説明

コイルカッティングツール及びその方法

【課題】補修及び保守管理のための取り外しを容易にするために巻線終端部のようなコイルを切断する工具及び方法を提供すること。
【解決手段】電動機械におけるコイルを切断するためのツール(10)及び方法が開示される。1つの実施形態において、ツール(10)は、遠位端上に刃先(15)を有するブレード(12)を含む。ブレード(12)は、近位端上で複動油圧シリンダ(14)に作動可能に接続される。ツール(10)は更に、複動油圧シリンダ(14)に結合されて且つこれから遠位方向で長手方向に延びる少なくとも1つのガイドアーム(16)を含み、該少なくとも1つのガイドアーム(16)は、ブレード(12)と並んで配置されてブレード(12)の経路に平行に延びる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的に、ACモータ、発電機、及び変圧器のコイルのような機械の巻線終端部などのコイルに関する。より具体的には、本発明は、補修及び保守管理のための取り外しを容易にするために巻線終端部のようなコイルを切断する工具及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電機及びモータのような電動機械は、ロータ及びステータを含む。ロータは、一般に、鍛鋼品から構成され、ロータの長さにわたって延在する幾つかのスロットを含む。ロータは、ロータ巻線と呼ばれる導体をロータのスロット内に配置することにより電気的に巻かれる。ステータは一般に、幾つかのスタックされた金属積層体から構成される。ステータはまた、ステータの長さにわたって延在するスロットを含み、ステータのスロット内にステータコイルとして知られる導体を配置することにより電気的に巻き付けられる。
【0003】
摩耗に応じて、ステータコイルは、ステータから取り外して定期的に交換しなければならない。このような取り外しは、往復式鋸を用いて巻線終端部を切断し、切断したコイル端部を取り外すことにより成し遂げられてきた。往復式鋸を用いた巻線終端部の切断は、環境を汚す塵埃を発生させ、環境、健康、及び安全上の懸念を生じさせる。加えて、コイルがアスベスト断熱材を用いて断熱されている場合には、往復式鋸の使用並びに結果として生じる塵埃が特に問題となる場合がある。また、これは、作業者の疲労を生じさせ、作業者の負傷の危険性を伴う。加えて、この方法は、巻線終端部を個別に切断しなければならないので、多くの時間がかかることが多い。この状況は、機械のダウンタイムが長くなり、従って、コストが増大する一因となる。巻線終端部はまた、剪刀動作のカッターを用いて切断されてきたが、これは、コイルが狭いスロット又はスペースに位置し、剪刀動作のカッターを作動させる余地が残っていない場合には実用的ではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ENERPAC Hydraulic Technology Worldwide, "Hydraulic Cutterheads," 1 page, 2011, retrieved from: http://www.enerpac.com/en-Us/products/specialty-tools/whc-and-whr-series-hydraulic-cutter-heads-0.
【発明の概要】
【0005】
本開示の第1の態様は、遠位端上に刃先を有するブレードと、ブレードの近位端に作動可能に接続された複動油圧シリンダと、複動油圧シリンダに接続されて且つこれから遠位方向で長手方向に延びる少なくとも1つのガイドアームと、を備え、少なくとも1つのガイドアームがブレードと並んで配置されてブレードの経路に平行に延びるツールを提供する。
【0006】
本開示の第2の態様は、コイルのペアを切断する方法を提供する。本方法は、遠位端上に刃先を有するブレードと、該ブレードの近位端に作動可能に接続された複動油圧シリンダと、複動油圧シリンダに接続されて且つこれから遠位方向で長手方向に延びるガイドアームのペアとを含むツールを提供するステップを含む。少なくとも1つのガイドアームがブレードと並んで配置されて且つブレードの経路に平行に延びる。ツールは、ガイドアームのペア間にコイルのペアが捕捉されるように配置され、ピン部材がガイドアームのペア内で各アームの遠位端において孔を貫通して挿入され、コイルのペアがピン部材とブレードとの間に捕捉される。本方法は更に、複動油圧シリンダを係合するステップと、ブレードを格納するステップと、ピン部材を取り外すステップとを含む。
【0007】
本発明のこれらの及びその他の態様、利点並びに顕著な特徴は、図面全体を通して同じ参照符号が同様な部品を指している添付図面と関連させて本発明の実施形態を開示した以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の1つの実施形態によるツールを示す図。
【図2】本発明の1つの実施形態による方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の少なくとも1つの実施形態を電気機械に関連した用途に関して以下で説明している。本発明の実施形態は、ACモータの形態の電気機械に関して説明しているが、本発明の教示は、限定ではないが、発電機、変圧器、及びコイルを有する他の機械を含む、他の電気機械にも同様に適用可能である点は理解される。更に、本発明の少なくとも1つの実施形態は、公称サイズに関し且つ公称寸法のセットを含んで以下で説明されている。しかしながら、本発明の実施形態は、あらゆる好適なモータ、発電機、及び/又は他の機械にも同様に適用できる点は当業者には理解されるはずである。更に、本発明は、種々の規模の公称サイズ及び/又は公称寸法にも同様に適用できる点は当業者には理解されるはずである。
【0010】
上述のように、本発明の態様は、電動機械又は電気機械の巻線終端部のようなコイルを切断するツール及び方法を提供する。
【0011】
図1に示すように、ツール10は、その遠位端上に鋭い刃先15を有するブレード12を含む。ブレード12の近位端は、複動油圧シリンダ14に作動可能に接続されている。1つの実施形態において、複動油圧シリンダは、約15.24cm(約6インチ)のストローク長を有することができ、約20.68mPa(約3,000psi)の圧力を出力することができる。少なくとも1つのガイドアーム16は、ブレード12の経路と並んで平行に複動油圧シリンダ14から遠位方向で長手方向に延びる。1つの実施形態において、ツール10は、ブレード12の両側部に配置された2つのガイドアーム16、18を含むことができる。第1のガイドアーム16及び第2のガイドアーム18は各々、ツール10の作動中にブレード12を案内するために内面上にそれぞれ第1のトラック17及び第2のトラック19を含む。
【0012】
ツール10の作動中、ブレード12は、裁断機と同様に、目的とする切断位置に対して垂直にブレード12を保持しながら、ガイドアーム16、18において第1及び第2のトラック17、19に沿って滑動する。第1及び第2のガイドアーム16、18は各々、遠位端を貫通する孔を有することができ、この孔にピン部材20を挿入することができる。1つの実施形態において、ピン部材20は、別個に形成される要素であり、他の実施形態では、ピン部材20は、第1及び第2のガイドアーム16、18の一方又は両方と一体化することができる。ピン部材20は、第1及び第2のガイドアーム16、18の遠位端と互いに取り外し可能に接続される。
【0013】
ツール10は更に、第1及び第2のガイドアーム16、18の各々に取り付けられる安定化プレート21を含むことができる。安定化プレート21は、第1及び第2のガイドアーム16、18間に所望のスペースを維持し、ブレード12がガイドアーム16、18間で作動できるようにし、更に、コイル22、24をガイドアーム16、18間に固定できるようにするのに役立つ。
【0014】
第1及び第2のガイドアーム16、18は、互いに間隔を置いて配置され、コイル22、24のペアが第1及び第2のガイドアーム16、18の間に嵌まり、第1のコイル22がペアにされた第2のコイル24の遠位方向に配置されるようになる。コイル22、24は、1つの実施形態において、巻線終端部とすることができる。典型的には、コイル22、24は、銅又は他の導電性材料で作ることができる。種々の実施形態において、コイル22、24は、断面で実質的に矩形とすることができ、スタックされ且つ絶縁することができる。1つの実施形態において、ペアにされた各コイル22、24は、厚みが約1.27cm(約0.5インチ)と約3.5cm(約1.5インチ)間とすることができる。コイル22、24のペアは、全体として全長が約11.4cm(約4.5インチ)とすることができ、従って、安定化プレート21の遠位の縁部とピン部材20との間の第1及び第2のガイドアーム16、18に沿った距離は少なくとも約11.4cmになるはずである。
【0015】
ブレード12は、シャフト26により複動油圧シリンダ14に結合することができる。コネクタ部材28は更に、複動油圧シリンダ14とブレード12との間に配置することができる。コネクタ部材28は、実質的に環状形状とすることができ、シャフト26が貫通して通る孔を有する。第1及び第2のガイドアーム16、18は更に、例えば、ボルト又は他の締結具によりコネクタ部材28に取り付けることができる。1つの実施形態において、コネクタ部材28が近位端上にネジ留めされ、遠位端上には複動油圧シリンダ14がネジ留めされる。従って、コネクタ部材28及び複動油圧シリンダ14は、互いに螺着結合され、すなわち、互いにネジ止めすることができる。
【0016】
ブレード12並びに第1及び第2のガイドアーム16、18は、鋼材で作ることができる。1つの実施形態において、ブレード12は、S7工具鋼で作ることができる。ツール10の作動は、約20.65cm2(約3.2in2)の面積にわたり約20.68mPa(約3,000psi)の力を提供することができる。
【0017】
また、コイル22、24のペアを切断する方法が提供される。図2に移り、ステップS1において、上述のようにツール10が提供される。ツール10は、遠位端上に鋭い刃先14を有するブレード12と、ブレード12の近位端に作動可能に接続された複動油圧シリンダ14とを含む。少なくとも第1のガイドアーム16、或いは、図1に示す実施形態と同様にして第1及び第2のガイドアーム16、18のペアが複動油圧シリンダ14に接続されており、そこから遠位方向で長手方向に延びる。第1のガイドアーム16、及び存在する場合には第2のガイドアーム18は、ブレード12に並んで配置され、ブレード12の経路に平行に延びる。1つの実施形態において、ブレード12並びに第1及び第2のガイドアーム16、18は、鋼材で作ることができる。
【0018】
ステップS2において、ツール10は、コイル22、24のペアが第1及び第2のガイドアーム16、18のペアの間で捕捉されるようにコイル22、24の周りに配置することができる。コイル22、24は、コイル22がコイル24の遠位に位置するように配置される。
【0019】
ステップS3において、ピン部材20は、第1及び第2のガイドアーム16、18において孔30、32を通じてコイル22、24の遠位に挿入することができる。従って、ピン部材20は、ガイドアーム16、18、ピン部材20、及び安定化プレート21/ブレード12によって固定されるコイル22、24をツール10内に捕捉する。コイル22、24のペアの各々は、厚みが約1.27cm〜約3.5cmの間とすることができ、コイル22、24のペアは、全体として全長が約11.4cmとすることができる。
【0020】
ステップS4において、ツール10は、複動油圧シリンダ14を係合することにより作動される。ブレード12が単一のストロークで第1のコイル24及び次いで第2のコイル22を剪断して切断を実施すると、ピン部材20が反動荷重を受ける。1つの実施形態において、このストロークは、コイル22、24の両方を切断するのに約21秒を必要とする可能性がある。複動油圧シリンダ14によって提供される力は、約20.65cm2(約3.2in2)の面積にわたり約20.68mPa(約3,000psi)とすることができる。
【0021】
切断が実施されると、ステップS5においてブレード12が格納され、ステップS6において、ピン部材20が第1及び第2のガイドアーム16、18から取り外される。1つの実施形態において、本方法は、約90秒の間に実施することができる。次に、S7において、可搬式及び携帯式とすることができるツール10をコイル22、24から取り外し、コイルの後続のペア又は単一のコイルで使用できるように準備される。
【0022】
本明細書で使用される用語「第1の」、「第2の」及び同様のものは、どのような順序、数量、又は重要度を意味するものではなく、むしろ、1つの要素を別の要素と区別するために用いており、本明細書において数詞のない表現は、数量の限定を意味するものではなく、むしろ参照する要素の少なくとも1つが存在することを意味する。数量に関連して使用される修飾語「およそ」は表示値を含めて、文脈によって決まる意味を有する(例えば、特定の量の測定値に付随するある程度の誤差を含む)。本明細書で使用する場合における「1つ又は複数の」という前置表現は、この表現が前置する用語のものの単数及び複数の両方を含み、従ってその用語のものの1つ又はそれ以上を含む(例えば、1つ又は複数の金属という表現は、1つ又はそれ以上の金属を含む)ことを意図している。本明細書に開示した範囲は、包括的であり且つ独立して組合せ可能である(例えば、「最大約25mmまでの又はより具体的には約5mm〜約20mm」の範囲というのは、「約5mm〜約25mm」の範囲の端点及び全ての中間値などを含む)。
【0023】
本明細書では様々な実施形態について説明してきたが、これらの実施形態における要素の様々な組合せ、変形又は改良を当業者が行なうことができ、これらもまた本発明の技術的範囲内にあることは、本明細書から理解されるであろう。加えて、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況又は物的事項を本発明の教示に適合するように多くの修正を行うことができる。従って、本発明は、本発明を実施するために企図される最良の形態として開示した特定の実施形態に限定されるものではなく、また本発明は、添付の特許請求の範囲の技術的範囲内に属する全ての実施形態を包含することを意図している。
【符号の説明】
【0024】
10:ツール
12:ブレード
14:複動油圧シリンダ
15:刃先
16:第1のガイドアーム
17:第1のトラック
18:第2のガイドアーム
19:第2のトラック
20:ピン部材
21:安定化プレート
22:第1のコイル
24:第2のコイル
26:シャフト
28:コネクタ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位端上に刃先(15)を有するブレード(12)と、
前記ブレード(12)の近位端に作動可能に接続された複動油圧シリンダ(14)と、
前記複動油圧シリンダ(14)に接続されて且つこれから遠位方向で長手方向に延びる少なくとも1つのガイドアーム(16)と、
を備え、前記少なくとも1つのガイドアーム(16)が前記ブレード(12)と並んで配置されて前記ブレード(12)の経路に平行に延びる、ツール(10)。
【請求項2】
前記少なくとも1つのガイドアーム(16)が更に、2つのガイドアーム(16、18)を含み、該2つのガイドアーム(16、18)は、ブレード(12)の対向する側部上に配置される、請求項1に記載のツール(10)。
【請求項3】
前記2つのガイドアーム(16、18)の各々の遠位端を共に取り外し可能に接続するピン部材(20)を更に備える、請求項2に記載のツール(10)。
【請求項4】
前記2つのガイドアーム(16、18)間の距離を維持するため前記2つのガイドアーム(16、18)の各々に取り付けられる安定化プレート(21)を更に備える、請求項2に記載のツール(10)。
【請求項5】
前記2つのガイドアーム(16、18)間の距離がコイル(22、24)のペアを収容し、該コイル(22、24)のペアは、第1のコイル(22)が第2のコイル(24)の遠位にあるように配置され、且つ前記第1及び第2のガイドアーム(16、18)間に配置される、請求項4に記載のツール(10)。
【請求項6】
前記、第1のコイル(22)及び第2のコイル(24)の各々が、厚みが約1.27cmと約3.5cmの間である、請求項5に記載のツール(10)。
【請求項7】
前記複動油圧シリンダ(14)に前記ブレード(12)を結合するシャフト(26)を更に備える、請求項1に記載のツール(10)。
【請求項8】
前記複動油圧シリンダ(14)と前記ブレード(12)との間に配置されるコネクタ部材(28)を更に備え、前記コネクタ部材(28)が、前記シャフト(26)が貫通して通る孔を含み、前記ガイドアーム(16、18)のペアが前記コネクタ部材(28)に取り付けられる、請求項7に記載のツール(10)。
【請求項9】
前記コネクタ部材(28)が近位端上にネジ留めされ、前記複動油圧シリンダ(14)が遠位端上にネジ留めされ、前記コネクタ部材(28)及び前記複動油圧シリンダ(14)が螺着接続される、請求項8に記載のツール(10)。
【請求項10】
前記ピン部材(20)が、前記2つの長手方向に延びるガイドアーム(16、18)の各々における孔に取り外し可能に挿入される、請求項3に記載のツール(10)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−218145(P2012−218145A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−75352(P2012−75352)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】