コイルドコイル構造を有するリポペプチドのヘリックスバンドルおよび合成ウイルス様粒子
本発明は、コイルドコイルドメインを含むペプチド鎖と、該ペプチド鎖に共有結合で連結された、長いアルキルまたはアルケニル鎖を含む脂質部分と、ペプチド鎖に任意選択で連結された抗原とにより構成されるリポペプチドビルディングブロック;ならびに凝集によって形成されたリポペプチドヘリックスバンドルおよび合成ウイルス様粒子に関する。これらのバンドルおよび粒子の、ナノメートル規模の大きさおよび形状、水性の生理学的条件下における安定性、化学組成、B細胞エピトープおよびT細胞エピトープを組込む実現性、ならびに化学合成による生産は、該バンドルおよび粒子をワクチン送達手段として非常に適したものにしている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝集してリポペプチドヘリックスバンドルおよび合成ウイルス様粒子となる、コイルドコイルドメインと任意選択で抗原とを含むリポペプチドビルディングブロックに関する。抗原を担持する合成ウイルス様粒子は、ワクチンとして有用である。
【背景技術】
【0002】
単離された小さなペプチドおよびタンパク質が通常はごく低い免疫抗原性しか持たないことは良く知られている。有名なフロイントの完全アジュバントのような有毒なアジュバントが、動物体内でのサブユニットワクチンに対する免疫応答を刺激するために広く使用されているが、多くアジュバントはその有毒な副作用のためヒトで使用することができない。理想的状態は、外部アジュバントの使用を完全に回避することであろうが、これでは一般に不十分な免疫応答しか得られない。しかしながら、(ヒトの)免疫系は、例えばウイルス表面のような表面の全域に反復的な抗原構造を提示する病原体に対して強健な免疫応答を生じる[非特許文献1]。
【0003】
リポソームは、薬物、核酸、および生物医薬品を含む医薬品の担体として過去30年にわたって大きな注目を集めてきており、また抗原、核酸および薬物の送達媒体としてのリポソームの適用はよく知られている。特定の受容体を標的とするために、リポソームの表面にペプチドまたはタンパク質を結合させることでリポソームの特性を変化させることができ、これはプロテオリポソームとして知られる系を作り出す。ペプチドおよびタンパク質は、免疫応答を生じさせる目的でもリポソームに組み込まれてきた[非特許文献2、3]。ペプチドを脂質とコンジュゲートさせると、脂質が二分子膜に固定されてペプチドがリポソーム内にはめ込まれ易くなり、その結果リポソームの表面でペプチドが抗体によって認識されるようになる。一般的な送達媒体としてのリポソームの欠点の1つは、血中からの急速な消失および細網内皮系の細胞による捕捉が原因で、in vivoで不安定なことである[非特許文献4]。
【0004】
ワクチンの設計において、ファージを含む天然もしくは遺伝子組換え型のウイルスおよびキメラ体、または天然もしくは遺伝子組換え型のウイルス構成成分、例えばカプシドタンパク質、表面タンパク質および糖タンパク質、もしくはこれらのフラグメントから構成されるウイルス様粒子を使用することの潜在的な利点は、以前から認識されてきた[非特許文献5〜7]。そのようなウイルス様粒子の生産には、天然のウイルスが自己集合するプロセスが利用される。多くのウイルスの自己集合性の天然のコア構造を利用し、組換えDNA技術を用いてこれらの粒子の表面上に1つ以上の抗原を提示することができる。これらのウイルス様粒子はサイズが大きく、構造が複雑であるため、化学合成によって入手することはできない。特許文献1、2は「合成ウイルス様粒子」に言及しているが、同文献で言及される粒子は、組換えDNA法および細胞を用いる方法を使用して作製された、天然もしくは遺伝子組換え型のウイルス粒子またはその構成成分に基づくものであり、化学合成によって生産された材料ではない。特許文献3には、組換え型シンビスウイルスを用いて例証された、抗原が規則正しい反復的な方法で付着された天然または非天然起源のコア粒子の使用について記載されている。
【0005】
ナノテクノロジー上の適用のために、自己集合性のペプチドおよびタンパク質を設計するための相当な努力もなされてきた。ナノスケールの形態は、設計された両親媒性ペプチドをベースとして生産されており[非特許文献8]、例えばβストランド、βシートおよびαへリックスの二次構造がある[非特許文献9、10]。ナノ構造を有する複合材料を調製するためのリポペプチドの使用の別の例は、スタップ(Stupp)および共同研究者の研究に見出される[非特許文献11]。両親媒性ペプチドは、自己集合してナノファイバーとなることが早くに示されている[非特許文献12]。
【0006】
合成抗原を基にした有効なワクチンの設計における主な問題のうちの1つは、免疫原性が不十分なことであった。比較的小さな合成分子は、免疫原性が低い傾向にある。この不十分な免疫原性を克服する1つの方法は、破傷風菌毒素またはキーホールリンペットヘモシニアン(KLH)のようなタンパク質などの担体に合成抗原を共有結合でコンジュゲートすることである[非特許文献13]。しかしながらこのコンジュゲートは、強い免疫応答を誘発するためにはなおアジュバント(例えばアラムまたはフロイントアジュバント)と一緒に動物に投与しなければならない。B細胞およびT細胞のエピトープを組み込んだ多重エピトープ構築物を生産するための、いくつかの他の方法が報告されている([非特許文献14]に総説がある)。
【0007】
合成の細菌リポペプチド・アナログは、そのアジュバント効果について、またペプチド抗原の担体としてのいずれに関してもワクチン研究において広く注目されてきた[非特許文献15]。脂質およびリポペプチドは、別の方法で弱いペプチド免疫原のアジュバントとして作用しうることが知られている[非特許文献16、17]。周知のアジュバント効果を備えた脂質がペプチドに連結されて、自身がアジュバントとして作用するワクチン候補が生成される、多くのリポペプチド構築物が報告されている。特によく研究されているのは、トリパルミトイル‐S‐グリセリルシステイン(N‐パルミトイル‐S‐(2,3‐ビス‐(O‐パルミトイルオキシ)‐プロピル)‐システイニル‐またはPam3Cys)、およびジパルミトイル‐S‐グリセリルシステイン(2,3‐ビス‐(O‐パルミトイルオキシ)‐プロピル)‐システイニル‐またはPam2Cys)である[非特許文献15]。これらの脂質部分は、グラム陰性菌の内膜および外膜のリポタンパク質成分中に見られる。N末端に上記または関連するジアシル化もしくはトリアシル化されたS‐グリセリルシステイン残基を担持する合成リポペプチドは、Toll様受容体の特異的リガンドであることが示されている[非特許文献18、19]。さらに、ペプチド抗原をPam3CysまたはPam2Cysとコンジュゲートさせることは、自身がアジュバントとして作用する合成ワクチン候補の設計に適用されてきた[非特許文献20〜22]。特許文献4には、ペプチド部分がトリプルヘリックス構造を引き起こすことのできるコラーゲン様の配列をとりうるリポペプチドの、薬物ターゲティングを目的とした使用について記載されている。
【0008】
コイルドコイル構造の設計について最近いくつかの総説が出されており[非特許文献23]、Advances in Protein Chemistryにはコイルドコイル、コラーゲンおよびエラストマーに費やされた巻もある[非特許文献24]。多くの天然のウイルスおよび微生物が、自身の表面タンパク質(例えばインフルエンザウイルスのヘマグルチニン、ヒト免疫不全ウイルス‐1(HIV‐1)のgp41、または呼吸器合胞体ウイルス(RSV)のF糖タンパク質)の内部にコイルドコイル構造のペプチド配列を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際特許出願公開第98/014564号パンフレット
【特許文献2】国際特許出願公開第00/035479号パンフレット
【特許文献3】国際特許出願公開第00/32227号パンフレット
【特許文献4】国際特許出願公開第98/07752号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】ツィンカーナーゲル、R.(Zinkernagel, R.)、Science (1996), 171, 173-178
【非特許文献2】レッサーマン、L.(Leserman, L.)、J Liposome Res (2004), 14, 175-189
【非特許文献3】フリッシュ、B.(Frisch, B.)ら、Methods Enzymol. (2003), 373, 51-73
【非特許文献4】トルチリン、V.P.(Torchilin, V. P.)、Nat. Rev. Drug Discov. (2005), 4, 145-160
【非特許文献5】フェルネローバ、D.(Felnerova, D.)ら、Curr Opin Biotechnol (2004), 15, 518-529
【非特許文献6】ガルセア、R.L.(Garcea, R. L.)ら、Curr Opin Biotechnol (2004), 15, 513-517
【非特許文献7】ドアン、L.X.(Doan, L. X.)ら、Rev Med Virol (2005), 15, 75-88
【非特許文献8】レーヴィク、D.W.P.M.(Loewik, D. W. P. M.)ら、Chem. Soc. Rev. (2004), 33, 234-245
【非特許文献9】ラジャゴパル、K.(Rajagopal, K.)ら、Curr. Opin. Struct. Biol. (2004), 14, 480-486
【非特許文献10】チュー、R.S.(Tu, R. S.)ら、Adv. Drug Deliv. Revs. (2004), 56, 1537-1563
【非特許文献11】ベハンナ、H.A.(Behanna, H. A.)ら、J. Am. Chem. Soc. (2005), 127, 1193-1200
【非特許文献12】ハルトゲリンク、J.D.(Hartgerink, J. D.)ら、Science (2001), 294, 1684-1688
【非特許文献13】ヘリングトン、D.A.(Herrington, D. A.)ら、Nature (1987), 328, 257-259
【非特許文献14】ジャクソン、D.C.(Jackson, D. C.)ら、Vaccine (1999), 18, 355-361
【非特許文献15】ギールメッティ、M.(Ghielmetti, M.)ら、Immunobiology (2005), 210, 211-215
【非特許文献16】ユング、G.(Jung, G.)ら、Angew. Chem. Int. Ed. (1985), 10, 872
【非特許文献17】マルティノン、F.(Martinon, F.)ら、J. Immunol. (1992), 149, 3416
【非特許文献18】ロイター、F.(Reutter, F.)ら、J. Pept. Res. (2005), 65, 375-383
【非特許文献19】ビューウィット‐ベックマン、U.(Buwitt-Beckmann, U.)ら、Eur. J. Immunol. (2005), 35, 1-8
【非特許文献20】ベスラー、W.G.(Bessler, W. G.)ら、Int. J. Immunopharmac. (1998), 19, 547-550
【非特許文献21】ロライト、M.(Loleit, M.)ら、Biol. Chem. Hoppe-Seyler (1990), 371, 967-975
【非特許文献22】ミュラー、C.P.(Muller, C. P.)ら、Clin. Exp. Immunol. (1989), 78, 499-504
【非特許文献23】ウールフソン、D.N.(Woolfson, D. N.)、Adv. Prot. Chem. (2005), 70, 79-112
【非特許文献24】パリー、D.A.D.(Parry, D. A. D.)ら、Advances in Protein Chemistry (2005), 70
【発明の概要】
【0011】
本発明は、コイルドコイルドメインを含むペプチド鎖(PC)と、該ペプチド鎖に共有結合で連結された、2個または3個の長鎖ヒドロカルビルを含む脂質部分(LM)と、ペプチド鎖に任意選択で連結された抗原(A)とで構成されるリポペプチドビルディングブロック(LBB);2、3、4または5個のリポペプチドビルディングブロック(LBB)を含み、ビルディングブロックの数はリポペプチドビルディングブロック(LBB)のペプチド鎖のコイルドコイルドメインの特性によって決まる、リポペプチドヘリックスバンドル(HLB);ならびに、多数のリポペプチドヘリックスバンドル(HLB)を含み、かつ脂質コアとペプチドの外側表面とを備えた球状または回転楕円体状の構造を有する合成ウイルス様粒子(SVLP)に関する。
【0012】
本発明はさらに、リポペプチドビルディングブロック(LBB)、リポペプチドヘリックスバンドル(HLB)および合成ウイルス様粒子(SVLP)の生産方法;ワクチンの調製における、抗原を担持するリポペプチドビルディングブロック(LBB)、リポペプチドヘリックスバンドル(HLB)および合成ウイルス様粒子(SVLP)の使用;ならびにそのようなワクチンを使用するワクチン接種の方法に関する。同様に本発明は、抗原を担持する合成ウイルス様粒子を含む医薬製剤に関する。
【0013】
本発明の様々な組成物は、感染症、アレルギー、がん、薬物依存、中毒、を含む疾患、障害または状態の予防または治療のための免疫応答を誘発するのに有用であり、一般に抗原特異的な免疫応答を効率的に誘発するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】SVLPの構成成分および集合体を示す図。PCはコイルドコイルドメインを含むペプチド鎖;LMは脂質部分;Aは抗原;LBBはリポペプチドビルディングブロック;HLBはリポペプチドヘリックスバンドル(三量体が示されている);SVLPは合成ウイルス様粒子(抗原を備えたもの)である。
【図2】コイルドコイルペプチド中に存在するヘプタドモチーフを示す図。A:ヘプタド。a、b、c、d、e、f、g:αアミノ酸残基(全(L)または全(D))。aおよびd(矢印で示す)は疎水性のαアミノ酸である。3〜8個のヘプタドモチーフが典型的なコイルドコイルペプチドに相当する。B:疎水性残基aおよびdの相互作用を示している三量体への集合体化。
【図3】リポペプチド4凝集物の代表的な沈降平衡プロファイルを示す図。下側パネル:A231は231nmにおける吸光度である。データポイントは5000、7500および10000rpmに関するものである。リポペプチド濃度は、0.09M塩化ナトリウムを含む0.01Mリン酸ナトリウムpH7.4(PBS)中で24μMとした。上側パネル:ΔODは光学密度の差である。24μMおよび48μM、ならびに3通りのロータ速度における18組のデータセットについてのグローバルフィットに対する残差を示す。
【図4】様々な濃度におけるリポペプチド4凝集物の沈降速度実験を示す図。c(s)は見かけの沈降係数の分布。全ての(10、30、50、75、100および150μMについての)分布が9.5〜10Sの間に集中した。
【図5】SVLPのコンピュータモデルを示す図。リポタンパク質4から形成されるSVLPは、24個のサブユニット(HLB)から構成された。各々のHLB(右に示す)は3コピーのリポペプチド4で形成されて三量体コイルドコイルを生じている。
【図6】リポペプチド4およびペプチド5の凝集物のCDスペクトルを示す図。λは波長(nm);Θは平均残基楕円率(deg.cm2/dmol)である。pH7.4のPBS中でリポペプチド4は20μM、ペプチド5は50μMである。
【図7】リポペプチド4凝集物のピレン‐3‐カルボキシアルデヒド(PYCHO)発光スペクトルを示す図。λは波長(nm);I437は437nmにおける蛍光強度(任意の単位)である。様々な曲線は、バッファー(PBS)ならびに濃度が80、100、200、400、600、800および1000nMのリポペプチド4に相当する。
【図8】リポペプチド4凝集物の臨界ミセル濃度を示す図。臨界ミセル濃度(CMC)を決定するために蛍光データを分析した。データをリポペプチド4の濃度(nM)に対するI437/I466としてプロットする。挿入図は、CMCが理想的条件下でどのように決定されるかを示している。
【図9】リポペプチド4凝集物に関するDLS計測値の数量重み付きNICOMP分布解析を示す図。pH7.4、20℃のトリスバッファー中のリポペプチド4の1.1mM溶液。形成された粒子の平均径はおよそ17nmであった。
【図10】リポペプチド4凝集物の陰性染色電子顕微鏡写真。トリスバッファー(pH7.4)中でリポペプチド4によって形成されたSVLP。左側のスケールバーは20nm;右側のスケールバーは50nm(拡大)である。15〜20nmの粒子の星状の形状および試料の高い均質性を、はっきりと見ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は、
・抗原(A)、
・抗原(A)に任意選択で連結された3つまたは好ましくは2つの長鎖ヒドロカルビルを含む脂質部分(LM)、
・脂質部分(LM)に共有結合で連結されたコイルドコイルドメインを含むペプチド鎖(PC)
からなるリポペプチドビルディングブロック(LBB)を含む。
【0016】
ペプチド鎖(PC)はコイルドコイルドメインを含む。そのようなコイルドコイルドメインは、会合して規定のヘリックスバンドル、例えば、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体または七量体のバンドルとなる。ペプチドは12〜120個のアミノ酸残基、好ましくは21〜80個のアミノ酸残基を含みうる。コイルドコイルドメインは複数のタンデムリピートモチーフを含み、該モチーフは脂質を含まない単独のペプチドとして、自己集合して平行なコイルドコイルのヘリックスバンドルとなる特性を有する。ペプチド鎖(PC)は、多量体化して規定のオリゴマー化状態(例えば二量体、三量体、四量体、五量体、六量体または七量体、特に二量体、三量体、四量体または五量体)の平行なコイルドコイルのヘリックスバンドルを形成するはずである。好ましいペプチド配列は、ヒトのワクチン接種に適用される場合は自己免疫異常のリスクを回避するためヒト以外の配列である。
【0017】
ペプチド鎖はさらに、1つ以上のヘルパーT細胞エピトープ、およびリポペプチドビルディングブロック(LBB)の水中溶解性を促進する極性残基の列の少なくともいずれか一方を含むアミノ酸配列モチーフを含む。
【0018】
脂質部分(LM)は、2個または3個、好ましくは2個の長鎖ヒドロカルビルを備えた脂質アンカーと、これらヒドロカルビル鎖を合わせてペプチド鎖(PC)に直接またはリンカーを介して接続する構造とを含む。好ましい脂質部分は、2個または3個、好ましくは2個の長いヒドロカルビル鎖を含むリン脂質である。
【0019】
「長鎖ヒドロカルビル」とは、炭素原子が少なくとも7個の直鎖アルキルまたはアルケニル基、例えば8〜50個のC原子、好ましくは8〜25個のC原子で構成される直鎖アルキルまたはアルケニルを意味する。アルケニルは、天然の脂肪酸および脂肪族アルコールにおいて通常見られるように、鎖の中に各々がEまたはZの幾何学的配置を有する好ましくは1、2または3個の二重結合を有する。「長鎖ヒドロカルビル」の定義にはさらに、分岐鎖アルキルまたはアルケニル、例えば、2‐エチルヘキシルの場合のように鎖の端から数えて2番目または3番目の炭素原子にメチルまたはエチル置換基を有しているアルキルも含まれる。
【0020】
本発明による特定の好ましい脂質部分は、式Z1〜Z8すなわち
【0021】
【化1】
(上記式中、R1およびR2は長鎖ヒドロカルビルまたは長鎖ヒドロカルビル‐C=Oであり、YはHまたはCOOHである)、
【0022】
【化2】
(上記式中、R1、R2およびR3は長鎖ヒドロカルビルであるか、またはR1およびR2が長鎖ヒドロカルビル‐C=OでR3がHもしくはアセチルである)、
【0023】
【化3】
(上記式中、R1およびR2は長鎖ヒドロカルビル‐C=Oであり、nは1、2、3または4である)、
【0024】
【化4】
(上記式中、R1およびR2は長鎖ヒドロカルビルであり、XはOまたはNHであり、nは1、2、3または4である)、または
【0025】
【化5】
(上記式中、R1およびR2は長鎖ヒドロカルビルである)
の脂質部分である。
【0026】
脂質部分は、脂肪酸において見られるように、例えばZ1〜Z8のように、少なくとも2つの長鎖ヒドロカルビルを含む。1つの好ましい脂質部分は、様々な種類の、例えば式Z1またはZ2のリン脂質であって、エステル結合またはエーテル結合した長いアルキルまたはアルケニル鎖を有するもの、例えば1,2‐ジパルミトイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホエタノールアミンのエナンチオマー、または1,3‐ジパルミトイル‐グリセロ‐2‐ホスホエタノールアミンのようなアキラル性アナログのいずれかである。好ましい脂質部分は、トリ‐もしくはジ‐パルミトイル‐S‐グルセリルシステイニル残基(Z3型)、またはZ4〜Z8型の脂質部分である。最も好ましいのは実施例に記載の脂質部分である。
【0027】
ペプチド鎖(PC)は、一方の末端すなわちN末端もしくはC末端、好ましくはN末端において、または該末端の近傍で、脂質部分(LM)に共有結合で連結される。脂質部分は、直接結合されてもよいし(1)、リンカーを介して結合されてもよく(2または3)、式中のLはリンカーを意味し、XはOまたはNHである。
【0028】
【化6】
当業者には明白なことであるが、種々様々の適切なリンカーおよびカップリング方策があり、該リンカーおよびカップリング方策には、限定するものではないが、ジカルボン酸誘導体ベースのリンカー、1つもしくは複数のエチレングリコール単位、アミノ酸残基(α‐、β‐、γ‐、δ‐アミノ酸など)、もしくは糖(炭水化物)単位を含むか、または複素環を含むリンカーが挙げられる。検討した特定のリンカーは、リンカーL1〜L10であり、L1〜L10においてnは1〜20、mは1〜20であり、接続官能基C=OまたはX(XはOまたはNH)とともに示されている:
【0029】
【化7】
最も好ましいのは実施例に記載されるリンカーである。
【0030】
上記接続において「一方の末端の近傍で」とは、脂質部分が、ペプチドのN末端またはC末端からそれぞれ数えて1番目、2番目、3番目、4番目または5番目のアミノ酸に結合されることを意味するものとする。脂質部分は、ペプチド構造の骨格に取り付けられてもよいし、末端の近傍の上記アミノ酸のうちの1つの側鎖に取り付けられてもよい。
【0031】
本発明において定義される「抗原」は、抗体が結合することができる分子である。抗原は、ペプチド、タンパク質、または動物において抗原特異的な体液性免疫応答を誘発するために使用される1つ以上のB細胞エピトープを有するエピトープミメティックを含みうる。あるいは、抗原はハプテンまたは炭水化物を含む場合もある。適切なペプチド抗原およびタンパク質抗原は最大150個のアミノ酸を含み、糖ペプチドおよび糖タンパク質を含む。ペプチドおよびタンパク質の配列は、例えば1種類以上の感染性病原体に対する、免疫応答を誘発するように選択することができる。そのような抗原は当分野において良く知られている。エピトープミメティックは、天然のペプチドエピトープまたは炭水化物エピトープを模倣する分子であり、1つ以上の非天然アミノ酸(例えばD‐アミノ酸、β‐アミノ酸、γ‐アミノ酸、δ‐アミノ酸、またはε‐アミノ酸)およびエピトープ模倣体の分野で周知のその他の置換体を含むペプチド化合物が含まれる。好ましいのは立体配座的に制限されたペプチドミメティックで、タンパク質様の立体配座に固定されたものである。ハプテンは、分子量3000未満の有機化合物で、それ自体は体液性免疫応答を誘発しないが、担体に付着すると免疫応答を誘発するものである。典型的なハプテンには、薬物、ホルモン、毒素および炭水化物が挙げられる。
【0032】
好ましいのは実施例に記載の抗原である。
抗原は、ペプチド鎖の他方の末端に、または該末端の近傍に共有結合により付着されるが、ここで「他方の」とは、ペプチドの、脂質部分を担持していない側の末端を意味する。脂質部分がペプチドのN末端またはN末端近傍に接続される場合、抗原はC末端またはC末端近傍に結合される。脂質部分がペプチドのC末端またはC末端近傍に接続される場合、抗原はN末端またはN末端近傍に結合される。
【0033】
1つ以上の抗原を、ペプチド鎖(PC)のコイルドコイルドメインに、例えばコイルドコイルペプチド中のアミノ酸(例えばリジンもしくはシステイン)の側鎖のうち1つ以上を介して、またはペプチド鎖の末端を介して、コンジュゲートさせることができる。抗原は、ペプチド鎖の側鎖のうちの1つまたはペプチド鎖の末端の官能基にコンジュゲートするのに適した官能基を担持している。好ましいのは、抗原特異的な抗体に基づく免疫応答を誘発するための、B細胞受容体により認識される抗原、またはハプテンである。
【0034】
「コイルドコイルドメイン」は、自発的な自己会合によって熱力学的に安定なαヘリックスの平行なヘリックスバンドルを形成する適切なアミノ酸配列を注意深く選択することによって設計される。
【0035】
コイルドコイルドメインは、右巻きの両親媒性αヘリックスを形成する基準的なヘプタド配列のタンデムリピートをベースとしたペプチドを含み、該へリックスはその後集合して左巻きのスーパーコイルを備えたヘリックスバンドルを形成する。さらに、必ずしも左巻きや通常のスーパーコイルではないコイルドコイルを形成する、非基準的な非ヘプタドをベースとした繰り返しから形成されたペプチドも含まれる。
【0036】
基準的なコイルドコイルは、天然に存在する生物活性を有するペプチドおよびタンパク質に広く存在し、新たに設計もされてきた。所定のオリゴマー化状態、トポロジーおよび安定性(例えば二量体、三量体、四量体、五量体、六量体または七量体)のヘリックスバンドルとなるコイルドコイルペプチドの設計について、一連の法則が解明されてきた。これらの法則により、設計者は所与の標的構造に適合したペプチド配列を構築することができる。最も重要なことは、基準的なコイルドコイルペプチド配列は特徴的な7残基のモチーフを含み、該モチーフは典型的には3〜10回繰り返されることである。1つのヘプタドモチーフ内の位置は伝統的にabcdefgで表され、ほとんどは(ただし例外もあるが)位置aおよびdに疎水性残基が存在し、その他の位置には一般に極性の、へリックスに都合のよい残基を有する。ペプチド鎖に沿って縦列した(タンデムの)ヘプタドモチーフは、a残基とd残基との間に、これら残基がαへリックスの1つの面に位置することができるような平均間隔を有している。2つ以上のヘリックスが密集してコイルドコイルバンドルとなる場合、ヘリックスの疎水性の面が会合して互いに巻き付いて、疎水性表面どうしの間の接触が最大となる(図2)。ヘプタドリピート内の各位置に存在しうる残基の種類は、へリックスバンドルの安定性およびオリゴマー化状態に影響を及ぼすことになる。一般に、主に疎水性の残基(Ala、Ile、Leu、Met、Val)または芳香族の疎水性側鎖(Phe、TrpおよびTyr)がa部位およびd部位に使用される。残りのb、c、e、fおよびg部位は、a、d部位よりも自由度が高い傾向があるが、極性でヘリックスに都合のよい残基(Ala、Glu、LysおよびGln)が好ましい。a部位およびd部位の残基の選択は、コイルドコイルのオリゴマー化状態(すなわち二量体か三量体)に影響を及ぼしうる。従って、β‐分岐していない残基(例えばLeu)が位置dに存在する場合は二量体となりやすく;この部位にβ‐分岐した残基(ValおよびIle)があると二量体になりにくい。他方、二量体ではa部位にはβ‐分岐した残基(Ile、Val)が好ましい。別の法則は、a=d=IleまたはLeuであると三量体となりやすいことであり、これは平行な三量体を特異的に形成するコイルドコイルを設計するのに役立つ。上記およびその他の設計上の法則については、[ウールフソン、D.N.(Woolfson, D. N.)、Adv. Prot. Chem. (2005), 70, 79-112]においてより詳細に議論されている。
【0037】
ヘプタドモチーフは両親媒性αへリックスをコードし、該へリックスはその疎水性の面を介してオリゴマー化する(図2)。コイルドコイルドメインは、少なくとも3つのタンデムなヘプタドリピートモチーフを含んでいる。各鎖の中のヘプタドリピートの数が多くなると、ヘリックスバンドルの安定性に影響を及ぼすであろう。該リピート数は、長いペプチドの化学合成の実現可能性によって主に制限を受けるが、3つを超えるヘプタドリピート(例えば4、5、6、7および8個のヘプタドリピート)を含む配列が好ましい。以下に議論される実施例では三量体のαヘリックス状コイルドコイルが形成されるが(図1も参照)、本発明は同様に二量体、四量体、五量体、六量体および七量体のコイルドコイルドメインにも関係する。
【0038】
本発明によるコイルドコイルドメインは、より長いリピート単位、例えば天然に存在するコイルドコイル中に存在するような11残基リピートおよび15残基リピートを有することもできる。したがって、凝集構造物の形成に必要なヘリックスバンドルは、7個以外の周期性を備えたコイルドコイルモチーフを使用するときにも生じる場合がある。通常とは異なる周期性を備えたコイルドコイルも可能である。天然に存在する多くのコイルドコイルでは、連続したヘプタドリピートパターンに様々な不連続部が含まれる場合がある。2つの一般的な不連続部は、ヘプタドパターン内への1残基の挿入、同様に3または4残基の挿入である。例えば、1残基の挿入はインフルエンザヘマグルチニンの三量体コイルドコイルに見られる。天然に存在する他のコイルドコイルは7残基以外の周期性を示し、例えば、11残基の規則的周期性(ヘンデカドと呼ばれる)はスタフィロサーマス・マリナス(Staphylothermus marinus)の表層タンパク質であるテトラブラキオン(tetrabrachion)に見られる。
【0039】
ウイルスコートタンパク質に天然に存在するコイルドコイルペプチド配列の他の例は、HIV‐1のgp41コートタンパク質、およびRSVのF糖タンパク質の三量体ヘリックスバンドルを形成するコイルドコイルモチーフである。これらのコイルドコイルドメインは、本発明によるコイルドコイルドメインの定義に含まれる。
【0040】
好ましいコイルドコイルペプチドは、3〜8個のタンデムに連結したヘプタドモチーフを含む。コイルドコイル内のヘプタドモチーフは、(リポペプチド8のように)同一の配列を有していてもよいし、(リポペプチド6および7のように)各々異なる配列を有していてもよい。すべての場合において、1つのヘプタドモチーフ内の7個のアミノ酸残基の7つの位置は文字:abcdefgで示される。したがって、コイルドコイルペプチドは、位置(abcdefg)3〜8を有するアミノ酸配列を含む。
【0041】
好ましいのは、3〜8個のタンデムに連結したヘプタドモチーフを含むコイルドコイルペプチド配列であって、各ヘプタドモチーフ(abcdefg)の位置aおよびdが本明細書中以下に定義するグループ1および/またはグループ2に属するαアミノ酸を含むものである。さらに、すべての位置aおよびdのうち2箇所まではグループ3に属する任意のアミノ酸残基を位置づけることが可能であり、すべての位置aおよびdのうち1箇所まではグループ4もしくはグループ5に属する任意のアミノ酸残基またはグリシンを位置づけることが可能である。さらに、位置b、c、e、fおよびgには、グループ3、4および5に属するαアミノ酸が好ましいが、グループ1および2に属するアミノ酸でもよく、加えて任意の1つのヘプタドモチーフ内の上記位置のうちの1箇所まではグリシンであってもよいが、いずれもプロリンであってはならない。
【0042】
グループ1は、大きさが小〜中位の疎水性側鎖R1を備えたαアミノ酸残基からなる。
【0043】
【化8】
疎水性残基R1は、生理的なpHでは荷電せず、水溶液によってはじかれるアミノ酸側鎖を表す。これらの側鎖は一般に、第一級および第二級アミド、第一級および第二級アミンならびにこれらに対応するプロトン化された塩、チオール、アルコール、尿素またはチオ尿素のような水素結合供与体基を含まない。しかしながら、上記側鎖は、エーテル、チオエーテル、エステル、第三級アミドまたは第三級アミンのような水素結合受容体基を含むことができる。遺伝的にコードされるこのグループのアミノ酸には、アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニンおよびバリンが挙げられる。
【0044】
特定の疎水性残基R1は、低級アルキル、低級アルケニル、‐(CH2)a(CHR2)bOR3、‐(CH2)a(CHR2)bSR3、‐(CHR2)OR3、‐(CH2)aSR3、‐(CH2)aR4、または‐CH(CF3)2であり、式中、R2は低級アルキル;R3は低級アルキル;R4はシクロヘキシル、シクロペンチルまたはシクロブチル;aは1〜4;bは0または1である。
【0045】
グループ2は、芳香族またはヘテロ芳香族の側鎖R5を備えたアミノ酸残基からなる。
【0046】
【化9】
芳香族アミノ酸残基とは、芳香族π(パイ)電子系がコンジュゲートしている少なくとも1つの環を含む側鎖R5を有する疎水性アミノ酸を指す。さらに該残基は、追加として、低級アルキル、アリールまたはハロゲンのような疎水基、第一級および第二級アミンとこれらの対応するプロトン化された塩、第一級および第二級アミド、アルコールのような水素結合供与体基、ならびに、エーテル、チオエーテル、エステル、第三級アミドまたは第三級アミンのような水素結合受容体基を含むことができる。遺伝的にコードされる芳香族アミノ酸にはフェニルアラニンおよびチロシンが挙げられる。ヘテロ芳香族アミノ酸残基とは、O、SおよびNのようなヘテロ原子が少なくとも1つ組み込まれた芳香族π(パイ)電子系がコンジュゲートしている少なくとも1つの環を含む側鎖R5を有する疎水性アミノ酸を指す。さらにそのような残基は、第一級および第二級アミド、第一級および第二級アミンとこれらの対応するプロトン化された塩、アルコールのような水素結合供与体基、ならびにエーテル、チオエーテル、エステル、第三級アミドまたは第三級アミンのような水素結合受容体基を含むことができる。遺伝的にコードされるヘテロ芳香族アミノ酸にはトリプトファンおよびヒスチジンが挙げられる。
【0047】
特定の芳香族またはヘテロ芳香族の側鎖R5は、‐(CH2)aR6、‐(CH2)cO(CH2)dR6、‐(CH2)cS(CH2)dR6、または‐(CH2)cNR7(CH2)dR6であり、式中、R7はH、低級アルキル、アリールまたはアリール‐低級アルキル;R6は、任意選択で置換された式‐C6R8R9R10R11R12のフェニルまたは式H1〜H14
【0048】
【化10】
のうち1つのアリール基もしくはヘテロアリール基であって、式中、R8、R9、R10、R11およびR12はそれぞれ独立にH、F、Br、Cl、I、NO2、CF3、NR7R14、N7COR14、低級アルキル、アリールまたはOR7;R13は、H、Cl、Br、I、NO2、低級アルキル、またはアリール;R14は、H、低級アルキル、またはアリール;aは1〜4;cは1または2;dは0〜4である。
【0049】
グループ3は、極性で非荷電の残基R15を備えた側鎖を含むアミノ酸からなる。
【0050】
【化11】
極性で非荷電の残基R15は、生理的なpHでは荷電しないが水溶液によってはじかれない親水性の側鎖を表す。そのような側鎖は、典型的には、第一級および第二級アミド、第一級および第二級アミン、チオール、ならびにアルコールのような水素結合供与体基を含む。これらの基は、水分子を伴う水素結合ネットワークを形成することができる。さらに上記の基は、エーテル、チオエーテル、エステル、第三級アミド、または第三級アミンのような水素結合受容体基も含む場合がある。遺伝的にコードされる極性で非荷電のアミノ酸には、アスパラギン、システイン、グルタミン、セリンおよびトレオニンが挙げられる。
【0051】
特定の極性で非荷電の残基R15は、‐(CH2)d(CHR16)bOR17、‐(CH2)d(CHR16)bSR17、‐(CH2)aCONR17R18、または‐(CH2)aCOOR19であり、式中、R16は、低級アルキル、アリール、アリール‐低級アルキル、‐(CH2)aOR17、‐(CH2)aNR17R18、‐(CH2)aNR17R18、または‐(CH2)aCOOR19;R17およびR18は、互いに独立にH、低級アルキル、アリール、もしくはアリール‐低級アルキルであるか、またはR17およびR18がともに‐(CH2)e‐、‐(CH2)2‐O‐(CH2)2‐、もしくは‐(CH2)2‐NR17‐(CH2)2‐をなし;R19は、低級アルキル、アリール、またはアリール‐低級アルキル;a、bおよびdは上記に定義されるような意味を有し、eは2〜6である。
【0052】
グループ4は、極性のカチオン性残基およびそのアシル化誘導体、例えばアシルアミノから誘導される残基および尿素から誘導される残基R20を備えた側鎖を含むアミノ酸からなる。
【0053】
【化12】
極性のカチオン性側鎖R20は、生理的なpHでプロトン化される塩基性の側鎖を表す。遺伝的にコードされる極性のカチオン性アミノ酸には、アルギニン、リジンおよびヒスチジンが挙げられる。シトルリンは尿素から誘導されるアミノ酸残基の例である。
【0054】
特定の極性カチオン性残基およびそのアシル化誘導体R20は、‐(CH2)aNR17R18、‐(CH2)aN=C(NR21R22)NR17R18、‐(CH2)aNR21C(=NR22)NR17R18、‐(CH2)aNR21COR19、または‐(CH2)aNR21CONR17R18であり、式中、R21はHまたは低級アルキルでR22はHまたは低級アルキル;R17、R18、R19は上記に定義されるような意味を有し、aは1〜4である。
【0055】
グループ5は、極性のアニオン性残基R23を備えた側鎖を含むアミノ酸からなる。
【0056】
【化13】
極性でアニオン性とは、生理的なpHで脱プロトン化される酸性の側鎖R23を指す。遺伝的にコードされる極性アニオン性アミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。特定の極性カチオン性残基R23は、‐(CH2)aCOOHであり、式中のaは1〜4である。
【0057】
低級アルキルは、C1‐7‐アルキル、好ましくはC1‐4‐アルキルであって、具体的にはメチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、n‐ブチルまたはイソブチルである。アリールは5〜10個の炭素原子を有し、好ましくはフェニルまたはナフチルである。
【0058】
より好ましいのは、3〜8個のタンデムに連結されたヘプタドモチーフを含むコイルドコイルペプチド配列であって、各ヘプタドモチーフ(abcdefg)が次の配列すなわち:
1xx1xxx(それぞれ位置abcdefgを表す);
1xx2xxx(それぞれ位置abcdefgを表す);
2xx1xxx(それぞれ位置abcdefgを表す);または
2xx2xxx(それぞれ位置abcdefgを表す);
(上記配列中、1はグループ1由来の遺伝的にコードされるアミノ酸、2はグループ2由来の遺伝的にコードされるアミノ酸、xはグループ1、2、3、4もしくは5由来の遺伝的にコードされるアミノ酸またはグリシンである)のうちのいずれか1つを有するものである。
【0059】
さらに一層好ましいのは、天然に存在するペプチドおよびタンパク質(ただしヒト起源のものを除く)の中で同定されたコイルドコイルペプチド配列である。これらは、例えばウイルスおよび細菌のタンパク質中で同定されたコイルドコイルであって、以下のものすなわち:
インフルエンザウイルスヘマグルチニン由来(配列番号5):
GSTQAAIDQINGKLNRVIEKTNEKFHQIEKEFSEVEGRIQDLEKYVEDTKCG;
ヒト免疫不全ウイルス由来(配列番号6):
SGIVQQQNNLLRAIEAQQHLLQLTVWGIKQLQARILAVERYLGDCG;
ウシ免疫不全ウイルス由来(配列番号7):
GGERVVQNVSYIAQTQDQFTHLFRNINNRLNVLHHRVSYLEYVEEIRQKQVFFGCG;
ネコ免疫不全ウイルス由来(配列番号8):
GGATHQETIEKVTEALKINNLRLVTLEHQVLVIGLKVEAMEKFLYTAFAMQELGCG;
ウマ伝染性貧血ウイルス由来(配列番号9):
GGNHTFEVENSTLNGMDLIERQIKILYAMILQTHARVQLLKERQQVEETFNLIGCG;
サル免疫不全ウイルス由来(配列番号10):
GGAQSRTLLAGIVQQQQQLLDVVKRQQELLRLTVWGTKNLQTRVTAIEKYLKDQAGCG;
ヤギ関節炎脳炎ウイルス由来(配列番号11):
GGSYTKAAVQTLANATAAQQDVLEATYAMVQHVAKGVRILEARVARVEAGCG;
ビスナウイルス由来(配列番号12):
GGSLANATAAQQNVLEATYAMVQHVAKGIRILEARVARVEAIIDRMMVYQELDCG;
ヒトパラインフルエンザ‐3由来(配列番号13):
GGEAKQARSDIEKLKEAIRDTNKAVQSVQSSIGNLIVAIKSVQDYVNKEIVGCG;
ヒトパラインフルエンザ‐1由来(配列番号14):
GGEAREARKDIALIKDSIIKTHNSVELIQRGIGEQIIALKTLQDFVNNEIRGCG;
ヒトパラインフルエンザ‐2由来(配列番号15):
GGKANANAAAINNLASSIQSTNKAVSDVITASRTIATAVQAIQDHINGAIVNGCG;
ヒトパラインフルエンザ‐4a由来(配列番号16):
GGKAQENAKLILTLKKAATETNEAVRDLANSNKIVVKMISAIQNQINTIIQGCG;
ヒトパラインフルエンザ‐4b由来(配列番号17):
GGKAQENAQLILTLKKAAKETNDAVRDLTKSNKIVARMISAIQNQINTIIQGCG;
麻疹ウイルス由来(配列番号18):
GGSMLNSQAIDNLRASLETTNQAIEAIRQSGQEMILAVQGVQDYINNELIGCG;
ムンプスウイルス由来(配列番号19):
GGAQTNARAIAAMKNSIQATNRAVFEVKEGTQQLAIAVQAIQDHINTIMNTQLNNMSCG;
ウシ呼吸器合胞体ウイルス由来(配列番号20):
GGAVSKVLHLEGEVNKIKNALLSTNKAVVSLSNGVSVLTSKVLDLKNYIDKEGCG;
エボラウイルス由来(配列番号21):
GGANETTQALQLFLRATTELRTFSILNRKAIDFLLQRWGGTCHILGCG;
マールブルグウイルス由来(配列番号22):
GGANQTAKSLELLLRVTTEERTFSLINRHAIDFLLTRWGGTCKVLGCG;
ラウス肉腫ウイルス由来(配列番号23):
GGANLTTSLLGDLLDDVTSIRHAVLQNRAAIDFLLLAHGHGCG;
スタフィロサーマス・マリナス由来(配列番号24):
GSIINETADDIVYRLTVIIDDRYESLKNLITLRADRLEMIINDNVSTILASIGCG;
SARSコロナウイルス由来(配列番号25):
GGNVLYENQKQIANQFNKAISQIQESLTTTSTALGKLQDVVNQNAQALNTLVKQLSSNFGCG;
肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)のMPN010のDUF16ドメイン由来(配列番号26):
GGTKTEFKEFQTVVMESFAVQNQNIDAQGEQIKELQVEQKAQGKTLQLILEALQGINKRLDNLESCG;
七量体コイルドコイル(配列番号27):
GGKVKQLADAVEELASANYHLANAVARLAKAVGERGCG;
三量体コイルドコイル(配列番号28):
GGIEKKIEAIEKKIEAIEKKIEAIEKKIEAIEKKIAKMEKASSVFNVVNSKKKC;
または四量体コイルドコイル(配列番号29):
KLKQIEDKLEEILSKLYHIENELAKIEKKLAKMEKASSVFNVVKKC
が挙げられる。
【0060】
最も好ましいのは、実施例に記載のコイルドコイルペプチド配列である。
リポペプチドビルディングブロックの設計において、前記ヘプタドリピートを含まない追加の残基を、コイルドコイルペプチド鎖のN末端およびC末端のいずれか一方または両方に任意選択で付加することができる。これらの追加の残基は、例えば、ヘプタドリピート(コイルドコイル)領域と、脂質部分または任意選択で付着される抗原のうち少なくともいずれか一方との間のリンカーとして働くことができる。これらの追加の残基は、ヘルパーT細胞エピトープを含むアミノ酸配列を含むこともできる。
【0061】
リポペプチドビルディングブロック(LBB)の合成には、合成化学のこの領域において良く知られたペプチド合成方法およびカップリング方法を利用することができる。典型的には、ペプチド鎖を組み立てるために固相ペプチド合成を使用する。脂質部分をリンカーにカップリングして脂質‐リンカー中間物を得ることができる。その後、この脂質‐リンカーを、標準的なカップリング方法によって、例えばまだ樹脂に結合しているペプチドの遊離N末端に付加することができる。最後に、トリフルオロ酢酸(TFA)を用いた処理により、完全に組み立てられたリポペプチドを樹脂から切り出し、全ての標準的な側鎖保護基を除去する。
【0062】
ジパルミトイル‐S‐グルセリルシステイニル部分(Z3)は、リンカーなしでペプチド鎖のN末端に直接カップリングすることができる。Z4タイプの脂質部分の場合には、Fmocで適切に保護されたアミノ酸、例えばビス‐Fmoc‐2,4‐ジアミノ酪酸を、組立ての最終段階で鎖のN末端に付加することができる。(Fmoc)保護基を除去した後、2つの遊離アミノ基を適切な脂肪酸誘導体でアシル化することができる。TFAを用いて樹脂から切り出した後にリポペプチド生成物が形成される。同様の確立した合成方策を用いて他の脂質部分を含むリポペプチドビルディングブロックを調製することができる。
【0063】
様々なカップリング手法またはコンジュゲーション手法を使用してペプチド鎖に抗原を付着させることも可能であり、該手法は当業者に良く知られたものとなろう。したがって、LBBのペプチド鎖のアミノ酸側鎖の遊離アミノ基を、抗原の反応性エステル(例えばカルボン酸から調製されたN‐ヒドロキシスクシンイミドエステル)にカップリングしてもよく;ペプチド鎖のチオールを抗原のマレイミド基にカップリングしてもよく;ペプチド鎖のアミノ酸残基の側鎖にアジドを組み込み、該アジドを、銅触媒性の付加環化反応を用いてアセチレン基を含む抗原にカップリングしてもよく;また、ペプチド中の他の求核分子(例えばヒドラジノ基、ヒドロキシルアミノ基、vic‐アミノチオール基)を、抗原中の求電子(例えばアルデヒド、ケトン、活性エステル)にカップリングしてもよい。選択的カップリングを達成するために、ペプチド鎖および抗原の2つの反応基の位置を逆にすることが原則として可能であることは、明白であろう。
【0064】
上記方法を例証するリポペプチド合成の例は以降に記載されている。
本明細書で定義されるリポペプチドビルディングブロック(LBB)は、自己集合してリポペプチドへリックスバンドル(HLB)となり、さらには合成ウイルス様粒子(SVLP)となることができる。水溶液中での自己集合プロセスには、LBBのコイルドコイルドメインが急速にオリゴマー化して、規定のオリゴマー化状態のα‐ヘリックスの平行なコイルドコイルバンドル(リポペプチドへリックスバンドル(HLB)と呼ばれる)を形成する工程が含まれる。その結果、各HLB内のペプチド鎖に結合した脂質部分も該バンドルの一端で凝集する。さらにその後、複数の同じ抗原がHLBの表面上(すなわちHLBのもう一方の脂肪親和性ではない側)に現れることになる。自己集合プロセスがさらに進行する結果、合成ウイルス様粒子(SVLP)が形成されることもある(図1を参照)。該プロセスは、各ビルディングブロックに取り付けられた脂質尾部の自己会合によって駆動され、脂質尾部はその後SVLPの中央の脂質コアを占める。こうして、個々のヘリックスバンドル中のペプチド鎖は、外向きに、大量の溶媒の方を向くように位置付けられる。従って、リポペプチドビルディングブロックの大きさおよび組成が集合体(SVLP)の最終的な大きさおよび形状を決定し、集合体の直径は典型的にはナノメーター範囲(10〜30nm)である。SVLPは、抗原を多価提示するための、また抗原を免疫担当細胞および受容体へ送達するための新規なナノ粒子プラットフォームを表す。
【0065】
本発明による合成ウイルス様粒子(SVLP)は、実際のウイルスで見られるようにタンパク質成分と脂質成分とから構成され、ある種の小型ウイルスに類似の物理的大きさを有し、脂質コアと外側のタンパク質/ペプチドをベースとした外側表面とを有するが、完全に合成起源のものであり、すなわち細胞を用いる方法を使用せずにリポペプチドビルディングブロック(LBB)から始まる化学合成で生産される。核酸成分を持たず、従って複製することができないので、SVLPは本物のウイルスではない。
【0066】
抗原をリポペプチドビルディングブロック(LBB)に付着させると、その結果生じるHLB上およびSVLP上での抗原の高い表面密度、さらにこれらの分子構造により、これらの合成材料はワクチン送達の領域における適用にとって魅力的なものとなる。SVLPの表面に複数の同じ抗原を有することにより、結合活性作用により抗原へのB細胞受容体親和性が増強され、免疫担当細胞による該粒子またはその成分の取り込みおよび提示が促進される。したがって、HLBおよびSVLPは、動物体内で抗原に対する効率的な免疫応答を引き起こすための、抗原の巨大分子担体または送達媒体として見ることもできる。特に重要なのは、抗原送達媒体としてのHLBおよびSVLPの使用により、潜在的に有害なアジュバントの使用(同時注射)を伴わずに動物体内で効率的な免疫(抗体)反応を生成させることができることである。
【0067】
特性を独自に組み合わせることにより、これらHLBおよびSVLPは、動物における効率的な免疫応答を誘発するのに理想的な、従ってワクチン発見における適用に理想的なものとなる。B細胞の応答は、標的B細胞上の特異的B細胞受容体と抗原との相互作用により、特に、多価抗原の結合によりB細胞の表面上で複数のB細胞受容体がクラスター化することにより、開始される。集合体化した粒子の表面に複数の同じ抗原を有することは、結合活性作用を介して受容体親和性を増強し、かつ細胞表面上で抗原が結合したB細胞受容体のクラスターを形成するのに重要である。コイルドコイルペプチドが規定のオリゴマー化状態のヘリックスバンドルを形成する能力は、共有結合で結合した抗原の多価提示を可能にするために活用される。ハプテン、ペプチド、タンパク質またはその他のある種のエピトープミメティックのような、標的B細胞上の特異的B細胞受容体と相互作用するために設計された抗原を、モノマーのLBBにコンジュゲートすることができる。HLBおよびSVLPへと自己集合した後、抗原は該オリゴマー集合体の表面上に複数のコピーとして現れる(図1を参照)。
【0068】
ウイルスおよび微生物のコイルドコイル配列はヘルパーT細胞のエピトープを含むこともある。LBBの成分であるコイルドコイル担体ペプチドはヘルパーT細胞エピトープを含む天然の配列に由来するものでもよいので、このエピトープも本発明において活用することができる。別例として、T細胞エピトープを、設計型または天然のコイルドコイル配列に組み込むことも、附属させることも可能である。
【0069】
モノマーのLBBは脂質部分を含む。この脂質の別の目的は、B細胞に対するエピトープの提示を容易にすることであるが、これは、細胞膜と会合した抗原がB細胞の活性化およびB細胞により駆動されるT細胞活性化の促進に特に有効であることが知られているからである。集合したHLBおよびSVLPの内部に存在する脂質部分の局所濃度が高いことにより、該集合物と細胞膜との相互作用が促進されて、B細胞への抗原の提示が促進されることになる。LBBの脂質部分は、良く知られたリポペプチドのToll様受容体リガンドのような、細菌由来の脂質部分に由来するものでもよい。LBBに組み込まれる自己集合リポペプチドの特徴は、抗原の多価提示のための機構だけでなく、該リポペプチドがB細胞の活性化を増強する成分を含みうることである。確かに、HLBおよびSVLPは抗体に基づいた強い免疫応答を誘発することが可能であり、このことにより、免疫化の際の有毒なアジュバントの使用を回避することができるというさらなる利点がもたらされる。
【0070】
水溶液中でミセルおよび小胞のような熱力学的に安定した凝集物を形成し、長い疎水性領域がミセルコア内でクラスター化して水との接触から遠ざかり隔離される一方、頭部の極性基が溶媒と相互作用することは、界面活性剤、頭部の極性基と無極性の疎水性の脂質尾部とを有する洗剤様分子の一般的な特徴である。しかしながら、本発明のHLBおよびSVLPは単なるミセルではない。HLBおよびSVLPの巨大分子構造は、非共有結合の力の独自の組み合わせ、すなわち、コイルドコイルペプチドドメインが集合してヘリックスバンドルとなるのを駆動する力と、脂質尾部の粒子内部への隔離を駆動する疎水性の力とが合わさることによって維持される。
【0071】
遊離モノマーが溶液中に存在する最大濃度に相当する、ミセルが形成し始める濃度は、臨界ミセル濃度、またはより一般的には臨界凝集濃度である。臨界ミセル濃度は、ミセルの熱力学的安定性の尺度を提供する。臨界ミセル濃度の値は、両親媒性分子の疎水性部分および親水性部分の構造、ならびに温度や溶媒の組成のような外部要因によって変化する。低い臨界ミセル濃度は低い界面活性剤濃度で安定なミセルを示し、このことは、所望の活性(例えば細胞のターゲティングおよび送達)が、全体的に大幅に希釈した後でもミセル状構造を保持することに依存している生物学的適用において、重要である。本発明によるSVLPは低nM領域において熱力学的安定を維持し、このことはワクチン送達の目的に理想的であることを示している。この高い安定性はSVLPの独特の分子構造から生じる。さらに、SVLPは、大きさおよび形状の分布が比較的均質であるように作製することができる。
【0072】
本発明によるSVLPは、コア内に水溶液を囲い込む二分子膜構造を有するリポソームとは似ていない。SVLPは、水性の外部に対して広面積の脂質膜を露出することはないので、リポソームよりもin vivoで安定であることができる。
【0073】
先行技術のウイルス様粒子とは対照的に、本発明のHLBおよびSVLPは人工的なものであり、これらの構成成分はすべて化学合成によって生産されるので、生物学的方法を使用して作製しなければならない材料の使用が回避される。ウイルス様粒子は「合成の」と称されてきたが、これらの粒子は、組換えDNA法および細胞を用いる方法を使用して作製された天然型もしくは遺伝子組換え型のウイルス粒子、またはその構成成分であって、化学合成によって生産された材料ではない。さらに、本発明のSVLPの設計および組成は、他のナノ粒子集合体、例えば金のクラスター、量子ドット、デンドリマー、組換え型タンパク質およびリポソームをベースとする集合体の設計および組成とは全く異なる。
【0074】
本発明のLBBは、リポペプチド中のコイルドコイルドメインが会合して規定のへリックスバンドル(例えば二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体のヘリックスバンドル)となるように設計されている。この会合によりHLBの形成がもたらされる。得られるリポペプチドへリックスバンドル(HLB)(例えば、三量体を図1に示す)は、自己集合してナノメートル規模の大きさの合成ウイルス様粒子(SVLP)(巨大分子集合体)となることができる。LBBに抗原(ペプチド、タンパク質、ペプチドミメティック、炭水化物またはハプテンの形態)が付着されている場合、複数のコピーがHLBおよびSVLPの表面上に提示される。
【0075】
自己(すなわちヒト)タンパク質に基づいたペプチド配列は不適切であるが、これは、ヒト(自己)タンパク質に対する免疫反応により人体に慢性自己免疫性疾患が生じる可能性があるからである(例えばグッドパスチャーの症候群、ヒトがコラーゲンに対する抗体を生じた時に引き起こされる自己免疫性疾患である)。
【0076】
本発明はさらに、本明細書に記載されるような抗原を担持する合成ウイルス様粒子を含む医薬製剤に関する。温血動物(特にヒト)への、鼻内、口腔内、直腸内もしくは経口投与のような腸内投与、および静脈内、筋肉内もしくは皮下投与のような非経口投与のための医薬製剤が考えられる。特に好ましいのは非経口投与のための製剤である。該製剤は、抗原を担持する合成ウイルス様粒子を単独で、または好ましくは薬学的に許容可能な担体とともに含む。有効成分の用量は、意図されるワクチン接種によって、また生物種、該生物の年齢、体重および個体の状態、個々の薬物動態学的データ、ならびに投与方法によって変化する。
【0077】
医薬製剤は、およそ1%〜およそ10%の有効成分を含む。非経口投与のための単位用量形態は、例えばアンプルまたはバイアル、例えば、抗原を担持する合成ウイルス様粒子を約0.01mg〜約1.0g含むバイアルである。
【0078】
優先されるのは、抗原を担持する合成ウイルス様粒子の溶液、さらには懸濁液または分散物、特に等張の水溶液、分散物または懸濁液であって、例えば有効成分を単独で、または担体(例えばマンニトール)と一緒に含む凍結乾燥形態の場合には使用前に調製することができるものを使用することである。医薬製剤は滅菌されてもよいし、添加剤(例えば保存剤、安定化剤、湿潤剤および/もしくは乳化剤、可溶化剤、浸透圧を調節するための塩類、およびバッファーのうち少なくともいずれか)を含んでもよく、かつそれ自体良く知られたやり方で、例えば従来の溶解処理および凍結乾燥処理によって調製される。前記溶液または懸濁液は粘性調節剤を含むこともできる。
【0079】
非経口投与については、抗原を担持する合成ウイルス様粒子の水溶液、または粘性調節剤と所望の場合には安定化剤とを含む水性注射用懸濁液が、特に適切である。抗原を担持する合成ウイルス様粒子を、任意選択で添加剤とともに凍結乾燥物の形態とすることも可能であり、非経口投与の前に適切な溶媒を追加することによって溶液とすることができる。
【0080】
本発明はさらに、本明細書に記載されるような抗原を担持する合成ウイルス様粒子のワクチンとしての使用に関する。これらのワクチンは、感染症、アレルギー、がん、薬物依存、中毒、を含む疾患、障害または病態の予防または治療のための免疫応答を引き起こすために、また一般には効率的に抗原特異的な免疫応答を引き起こすために、有用である。
【0081】
本発明はさらに、免疫遺伝学的に有効な量の、本明細書に記載されるような抗原を担持する合成ウイルス様粒子を、投与の必要のある患者に投与することを特徴とするワクチン接種方法に関する。
【実施例】
【0082】
略語:
DCM、 ジクロロメタン(CH2Cl2);
DIEA、 ジイソプロピルエチルアミン;
Boc、 t‐ブトキシカルボニル;
DMF、 N,N‐ジメチルホルムアミド;
EDT、 エタンジチオール;
Fmoc、 9‐フルオレニルメトキシカルボニル;
HATU、 2‐(1H‐9‐アザベンゾトリアゾール‐1‐イル)‐1,1,3,3‐テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート;
HBTU、 2‐[1H‐ベンゾトリアゾール‐1‐イル]‐1,1,3,3‐テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート;
HOBt、 N‐ヒドロキシベンゾトリアゾール;
Pbf、 2,2,4,6,7‐ペンタメチルジヒドロベンゾフラン‐5‐スルホニル;
NMP、 N‐メチルピロリドン;
MBHA、 メチルベンズヒドリルアミン
PyBOP、 (ベンゾトリアゾール‐1‐イルオキシ)‐トリピロリジノホスホニウム‐ヘキサフルオロホスファート;
r.t.、 室温;
TIS、 トリイソプロピルシラン(iPr3SiH);
Trt、 トリチル;
TFA、 トリフルオロ酢酸;
tR、 保持時間。
【0083】
実施例1:リポペプチド4
【0084】
【化14】
このリポペプチド中のコイルドコイルペプチド5の配列番号1の一次配列は、大部分はRSVのF糖タンパク質に由来する[ローレス‐デルメディコ、M.K.(Lawless-Delmedico, M. K.)ら、Biochemistry (2000), 39, 11684-11695]。このコイルドコイルペプチドは5つのヘプタドリピートを含む。N末端には、ペプチドのN末端をリン脂質に連結するためのコハク酸由来のリンカーとともに追加のグリシン残基がスペーサとして付加されており、その結果リポペプチド4が得られる。
【0085】
このペプチド鎖の合成は、標準的なFmoc法を使用して、RinkアミドMBHA樹脂上で実施した。鎖の組み立てを完了した後、リン脂質‐リンカーユニット(1,3‐ジパルミトイル‐グリセロ‐2‐ホスホエタノールアミド‐スクシナート(PE‐succ‐OH))を樹脂上のペプチドの遊離N末端にカップリングした。その後、リン脂質を樹脂から切り出し、TFA/トリイソプロピルシラン/H2Oを用いた処理によって側鎖保護基を除去した。逆相HPLCにより精製した後、生成物を、分析用逆相HPLCおよびエレクトロスプレイMS(m計算値6238.4;m/z観測値1560.8((M+4H)4+))によって特徴解析した。
【0086】
1,3‐ジパルミトイル‐グリセロ‐2‐ホスホエタノールアミド‐スクシナート(PE‐succ‐OH)は、1,3‐ジパルミトイル‐グリセロ‐2‐ホスホエタノールアミン(バッケム(Bachem)社)をトリエチルアミンのような塩基の存在下で無水コハク酸と反応させることにより容易に調製することができる。
【0087】
a)ペプチド5
ペプチド鎖は、Fmoc法を使用して、ABI 433Aペプチド合成機でRinkアミドMBHA樹脂(ノババイオケム(Novabiochem)社)上で合成した。使用したアミノ酸は、Fmoc‐Ala‐OH、Fmoc‐Asp(tBu)‐OH、Fmoc‐Asn(Trt)‐OH、Fmoc‐Gly‐OH、Fmoc‐Gln(Trt)‐OH、Fmoc‐Glu(tBu)‐OH、Fmoc‐His(Boc)‐OH、Fmoc‐Ile‐OH、Fmoc‐Leu‐OH、Fmoc‐Lys(Boc)‐OH、Fmoc‐Ser(tBu)‐OH、Fmoc‐Thr(tBu)‐OH、Fmoc‐Tyr(tBu)‐OH、およびFmoc‐Val‐OHであった。樹脂(500mg;0.4mmol/g)に、DMF(5ml)中のHBTU(3等量)、HOBt(3等量)およびDIEA(8等量)を使用してFmoc‐Gln(Trt)‐OHを負荷した。未反応の遊離アミンを、Ac2Oキャッピング溶液(NMP中Ac2O(0.5M)、DIEA(0.125M)およびHOBt(0.015M);15mlで30分を2回)を使用してアセチル化した。カップリングは、5倍過剰量(1mmol)の各アミノ酸を使用して実施した。
【0088】
ペプチド鎖の組み立ての完了に続いて、該ペプチド鎖を樹脂から切り出し、TFA/iPr3SiH/H2O(95:2.5:2.5)(9ml)によりr.tで3時間脱保護した。濾過および減圧下での濃縮の後、ペプチドを冷Et2O(20ml)で沈澱させ、遠心分離処理してデカントした(3回繰り返した)。粗製生成物の分析用HPLCによる精製(C18カラム:バイダック(Vydac)218TP54;10μm、300Å、4.6×250mm;グラジエント:水+0.1%TFAの中で5〜100%アセトニトリル、1ml/分で20分間;tR=16分)から、白色粉体としてペプチド5(収率10%)が得られた。分析用RP‐HPLC(C18カラム:バイダック218TP54;10μm、300Å、4.6×250mm;グラジエント:水+0.1%TFAの中で10〜60%アセトニトリル、1ml/分で35分間):tR=26分。ESI‐MS(MeOH/H2O(1:1)+0.1%HCOOH;陽イオンモード;m/z):1822.8[M+3H]3+、1367.3[M+4H]4+、1094.2[M+5H]5+、911.9[M+6H]6+(計算上のMW:5465.4g/mol)。
【0089】
b)リポペプチド4
ペプチド5に関して上述のようにして、樹脂上での直鎖ペプチドの組み立てを実施した。ペプチド鎖の組み立て完了に続いて、1,3‐ジパルミトイル‐グリセロ‐2‐ホスホエタノールアミド‐スクシナート(PE‐succ‐OH)を樹脂上のN末端にカップリングした。該ペプチジル樹脂(80μmol)に、予め準備したDMF(5ml)中のPE‐succ‐OH(190mg、240μmol、3等量)、HATU(92mg、240μmol、3等量)、HOAt(33mg、240μmol、3等量)およびDIEA(110μl、640μmol、8等量)の溶液を添加した。反応混合物をr.t.で一晩渦流撹拌した。カップリングの進行をカイザーテストで観察した。カップリングの完了に続いて、樹脂を濾過し、DMF(3×5ml)、DCM(3×5ml)およびMeOH(3×5ml)で洗浄した。その後、リポペプチドを樹脂から切り離し、TFA/TIS/H2O(95:2.5:2.5)(27ml)でr.t.で3時間脱保護した。濾過および減圧下での濃縮の後、ペプチドを冷Et2O(20ml)で沈澱させ、遠心分離処理してデカントした(3回繰り返した)。セミ分取用HPLCによる粗製生成物の精製(C4カラム:バイダック214TP1010;10μm、300Å、10×250mm;5ml/分で15分間に、水+0.1%TFA中で30〜100%アセトニトリルのグラジエント;tR=14.4分)により、白色粉体としてリポペプチド4を得た。分析用HPLC(C4カラム:バイダック214TP104;10μm、300Å、4.6×250mm;グラジエント:1ml/分で30分間に、水+0.1%TFA中で10〜100%アセトニトリル):tR=23.3分。ESI‐MS(MeOH/H2O(1:1)+0.1%HCOOH;陽イオンモード;m/z):2081.4[M+3H]3+、1560.8[M+4H]4+、1248.9[M+5H]5+、1040.9[M+6H]6+(計算上のMW:6238.4g/mol)。ε276=1511M−1cm−1。
【0090】
c)リポペプチド4に関する生物物理学的研究
本発明の重要な特徴は、合成によって入手可能なリポペプチドが、自然に集合して規定の構造かつウイルス様ナノ粒子の大きさの巨大分子集合体となることができるということである。リポペプチド4は、振盪させながら緩衝水溶液中に溶解させることが可能であり、次いでSVLPの溶解特性を調べることができる。そのようなリポペプチドがSVLPを形成しうることを実証するために、リポペプチド4から生じる粒子について、様々な生物物理学的技法で特徴解析を実施しており、その原理を例証すべく本明細書で述べる。
【0091】
リポペプチド4を用いた沈降平衡超遠心分離実験から、該粒子が400kD範囲に見かけの質量を有することが示された(図3)。分析のために、3通りのロータ速度5,000、7,500および10,000rpmについて、また3通りの濃度24、48および240μMについて三連のデータセットを集めた。低い方の2つのリポペプチド濃度におけるデータは、451,820±9,670g.mol−1の見かけのモル質量を有する単一の理想的な分子種の存在を仮定したモデルによくフィットした。最も高い濃度(240μM)のデータを含めると見かけの質量は431,170±14,160g.mol−1となったが、特に超遠心分離用セルの底部近くでフィッティングの質が下がった。しかしながら、実験データからのフィッティングのずれは、凝集した材料の出現に典型的な形式を持たず、高濃度では理想的でないことが示されたのかもしれない。
【0092】
沈降速度実験も実施し、見かけの沈降係数の分布、g(s*)[スタフォード、W.F.(Stafford, W. F.)、Anal. Biochem. (1992), 203, 295-301]、Is‐g*(s)およびc(s)[シャック、P.(Schuck, P.)、Biophys. J. (2000), 78, 1606-1619]の面から分析した。異なる手法にもかかわらず、すべての方法から、〜10Sを中心とした比較的広い分布が得られた。平衡データと速度データを一致させ、かつサイズ分布をより詳細に調査する試みにおいて、Sedfitソフトウェアで実行されるようなラム(Lamm)の方程式のモデル化[シャック、P.(Schuck, P.)、Biophys. J. (2000), 78, 1606-1619]を使用した;典型的なc(s)プロファイルを図4に示す。恐らくはアーチファクトにより、低濃度では低いS値側に軽微なテーリングがあるように見えるが、分布はすべて9.5〜10Sに集中している。離散した相互作用しない分子種を含む他のモデルを試験しても有意な統計学的改善は見られなかった。個々のs値の検討からは、明白な濃度依存は示されず、データのグローバルフィットとその後のモンテカルロ・シュミレーションから、値s20.w=9.837±4.4・10−3Sが得られた。
【0093】
リン脂質の化学的性質、および主な会合状態に含まれるモノマーの見かけの数(〜72)から、検討した濃度範囲内ではリポペプチドはミセル様の構造を形成することが示唆され、また、各々が三量体のコイルドコイルリポペプチドで構成されたおよそ24個のサブユニットが相互作用して、コイルドコイル状態のペプチド鎖で装飾されたコンパクトな脂質コアを形成するモデルが考えられる。生じる粒子のサイズは超遠心分離のデータで支持される。ペプチドが空間に最適に分布することも考えられる。そのような球状粒子を視覚化するために作製したコンピュータモデルを図5に示す。該モデルは、中心に集塊した疎水性の尾部と、溶液中へ花穂のように外側へ伸びる三量体のへリックス状のコイルドコイルとを示している。完全な球体以外の幾何学的形状も可能であるかもしれないが、該モデルは標準的条件下の希薄溶液中における該材料の挙動をよく反映しているようである。
【0094】
円偏光二色性(CD)によりペプチドの立体配座を調べるために、リポペプチド4と同じペプチド配列を有するがリン脂質およびリンカーを欠くペプチド5を分析した。そのような系で予想された通り、該ペプチドは、温度および濃度の両方に依存するCDスペクトルを示した。該ペプチドは、ペプチド濃度35μMにおいて、1℃では高度にαへリックス状であり、熱変性の遷移は〜40℃の中央点を示した。ペプチド5と類似の配列を備えたペプチドが、薄い水溶液中でモノマーと平衡状態にある三量体コイルドコイルを形成することが以前に示されている[ローレス‐デルメディコ、M.K.(Lawless-Delmedico, M. K.)ら、Biochemistry (2000), 39, 11684-11695]。ペプチド5は、N末端に2つの追加のグリシン残基を有し、遊離N末端を有する点でこのペプチドとは異なる。しかしながら、室温での遠紫外線CDスペクトル(図6)は両ペプチドについて類似していた。いずれの軽微な差異も、恐らくは、追加のグリシン残基による非周期的構造の単純な追加、または該グリシン残基が引き起こした可能性のある何らかの構造上の摂動のうち少なくともいずれかによるものと思われた。スペクトルはランダムコイル/αヘリックス平衡に特徴的なものであり、CONTINプログラムを使用するスペクトル分析[プロベンチャー、S.W.(Provencher, S. W.)、Comp. Phys. Comm. (1982), 27, 229-242]から、αヘリックス、βシートおよび非周期的な構造についてそれぞれ33%、25%および42%の値が得られた。
【0095】
ペプチド5にリン脂質部分を付加してリポペプチド4を形成することにより、CDスペクトルに著しい変化が引き起こされ(図6)、CONTINのフィットで判断されるようにヘリックス含量は〜100%まで上昇する。スペクトルへのリン脂質部分の直接的寄与は小さいと考えられ、注目しなかった。ヘリックス含量の増加は、ペプチド単独の場合に見られる一方の平衡状態がより構造化された状態へ移行すること、高度に構造化された別の状態へ再編成がなされること、またはこれら2つの組み合わせを示している。上記に報告した流体力学上の結果から見て、後者は、極めて大きな凝集物と共存し、恐らくは新しい平衡系を形成する比較的小さな分子種の存在を説明しうるため、後者が事実であると思われる。
【0096】
蛍光プローブのピレン‐3‐カルボキシアルデヒド(PYCHO)を使用して臨界ミセル濃度(CMC)を調べた。該プローブの蛍光特性は溶媒の極性に敏感であり、したがってプローブは疎水性のミセル媒体中では水性媒体と比較して異なる蛍光挙動を示す。該色素は、ミセルの疎水性内部に優先的に溶解し、その蛍光強度は水性環境と比較してより高く、また発光極大はより長い波長へと移行する。リポペプチド4存在下での該色素の発光スペクトルは、466nmで主ピークおよび437nmで微小ピークを示し、ミセル不在下では逆の挙動が見られた(図7)。
【0097】
CMCを、蛍光変化の濃度依存性の計測により調べ[ヴィルヘルム、M.(Wilhelm, M.)ら、Macromol. (1991), 24, 1033-1040;アスタフィーバ、I.(Astafieva, I.)ら、Macromol. (1993), 26, 7339-7352]、<20nMであることを見出した。しかしながら、該方法の感度および信頼性は、高いCMC値を有するミセル系に関しては非常に良好であるが、20nM未満のCMC値の正確な測定には不十分のようである。したがって、この系におけるPYCHO蛍光スペクトルの特徴は低濃度における小さなピークシフトを示しただけであった(図7)。
【0098】
リポペプチドの12通りの希釈物における発光スペクトルを、1μM〜3nMの範囲で計測し、データを発光強度の比I437/I466として濃度に対してプロットした。結果(図8)から、CMC未満のペプチド濃度において予想されるプラトー領域が達成されなかったことは明白である。より高濃度(400nM〜1μM)では、モノマー濃度を増加させることで新しいオリゴマーの形成が簡単にもたらされるプラトーの始まりが見られる。従って、PYCHO蛍光スペクトルの変化は、オリゴマーが形成されることと、CMCが非常に低い(<20nM)こととを示している。
【0099】
このリポペプチドに由来するSVLPの平均直径を、動的光散乱(DLS)計測値から、球状微粒子用の数理モデルに基づいた数量重み付き分布解析を使用して計算した。データは約17nmの平均径と一致している(図9)。DLSによる粒径を40℃でも計測したが、この場合粒径分布はわずかに狭くなり、生理的な温度ではおそらくより均質な粒径分布であることが示された(データは示されていない)。
【0100】
電子顕微鏡法を用いてリポペプチドSVLPを視覚化した。透過型電子顕微鏡写真を記録するために、pH7.4のトリス緩衝液中3μMのリポペプチド4溶液の陰性染色を使用した。粒子は、円形および星形のように見える(図10)。これが、基本的に全体が球形のもの反映しているのか、あるいは円盤状のものを反映しているのか電子顕微鏡写真からは判定できないが、いずれの構造であってもミセル様の系を示すものであろう。粒子は、顕微鏡写真を評価するために使用した方法に依存して、平均直径が17nmであり主集団のあたりでおよそ±5nmの粒径分布を有していた。試料の大きさおよび形状のいずれにおいても高い均質性が顕著であった。直径が25nm〜40nmの少数のより大きな集合物も、顕微鏡写真で見ることができた。これは、粒子が多層をなして支持体に吸着した可能性があることから、使用した技法のアーチファクトであったかもしれない。しかしながら、電子顕微鏡法により、規則的な形状および寸法の、安定したナノスケールの星状粒子の形成が明白に示されている。
【0101】
星状の形状の粒子は、図5に描かれるような、リン脂質が粒子の中心を向き(疎水性コアを形成)、親水性ペプチド鎖が外側を向いているリポペプチドモノマーの配置構成を示唆している。
【0102】
d)リポペプチド4に関する生物物理学的検討の実験の部
リン酸定量
アッセイの出典は[エームズ、B.N.(Ames, B. N.)、Methods Enzymol. (1966), 8, 115-118]であり、リン脂質部分の中に存在するリン酸総量を概算することにより、以降の実験で使用されるリポペプチド溶液の濃度を測定するために該アッセイを用いた。使用した材料は:250℃まで加熱することができる加熱ブロック(例えばテコン(Tecon)プログラマブル制御装置630);元素分析用の耐熱性ホウケイ酸ガラスチューブ(60×7mmΦ);および45℃のウォーターバスである。
【0103】
1mMリン酸溶液を、KH2PO4から正確に調製した(標準溶液、1μl=1nmolリン酸)。この標準溶液のアリコート(試料について推測されるリン酸含量に応じて、通常は10〜80μl)を、検量線を構築するために一連の清潔なチューブに加えた。試料および検量用標準溶液を加熱ブロック(100℃〜120℃)で乾燥させ、乾燥したら70μlのH2SO4/HClO4(1:1)を各チューブに添加し、該チューブを230〜250℃で15〜30分間加熱した。
【0104】
0.835%アスコルビン酸/0.2%モリブデン酸アンモニウムの溶液を以下のようにして調製した;2回蒸留したH2Oでアスコルビン酸溶液(10%w/v)およびモリブデン酸アンモニウム溶液(2.5%w/v)を調製した。利用の直前に、1.67mlのアスコルビン酸溶液および1.60mlのモリブデン酸アンモニウム溶液を合わせて混合し、体積を20mlに調節した(12件の試料に十分な量)。
【0105】
230〜250℃で15〜30分間の後、試料をr.t.に冷却し、1.6mlのアッセイ溶液を振盪しながら添加し、次いで試料を45℃で30分間インキュベートした。試料やリン酸標準溶液の入っていないチューブを全く同じように処理してブランクを用意した。インキュベーション直後に、各試料の820nmにおける吸光度を1cmのセル中で計測した。試料の濃度を標準曲線から推定した。
【0106】
超遠心分析法
標準的な沈降平衡実験および沈降速度実験を、AN60Tiロータを装備したベックマン(Beckman)XL‐A分析用超遠心機を使用して実施した。ダブルセクターかつ6チャネル測定のチャコールエポンのセンターピースを使用し、適切な場合にはフルオロカーボンFC43を使用してフォールスボトムを設けた。特定の実験に合わせて様々なロータ速度を設定し、すべての計測を20℃で実施した。数種類のリポペプチド濃度で実験を実施し、90mM塩化ナトリウムを含む10mMトリス(pH7.4)または90mM塩化ナトリウムを含む10mMリン酸ナトリウム(pH7.4)のいずれかのバッファーを終始使用した。沈降平衡の実施において、0.001cm間隔で径方向のデータを収集し、各データセットについて少なくとも10回のスキャンを平均した。そのような3つのデータセットを各速度および濃度について得た。適切な時間間隔で収集されたデータの重ね合わせによって平衡を確認した。沈降速度データは2〜4分のスキャン間隔で径方向に0.005cm間隔で得た。加法原理を用いて、みかけの偏比容を、脂質部分(v20=0.934cm3g−1)およびペプチド部分(v20=0.726cm3g−1)について別々に、これらのグループ寄与から計算した[コーン、E.J.(Cohn, E. J.)ら、「Proteins, amino acids and peptides as ions and dipolar ions」、(1943)、ニューヨーク所在のハーフナー出版(Hafner publishers)、のp.370−381;ヘイランド、H.(Hoeiland, H.)、「Thermodynamic Data for Biochemistry and Biotechnology」、(1986)、ベルリン所在のスプリンガー‐フェアラーク(Springer-Verlag)、のp.17−44;
トラウベ、I.(Traube, I.)、Ann. Chem. Liebigs (1891), 265, 27;ラウエ、T.M.(Laue, T. M.)、「Analytical Ultracentrifugation in Biochemistry and Polymer Science」、(1992)、ケンブリッジ所在の英国学士院化学出版(Royal Society of Chemistry publishers)]。リポペプチド4の偏比容(v20=0.781cm3g−1)は、2つの構成成分の値の質量加重平均として近似した。バッファー密度は標準テーブルからコンピュータで計算した[ラウエ、T.M.(Laue, T. M.)、「Analytical Ultracentrifugation in Biochemistry and Polymer Science」、(1992)、ケンブリッジ所在の英国学士院化学出版]。ソフトウェアパッケージSedfitおよびSedphat[シャック、P.(Schuck, P.)、Biophys. J. (2000), 78, 1606-1619]を速度データの分析に使用し、Ultrascanプログラムを沈降平衡データの分析に使用した[デメラー、B.(Demeler, B.)、UltraScan5.0(2001)]。
【0107】
円偏光二色性分光法
遠紫外円偏光二色性(CD)スペクトルを、日本分光株式会社のJ−715分光旋光計および光路長0.1cmの石英セルを使用してr.t.で計測した。ペプチド5の溶液(50μM)およびリポペプチド4の溶液(35.7μM)をトリス緩衝液(10mM TrisHCl、90mM NaCl、pH7.4)で調製し、濃度をそれぞれに見合ったリン酸分析またはアミノ酸分析によって測定した。10〜100nm/分のスキャン速度、1〜2秒の応答時間および1nmのスペクトルバンド幅を使用し、最低限の分解能0.5nmでスペクトルを収集した。ブランクを差し引いた後、スペクトル値を平均残基楕円率[deg.cm2/dmol]として報告し、平均残基分子量を計算する際には脂質部分を無視した。
【0108】
リポペプチド4の低濃度試料(2〜40μM)のCDスペクトルを、光路長1cmの石英セルを用いて日本分光株式会社のJ−810分光旋光計にて20℃で計測した。リポペプチド溶液をPBS(10mM Na2HPO4、90mM NaCl、pH7.4)で調製し、濃度をリン酸分析によって測定した。10nm/分のスキャン速度、4秒の応答時間および2nmのスペクトルバンド幅を使用して、最低限の分解能0.5nmでスペクトルを収集した。上記に記載のようにしてデータを処理した。
【0109】
蛍光:臨界ミセル濃度(CMC)
蛍光プローブのピレン‐3‐カルボキシアルデヒド(PYCHO)を臨界ミセル濃度(CMC)の測定に使用した[トウッロ、N.J.(Turro, N. J.)、Macromolecules (1984), 17, 2123-2126;アナンタパドマナバン、K.P.(Ananthapadmanabhan, K. P.)ら、Langmuir (1985), 1, 352-355]。パーキン・エルマー(Perkin Elmer)LS55ルミネセンス分光計で蛍光スペクトルを得た。ピレン‐3‐カルボキシアルデヒドの発光スペクトルを、20℃にて400〜550nmで計測した。該発光スペクトルは、300nm/分のスキャン速度、4nmの励起スリット幅、および9nmの発光スリット幅として、試料を380nmで励起することにより得られ、各スキャンを4回繰り返して平均化した。リポペプチド4の溶液は、予めPYCHOで飽和させたHBS pH7.4(10mM Hepes、90mM NaCl)を使用して調製した(溶液濃度<10−6M)。1μM〜5nMの12種類のペプチド濃度で蛍光スペクトルを計測し、試料の濃度はリン酸アッセイを使用して測定した。低nM(50nM−3nM)領域のリポペプチド濃度は、HBSバッファー中の飽和PYCHO溶液の1/10希釈液を使用して調製した。データをOrigin(v7.0)ソフトウェアで解析し、発光スペクトルの相対強度比I437/I466を試料濃度に対してプロットしてCMC値を推定した。
【0110】
動的光散乱(DLS)
光散乱法を、NICOMPサブミクロン粒径測定器(モデル370)で実施した。リポペプチド4試料をトリスバッファー(10mM、90mM NaCl、pH7.4)中で調製し、試料濃度はリン酸アッセイを使用して測定した。リポペプチド4の1.1mM溶液を0.45μMミリポアフィルターで濾過し、1.05mMの試料を得た。この溶液について、20℃、30℃および37℃で光散乱法を実施した。20℃ではt=0、20および90分、30℃および37℃ではt=0および90分で測定を実施した。データ処理は、理想的な球状微粒子の存在を仮定するNICOMP多成分フィッティングモデルを用いて実施した。
【0111】
電子顕微鏡法
カーボン被膜付き400メッシュ銅製グリッドを酸素プラズマ処理で親水化したものを、透過型電子顕微鏡(TEM)による予備構造解析に使用した。リポペプチド4溶液(トリス緩衝液(pH7.4)中4μM)の小滴を親水性のC‐支持体に載せ、20秒後、ごく薄い層がグリッド上に残るようにほとんどの溶液を取り除いた。その後、少量の水を表面に接触させることによりグリッドを洗浄した。過剰な水を拭き取り、少量の2%酢酸ウラニル水溶液を表面に接触させることにより直ちにグリッドを染色した。染色液を除去した後、グリッドを乾燥させた。顕微鏡写真は、1k×1kのスロースキャンCCDカメラ(プロスキャン(ProScan)、ドイツ連邦共和国ミュンヘン所在)を使用して、ツァイス(Zeiss)EM912電子顕微鏡(ツァイスAG(Zeiss AG)、ドイツ連邦共和国オーバーコッヘン所在)で記録した。
【0112】
実施例2:リポペプチド6
【0113】
【化15】
リポペプチド6は、追加のCysが配列番号1のC末端に付加されている点を除いてリポペプチド4と同一である。このCysの側鎖はリポペプチドを抗原にコンジュゲートさせるために使用することができる。
【0114】
53merのペプチドを、ペプチド5について上述したように、Fmoc法を使用して、さらにFmoc‐Cys(Trt)‐OHも用いてRinkアミドMBHA樹脂上で合成した。合成が完了したらすぐに、樹脂の試料をTFAで処理した。その後、生成物を、C18カラム(Zorbax(R)Eclipse XDB‐C18;4.6mm×250mm、5μm、80Å)を用いる逆相HPLCにより、18分間に水(+0.1%TFA)中で5〜50%アセトニトリル、次いで4分間に水(+0.1%TFA)中で100%アセトニトリルまでのグラジエントを使用して分析した。保持時間=19.6分。ESI‐MS:(m/z):1393.2[M+4H]4+;1115.0[M+5H]5+;929.1[M+6H]6+;796.8[M+7H]7+(M実測値=5569.6±0.01%;M計算値=5569.6)。正しい直鎖ペプチドが樹脂上に存在していたので、リン脂質1,3‐ジパルミトイル‐グリセロ‐2‐ホスホエタノールアミド‐スクシナート(PE‐succ‐OH)を、DMF:CH2Cl2(2:1)に溶解したPyBOP(3等量)およびDIEA(8等量)を使用してr.tで16時間、残りの樹脂に結合しているペプチドのN末端にカップリングした。カップリングの完了はカイザーテスト陰性により確認した。得られた樹脂結合コンジュゲートを最後に樹脂から切り離し、TFA/H2O/TIS/EDT(92.5:2.5:2.5:2.5)を使用して3時間脱保護した。TFA相を減圧下で濃縮し、次に粗製の脱保護リポペプチドを冷iPr2Oの添加によって沈澱させた。遠心分離した後、ペレットをiPr2Oで2度洗浄し、高真空下で乾燥させた。生成物をH2O/MeCN/DMF(4:4:2)に溶解し、セミ分取用C4カラム(Interchrom UP5WC4‐25M;10mm×250mm、10μm、300Å)を用いた逆相HPLCによって、15分間に水(+0.1%TFA)中で50〜100%アセトニトリルのグラジエントを使用して精製した。生成物を含むフラクションを凍結乾燥してコンジュゲート6を得た。コンジュゲート6を、分析用C4カラム(Interchrom UP5WC4−25QS;4.6mm×250mm、10μm、300Å)を用いた逆相HPLCによって、20分間に水(+0.1%TFA)中で50〜100%アセトニトリルのグラジエントを使用して分析した:純度>98%。tR=17.2分。ESI‐MS(陽イオンモード)(m/z):1587.7[M+4H]4+;1269.6[M+5H]5+;1058.3[M+6H]6+;907.0[M+7H]7+(M実測値=6342.9±0.01%;M計算値=6342.6)。
【0115】
実施例3:リポペプチド7
【0116】
【化16】
この分子のペプチド部分(配列番号2)は、設計したコイルドコイルヘプタドリピート配列を、HIV‐1のJR‐FL株のgp41タンパク質から得られた天然のコイルドコイル配列に融合させたものを含んでいる。したがってこのコイルドコイル配列は、一部は天然のものであり一部は設計されたものである。さらに、ジペプチド‐SG‐をN末端に付加して脂質の前の短いスペーサとして作用させ、またC末端にはジペプチド‐CG‐を取り付けてCys残基中のチオール基を抗原とのコンジュゲートに使用できるようになっている。
【0117】
該ペプチドを、活性化のためのHBTU/HOBt/DIEAと、Fmoc‐Glyを搭載した2‐クロロトリチルクロリド樹脂(0.34mmol/g、500mg)とを使用して組み立てた。使用したアミノ酸は、Fmoc‐Ala‐OH、Fmoc‐Arg(Pbf)‐OH、Fmoc‐Asp(tBu)‐OH、Fmoc‐Cys(Trt)‐OH、Fmoc‐Gly‐OH、Fmoc‐Gln(Trt)‐OH、Fmoc‐Glu(tBu)‐OH、Fmoc‐His(Boc)‐OH、Fmoc‐Ile‐OH、Fmoc‐Leu‐OH、Fmoc‐Pro‐OH、Fmoc‐Lys(Boc)‐OH、Fmoc‐Met‐OH、Fmoc‐Ser(tBu)‐OH、Fmoc‐Tyr(tBu)‐OH、Fmoc‐Trp(Boc)‐OHおよびFmoc‐Val‐OHであった。6倍過剰量のFmocアミノ酸および8等量のDIEAを使用した。各カップリングサイクルの後、残っている遊離アミノ基をAc2O/HOBt/DIEAでキャッピングした。組み立ておよび末端Fmoc基の除去の後、樹脂をDMF(5×6ml)、i‐PrOH(5×6ml)およびn−ヘキサン(4×6ml)で洗浄し、乾燥させた。脂質部分をカップリングするために、樹脂(957mg)をCH2Cl2中で30分間膨潤させた。CH2Cl2/DMF(2:1)(3.5ml)中の、Fmoc‐Cys((RS)‐2,3‐ジ(パルミトイルオキシ)‐プロピル)‐OH(Fmoc‐Pam2Cys‐OH、174mg)、PyBOP(101mg)およびHOBt(26mg)の溶液を添加し、続いてDIEA(1.6等量)を添加した。この混合物を、振盪機上でr.t.にて18時間穏やかに撹拌した。樹脂をCH2Cl2(5×6ml)およびDMF(5×6ml)で洗浄した。Fmoc保護基を、DMF中の20%(v/v)ピペリジンを用いた処理(2mlで2分間×6回)で除去した。脱保護は301nmでのUV吸収によって観察した。樹脂を、DMF(5×10ml)、i‐PrOH(5×6ml)、およびnヘキサン(4×6ml)およびCH2Cl2(2×6ml)で洗浄した。ペプチジル樹脂を、CH2Cl2中の0.6%TFAで処理し(4.5mlで2分間×4回)、続いてCH2Cl2で洗浄した。濾液を合わせ、減圧下で蒸発させた。続いて、TFA/EDT/チオアニソール/フェノール/H2O/TIS(69:10:10:5:3.5:1)(9.85ml)を用いてr.t.で2時間穏やかに撹拌する処理によって側鎖保護基を除去した。脱保護されたペプチドを、予め−20°に冷却したiPr2Oの中で沈澱させ、iPr2O(15ml)で3回洗浄した。沈殿物を一晩空気乾燥させ、分取用C4カラム(Interchrom)を用いたRP‐HPLCによって、28分間にH2O(+0.1%TFA)中で30〜100%MeCNのグラジエントを使用して、コイルドコイルリポペプチドを精製した。収量:45mg。RP‐HPLC(Interchrom C4カラム、12.5分間にH2O(0.1%TFA)中で50〜100%MeCN):純度>97%、tR=11.92分。LC‐MS:C8カラム、10分間にH2O(+0.1%HCOOH)中で30〜100%MeCN:tR=5.47分;m/z=1342.5[M+5H]5+、1118.9[M+6H]6+、959.3[M+7H]7+、893.4[M+8H]8+、746.6[M+9H]9+。MALDI‐TOF:C308H532N76O82S3について計算したm/z:6704.9;観測されたm/z:6704.7[M]+。
【0118】
実施例4:リポペプチド8
【0119】
【化17】
リポペプチド8は、設計したコイルドコイル(配列番号3)がN末端で短いリンカーを介してリン脂質に結合したものを含んでいる。
【0120】
ペプチド(配列番号3)は、Fmoc法を使用し、活性化のためのHBTU/HOBt/DIEAと2‐クロロトリチルクロリド樹脂(0.42mmol/g、595mg、0.25mmolスケール)とを使用して組み立てた。使用したアミノ酸はFmoc‐Ala‐OH、Fmoc‐Glu(tBu)‐OH、Fmoc‐Ile‐OH、Fmoc‐Lys(Boc)‐OHおよびFmoc‐Cys(Trt)‐OHであった。4倍過剰量のFmoc保護アミノ酸および6等量のDIEAを使用した。各カップリングサイクルの後、残存している遊離アミノ基をAc2O/HOBt/DIEAでキャッピングした。ペプチド鎖の組み立ておよび末端Fmoc基の除去の後、樹脂をDMF(5×6ml)、i‐PrOH(5×6ml)およびnヘキサン(4×6ml)で洗浄し、減圧下で乾燥させた。脂質部分をカップリングするために、樹脂(250mg)をDCM中で30分間膨潤させた。DCM/DMF(1:2)(4.5ml)中のPE‐succ‐OH(113mg)、PyBOP(66mg)およびHOBt(17mg)の溶液を添加し、続いてDIEA(31μl、300μmol、6.0等量)を添加した。この混合物を、振盪機でr.t.にて16時間穏やかに撹拌した。樹脂をDMF(5×6ml)およびDCM(2×6ml)で洗浄した。ペプチジル樹脂をDCM中の0.6%TFAで処理し(4.5mlで2分間を4回)、続いてDCMで洗浄した。濾液を合わせ、減圧下で蒸発させた。その後、TFA/EDT/チオアニソール/H2O/TIS(75:10:10:4:1)(10ml)を用いてr.t.で2時間穏やかに撹拌することにより側鎖保護基を除去した。脱保護されたペプチドを、予め−20°に冷却したiPr2Oで沈澱させ、iPr2Oで3回洗浄した。分取用C4カラム(Interchrom)を用いた逆相HPLCにより、28分間にH2O(+0.1%TFA)中で30〜100%MeCNのグラジエントを使用して、リポペプチド8を精製した。収量:15mg。RP‐HPLC(Interchrom C4カラム、12.5分間にH2O(0.1%TFA)中で50〜100%MeCN):純度>96%、tR=12.54分。ESI‐MS:C267H474N57O79PSについて計算したm/z:5810.0;観測されたm/z:1453.3[M+4H]4+、1162.5[M+5H]5+。
【0121】
実施例5:4‐マレイミドブチリル‐ヒドラジノグリシニル基を担持する抗原V3SS、12
【0122】
【化18】
V3SSと呼ばれるジスルフィド架橋ペプチドは、主としてHIV‐1のgp120糖タンパク質のいわゆるV3ループから得られる。この配列(配列番号4)はgp120のいわゆる主要中和決定基を表し、潜在的なHIV‐1ワクチン候補として広く研究されてきた[ホアン、C.C.(Huang, C.-C.)ら、Science (2005), 310, 1025-1028;パントフレット、R.(Pantophlet, R.)ら、Annu. Rev. Immunol. (2006), 24, 739-769]。したがって、ジスルフィド架橋ペプチドV3SSはgp120のV3ループのエピトープミメティックである。
【0123】
V3SS(配列番号4)のN末端にはヒドラジノグリシン(Z)残基が付加されているので、求核性のヒドラジノ基を使用して該ペプチドをLBBにカップリングすることができる。ペプチド鎖を、標準的な固相法およびFmoc法を使用して2‐クロロトリチルクロリド樹脂上で組み立てた。トリBocで保護したヒドラジノグリシン残基をN末端に付加した。樹脂から切り離して十分に脱保護した後、空気酸化によってジスルフィド結合を導入した。最後に、N‐ヒドロキシスクシンイミジル‐4‐マレイミドブチラート(HMB)リンカーをN末端のヒドラジノ基と部位特異的に反応させて生成物12を得た。
【0124】
直鎖ペプチドZ‐NCRKSIHIGPGRAFYTTGCG(Zが配列番号4に付加される;Zは‐NHNHCH2CO‐を意味する)を、標準的なFmoc法および2‐クロロトリチルクロリド樹脂を使用して、アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)社のABI 433Aペプチド合成機で合成した。Fmoc‐Gly‐OHを負荷した後、以下の側鎖保護アミノ酸:Fmoc‐Ala‐OH、Fmoc‐Asn(Trt)‐OH、Fmoc‐Arg(Pbf)‐OH、Fmoc‐Cys(Trt)‐OH、Fmoc‐Gly‐OH、Fmoc‐His(Trt)‐OH、Fmoc‐Pro‐OH、Fmoc‐Ile‐OH、Fmoc‐Lys(Boc)‐OH、Fmoc‐Ser(tBu)‐OH、Fmoc‐Thr(tBu)‐OHおよびFmoc‐Tyr(tBu)‐OHを合成に使用した。N末端残基として、Bocで保護したヒドラジノグリシンを、DMF(5ml)中のトリBoc‐ヒドラジノ酢酸(3等量)、PyBOP(3等量)およびDIEA(8等量)の溶液で樹脂を3時間処理することによりカップリングした。その後、樹脂を濾過し、DMF(5×)、次いでCH2Cl2(5×)で洗浄した。ペプチドを樹脂から切り出し、TFA/H2O/iPr3SiH/エタンジチオール(92.5:2.5:2.5:2.5)(15ml)で樹脂を2.5時間処理することにより脱保護した。濾過により樹脂を取り除き、濾液を減圧下で濃縮した後、冷iPr2Oの添加によって粗製の脱保護直鎖ペプチドを沈澱させた。遠心分離した後、ペレットをiPr2Oで2回洗浄し、高真空下で乾燥させて白色固形物を得た。生成物を、分取用C18カラム(Zorbax Eclipse XDB‐C18;21.2mm×250mm、7μm、80Å)を用いる逆相HPLCによって、16分間に水(+0.1%TFA)中で10〜50%アセトニトリルのグラジエントを使用して精製し、還元されたジチオール形態の純粋な直鎖ペプチドを得た。このペプチドを、逆相HPLC(分析用C18カラムZorbax Eclipse XDB‐C18;4.6mm×250mm、5μm、80Å)によって、20分間に水(+0.1%TFA)中で5〜50%アセトニトリルのグラジエントを使用して分析した:純度>98%;tR=14.2分。MALDI‐TOF(m/z):2211.2[M+1H]1+(M実測値=2210.2±0.01%;M計算値=2210.4)。
【0125】
酸化(ジスルフィド架橋の形成)については、H2O(20ml)中の直鎖ペプチド(20mg)の溶液を、空気中r.t.で48時間撹拌した。対応するジスルフィド架橋ペプチドを、分取用C18カラム(Zorbax Eclipse XDB‐C18;21.2mm×250mm、7μm、80Å)を用いた逆相HPLCによって、16分間に水(+0.1%TFA)中で12〜40%アセトニトリルのグラジエントを使用して直接精製し、15mgの酸化ペプチドを得た。酸化(ジスルフィド架橋)ペプチドを、逆相HPLC(分析用C18カラムZorbax Eclipse XDB‐C18;4.6mm×250mm、5μm、80Å)によって、20分間に水(+0.1%TFA)中で5〜50%アセトニトリルのグラジエントを使用して分析した:純度>98%;tR=14.2分。MALDI‐TOF(m/z):2209.0[M+1H]1+(M実測値=2208.0±0.01%;M計算値=2208.4)。
【0126】
H2O(30ml)中のジスルフィド架橋ペプチド(30mg)をH2O(3ml)に溶解し、NaOH(0.2N)を使用してpHをpH6に調節した。ここに、N‐ヒドロキシスクシンイミジル‐4‐マレイミドブチラート(HMB)(3等量、11mg)のTHF溶液(450μl)を添加し、反応混合物をr.t.で2時間撹拌した。その後、溶液をH2O/TFA0.1%(2ml)で希釈し、生成物を、分取用C18カラム(Zorbax XDB‐C18;21.2mm×250mm、7μm、80Å)を用いる逆相HPLCによって、16分間に水(+0.1%TFA)中で10〜50%MeCNのグラジエントを使用して精製し、21mgのペプチド12を得た。ペプチド12を、C18カラム(Zorbax Eclipse XDB‐C18;4.6mm×250mm、5μm、80Å)を用いる逆相HPLCによって、20分間に水(+0.1%TFA)中で5〜50%アセトニトリルのグラジエントを使用して分析した:純度>98%;tR=14.7分。MALDI‐TOF(m/z):2374.3[M+1H]1+(M実測値=2373.3±0.01%;M計算値=2373.4)。
【0127】
実施例6:4‐マレイミドブチリル基を担持する抗原LY‐CH、LY‐CH‐HMB
【0128】
【化19】
実施例5のように、HMBリンカーを、有機小分子ハプテンであるルシファーイエロー‐CH(LY‐CH)と呼ばれる黄色色素とカップリングして、コンジュゲートLY‐CH‐HMBを得た。
【0129】
ルシファーイエロー‐CH(LY‐CH)(スイス国ブーフ所在のフルカ(Fluka)社製、12.5mg)をH2O/CH3CN(1ml、4:1)に溶解し、溶液のpHを0.2NのNaOHで6.5に調節した。この溶液に、THF(400μl)中のN‐ヒドロキシスクシンイミジル‐4‐マレイミドブチラート(HMB)(15mg、2等量)の溶液を添加し、反応混合物をr.t.で6時間撹拌した。H2O/TFA0.1%(2ml)で希釈した後、生成物を、分取用C18カラム(Zorbax;21mm×250mm、10μm、120Å)を用いた逆相HPLCによって、15分間に水(+0.1%TFA)中で5〜50%アセトニトリルのグラジエントを使用して直接精製し、9.6mgのLY‐CH‐HMBを黄色固形物として得た。ESI‐MS(m/z):608.0[M−H]−、630.9[M+Na−2H]−(陰イオンモード)。
【0130】
実施例7:コンジュゲートLBB6‐12
ペプチド12(実施例5、5.9mg)をH2O/CH3OH(4:1)(750μl)に溶解し、溶液のpHをNaOH(0.2N)で6.5に調節した。これに、リポペプチド6(実施例2、6.6mg)をH2O/CH3OH(1:1)に溶解した溶液(800μl)を添加し、反応混合物を不活性雰囲気下にてr.t.で2時間撹拌した。H2O/TFA0.1%(2mL)で希釈した後、生成物を、セミ分取用C4カラム(Interchrom UP5WC4‐25M;10mm×250mm、10μm、300Å)を用いた逆相HPLCによって、15分間に水(+0.1%TFA)中で50〜100%MeCNのグラジエントを使用して直接精製し、4mgのLBB6‐12を得た。このコンジュゲートを、分析用C4カラム(Interchrom UP5WC4‐25QS;4.6mm×250mm、10μm、300Å)を用いた逆相HPLCによって、20分間に水(+0.1%TFA)中で50〜100%アセトニトリルのグラジエントを使用して分析した:純度>98%。tR=15.4分。MALDI‐TOF(m/z):8717.4[M+1H]1+(M実測値=8716.4±0.01%;M計算値=8716.3)。
【0131】
実施例8:コンジュゲートLBB6‐LY‐CH
リポペプチド6(実施例2、1.1mg、177nmol)のH2O/MeCN/TFE(1:4:1)(600μl)中の溶液を撹拌している中に、LY‐CH‐HMB(実施例6、440μg)のH2O/MeCN(1:1)溶液(400μl)を少量ずつ添加した。0.01NのNaOHでpHをpH6.3に注意深く調節し、混合物をr.t.で2時間激しく撹拌した。リポペプチド6およびルシファーイエローコンジュゲートは様々なH2O/MeCNグラジエントについてC4およびC8のRP‐HPLCカラム上で同一の保持時間を有するので、反応後にESI‐MSを使用してリポペプチド6の消失をモニターした。反応が完了したらすぐに、該懸濁物を0.1%TFA(500μl)の添加により希釈し、付加生成物を、C4カラムを用いるセミ分取逆相HPLC(Interchrom、UP5WC4‐25M、10mm×250mm、10m、300Å孔径、A=H2O+0.1%TFA、B=MeCN+0.1%TFA、16.5分間に50〜100%B)によって過剰なLY‐CH‐HMBから分離した。LBB6‐LY‐CHコンジュゲートは、tR=13.38分の鋭いピークとして溶出された。収量:1.0mg(82%)。生成物を、分析用C4カラム(Interchrom;4.6mm×250mm、10m、300Å)を用いる逆相HPLC、およびLC‐MS(Zorbax C8、イオン源、検出器)によって分析した。分析用RP‐HPLC(C4カラム、A=H2O+0.1%TFA、B=MeCN+0.1%TFA、13分間に50〜100%B):純度:>95%。tR=13.0分。LC‐MS(C8カラム、A=H2O+HCOOH、B=MeCN+HCOOH、10分間に30〜100%B):保持時間=7.73分。m/z:1392.4[M+5H]5+、1160.3[M+6H]6+、994.3[M+7H]7+(C307H514N74O99PS3Liについて計算したm/z:1392.2[M+5H]5+、1160.3[M+6H]6+、994.7[M+7H]7+)。
【0132】
実施例9:コンジュゲートLBB7‐12
リポペプチド7(実施例3、3.5mg)のMeCN/H2O/TFE(4:1:1)(1.2ml)中の溶液を撹拌している中に、MeCN/H2O(1:1)(400μl)中の12(実施例5、3.7mg)の溶液を添加した。0.1NのNaOHを用いてpHをpH=6.0に注意深く調節した。該混合物をr.t.で2時間撹拌した。反応の完了(C8カラムを使用してLC‐MSによって検出)の後に、コンジュゲートLBB7‐12を、C4カラム(Interchrom)を用いるセミ分取用RP‐HPLCによって、17分間にH2O(+0.1%TFA)中で30〜100%MeCNのグラジエントを使用して直接精製した。収量:4.1mg(87%)。RP‐HPLC(C4カラム、12.5分間にH2O(0.1%TFA)中で50〜100%MeCN)):純度>97%、保持時間=10.72分。LC‐MS(C8カラム、10分間にH2O(+0.1%HCOOH)中で30〜100%MeCN):tR=5.53分、m/z=1010.4[M+9H]9+、909.8[M+10H]10+、827.2[M+11H]11+、758.3[M+12H]12+、700.0[M+13H]13+。MALDI‐TOF:C409H685N109O112S5について計算したm/z:9082.0;観測されたm/z:9082.8[M]+、4542.1[M]2+。
【0133】
実施例10:コンジュゲートLBB7‐LY‐CH
LBB7‐LY‐CHの合成および精製は、リポペプチド7(3.0mg)およびLY‐CH‐HMB(実施例6、1.1mg)を使用して、実施例9にLBB7‐12について述べたようにして実施した。収量:2.8mg(86%)。RP‐HPLC(Interchrom C4カラム(12.5分間にH2O(0.1%TFA)中で50〜100%MeCN):純度>96%、tR=11.91分。LC‐MS:C8カラム、5分間にH2O(+0.1%HCOOH)中で66〜100%MeCN:tR=2.7分、m/z=1464.9[M+5H]5+、1220.7[M+6H]6+、1046.5[M+7H]7+、915.9[M+8H]8+。MALDI‐TOF:C329H549N82O94S5Liについて計算したm/z:7324.8;観測されたm/z:7336.6[M−Li+Na]+、7320.4[M]+、3660.0[M]2+。
【0134】
実施例11:免疫化
HLBおよびSVLPの1つの重要な用途は、免疫応答を高めるための免疫系へのワクチン成分の送達にある。抗原を搭載したHLBまたはSVLPで動物を免疫化すると、効率的な抗原特異的免疫応答が誘発されるはずである。これが可能であることを実証するために、LBB6‐12、LBB6‐LY‐CH、LBB7‐12およびLBB7‐LY‐CHを用いてウサギを免疫化した。さらに、最初の3つのコンジュゲートは、フロイントの完全/不完全アジュバントを使用する場合および不使用の場合について試験した。DLSの検討から、各コンジュゲートが水溶液中で自然に自己集合することによりHLBまたはSVLPを形成することが示された。
【0135】
400μlのPBS(10mMリン酸ナトリウム、154mM NaCl、pH7.2)の中で、またはフロイントのアジュバント(初回免疫にはフロイントの完全アジュバント(FA)、追加免疫にはフロイントの不完全アジュバント(FIA))とともに、r.t.で少なくとも1時間再構成および平衡化した1種類のコンジュゲート150μgを用いて、ウサギ(1群2羽)を免疫化した。免疫化は第0日、第28日および第56日に実施した。第14日、第38日および第66日に血清を採取した。血清を酸素結合免疫吸着検査法(ELISA)によって分析し、免疫化に使用したコンジュゲートに結合する抗体を検出した。結果を表1に示す。
【0136】
表1.コンジュゲートの免疫原性
各コンジュゲートを用いてそれぞれ2羽のウサギ(aおよびb)を1回(1°)、2回(2°)および3回(3°)免疫化した後に達成されたlog10(終点)力価を示す。免疫前血清試料は、対応する免疫原との有意な反応性を示さなかった。例えば、log10(終点)力価5.00は力価100,000に相当する。
【0137】
【表1】
表1からわかるように、すべてのコンジュゲートが第2の追加免疫後に高い抗体レベルを引き起こした。ほとんどの初回の抗血清(力価は1:100〜1:15,000に及ぶ)において既に反応が検出可能であり、抗体価の最も急激な上昇は2回目の免疫化の後に観察され、2回目の免疫化から3回目の免疫化については軽微な上昇が見られた。アジュバントを使用せずに到達した抗体価は、フロイントアジュバントを使用して達成された抗体価と同じか、またはそれより高いことも明らかとなった。これは、アジュバントを使用せずに良好な免疫応答を達成させることができることを示している。
【0138】
各々のハプテン特異的免疫応答の特異性についてもELISAによって分析した(表2)。ここでは、各コンジュゲートによって誘導された抗体が異なるLBBに付着された同じ抗原と交差反応する能力を測定した。結果から、免疫応答のかなりの部分が各LBBに付着された抗原に対して指向性を有することが示された。
【0139】
表2.ハプテン特異的免疫応答の特異性
各免疫原に対して生成された抗体を、各抗原との交差反応に関してELISAで試験した。各コンジュゲートを用いてそれぞれ2羽のウサギ(aおよびb)を1回(1°)、2回(2°)および3回(3°)免疫化した後に達成されたlog10(終点)力価を示す。
【0140】
【表2】
ELISA
ELISA用マイクロタイタープレート(ヌンク(Nunc) lmmunoplate(TM) Polysorb(R) F96)を、PBSに溶解した各抗原の5μg/ml溶液で一晩コーティング処理した。その後、ウェルを0.05%のトゥイーン20を含むPBS(PBST)で洗浄し、5%脱脂粉乳を含むPBSでr.t.にて1時間ブロッキング処理した。ブロッキング処理の後、ウェルをPBSTで3回洗浄し、0.05%トゥイーン20と0.5%脱脂粉乳とを含むPBS(MPBST)で系列希釈したウサギ血清とともにr.t.にて2.5時間インキュベートし、続いてPBSTで3回洗浄した。その後、プレートを、アルカリホスファターゼ結合型マウス抗ウサギIgG抗体(シグマ(Sigma))(MPBST中で1:20000に希釈)とともに、r.t.で1時間インキュベートし、再びPBSTで3回洗浄し、基質バッファー(50mM炭酸ナトリウムバッファー、1mM MgCl2、pH9.6)中のパラニトロフェニルリン酸(シグマ)1mg/ml溶液とともに暗所でr.t.にてインキュベートした。適切な時間を経た後、バイオラッド(Bio-Rad)社のモデル3550マイクロプレートリーダを使用して405nmで吸光度を読み取った。
【0141】
実施例12:リポペプチド9
【0142】
【化20】
この実施例は、実施例4のリポペプチド8のIEKKIEAヘプタドリピートモチーフをベースとして、さらにユニバーサルなヘルパーT細胞エピトープ[シニガーリャ、F.(Sinigaglia, F.)ら、Nature (1988), 336, 778-780に記載]が正確に融合しており、かつC末端に、溶解度および安定性を改善し、抗原の結合を可能にするための追加の残基を含む。
【0143】
直鎖ペプチドGGIEKKIEAIEKKIEAIEKKIEAIEKKIEAIEKKIAKMEKASSVFNVVNSKKKCa−NH2(配列番号28、「a‐NH2」で表されたD‐アラニンアミドがC末端に付加されている)を、標準的なFmoc法およびRinkアミドMBHA樹脂を使用して、アプライドバイオシステムズ社のABI 433Aペプチド合成機で合成した。活性化のためのHBTU、HOBtおよびDIEAを使用して樹脂に最初にFmoc‐D‐アラニンを載せた後、以下の保護アミノ酸を正確な順序で使用してペプチドを組み立てた:Fmoc‐Ala‐OH、Fmoc‐Asn(Trt)‐OH、Fmoc‐Cys(Trt)‐OH、Fmoc‐Glu(tBu)‐OH、Fmoc‐Gly‐OH、Fmoc‐Ile‐OH、Fmoc‐Lys(Boc)‐OH、Fmoc‐Met‐OH、Fmoc‐Phe‐OH、Fmoc‐Ser(tBu)‐OHおよびFmoc‐Val‐OH。各カップリングサイクルの後で、残存している遊離アミノ基をAc2O/HOBt/DIEAを使用してアセチル化した。鎖の組み立てが完了して末端のFmoc保護基を除去した後、樹脂をDMF(5×6ml)、CH2Cl2(5×6ml)およびMeOH(5×6ml)で洗浄し、KOHペレット上で減圧下にて乾燥させた。脂質部分のカップリングについては、樹脂(325mg)をCH2Cl2(6ml)中で45分間膨潤させた。CH2Cl2/DMF(1:2)(4.5ml)中のPE‐Succ‐OH(120mg、150μmol)、PyBOP(78mg、150μmol)、HOBt(20mg、150mmol)およびDIEA(100μl、0.6mmol)の溶液を添加した。該混合物を20時間振盪した。樹脂を濾過し、DMF(5×6ml)、CH2Cl2(5×6ml)およびMeOH(5×6ml)で洗浄し、KOHペレット上で減圧下にて乾燥させた。切り出しおよび側鎖保護基の除去については、樹脂を、TFA/チオアニソール/EDT/H2O/TIS(75:10:10:4:1)(10ml)で2.5時間振盪しながら処理した。樹脂を濾過し、ペプチドをiPr2O(予め−20°に冷却)で沈澱させてiPr2O(3×25ml)で洗浄した。沈殿物を一晩空気乾燥させ、分取用C4カラム(Interchrom)を用いる逆相HPLCによって、28分間にH2O(+0.1%TFA)中で30〜100%MeCNのグラジエントを使用してリポペプチドを精製した。収量:37mg。分析用逆相HPLC(Interchrom C4カラム、25分間にH2O(+0.1%TFA)中で25〜100%MeCN):純度>96%、tR=22.10分。LC‐MS(Zorbax C8カラム、10分間にH2O(+0.1%HCOOH)中で30〜100%MeCN):tR=5.32分;ESI‐MS m/z=990.3[M+7H]7+;866.6[M+8H]8+;770.2[M+9H]9+;693.3[M+10H]10+。MALDI‐TOF:C315H557N74O90PS2について計算したm/z:6916.3;観測されたm/z:6916.8[M+H]+。
【0144】
実施例13:リポペプチド10
【0145】
【化21】
この実施例は実施例12と同じペプチド配列を使用するが、リン脂質に基づいた脂質頭部基の代わりにPam2‐システインに基づいた脂質頭部基(Cys((RS)‐2,3‐ジ(パルミトイルオキシ)‐プロピル))を含む。
【0146】
リポペプチド9について上述したように、標準的なFmoc法およびRinkアミドMBHA樹脂を使用して、アプライドバイオシステムズのABI 433Aペプチド合成機で直鎖ペプチドを合成した。ペプチド鎖のN末端への脂質部分のカップリングについては、樹脂(280mg)をCH2Cl2(6ml)中で30分間膨潤させた。CH2Cl2/DMF(1:2)(4.5ml)中のFmoc‐Cys((RS)‐2,3‐ジ(パルミトイルオキシ)‐プロピル)‐OH(134mg、150μmol)、PyBOP(78mg、150μmol)、HOBt(20mg、150μmol)およびDIEA(100μl、0.6mmol)の溶液を添加した。該混合物を室温で20時間振盪した。樹脂を濾過し、DMF(5×6ml)およびCH2Cl2(5×6ml)で洗浄した。Fmoc保護基を除去するために、樹脂をDMF中20%ピペリジン(4.5mlで2分を5回)で処理した。Fmoc保護基を完全に除去した後、樹脂をDMF(5×6ml)、CH2Cl2(5×6ml)およびMeOH(5×6ml)で洗浄し、KOHペレット上で減圧下にて乾燥させた。切り出しおよび側鎖保護基の除去については、樹脂を、TFA/チオアニソール/EDT/H2O/TIS(75:10:10:4:1)(10ml)で2.5時間振盪しながら処理した。リポペプチド9について上述したようにして、リポペプチドを沈澱させて精製した。収量:45mg。分析用逆相HPLC(Interchrom C4カラム、25分間にH2O(+0.1%TFA)中で25〜100%MeCN):純度>96%、tR=22.71分。LC‐MS(Zorbax C8カラム、10分間にH2O(+0.1%CHOOH)中で30〜100%MeCN):tR=4.87分;ESI‐MS m/z=851.1[M+8H]8+;756.9[M+9H]9+;681.3[M+10H]10+;618.1[M+11H]11+。MALDI‐TOF:C312H552N74O85S3について計算したm/z:6796.4;観測されたm/z:6798.2[M+H]+。
【0147】
実施例14:ガンマ‐マレイミドブチリル基を担持する抗原、GMB‐L21
【0148】
【化22】
ペプチド配列は、主としてマラリア原虫の熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)のスポロゾイト周囲(CS)タンパク質のNPNAリピート領域から得られるが、該タンパク質はマラリアワクチン候補としての可能性について広く研究されてきたものである[ヘリングトン、D.A.(Herrington, D. A.)ら、Nature (1987), 328, 257-259]。C末端には、安定性を改善するために追加のD‐アラニンアミド(「a‐NH2」と表示されている)が付加されている。ガンマ‐マレイミドブチリル(GMB)基は、リポペプチド9またはリポペプチド10のシステイン残基とコンジュゲート可能なように付加されている。
【0149】
直鎖ペプチドNPNANPNANPNANPNANPNAa‐NH2(配列番号30、追加のD‐アラニンアミドがC末端に付加されている)を、標準的なFmoc法およびRinkアミドMBHA樹脂(搭載量0.69mmol/g、362mg)、ならびに活性化のためのHBTU/HOBt/DIEAを使用して、アプライドバイオシステムズ社のABI 433Aペプチド合成機で合成した。使用したアミノ酸は、Fmoc‐Ala‐OH、Fmoc‐D‐Ala‐OH、Fmoc‐Asn(Mtt)‐OHおよびFmoc‐Pro‐OHであった。鎖の組み立てが完了して末端のFmoc保護基を除去した後、樹脂をDMF(5×6ml)、DCM(5×6ml)およびMeOH(5×6ml)で洗浄し、KOHペレット上で減圧下にて乾燥させた。ペプチドを切り出し、TFA/TIS/H2O(95:2.5:2.5)(10ml)で4時間処理することにより側鎖保護基を除去した。ペプチドをiPr2O(予め−20°に冷却)で沈澱させてiPr2O(3×25ml)で洗浄した。沈殿物を減圧下で乾燥させ、分取用C18カラム(Zorbax)を用いる逆相HPLCによって、28分間にH2O(+0.1%TFA)中で10〜30%MeCNのグラジエントを使用してペプチドを精製した。収量:162mg。分析用逆相HPLC(Interchrom C4カラム、21分間にH2O(+0.1%TFA)中で5〜30%MeCN):純度>95%、tR=8.77分。LC‐MS(Zorbax C8カラム、10分間にH2O(+0.1%CHOOH)中で5〜100%MeCN):tR=3.61分;ESI‐MS m/z=691.6[M+3H]3+。MALDI‐TOF:C83H127N31O32について計算したm/z:2071.1;観測されたm/z:2069.9[M+H]+。
【0150】
ペプチドにGMBリンカーをカップリングするために、THF(0.5ml)中の4‐マレイミドブチリル‐N‐ヒドロキシスクシンイミドエステル(N‐スクシンイミジル‐4‐マレイミドブチラート、14.0mg、49.2μmol、6等量)の溶液を、5mM NH4OAc、pH6.5(0.5ml)中のペプチド(17.0mg、8.2μmol)の撹拌中の溶液に少量ずつ添加した。該混合物を4°で20時間撹拌し、凍結乾燥し、分取用C18カラム(ウォーターズ(Waters))を用いる逆相HPLCによって、20分間にH2O(+0.1%TFA)中で10〜40%MeCNのグラジエントを使用して生成物GMB‐L21を精製した。収量:10.4mg。分析用逆相HPLC(Zorbax C18カラム、25分間にH2O(+0.1%TFA)中で5〜30%MeCN:純度>95%、tR=13.02分。LC‐MS(Zorbax C18カラム、10分間にH2O(+0.1%CHOOH)中で5〜100%MeCN):tR=3.15分;ESI‐MS m/z=746.5[M+3H]3+。
【0151】
実施例15:3‐マレイミド‐プロピオニルおよびポリエチレングリコールスペーサ基を担持する抗原、PEO8‐L21
【0152】
【化23】
CSタンパク質のNPNAリピート領域に基づいた実施例14と同じ抗原を、3‐マレイミド‐プロピオニル基およびポリエチレングリコール[O‐(2‐アミノエチル)‐O’‐(2‐カルボキシエチル)‐ヘプタエチレングリコール]をベースとしたスペーサ基に付着させる。マレイミド基により、リポペプチドビルディングブロック中のシステイン残基との結合が可能となる。
【0153】
上述のようにして実施例14と同じ直鎖ペプチドを合成した。マレイミドリンカーをカップリングするために、ペプチド(10.0mg、4.8μmol)を5mM NH4OAc、pH6.5(0.5ml)に溶解した溶液を、THF(0.5ml)に溶解したO‐[N‐(3‐マレイミドプロピオニル)‐2‐アミノエチル]‐O’‐[3‐(N‐スクシンイミジルオキシ)‐S‐オキソプロピル]‐ヘプタエチレングリコール(5.0mg、7.2μmol、1.5等量)に添加した。収量:7.2mg。分析用逆相HPLC(Interchrom C4カラム、21分間にH2O(+0.1%TFA)中で5〜30%MeCN):純度>98%、tR=14.27分。LC‐MS(Zorbax C18カラム、10分間にH2O(+0.1%CHOOH)中で5〜100%MeCN):tR=4.31分;ESI‐MS m/z=882.9[M+3H]3+。
【0154】
実施例16:コンジュゲートLBB9‐GMB‐L21
【0155】
【化24】
この実施例は、ペプチドまたは他のエピトープミメティックをどのようにリポペプチドビルディングブロック(LBB)9にカップリングすることができるかを例示する。ペプチド(エピトープミメティック)として分子GMB‐L21を使用し、これをリポペプチド9のCys残基にカップリングする。
【0156】
ペプチドGMB‐L21をリポペプチド9にカップリングするために、リポペプチド9(6.9mg、1.0μmol)のH2O/MeCN(1:1)(0.5ml)中の溶液を、H2O/MeCN(1:1)中のGMB‐L21の撹拌中の溶液(1ml、2.7mg、1.2μmol、1.2等量)に少量ずつ添加した。0.1NのNaOHを使用してpHをpH6.5に注意深く調節し、混合物を3時間撹拌した。カップリング反応が完了した後、0.1%TFAを含むH2O(2ml)で混合物を希釈し、セミ分取用C4カラム(Interchrom)を用いる逆相HPLCによって、17分間にH2O(+0.1%TFA)中で50〜100%MeCNのグラジエントを使用してコンジュゲートを精製した。収量:7.1mg。分析用逆相HPLC(Interchrom C4カラム(25分間にH2O(+0.1%TFA)中で25〜100%MeCN):純度>97%、tR=19.90分。LC‐MS(Zorbax C8カラム、10分間にH2O(+0.1%CHOOH)中で5〜100%MeCN)):tR=4.83分;ESI‐MS m/z=1310.2[M+7H]7+;1145.9[M+8H]8+;1019.0[M+9H]9+;917.3[M+10H]10+;833.8[M+11H]11+;764.2[M+12H]12+。MALDI‐TOF:C406H691N106O125PS2について計算されたm/z:9152.6;観測されたm/z:9152.8[M+H]+。
【0157】
このリポペプチドコンジュゲートの自己集合特性を動的光散乱(DLS)によって分析した結果、この場合もバッファー水溶液中でSVLPが形成されることが示された。粒子の粒度分布は単峰性かつ高度に単分散性であり、生理学的条件下で安定な、およそ20nmの直径を有する高度に秩序立った粒子を示唆している。該粒子は高温(例えば37°)でも安定であった。
【0158】
実施例17:コンジュゲートLBB9‐PEO8‐L21
【0159】
【化25】
この実施例は、ペプチドまたは他のエピトープミメティックをどのようにリポペプチドビルディングブロック(LBB)9にカップリングすることができるかをさらに例示する。ペプチド(エピトープミメティック)として分子PEO8‐L21を使用し、リポペプチド9のCys残基にカップリングする。
【0160】
カップリングおよび精製は、リポペプチド9(6.0mg、0.9μmol)およびPEO8‐L21(4.5mg、1.7μmol、2等量)を使用して、LBB9‐GMB‐L21について上述したようにして実施した。収量:7.2mg。分析用逆相HPLC(Interchrom C4カラム、25分間にH2O(+0.1%TFA)中で25〜100%MeCN):純度>95%、tR=19.82分。LC‐MS(Zorbax C8カラム、10分間にH2O(+0.1%CHOOH)中で5〜100%MeCN):tR=4.93分;ESI‐MS m/z=1366.0[M+7H]7+;1196.9[M+8H]8+;1064.0[M+9H]9+;957.8[M+10H]10+。MALDI‐TOF:C424H727N108O133PS2について計算されたm/z:9561.1;観測されたm/z:9561.8[M+H]+。
【0161】
このリポペプチドコンジュゲートの自己集合特性を動的光散乱(DLS)によって分析した結果、この場合もバッファー水溶液中でSVLPが形成されることが示された。粒子の粒度分布は単峰性かつ高度に単分散性であり、生理学的条件下で安定な、およそ24nmの直径を有する高度に秩序立った粒子を示唆している。該粒子は高温(例えば37°)でも安定であった。
【0162】
実施例18:コンジュゲートLBB10‐GMB‐L21
【0163】
【化26】
この実施例は、ペプチドまたは他のエピトープミメティックをどのようにリポペプチドビルディングブロック(LBB)10にカップリングすることができるかを例証する。ペプチド(エピトープミメティック)として分子GMB‐L21を使用し、リポペプチド10のCys残基にカップリングする。
【0164】
カップリングおよび精製は、リポペプチド10(6.8mg、1.0μmol)およびGMB‐L21(2.7mg、1.2μmol、1.2等量)を使用して、LBB9‐GMB‐L21について上述したようにして実施した。収量:7.4mg。分析用逆相HPLC(Interchrom C4カラム、25分間にH2O(+0.1%TFA)中で25〜100%MeCN):純度>97%、tR=19.64分。LC‐MS(Zorbax C8カラム、10分間にH2O(+0.1%CHOOH)中で5〜100%MeCN):tR=4.81分;ESI‐MS m/z=1130.9[M+8H]8+;1005.7[M+9H]9+;905.3[M+10H]10+;822.7[M+11H]11+;754.4[M+12H]12+。MALDI‐TOF:C403H686N106O120S3について計算されたm/z:9032.6;観測されたm/z:9032.2[M+H]+。
【0165】
このリポペプチドコンジュゲートの自己集合特性を動的光散乱(DLS)によって分析した結果、この場合もバッファー水溶液中でSVLPが形成されることが示された。粒子の粒度分布は単峰性かつ高度に単分散性であり、生理学的条件下で安定な、およそ20nmの直径を有する高度に秩序立った粒子を示唆している。該粒子は高温(例えば37°)でも安定であった。
【0166】
実施例19:LBB9‐GMB‐L21、LBB9‐PEO8‐L21およびLBB10‐GMB‐L21を用いた免疫化
この実施例は、上述のコンジュゲートが、動物に注射すると高度に免疫原性であり、強力な体液性免疫応答を誘発することを示す。実施例11に記載されているようにして免疫化を実施した。
【0167】
したがって先述のように、ニュージーランドホワイト種のウサギ(1群2羽)を、PBS(pH7.4)(400μl)中で調剤した150μgのリポペプチド(LBB9‐PEO8‐L21またはLBB10‐GMB‐L21のいずれか)を用いて皮下注射により免疫化した。免疫化は第0日、第28日および第56日に実施した。採血は第0日、第14日、第38日および第66日に実施した。血清をIgG反応についてELISAによって分析した。表3は、達成された終点力価をまとめたものである。これらの免疫化ではアジュバントは使用しなかった。
【0168】
さらに、免疫化した動物由来の血清は、熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト上のCSタンパク質に結合する高力価(>10,000)の抗体を含むことが免疫蛍光測定法によって示され、従ってこれらの構築物に対する免疫応答の大部分がNPNAリピートモチーフを含むペプチド抗原を対象としていることが示された。
【0169】
表3.コンジュゲートの免疫原性
各コンジュゲートを用いてそれぞれ2羽のウサギ(aおよびb)を1回(1°)、2回(2°)および3回(3°)免疫化した後に達成されたlog10(終点)力価を示す。免疫前血清試料は、対応する免疫原との有意な反応性を示さなかった。例えば、log10(終点)力価5.00は力価100,000に相当する。
【0170】
【表3】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝集してリポペプチドヘリックスバンドルおよび合成ウイルス様粒子となる、コイルドコイルドメインと任意選択で抗原とを含むリポペプチドビルディングブロックに関する。抗原を担持する合成ウイルス様粒子は、ワクチンとして有用である。
【背景技術】
【0002】
単離された小さなペプチドおよびタンパク質が通常はごく低い免疫抗原性しか持たないことは良く知られている。有名なフロイントの完全アジュバントのような有毒なアジュバントが、動物体内でのサブユニットワクチンに対する免疫応答を刺激するために広く使用されているが、多くアジュバントはその有毒な副作用のためヒトで使用することができない。理想的状態は、外部アジュバントの使用を完全に回避することであろうが、これでは一般に不十分な免疫応答しか得られない。しかしながら、(ヒトの)免疫系は、例えばウイルス表面のような表面の全域に反復的な抗原構造を提示する病原体に対して強健な免疫応答を生じる[非特許文献1]。
【0003】
リポソームは、薬物、核酸、および生物医薬品を含む医薬品の担体として過去30年にわたって大きな注目を集めてきており、また抗原、核酸および薬物の送達媒体としてのリポソームの適用はよく知られている。特定の受容体を標的とするために、リポソームの表面にペプチドまたはタンパク質を結合させることでリポソームの特性を変化させることができ、これはプロテオリポソームとして知られる系を作り出す。ペプチドおよびタンパク質は、免疫応答を生じさせる目的でもリポソームに組み込まれてきた[非特許文献2、3]。ペプチドを脂質とコンジュゲートさせると、脂質が二分子膜に固定されてペプチドがリポソーム内にはめ込まれ易くなり、その結果リポソームの表面でペプチドが抗体によって認識されるようになる。一般的な送達媒体としてのリポソームの欠点の1つは、血中からの急速な消失および細網内皮系の細胞による捕捉が原因で、in vivoで不安定なことである[非特許文献4]。
【0004】
ワクチンの設計において、ファージを含む天然もしくは遺伝子組換え型のウイルスおよびキメラ体、または天然もしくは遺伝子組換え型のウイルス構成成分、例えばカプシドタンパク質、表面タンパク質および糖タンパク質、もしくはこれらのフラグメントから構成されるウイルス様粒子を使用することの潜在的な利点は、以前から認識されてきた[非特許文献5〜7]。そのようなウイルス様粒子の生産には、天然のウイルスが自己集合するプロセスが利用される。多くのウイルスの自己集合性の天然のコア構造を利用し、組換えDNA技術を用いてこれらの粒子の表面上に1つ以上の抗原を提示することができる。これらのウイルス様粒子はサイズが大きく、構造が複雑であるため、化学合成によって入手することはできない。特許文献1、2は「合成ウイルス様粒子」に言及しているが、同文献で言及される粒子は、組換えDNA法および細胞を用いる方法を使用して作製された、天然もしくは遺伝子組換え型のウイルス粒子またはその構成成分に基づくものであり、化学合成によって生産された材料ではない。特許文献3には、組換え型シンビスウイルスを用いて例証された、抗原が規則正しい反復的な方法で付着された天然または非天然起源のコア粒子の使用について記載されている。
【0005】
ナノテクノロジー上の適用のために、自己集合性のペプチドおよびタンパク質を設計するための相当な努力もなされてきた。ナノスケールの形態は、設計された両親媒性ペプチドをベースとして生産されており[非特許文献8]、例えばβストランド、βシートおよびαへリックスの二次構造がある[非特許文献9、10]。ナノ構造を有する複合材料を調製するためのリポペプチドの使用の別の例は、スタップ(Stupp)および共同研究者の研究に見出される[非特許文献11]。両親媒性ペプチドは、自己集合してナノファイバーとなることが早くに示されている[非特許文献12]。
【0006】
合成抗原を基にした有効なワクチンの設計における主な問題のうちの1つは、免疫原性が不十分なことであった。比較的小さな合成分子は、免疫原性が低い傾向にある。この不十分な免疫原性を克服する1つの方法は、破傷風菌毒素またはキーホールリンペットヘモシニアン(KLH)のようなタンパク質などの担体に合成抗原を共有結合でコンジュゲートすることである[非特許文献13]。しかしながらこのコンジュゲートは、強い免疫応答を誘発するためにはなおアジュバント(例えばアラムまたはフロイントアジュバント)と一緒に動物に投与しなければならない。B細胞およびT細胞のエピトープを組み込んだ多重エピトープ構築物を生産するための、いくつかの他の方法が報告されている([非特許文献14]に総説がある)。
【0007】
合成の細菌リポペプチド・アナログは、そのアジュバント効果について、またペプチド抗原の担体としてのいずれに関してもワクチン研究において広く注目されてきた[非特許文献15]。脂質およびリポペプチドは、別の方法で弱いペプチド免疫原のアジュバントとして作用しうることが知られている[非特許文献16、17]。周知のアジュバント効果を備えた脂質がペプチドに連結されて、自身がアジュバントとして作用するワクチン候補が生成される、多くのリポペプチド構築物が報告されている。特によく研究されているのは、トリパルミトイル‐S‐グリセリルシステイン(N‐パルミトイル‐S‐(2,3‐ビス‐(O‐パルミトイルオキシ)‐プロピル)‐システイニル‐またはPam3Cys)、およびジパルミトイル‐S‐グリセリルシステイン(2,3‐ビス‐(O‐パルミトイルオキシ)‐プロピル)‐システイニル‐またはPam2Cys)である[非特許文献15]。これらの脂質部分は、グラム陰性菌の内膜および外膜のリポタンパク質成分中に見られる。N末端に上記または関連するジアシル化もしくはトリアシル化されたS‐グリセリルシステイン残基を担持する合成リポペプチドは、Toll様受容体の特異的リガンドであることが示されている[非特許文献18、19]。さらに、ペプチド抗原をPam3CysまたはPam2Cysとコンジュゲートさせることは、自身がアジュバントとして作用する合成ワクチン候補の設計に適用されてきた[非特許文献20〜22]。特許文献4には、ペプチド部分がトリプルヘリックス構造を引き起こすことのできるコラーゲン様の配列をとりうるリポペプチドの、薬物ターゲティングを目的とした使用について記載されている。
【0008】
コイルドコイル構造の設計について最近いくつかの総説が出されており[非特許文献23]、Advances in Protein Chemistryにはコイルドコイル、コラーゲンおよびエラストマーに費やされた巻もある[非特許文献24]。多くの天然のウイルスおよび微生物が、自身の表面タンパク質(例えばインフルエンザウイルスのヘマグルチニン、ヒト免疫不全ウイルス‐1(HIV‐1)のgp41、または呼吸器合胞体ウイルス(RSV)のF糖タンパク質)の内部にコイルドコイル構造のペプチド配列を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際特許出願公開第98/014564号パンフレット
【特許文献2】国際特許出願公開第00/035479号パンフレット
【特許文献3】国際特許出願公開第00/32227号パンフレット
【特許文献4】国際特許出願公開第98/07752号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】ツィンカーナーゲル、R.(Zinkernagel, R.)、Science (1996), 171, 173-178
【非特許文献2】レッサーマン、L.(Leserman, L.)、J Liposome Res (2004), 14, 175-189
【非特許文献3】フリッシュ、B.(Frisch, B.)ら、Methods Enzymol. (2003), 373, 51-73
【非特許文献4】トルチリン、V.P.(Torchilin, V. P.)、Nat. Rev. Drug Discov. (2005), 4, 145-160
【非特許文献5】フェルネローバ、D.(Felnerova, D.)ら、Curr Opin Biotechnol (2004), 15, 518-529
【非特許文献6】ガルセア、R.L.(Garcea, R. L.)ら、Curr Opin Biotechnol (2004), 15, 513-517
【非特許文献7】ドアン、L.X.(Doan, L. X.)ら、Rev Med Virol (2005), 15, 75-88
【非特許文献8】レーヴィク、D.W.P.M.(Loewik, D. W. P. M.)ら、Chem. Soc. Rev. (2004), 33, 234-245
【非特許文献9】ラジャゴパル、K.(Rajagopal, K.)ら、Curr. Opin. Struct. Biol. (2004), 14, 480-486
【非特許文献10】チュー、R.S.(Tu, R. S.)ら、Adv. Drug Deliv. Revs. (2004), 56, 1537-1563
【非特許文献11】ベハンナ、H.A.(Behanna, H. A.)ら、J. Am. Chem. Soc. (2005), 127, 1193-1200
【非特許文献12】ハルトゲリンク、J.D.(Hartgerink, J. D.)ら、Science (2001), 294, 1684-1688
【非特許文献13】ヘリングトン、D.A.(Herrington, D. A.)ら、Nature (1987), 328, 257-259
【非特許文献14】ジャクソン、D.C.(Jackson, D. C.)ら、Vaccine (1999), 18, 355-361
【非特許文献15】ギールメッティ、M.(Ghielmetti, M.)ら、Immunobiology (2005), 210, 211-215
【非特許文献16】ユング、G.(Jung, G.)ら、Angew. Chem. Int. Ed. (1985), 10, 872
【非特許文献17】マルティノン、F.(Martinon, F.)ら、J. Immunol. (1992), 149, 3416
【非特許文献18】ロイター、F.(Reutter, F.)ら、J. Pept. Res. (2005), 65, 375-383
【非特許文献19】ビューウィット‐ベックマン、U.(Buwitt-Beckmann, U.)ら、Eur. J. Immunol. (2005), 35, 1-8
【非特許文献20】ベスラー、W.G.(Bessler, W. G.)ら、Int. J. Immunopharmac. (1998), 19, 547-550
【非特許文献21】ロライト、M.(Loleit, M.)ら、Biol. Chem. Hoppe-Seyler (1990), 371, 967-975
【非特許文献22】ミュラー、C.P.(Muller, C. P.)ら、Clin. Exp. Immunol. (1989), 78, 499-504
【非特許文献23】ウールフソン、D.N.(Woolfson, D. N.)、Adv. Prot. Chem. (2005), 70, 79-112
【非特許文献24】パリー、D.A.D.(Parry, D. A. D.)ら、Advances in Protein Chemistry (2005), 70
【発明の概要】
【0011】
本発明は、コイルドコイルドメインを含むペプチド鎖(PC)と、該ペプチド鎖に共有結合で連結された、2個または3個の長鎖ヒドロカルビルを含む脂質部分(LM)と、ペプチド鎖に任意選択で連結された抗原(A)とで構成されるリポペプチドビルディングブロック(LBB);2、3、4または5個のリポペプチドビルディングブロック(LBB)を含み、ビルディングブロックの数はリポペプチドビルディングブロック(LBB)のペプチド鎖のコイルドコイルドメインの特性によって決まる、リポペプチドヘリックスバンドル(HLB);ならびに、多数のリポペプチドヘリックスバンドル(HLB)を含み、かつ脂質コアとペプチドの外側表面とを備えた球状または回転楕円体状の構造を有する合成ウイルス様粒子(SVLP)に関する。
【0012】
本発明はさらに、リポペプチドビルディングブロック(LBB)、リポペプチドヘリックスバンドル(HLB)および合成ウイルス様粒子(SVLP)の生産方法;ワクチンの調製における、抗原を担持するリポペプチドビルディングブロック(LBB)、リポペプチドヘリックスバンドル(HLB)および合成ウイルス様粒子(SVLP)の使用;ならびにそのようなワクチンを使用するワクチン接種の方法に関する。同様に本発明は、抗原を担持する合成ウイルス様粒子を含む医薬製剤に関する。
【0013】
本発明の様々な組成物は、感染症、アレルギー、がん、薬物依存、中毒、を含む疾患、障害または状態の予防または治療のための免疫応答を誘発するのに有用であり、一般に抗原特異的な免疫応答を効率的に誘発するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】SVLPの構成成分および集合体を示す図。PCはコイルドコイルドメインを含むペプチド鎖;LMは脂質部分;Aは抗原;LBBはリポペプチドビルディングブロック;HLBはリポペプチドヘリックスバンドル(三量体が示されている);SVLPは合成ウイルス様粒子(抗原を備えたもの)である。
【図2】コイルドコイルペプチド中に存在するヘプタドモチーフを示す図。A:ヘプタド。a、b、c、d、e、f、g:αアミノ酸残基(全(L)または全(D))。aおよびd(矢印で示す)は疎水性のαアミノ酸である。3〜8個のヘプタドモチーフが典型的なコイルドコイルペプチドに相当する。B:疎水性残基aおよびdの相互作用を示している三量体への集合体化。
【図3】リポペプチド4凝集物の代表的な沈降平衡プロファイルを示す図。下側パネル:A231は231nmにおける吸光度である。データポイントは5000、7500および10000rpmに関するものである。リポペプチド濃度は、0.09M塩化ナトリウムを含む0.01Mリン酸ナトリウムpH7.4(PBS)中で24μMとした。上側パネル:ΔODは光学密度の差である。24μMおよび48μM、ならびに3通りのロータ速度における18組のデータセットについてのグローバルフィットに対する残差を示す。
【図4】様々な濃度におけるリポペプチド4凝集物の沈降速度実験を示す図。c(s)は見かけの沈降係数の分布。全ての(10、30、50、75、100および150μMについての)分布が9.5〜10Sの間に集中した。
【図5】SVLPのコンピュータモデルを示す図。リポタンパク質4から形成されるSVLPは、24個のサブユニット(HLB)から構成された。各々のHLB(右に示す)は3コピーのリポペプチド4で形成されて三量体コイルドコイルを生じている。
【図6】リポペプチド4およびペプチド5の凝集物のCDスペクトルを示す図。λは波長(nm);Θは平均残基楕円率(deg.cm2/dmol)である。pH7.4のPBS中でリポペプチド4は20μM、ペプチド5は50μMである。
【図7】リポペプチド4凝集物のピレン‐3‐カルボキシアルデヒド(PYCHO)発光スペクトルを示す図。λは波長(nm);I437は437nmにおける蛍光強度(任意の単位)である。様々な曲線は、バッファー(PBS)ならびに濃度が80、100、200、400、600、800および1000nMのリポペプチド4に相当する。
【図8】リポペプチド4凝集物の臨界ミセル濃度を示す図。臨界ミセル濃度(CMC)を決定するために蛍光データを分析した。データをリポペプチド4の濃度(nM)に対するI437/I466としてプロットする。挿入図は、CMCが理想的条件下でどのように決定されるかを示している。
【図9】リポペプチド4凝集物に関するDLS計測値の数量重み付きNICOMP分布解析を示す図。pH7.4、20℃のトリスバッファー中のリポペプチド4の1.1mM溶液。形成された粒子の平均径はおよそ17nmであった。
【図10】リポペプチド4凝集物の陰性染色電子顕微鏡写真。トリスバッファー(pH7.4)中でリポペプチド4によって形成されたSVLP。左側のスケールバーは20nm;右側のスケールバーは50nm(拡大)である。15〜20nmの粒子の星状の形状および試料の高い均質性を、はっきりと見ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は、
・抗原(A)、
・抗原(A)に任意選択で連結された3つまたは好ましくは2つの長鎖ヒドロカルビルを含む脂質部分(LM)、
・脂質部分(LM)に共有結合で連結されたコイルドコイルドメインを含むペプチド鎖(PC)
からなるリポペプチドビルディングブロック(LBB)を含む。
【0016】
ペプチド鎖(PC)はコイルドコイルドメインを含む。そのようなコイルドコイルドメインは、会合して規定のヘリックスバンドル、例えば、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体または七量体のバンドルとなる。ペプチドは12〜120個のアミノ酸残基、好ましくは21〜80個のアミノ酸残基を含みうる。コイルドコイルドメインは複数のタンデムリピートモチーフを含み、該モチーフは脂質を含まない単独のペプチドとして、自己集合して平行なコイルドコイルのヘリックスバンドルとなる特性を有する。ペプチド鎖(PC)は、多量体化して規定のオリゴマー化状態(例えば二量体、三量体、四量体、五量体、六量体または七量体、特に二量体、三量体、四量体または五量体)の平行なコイルドコイルのヘリックスバンドルを形成するはずである。好ましいペプチド配列は、ヒトのワクチン接種に適用される場合は自己免疫異常のリスクを回避するためヒト以外の配列である。
【0017】
ペプチド鎖はさらに、1つ以上のヘルパーT細胞エピトープ、およびリポペプチドビルディングブロック(LBB)の水中溶解性を促進する極性残基の列の少なくともいずれか一方を含むアミノ酸配列モチーフを含む。
【0018】
脂質部分(LM)は、2個または3個、好ましくは2個の長鎖ヒドロカルビルを備えた脂質アンカーと、これらヒドロカルビル鎖を合わせてペプチド鎖(PC)に直接またはリンカーを介して接続する構造とを含む。好ましい脂質部分は、2個または3個、好ましくは2個の長いヒドロカルビル鎖を含むリン脂質である。
【0019】
「長鎖ヒドロカルビル」とは、炭素原子が少なくとも7個の直鎖アルキルまたはアルケニル基、例えば8〜50個のC原子、好ましくは8〜25個のC原子で構成される直鎖アルキルまたはアルケニルを意味する。アルケニルは、天然の脂肪酸および脂肪族アルコールにおいて通常見られるように、鎖の中に各々がEまたはZの幾何学的配置を有する好ましくは1、2または3個の二重結合を有する。「長鎖ヒドロカルビル」の定義にはさらに、分岐鎖アルキルまたはアルケニル、例えば、2‐エチルヘキシルの場合のように鎖の端から数えて2番目または3番目の炭素原子にメチルまたはエチル置換基を有しているアルキルも含まれる。
【0020】
本発明による特定の好ましい脂質部分は、式Z1〜Z8すなわち
【0021】
【化1】
(上記式中、R1およびR2は長鎖ヒドロカルビルまたは長鎖ヒドロカルビル‐C=Oであり、YはHまたはCOOHである)、
【0022】
【化2】
(上記式中、R1、R2およびR3は長鎖ヒドロカルビルであるか、またはR1およびR2が長鎖ヒドロカルビル‐C=OでR3がHもしくはアセチルである)、
【0023】
【化3】
(上記式中、R1およびR2は長鎖ヒドロカルビル‐C=Oであり、nは1、2、3または4である)、
【0024】
【化4】
(上記式中、R1およびR2は長鎖ヒドロカルビルであり、XはOまたはNHであり、nは1、2、3または4である)、または
【0025】
【化5】
(上記式中、R1およびR2は長鎖ヒドロカルビルである)
の脂質部分である。
【0026】
脂質部分は、脂肪酸において見られるように、例えばZ1〜Z8のように、少なくとも2つの長鎖ヒドロカルビルを含む。1つの好ましい脂質部分は、様々な種類の、例えば式Z1またはZ2のリン脂質であって、エステル結合またはエーテル結合した長いアルキルまたはアルケニル鎖を有するもの、例えば1,2‐ジパルミトイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホエタノールアミンのエナンチオマー、または1,3‐ジパルミトイル‐グリセロ‐2‐ホスホエタノールアミンのようなアキラル性アナログのいずれかである。好ましい脂質部分は、トリ‐もしくはジ‐パルミトイル‐S‐グルセリルシステイニル残基(Z3型)、またはZ4〜Z8型の脂質部分である。最も好ましいのは実施例に記載の脂質部分である。
【0027】
ペプチド鎖(PC)は、一方の末端すなわちN末端もしくはC末端、好ましくはN末端において、または該末端の近傍で、脂質部分(LM)に共有結合で連結される。脂質部分は、直接結合されてもよいし(1)、リンカーを介して結合されてもよく(2または3)、式中のLはリンカーを意味し、XはOまたはNHである。
【0028】
【化6】
当業者には明白なことであるが、種々様々の適切なリンカーおよびカップリング方策があり、該リンカーおよびカップリング方策には、限定するものではないが、ジカルボン酸誘導体ベースのリンカー、1つもしくは複数のエチレングリコール単位、アミノ酸残基(α‐、β‐、γ‐、δ‐アミノ酸など)、もしくは糖(炭水化物)単位を含むか、または複素環を含むリンカーが挙げられる。検討した特定のリンカーは、リンカーL1〜L10であり、L1〜L10においてnは1〜20、mは1〜20であり、接続官能基C=OまたはX(XはOまたはNH)とともに示されている:
【0029】
【化7】
最も好ましいのは実施例に記載されるリンカーである。
【0030】
上記接続において「一方の末端の近傍で」とは、脂質部分が、ペプチドのN末端またはC末端からそれぞれ数えて1番目、2番目、3番目、4番目または5番目のアミノ酸に結合されることを意味するものとする。脂質部分は、ペプチド構造の骨格に取り付けられてもよいし、末端の近傍の上記アミノ酸のうちの1つの側鎖に取り付けられてもよい。
【0031】
本発明において定義される「抗原」は、抗体が結合することができる分子である。抗原は、ペプチド、タンパク質、または動物において抗原特異的な体液性免疫応答を誘発するために使用される1つ以上のB細胞エピトープを有するエピトープミメティックを含みうる。あるいは、抗原はハプテンまたは炭水化物を含む場合もある。適切なペプチド抗原およびタンパク質抗原は最大150個のアミノ酸を含み、糖ペプチドおよび糖タンパク質を含む。ペプチドおよびタンパク質の配列は、例えば1種類以上の感染性病原体に対する、免疫応答を誘発するように選択することができる。そのような抗原は当分野において良く知られている。エピトープミメティックは、天然のペプチドエピトープまたは炭水化物エピトープを模倣する分子であり、1つ以上の非天然アミノ酸(例えばD‐アミノ酸、β‐アミノ酸、γ‐アミノ酸、δ‐アミノ酸、またはε‐アミノ酸)およびエピトープ模倣体の分野で周知のその他の置換体を含むペプチド化合物が含まれる。好ましいのは立体配座的に制限されたペプチドミメティックで、タンパク質様の立体配座に固定されたものである。ハプテンは、分子量3000未満の有機化合物で、それ自体は体液性免疫応答を誘発しないが、担体に付着すると免疫応答を誘発するものである。典型的なハプテンには、薬物、ホルモン、毒素および炭水化物が挙げられる。
【0032】
好ましいのは実施例に記載の抗原である。
抗原は、ペプチド鎖の他方の末端に、または該末端の近傍に共有結合により付着されるが、ここで「他方の」とは、ペプチドの、脂質部分を担持していない側の末端を意味する。脂質部分がペプチドのN末端またはN末端近傍に接続される場合、抗原はC末端またはC末端近傍に結合される。脂質部分がペプチドのC末端またはC末端近傍に接続される場合、抗原はN末端またはN末端近傍に結合される。
【0033】
1つ以上の抗原を、ペプチド鎖(PC)のコイルドコイルドメインに、例えばコイルドコイルペプチド中のアミノ酸(例えばリジンもしくはシステイン)の側鎖のうち1つ以上を介して、またはペプチド鎖の末端を介して、コンジュゲートさせることができる。抗原は、ペプチド鎖の側鎖のうちの1つまたはペプチド鎖の末端の官能基にコンジュゲートするのに適した官能基を担持している。好ましいのは、抗原特異的な抗体に基づく免疫応答を誘発するための、B細胞受容体により認識される抗原、またはハプテンである。
【0034】
「コイルドコイルドメイン」は、自発的な自己会合によって熱力学的に安定なαヘリックスの平行なヘリックスバンドルを形成する適切なアミノ酸配列を注意深く選択することによって設計される。
【0035】
コイルドコイルドメインは、右巻きの両親媒性αヘリックスを形成する基準的なヘプタド配列のタンデムリピートをベースとしたペプチドを含み、該へリックスはその後集合して左巻きのスーパーコイルを備えたヘリックスバンドルを形成する。さらに、必ずしも左巻きや通常のスーパーコイルではないコイルドコイルを形成する、非基準的な非ヘプタドをベースとした繰り返しから形成されたペプチドも含まれる。
【0036】
基準的なコイルドコイルは、天然に存在する生物活性を有するペプチドおよびタンパク質に広く存在し、新たに設計もされてきた。所定のオリゴマー化状態、トポロジーおよび安定性(例えば二量体、三量体、四量体、五量体、六量体または七量体)のヘリックスバンドルとなるコイルドコイルペプチドの設計について、一連の法則が解明されてきた。これらの法則により、設計者は所与の標的構造に適合したペプチド配列を構築することができる。最も重要なことは、基準的なコイルドコイルペプチド配列は特徴的な7残基のモチーフを含み、該モチーフは典型的には3〜10回繰り返されることである。1つのヘプタドモチーフ内の位置は伝統的にabcdefgで表され、ほとんどは(ただし例外もあるが)位置aおよびdに疎水性残基が存在し、その他の位置には一般に極性の、へリックスに都合のよい残基を有する。ペプチド鎖に沿って縦列した(タンデムの)ヘプタドモチーフは、a残基とd残基との間に、これら残基がαへリックスの1つの面に位置することができるような平均間隔を有している。2つ以上のヘリックスが密集してコイルドコイルバンドルとなる場合、ヘリックスの疎水性の面が会合して互いに巻き付いて、疎水性表面どうしの間の接触が最大となる(図2)。ヘプタドリピート内の各位置に存在しうる残基の種類は、へリックスバンドルの安定性およびオリゴマー化状態に影響を及ぼすことになる。一般に、主に疎水性の残基(Ala、Ile、Leu、Met、Val)または芳香族の疎水性側鎖(Phe、TrpおよびTyr)がa部位およびd部位に使用される。残りのb、c、e、fおよびg部位は、a、d部位よりも自由度が高い傾向があるが、極性でヘリックスに都合のよい残基(Ala、Glu、LysおよびGln)が好ましい。a部位およびd部位の残基の選択は、コイルドコイルのオリゴマー化状態(すなわち二量体か三量体)に影響を及ぼしうる。従って、β‐分岐していない残基(例えばLeu)が位置dに存在する場合は二量体となりやすく;この部位にβ‐分岐した残基(ValおよびIle)があると二量体になりにくい。他方、二量体ではa部位にはβ‐分岐した残基(Ile、Val)が好ましい。別の法則は、a=d=IleまたはLeuであると三量体となりやすいことであり、これは平行な三量体を特異的に形成するコイルドコイルを設計するのに役立つ。上記およびその他の設計上の法則については、[ウールフソン、D.N.(Woolfson, D. N.)、Adv. Prot. Chem. (2005), 70, 79-112]においてより詳細に議論されている。
【0037】
ヘプタドモチーフは両親媒性αへリックスをコードし、該へリックスはその疎水性の面を介してオリゴマー化する(図2)。コイルドコイルドメインは、少なくとも3つのタンデムなヘプタドリピートモチーフを含んでいる。各鎖の中のヘプタドリピートの数が多くなると、ヘリックスバンドルの安定性に影響を及ぼすであろう。該リピート数は、長いペプチドの化学合成の実現可能性によって主に制限を受けるが、3つを超えるヘプタドリピート(例えば4、5、6、7および8個のヘプタドリピート)を含む配列が好ましい。以下に議論される実施例では三量体のαヘリックス状コイルドコイルが形成されるが(図1も参照)、本発明は同様に二量体、四量体、五量体、六量体および七量体のコイルドコイルドメインにも関係する。
【0038】
本発明によるコイルドコイルドメインは、より長いリピート単位、例えば天然に存在するコイルドコイル中に存在するような11残基リピートおよび15残基リピートを有することもできる。したがって、凝集構造物の形成に必要なヘリックスバンドルは、7個以外の周期性を備えたコイルドコイルモチーフを使用するときにも生じる場合がある。通常とは異なる周期性を備えたコイルドコイルも可能である。天然に存在する多くのコイルドコイルでは、連続したヘプタドリピートパターンに様々な不連続部が含まれる場合がある。2つの一般的な不連続部は、ヘプタドパターン内への1残基の挿入、同様に3または4残基の挿入である。例えば、1残基の挿入はインフルエンザヘマグルチニンの三量体コイルドコイルに見られる。天然に存在する他のコイルドコイルは7残基以外の周期性を示し、例えば、11残基の規則的周期性(ヘンデカドと呼ばれる)はスタフィロサーマス・マリナス(Staphylothermus marinus)の表層タンパク質であるテトラブラキオン(tetrabrachion)に見られる。
【0039】
ウイルスコートタンパク質に天然に存在するコイルドコイルペプチド配列の他の例は、HIV‐1のgp41コートタンパク質、およびRSVのF糖タンパク質の三量体ヘリックスバンドルを形成するコイルドコイルモチーフである。これらのコイルドコイルドメインは、本発明によるコイルドコイルドメインの定義に含まれる。
【0040】
好ましいコイルドコイルペプチドは、3〜8個のタンデムに連結したヘプタドモチーフを含む。コイルドコイル内のヘプタドモチーフは、(リポペプチド8のように)同一の配列を有していてもよいし、(リポペプチド6および7のように)各々異なる配列を有していてもよい。すべての場合において、1つのヘプタドモチーフ内の7個のアミノ酸残基の7つの位置は文字:abcdefgで示される。したがって、コイルドコイルペプチドは、位置(abcdefg)3〜8を有するアミノ酸配列を含む。
【0041】
好ましいのは、3〜8個のタンデムに連結したヘプタドモチーフを含むコイルドコイルペプチド配列であって、各ヘプタドモチーフ(abcdefg)の位置aおよびdが本明細書中以下に定義するグループ1および/またはグループ2に属するαアミノ酸を含むものである。さらに、すべての位置aおよびdのうち2箇所まではグループ3に属する任意のアミノ酸残基を位置づけることが可能であり、すべての位置aおよびdのうち1箇所まではグループ4もしくはグループ5に属する任意のアミノ酸残基またはグリシンを位置づけることが可能である。さらに、位置b、c、e、fおよびgには、グループ3、4および5に属するαアミノ酸が好ましいが、グループ1および2に属するアミノ酸でもよく、加えて任意の1つのヘプタドモチーフ内の上記位置のうちの1箇所まではグリシンであってもよいが、いずれもプロリンであってはならない。
【0042】
グループ1は、大きさが小〜中位の疎水性側鎖R1を備えたαアミノ酸残基からなる。
【0043】
【化8】
疎水性残基R1は、生理的なpHでは荷電せず、水溶液によってはじかれるアミノ酸側鎖を表す。これらの側鎖は一般に、第一級および第二級アミド、第一級および第二級アミンならびにこれらに対応するプロトン化された塩、チオール、アルコール、尿素またはチオ尿素のような水素結合供与体基を含まない。しかしながら、上記側鎖は、エーテル、チオエーテル、エステル、第三級アミドまたは第三級アミンのような水素結合受容体基を含むことができる。遺伝的にコードされるこのグループのアミノ酸には、アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニンおよびバリンが挙げられる。
【0044】
特定の疎水性残基R1は、低級アルキル、低級アルケニル、‐(CH2)a(CHR2)bOR3、‐(CH2)a(CHR2)bSR3、‐(CHR2)OR3、‐(CH2)aSR3、‐(CH2)aR4、または‐CH(CF3)2であり、式中、R2は低級アルキル;R3は低級アルキル;R4はシクロヘキシル、シクロペンチルまたはシクロブチル;aは1〜4;bは0または1である。
【0045】
グループ2は、芳香族またはヘテロ芳香族の側鎖R5を備えたアミノ酸残基からなる。
【0046】
【化9】
芳香族アミノ酸残基とは、芳香族π(パイ)電子系がコンジュゲートしている少なくとも1つの環を含む側鎖R5を有する疎水性アミノ酸を指す。さらに該残基は、追加として、低級アルキル、アリールまたはハロゲンのような疎水基、第一級および第二級アミンとこれらの対応するプロトン化された塩、第一級および第二級アミド、アルコールのような水素結合供与体基、ならびに、エーテル、チオエーテル、エステル、第三級アミドまたは第三級アミンのような水素結合受容体基を含むことができる。遺伝的にコードされる芳香族アミノ酸にはフェニルアラニンおよびチロシンが挙げられる。ヘテロ芳香族アミノ酸残基とは、O、SおよびNのようなヘテロ原子が少なくとも1つ組み込まれた芳香族π(パイ)電子系がコンジュゲートしている少なくとも1つの環を含む側鎖R5を有する疎水性アミノ酸を指す。さらにそのような残基は、第一級および第二級アミド、第一級および第二級アミンとこれらの対応するプロトン化された塩、アルコールのような水素結合供与体基、ならびにエーテル、チオエーテル、エステル、第三級アミドまたは第三級アミンのような水素結合受容体基を含むことができる。遺伝的にコードされるヘテロ芳香族アミノ酸にはトリプトファンおよびヒスチジンが挙げられる。
【0047】
特定の芳香族またはヘテロ芳香族の側鎖R5は、‐(CH2)aR6、‐(CH2)cO(CH2)dR6、‐(CH2)cS(CH2)dR6、または‐(CH2)cNR7(CH2)dR6であり、式中、R7はH、低級アルキル、アリールまたはアリール‐低級アルキル;R6は、任意選択で置換された式‐C6R8R9R10R11R12のフェニルまたは式H1〜H14
【0048】
【化10】
のうち1つのアリール基もしくはヘテロアリール基であって、式中、R8、R9、R10、R11およびR12はそれぞれ独立にH、F、Br、Cl、I、NO2、CF3、NR7R14、N7COR14、低級アルキル、アリールまたはOR7;R13は、H、Cl、Br、I、NO2、低級アルキル、またはアリール;R14は、H、低級アルキル、またはアリール;aは1〜4;cは1または2;dは0〜4である。
【0049】
グループ3は、極性で非荷電の残基R15を備えた側鎖を含むアミノ酸からなる。
【0050】
【化11】
極性で非荷電の残基R15は、生理的なpHでは荷電しないが水溶液によってはじかれない親水性の側鎖を表す。そのような側鎖は、典型的には、第一級および第二級アミド、第一級および第二級アミン、チオール、ならびにアルコールのような水素結合供与体基を含む。これらの基は、水分子を伴う水素結合ネットワークを形成することができる。さらに上記の基は、エーテル、チオエーテル、エステル、第三級アミド、または第三級アミンのような水素結合受容体基も含む場合がある。遺伝的にコードされる極性で非荷電のアミノ酸には、アスパラギン、システイン、グルタミン、セリンおよびトレオニンが挙げられる。
【0051】
特定の極性で非荷電の残基R15は、‐(CH2)d(CHR16)bOR17、‐(CH2)d(CHR16)bSR17、‐(CH2)aCONR17R18、または‐(CH2)aCOOR19であり、式中、R16は、低級アルキル、アリール、アリール‐低級アルキル、‐(CH2)aOR17、‐(CH2)aNR17R18、‐(CH2)aNR17R18、または‐(CH2)aCOOR19;R17およびR18は、互いに独立にH、低級アルキル、アリール、もしくはアリール‐低級アルキルであるか、またはR17およびR18がともに‐(CH2)e‐、‐(CH2)2‐O‐(CH2)2‐、もしくは‐(CH2)2‐NR17‐(CH2)2‐をなし;R19は、低級アルキル、アリール、またはアリール‐低級アルキル;a、bおよびdは上記に定義されるような意味を有し、eは2〜6である。
【0052】
グループ4は、極性のカチオン性残基およびそのアシル化誘導体、例えばアシルアミノから誘導される残基および尿素から誘導される残基R20を備えた側鎖を含むアミノ酸からなる。
【0053】
【化12】
極性のカチオン性側鎖R20は、生理的なpHでプロトン化される塩基性の側鎖を表す。遺伝的にコードされる極性のカチオン性アミノ酸には、アルギニン、リジンおよびヒスチジンが挙げられる。シトルリンは尿素から誘導されるアミノ酸残基の例である。
【0054】
特定の極性カチオン性残基およびそのアシル化誘導体R20は、‐(CH2)aNR17R18、‐(CH2)aN=C(NR21R22)NR17R18、‐(CH2)aNR21C(=NR22)NR17R18、‐(CH2)aNR21COR19、または‐(CH2)aNR21CONR17R18であり、式中、R21はHまたは低級アルキルでR22はHまたは低級アルキル;R17、R18、R19は上記に定義されるような意味を有し、aは1〜4である。
【0055】
グループ5は、極性のアニオン性残基R23を備えた側鎖を含むアミノ酸からなる。
【0056】
【化13】
極性でアニオン性とは、生理的なpHで脱プロトン化される酸性の側鎖R23を指す。遺伝的にコードされる極性アニオン性アミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。特定の極性カチオン性残基R23は、‐(CH2)aCOOHであり、式中のaは1〜4である。
【0057】
低級アルキルは、C1‐7‐アルキル、好ましくはC1‐4‐アルキルであって、具体的にはメチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、n‐ブチルまたはイソブチルである。アリールは5〜10個の炭素原子を有し、好ましくはフェニルまたはナフチルである。
【0058】
より好ましいのは、3〜8個のタンデムに連結されたヘプタドモチーフを含むコイルドコイルペプチド配列であって、各ヘプタドモチーフ(abcdefg)が次の配列すなわち:
1xx1xxx(それぞれ位置abcdefgを表す);
1xx2xxx(それぞれ位置abcdefgを表す);
2xx1xxx(それぞれ位置abcdefgを表す);または
2xx2xxx(それぞれ位置abcdefgを表す);
(上記配列中、1はグループ1由来の遺伝的にコードされるアミノ酸、2はグループ2由来の遺伝的にコードされるアミノ酸、xはグループ1、2、3、4もしくは5由来の遺伝的にコードされるアミノ酸またはグリシンである)のうちのいずれか1つを有するものである。
【0059】
さらに一層好ましいのは、天然に存在するペプチドおよびタンパク質(ただしヒト起源のものを除く)の中で同定されたコイルドコイルペプチド配列である。これらは、例えばウイルスおよび細菌のタンパク質中で同定されたコイルドコイルであって、以下のものすなわち:
インフルエンザウイルスヘマグルチニン由来(配列番号5):
GSTQAAIDQINGKLNRVIEKTNEKFHQIEKEFSEVEGRIQDLEKYVEDTKCG;
ヒト免疫不全ウイルス由来(配列番号6):
SGIVQQQNNLLRAIEAQQHLLQLTVWGIKQLQARILAVERYLGDCG;
ウシ免疫不全ウイルス由来(配列番号7):
GGERVVQNVSYIAQTQDQFTHLFRNINNRLNVLHHRVSYLEYVEEIRQKQVFFGCG;
ネコ免疫不全ウイルス由来(配列番号8):
GGATHQETIEKVTEALKINNLRLVTLEHQVLVIGLKVEAMEKFLYTAFAMQELGCG;
ウマ伝染性貧血ウイルス由来(配列番号9):
GGNHTFEVENSTLNGMDLIERQIKILYAMILQTHARVQLLKERQQVEETFNLIGCG;
サル免疫不全ウイルス由来(配列番号10):
GGAQSRTLLAGIVQQQQQLLDVVKRQQELLRLTVWGTKNLQTRVTAIEKYLKDQAGCG;
ヤギ関節炎脳炎ウイルス由来(配列番号11):
GGSYTKAAVQTLANATAAQQDVLEATYAMVQHVAKGVRILEARVARVEAGCG;
ビスナウイルス由来(配列番号12):
GGSLANATAAQQNVLEATYAMVQHVAKGIRILEARVARVEAIIDRMMVYQELDCG;
ヒトパラインフルエンザ‐3由来(配列番号13):
GGEAKQARSDIEKLKEAIRDTNKAVQSVQSSIGNLIVAIKSVQDYVNKEIVGCG;
ヒトパラインフルエンザ‐1由来(配列番号14):
GGEAREARKDIALIKDSIIKTHNSVELIQRGIGEQIIALKTLQDFVNNEIRGCG;
ヒトパラインフルエンザ‐2由来(配列番号15):
GGKANANAAAINNLASSIQSTNKAVSDVITASRTIATAVQAIQDHINGAIVNGCG;
ヒトパラインフルエンザ‐4a由来(配列番号16):
GGKAQENAKLILTLKKAATETNEAVRDLANSNKIVVKMISAIQNQINTIIQGCG;
ヒトパラインフルエンザ‐4b由来(配列番号17):
GGKAQENAQLILTLKKAAKETNDAVRDLTKSNKIVARMISAIQNQINTIIQGCG;
麻疹ウイルス由来(配列番号18):
GGSMLNSQAIDNLRASLETTNQAIEAIRQSGQEMILAVQGVQDYINNELIGCG;
ムンプスウイルス由来(配列番号19):
GGAQTNARAIAAMKNSIQATNRAVFEVKEGTQQLAIAVQAIQDHINTIMNTQLNNMSCG;
ウシ呼吸器合胞体ウイルス由来(配列番号20):
GGAVSKVLHLEGEVNKIKNALLSTNKAVVSLSNGVSVLTSKVLDLKNYIDKEGCG;
エボラウイルス由来(配列番号21):
GGANETTQALQLFLRATTELRTFSILNRKAIDFLLQRWGGTCHILGCG;
マールブルグウイルス由来(配列番号22):
GGANQTAKSLELLLRVTTEERTFSLINRHAIDFLLTRWGGTCKVLGCG;
ラウス肉腫ウイルス由来(配列番号23):
GGANLTTSLLGDLLDDVTSIRHAVLQNRAAIDFLLLAHGHGCG;
スタフィロサーマス・マリナス由来(配列番号24):
GSIINETADDIVYRLTVIIDDRYESLKNLITLRADRLEMIINDNVSTILASIGCG;
SARSコロナウイルス由来(配列番号25):
GGNVLYENQKQIANQFNKAISQIQESLTTTSTALGKLQDVVNQNAQALNTLVKQLSSNFGCG;
肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)のMPN010のDUF16ドメイン由来(配列番号26):
GGTKTEFKEFQTVVMESFAVQNQNIDAQGEQIKELQVEQKAQGKTLQLILEALQGINKRLDNLESCG;
七量体コイルドコイル(配列番号27):
GGKVKQLADAVEELASANYHLANAVARLAKAVGERGCG;
三量体コイルドコイル(配列番号28):
GGIEKKIEAIEKKIEAIEKKIEAIEKKIEAIEKKIAKMEKASSVFNVVNSKKKC;
または四量体コイルドコイル(配列番号29):
KLKQIEDKLEEILSKLYHIENELAKIEKKLAKMEKASSVFNVVKKC
が挙げられる。
【0060】
最も好ましいのは、実施例に記載のコイルドコイルペプチド配列である。
リポペプチドビルディングブロックの設計において、前記ヘプタドリピートを含まない追加の残基を、コイルドコイルペプチド鎖のN末端およびC末端のいずれか一方または両方に任意選択で付加することができる。これらの追加の残基は、例えば、ヘプタドリピート(コイルドコイル)領域と、脂質部分または任意選択で付着される抗原のうち少なくともいずれか一方との間のリンカーとして働くことができる。これらの追加の残基は、ヘルパーT細胞エピトープを含むアミノ酸配列を含むこともできる。
【0061】
リポペプチドビルディングブロック(LBB)の合成には、合成化学のこの領域において良く知られたペプチド合成方法およびカップリング方法を利用することができる。典型的には、ペプチド鎖を組み立てるために固相ペプチド合成を使用する。脂質部分をリンカーにカップリングして脂質‐リンカー中間物を得ることができる。その後、この脂質‐リンカーを、標準的なカップリング方法によって、例えばまだ樹脂に結合しているペプチドの遊離N末端に付加することができる。最後に、トリフルオロ酢酸(TFA)を用いた処理により、完全に組み立てられたリポペプチドを樹脂から切り出し、全ての標準的な側鎖保護基を除去する。
【0062】
ジパルミトイル‐S‐グルセリルシステイニル部分(Z3)は、リンカーなしでペプチド鎖のN末端に直接カップリングすることができる。Z4タイプの脂質部分の場合には、Fmocで適切に保護されたアミノ酸、例えばビス‐Fmoc‐2,4‐ジアミノ酪酸を、組立ての最終段階で鎖のN末端に付加することができる。(Fmoc)保護基を除去した後、2つの遊離アミノ基を適切な脂肪酸誘導体でアシル化することができる。TFAを用いて樹脂から切り出した後にリポペプチド生成物が形成される。同様の確立した合成方策を用いて他の脂質部分を含むリポペプチドビルディングブロックを調製することができる。
【0063】
様々なカップリング手法またはコンジュゲーション手法を使用してペプチド鎖に抗原を付着させることも可能であり、該手法は当業者に良く知られたものとなろう。したがって、LBBのペプチド鎖のアミノ酸側鎖の遊離アミノ基を、抗原の反応性エステル(例えばカルボン酸から調製されたN‐ヒドロキシスクシンイミドエステル)にカップリングしてもよく;ペプチド鎖のチオールを抗原のマレイミド基にカップリングしてもよく;ペプチド鎖のアミノ酸残基の側鎖にアジドを組み込み、該アジドを、銅触媒性の付加環化反応を用いてアセチレン基を含む抗原にカップリングしてもよく;また、ペプチド中の他の求核分子(例えばヒドラジノ基、ヒドロキシルアミノ基、vic‐アミノチオール基)を、抗原中の求電子(例えばアルデヒド、ケトン、活性エステル)にカップリングしてもよい。選択的カップリングを達成するために、ペプチド鎖および抗原の2つの反応基の位置を逆にすることが原則として可能であることは、明白であろう。
【0064】
上記方法を例証するリポペプチド合成の例は以降に記載されている。
本明細書で定義されるリポペプチドビルディングブロック(LBB)は、自己集合してリポペプチドへリックスバンドル(HLB)となり、さらには合成ウイルス様粒子(SVLP)となることができる。水溶液中での自己集合プロセスには、LBBのコイルドコイルドメインが急速にオリゴマー化して、規定のオリゴマー化状態のα‐ヘリックスの平行なコイルドコイルバンドル(リポペプチドへリックスバンドル(HLB)と呼ばれる)を形成する工程が含まれる。その結果、各HLB内のペプチド鎖に結合した脂質部分も該バンドルの一端で凝集する。さらにその後、複数の同じ抗原がHLBの表面上(すなわちHLBのもう一方の脂肪親和性ではない側)に現れることになる。自己集合プロセスがさらに進行する結果、合成ウイルス様粒子(SVLP)が形成されることもある(図1を参照)。該プロセスは、各ビルディングブロックに取り付けられた脂質尾部の自己会合によって駆動され、脂質尾部はその後SVLPの中央の脂質コアを占める。こうして、個々のヘリックスバンドル中のペプチド鎖は、外向きに、大量の溶媒の方を向くように位置付けられる。従って、リポペプチドビルディングブロックの大きさおよび組成が集合体(SVLP)の最終的な大きさおよび形状を決定し、集合体の直径は典型的にはナノメーター範囲(10〜30nm)である。SVLPは、抗原を多価提示するための、また抗原を免疫担当細胞および受容体へ送達するための新規なナノ粒子プラットフォームを表す。
【0065】
本発明による合成ウイルス様粒子(SVLP)は、実際のウイルスで見られるようにタンパク質成分と脂質成分とから構成され、ある種の小型ウイルスに類似の物理的大きさを有し、脂質コアと外側のタンパク質/ペプチドをベースとした外側表面とを有するが、完全に合成起源のものであり、すなわち細胞を用いる方法を使用せずにリポペプチドビルディングブロック(LBB)から始まる化学合成で生産される。核酸成分を持たず、従って複製することができないので、SVLPは本物のウイルスではない。
【0066】
抗原をリポペプチドビルディングブロック(LBB)に付着させると、その結果生じるHLB上およびSVLP上での抗原の高い表面密度、さらにこれらの分子構造により、これらの合成材料はワクチン送達の領域における適用にとって魅力的なものとなる。SVLPの表面に複数の同じ抗原を有することにより、結合活性作用により抗原へのB細胞受容体親和性が増強され、免疫担当細胞による該粒子またはその成分の取り込みおよび提示が促進される。したがって、HLBおよびSVLPは、動物体内で抗原に対する効率的な免疫応答を引き起こすための、抗原の巨大分子担体または送達媒体として見ることもできる。特に重要なのは、抗原送達媒体としてのHLBおよびSVLPの使用により、潜在的に有害なアジュバントの使用(同時注射)を伴わずに動物体内で効率的な免疫(抗体)反応を生成させることができることである。
【0067】
特性を独自に組み合わせることにより、これらHLBおよびSVLPは、動物における効率的な免疫応答を誘発するのに理想的な、従ってワクチン発見における適用に理想的なものとなる。B細胞の応答は、標的B細胞上の特異的B細胞受容体と抗原との相互作用により、特に、多価抗原の結合によりB細胞の表面上で複数のB細胞受容体がクラスター化することにより、開始される。集合体化した粒子の表面に複数の同じ抗原を有することは、結合活性作用を介して受容体親和性を増強し、かつ細胞表面上で抗原が結合したB細胞受容体のクラスターを形成するのに重要である。コイルドコイルペプチドが規定のオリゴマー化状態のヘリックスバンドルを形成する能力は、共有結合で結合した抗原の多価提示を可能にするために活用される。ハプテン、ペプチド、タンパク質またはその他のある種のエピトープミメティックのような、標的B細胞上の特異的B細胞受容体と相互作用するために設計された抗原を、モノマーのLBBにコンジュゲートすることができる。HLBおよびSVLPへと自己集合した後、抗原は該オリゴマー集合体の表面上に複数のコピーとして現れる(図1を参照)。
【0068】
ウイルスおよび微生物のコイルドコイル配列はヘルパーT細胞のエピトープを含むこともある。LBBの成分であるコイルドコイル担体ペプチドはヘルパーT細胞エピトープを含む天然の配列に由来するものでもよいので、このエピトープも本発明において活用することができる。別例として、T細胞エピトープを、設計型または天然のコイルドコイル配列に組み込むことも、附属させることも可能である。
【0069】
モノマーのLBBは脂質部分を含む。この脂質の別の目的は、B細胞に対するエピトープの提示を容易にすることであるが、これは、細胞膜と会合した抗原がB細胞の活性化およびB細胞により駆動されるT細胞活性化の促進に特に有効であることが知られているからである。集合したHLBおよびSVLPの内部に存在する脂質部分の局所濃度が高いことにより、該集合物と細胞膜との相互作用が促進されて、B細胞への抗原の提示が促進されることになる。LBBの脂質部分は、良く知られたリポペプチドのToll様受容体リガンドのような、細菌由来の脂質部分に由来するものでもよい。LBBに組み込まれる自己集合リポペプチドの特徴は、抗原の多価提示のための機構だけでなく、該リポペプチドがB細胞の活性化を増強する成分を含みうることである。確かに、HLBおよびSVLPは抗体に基づいた強い免疫応答を誘発することが可能であり、このことにより、免疫化の際の有毒なアジュバントの使用を回避することができるというさらなる利点がもたらされる。
【0070】
水溶液中でミセルおよび小胞のような熱力学的に安定した凝集物を形成し、長い疎水性領域がミセルコア内でクラスター化して水との接触から遠ざかり隔離される一方、頭部の極性基が溶媒と相互作用することは、界面活性剤、頭部の極性基と無極性の疎水性の脂質尾部とを有する洗剤様分子の一般的な特徴である。しかしながら、本発明のHLBおよびSVLPは単なるミセルではない。HLBおよびSVLPの巨大分子構造は、非共有結合の力の独自の組み合わせ、すなわち、コイルドコイルペプチドドメインが集合してヘリックスバンドルとなるのを駆動する力と、脂質尾部の粒子内部への隔離を駆動する疎水性の力とが合わさることによって維持される。
【0071】
遊離モノマーが溶液中に存在する最大濃度に相当する、ミセルが形成し始める濃度は、臨界ミセル濃度、またはより一般的には臨界凝集濃度である。臨界ミセル濃度は、ミセルの熱力学的安定性の尺度を提供する。臨界ミセル濃度の値は、両親媒性分子の疎水性部分および親水性部分の構造、ならびに温度や溶媒の組成のような外部要因によって変化する。低い臨界ミセル濃度は低い界面活性剤濃度で安定なミセルを示し、このことは、所望の活性(例えば細胞のターゲティングおよび送達)が、全体的に大幅に希釈した後でもミセル状構造を保持することに依存している生物学的適用において、重要である。本発明によるSVLPは低nM領域において熱力学的安定を維持し、このことはワクチン送達の目的に理想的であることを示している。この高い安定性はSVLPの独特の分子構造から生じる。さらに、SVLPは、大きさおよび形状の分布が比較的均質であるように作製することができる。
【0072】
本発明によるSVLPは、コア内に水溶液を囲い込む二分子膜構造を有するリポソームとは似ていない。SVLPは、水性の外部に対して広面積の脂質膜を露出することはないので、リポソームよりもin vivoで安定であることができる。
【0073】
先行技術のウイルス様粒子とは対照的に、本発明のHLBおよびSVLPは人工的なものであり、これらの構成成分はすべて化学合成によって生産されるので、生物学的方法を使用して作製しなければならない材料の使用が回避される。ウイルス様粒子は「合成の」と称されてきたが、これらの粒子は、組換えDNA法および細胞を用いる方法を使用して作製された天然型もしくは遺伝子組換え型のウイルス粒子、またはその構成成分であって、化学合成によって生産された材料ではない。さらに、本発明のSVLPの設計および組成は、他のナノ粒子集合体、例えば金のクラスター、量子ドット、デンドリマー、組換え型タンパク質およびリポソームをベースとする集合体の設計および組成とは全く異なる。
【0074】
本発明のLBBは、リポペプチド中のコイルドコイルドメインが会合して規定のへリックスバンドル(例えば二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体のヘリックスバンドル)となるように設計されている。この会合によりHLBの形成がもたらされる。得られるリポペプチドへリックスバンドル(HLB)(例えば、三量体を図1に示す)は、自己集合してナノメートル規模の大きさの合成ウイルス様粒子(SVLP)(巨大分子集合体)となることができる。LBBに抗原(ペプチド、タンパク質、ペプチドミメティック、炭水化物またはハプテンの形態)が付着されている場合、複数のコピーがHLBおよびSVLPの表面上に提示される。
【0075】
自己(すなわちヒト)タンパク質に基づいたペプチド配列は不適切であるが、これは、ヒト(自己)タンパク質に対する免疫反応により人体に慢性自己免疫性疾患が生じる可能性があるからである(例えばグッドパスチャーの症候群、ヒトがコラーゲンに対する抗体を生じた時に引き起こされる自己免疫性疾患である)。
【0076】
本発明はさらに、本明細書に記載されるような抗原を担持する合成ウイルス様粒子を含む医薬製剤に関する。温血動物(特にヒト)への、鼻内、口腔内、直腸内もしくは経口投与のような腸内投与、および静脈内、筋肉内もしくは皮下投与のような非経口投与のための医薬製剤が考えられる。特に好ましいのは非経口投与のための製剤である。該製剤は、抗原を担持する合成ウイルス様粒子を単独で、または好ましくは薬学的に許容可能な担体とともに含む。有効成分の用量は、意図されるワクチン接種によって、また生物種、該生物の年齢、体重および個体の状態、個々の薬物動態学的データ、ならびに投与方法によって変化する。
【0077】
医薬製剤は、およそ1%〜およそ10%の有効成分を含む。非経口投与のための単位用量形態は、例えばアンプルまたはバイアル、例えば、抗原を担持する合成ウイルス様粒子を約0.01mg〜約1.0g含むバイアルである。
【0078】
優先されるのは、抗原を担持する合成ウイルス様粒子の溶液、さらには懸濁液または分散物、特に等張の水溶液、分散物または懸濁液であって、例えば有効成分を単独で、または担体(例えばマンニトール)と一緒に含む凍結乾燥形態の場合には使用前に調製することができるものを使用することである。医薬製剤は滅菌されてもよいし、添加剤(例えば保存剤、安定化剤、湿潤剤および/もしくは乳化剤、可溶化剤、浸透圧を調節するための塩類、およびバッファーのうち少なくともいずれか)を含んでもよく、かつそれ自体良く知られたやり方で、例えば従来の溶解処理および凍結乾燥処理によって調製される。前記溶液または懸濁液は粘性調節剤を含むこともできる。
【0079】
非経口投与については、抗原を担持する合成ウイルス様粒子の水溶液、または粘性調節剤と所望の場合には安定化剤とを含む水性注射用懸濁液が、特に適切である。抗原を担持する合成ウイルス様粒子を、任意選択で添加剤とともに凍結乾燥物の形態とすることも可能であり、非経口投与の前に適切な溶媒を追加することによって溶液とすることができる。
【0080】
本発明はさらに、本明細書に記載されるような抗原を担持する合成ウイルス様粒子のワクチンとしての使用に関する。これらのワクチンは、感染症、アレルギー、がん、薬物依存、中毒、を含む疾患、障害または病態の予防または治療のための免疫応答を引き起こすために、また一般には効率的に抗原特異的な免疫応答を引き起こすために、有用である。
【0081】
本発明はさらに、免疫遺伝学的に有効な量の、本明細書に記載されるような抗原を担持する合成ウイルス様粒子を、投与の必要のある患者に投与することを特徴とするワクチン接種方法に関する。
【実施例】
【0082】
略語:
DCM、 ジクロロメタン(CH2Cl2);
DIEA、 ジイソプロピルエチルアミン;
Boc、 t‐ブトキシカルボニル;
DMF、 N,N‐ジメチルホルムアミド;
EDT、 エタンジチオール;
Fmoc、 9‐フルオレニルメトキシカルボニル;
HATU、 2‐(1H‐9‐アザベンゾトリアゾール‐1‐イル)‐1,1,3,3‐テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート;
HBTU、 2‐[1H‐ベンゾトリアゾール‐1‐イル]‐1,1,3,3‐テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート;
HOBt、 N‐ヒドロキシベンゾトリアゾール;
Pbf、 2,2,4,6,7‐ペンタメチルジヒドロベンゾフラン‐5‐スルホニル;
NMP、 N‐メチルピロリドン;
MBHA、 メチルベンズヒドリルアミン
PyBOP、 (ベンゾトリアゾール‐1‐イルオキシ)‐トリピロリジノホスホニウム‐ヘキサフルオロホスファート;
r.t.、 室温;
TIS、 トリイソプロピルシラン(iPr3SiH);
Trt、 トリチル;
TFA、 トリフルオロ酢酸;
tR、 保持時間。
【0083】
実施例1:リポペプチド4
【0084】
【化14】
このリポペプチド中のコイルドコイルペプチド5の配列番号1の一次配列は、大部分はRSVのF糖タンパク質に由来する[ローレス‐デルメディコ、M.K.(Lawless-Delmedico, M. K.)ら、Biochemistry (2000), 39, 11684-11695]。このコイルドコイルペプチドは5つのヘプタドリピートを含む。N末端には、ペプチドのN末端をリン脂質に連結するためのコハク酸由来のリンカーとともに追加のグリシン残基がスペーサとして付加されており、その結果リポペプチド4が得られる。
【0085】
このペプチド鎖の合成は、標準的なFmoc法を使用して、RinkアミドMBHA樹脂上で実施した。鎖の組み立てを完了した後、リン脂質‐リンカーユニット(1,3‐ジパルミトイル‐グリセロ‐2‐ホスホエタノールアミド‐スクシナート(PE‐succ‐OH))を樹脂上のペプチドの遊離N末端にカップリングした。その後、リン脂質を樹脂から切り出し、TFA/トリイソプロピルシラン/H2Oを用いた処理によって側鎖保護基を除去した。逆相HPLCにより精製した後、生成物を、分析用逆相HPLCおよびエレクトロスプレイMS(m計算値6238.4;m/z観測値1560.8((M+4H)4+))によって特徴解析した。
【0086】
1,3‐ジパルミトイル‐グリセロ‐2‐ホスホエタノールアミド‐スクシナート(PE‐succ‐OH)は、1,3‐ジパルミトイル‐グリセロ‐2‐ホスホエタノールアミン(バッケム(Bachem)社)をトリエチルアミンのような塩基の存在下で無水コハク酸と反応させることにより容易に調製することができる。
【0087】
a)ペプチド5
ペプチド鎖は、Fmoc法を使用して、ABI 433Aペプチド合成機でRinkアミドMBHA樹脂(ノババイオケム(Novabiochem)社)上で合成した。使用したアミノ酸は、Fmoc‐Ala‐OH、Fmoc‐Asp(tBu)‐OH、Fmoc‐Asn(Trt)‐OH、Fmoc‐Gly‐OH、Fmoc‐Gln(Trt)‐OH、Fmoc‐Glu(tBu)‐OH、Fmoc‐His(Boc)‐OH、Fmoc‐Ile‐OH、Fmoc‐Leu‐OH、Fmoc‐Lys(Boc)‐OH、Fmoc‐Ser(tBu)‐OH、Fmoc‐Thr(tBu)‐OH、Fmoc‐Tyr(tBu)‐OH、およびFmoc‐Val‐OHであった。樹脂(500mg;0.4mmol/g)に、DMF(5ml)中のHBTU(3等量)、HOBt(3等量)およびDIEA(8等量)を使用してFmoc‐Gln(Trt)‐OHを負荷した。未反応の遊離アミンを、Ac2Oキャッピング溶液(NMP中Ac2O(0.5M)、DIEA(0.125M)およびHOBt(0.015M);15mlで30分を2回)を使用してアセチル化した。カップリングは、5倍過剰量(1mmol)の各アミノ酸を使用して実施した。
【0088】
ペプチド鎖の組み立ての完了に続いて、該ペプチド鎖を樹脂から切り出し、TFA/iPr3SiH/H2O(95:2.5:2.5)(9ml)によりr.tで3時間脱保護した。濾過および減圧下での濃縮の後、ペプチドを冷Et2O(20ml)で沈澱させ、遠心分離処理してデカントした(3回繰り返した)。粗製生成物の分析用HPLCによる精製(C18カラム:バイダック(Vydac)218TP54;10μm、300Å、4.6×250mm;グラジエント:水+0.1%TFAの中で5〜100%アセトニトリル、1ml/分で20分間;tR=16分)から、白色粉体としてペプチド5(収率10%)が得られた。分析用RP‐HPLC(C18カラム:バイダック218TP54;10μm、300Å、4.6×250mm;グラジエント:水+0.1%TFAの中で10〜60%アセトニトリル、1ml/分で35分間):tR=26分。ESI‐MS(MeOH/H2O(1:1)+0.1%HCOOH;陽イオンモード;m/z):1822.8[M+3H]3+、1367.3[M+4H]4+、1094.2[M+5H]5+、911.9[M+6H]6+(計算上のMW:5465.4g/mol)。
【0089】
b)リポペプチド4
ペプチド5に関して上述のようにして、樹脂上での直鎖ペプチドの組み立てを実施した。ペプチド鎖の組み立て完了に続いて、1,3‐ジパルミトイル‐グリセロ‐2‐ホスホエタノールアミド‐スクシナート(PE‐succ‐OH)を樹脂上のN末端にカップリングした。該ペプチジル樹脂(80μmol)に、予め準備したDMF(5ml)中のPE‐succ‐OH(190mg、240μmol、3等量)、HATU(92mg、240μmol、3等量)、HOAt(33mg、240μmol、3等量)およびDIEA(110μl、640μmol、8等量)の溶液を添加した。反応混合物をr.t.で一晩渦流撹拌した。カップリングの進行をカイザーテストで観察した。カップリングの完了に続いて、樹脂を濾過し、DMF(3×5ml)、DCM(3×5ml)およびMeOH(3×5ml)で洗浄した。その後、リポペプチドを樹脂から切り離し、TFA/TIS/H2O(95:2.5:2.5)(27ml)でr.t.で3時間脱保護した。濾過および減圧下での濃縮の後、ペプチドを冷Et2O(20ml)で沈澱させ、遠心分離処理してデカントした(3回繰り返した)。セミ分取用HPLCによる粗製生成物の精製(C4カラム:バイダック214TP1010;10μm、300Å、10×250mm;5ml/分で15分間に、水+0.1%TFA中で30〜100%アセトニトリルのグラジエント;tR=14.4分)により、白色粉体としてリポペプチド4を得た。分析用HPLC(C4カラム:バイダック214TP104;10μm、300Å、4.6×250mm;グラジエント:1ml/分で30分間に、水+0.1%TFA中で10〜100%アセトニトリル):tR=23.3分。ESI‐MS(MeOH/H2O(1:1)+0.1%HCOOH;陽イオンモード;m/z):2081.4[M+3H]3+、1560.8[M+4H]4+、1248.9[M+5H]5+、1040.9[M+6H]6+(計算上のMW:6238.4g/mol)。ε276=1511M−1cm−1。
【0090】
c)リポペプチド4に関する生物物理学的研究
本発明の重要な特徴は、合成によって入手可能なリポペプチドが、自然に集合して規定の構造かつウイルス様ナノ粒子の大きさの巨大分子集合体となることができるということである。リポペプチド4は、振盪させながら緩衝水溶液中に溶解させることが可能であり、次いでSVLPの溶解特性を調べることができる。そのようなリポペプチドがSVLPを形成しうることを実証するために、リポペプチド4から生じる粒子について、様々な生物物理学的技法で特徴解析を実施しており、その原理を例証すべく本明細書で述べる。
【0091】
リポペプチド4を用いた沈降平衡超遠心分離実験から、該粒子が400kD範囲に見かけの質量を有することが示された(図3)。分析のために、3通りのロータ速度5,000、7,500および10,000rpmについて、また3通りの濃度24、48および240μMについて三連のデータセットを集めた。低い方の2つのリポペプチド濃度におけるデータは、451,820±9,670g.mol−1の見かけのモル質量を有する単一の理想的な分子種の存在を仮定したモデルによくフィットした。最も高い濃度(240μM)のデータを含めると見かけの質量は431,170±14,160g.mol−1となったが、特に超遠心分離用セルの底部近くでフィッティングの質が下がった。しかしながら、実験データからのフィッティングのずれは、凝集した材料の出現に典型的な形式を持たず、高濃度では理想的でないことが示されたのかもしれない。
【0092】
沈降速度実験も実施し、見かけの沈降係数の分布、g(s*)[スタフォード、W.F.(Stafford, W. F.)、Anal. Biochem. (1992), 203, 295-301]、Is‐g*(s)およびc(s)[シャック、P.(Schuck, P.)、Biophys. J. (2000), 78, 1606-1619]の面から分析した。異なる手法にもかかわらず、すべての方法から、〜10Sを中心とした比較的広い分布が得られた。平衡データと速度データを一致させ、かつサイズ分布をより詳細に調査する試みにおいて、Sedfitソフトウェアで実行されるようなラム(Lamm)の方程式のモデル化[シャック、P.(Schuck, P.)、Biophys. J. (2000), 78, 1606-1619]を使用した;典型的なc(s)プロファイルを図4に示す。恐らくはアーチファクトにより、低濃度では低いS値側に軽微なテーリングがあるように見えるが、分布はすべて9.5〜10Sに集中している。離散した相互作用しない分子種を含む他のモデルを試験しても有意な統計学的改善は見られなかった。個々のs値の検討からは、明白な濃度依存は示されず、データのグローバルフィットとその後のモンテカルロ・シュミレーションから、値s20.w=9.837±4.4・10−3Sが得られた。
【0093】
リン脂質の化学的性質、および主な会合状態に含まれるモノマーの見かけの数(〜72)から、検討した濃度範囲内ではリポペプチドはミセル様の構造を形成することが示唆され、また、各々が三量体のコイルドコイルリポペプチドで構成されたおよそ24個のサブユニットが相互作用して、コイルドコイル状態のペプチド鎖で装飾されたコンパクトな脂質コアを形成するモデルが考えられる。生じる粒子のサイズは超遠心分離のデータで支持される。ペプチドが空間に最適に分布することも考えられる。そのような球状粒子を視覚化するために作製したコンピュータモデルを図5に示す。該モデルは、中心に集塊した疎水性の尾部と、溶液中へ花穂のように外側へ伸びる三量体のへリックス状のコイルドコイルとを示している。完全な球体以外の幾何学的形状も可能であるかもしれないが、該モデルは標準的条件下の希薄溶液中における該材料の挙動をよく反映しているようである。
【0094】
円偏光二色性(CD)によりペプチドの立体配座を調べるために、リポペプチド4と同じペプチド配列を有するがリン脂質およびリンカーを欠くペプチド5を分析した。そのような系で予想された通り、該ペプチドは、温度および濃度の両方に依存するCDスペクトルを示した。該ペプチドは、ペプチド濃度35μMにおいて、1℃では高度にαへリックス状であり、熱変性の遷移は〜40℃の中央点を示した。ペプチド5と類似の配列を備えたペプチドが、薄い水溶液中でモノマーと平衡状態にある三量体コイルドコイルを形成することが以前に示されている[ローレス‐デルメディコ、M.K.(Lawless-Delmedico, M. K.)ら、Biochemistry (2000), 39, 11684-11695]。ペプチド5は、N末端に2つの追加のグリシン残基を有し、遊離N末端を有する点でこのペプチドとは異なる。しかしながら、室温での遠紫外線CDスペクトル(図6)は両ペプチドについて類似していた。いずれの軽微な差異も、恐らくは、追加のグリシン残基による非周期的構造の単純な追加、または該グリシン残基が引き起こした可能性のある何らかの構造上の摂動のうち少なくともいずれかによるものと思われた。スペクトルはランダムコイル/αヘリックス平衡に特徴的なものであり、CONTINプログラムを使用するスペクトル分析[プロベンチャー、S.W.(Provencher, S. W.)、Comp. Phys. Comm. (1982), 27, 229-242]から、αヘリックス、βシートおよび非周期的な構造についてそれぞれ33%、25%および42%の値が得られた。
【0095】
ペプチド5にリン脂質部分を付加してリポペプチド4を形成することにより、CDスペクトルに著しい変化が引き起こされ(図6)、CONTINのフィットで判断されるようにヘリックス含量は〜100%まで上昇する。スペクトルへのリン脂質部分の直接的寄与は小さいと考えられ、注目しなかった。ヘリックス含量の増加は、ペプチド単独の場合に見られる一方の平衡状態がより構造化された状態へ移行すること、高度に構造化された別の状態へ再編成がなされること、またはこれら2つの組み合わせを示している。上記に報告した流体力学上の結果から見て、後者は、極めて大きな凝集物と共存し、恐らくは新しい平衡系を形成する比較的小さな分子種の存在を説明しうるため、後者が事実であると思われる。
【0096】
蛍光プローブのピレン‐3‐カルボキシアルデヒド(PYCHO)を使用して臨界ミセル濃度(CMC)を調べた。該プローブの蛍光特性は溶媒の極性に敏感であり、したがってプローブは疎水性のミセル媒体中では水性媒体と比較して異なる蛍光挙動を示す。該色素は、ミセルの疎水性内部に優先的に溶解し、その蛍光強度は水性環境と比較してより高く、また発光極大はより長い波長へと移行する。リポペプチド4存在下での該色素の発光スペクトルは、466nmで主ピークおよび437nmで微小ピークを示し、ミセル不在下では逆の挙動が見られた(図7)。
【0097】
CMCを、蛍光変化の濃度依存性の計測により調べ[ヴィルヘルム、M.(Wilhelm, M.)ら、Macromol. (1991), 24, 1033-1040;アスタフィーバ、I.(Astafieva, I.)ら、Macromol. (1993), 26, 7339-7352]、<20nMであることを見出した。しかしながら、該方法の感度および信頼性は、高いCMC値を有するミセル系に関しては非常に良好であるが、20nM未満のCMC値の正確な測定には不十分のようである。したがって、この系におけるPYCHO蛍光スペクトルの特徴は低濃度における小さなピークシフトを示しただけであった(図7)。
【0098】
リポペプチドの12通りの希釈物における発光スペクトルを、1μM〜3nMの範囲で計測し、データを発光強度の比I437/I466として濃度に対してプロットした。結果(図8)から、CMC未満のペプチド濃度において予想されるプラトー領域が達成されなかったことは明白である。より高濃度(400nM〜1μM)では、モノマー濃度を増加させることで新しいオリゴマーの形成が簡単にもたらされるプラトーの始まりが見られる。従って、PYCHO蛍光スペクトルの変化は、オリゴマーが形成されることと、CMCが非常に低い(<20nM)こととを示している。
【0099】
このリポペプチドに由来するSVLPの平均直径を、動的光散乱(DLS)計測値から、球状微粒子用の数理モデルに基づいた数量重み付き分布解析を使用して計算した。データは約17nmの平均径と一致している(図9)。DLSによる粒径を40℃でも計測したが、この場合粒径分布はわずかに狭くなり、生理的な温度ではおそらくより均質な粒径分布であることが示された(データは示されていない)。
【0100】
電子顕微鏡法を用いてリポペプチドSVLPを視覚化した。透過型電子顕微鏡写真を記録するために、pH7.4のトリス緩衝液中3μMのリポペプチド4溶液の陰性染色を使用した。粒子は、円形および星形のように見える(図10)。これが、基本的に全体が球形のもの反映しているのか、あるいは円盤状のものを反映しているのか電子顕微鏡写真からは判定できないが、いずれの構造であってもミセル様の系を示すものであろう。粒子は、顕微鏡写真を評価するために使用した方法に依存して、平均直径が17nmであり主集団のあたりでおよそ±5nmの粒径分布を有していた。試料の大きさおよび形状のいずれにおいても高い均質性が顕著であった。直径が25nm〜40nmの少数のより大きな集合物も、顕微鏡写真で見ることができた。これは、粒子が多層をなして支持体に吸着した可能性があることから、使用した技法のアーチファクトであったかもしれない。しかしながら、電子顕微鏡法により、規則的な形状および寸法の、安定したナノスケールの星状粒子の形成が明白に示されている。
【0101】
星状の形状の粒子は、図5に描かれるような、リン脂質が粒子の中心を向き(疎水性コアを形成)、親水性ペプチド鎖が外側を向いているリポペプチドモノマーの配置構成を示唆している。
【0102】
d)リポペプチド4に関する生物物理学的検討の実験の部
リン酸定量
アッセイの出典は[エームズ、B.N.(Ames, B. N.)、Methods Enzymol. (1966), 8, 115-118]であり、リン脂質部分の中に存在するリン酸総量を概算することにより、以降の実験で使用されるリポペプチド溶液の濃度を測定するために該アッセイを用いた。使用した材料は:250℃まで加熱することができる加熱ブロック(例えばテコン(Tecon)プログラマブル制御装置630);元素分析用の耐熱性ホウケイ酸ガラスチューブ(60×7mmΦ);および45℃のウォーターバスである。
【0103】
1mMリン酸溶液を、KH2PO4から正確に調製した(標準溶液、1μl=1nmolリン酸)。この標準溶液のアリコート(試料について推測されるリン酸含量に応じて、通常は10〜80μl)を、検量線を構築するために一連の清潔なチューブに加えた。試料および検量用標準溶液を加熱ブロック(100℃〜120℃)で乾燥させ、乾燥したら70μlのH2SO4/HClO4(1:1)を各チューブに添加し、該チューブを230〜250℃で15〜30分間加熱した。
【0104】
0.835%アスコルビン酸/0.2%モリブデン酸アンモニウムの溶液を以下のようにして調製した;2回蒸留したH2Oでアスコルビン酸溶液(10%w/v)およびモリブデン酸アンモニウム溶液(2.5%w/v)を調製した。利用の直前に、1.67mlのアスコルビン酸溶液および1.60mlのモリブデン酸アンモニウム溶液を合わせて混合し、体積を20mlに調節した(12件の試料に十分な量)。
【0105】
230〜250℃で15〜30分間の後、試料をr.t.に冷却し、1.6mlのアッセイ溶液を振盪しながら添加し、次いで試料を45℃で30分間インキュベートした。試料やリン酸標準溶液の入っていないチューブを全く同じように処理してブランクを用意した。インキュベーション直後に、各試料の820nmにおける吸光度を1cmのセル中で計測した。試料の濃度を標準曲線から推定した。
【0106】
超遠心分析法
標準的な沈降平衡実験および沈降速度実験を、AN60Tiロータを装備したベックマン(Beckman)XL‐A分析用超遠心機を使用して実施した。ダブルセクターかつ6チャネル測定のチャコールエポンのセンターピースを使用し、適切な場合にはフルオロカーボンFC43を使用してフォールスボトムを設けた。特定の実験に合わせて様々なロータ速度を設定し、すべての計測を20℃で実施した。数種類のリポペプチド濃度で実験を実施し、90mM塩化ナトリウムを含む10mMトリス(pH7.4)または90mM塩化ナトリウムを含む10mMリン酸ナトリウム(pH7.4)のいずれかのバッファーを終始使用した。沈降平衡の実施において、0.001cm間隔で径方向のデータを収集し、各データセットについて少なくとも10回のスキャンを平均した。そのような3つのデータセットを各速度および濃度について得た。適切な時間間隔で収集されたデータの重ね合わせによって平衡を確認した。沈降速度データは2〜4分のスキャン間隔で径方向に0.005cm間隔で得た。加法原理を用いて、みかけの偏比容を、脂質部分(v20=0.934cm3g−1)およびペプチド部分(v20=0.726cm3g−1)について別々に、これらのグループ寄与から計算した[コーン、E.J.(Cohn, E. J.)ら、「Proteins, amino acids and peptides as ions and dipolar ions」、(1943)、ニューヨーク所在のハーフナー出版(Hafner publishers)、のp.370−381;ヘイランド、H.(Hoeiland, H.)、「Thermodynamic Data for Biochemistry and Biotechnology」、(1986)、ベルリン所在のスプリンガー‐フェアラーク(Springer-Verlag)、のp.17−44;
トラウベ、I.(Traube, I.)、Ann. Chem. Liebigs (1891), 265, 27;ラウエ、T.M.(Laue, T. M.)、「Analytical Ultracentrifugation in Biochemistry and Polymer Science」、(1992)、ケンブリッジ所在の英国学士院化学出版(Royal Society of Chemistry publishers)]。リポペプチド4の偏比容(v20=0.781cm3g−1)は、2つの構成成分の値の質量加重平均として近似した。バッファー密度は標準テーブルからコンピュータで計算した[ラウエ、T.M.(Laue, T. M.)、「Analytical Ultracentrifugation in Biochemistry and Polymer Science」、(1992)、ケンブリッジ所在の英国学士院化学出版]。ソフトウェアパッケージSedfitおよびSedphat[シャック、P.(Schuck, P.)、Biophys. J. (2000), 78, 1606-1619]を速度データの分析に使用し、Ultrascanプログラムを沈降平衡データの分析に使用した[デメラー、B.(Demeler, B.)、UltraScan5.0(2001)]。
【0107】
円偏光二色性分光法
遠紫外円偏光二色性(CD)スペクトルを、日本分光株式会社のJ−715分光旋光計および光路長0.1cmの石英セルを使用してr.t.で計測した。ペプチド5の溶液(50μM)およびリポペプチド4の溶液(35.7μM)をトリス緩衝液(10mM TrisHCl、90mM NaCl、pH7.4)で調製し、濃度をそれぞれに見合ったリン酸分析またはアミノ酸分析によって測定した。10〜100nm/分のスキャン速度、1〜2秒の応答時間および1nmのスペクトルバンド幅を使用し、最低限の分解能0.5nmでスペクトルを収集した。ブランクを差し引いた後、スペクトル値を平均残基楕円率[deg.cm2/dmol]として報告し、平均残基分子量を計算する際には脂質部分を無視した。
【0108】
リポペプチド4の低濃度試料(2〜40μM)のCDスペクトルを、光路長1cmの石英セルを用いて日本分光株式会社のJ−810分光旋光計にて20℃で計測した。リポペプチド溶液をPBS(10mM Na2HPO4、90mM NaCl、pH7.4)で調製し、濃度をリン酸分析によって測定した。10nm/分のスキャン速度、4秒の応答時間および2nmのスペクトルバンド幅を使用して、最低限の分解能0.5nmでスペクトルを収集した。上記に記載のようにしてデータを処理した。
【0109】
蛍光:臨界ミセル濃度(CMC)
蛍光プローブのピレン‐3‐カルボキシアルデヒド(PYCHO)を臨界ミセル濃度(CMC)の測定に使用した[トウッロ、N.J.(Turro, N. J.)、Macromolecules (1984), 17, 2123-2126;アナンタパドマナバン、K.P.(Ananthapadmanabhan, K. P.)ら、Langmuir (1985), 1, 352-355]。パーキン・エルマー(Perkin Elmer)LS55ルミネセンス分光計で蛍光スペクトルを得た。ピレン‐3‐カルボキシアルデヒドの発光スペクトルを、20℃にて400〜550nmで計測した。該発光スペクトルは、300nm/分のスキャン速度、4nmの励起スリット幅、および9nmの発光スリット幅として、試料を380nmで励起することにより得られ、各スキャンを4回繰り返して平均化した。リポペプチド4の溶液は、予めPYCHOで飽和させたHBS pH7.4(10mM Hepes、90mM NaCl)を使用して調製した(溶液濃度<10−6M)。1μM〜5nMの12種類のペプチド濃度で蛍光スペクトルを計測し、試料の濃度はリン酸アッセイを使用して測定した。低nM(50nM−3nM)領域のリポペプチド濃度は、HBSバッファー中の飽和PYCHO溶液の1/10希釈液を使用して調製した。データをOrigin(v7.0)ソフトウェアで解析し、発光スペクトルの相対強度比I437/I466を試料濃度に対してプロットしてCMC値を推定した。
【0110】
動的光散乱(DLS)
光散乱法を、NICOMPサブミクロン粒径測定器(モデル370)で実施した。リポペプチド4試料をトリスバッファー(10mM、90mM NaCl、pH7.4)中で調製し、試料濃度はリン酸アッセイを使用して測定した。リポペプチド4の1.1mM溶液を0.45μMミリポアフィルターで濾過し、1.05mMの試料を得た。この溶液について、20℃、30℃および37℃で光散乱法を実施した。20℃ではt=0、20および90分、30℃および37℃ではt=0および90分で測定を実施した。データ処理は、理想的な球状微粒子の存在を仮定するNICOMP多成分フィッティングモデルを用いて実施した。
【0111】
電子顕微鏡法
カーボン被膜付き400メッシュ銅製グリッドを酸素プラズマ処理で親水化したものを、透過型電子顕微鏡(TEM)による予備構造解析に使用した。リポペプチド4溶液(トリス緩衝液(pH7.4)中4μM)の小滴を親水性のC‐支持体に載せ、20秒後、ごく薄い層がグリッド上に残るようにほとんどの溶液を取り除いた。その後、少量の水を表面に接触させることによりグリッドを洗浄した。過剰な水を拭き取り、少量の2%酢酸ウラニル水溶液を表面に接触させることにより直ちにグリッドを染色した。染色液を除去した後、グリッドを乾燥させた。顕微鏡写真は、1k×1kのスロースキャンCCDカメラ(プロスキャン(ProScan)、ドイツ連邦共和国ミュンヘン所在)を使用して、ツァイス(Zeiss)EM912電子顕微鏡(ツァイスAG(Zeiss AG)、ドイツ連邦共和国オーバーコッヘン所在)で記録した。
【0112】
実施例2:リポペプチド6
【0113】
【化15】
リポペプチド6は、追加のCysが配列番号1のC末端に付加されている点を除いてリポペプチド4と同一である。このCysの側鎖はリポペプチドを抗原にコンジュゲートさせるために使用することができる。
【0114】
53merのペプチドを、ペプチド5について上述したように、Fmoc法を使用して、さらにFmoc‐Cys(Trt)‐OHも用いてRinkアミドMBHA樹脂上で合成した。合成が完了したらすぐに、樹脂の試料をTFAで処理した。その後、生成物を、C18カラム(Zorbax(R)Eclipse XDB‐C18;4.6mm×250mm、5μm、80Å)を用いる逆相HPLCにより、18分間に水(+0.1%TFA)中で5〜50%アセトニトリル、次いで4分間に水(+0.1%TFA)中で100%アセトニトリルまでのグラジエントを使用して分析した。保持時間=19.6分。ESI‐MS:(m/z):1393.2[M+4H]4+;1115.0[M+5H]5+;929.1[M+6H]6+;796.8[M+7H]7+(M実測値=5569.6±0.01%;M計算値=5569.6)。正しい直鎖ペプチドが樹脂上に存在していたので、リン脂質1,3‐ジパルミトイル‐グリセロ‐2‐ホスホエタノールアミド‐スクシナート(PE‐succ‐OH)を、DMF:CH2Cl2(2:1)に溶解したPyBOP(3等量)およびDIEA(8等量)を使用してr.tで16時間、残りの樹脂に結合しているペプチドのN末端にカップリングした。カップリングの完了はカイザーテスト陰性により確認した。得られた樹脂結合コンジュゲートを最後に樹脂から切り離し、TFA/H2O/TIS/EDT(92.5:2.5:2.5:2.5)を使用して3時間脱保護した。TFA相を減圧下で濃縮し、次に粗製の脱保護リポペプチドを冷iPr2Oの添加によって沈澱させた。遠心分離した後、ペレットをiPr2Oで2度洗浄し、高真空下で乾燥させた。生成物をH2O/MeCN/DMF(4:4:2)に溶解し、セミ分取用C4カラム(Interchrom UP5WC4‐25M;10mm×250mm、10μm、300Å)を用いた逆相HPLCによって、15分間に水(+0.1%TFA)中で50〜100%アセトニトリルのグラジエントを使用して精製した。生成物を含むフラクションを凍結乾燥してコンジュゲート6を得た。コンジュゲート6を、分析用C4カラム(Interchrom UP5WC4−25QS;4.6mm×250mm、10μm、300Å)を用いた逆相HPLCによって、20分間に水(+0.1%TFA)中で50〜100%アセトニトリルのグラジエントを使用して分析した:純度>98%。tR=17.2分。ESI‐MS(陽イオンモード)(m/z):1587.7[M+4H]4+;1269.6[M+5H]5+;1058.3[M+6H]6+;907.0[M+7H]7+(M実測値=6342.9±0.01%;M計算値=6342.6)。
【0115】
実施例3:リポペプチド7
【0116】
【化16】
この分子のペプチド部分(配列番号2)は、設計したコイルドコイルヘプタドリピート配列を、HIV‐1のJR‐FL株のgp41タンパク質から得られた天然のコイルドコイル配列に融合させたものを含んでいる。したがってこのコイルドコイル配列は、一部は天然のものであり一部は設計されたものである。さらに、ジペプチド‐SG‐をN末端に付加して脂質の前の短いスペーサとして作用させ、またC末端にはジペプチド‐CG‐を取り付けてCys残基中のチオール基を抗原とのコンジュゲートに使用できるようになっている。
【0117】
該ペプチドを、活性化のためのHBTU/HOBt/DIEAと、Fmoc‐Glyを搭載した2‐クロロトリチルクロリド樹脂(0.34mmol/g、500mg)とを使用して組み立てた。使用したアミノ酸は、Fmoc‐Ala‐OH、Fmoc‐Arg(Pbf)‐OH、Fmoc‐Asp(tBu)‐OH、Fmoc‐Cys(Trt)‐OH、Fmoc‐Gly‐OH、Fmoc‐Gln(Trt)‐OH、Fmoc‐Glu(tBu)‐OH、Fmoc‐His(Boc)‐OH、Fmoc‐Ile‐OH、Fmoc‐Leu‐OH、Fmoc‐Pro‐OH、Fmoc‐Lys(Boc)‐OH、Fmoc‐Met‐OH、Fmoc‐Ser(tBu)‐OH、Fmoc‐Tyr(tBu)‐OH、Fmoc‐Trp(Boc)‐OHおよびFmoc‐Val‐OHであった。6倍過剰量のFmocアミノ酸および8等量のDIEAを使用した。各カップリングサイクルの後、残っている遊離アミノ基をAc2O/HOBt/DIEAでキャッピングした。組み立ておよび末端Fmoc基の除去の後、樹脂をDMF(5×6ml)、i‐PrOH(5×6ml)およびn−ヘキサン(4×6ml)で洗浄し、乾燥させた。脂質部分をカップリングするために、樹脂(957mg)をCH2Cl2中で30分間膨潤させた。CH2Cl2/DMF(2:1)(3.5ml)中の、Fmoc‐Cys((RS)‐2,3‐ジ(パルミトイルオキシ)‐プロピル)‐OH(Fmoc‐Pam2Cys‐OH、174mg)、PyBOP(101mg)およびHOBt(26mg)の溶液を添加し、続いてDIEA(1.6等量)を添加した。この混合物を、振盪機上でr.t.にて18時間穏やかに撹拌した。樹脂をCH2Cl2(5×6ml)およびDMF(5×6ml)で洗浄した。Fmoc保護基を、DMF中の20%(v/v)ピペリジンを用いた処理(2mlで2分間×6回)で除去した。脱保護は301nmでのUV吸収によって観察した。樹脂を、DMF(5×10ml)、i‐PrOH(5×6ml)、およびnヘキサン(4×6ml)およびCH2Cl2(2×6ml)で洗浄した。ペプチジル樹脂を、CH2Cl2中の0.6%TFAで処理し(4.5mlで2分間×4回)、続いてCH2Cl2で洗浄した。濾液を合わせ、減圧下で蒸発させた。続いて、TFA/EDT/チオアニソール/フェノール/H2O/TIS(69:10:10:5:3.5:1)(9.85ml)を用いてr.t.で2時間穏やかに撹拌する処理によって側鎖保護基を除去した。脱保護されたペプチドを、予め−20°に冷却したiPr2Oの中で沈澱させ、iPr2O(15ml)で3回洗浄した。沈殿物を一晩空気乾燥させ、分取用C4カラム(Interchrom)を用いたRP‐HPLCによって、28分間にH2O(+0.1%TFA)中で30〜100%MeCNのグラジエントを使用して、コイルドコイルリポペプチドを精製した。収量:45mg。RP‐HPLC(Interchrom C4カラム、12.5分間にH2O(0.1%TFA)中で50〜100%MeCN):純度>97%、tR=11.92分。LC‐MS:C8カラム、10分間にH2O(+0.1%HCOOH)中で30〜100%MeCN:tR=5.47分;m/z=1342.5[M+5H]5+、1118.9[M+6H]6+、959.3[M+7H]7+、893.4[M+8H]8+、746.6[M+9H]9+。MALDI‐TOF:C308H532N76O82S3について計算したm/z:6704.9;観測されたm/z:6704.7[M]+。
【0118】
実施例4:リポペプチド8
【0119】
【化17】
リポペプチド8は、設計したコイルドコイル(配列番号3)がN末端で短いリンカーを介してリン脂質に結合したものを含んでいる。
【0120】
ペプチド(配列番号3)は、Fmoc法を使用し、活性化のためのHBTU/HOBt/DIEAと2‐クロロトリチルクロリド樹脂(0.42mmol/g、595mg、0.25mmolスケール)とを使用して組み立てた。使用したアミノ酸はFmoc‐Ala‐OH、Fmoc‐Glu(tBu)‐OH、Fmoc‐Ile‐OH、Fmoc‐Lys(Boc)‐OHおよびFmoc‐Cys(Trt)‐OHであった。4倍過剰量のFmoc保護アミノ酸および6等量のDIEAを使用した。各カップリングサイクルの後、残存している遊離アミノ基をAc2O/HOBt/DIEAでキャッピングした。ペプチド鎖の組み立ておよび末端Fmoc基の除去の後、樹脂をDMF(5×6ml)、i‐PrOH(5×6ml)およびnヘキサン(4×6ml)で洗浄し、減圧下で乾燥させた。脂質部分をカップリングするために、樹脂(250mg)をDCM中で30分間膨潤させた。DCM/DMF(1:2)(4.5ml)中のPE‐succ‐OH(113mg)、PyBOP(66mg)およびHOBt(17mg)の溶液を添加し、続いてDIEA(31μl、300μmol、6.0等量)を添加した。この混合物を、振盪機でr.t.にて16時間穏やかに撹拌した。樹脂をDMF(5×6ml)およびDCM(2×6ml)で洗浄した。ペプチジル樹脂をDCM中の0.6%TFAで処理し(4.5mlで2分間を4回)、続いてDCMで洗浄した。濾液を合わせ、減圧下で蒸発させた。その後、TFA/EDT/チオアニソール/H2O/TIS(75:10:10:4:1)(10ml)を用いてr.t.で2時間穏やかに撹拌することにより側鎖保護基を除去した。脱保護されたペプチドを、予め−20°に冷却したiPr2Oで沈澱させ、iPr2Oで3回洗浄した。分取用C4カラム(Interchrom)を用いた逆相HPLCにより、28分間にH2O(+0.1%TFA)中で30〜100%MeCNのグラジエントを使用して、リポペプチド8を精製した。収量:15mg。RP‐HPLC(Interchrom C4カラム、12.5分間にH2O(0.1%TFA)中で50〜100%MeCN):純度>96%、tR=12.54分。ESI‐MS:C267H474N57O79PSについて計算したm/z:5810.0;観測されたm/z:1453.3[M+4H]4+、1162.5[M+5H]5+。
【0121】
実施例5:4‐マレイミドブチリル‐ヒドラジノグリシニル基を担持する抗原V3SS、12
【0122】
【化18】
V3SSと呼ばれるジスルフィド架橋ペプチドは、主としてHIV‐1のgp120糖タンパク質のいわゆるV3ループから得られる。この配列(配列番号4)はgp120のいわゆる主要中和決定基を表し、潜在的なHIV‐1ワクチン候補として広く研究されてきた[ホアン、C.C.(Huang, C.-C.)ら、Science (2005), 310, 1025-1028;パントフレット、R.(Pantophlet, R.)ら、Annu. Rev. Immunol. (2006), 24, 739-769]。したがって、ジスルフィド架橋ペプチドV3SSはgp120のV3ループのエピトープミメティックである。
【0123】
V3SS(配列番号4)のN末端にはヒドラジノグリシン(Z)残基が付加されているので、求核性のヒドラジノ基を使用して該ペプチドをLBBにカップリングすることができる。ペプチド鎖を、標準的な固相法およびFmoc法を使用して2‐クロロトリチルクロリド樹脂上で組み立てた。トリBocで保護したヒドラジノグリシン残基をN末端に付加した。樹脂から切り離して十分に脱保護した後、空気酸化によってジスルフィド結合を導入した。最後に、N‐ヒドロキシスクシンイミジル‐4‐マレイミドブチラート(HMB)リンカーをN末端のヒドラジノ基と部位特異的に反応させて生成物12を得た。
【0124】
直鎖ペプチドZ‐NCRKSIHIGPGRAFYTTGCG(Zが配列番号4に付加される;Zは‐NHNHCH2CO‐を意味する)を、標準的なFmoc法および2‐クロロトリチルクロリド樹脂を使用して、アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)社のABI 433Aペプチド合成機で合成した。Fmoc‐Gly‐OHを負荷した後、以下の側鎖保護アミノ酸:Fmoc‐Ala‐OH、Fmoc‐Asn(Trt)‐OH、Fmoc‐Arg(Pbf)‐OH、Fmoc‐Cys(Trt)‐OH、Fmoc‐Gly‐OH、Fmoc‐His(Trt)‐OH、Fmoc‐Pro‐OH、Fmoc‐Ile‐OH、Fmoc‐Lys(Boc)‐OH、Fmoc‐Ser(tBu)‐OH、Fmoc‐Thr(tBu)‐OHおよびFmoc‐Tyr(tBu)‐OHを合成に使用した。N末端残基として、Bocで保護したヒドラジノグリシンを、DMF(5ml)中のトリBoc‐ヒドラジノ酢酸(3等量)、PyBOP(3等量)およびDIEA(8等量)の溶液で樹脂を3時間処理することによりカップリングした。その後、樹脂を濾過し、DMF(5×)、次いでCH2Cl2(5×)で洗浄した。ペプチドを樹脂から切り出し、TFA/H2O/iPr3SiH/エタンジチオール(92.5:2.5:2.5:2.5)(15ml)で樹脂を2.5時間処理することにより脱保護した。濾過により樹脂を取り除き、濾液を減圧下で濃縮した後、冷iPr2Oの添加によって粗製の脱保護直鎖ペプチドを沈澱させた。遠心分離した後、ペレットをiPr2Oで2回洗浄し、高真空下で乾燥させて白色固形物を得た。生成物を、分取用C18カラム(Zorbax Eclipse XDB‐C18;21.2mm×250mm、7μm、80Å)を用いる逆相HPLCによって、16分間に水(+0.1%TFA)中で10〜50%アセトニトリルのグラジエントを使用して精製し、還元されたジチオール形態の純粋な直鎖ペプチドを得た。このペプチドを、逆相HPLC(分析用C18カラムZorbax Eclipse XDB‐C18;4.6mm×250mm、5μm、80Å)によって、20分間に水(+0.1%TFA)中で5〜50%アセトニトリルのグラジエントを使用して分析した:純度>98%;tR=14.2分。MALDI‐TOF(m/z):2211.2[M+1H]1+(M実測値=2210.2±0.01%;M計算値=2210.4)。
【0125】
酸化(ジスルフィド架橋の形成)については、H2O(20ml)中の直鎖ペプチド(20mg)の溶液を、空気中r.t.で48時間撹拌した。対応するジスルフィド架橋ペプチドを、分取用C18カラム(Zorbax Eclipse XDB‐C18;21.2mm×250mm、7μm、80Å)を用いた逆相HPLCによって、16分間に水(+0.1%TFA)中で12〜40%アセトニトリルのグラジエントを使用して直接精製し、15mgの酸化ペプチドを得た。酸化(ジスルフィド架橋)ペプチドを、逆相HPLC(分析用C18カラムZorbax Eclipse XDB‐C18;4.6mm×250mm、5μm、80Å)によって、20分間に水(+0.1%TFA)中で5〜50%アセトニトリルのグラジエントを使用して分析した:純度>98%;tR=14.2分。MALDI‐TOF(m/z):2209.0[M+1H]1+(M実測値=2208.0±0.01%;M計算値=2208.4)。
【0126】
H2O(30ml)中のジスルフィド架橋ペプチド(30mg)をH2O(3ml)に溶解し、NaOH(0.2N)を使用してpHをpH6に調節した。ここに、N‐ヒドロキシスクシンイミジル‐4‐マレイミドブチラート(HMB)(3等量、11mg)のTHF溶液(450μl)を添加し、反応混合物をr.t.で2時間撹拌した。その後、溶液をH2O/TFA0.1%(2ml)で希釈し、生成物を、分取用C18カラム(Zorbax XDB‐C18;21.2mm×250mm、7μm、80Å)を用いる逆相HPLCによって、16分間に水(+0.1%TFA)中で10〜50%MeCNのグラジエントを使用して精製し、21mgのペプチド12を得た。ペプチド12を、C18カラム(Zorbax Eclipse XDB‐C18;4.6mm×250mm、5μm、80Å)を用いる逆相HPLCによって、20分間に水(+0.1%TFA)中で5〜50%アセトニトリルのグラジエントを使用して分析した:純度>98%;tR=14.7分。MALDI‐TOF(m/z):2374.3[M+1H]1+(M実測値=2373.3±0.01%;M計算値=2373.4)。
【0127】
実施例6:4‐マレイミドブチリル基を担持する抗原LY‐CH、LY‐CH‐HMB
【0128】
【化19】
実施例5のように、HMBリンカーを、有機小分子ハプテンであるルシファーイエロー‐CH(LY‐CH)と呼ばれる黄色色素とカップリングして、コンジュゲートLY‐CH‐HMBを得た。
【0129】
ルシファーイエロー‐CH(LY‐CH)(スイス国ブーフ所在のフルカ(Fluka)社製、12.5mg)をH2O/CH3CN(1ml、4:1)に溶解し、溶液のpHを0.2NのNaOHで6.5に調節した。この溶液に、THF(400μl)中のN‐ヒドロキシスクシンイミジル‐4‐マレイミドブチラート(HMB)(15mg、2等量)の溶液を添加し、反応混合物をr.t.で6時間撹拌した。H2O/TFA0.1%(2ml)で希釈した後、生成物を、分取用C18カラム(Zorbax;21mm×250mm、10μm、120Å)を用いた逆相HPLCによって、15分間に水(+0.1%TFA)中で5〜50%アセトニトリルのグラジエントを使用して直接精製し、9.6mgのLY‐CH‐HMBを黄色固形物として得た。ESI‐MS(m/z):608.0[M−H]−、630.9[M+Na−2H]−(陰イオンモード)。
【0130】
実施例7:コンジュゲートLBB6‐12
ペプチド12(実施例5、5.9mg)をH2O/CH3OH(4:1)(750μl)に溶解し、溶液のpHをNaOH(0.2N)で6.5に調節した。これに、リポペプチド6(実施例2、6.6mg)をH2O/CH3OH(1:1)に溶解した溶液(800μl)を添加し、反応混合物を不活性雰囲気下にてr.t.で2時間撹拌した。H2O/TFA0.1%(2mL)で希釈した後、生成物を、セミ分取用C4カラム(Interchrom UP5WC4‐25M;10mm×250mm、10μm、300Å)を用いた逆相HPLCによって、15分間に水(+0.1%TFA)中で50〜100%MeCNのグラジエントを使用して直接精製し、4mgのLBB6‐12を得た。このコンジュゲートを、分析用C4カラム(Interchrom UP5WC4‐25QS;4.6mm×250mm、10μm、300Å)を用いた逆相HPLCによって、20分間に水(+0.1%TFA)中で50〜100%アセトニトリルのグラジエントを使用して分析した:純度>98%。tR=15.4分。MALDI‐TOF(m/z):8717.4[M+1H]1+(M実測値=8716.4±0.01%;M計算値=8716.3)。
【0131】
実施例8:コンジュゲートLBB6‐LY‐CH
リポペプチド6(実施例2、1.1mg、177nmol)のH2O/MeCN/TFE(1:4:1)(600μl)中の溶液を撹拌している中に、LY‐CH‐HMB(実施例6、440μg)のH2O/MeCN(1:1)溶液(400μl)を少量ずつ添加した。0.01NのNaOHでpHをpH6.3に注意深く調節し、混合物をr.t.で2時間激しく撹拌した。リポペプチド6およびルシファーイエローコンジュゲートは様々なH2O/MeCNグラジエントについてC4およびC8のRP‐HPLCカラム上で同一の保持時間を有するので、反応後にESI‐MSを使用してリポペプチド6の消失をモニターした。反応が完了したらすぐに、該懸濁物を0.1%TFA(500μl)の添加により希釈し、付加生成物を、C4カラムを用いるセミ分取逆相HPLC(Interchrom、UP5WC4‐25M、10mm×250mm、10m、300Å孔径、A=H2O+0.1%TFA、B=MeCN+0.1%TFA、16.5分間に50〜100%B)によって過剰なLY‐CH‐HMBから分離した。LBB6‐LY‐CHコンジュゲートは、tR=13.38分の鋭いピークとして溶出された。収量:1.0mg(82%)。生成物を、分析用C4カラム(Interchrom;4.6mm×250mm、10m、300Å)を用いる逆相HPLC、およびLC‐MS(Zorbax C8、イオン源、検出器)によって分析した。分析用RP‐HPLC(C4カラム、A=H2O+0.1%TFA、B=MeCN+0.1%TFA、13分間に50〜100%B):純度:>95%。tR=13.0分。LC‐MS(C8カラム、A=H2O+HCOOH、B=MeCN+HCOOH、10分間に30〜100%B):保持時間=7.73分。m/z:1392.4[M+5H]5+、1160.3[M+6H]6+、994.3[M+7H]7+(C307H514N74O99PS3Liについて計算したm/z:1392.2[M+5H]5+、1160.3[M+6H]6+、994.7[M+7H]7+)。
【0132】
実施例9:コンジュゲートLBB7‐12
リポペプチド7(実施例3、3.5mg)のMeCN/H2O/TFE(4:1:1)(1.2ml)中の溶液を撹拌している中に、MeCN/H2O(1:1)(400μl)中の12(実施例5、3.7mg)の溶液を添加した。0.1NのNaOHを用いてpHをpH=6.0に注意深く調節した。該混合物をr.t.で2時間撹拌した。反応の完了(C8カラムを使用してLC‐MSによって検出)の後に、コンジュゲートLBB7‐12を、C4カラム(Interchrom)を用いるセミ分取用RP‐HPLCによって、17分間にH2O(+0.1%TFA)中で30〜100%MeCNのグラジエントを使用して直接精製した。収量:4.1mg(87%)。RP‐HPLC(C4カラム、12.5分間にH2O(0.1%TFA)中で50〜100%MeCN)):純度>97%、保持時間=10.72分。LC‐MS(C8カラム、10分間にH2O(+0.1%HCOOH)中で30〜100%MeCN):tR=5.53分、m/z=1010.4[M+9H]9+、909.8[M+10H]10+、827.2[M+11H]11+、758.3[M+12H]12+、700.0[M+13H]13+。MALDI‐TOF:C409H685N109O112S5について計算したm/z:9082.0;観測されたm/z:9082.8[M]+、4542.1[M]2+。
【0133】
実施例10:コンジュゲートLBB7‐LY‐CH
LBB7‐LY‐CHの合成および精製は、リポペプチド7(3.0mg)およびLY‐CH‐HMB(実施例6、1.1mg)を使用して、実施例9にLBB7‐12について述べたようにして実施した。収量:2.8mg(86%)。RP‐HPLC(Interchrom C4カラム(12.5分間にH2O(0.1%TFA)中で50〜100%MeCN):純度>96%、tR=11.91分。LC‐MS:C8カラム、5分間にH2O(+0.1%HCOOH)中で66〜100%MeCN:tR=2.7分、m/z=1464.9[M+5H]5+、1220.7[M+6H]6+、1046.5[M+7H]7+、915.9[M+8H]8+。MALDI‐TOF:C329H549N82O94S5Liについて計算したm/z:7324.8;観測されたm/z:7336.6[M−Li+Na]+、7320.4[M]+、3660.0[M]2+。
【0134】
実施例11:免疫化
HLBおよびSVLPの1つの重要な用途は、免疫応答を高めるための免疫系へのワクチン成分の送達にある。抗原を搭載したHLBまたはSVLPで動物を免疫化すると、効率的な抗原特異的免疫応答が誘発されるはずである。これが可能であることを実証するために、LBB6‐12、LBB6‐LY‐CH、LBB7‐12およびLBB7‐LY‐CHを用いてウサギを免疫化した。さらに、最初の3つのコンジュゲートは、フロイントの完全/不完全アジュバントを使用する場合および不使用の場合について試験した。DLSの検討から、各コンジュゲートが水溶液中で自然に自己集合することによりHLBまたはSVLPを形成することが示された。
【0135】
400μlのPBS(10mMリン酸ナトリウム、154mM NaCl、pH7.2)の中で、またはフロイントのアジュバント(初回免疫にはフロイントの完全アジュバント(FA)、追加免疫にはフロイントの不完全アジュバント(FIA))とともに、r.t.で少なくとも1時間再構成および平衡化した1種類のコンジュゲート150μgを用いて、ウサギ(1群2羽)を免疫化した。免疫化は第0日、第28日および第56日に実施した。第14日、第38日および第66日に血清を採取した。血清を酸素結合免疫吸着検査法(ELISA)によって分析し、免疫化に使用したコンジュゲートに結合する抗体を検出した。結果を表1に示す。
【0136】
表1.コンジュゲートの免疫原性
各コンジュゲートを用いてそれぞれ2羽のウサギ(aおよびb)を1回(1°)、2回(2°)および3回(3°)免疫化した後に達成されたlog10(終点)力価を示す。免疫前血清試料は、対応する免疫原との有意な反応性を示さなかった。例えば、log10(終点)力価5.00は力価100,000に相当する。
【0137】
【表1】
表1からわかるように、すべてのコンジュゲートが第2の追加免疫後に高い抗体レベルを引き起こした。ほとんどの初回の抗血清(力価は1:100〜1:15,000に及ぶ)において既に反応が検出可能であり、抗体価の最も急激な上昇は2回目の免疫化の後に観察され、2回目の免疫化から3回目の免疫化については軽微な上昇が見られた。アジュバントを使用せずに到達した抗体価は、フロイントアジュバントを使用して達成された抗体価と同じか、またはそれより高いことも明らかとなった。これは、アジュバントを使用せずに良好な免疫応答を達成させることができることを示している。
【0138】
各々のハプテン特異的免疫応答の特異性についてもELISAによって分析した(表2)。ここでは、各コンジュゲートによって誘導された抗体が異なるLBBに付着された同じ抗原と交差反応する能力を測定した。結果から、免疫応答のかなりの部分が各LBBに付着された抗原に対して指向性を有することが示された。
【0139】
表2.ハプテン特異的免疫応答の特異性
各免疫原に対して生成された抗体を、各抗原との交差反応に関してELISAで試験した。各コンジュゲートを用いてそれぞれ2羽のウサギ(aおよびb)を1回(1°)、2回(2°)および3回(3°)免疫化した後に達成されたlog10(終点)力価を示す。
【0140】
【表2】
ELISA
ELISA用マイクロタイタープレート(ヌンク(Nunc) lmmunoplate(TM) Polysorb(R) F96)を、PBSに溶解した各抗原の5μg/ml溶液で一晩コーティング処理した。その後、ウェルを0.05%のトゥイーン20を含むPBS(PBST)で洗浄し、5%脱脂粉乳を含むPBSでr.t.にて1時間ブロッキング処理した。ブロッキング処理の後、ウェルをPBSTで3回洗浄し、0.05%トゥイーン20と0.5%脱脂粉乳とを含むPBS(MPBST)で系列希釈したウサギ血清とともにr.t.にて2.5時間インキュベートし、続いてPBSTで3回洗浄した。その後、プレートを、アルカリホスファターゼ結合型マウス抗ウサギIgG抗体(シグマ(Sigma))(MPBST中で1:20000に希釈)とともに、r.t.で1時間インキュベートし、再びPBSTで3回洗浄し、基質バッファー(50mM炭酸ナトリウムバッファー、1mM MgCl2、pH9.6)中のパラニトロフェニルリン酸(シグマ)1mg/ml溶液とともに暗所でr.t.にてインキュベートした。適切な時間を経た後、バイオラッド(Bio-Rad)社のモデル3550マイクロプレートリーダを使用して405nmで吸光度を読み取った。
【0141】
実施例12:リポペプチド9
【0142】
【化20】
この実施例は、実施例4のリポペプチド8のIEKKIEAヘプタドリピートモチーフをベースとして、さらにユニバーサルなヘルパーT細胞エピトープ[シニガーリャ、F.(Sinigaglia, F.)ら、Nature (1988), 336, 778-780に記載]が正確に融合しており、かつC末端に、溶解度および安定性を改善し、抗原の結合を可能にするための追加の残基を含む。
【0143】
直鎖ペプチドGGIEKKIEAIEKKIEAIEKKIEAIEKKIEAIEKKIAKMEKASSVFNVVNSKKKCa−NH2(配列番号28、「a‐NH2」で表されたD‐アラニンアミドがC末端に付加されている)を、標準的なFmoc法およびRinkアミドMBHA樹脂を使用して、アプライドバイオシステムズ社のABI 433Aペプチド合成機で合成した。活性化のためのHBTU、HOBtおよびDIEAを使用して樹脂に最初にFmoc‐D‐アラニンを載せた後、以下の保護アミノ酸を正確な順序で使用してペプチドを組み立てた:Fmoc‐Ala‐OH、Fmoc‐Asn(Trt)‐OH、Fmoc‐Cys(Trt)‐OH、Fmoc‐Glu(tBu)‐OH、Fmoc‐Gly‐OH、Fmoc‐Ile‐OH、Fmoc‐Lys(Boc)‐OH、Fmoc‐Met‐OH、Fmoc‐Phe‐OH、Fmoc‐Ser(tBu)‐OHおよびFmoc‐Val‐OH。各カップリングサイクルの後で、残存している遊離アミノ基をAc2O/HOBt/DIEAを使用してアセチル化した。鎖の組み立てが完了して末端のFmoc保護基を除去した後、樹脂をDMF(5×6ml)、CH2Cl2(5×6ml)およびMeOH(5×6ml)で洗浄し、KOHペレット上で減圧下にて乾燥させた。脂質部分のカップリングについては、樹脂(325mg)をCH2Cl2(6ml)中で45分間膨潤させた。CH2Cl2/DMF(1:2)(4.5ml)中のPE‐Succ‐OH(120mg、150μmol)、PyBOP(78mg、150μmol)、HOBt(20mg、150mmol)およびDIEA(100μl、0.6mmol)の溶液を添加した。該混合物を20時間振盪した。樹脂を濾過し、DMF(5×6ml)、CH2Cl2(5×6ml)およびMeOH(5×6ml)で洗浄し、KOHペレット上で減圧下にて乾燥させた。切り出しおよび側鎖保護基の除去については、樹脂を、TFA/チオアニソール/EDT/H2O/TIS(75:10:10:4:1)(10ml)で2.5時間振盪しながら処理した。樹脂を濾過し、ペプチドをiPr2O(予め−20°に冷却)で沈澱させてiPr2O(3×25ml)で洗浄した。沈殿物を一晩空気乾燥させ、分取用C4カラム(Interchrom)を用いる逆相HPLCによって、28分間にH2O(+0.1%TFA)中で30〜100%MeCNのグラジエントを使用してリポペプチドを精製した。収量:37mg。分析用逆相HPLC(Interchrom C4カラム、25分間にH2O(+0.1%TFA)中で25〜100%MeCN):純度>96%、tR=22.10分。LC‐MS(Zorbax C8カラム、10分間にH2O(+0.1%HCOOH)中で30〜100%MeCN):tR=5.32分;ESI‐MS m/z=990.3[M+7H]7+;866.6[M+8H]8+;770.2[M+9H]9+;693.3[M+10H]10+。MALDI‐TOF:C315H557N74O90PS2について計算したm/z:6916.3;観測されたm/z:6916.8[M+H]+。
【0144】
実施例13:リポペプチド10
【0145】
【化21】
この実施例は実施例12と同じペプチド配列を使用するが、リン脂質に基づいた脂質頭部基の代わりにPam2‐システインに基づいた脂質頭部基(Cys((RS)‐2,3‐ジ(パルミトイルオキシ)‐プロピル))を含む。
【0146】
リポペプチド9について上述したように、標準的なFmoc法およびRinkアミドMBHA樹脂を使用して、アプライドバイオシステムズのABI 433Aペプチド合成機で直鎖ペプチドを合成した。ペプチド鎖のN末端への脂質部分のカップリングについては、樹脂(280mg)をCH2Cl2(6ml)中で30分間膨潤させた。CH2Cl2/DMF(1:2)(4.5ml)中のFmoc‐Cys((RS)‐2,3‐ジ(パルミトイルオキシ)‐プロピル)‐OH(134mg、150μmol)、PyBOP(78mg、150μmol)、HOBt(20mg、150μmol)およびDIEA(100μl、0.6mmol)の溶液を添加した。該混合物を室温で20時間振盪した。樹脂を濾過し、DMF(5×6ml)およびCH2Cl2(5×6ml)で洗浄した。Fmoc保護基を除去するために、樹脂をDMF中20%ピペリジン(4.5mlで2分を5回)で処理した。Fmoc保護基を完全に除去した後、樹脂をDMF(5×6ml)、CH2Cl2(5×6ml)およびMeOH(5×6ml)で洗浄し、KOHペレット上で減圧下にて乾燥させた。切り出しおよび側鎖保護基の除去については、樹脂を、TFA/チオアニソール/EDT/H2O/TIS(75:10:10:4:1)(10ml)で2.5時間振盪しながら処理した。リポペプチド9について上述したようにして、リポペプチドを沈澱させて精製した。収量:45mg。分析用逆相HPLC(Interchrom C4カラム、25分間にH2O(+0.1%TFA)中で25〜100%MeCN):純度>96%、tR=22.71分。LC‐MS(Zorbax C8カラム、10分間にH2O(+0.1%CHOOH)中で30〜100%MeCN):tR=4.87分;ESI‐MS m/z=851.1[M+8H]8+;756.9[M+9H]9+;681.3[M+10H]10+;618.1[M+11H]11+。MALDI‐TOF:C312H552N74O85S3について計算したm/z:6796.4;観測されたm/z:6798.2[M+H]+。
【0147】
実施例14:ガンマ‐マレイミドブチリル基を担持する抗原、GMB‐L21
【0148】
【化22】
ペプチド配列は、主としてマラリア原虫の熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)のスポロゾイト周囲(CS)タンパク質のNPNAリピート領域から得られるが、該タンパク質はマラリアワクチン候補としての可能性について広く研究されてきたものである[ヘリングトン、D.A.(Herrington, D. A.)ら、Nature (1987), 328, 257-259]。C末端には、安定性を改善するために追加のD‐アラニンアミド(「a‐NH2」と表示されている)が付加されている。ガンマ‐マレイミドブチリル(GMB)基は、リポペプチド9またはリポペプチド10のシステイン残基とコンジュゲート可能なように付加されている。
【0149】
直鎖ペプチドNPNANPNANPNANPNANPNAa‐NH2(配列番号30、追加のD‐アラニンアミドがC末端に付加されている)を、標準的なFmoc法およびRinkアミドMBHA樹脂(搭載量0.69mmol/g、362mg)、ならびに活性化のためのHBTU/HOBt/DIEAを使用して、アプライドバイオシステムズ社のABI 433Aペプチド合成機で合成した。使用したアミノ酸は、Fmoc‐Ala‐OH、Fmoc‐D‐Ala‐OH、Fmoc‐Asn(Mtt)‐OHおよびFmoc‐Pro‐OHであった。鎖の組み立てが完了して末端のFmoc保護基を除去した後、樹脂をDMF(5×6ml)、DCM(5×6ml)およびMeOH(5×6ml)で洗浄し、KOHペレット上で減圧下にて乾燥させた。ペプチドを切り出し、TFA/TIS/H2O(95:2.5:2.5)(10ml)で4時間処理することにより側鎖保護基を除去した。ペプチドをiPr2O(予め−20°に冷却)で沈澱させてiPr2O(3×25ml)で洗浄した。沈殿物を減圧下で乾燥させ、分取用C18カラム(Zorbax)を用いる逆相HPLCによって、28分間にH2O(+0.1%TFA)中で10〜30%MeCNのグラジエントを使用してペプチドを精製した。収量:162mg。分析用逆相HPLC(Interchrom C4カラム、21分間にH2O(+0.1%TFA)中で5〜30%MeCN):純度>95%、tR=8.77分。LC‐MS(Zorbax C8カラム、10分間にH2O(+0.1%CHOOH)中で5〜100%MeCN):tR=3.61分;ESI‐MS m/z=691.6[M+3H]3+。MALDI‐TOF:C83H127N31O32について計算したm/z:2071.1;観測されたm/z:2069.9[M+H]+。
【0150】
ペプチドにGMBリンカーをカップリングするために、THF(0.5ml)中の4‐マレイミドブチリル‐N‐ヒドロキシスクシンイミドエステル(N‐スクシンイミジル‐4‐マレイミドブチラート、14.0mg、49.2μmol、6等量)の溶液を、5mM NH4OAc、pH6.5(0.5ml)中のペプチド(17.0mg、8.2μmol)の撹拌中の溶液に少量ずつ添加した。該混合物を4°で20時間撹拌し、凍結乾燥し、分取用C18カラム(ウォーターズ(Waters))を用いる逆相HPLCによって、20分間にH2O(+0.1%TFA)中で10〜40%MeCNのグラジエントを使用して生成物GMB‐L21を精製した。収量:10.4mg。分析用逆相HPLC(Zorbax C18カラム、25分間にH2O(+0.1%TFA)中で5〜30%MeCN:純度>95%、tR=13.02分。LC‐MS(Zorbax C18カラム、10分間にH2O(+0.1%CHOOH)中で5〜100%MeCN):tR=3.15分;ESI‐MS m/z=746.5[M+3H]3+。
【0151】
実施例15:3‐マレイミド‐プロピオニルおよびポリエチレングリコールスペーサ基を担持する抗原、PEO8‐L21
【0152】
【化23】
CSタンパク質のNPNAリピート領域に基づいた実施例14と同じ抗原を、3‐マレイミド‐プロピオニル基およびポリエチレングリコール[O‐(2‐アミノエチル)‐O’‐(2‐カルボキシエチル)‐ヘプタエチレングリコール]をベースとしたスペーサ基に付着させる。マレイミド基により、リポペプチドビルディングブロック中のシステイン残基との結合が可能となる。
【0153】
上述のようにして実施例14と同じ直鎖ペプチドを合成した。マレイミドリンカーをカップリングするために、ペプチド(10.0mg、4.8μmol)を5mM NH4OAc、pH6.5(0.5ml)に溶解した溶液を、THF(0.5ml)に溶解したO‐[N‐(3‐マレイミドプロピオニル)‐2‐アミノエチル]‐O’‐[3‐(N‐スクシンイミジルオキシ)‐S‐オキソプロピル]‐ヘプタエチレングリコール(5.0mg、7.2μmol、1.5等量)に添加した。収量:7.2mg。分析用逆相HPLC(Interchrom C4カラム、21分間にH2O(+0.1%TFA)中で5〜30%MeCN):純度>98%、tR=14.27分。LC‐MS(Zorbax C18カラム、10分間にH2O(+0.1%CHOOH)中で5〜100%MeCN):tR=4.31分;ESI‐MS m/z=882.9[M+3H]3+。
【0154】
実施例16:コンジュゲートLBB9‐GMB‐L21
【0155】
【化24】
この実施例は、ペプチドまたは他のエピトープミメティックをどのようにリポペプチドビルディングブロック(LBB)9にカップリングすることができるかを例示する。ペプチド(エピトープミメティック)として分子GMB‐L21を使用し、これをリポペプチド9のCys残基にカップリングする。
【0156】
ペプチドGMB‐L21をリポペプチド9にカップリングするために、リポペプチド9(6.9mg、1.0μmol)のH2O/MeCN(1:1)(0.5ml)中の溶液を、H2O/MeCN(1:1)中のGMB‐L21の撹拌中の溶液(1ml、2.7mg、1.2μmol、1.2等量)に少量ずつ添加した。0.1NのNaOHを使用してpHをpH6.5に注意深く調節し、混合物を3時間撹拌した。カップリング反応が完了した後、0.1%TFAを含むH2O(2ml)で混合物を希釈し、セミ分取用C4カラム(Interchrom)を用いる逆相HPLCによって、17分間にH2O(+0.1%TFA)中で50〜100%MeCNのグラジエントを使用してコンジュゲートを精製した。収量:7.1mg。分析用逆相HPLC(Interchrom C4カラム(25分間にH2O(+0.1%TFA)中で25〜100%MeCN):純度>97%、tR=19.90分。LC‐MS(Zorbax C8カラム、10分間にH2O(+0.1%CHOOH)中で5〜100%MeCN)):tR=4.83分;ESI‐MS m/z=1310.2[M+7H]7+;1145.9[M+8H]8+;1019.0[M+9H]9+;917.3[M+10H]10+;833.8[M+11H]11+;764.2[M+12H]12+。MALDI‐TOF:C406H691N106O125PS2について計算されたm/z:9152.6;観測されたm/z:9152.8[M+H]+。
【0157】
このリポペプチドコンジュゲートの自己集合特性を動的光散乱(DLS)によって分析した結果、この場合もバッファー水溶液中でSVLPが形成されることが示された。粒子の粒度分布は単峰性かつ高度に単分散性であり、生理学的条件下で安定な、およそ20nmの直径を有する高度に秩序立った粒子を示唆している。該粒子は高温(例えば37°)でも安定であった。
【0158】
実施例17:コンジュゲートLBB9‐PEO8‐L21
【0159】
【化25】
この実施例は、ペプチドまたは他のエピトープミメティックをどのようにリポペプチドビルディングブロック(LBB)9にカップリングすることができるかをさらに例示する。ペプチド(エピトープミメティック)として分子PEO8‐L21を使用し、リポペプチド9のCys残基にカップリングする。
【0160】
カップリングおよび精製は、リポペプチド9(6.0mg、0.9μmol)およびPEO8‐L21(4.5mg、1.7μmol、2等量)を使用して、LBB9‐GMB‐L21について上述したようにして実施した。収量:7.2mg。分析用逆相HPLC(Interchrom C4カラム、25分間にH2O(+0.1%TFA)中で25〜100%MeCN):純度>95%、tR=19.82分。LC‐MS(Zorbax C8カラム、10分間にH2O(+0.1%CHOOH)中で5〜100%MeCN):tR=4.93分;ESI‐MS m/z=1366.0[M+7H]7+;1196.9[M+8H]8+;1064.0[M+9H]9+;957.8[M+10H]10+。MALDI‐TOF:C424H727N108O133PS2について計算されたm/z:9561.1;観測されたm/z:9561.8[M+H]+。
【0161】
このリポペプチドコンジュゲートの自己集合特性を動的光散乱(DLS)によって分析した結果、この場合もバッファー水溶液中でSVLPが形成されることが示された。粒子の粒度分布は単峰性かつ高度に単分散性であり、生理学的条件下で安定な、およそ24nmの直径を有する高度に秩序立った粒子を示唆している。該粒子は高温(例えば37°)でも安定であった。
【0162】
実施例18:コンジュゲートLBB10‐GMB‐L21
【0163】
【化26】
この実施例は、ペプチドまたは他のエピトープミメティックをどのようにリポペプチドビルディングブロック(LBB)10にカップリングすることができるかを例証する。ペプチド(エピトープミメティック)として分子GMB‐L21を使用し、リポペプチド10のCys残基にカップリングする。
【0164】
カップリングおよび精製は、リポペプチド10(6.8mg、1.0μmol)およびGMB‐L21(2.7mg、1.2μmol、1.2等量)を使用して、LBB9‐GMB‐L21について上述したようにして実施した。収量:7.4mg。分析用逆相HPLC(Interchrom C4カラム、25分間にH2O(+0.1%TFA)中で25〜100%MeCN):純度>97%、tR=19.64分。LC‐MS(Zorbax C8カラム、10分間にH2O(+0.1%CHOOH)中で5〜100%MeCN):tR=4.81分;ESI‐MS m/z=1130.9[M+8H]8+;1005.7[M+9H]9+;905.3[M+10H]10+;822.7[M+11H]11+;754.4[M+12H]12+。MALDI‐TOF:C403H686N106O120S3について計算されたm/z:9032.6;観測されたm/z:9032.2[M+H]+。
【0165】
このリポペプチドコンジュゲートの自己集合特性を動的光散乱(DLS)によって分析した結果、この場合もバッファー水溶液中でSVLPが形成されることが示された。粒子の粒度分布は単峰性かつ高度に単分散性であり、生理学的条件下で安定な、およそ20nmの直径を有する高度に秩序立った粒子を示唆している。該粒子は高温(例えば37°)でも安定であった。
【0166】
実施例19:LBB9‐GMB‐L21、LBB9‐PEO8‐L21およびLBB10‐GMB‐L21を用いた免疫化
この実施例は、上述のコンジュゲートが、動物に注射すると高度に免疫原性であり、強力な体液性免疫応答を誘発することを示す。実施例11に記載されているようにして免疫化を実施した。
【0167】
したがって先述のように、ニュージーランドホワイト種のウサギ(1群2羽)を、PBS(pH7.4)(400μl)中で調剤した150μgのリポペプチド(LBB9‐PEO8‐L21またはLBB10‐GMB‐L21のいずれか)を用いて皮下注射により免疫化した。免疫化は第0日、第28日および第56日に実施した。採血は第0日、第14日、第38日および第66日に実施した。血清をIgG反応についてELISAによって分析した。表3は、達成された終点力価をまとめたものである。これらの免疫化ではアジュバントは使用しなかった。
【0168】
さらに、免疫化した動物由来の血清は、熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト上のCSタンパク質に結合する高力価(>10,000)の抗体を含むことが免疫蛍光測定法によって示され、従ってこれらの構築物に対する免疫応答の大部分がNPNAリピートモチーフを含むペプチド抗原を対象としていることが示された。
【0169】
表3.コンジュゲートの免疫原性
各コンジュゲートを用いてそれぞれ2羽のウサギ(aおよびb)を1回(1°)、2回(2°)および3回(3°)免疫化した後に達成されたlog10(終点)力価を示す。免疫前血清試料は、対応する免疫原との有意な反応性を示さなかった。例えば、log10(終点)力価5.00は力価100,000に相当する。
【0170】
【表3】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルドコイルドメインを含むペプチド鎖と、該ペプチド鎖に共有結合で連結された、2個または3個の長鎖ヒドロカルビルを含む脂質部分と、該ペプチド鎖に任意選択で連結された抗原とで構成されるリポペプチドビルディングブロック。
【請求項2】
ペプチド鎖は21〜80個のアミノ酸残基を含む、請求項1に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項3】
ペプチド鎖は3〜8個のヘプタドモチーフで構成されるコイルドコイルドメインを含む、請求項1または2に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項4】
ペプチド鎖は、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体または七量体を形成するコイルドコイルドメインを含む、請求項1または2に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項5】
コイルドコイルドメインにおいて各ヘプタドモチーフ(abcdefg)の位置aおよびdは、大きさが小〜中位の疎水性側鎖、および芳香族もしくはヘテロ芳香族の側鎖のうち少なくともいずれか一方を備えたαアミノ酸を有し、すべての位置aおよびdのうち0、1、もしくは2箇所は極性で非荷電の残基を備えたアミノ酸、ならびにすべての位置aおよびdのうち0もしくは1箇所は極性のカチオン性残基もしくはそのアシル化誘導体を備えたアミノ酸、または極性のアニオン性残基を有するアミノ酸、またはグリシンを有する、請求項3に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項6】
大きさが小〜中位の疎水性側鎖はR1であり、R1は、低級アルキル、低級アルケニル、‐(CH2)a(CHR2)bOR3、‐(CH2)a(CHR2)bSR3、‐(CHR2)OR3、‐(CH2)aSR3、‐(CH2)aR4、または‐CH(CF3)2を意味し、式中、R2は低級アルキル;R3は低級アルキル;R4はシクロヘキシル、シクロペンチルまたはシクロブチル;aは1〜4;bは0または1であり;
芳香族もしくはヘテロ芳香族の側鎖はR5であり、R5は、‐(CH2)aR6、‐(CH2)cO(CH2)dR6、‐(CH2)cS(CH2)dR6、または‐(CH2)cNR7(CH2)dR6を意味し、式中、R7はH、低級アルキル、アリールまたはアリール低級アルキル;R6は、任意選択で置換された式‐C6R8R9R10R11R12のフェニルまたは式H1〜H14
【化1】
のうち1つのアリール基もしくはヘテロアリール基であって、式中、R8、R9、R10、R11およびR12はそれぞれ独立にH、F、Br、Cl、I、NO2、CF3、NR7R14、N7COR14、低級アルキル、アリールまたはOR7;R13は、H、Cl、Br、I、NO2、低級アルキル、またはアリール;R14は、H、低級アルキル、またはアリール;aは1〜4;cは1または2;dは0〜4であり;
極性で非荷電の残基はR15であり、R15は、‐(CH2)d(CHR16)bOR17、‐(CH2)d(CHR16)bSR17、‐(CH2)aCONR17R18、または‐(CH2)aCOOR19を意味し、式中、R16は、低級アルキル、アリール、アリール低級アルキル、‐(CH2)aOR17、‐(CH2)aNR17R18、‐(CH2)aNR17R18、または‐(CH2)aCOOR19;R17およびR18はそれぞれ独立にH、低級アルキル、アリール、もしくはアリール低級アルキルであるか、またはR17およびR18はともに‐(CH2)e‐、‐(CH2)2‐O‐(CH2)2‐、もしくは‐(CH2)2‐NR17‐(CH2)2‐をなし;R19は、低級アルキル、アリール、またはアリール低級アルキルであり;a、bおよびdは上記に定義されるような意味を有し、eは2〜6であり;
極性のカチオン性残基もしくはそのアシル化誘導体はR20であり、R20は、‐(CH2)aNR17R18、‐(CH2)aN=C(NR21R22)NR17R18、‐(CH2)aNR21C(=NR22)NR17R18、‐(CH2)aNR21COR19、または‐(CH2)aNR21CONR17R18を意味し、式中、R21はHまたは低級アルキル、かつR22はHまたは低級アルキルであり;R17、R18、R19は上記に定義されるような意味を有し、aは1〜4であり;
極性のアニオン性残基はR23であり、R23は‐(CH2)aCOOHを意味し、式中のaは1〜4である、請求項5に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項7】
大きさが小〜中位の疎水性側鎖を備えたαアミノ酸は、アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニンおよびバリンであり、
芳香族もしくはヘテロ芳香族の側鎖を備えたαアミノ酸は、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンおよびヒスチジンであり、
極性で非荷電の残基を備えたαアミノ酸は、アスパラギン、システイン、グルタミン、セリンおよびトレオニンであり、
極性のカチオン性残基を備えたαアミノ酸は、アルギニン、リジンおよびヒスチジンであり、かつ、
極性のアニオン性残基を備えたαアミノ酸は、アスパラギン酸およびグルタミン酸である、請求項5に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項8】
コイルドコイルドメインにおいて各ヘプタドモチーフ(abcdefg)の位置b、c、e、fおよびgは、グリシンを有していないかまたは1個のグリシンを有しており、かつプロリンを有していない、請求項5〜7のいずれか1項に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項9】
ペプチド鎖は配列番号1〜29のペプチドを含む、請求項1または2に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項10】
ペプチド鎖は配列番号1〜27のペプチドを含む、請求項1または2に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項11】
ペプチド鎖は配列番号1〜4のペプチドを含む、請求項9に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項12】
ペプチド鎖は配列番号28のペプチドを含む、請求項9に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項13】
ペプチド鎖は配列番号29のペプチドを含む、請求項9に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項14】
脂質部分はZ1〜Z8型、すなわち
【化2】
(上記式中、R1およびR2は長鎖ヒドロカルビルまたは長鎖ヒドロカルビル‐C=Oであり、YはHまたはCOOHである)、
【化3】
(上記式中、R1、R2およびR3は長鎖ヒドロカルビルであるか、またはR1およびR2が長鎖ヒドロカルビル‐C=OでR3がHまたはアセチルである)、
【化4】
(上記式中、R1およびR2は長鎖ヒドロカルビル‐C=Oであり、nは1、2、3または4である)、
【化5】
(上記式中、R1およびR2は長鎖ヒドロカルビルであり、XはOまたはNHであり、nは1、2、3または4である)、および
【化6】
(上記式中、R1およびR2は長鎖ヒドロカルビルである)
のうちの1つであり、上記式中の長鎖ヒドロカルビルは、8〜25個の炭素原子と、任意選択で鎖の中の1個、2個または3個の二重結合とで構成される、直鎖または分岐鎖のアルキルまたはアルケニルであることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項15】
脂質部分は式Z3のジパルミトイル‐S‐グルセリルシステイニルであって、式中のR1およびR2はパルミトイルでありR3はHまたはアセチルである、請求項14に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項16】
ペプチド鎖PCは、N末端もしくはC末端、またはその近傍で脂質部分LMに共有結合で連結される、請求項1〜15のいずれか1項に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項17】
ペプチド鎖PCは、N末端もしくはC末端、またはその近傍でリンカーを介して脂質部分LMに共有結合で連結される、請求項1〜15のいずれか1項に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項18】
ペプチド鎖PCは、N末端またはその近傍で式(2)または(3)
【化7】
のようにリンカーを介して脂質部分LMに共有結合で連結され、上記式中、LはリンカーL1〜L10
【化8】
(上記式中、XはOまたはNH、mは1〜20、nは1〜20)
である、請求項17に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項19】
抗原は、ペプチド鎖の他方の末端に、または該他方の末端の近傍に共有結合で付着される、請求項1〜18のいずれか1項に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項20】
抗原は、ペプチド、タンパク質、エピトープミメティック、炭水化物またはハプテンから選択される、請求項19に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項に記載のリポペプチドビルディングブロックを2、3、4、5、6または7個含むリポペプチドヘリックスバンドル。
【請求項22】
請求項21に記載のリポペプチドヘリックスバンドルで構成される合成ウイルス様粒子。
【請求項23】
請求項21および請求項22に記載のリポペプチドヘリックスバンドルおよび合成ウイルス様粒子の生産方法であって、請求項1〜20のいずれか1項に記載のリポペプチドビルディングブロックを水溶液中で平衡化することを特徴とする方法。
【請求項24】
抗原を担持する請求項21および請求項22に記載のリポペプチドヘリックスバンドルおよび合成ウイルス様粒子のうち少なくともいずれか一方を含む医薬製剤。
【請求項25】
抗原は、マラリア原虫の熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)のスポロゾイト周囲(CS)タンパク質に由来する、請求項24に記載の医薬製剤。
【請求項26】
抗原を担持する、請求項22に記載のリポペプチドヘリックスバンドルまたは合成ウイルス様粒子のうち少なくともいずれか一方の、ワクチンとしての使用方法。
【請求項27】
免疫遺伝学的に有効な量の、抗原を担持する請求項22に記載のリポペプチドヘリックスバンドルおよび合成ウイルス様粒子のうち少なくともいずれか一方を、投与の必要のある患者に投与する、ワクチン接種方法。
【請求項1】
コイルドコイルドメインを含むペプチド鎖と、該ペプチド鎖に共有結合で連結された、2個または3個の長鎖ヒドロカルビルを含む脂質部分と、該ペプチド鎖に任意選択で連結された抗原とで構成されるリポペプチドビルディングブロック。
【請求項2】
ペプチド鎖は21〜80個のアミノ酸残基を含む、請求項1に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項3】
ペプチド鎖は3〜8個のヘプタドモチーフで構成されるコイルドコイルドメインを含む、請求項1または2に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項4】
ペプチド鎖は、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体または七量体を形成するコイルドコイルドメインを含む、請求項1または2に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項5】
コイルドコイルドメインにおいて各ヘプタドモチーフ(abcdefg)の位置aおよびdは、大きさが小〜中位の疎水性側鎖、および芳香族もしくはヘテロ芳香族の側鎖のうち少なくともいずれか一方を備えたαアミノ酸を有し、すべての位置aおよびdのうち0、1、もしくは2箇所は極性で非荷電の残基を備えたアミノ酸、ならびにすべての位置aおよびdのうち0もしくは1箇所は極性のカチオン性残基もしくはそのアシル化誘導体を備えたアミノ酸、または極性のアニオン性残基を有するアミノ酸、またはグリシンを有する、請求項3に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項6】
大きさが小〜中位の疎水性側鎖はR1であり、R1は、低級アルキル、低級アルケニル、‐(CH2)a(CHR2)bOR3、‐(CH2)a(CHR2)bSR3、‐(CHR2)OR3、‐(CH2)aSR3、‐(CH2)aR4、または‐CH(CF3)2を意味し、式中、R2は低級アルキル;R3は低級アルキル;R4はシクロヘキシル、シクロペンチルまたはシクロブチル;aは1〜4;bは0または1であり;
芳香族もしくはヘテロ芳香族の側鎖はR5であり、R5は、‐(CH2)aR6、‐(CH2)cO(CH2)dR6、‐(CH2)cS(CH2)dR6、または‐(CH2)cNR7(CH2)dR6を意味し、式中、R7はH、低級アルキル、アリールまたはアリール低級アルキル;R6は、任意選択で置換された式‐C6R8R9R10R11R12のフェニルまたは式H1〜H14
【化1】
のうち1つのアリール基もしくはヘテロアリール基であって、式中、R8、R9、R10、R11およびR12はそれぞれ独立にH、F、Br、Cl、I、NO2、CF3、NR7R14、N7COR14、低級アルキル、アリールまたはOR7;R13は、H、Cl、Br、I、NO2、低級アルキル、またはアリール;R14は、H、低級アルキル、またはアリール;aは1〜4;cは1または2;dは0〜4であり;
極性で非荷電の残基はR15であり、R15は、‐(CH2)d(CHR16)bOR17、‐(CH2)d(CHR16)bSR17、‐(CH2)aCONR17R18、または‐(CH2)aCOOR19を意味し、式中、R16は、低級アルキル、アリール、アリール低級アルキル、‐(CH2)aOR17、‐(CH2)aNR17R18、‐(CH2)aNR17R18、または‐(CH2)aCOOR19;R17およびR18はそれぞれ独立にH、低級アルキル、アリール、もしくはアリール低級アルキルであるか、またはR17およびR18はともに‐(CH2)e‐、‐(CH2)2‐O‐(CH2)2‐、もしくは‐(CH2)2‐NR17‐(CH2)2‐をなし;R19は、低級アルキル、アリール、またはアリール低級アルキルであり;a、bおよびdは上記に定義されるような意味を有し、eは2〜6であり;
極性のカチオン性残基もしくはそのアシル化誘導体はR20であり、R20は、‐(CH2)aNR17R18、‐(CH2)aN=C(NR21R22)NR17R18、‐(CH2)aNR21C(=NR22)NR17R18、‐(CH2)aNR21COR19、または‐(CH2)aNR21CONR17R18を意味し、式中、R21はHまたは低級アルキル、かつR22はHまたは低級アルキルであり;R17、R18、R19は上記に定義されるような意味を有し、aは1〜4であり;
極性のアニオン性残基はR23であり、R23は‐(CH2)aCOOHを意味し、式中のaは1〜4である、請求項5に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項7】
大きさが小〜中位の疎水性側鎖を備えたαアミノ酸は、アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニンおよびバリンであり、
芳香族もしくはヘテロ芳香族の側鎖を備えたαアミノ酸は、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンおよびヒスチジンであり、
極性で非荷電の残基を備えたαアミノ酸は、アスパラギン、システイン、グルタミン、セリンおよびトレオニンであり、
極性のカチオン性残基を備えたαアミノ酸は、アルギニン、リジンおよびヒスチジンであり、かつ、
極性のアニオン性残基を備えたαアミノ酸は、アスパラギン酸およびグルタミン酸である、請求項5に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項8】
コイルドコイルドメインにおいて各ヘプタドモチーフ(abcdefg)の位置b、c、e、fおよびgは、グリシンを有していないかまたは1個のグリシンを有しており、かつプロリンを有していない、請求項5〜7のいずれか1項に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項9】
ペプチド鎖は配列番号1〜29のペプチドを含む、請求項1または2に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項10】
ペプチド鎖は配列番号1〜27のペプチドを含む、請求項1または2に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項11】
ペプチド鎖は配列番号1〜4のペプチドを含む、請求項9に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項12】
ペプチド鎖は配列番号28のペプチドを含む、請求項9に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項13】
ペプチド鎖は配列番号29のペプチドを含む、請求項9に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項14】
脂質部分はZ1〜Z8型、すなわち
【化2】
(上記式中、R1およびR2は長鎖ヒドロカルビルまたは長鎖ヒドロカルビル‐C=Oであり、YはHまたはCOOHである)、
【化3】
(上記式中、R1、R2およびR3は長鎖ヒドロカルビルであるか、またはR1およびR2が長鎖ヒドロカルビル‐C=OでR3がHまたはアセチルである)、
【化4】
(上記式中、R1およびR2は長鎖ヒドロカルビル‐C=Oであり、nは1、2、3または4である)、
【化5】
(上記式中、R1およびR2は長鎖ヒドロカルビルであり、XはOまたはNHであり、nは1、2、3または4である)、および
【化6】
(上記式中、R1およびR2は長鎖ヒドロカルビルである)
のうちの1つであり、上記式中の長鎖ヒドロカルビルは、8〜25個の炭素原子と、任意選択で鎖の中の1個、2個または3個の二重結合とで構成される、直鎖または分岐鎖のアルキルまたはアルケニルであることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項15】
脂質部分は式Z3のジパルミトイル‐S‐グルセリルシステイニルであって、式中のR1およびR2はパルミトイルでありR3はHまたはアセチルである、請求項14に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項16】
ペプチド鎖PCは、N末端もしくはC末端、またはその近傍で脂質部分LMに共有結合で連結される、請求項1〜15のいずれか1項に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項17】
ペプチド鎖PCは、N末端もしくはC末端、またはその近傍でリンカーを介して脂質部分LMに共有結合で連結される、請求項1〜15のいずれか1項に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項18】
ペプチド鎖PCは、N末端またはその近傍で式(2)または(3)
【化7】
のようにリンカーを介して脂質部分LMに共有結合で連結され、上記式中、LはリンカーL1〜L10
【化8】
(上記式中、XはOまたはNH、mは1〜20、nは1〜20)
である、請求項17に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項19】
抗原は、ペプチド鎖の他方の末端に、または該他方の末端の近傍に共有結合で付着される、請求項1〜18のいずれか1項に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項20】
抗原は、ペプチド、タンパク質、エピトープミメティック、炭水化物またはハプテンから選択される、請求項19に記載のリポペプチドビルディングブロック。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項に記載のリポペプチドビルディングブロックを2、3、4、5、6または7個含むリポペプチドヘリックスバンドル。
【請求項22】
請求項21に記載のリポペプチドヘリックスバンドルで構成される合成ウイルス様粒子。
【請求項23】
請求項21および請求項22に記載のリポペプチドヘリックスバンドルおよび合成ウイルス様粒子の生産方法であって、請求項1〜20のいずれか1項に記載のリポペプチドビルディングブロックを水溶液中で平衡化することを特徴とする方法。
【請求項24】
抗原を担持する請求項21および請求項22に記載のリポペプチドヘリックスバンドルおよび合成ウイルス様粒子のうち少なくともいずれか一方を含む医薬製剤。
【請求項25】
抗原は、マラリア原虫の熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)のスポロゾイト周囲(CS)タンパク質に由来する、請求項24に記載の医薬製剤。
【請求項26】
抗原を担持する、請求項22に記載のリポペプチドヘリックスバンドルまたは合成ウイルス様粒子のうち少なくともいずれか一方の、ワクチンとしての使用方法。
【請求項27】
免疫遺伝学的に有効な量の、抗原を担持する請求項22に記載のリポペプチドヘリックスバンドルおよび合成ウイルス様粒子のうち少なくともいずれか一方を、投与の必要のある患者に投与する、ワクチン接種方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2010−512308(P2010−512308A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539663(P2009−539663)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際出願番号】PCT/EP2007/010601
【国際公開番号】WO2008/068017
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(509161082)ウニヴェルジテート チューリッヒ プロレクトラート フォルシュング (3)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITAET ZUERICH PROREKTORAT FORSCHUNG
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際出願番号】PCT/EP2007/010601
【国際公開番号】WO2008/068017
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(509161082)ウニヴェルジテート チューリッヒ プロレクトラート フォルシュング (3)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITAET ZUERICH PROREKTORAT FORSCHUNG
【Fターム(参考)】
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