説明

コイガ卵の孵化阻害剤

【課題】コイガ卵の孵化阻害効力を有する特に優れた組成物を提供すること。
【解決手段】トランスフルスリンとエンペントリンとが紙状体に保持されてなる、コイガ卵の孵化阻害剤。該孵化阻害剤は、衣料害虫に対する殺虫効力、忌避効力、食害防止効力は言うに及ばず、衣料害虫の卵に対する孵化阻害効力においても優れた効力を有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイガ卵の孵化阻害剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
トランスフルスリンが衣料害虫防除剤の有効成分として用い得ることは、特許文献1において知られている。また、現在エンペントリンを有効成分とする衣料害虫防除剤が市販されている。
【特許文献1】特開平6−9318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、衣料害虫の防除に際しては、従来より考えられてきた要素である衣料を加害する害虫(即ち、イガ、コイガ等の幼虫など)に対する殺虫効力、忌避効力、食害防止効力のみならず、衣料害虫卵の孵化阻害効力も重要である。本願は、コイガ卵の孵化阻害効力を有する特に優れた組成物を提供することを目的になされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、コイガ卵の孵化阻害の為の、トランスフルスリンとエンペントリンとが紙状体に保持されてなる組成物の使用、及びコイガ卵の孵化阻害剤を提供するものであり、衣料害虫に対する殺虫効力、忌避効力、食害防止効力は言うに及ばず、衣料害虫の卵に対する孵化阻害効力においても優れた効力を有するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の組成物は、衣料害虫卵の孵化阻害効力において優れた効力を発揮し、衣料害虫の防除に極めて有用なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明において、トランスフルスリンとエンペントリンとが保持される紙状体の厚さは0.1〜4mm、緊度は0.2〜0.7g/cm3 のものが好ましく、トランスフルスリンとエンペントリンとの混合割合は重量比で5:95〜95:5の範囲内にあることが好ましい。本発明において、紙状体は厚紙、濾紙等のパルプ紙のみならず、コットンリンター等のパルプ以外の植物繊維質のものであってもよい。
【0007】
本発明の孵化阻害剤は、例えば、紙状体にトランスフルスリンとエンペントリンとを通常、アセトン等のケトン、メタノール、エタノール等のアルコール、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル、酢酸エチル等のエステル、ヘキサン、ケロシン、石油ベンジン等の炭化水素などの溶媒に溶解し、塗布、含浸等により保持させて製造することができる。紙状体への保持量は、トランスフルスリンとエンペントリンとの合計量で通常、0.1〜100mg/cm3程度である。トランスフルスリンとエンペントリンとを紙状体に保持させるとき、溶媒に溶解させる際に乳化剤、分散剤、展着剤、安定剤等を添加してもよい。また、他の防虫剤、共力剤、防黴剤等を添加してもよい。
【0008】
本発明の孵化阻害剤は、コイガ等の Tineola属、イガ等の Tinea属、ジュウタンガ等のTrichophaga属、ヒメカツオブシムシ等のAttagenus属、ヒメマルカツオブシムシ等のAnthrenus属などの衣料害虫を防除するのに有効であり、本発明の孵化阻害剤を和ダンスの抽斗内に入れたり、洋ダンス内に適当な容器に入れて吊り下げる等の方法により用いられる。本発明の孵化阻害剤の使用量は、通常、空間1m3当たりトランスフルスリンとエンペントリンとの合計量で1〜10g程度である。
【0009】
トランスフルスリンとエンペントリンとの混合物は、蚊取り線香、電気蚊取りマット、エアゾール、油剤、乳剤等の通常の製剤形態において使用することもでき、相加的にその殺虫効力を発揮し得るが、本発明の紙状体に保持された孵化阻害剤としての使用形態においては、特に、後述の実施例に示されるように衣料害虫卵の孵化阻害効力において相乗的にその殺虫効力を発揮するものである。
【実施例】
【0010】
次に、本発明の孵化阻害剤の製造例及び試験例を実施例として示す。
実施例1
厚さ0.2mm、緊度0.5g/cm3の紙(濾紙)を34cm×58cmに切取り、トランスフルスリンとエンペントリンとの各々50mgをアセトンに溶解した溶液を滴下、含浸し、風乾して本発明の孵化阻害剤を得た。
【0011】
実施例2
厚さ2.5mm、緊度0.4g/cm3、大きさ2.2cm×3.5cmの紙(コットンリンター)に、トランスフルスリンとエンペントリンとの各々50mgをアセトンに溶解した溶液を滴下、含浸し、風乾して本発明の孵化阻害剤を得た。
【0012】
後述の実施例3(試験例)において比較対照のために用いられる孵化阻害剤の製造例を参考例1及び参考例2として示す。
参考例1
実施例1において、トランスフルスリン50mgとエンペントリン50mgとを用いるかわりにトランスフルスリン100mgを用いて比較用の孵化阻害剤を得た。
参考例2
実施例1において、トランスフルスリン50mgとエンペントリン50mgとを用いるかわりにエンペントリン100mgを用いて比較用の孵化阻害剤を得た。
【0013】
実施例3
43cm×73cm×16cmの衣装箱内に作業服(ポリエステル65%、綿35%製)8着を左右に各4着ずつ重ねて収納し、実施例1、参考例1又は参考例2で得た孵化阻害剤を下から2着目と3着目との間に挟むように設置した。
一定期間(4週、20週及び40週)経過後、コイガ卵(産卵後約1日)10個を2cm×2cmのウールモスリン布と共に直径3.5cmのプラスチックシャーレ内に入れたものをいくつか用意し、上述の衣装箱内で、孵化阻害剤と下から3着目の服の間、下から3着目と4着目の服の間、積み重ねた服の一番上の各々に設置した。
次いで、衣装箱に蓋をし、25℃の室内に1週間保存した後、卵の孵化状況を観察した。結果を表1に示す。尚、結果は6か所に設置した卵の観察結果を平均した値で示した。
表中の×は卵の孵化率が50%以上、△は30%以上50%未満、○は10%以上30%未満、◎は10%未満であったことを示す。
【0014】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイガ卵の孵化阻害の為の、トランスフルスリンとエンペントリンとが紙状体に保持されてなる組成物の使用。
【請求項2】
紙状体の厚さが0.1〜4mm、かつ緊度が0.2〜0.7g/cm3である請求項1記載の使用。
【請求項3】
紙状体に保持されるトランスフルスリンとエンペントリンとの重量比が5:95〜95:5の範囲内である請求項1又は請求項2記載の使用。
【請求項4】
トランスフルスリンとエンペントリンとが紙状体に保持されてなる、コイガ卵の孵化阻害剤。

【公開番号】特開2007−186526(P2007−186526A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91199(P2007−91199)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【分割の表示】特願平9−40593の分割
【原出願日】平成9年2月25日(1997.2.25)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】