジブロックまたはトリブロックコポリマーを含む。他の好ましい実施形態においては、ポリマーは、カチオン的に安定化されたラテックスを含む。
【0007】
本発明のさらなる態様によれば、コア−シェル型ナノ粒子を含み、この粒子が、ポリマーを含むコア材料と、金属酸化物を含むシェル材料とを含む、光学コーティングが提供される。
【0008】
本発明のさらなる態様によれば、光学コーティングを形成する方法であって、
(a)コア−シェル型ナノ粒子を含む組成物を基材に適用するステップと、
(b)上記組成物を硬化させることによってネットワークを強化し、そしてポリマーコアを除去するステップと
を含み、このコア−シェル型ナノ粒子が、ポリマーを含むコア材料と、金属酸化物を含むシェル材料とを含む、方法が提供される。
【0009】
本発明のさらなる態様によれば、コア−シェル型ナノ粒子の光学用途のための使用が提供される。
【0010】
本発明のさらなる態様によれば、コア−シェル型ナノ粒子を含む光学コーティング組成物で少なくとも一部がコーティングされた基材であって、この粒子が、ポリマーを含むコア材料と、金属酸化物を含むシェル材料とを含む、基材が提供される。
【0011】
本発明のさらなる態様によれば、コア−シェル型ナノ粒子を含む光学コーティング組成物で少なくとも一部がコーティングされた基材を含む物品であって、この粒子が、ポリマーを含むコア材料と、金属酸化物を含むシェル材料とを含む、物品が提供される。
【0012】
本発明のさらなる態様によれば、コア−シェル型ナノ粒子を含む薄膜コーティングであって、この粒子が、ポリマーを含むコア材料と、金属酸化物を含むシェル材料とを含む、薄膜コーティングが提供される。本明細書において用いられる「薄膜」とは、平均厚さが300nm以下であるコーティングを指す。
【0013】
本明細書において用いられる「ナノ粒子」という用語は、平均一次粒度が1μm未満、好ましくは500nm未満、より好ましくは350nm未満である粒子を指す。粒度は、動的光散乱(DLS)および透過型電子顕微鏡観察(TEM)によって測定することができる。
【0014】
本明細書において用いられる「コア−シェル」という用語は、ポリマー材料(例えば、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロック−コポリマー等)を含むコア材料と金属酸化物(例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化スズ等)を含むシェル材料とを含む粒子を指す。
【0015】
本明細書において用いられる「バインダー」という用語は、ナノ粒子を物理的または化学的に架橋し、好ましくは、粒子を基材に結合させることもできる物質を指す。
【0016】
本明細書において用いられる「固形分重量の」という用語は、水を含む溶媒を全て除去した後の重量百分率を指す。
【0017】
特段の指定が無い限り、本明細書における参考文献はすべて参照により本明細書に援用するものとする。
【0018】
本明細書の本文および特許請求の範囲全体を通して、「含む(comprise)」および「含む(contain)」という単語ならびにその単語の変形、例えば「含む(comprising)」および「含む(comprises)」は、「含むがこれらに限定されるものではない」ことを意味し、それ以外の部分、添加剤、成分、整数、またはステップを除外することを意図するものではない(除外しない)。
【0019】
本明細書の本文および特許請求の範囲全体を通して、単数形には、その文脈において別段の必要がない限り、複数形が包含される。特に、不定冠詞が用いられている場合、本明細書は、その文脈において別段の必要がない限り、単数と同様に複数も意図しているものと理解されたい。
【0020】
本発明の特定の態様、実施形態、または実施例と一緒に記載される特徴、整数、特性、化合物、化学部分、または基は、不適合でない限り、本明細書に記載される他の任意の態様、実施形態、または実施例にも適用可能であると理解されたい。
【0021】
本発明は、コア−シェル型ナノ粒子およびその光学コーティング中における使用に関する。本発明の粒子は、ポリマーを含むコアと、金属酸化物を含むシェルとを含む。
【0022】
本発明において使用されるナノ粒子は任意の好適なサイズであってもよい。好ましくは、粒子の平均特定サイズ(average specific size)g(ここで、g=1/2×(長さ+幅))は約300nm以下である。より好ましくは、粒子の平均サイズは約200nm以下である。よりさらに好ましくは、粒子の平均サイズは約100nm以下である。好ましくは、粒子の平均サイズは1nm以上、より好ましくは、粒子の平均サイズは約10nm以上である。
【0023】
好ましくは、空隙の平均特定サイズは1nm以上、より好ましくは3nm以上、よりさらに好ましくは6nm以上である。好ましくは、空隙の平均特定サイズは100nm以下、より好ましくは80nm以下、よりさらに好ましくは70nm以下である。
【0024】
好ましくは、シェルの厚みは少なくとも1nm、より好ましくは少なくとも5nm、よりさらに好ましくは少なくとも10nmである。好ましくは、シェルの厚みは75nm以下、より好ましくは50nm以下、よりさらに好ましくは25nm以下である。
【0025】
ナノ粒子は、種類、サイズ、および形状の異なる粒子の混合物を含んでいてもよい。しかしながら、好ましくは、ナノ粒子は、適度に均一なサイズおよび形状を有する比較的単分散なものである。
【0026】
一実施形態においては、本明細書において使用される粒子は、好ましくはロッド状または芋虫状粒子等の非球状である。他の好ましい実施形態においては、粒子は、ほぼ球状である。
【0027】
好ましい実施形態においては、空隙率は、好ましくは約5%〜約90%、より好ましくは約10%〜約70%、よりさらに好ましくは約25%〜約50%である。空隙率(x)は以下の等式に従い求めてもよい:
【数1】


(式中、rは、コアの半径であり、rは、外側のシェルの半径である)。
【0028】
本明細書において使用されるナノ粒子は、ポリマーを含むコア材料を含む。任意の好適なポリマー、例えば、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、ジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー、およびこれらの組合せ等を使用してもよい。
【0029】
好ましくは、コアは、ポリマーの約30重量%以上、より好ましくは約50重量%以上、よりさらに好ましくは約70重量%以上、より一層好ましくは約90%以上を構成する。
【0030】
本発明においては、コア材料の一部または全部を粒子から除去することが必要となる場合がある。これは、任意の好適な方法により製造工程の任意の好適な時点で達成してもよい。好ましい方法としては、例えば、熱分解、光分解、溶剤洗浄、電子線、レーザー、触媒分解、およびこれらの組合せが挙げられる。好ましくは、コアは、ナノ粒子をコーティングまたはコーティング形成に用いられる組成物に添加した後に除去される。したがって、本発明の範囲は、コアが存在し、そのコアが部分的または完全に除去されているコア−シェル型ナノ粒子を含む光学コーティングも包含する。
【0031】
好ましい実施形態においては、コアは、熱分解性または熱不安定性ポリマーを含む。好ましいポリマーは、600℃以下、より好ましくは450℃以下、よりさらに好ましくは350℃以下で不安定化するものである。好ましくは、ポリマーは、室温以上、より好ましくは150℃以上、よりさらに好ましくは250℃以上で不安定化する。好適な熱不安定性ポリマーとしては、例えば、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、ジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0032】
好ましくは、コアは、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリメタクリレート、およびこれらの組合せから選択されるポリマーを含む。
【0033】
好ましくは、コアは、ポリ(メタ)アクリレートを含む。ポリ(メタ)アクリレートとは、1種またはそれ以上のビニルモノマーの(コ)ポリマーであると理解される。好適な((恒久的)4級化が可能でない(non(permanent)quaternisable))モノマーの例としては、スチレン(スチレンそのもの、アルファ−メチルスチレン(methlystylene)、o−、m−、およびp−エチルスチレン、o−、m−、およびp−エチルスチレン、p−クロロスチレン、p−ブロモスチレン等);アルカノール(通常はC1〜C12)およびシクロアルカノール(通常はC5〜C12)の直鎖および分岐のアクリルおよびメタクリル酸エステル(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、およびメタクリル酸シクロヘキシル、ならびに対応するアクリル酸エステル等);ビニルエステル(酢酸ビニル、アルカン酸ビニル等);ハロゲン化ビニル(塩化ビニル等);ハロゲン化ビニリデン(塩化ビニリデン等);ジエン(1,3−ブタジエンやイソプレン等)が挙げられる。
【0034】
官能基を有するモノマー(例えば、架橋性を付与するためのもの)が場合により含まれていてもよく、その例としては、ヒドロキシおよびエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル(メタクリル酸ヒドロキシアルキル(通常はC1〜C12)、例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、および対応するアクリル酸エステル等)に加えて、ケトおよびアルデヒド基を有するモノマー(アクロレイン、メタクロレイン、メチルビニルケトン等)、アクリル酸およびメタクリル酸ヒドロキシアルキル(通常はC1〜C12)エステルのアセトアセトキシエステル(アセトアセトキシエチルアクリレートおよびメタクリレート等)に加えて、ケトまたはアルデヒド含有アミド(ジアセトンアクリルアミド等)が挙げられる。第3級アミン基を有するモノマーとしては、例えば、オリゴマーの形成に使用される非イオン性アミン基を有するビニルモノマー(成分i)、(a))が挙げられ、これらに限定されるものではないが、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノヘキシル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチル−N−ブチル−アミノエチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、2−(1,1,3,3,−テトラメチルブチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、ベータ−モルホリノエチル(メタ)アクリレート、4−(ベータ−アクリロキシエチル)ピリジン、ビニルベンジルアミン、ビニルフェニルアミン、2−ビニルピリジン、または4−ビニルピリジン、p−アミノスチレン、ジアルキルアミノスチレン(dialkyaminostylene)(N,N,−ジアミノメチルスチレン等)、置換されたジアリルアミン、N−ビニルピペリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルイミダゾリン、N−ビニルピラゾール、N−ビニルインドール、(メタ)アクリルアミド(2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、2−(tert−ブチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、3−(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミド、N−アミノアルキル(メタ)アクリルアミド等)、ビニルエーテル(10−アミノデシルビニルエーテル、9−アミノオクチルビニルエーテル、6−(ジエチルアミノ)ヘキシルビニルエーテル、5−アミノペンチルビニルエーテル、3−アミノプロピルビニルエーテル、2−アミノエチルビニルエーテル、2−アミノブチルビニルエーテル、4−アミノブチルビニルエーテル、2−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、N−(3,5,5,−トリエチルヘキシル)アミノエチルビニルエーテル、N−シクロヘキシルアミノエチルビニルエーテル、N−tert−ブチルアミノエチルビニルエーテル、N−メチルアミノエチルビニルエーテル、N−2−エチルヘキシルアミノエチルビニルエーテル、N−tert−オクチルアミノエチルビニルエーテル、ベータ−ピロリジノエチルビニルエーテル、または(N−ベータ−ヒドロキシエチル−N−メチル)アミノエチルビニルエーテル等)も使用してもよい。環式ウレイドまたはチオ尿素含有不飽和モノマー((メタ)アクリロキシエチルエチレン尿素、(メタ)アクリロキシエチルエチレンチオ尿素(メタ)アクリルアミドエチレン尿素、(メタ)アクリルアミドエチレンチオ尿素等)も使用してもよい。アミン基を有するビニルモノマーの混合物も使用してもよい。所望により、これらの非イオン性モノマーを、例えば以下に説明する中和によってカチオン性にしてもよい。
【0035】
オリゴマーを形成するのに使用される、恒久的第4級アンモニウム基を有するビニルモノマー(成分i)、(b))には、例えば、塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム(MAPTAC)、塩化ジアリルジメチルアンモニウム(DADMAC)、塩化2−トリメチルアンモニウムエチルメタクリレート(TMAEMC)、ならびに置換された(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリルアミドモノマーの第4級(quartenary)アンモニウム塩がある。上に例を列挙した恒久的第4級アンモニウム基を有するビニルモノマー等の既にカチオン性であるアミン基を有するビニルモノマーの場合は、中和は不要である。
【0036】
ビニルオリゴマーの形成に使用してもよい、既に中和されたアミン基を有するビニルモノマー(成分i)、(c))は、成分i)、a)に関し上に列挙した非イオン性のアミン基を有するビニルモノマーと同じである。しかしながら、モノマー(c)を得るためには、モノマー(a)を重合させる前に酸、好ましくは有機酸で処理する。このようにして、非イオン性のアミン基を有するモノマーを重合前にカチオン性にする。これは、非イオン性のアミン基を有するビニルモノマーの全部または一部に施してもよい。
【0037】
中和が必要なアミン基を有するビニルモノマーおよび既にカチオン性である恒久的第4級アンモニウム基を有するモノマーの混合物も使用してもよい。
【0038】
好ましくは、アミン基を有するビニルモノマーは、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、およびこれらの混合物からなる群から選択される。ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0039】
好ましくは、コアは、ブロックコポリマー、より好ましくは、ジブロックおよび/またはトリブロックコポリマーから選択されるポリマーを含む。
【0040】
好ましい実施形態においては、コア材料は、カチオン性ポリマーを含む。カチオン性ブロックコポリマーがより好ましい。コポリマーミセルがよりさらに好ましい。ジブロックコポリマーミセルがより一層好ましい。上記ジブロックコポリマーミセルは、好ましくは、第1ポリマーの少なくとも1種のブロックを有するコアおよび上記第1ポリマーとは異なる第2ポリマーの少なくとも1種のブロックを有する外殻を有している。
【0041】
好ましくは、上記コポリマーは、第1ポリマーおよび第2ポリマーを含み、この両方がアミノ系(アルク)アクリレート((akl)acrykate)モノマー単位、より好ましくは第3級アミノ系(アルク)アクリレート単位、最も好ましくは、第3級アミノアルキル(アルク)アクリレート単位を含んでいる。特に好ましくは、上記(アルク)アクリレート単位は、アクリレート、またはより詳細には、メタクリレート単位を含む。
【0042】
好ましい実施形態においては、上記第3級アミノアルキルメタクリレート単位は、ジアルキルアミノアルキルメタクリレート単位、特にジアルキルアミノエチルメタクリレート単位を含む。特に好ましい実施形態においては、上記コポリマーは、ポリ[2−(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート)−ブロック−2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート](PDPA−PDMA)を含む。
【0043】
ミセルは、上記ポリマーをベースとする、未架橋または架橋型(シェル架橋型等)ミセルであってもよい。したがって、特に好ましい実施形態は、ポリ[2−(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート)−ブロック−2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート]等の、第3級アミンメタクリレートから誘導されたブロックコポリマーをベースとする未架橋またはシェル架橋型ミセルを想定している。
【0044】
上記第3級アミノ系(アルク)アクリレートコポリマーのミセルを架橋させることが可能な1つの方法は、上記コポリマーの第3級アミノ基を二官能性4級化剤で部分的または完全に4級化することによるものである。したがって、好ましい実施形態の場合は、ポリ[2−(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート)−ブロック−2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート](PDPA−PDMA)の部分架橋を、PDMA鎖を好適な二官能性4級化剤、例えば、1,2−ビス−(ヨードエトキシ)エタン(BIEE)等のビス(ハロアルコキシ)アルカンを用いて選択的に4級化/架橋することによって達成してもよい。この好ましい実施形態においては、PDPA鎖は基本的に4級化されないままである。
【0045】
本発明はまた、ハロゲン化アルキル(特にヨードメタン等のヨウ化アルキル)等の単官能性4級化剤を用いることにより4級化が達成される、類似の非架橋型の4級化された誘導体も想定している。しかしながら、シリカ沈着過程の制御は材料が架橋されている場合に向上し得ると考えられている。
【0046】
ポリマーの重合度は、好ましくは、規定の範囲内で制御される。本発明の好ましい実施形態においては、PDPA−PDMAコポリマーの重合度は、好ましくは、PDPAの平均重合度が20〜25の範囲内となり、PDMAの平均重合度が65〜70の範囲内となるように制御され、PDPA23−PDMA68コポリマー(下付き文字は、各ブロック平均重合度を示す)を用いた場合に特に好ましい結果が得られる。上記実施形態においては、PDPA単位はミセルのコアを形成し、PDMA単位はミセルの外殻を形成する。
【0047】
ポリマーコア材料は、任意の好適な重合法により調製してもよいが、好ましい実施形態に関しては、グループ移動重合法やRAFTおよびATRPのような制御ラジカル重合法等の方法を用いた場合に特に好ましい結果が得られる。次いで、コア材料の金属酸化物による被覆が、例えば、好適な前駆体で処理することによって行われる。
【0048】
好ましい実施形態においては、ポリマーコアはラテックスであり、より好ましくは、イオン的に安定化されたポリマーラテックスである。本明細書において用いられる「ラテックス」という用語は、ポリマー粒子の安定化された懸濁液を指す。好ましくは、この懸濁液は、カチオン性懸濁液である。ポリマー粒子の平均サイズは、好ましくは1〜400nm、より好ましくは10〜250nm、よりさらに好ましくは30〜150nmの範囲内にある。懸濁液のpH範囲は、好ましくは3〜7、より好ましくは3.5〜6である。
【0049】
好ましくは、ラテックスは、ポリマーおよびカチオン性界面活性剤を含む。任意の好適なポリマー、例えば、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロック−コポリマー、ジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー、およびこれらの組合せ等を使用してもよい。
【0050】
好ましくは、ポリマーは、スチレンモノマー、(メタ)アクリルモノマー、ならびにこれらのコポリマーおよび組合せを含む。
【0051】
好ましくは、界面活性剤は、アンモニウム界面活性剤を含む。
【0052】
コアは、好ましくは、水性カチオン性ビニルポリマー組成物を含む。カチオン性基は、ポリマー中に組み込んでもよいし、または任意の他の形態で、例えば、カチオン性界面活性剤の添加などによって加えてもよい。好ましくは、カチオン性基は、少なくとも一部がポリマーに結合している。好ましくは、カチオン性基は、重合の際にポリマー中に組み込まれる。
【0053】
ポリマーは、任意の好適な方法で作製してもよい。例えば、溶液中で、分散させ、場合により溶媒を蒸発させ;界面活性剤を用い;ポリマー(またはオリゴマー)安定剤を用い、場合により少量の界面活性剤を存在させ;塊状または懸濁重合を行い、続いて、このポリマーを水中に放散させ、場合により、続いてさらなる重合ステップを行う。特定の実施形態においては、さらなるビニル重合の安定剤として、ポリマー分散液(または溶液)Aが使用される。ポリマーAは、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート等であってもよい。
【0054】
本発明のナノ粒子は、金属酸化物を含むシェル材料を含む。任意の好適な金属酸化物を使用してもよい。好ましくは、金属酸化物は、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、アンチモンドープ酸化スズ、酸化スズ、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、およびこれらの組合せから選択される。
【0055】
好ましくは、シェルは、シリカを含む。より好ましくは、シェルは、シリカを少なくとも90重量%含む。
【0056】
好ましくは、上記シェル材料は、上記コア材料上に沈着された少なくとも1種のシリカ前駆体由来のシリカを含む。場合により、上記少なくとも1種のシリカ前駆体は、無機ケイ酸塩、例えば、ケイ酸ナトリウム等のアルカリ金属ケイ酸塩を含んでいてもよい。しかしながら、好ましいシリカ前駆体は、有機ケイ酸エステル化合物、特に、オルトケイ酸テトラメチルやオルトケイ酸テトラエチル等のケイ酸アルキルエステルを含む。最も好ましくは、上記シリカ前駆体は、オルトケイ酸テトラメチルを含む。上記処理は、未架橋のミセル内でコポリマー鎖を効果的に架橋させ、それによってミセルを解離に対し安定化させることが見出された。
【0057】
シリカ沈着は、温和な条件下でポリマーを好適なシリカ前駆体で単純に処理することによって実施されてもよい。したがって、好ましいコポリマーおよびラテックスミセルのいずれの場合も、このような材料をシリカ前駆体(典型的には、有機ケイ酸エステル化合物、特に、オルトケイ酸テトラエチル等のケイ酸アルキルエステル、最も好ましくはオルトケイ酸テトラメチル)と一緒に、5〜60℃、pH6.2〜9.0で10〜300分間撹拌してもよい。典型的な反応においては、PDPA−PDMAコポリマーミセルをオルトケイ酸テトラメチルで20℃、pH7.2で20分間処理してもよい。本発明の第2の態様の方法は、低いpH値(典型的にはpH1)で実施すべきであるシリカ沈着手順が必要とされる先行技術の方法よりも勝っている正にこの点によって重要な利点が得られる。
【0058】
第3級アミンメタクリレート系ブロックコポリマー(具体例は、ポリ[2−(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート)−ブロック−2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート](PDPA−PDMA))から誘導された、選択的に4級化された非架橋型およびシェル架橋型(SCL)ミセルをベースとする組成物を用いることにより、特に好ましい結果が達成されており、この種の材料を鋳型として用いると、直径が50nm未満の明確に画定されたコポリマー−シリカナノ粒子の生体模倣による形成が特に上首尾に行われることが証明されている。部分的または完全に4級化されたポリ(2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート)(PDMA)の外殻および疎水性ポリ(2−(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート)(PDPA)のコアを含むジブロックコポリマーミセルは、特に、温和な条件下すなわちpH7.2の20℃の水溶液からシリカを沈着させるためのナノサイズの鋳型として用いられている。
【0059】
さらに、アクリルコポリマーラテックス粒子(例えば、DSMネオレジンズ(DSM NeoResins)より入手可能なネオクリル(NeoCryl)XK−30)を含む組成物を用いることにより好ましい結果が達成されている。好ましいラテックス粒子の平均粒度は60〜90nmであり、カチオン性界面活性剤で安定化されている。この粒子は、シリカ沈着の鋳型として用いられている。室温下において中性の水性環境下でTMOSを前駆体として用いてシリカの生体模倣沈着を実施することができる。
【0060】
本明細書における、温和な条件、短い反応時間、および入手可能な試薬を利用できるという事実は、商業的に適用可能な製造方法を準備する際には明らかな利点が得られるであろう。さらに、粒子のサイズおよび/または性質を制御できることも有利である。
【0061】
本明細書におけるコーティング組成物は、典型的には、バインダーを含む。バインダーの主要な機能は、コーティングの一体性を損なわせないことにある。すなわち、ナノ粒子をコーティング内および基材に対し固定することにある。任意の好適なバインダーを使用してもよいが、好ましくは、バインダーは、粒子および基材と共有結合を形成するものである。バインダーは、硬化前は、好ましくは、アルキルまたはアルコキシ基を有する無機化合物を含む。さらに、バインダーは、好ましくは、自身が重合することにより実質的に連続した高分子ネットワークを形成する。
【0062】
本発明の一実施形態においては、バインダーは、無機材料を含む。好ましくは、バインダーは、実質的に無機材料からなる。バインダーは、好ましくは、1種またはそれ以上の無機酸化物から誘導された化合物を含む。好ましくは、バインダーは、金属アルコキシド等の加水分解性材料を含む。好ましくは、バインダーは、アルコキシシラン、アルコキシジルコニウム、アルコキシアルミニウム、アルコキシチタン、ケイ酸アルキル、ケイ酸ナトリウム、またはこれらの組合せを含む。アルコキシシランが好ましく、トリおよびテトラアルコキシシランが好ましい。好ましくは、ケイ酸エチル、アルミン酸エチル、ジルコン酸エチル、および/またはチタン酸エチルバインダーが使用される。テトラアルコキシシランが最も好ましい。
【0063】
コーティング組成物中のバインダーの量は、好ましくは、固形分重量の1%以上、より好ましくは2%以上である。好ましくは、バインダーの量は、固形分重量の40%以下、より好ましくは25%以下であろう。百分率は、ナノ粒子中の金属酸化物の量に対するバインダー中の金属酸化物の量として算出される。
【0064】
好ましくは、バインダーおよびナノ粒子の混合物のpHは、約2以上、より好ましくは約3以上である。pHは、好ましくは約7以下、より好ましくは約4以下である。
【0065】
本明細書における組成物は溶媒を含んでいてもよい。好ましい溶媒としては、水、有機溶媒、およびこれらの組合せが挙げられる。しかしながら、バインダーの化学的性質に応じて多くの溶媒が有用である。好適な溶媒としては、これらに限定されるものではないが、水、非プロトン性有機溶媒、アルコール、およびこれらの組合せが挙げられる。好適な溶媒の例としては、これらに限定されるものではないが、イソプロパノール、エタノール、アセトン、エチルセロソルブ、メタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、メチルエチルエーテル、メチルブチルエーテル、トルエン、メチルエチルケトン、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0066】
通常、コーティング組成物は、粒子およびバインダーの粘度を基材に薄い層を適用できるような値に調整する量の非反応性溶媒を含む。好ましくは、その粘度は、約2.0mPa.s以上、好ましくは2.2mPa.s以上、よりさらに好ましくは約2.4mPa.s以上であろう。好ましくは、粘度は、約20mPa.s以下、好ましくは約10mPa.s以下、より好ましくは約6mPa.s以下、よりさらに好ましくは約3mPa.s以下である。粘度はウベローデ(Ubbelohde)PSL ASTM IP no 1(27042型)で測定することができる。
【0067】
好ましくは、本明細書におけるコーティング組成物を硬化させる前の固形分の量は、約5重量%以下、より好ましくは約4重量%以下、よりさらに好ましくは約3重量%以下である。好ましくは、固体の量は、約0.5重量%以上、より好ましくは約1重量%以上、より好ましくは約1.5重量%以上である。
【0068】
本組成物は、光学コーティングを形成するのに好適である。本明細書において用いられる「光学コーティング」という用語は、主要機能として光学機能を有するコーティングを指す。光学コーティングの例としては、反射防止、ノングレア、防眩、帯電防止、EM制御(例えば、UV制御、日射制御、IR制御、RF制御等)の機能が得られるように設計されたものが挙げられる。
【0069】
好ましくは、本コーティングは、反射防止用である。より好ましくは、本コーティングは、コーティングされた1つの面から425〜675nm(可視光領域)の波長で測定すると、最低反射率が約2%以下、好ましくは約1.5%以下、より好ましくは約1%以下となるものである。425〜675nmの領域全体にわたる1つの面からの反射率の平均値は、好ましくは約2.5%以下、より好ましくは約2%以下、よりさらに好ましくは約1.5%以下、より一層好ましくは約1%以下であろう。通常、反射率の最小値は、425〜650nmの間の波長、好ましくは450nm以上、より好ましくは500nm以上の波長にあるであろう。好ましくは、最小値は、600nm以下の波長にある。人間の目が最も感じやすい波長(色)である550nm付近の波長に反射率の最低値があるものが人間の目にとって最適である。
【0070】
このコーティング組成物は、基材に適用することができる。任意の好適な基材を使用してもよい。光学コーティングにより利点が得られ得る基材、特に、反射防止コーティングにより利点を得られるであろうものが好ましい。基材は、好ましくは、透明度の高いものである。好ましくは、透明度は、425〜675nmの波長において、厚さ2mmで約94%以上、より好ましくは約96%以上、よりさらに好ましくは約97%以上、よりさらに好ましくは約98%以上である。
【0071】
本明細書における基材は、有機物質であってもよく、例えば、基材は、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネートもしくはポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエステル等の有機ポリマー材料または類似の光学的性質を有するポリマー材料であってもよい。この実施形態においては、有機基材材料がその形態を実質的に維持し、実質的に熱分解を受けない十分に低い温度で硬化させることができるコーティングを使用することが好ましい。好ましい1つの方法は、欧州特許出願公開第A−1591804号明細書に記載された触媒を使用することである。他の好ましい硬化方法は、国際公開第2005/049757号パンフレットに記載されている。
【0072】
本明細書における基材は、無機物質であってもよい。好ましい無機基材としては、セラミック、サーメット、ガラス、石英、またはこれらの組合せが挙げられる。フロートガラスが好ましい。透明度が98%以上である低鉄分ガラス、いわゆる白板硝子が最も好ましい。
【0073】
好ましくは、コーティング組成物は、結果として得られる乾燥コーティングの厚みが約50nm以上、好ましくは約70nm以上、より好ましくは約90nm以上となるように物品に適用される。好ましくは、乾燥コーティングの厚みは約300nm以下、より好ましくは約200nm以下、よりさらに好ましくは約160nm以下、より一層好ましくは約140nm以下である。
【0074】
薄肉のコーティングを基材に適用するのに利用できる方法は数多くある。所要の厚みを得るのに好適な湿潤したコーティング組成物を適用する方法が許容されるであろう。好ましい方法としては、メニスカス(キス)コーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、スピンコーティング、およびディップコーティングが挙げられる。浸漬した基材のあらゆる面にコーティングが得られ、かつ再現性のある一定の厚みが得られるディップコーティングが好ましい。スピンコーティングは、幅または長さが20cm以下のものなどのより小さいガラス板を使用する場合は容易に用いることができる。連続工程の場合は、メニスカス、ロール、およびスプレーコーティングが有用である。
【0075】
一旦基材に適用された後のコーティングは、硬化(curing、hardening)が必要となるであろう。必要に応じて、使用されるバインダー材料の種類により決定される場合が多い任意の好適な手段により硬化を実施してもよい。硬化の手段としては、例えば、加熱、IR処理、紫外線曝露、触媒硬化、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0076】
触媒を使用する場合は、酸触媒が好ましい。好適な触媒としては、これらに限定されるものではないが、酢酸、ギ酸、硝酸、クエン酸、酒石酸等の有機酸、リン酸、塩酸、硫酸等の無機酸、およびこれらの混合物が挙げられるが、緩衝能を有する酸が好ましい。
【0077】
好ましい実施形態においては、硬化は加熱により達成される。加熱硬化は、通常、約150℃以上、好ましくは約200℃以上で実施される。好ましくは、この温度は、約700℃以下、より好ましくは約500℃以下であろう。硬化が起こる時間は、通常、30秒以上である。通常、硬化は、10時間以下、好ましくは4時間以下で実施される。
【0078】
一実施形態においては、コーティング組成物は熱硬化性であり、ガラス板の焼入れステップの前に上記板に適用される。通常、焼入れステップは600℃までの温度で実施される。したがって、この場合、硬化および焼入れ工程は1段階で実施される。
【0079】
好ましくは、この硬化ステップによってナノ粒子のコア材料も、少なくとも一部、より好ましくは実質的に完全に分解される。
【0080】
好ましくは、基材は、コーティングを適用する前に清浄化される。ホコリ、油、および他の有機化合物等の少量の汚染物質がコーティングに欠陥が現れる原因となる。
【0081】
本発明によるコーティングが良好な光学および機械特性を示すことが見出された。所望の機械特性としては、基材に対する良好な接着性、良好な衝撃穴あけ強さ、良好な耐スクラッチ性、および良好な耐摩耗性が挙げられる。
【0082】
以下の実施例を参照することにより本発明をさらに例示するが、本開示の範囲を何ら限定するものではない。
【0083】
[実施例]
[実施例1]
ブトゥアン(Buetuen),V;アームズ(Armes),S.P.;ビリンガム(Billingham),N.C.、Chem.Commun.、1997年、671〜672頁に記載の方法に従いグループ移動重合を用いてモノマーを逐次付加させることによりPDPA23−PDMA68ジブロックコポリマーを合成した。一連の単分散に近いポリ(メチルメタクリレート)を較正基準として用いたゲル浸透クロマトグラフィー分析から、Mが18000であり、M/Mが1.08であることが示された。PDPAおよびPDMAブロックの平均重合度は、H NMR分光を用いることにより、それぞれ23および68と推定された。
【0084】
PDPA23−PDMA68ジブロックコポリマー(4級化度=0%)をpH2で分子状に溶解させた後、NaOHを用いて溶液のpHをpH7.2に調整することにより非架橋型ミセル調製した。25℃における動的光散乱(DLS)調査から、pH7.2のコポリマーミセルの0.25wt%溶液においては、ミセルの強度平均径が37nmであることが示された。
【0085】
上記ミセルのミセル水溶液(0.25w/v%、pH7.2)2.0mlをオルトケイ酸テトラメチル1.0mlと混合した後、初期に不均質な溶液を自然条件下で20分間撹拌することによりケイ酸化を達成した。こうして得られた混成コア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子をエタノールで洗浄した後、16000rpm、5分間の遠心分離/再分散サイクルに3回かけた。次いで、沈降したコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子の再分散を、超音波浴を用いて達成した。
【0086】
[実施例2]
実施例1のようにグループ移動重合を用いてモノマーを逐次付加することによりPDPA23−PDMA68ジブロックコポリマーを合成した。
【0087】
ブトゥアン,V;アームズ,S.P.;ビリンガム,N.C.、Macromolecules、2001年、第34巻、1148〜1159頁に記載されたように、ヨードメタンを用いたPDMAブロックの部分4級化(目標4級化度は50%または100%のいずれか)をTHF中で24時間実施した。
【0088】
50%または100%4級化されたPDPA23−PDMA68ジブロックコポリマーを用いて調製された非架橋型ミセルも同様に、実施例1に記載したようなpH調整によって調製した。pH7.2で実施したDLS調査から、50%および100%4級化されたコポリマーミセルの0.25wt%水溶液の場合は、強度平均径がそれぞれ29nmおよび26nmであることが示された。
【0089】
PDMA鎖が50%4級化されたPDPA23−PDMA68コポリマーミセルの0.25wt.%水溶液2.0mlにオルトケイ酸テトラメチル(1.0ml)を20℃で添加し、連続撹拌しながらシリカ沈着を20分間継続させた後、遠心分離によって単離した。
【0090】
50%4級化されたコポリマー前駆体を用いて得られた混成コア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子のDLS調査から、pH7付近のミセルの強度平均径が34nmであることが示された。
【0091】
[実施例3]
グループ移動重合を用いてモノマーを逐次添加することによりPDPA23−PDMA68ジブロックコポリマーを合成し、PDPA23−PDMA68ジブロックコポリマーの非架橋型ミセルを実施例1に記載したように調製した。
【0092】
二官能性4級化剤である1,2−ビス−(2−ヨードエトキシ)エタン(BIEE、目標架橋度30%を達成するため、DMA残基1個当たり0.15mol)をPDPA23−PDMA68コポリマーミセルの0.25%溶液にpH7.2で添加することにより外殻PDMA鎖のシェル架橋を達成した。シェル架橋を25℃で少なくとも72時間実施した。シェル架橋させた後のDLS調査から、強度平均径が32nmであることが示され、TEM調査からは、乾燥させたSCLミセルの数平均径が26nmであることが示された。SCLミセル水溶液をpH2に調整してDLS調査を行ったところ、SCLミセルの膨潤とにより強度平均径が45nmであることが示された。
【0093】
低pHにおいてはPDPA鎖が高度にプロトン化され、したがってもはや疎水性ではなくなるので、非架橋型ミセルの場合は低pHで単純に解離して分子状に溶解した溶液を形成するという理由から、このDLS実験により、シェル架橋が上首尾に行われたことも確認された。さらに、50%4級化されたコポリマーを用いて調製されたSCLミセルのDLSにより示された強度平均径はpH7.2で37nmであった。
【0094】
0.25wt%SCLミセル溶液を2.0ml分取して、メタノール2.0mlおよびオルトケイ酸テトラメチル2.0mlの混合物に加えることによりシリカ沈着を達成した。ここでは、メタノールを共溶媒として作用させ、TMOSが確実に水相と混和するようにした。シリカ沈着を40分間継続した後に得られた生成物のTEM調査を行い、明確に画定されたコア−シェル型コポリマー−シリカナノ粒子の形成を確認した。一方、この処理を120分間継続した後でさえも、鋳型を介していないシリカナノ構造の形跡は認められなかった。
【0095】
[実施例4]
PEO45−PDMA29−PDPA76トリブロックコポリマーをPEOベースのマクロ開始剤を用いた原子移動ラジカル重合により合成した。まず、マクロ開始剤(1.00g、0.463mmol)を25mlの一頚フラスコに加え、次いで、吸引/窒素サイクルを3回行うことにより脱気した後、DMA(2.18g、13.88mmol、目標架橋度30)、2,2’−ビピリジン(144.5mg、0.925mmol)、次いで、脱気した95/5v/vIPA/水混合物3.2mlを加えた。この溶液を40℃の油浴に入れて均質になるまで撹拌した。次いで、塩化銅(I)(45.8mg、0.463mmol)を加えて反応を40℃で3.5時間窒素中で連続撹拌しながら実施した。この時間が経過した後、H NMR分光で測定したDMAモノマーの反応率は96%に到達した。
【0096】
その後、DPA(4.94g、23.13mmol、目標架橋度=50)および95/5v/vIPA/水混合物5.0mlの混合物を加えた。2段階重合を40℃で18.5時間実施した後、空気に触れさせることにより停止した。H NMR分析により、DPAモノマー反応率が99%に到達したことが示された。コポリマー溶液をTHF(200ml)で希釈し、シリカカラムを通して使用済み触媒を除去した。次いで、コポリマー溶液を減圧濃縮し、固体のコポリマーを脱イオン水(100ml)中で析出させることにより残留モノマーおよび任意の未反応のPEO−DMAジブロックコポリマーを除去した。精製された白色のコポリマーを真空中で一夜凍結乾燥させることにより単離した。全体の収量は6.1g(76%)であった。
【0097】
PEO45−PDMA29−PDPA76トリブロックコポリマーをpH2で分子状に溶解した後、NaOHを用いて溶液のpHを7.2に調整してミセルのロッドを形成させる調製を行った。最終コポリマー濃度を1.0wt%とした。過剰のTMOS(0.20g、すなわちTMOS:コポリマー質量比20:1)をコポリマー溶液1.0mlに加え、次いで、ケイ酸化を20℃、pH7.2で20分間実施することによりシリカ沈着を達成した。エタノールで洗浄した後、13000rpm、15分間の遠心分離/再分散サイクルを3回行うことによりシリカロッドを得た。
【0098】
[実施例5]
予め低重合させたテトラエトキシシランを調製するために、テトラエトキシシラン(58.4g)の2−プロパノール(159.0g)溶液を撹拌しながら、水(53.6g、12.2重量%)および酢酸(5.9g)を添加した。24時間後、この混合物を2−プロパノール(160.7g)で所望の濃度に希釈した。結果として得られた混合物のpH値を濃硝酸(1.3g)を加えて1.0に低下させた。
【0099】
実施例2のように調製されたシリカコア−シェル型粒子(125mg)の5.7重量%懸濁液に2−プロパノール(125mg)を添加した。次いで、様々な量の予め低重合させたテトラエトキシシランを混合物に添加して、5分間振盪させた。結果として得られた配合物を、5cm×1cmの大きさの清浄化されたガラス板上に2500min−1の速度でスピンコートした。ARフィルムをガラス基材の両面に適用した。コーティングされたガラス板を450℃の温度で4時間硬化させた。
【0100】
この試料の反射率は1.3%であり、スチールウールテスト(荷重250g)による損傷は目視では認められなかった。コア−シェル型粒子と類似の寸法を有する中実シリカ粒子を用いて類似の方法で調製された試料の反射率は1.9%以上であった。
【0101】
[実施例6]
ネオクリルXK−30(4.41g、DSMネオレジンズより入手可能な42.5%アクリルコポリマー)を水(10.00g)で処理した。次いで、テトラメトキシシラン(10.00ml)を室温で2時間かけて加えた。添加が完了した後、混合物を室温で1.5時間撹拌し、次いで、エタノールで希釈した(108.4g)。
【0102】
これらの粒子の3.1重量%懸濁液を8cm×10cmの大きさの清浄化したガラス板に引き上げ速度4.2mm・s−1でディップコートした。ARフィルムをガラス基材の両面に適用した。コーティングされたガラス板を450℃の温度で4時間硬化させた。550nmにおける反射率は1未満であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア−シェル型ナノ粒子を含む光学コーティング組成物であって、前記ナノ粒子が、
(a)ポリマーを含むコア材料と、
(b)金属酸化物を含むシェル材料と
を含む、組成物。
【請求項2】
前記コア材料が、カチオン性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリマーが、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、これらのコポリマーおよび組合せから選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリマーが、ラテックス、ジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー、およびこれらの組合せから選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリマーが、カチオン性ポリマーから選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
金属酸化物が、シリカである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、バインダーを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、無機酸化物を含むバインダーを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ナノ粒子の潜在的な空隙率が5%〜90%である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物で少なくとも一部がコーティングされた基材。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物でコーティングされた基材を含む物品。
【請求項12】
コア−シェル型ナノ粒子を含むコーティング組成物であって、前記ナノ粒子が、
(a)ポリマーを含むコア材料と、
(b)金属酸化物を含むシェル材料と
を含み、前記ナノ粒子が、ロッドまたは芋虫状の形態を有する、組成物。
【請求項13】
コア−シェル型ナノ粒子を含む組成物を基材に適用するステップと、前記組成物を硬化させるステップとを含む、光学コーティングの形成方法であって、前記コア−シェル型ナノ粒子が、ポリマーを含むコア材料と、金属酸化物を含むシェル材料とを含む、方法。
【請求項14】
コア−シェル型ナノ粒子の、光学コーティングのための使用。
【請求項15】
コア−シェル型ナノ粒子の、薄膜コーティングのための使用。

【公表番号】特表2010−503033(P2010−503033A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527049(P2009−527049)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【国際出願番号】PCT/EP2007/007728
【国際公開番号】WO2008/028640
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】