説明

コイル保管装置

【課題】
保管スペース効率が良く、小さな設備投資額で大きな駆動源や複雑な制御を不要としたコイル保管装置を提供する。
【解決手段】
天板1bの4隅に設けた支持脚1cの下端にスプロケット4を有した車輪1dが取り付けられている台車1aと、フロア上に平行して敷設した前記台車1aを走行案内するための2本のレール3と、前記レール3に沿って周回可能に設置され前記車輪1dのスプロケット4と噛み合っているチェーン5と、コイル吊り用のクレーンが連結可能であり前記クレーンの昇降動を回転動に変換する手段を介して前記チェーン5を周回移動し台車1aを進退走行移動させるための駆動機構とを備え、前記2本のレール3間のフロア上と前記台車1aの天板1b上とにコイルを保管するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板、新聞雑誌印刷用紙、合成樹脂フィルム、織布等のコイル保管装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、鋼板、アルミ等のコイルWの保管は図8で示すように、フロアF上に置き台20を介して並べて保管するコイル床置き方式や図9で示すように、多段ラック21にコイルWを保管するコイルラックシステムが採用されている。
【0003】
コイル床置き方式の場合は、品質上で重ね置きが不可能でありフロアFにコイルWを1個づつ置くため、スペース効率が悪いという問題がある。また、コイルラックシステムの場合は多数のコイルWを立体的に保管できコイル床置き方式の問題点を解決している利点があるが、コイルWの収納や取り出しには搬送台車23やリフタ22が必要であり、設備投資が非常に高く、建物の高さを必要とし、建物、基礎費も高価であるという問題があった。
【特許文献1】特開平09−030627号公報
【特許文献2】特開平10−146232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、保管スペース効率が良く、小さな設備投資額で大きな駆動源や複雑な制御を不要としたコイル保管装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための本発明は、請求項1に記載の通り、天板の少なくとも4隅に設けた支持脚の下端にスプロケットを有した車輪が取り付けられている台車と、フロア上に平行して敷設した前記台車を走行案内するための2本のレールと、前記レールに沿って周回可能に設置され前記車輪のスプロケットと噛み合っているチェーンと、コイル吊り用のクレーンが連結可能であり前記クレーンの昇降動を回転動に変換する手段を介して前記チェーンを周回移動し台車を進退走行移動させるための駆動機構とを備え、前記2本のレール間のフロア上と前記台車の天板上とにコイルを保管するようにしたことを特徴とするものである。
【0006】
請求項2に記載の通り、天板の少なくとも4隅に設けた支持脚の下端にスプロケットを有した車輪が取り付けられている下段台車と、フロア上に平行して敷設した前記下段台車を走行案内するための2本のレールと、天板の少なくとも4隅に設けた支持脚の下端にスプロケットを有した車輪が取り付けられ前記下段台車の天板上に下段台車と同方向にレールを介して走行可能に案内された1段若しくは複数段に順次積み重ね配置した上段台車と、前記フロア上のレールと前記下段台車の天板上のレールとのそれぞれに沿って周回可能に設置され前記下段台車と上段台車のそれぞれの車輪のスプロケットと噛み合っているチェーンと、コイル吊り用のクレーンが連結可能であり前記クレーンの昇降動を回転動に変換する手段を介して前記それぞれのチェーンを周回移動し下段台車及び上段台車を進退走行移動させるための駆動機構とを備え、前記2本のレール間のフロア上と前記下段台車及び上段台車の天板上とにコイルを保管するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、台車が走行するフロア上と前記台車上とに多数のコイルを保管することができ、台車を走行移動させるにはコイルを積み卸しするクレーンの昇降動を利用した駆動機構により電動モータ等の専用駆動源や特別な制御機構を不要とし、コスト低減及び操作・保全性の向上が図れる効果を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1において、1aは下段台車である。この下段台車1aは天板1bの少なくとも4隅に設けた支持脚1cの下端に図3で示すようにスプロケット4を有した車輪1dが取り付けられている。この下段台車1aはフロア上に並列して敷設した2本のレール3により走行案内される。
【0009】
前記下段台車1a上には上段台車2aが下段台車1aと同方向に図略のレールを介して走行可能に案内されている。この上段台車2aも下段台車1aと同様に天板2bの少なくとも4隅に設けた支持脚2cの下端にスプロケットを有した車輪2cが取り付けられている。
【0010】
上記下段台車1aと上段台車2aを進退走行移動させる駆動機構について説明する。図2で示すように、フロア上のレール3と前記下段台車の天板1b上の図略のレールとのそれぞれに沿ってチェーン3,6が周回可能に設置され、このチェーン3,6に前記下段台車1aと上段台車2aのそれぞれの車輪1d、2dのスプロケット4が噛み合っている。
【0011】
前記それぞれのチェーン3,6はコイルWを積み卸しするクレーン19を利用し、このクレーン19の昇降動を回転動に変換する手段を介して周回作動するようになっている。その機構について説明する。下段台車1a側においては図2で示すように、レール3の端末部に立設したフレーム7に設けた横軸線方向の回転軸8上のピニオン9と、このピニオン9と噛み合うラック部材10と、前記回転軸8の端部と前記チェーン3の端部に噛み合っているスプロケット18(図5、図6参照)が設けられている回転軸12とに掛け渡されているチェーン11とから構成されている。
【0012】
上段台車2a側においては図2で示すように、下段台車1a後端部に設けた横軸線方向の回転軸13上のピニオン14と、このピニオン14と噛み合うラック部材15と、前記回転軸13の端部と前記チェーン6の端部に設けた図略のスプロケットとから構成されている。
【0013】
前記何れのラック部材10、15の上部にはクレーン19に設けられているコイル吊り具19aと連結するフック10a、15aを備えている。このラック部材10、15は、主としてクレーン19の上昇力による上昇移動によってチェーン3,6を正転及び逆転して下段台車1a、上段台車2aを前進、後退移動するよう回転軸8上のピニオン9及び回転軸13上のピニオン14を正転及び逆転に切り換える構造となっている。このラック部材10,15は下段台車1aの後方に配置されている。
【0014】
このラック部材10、15の切り換え構造について図4によりラック部材10を代表して説明する。ラック部材10は縦長四角形の枠である。この縦長四角形の枠の対面する長手方向の内側面に前進方向移動用のラック10bと後退方向移動用のラック10cとが設けられており、対向する前進方向移動用のラック10bと後退方向移動用のラック10cとの間に前記回転軸8上のピニオン9が前進方向移動用のラック10bと後退方向移動用のラック10cの何れにも噛み合わない中立位置に挿入位置している。
【0015】
前記ラック部材10は前後方向(左右方向)に変位可能であり、図4において、左側に変位すると前進方向移動用のラック10bがピニオン9と噛み合い、クレーン19の上昇によるラック部材10の引き上げによりピニオン9は左回りに正転し、また、右側に変位すると後退方向移動用のラック10cがピニオン9と噛み合い、クレーン19の上昇によるラック部材10の引き上げによりピニオン9は右りに逆転するようになっている。
【0016】
前記ラック部材10の左側又は右側への変位作動は、ラック部材10の長手方向の側方にラック部材10の上下方向の移動を案内し、かつラック部材10を押動するプレート16a、17aが配置されており、これらのプレート16a、17aをラック部材10の左側面又は右側面に対し前進後退するエアシリンダ16、17がプレート16a、17aに結合されている。
【0017】
このような構造により図5で示すように、ラック部材10を左側に変位作動したときには、前進方向移動用のラック10bがピニオン9と噛み合い、クレーン19の上昇によるラック部材10の引き上げによりピニオン9は左回りに正転し、チェーン11と回転軸12をを介してスプロケット18を回転してレール3に沿っているチェーン5を左回りに周回させ、これに噛み合う下段台車1aの車輪1dのスプロケット4により車輪1dに左回転力を付与して下段台車1aを前進走行移動する。
【0018】
前記前進移動した下段台車1aを後退走行移動させるには図6で示すように、ラック部材10を右側に変位作動し、後退方向移動用のラック10cをピニオン9に噛み合せ、クレーン19の上昇によるラック部材10の引き上げによりピニオン9を右回りに逆転し、チェーン11と回転軸12をを介してスプロケット18を回転してレール3に沿っているチェーン5を右回りに周回させ、これに噛み合う下段台車1aの車輪1dのスプロケット4により車輪1dに右回転力を付与して下段台車1aを後退走行移動する。
【0019】
前記上段台車2a側のラック部材15についても前記下段台車1a側のラック部材10と同様な構造であり、ラック部材15の左右方向への変位とクレーン19の上昇により上段台車2aを下段台車1a上で前進後退走行移動する。
【0020】
上記の構造において、コイルWは図1及び図7で示すように、クレーン19によってレール3間のフロア上と下段台車1aの天板1b上及び上段台車2aの天板2b上に載置して保管される。尚、コイルWは置き台20に載置して保管される。
【0021】
そして、前記保管されているコイルWを加工位置にクレーン19によって吊り上げて搬出するときにおいて、レール3間のフロア上で下段台車1aの下部に保管されているコイルWについては図7の仮想線で示すように下段台車1aを前進走行移動しクレーン19による吊り上げ搬出を可能とし、また、下段台車1aの天板1b上で上段台車2aの下部に保管れているコイルWについては図7の仮想線で示すように上段台車2aを前進走行移動しクレーン19による吊り上げ搬出を可能とする。
【0022】
上記の実施形態は下段台車1aと上段台車2aとによる2段構成で説明したが、下段台車1aのみの1段構成や下段台車1aの上に上段台車2aを複数段に積み重ねて構成でもよい。
【0023】
また、本発明で保管するコイルWは、鋼板、アルミ、新聞雑誌印刷用紙、合成樹脂フィルム、織布その他の素材を太く巻いた各種のコイルが適用される。
【0024】
このように本発明は、図8のコイル床置き方式に比較して床スペースを広く使用することなく多数のコイルWを保管することができ保管スペース効率を向上する。また、本発明では、コイルWを吊り卸しするクレーン19を利用して下段台車1aや上段台車2aを前進後退移動させるようにしているため、保管場所に対するコイルWの搬入出に専用のコイル搬入出装置を不要とし、図9のラックシステムに比較して建物の高さは低くてすみ、設備投資額も大幅に低減し、操作、保全性の向上が図れる利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例を示す要部の斜視図
【図2】図1のA部を詳細に示した本発明の要部の斜視図
【図3】車輪部分の正面図
【図4】ラック部材部の正面図
【図5】台車の前進状況の説明図
【図6】台車の後退状況の説明図
【図7】本発明装置によるコイル保管状態の説明図
【図8】従来の床置き方式におけるコイル保管状態の説明図
【図9】従来のラックシステムにおけるるコイル保管状態の説明図
【符号の説明】
【0026】
1a 下段台車
1b 天板
1c 支持脚
1d 車輪
2a 上段台車
2b 天板
2c 支持脚
2d 車輪
3 レール
4 スプロケット
5 チェーン
6 チェーン
7 フレーム
8 回転軸
9 ピニオン
10 ラック部材
10a フック
10b ラック
10c ラック
11 チェーン
12 回転軸
13 回転軸
14 ピニオン
15 ラック部材
15a フック
16 エアシリンダ
16a プレート
17 エアシリンダ
17a プレート
18 スプロケット
19 クレーン
19a コイル吊り具
20 置き台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板の少なくとも4隅に設けた支持脚の下端にスプロケットを有した車輪が取り付けられている台車と、フロア上に平行して敷設した前記台車を走行案内するための2本のレールと、前記レールに沿って周回可能に設置され前記車輪のスプロケットと噛み合っているチェーンと、コイル吊り用のクレーンが連結可能であり前記クレーンの昇降動を回転動に変換する手段を介して前記チェーンを周回移動し台車を進退走行移動させるための駆動機構とを備え、前記2本のレール間のフロア上と前記台車の天板上とにコイルを保管するようにしたことを特徴とするコイル保管装置。
【請求項2】
天板の少なくとも4隅に設けた支持脚の下端にスプロケットを有した車輪が取り付けられている下段台車と、フロア上に平行して敷設した前記下段台車を走行案内するための2本のレールと、天板の少なくとも4隅に設けた支持脚の下端にスプロケットを有した車輪が取り付けられ前記下段台車の天板上に下段台車と同方向にレールを介して走行可能に案内された1段若しくは複数段に順次積み重ね配置した上段台車と、前記フロア上のレールと前記下段台車の天板上のレールとのそれぞれに沿って周回可能に設置され前記下段台車と上段台車のそれぞれの車輪のスプロケットと噛み合っているチェーンと、コイル吊り用のクレーンが連結可能であり前記クレーンの昇降動を回転動に変換する手段を介して前記それぞれのチェーンを周回移動し下段台車及び上段台車を進退走行移動させるための駆動機構とを備え、前記2本のレール間のフロア上と前記下段台車及び上段台車の天板上とにコイルを保管するようにしたことを特徴とするコイル保管装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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