説明

コイル巻線方法およびコイル巻線装置

【課題】コイル部から延びるリード部の位置および形状を任意に設定して整形できるコイル巻線方法およびコイル巻線装置を提供する。
【解決手段】巻芯フランジ13から出没可能に突出するフォーミングピン41、42を用い、フォーミングピン41、42を巻芯フランジ13に引き込んだ状態で巻芯3に線材2を巻回してコイル部101を形成する巻回工程と、フォーミングピン41、42を巻芯フランジ13から突出させた状態でコイル部101から延びる線材2をフォーミングピン41、42に掛けて折り曲げてリード部102、103を整形する整形工程とを行う構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部から延びるリード部を整形するコイル巻線方法およびコイル巻線装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常のコイルは、巻き始めとなるリード部が渦巻き状のコイル部の内周から延び、巻き終わりとなるリード部が渦巻き状のコイル部の外周から延びる。
【0003】
これに対して、外外巻コイルは、巻き始めとなるリード部と巻き終わりとなるリード部とがともに渦巻き状のコイル部の外周から延びる。
【0004】
従来、この外外巻コイルを形成するコイル巻線装置として、特許文献1に開示されたものがある。
【特許文献1】特開2001−267171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来のコイル巻線装置にあっては、コイル部から延びるリード部がコイル部の巻回方向(接線方向)に延びていたため、コイルを実装する際、リード部を基板に対応する形状に整形する作業を行う必要があり、この整形作業に手間がかかるという問題点があった。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、コイル部から延びるリード部の位置および形状を任意に設定して整形できるコイル巻線方法およびコイル巻線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、線材を巻芯に巻回してコイル部を形成するコイル巻線方法であって、コイル部の側部に対峙する巻芯フランジから出没可能に突出するフォーミングピンを用い、このフォーミングピンを巻芯フランジに引き込んだ状態で巻芯に線材を巻回してコイル部を形成する巻回工程と、フォーミングピンを巻芯フランジから突出させた状態でコイル部から延びる線材をフォーミングピンに掛けて折り曲げてリード部を整形する整形工程とを行うことを特徴とするものとした。
【0008】
また、本発明は、線材を巻回したコイル部と、このコイル部の外周から延びる線材からなる第一、第二リード部とを有する外外巻コイルを形成するコイル巻線装置であって、巻回中心軸を中心として巻芯を回転するスピンドルと、この巻芯に巻回される線材を供給する非公転線材供給機構と、巻回中心軸を中心として公転するフライヤと、巻芯に巻回される線材をフライヤを介して供給する公転線材供給機構と、巻芯に巻回されるコイル部の側部に対峙するスピンドル側巻芯フランジと、このスピンドル側巻芯フランジから出没可能に突出する第一、第二フォーミングピンと、この第一、第二フォーミングピンを往復動させるフォーミングピン移動機構とを備え、第一、第二フォーミングピンを巻芯フランジから引き込んだ状態で巻芯に線材を巻回してコイル部を形成する巻回工程と、第一、第二フォーミングピンをスピンドル側巻芯フランジから突出させた状態でスピンドルおよびフライヤを巻回工程における回転方向と逆方向に回転または公転させてコイル部から非公転線材供給機構へと延びる線材を第一フォーミングピンに掛けて折り曲げて第一リード部を整形するとともに、コイル部から公転線材供給機構へと延びる線材を第二フォーミングピンに掛けて折り曲げて第二リード部を整形する整形工程とを行う構成としたことを特徴とするものとした。
【発明の効果】
【0009】
本発明のコイル巻線方法によると、リード部をフォーミングピンを介してコイル部から曲折して延びる形状とすることが可能となり、リード部の位置および形状に対する設定自由度が高められる。これにより、コイルを実装する際、リード部を基板に接続する作業が効率よく行われる。
【0010】
フォーミングピンを往復動させて巻芯フランジから出没させる構成のため、フォーミングピンの移動が速やかに行われ、コイルを形成するタクトタイムを短縮することができ、生産性を高められる。
【0011】
また、本発明のコイル巻線装置によると、第一、第二リード部をそれぞれ第一、第二フォーミングピンを介してコイル部から曲折して延びる形状とすることが可能となり、第一、第二リード部の位置および形状に対する設定自由度が高められる。これにより、外外巻コイルを実装する際、第一、第二リード部を基板に接続する作業が効率よく行われる。
【0012】
スピンドルおよびフライヤを巻回工程における回転方向と逆方向に回転または公転させて第一リード部と第二リード部とを同時に整形するため、外外巻コイルを形成するタクトタイムを短縮することができ、生産性を高められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
図1の(a)は外外巻コイル(コイル)100の側面図であり、(b)は外外巻コイル100の正面図である。外外巻コイル100は、線材2を渦巻き状に巻回したコイル部101を有し、このコイル部101から延びる線材2からなるリード部として第一リード部102と第二リード部103とを有する。
【0015】
コイル部101は、1層目の巻き部101aと2層目の巻き部101bとを有する。第一リード部102と第二リード部103とは、それぞれコイル部101の2層目の巻き部101bから曲折し、巻回中心軸Oから半径方向に180°の角度差を持って延びるように整形される。
【0016】
図2は外外巻コイル100を形成するコイル巻線装置(外外コイル巻線装置)1の概略構成を示す斜視図であり、図3は同じくコイル巻線装置1の断面図である。
【0017】
ここで、互いに直交するX、Y、Zの3軸を設定し、X軸が略水平前後方向、Y軸が略水平横方向、Z軸が略垂直方向に延びるものとし、コイル巻線装置1の構成を説明する。
【0018】
コイル巻線装置1は、巻芯3を回転させて線材2を巻回する巻芯スピンドル機構11と、巻芯3に対して線材2をフライヤ55等を介して公転させて巻回するフライヤ回転機構51とを備える。
【0019】
巻芯スピンドル機構11は、巻芯3を支持して回転するスピンドル12と、スピンドル12を回転駆動するスピンドルモータ16とを備える。
【0020】
スピンドル12は、円盤状のスピンドル側巻芯フランジ(巻芯フランジ)13と、円柱状のスピンドルシャフト14とを有する。スピンドル側巻芯フランジ13と、円柱状のスピンドルシャフト14とは、互いに同軸上に延びる。
【0021】
スピンドル側巻芯フランジ13は、巻芯3に巻回されるコイル部101の側部に対峙する巻芯フランジを構成する。
【0022】
スピンドルシャフト14は、スピンドル支持台31にベアリング32を介して回転可能に支持される。これにより、スピンドル12は、巻回中心軸Oを中心として回転可能に支持される。
【0023】
スピンドル支持台31は、架台4に対してY軸方向に移動可能に支持される。巻芯スピンドル機構11は、スピンドル支持台31に螺合するボールネジ33と、このボールネジ33を回転駆動するスピンドル支持台駆動モータ34とを備え、スピンドル支持台駆動モータ34によってボールネジ33が回転すると、スピンドル支持台31がスライドしてスピンドル12をY軸方向に移動するようになっている。
【0024】
スピンドルモータ16は、架台4上に支持される。スピンドルモータ16の回転は、プーリ17、ベルト18、プーリ19を介してスピンドルシャフト14に伝えられる。
【0025】
スピンドルシャフト14の外周にはスプライン15が形成される。プーリ19は、スピンドルシャフト14にスプライン15を介して回転軸方向に摺動可能に連結される。これにより、スピンドルシャフト14がY軸方向に移動しても、プーリ19からスピンドルシャフト14に回転が伝えられる。
【0026】
巻芯3は、円柱状をしており、スピンドル12のスピンドル側巻芯フランジ13に対してY軸方向に移動可能に支持され、スピンドル側巻芯フランジ13から出没可能に突出するようになっている。
【0027】
巻芯3とスピンドル12との間にはキー21が介装され、このキー21によって両者が相対回転しないように係止される。
【0028】
巻芯3とスピンドル12との間にはスプリング24が圧縮して介装される。このスプリング24によって巻芯3がスピンドル側巻芯フランジ13から突出するように付勢される。
【0029】
巻芯3は、その背後から延びるロッド部22を有する。このロッド部22は、中空のスピンドルシャフト14を貫通し、その突出端部にロッド鍔部23が設けられる。
【0030】
架台4上には巻芯移動シリンダ25が設けられる。この巻芯移動シリンダ25は、伸張作動することによってロッド鍔部23を押し、巻芯3をスピンドル側巻芯フランジ13内に引き込む。
【0031】
スピンドル12は、スピンドル側巻芯フランジ13から出没可能に突出する第一、第二フォーミングピン(フォーミングピン)41、42と、この第一、第二フォーミングピン41、42をY軸方向に移動するフォーミングピン移動機構43とを備える。
【0032】
フォーミングピン移動機構43は、第一、第二フォーミングピン41、42の基端部が連結される円盤状のロータ44と、このロータ44に転接するローラ45と、このローラ45をY軸方向に移動するフォーミングピン移動シリンダ46とを備える。
【0033】
スピンドル側巻芯フランジ13とロータ44との間には複数のスプリング47が圧縮して介装される。このスプリング47によってロータ44が第一、第二フォーミングピン41、42をスピンドル側巻芯フランジ13に引き込むように付勢される。
【0034】
フォーミングピン移動シリンダ46がローラ45を図3において左方向に移動すると、ローラ45に転接するロータ44がスプリング47に抗して移動し、第一、第二フォーミングピン41、42をスピンドル側巻芯フランジ13から突出させるようになっている。
【0035】
フライヤ回転機構51は、巻芯3と同軸上で公転(回動)可能に支持されるフライヤ55と、このフライヤ55を回転駆動するフライヤモータ36とを備える。フライヤモータ36は架台4上に支持される。
【0036】
フライヤ55は、円筒状のシャフト部56と、L字形のアーム部57とを有する。
【0037】
フライヤ55のシャフト部56は、架台4上にベアリング52を介して回転可能に支持される。これにより、フライヤ55は、巻回中心軸Oを中心として公転可能に支持される。
【0038】
フライヤ55の公転軸(巻回中心軸O)上には、円柱状のフライヤ側巻芯フランジ58が設けられる。このフライヤ側巻芯フランジ58は、巻芯3の先端面を当接させ、巻芯3とともに回転するようになっている。フライヤ側巻芯フランジ58はフライヤ55の公転軸上にベアリング69を介して回転可能に支持される。
【0039】
フライヤ側巻芯フランジ58は、巻芯3に巻回されるコイル部101の側部に対峙する巻芯フランジを構成する。
【0040】
フライヤ側巻芯フランジ58とスピンドル側巻芯フランジ13とは、巻芯3の両側部にて、巻芯3に巻回される線材2を案内する鍔の役割をする。
【0041】
フライヤモータ36は、架台4上に支持される。フライヤモータ36の回転は、プーリ37、ベルト38、プーリ39を介してフライヤ55のシャフト部56に伝えられる。
【0042】
シャフト部56は中空円筒状に形成され、その端部には切り欠き59が形成される。
【0043】
フライヤ55を介して線材2を供給する公転線材供給機構50として、シャフト部56の内側には、図示しない線材源から供給される線材2が通され、ガイドプーリ61を介して切り欠き59から線材2が取り出される。
【0044】
フライヤ55にはガイドプーリ62、63が取り付けられ、その回動先端部には一対の送りローラ64が取り付けられる。線材2は、各ガイドプーリ62、63に掛け回されて案内され、各送りローラ64の間を通って導かれる。各送りローラ64は、線材2を挟持しながら回転し、線材2に所定の張力を付与する。
【0045】
線材2を保持する線材保持機構60として、線材2を挟持するチャック65と、このチャック65を開閉するチャックシリンダ66と、このチャックシリンダ66をX軸方向に移動する移動機67とが設けられる。
【0046】
線材2を供給する非公転線材供給機構70として、線材2を挟持するクランプ75と、このクランプ75を開閉するクランプシリンダ76と、このクランプシリンダ76を巻芯3の回転半径方向に移動する移動機77と、この移動機77を巻芯3の回転軸方向に移動する移動機78とを備える。移動機77は、クランプシリンダ76をZ軸方向に移動することによって、公転線材供給機構50から供給される線材2を引き込んで蓄えるようになっている。移動機78がクランプシリンダ76をY軸方向に移動する。
【0047】
移動機67、77、78は、サーボモータによって回転駆動されるボールネジと、このボールネジに螺合して平行移動する従動子等によって構成される。
【0048】
図示しないコントローラは、各移動機67、77、78のサーボモータ、スピンドルモータ16、チャックシリンダ66、巻芯移動シリンダ25、スピンドル支持台駆動モータ34、フライヤモータ36、フォーミングピン移動シリンダ46等の作動をシーケンス制御し、線材2を巻芯3に巻回して外外巻コイル100を自動的に形成する。
【0049】
コイル巻線装置1は、以上のように構成されて、以下の手順で線材2を巻芯3に巻回して外外巻コイル100を形成する。
【0050】
(1).図4の(a)に示すように、各送りローラ64から引き出された線材2の先端部がチャック65に挟持された状態で、クランプ75を図中矢印で示すように下降させ、クランプ75に線材2の先端部を挟持させる。その後、チャック65を開き、移動機67を作動させてチャック65を待避位置に移動する。
【0051】
(2).図4の(b)に示すように、線材2の先端部を挟持したクランプ75を図中矢印で示すように上昇させ、線材2を各送りローラ64から引き出す。
【0052】
(3).図4の(c)に示すように、スピンドル支持台駆動モータ34を作動させることにより、スピンドル12を図中矢印で示すように移動し、巻芯3の先端面をフライヤ側巻芯フランジ58に当接させる。このとき、線材2は巻芯3の先端部外周に対峙するように延びている。
【0053】
(4).図5の(d)に示すように、フライヤモータ36とスピンドルモータ16とをそれぞれ作動させて、フライヤ55とスピンドル12とを図中矢印で示すように同一方向に同一速度で回転(公転)させる。このとき、フライヤモータ36とスピンドルモータ16の作動に同期して移動機77のサーボモータを作動させて、線材2の先端部を挟持したクランプ75を図中矢印で示すようにZ軸方向に下降させるとともに、移動機78のサーボモータを作動させて、クランプ75を図中矢印で示すようにトラバース方向(Y軸方向)に移動する。これにより、クランプ75に先端部が保持された線材2が弛むことなく、巻芯3に隙間無く整列して巻回される。
【0054】
(5).図5の(e)に示すように、線材2がフライヤ側巻芯フランジ58とスピンドル側巻芯フランジ13との間に巻回されてコイル部101の1層目の巻き部101aが形成されると、クランプ75のトラバース方向を図中矢印で示すように逆にするともに、フライヤ55の公転(回動)速度をスピンドル12の回転速度の2倍に高める。これにより、フライヤ55の送りローラ64から繰り出される線材2が1層目の巻き部101aの線材2の間に収まるように整列して巻回されるとともに、クランプ75に先端部が保持された線材2が同じく1層目の巻き部101aの線材2の間に収まるように整列して巻回される。こうして、1層目の巻き部101aの外周に2層目の巻き部101bが形成される。
【0055】
このとき、フライヤ55はY軸方向(トラバース方向)について定位置で公転するが、フライヤ55をY軸方向に移動する構成としてもよい。
【0056】
前記(1)〜(5)の動作が巻線工程として行われる。続いて、(6)〜(8)の動作が整形工程として行われる。
【0057】
(6).図5の(f)に示すように、2層目の巻き部101bが形成されると、フライヤ55の送りローラ64から繰り出される線材2と、クランプ75に先端部が保持された線材2とがそれぞれ2層目の巻き部101bの中央部から延びる。
【0058】
(7).図6の(g)に示すように、フライヤ55を公転させて送りローラ64をクランプ75の近傍に配置し、フライヤ55の送りローラ64から延びる線材2と、クランプ75に先端部が保持された線材2とを互いに交差させる。そして、フォーミングピン移動シリンダ46を作動させ、第一、第二フォーミングピン41、42を図中矢印で示すようにスピンドル側巻芯フランジ13から突出させる。
【0059】
(8).図6の(h)に矢印で示すように、フライヤ55を180度だけ巻回時と逆方向に公転させるとともに、スピンドル12を90度だけ巻回時と逆方向に回転させる。これにより、フライヤ55の送りローラ64から延びる線材2が第二フォーミングピン42を支点として折り曲げられるとともに、クランプ75に先端部が保持された線材2が第一フォーミングピン41を支点として折り曲げられる。このとき、クランプ75を図中矢印で示すように上方に移動して、クランプ75と巻き部101bとの間に延びる線材2が弛まないようにする。なお、スピンドル12の逆回転時に線材2が第一フォーミングピン41に引っ張られる場合は、クランプ75を上方に移動しなくてもよい。
【0060】
続いて、移動機67を作動させてチャック65を移動した後、チャック65を閉じて送りローラ64から第二フォーミングピン42へと延びる線材2を挟持し、図示しないカッタで線材2を送りローラ64とチャック65との間で切断する。
【0061】
こうして、図6の(i)に示すように、外外巻コイル100が形成される。
【0062】
続いて、フォーミングピン移動シリンダ46を作動させて第一、第二フォーミングピン41、42をスピンドル側巻芯フランジ13内に引き込むとともに、巻芯移動シリンダ25を作動させて巻芯3をスピンドル側巻芯フランジ13内に引き込み、コイル部101から巻芯3を抜き取る。
【0063】
続いて、クランプ75を開いて、第一リード部102となる線材2を離し、第二リード部103となる線材2を挟持したチャック65をX軸方向に移動した後、チャック65を開き、図6の(i)に示す外外巻コイル100を図示しない搬出部に搬送する。
【0064】
以上の各工程が順に行われることによって、外外巻コイル100が自動的に形成される。
【0065】
外外巻コイル100は、第一リード部102と第二リード部103とが、それぞれコイル部101の2層目の巻き部101bから曲折し、巻回中心軸Oから半径方向に180°の角度差を持って延びるように整形されるため、第一リード部102と第二リード部103を手作業によって整形する必要が無くなる。これにより、外外巻コイル100を実装する際、第一リード部102と第二リード部103とを基板に半田付け等によって接続する作業が効率よく行われる。
【0066】
なお、外外巻コイル100は、これに限らず、3層目以上の巻き部を有する多層のコイル部101を形成してもよく、また、第一リード部102と第二リード部103とを、180°に限らず、任意の角度差を持って延びるように形成してもよい。また、フライヤ55の公転速度をスピンドル13の回転速度の2倍より高く、または2倍より低く設定することにより、第一リード部102、第二リード部103が形成される位置を巻き部101bの中央部から左右に移動させることも可能である。
【0067】
線材2の表面に融着層がコーティングされており、この融着層がコイル部101の巻回時に加熱されて溶融した後に固まることにより、コイル部101の形状が維持される。
【0068】
本実施の形態では、線材2を巻芯3に巻回してコイル部101を形成するコイル巻線方法、またはコイル巻線装置であって、コイル部101の側部に対峙する巻芯フランジ13から出没可能に突出するフォーミングピン41、42を用い、またはこれらを備え、フォーミングピン41、42を巻芯フランジ13に引き込んだ状態で巻芯3に線材2を巻回してコイル部101を形成する巻回工程と、フォーミングピン41、42を巻芯フランジ13から突出させた状態でコイル部101から延びる線材2をフォーミングピン41、42に掛けて折り曲げてリード部102、103を整形する整形工程とを行う構成とする。
【0069】
上記構成に基づき、リード部102、103をフォーミングピン41、42を介してコイル部101から曲折して延びる形状とすることが可能となり、リード部102、103の位置および形状に対する設定自由度が高められる。これにより、コイル100を実装する際、リード部102、103を基板に接続する作業が効率よく行われる。
【0070】
フォーミングピン41、42を往復動させて巻芯フランジ13から出没させる構成のため、フォーミングピン41、42の移動が速やかに行われ、コイル100を形成するタクトタイムを短縮することができ、生産性を高められる。
【0071】
本発明のコイル巻線方法は、フライヤ回転機構51と巻芯スピンドル機構11との両方を備えるコイル巻線装置1に限らず、巻芯スピンドル機構11のみを備えるコイル巻線装置に適用し、巻き終わり時にコイル部から線材2を繰り出すノズルへと延びる線材をフォーミングピンを用いて整形するようにしてもよい。また、本発明のコイル巻線方法をフライヤ回転機構51のみを備えるコイル巻線装置に適用し、巻き終わり時にコイル部からフライヤへと延びる線材をフォーミングピンを用いて整形するようにしてもよい。
【0072】
本実施の形態では、線材2を巻回したコイル部101と、このコイル部101の外周から延びる線材2からなる第一、第二リード部102、103とを有する外外巻コイル100を形成するコイル巻線装置1であって、巻回中心軸Oを中心として巻芯3を回転するスピンドル12と、この巻芯3に巻回される線材2を供給する非公転線材供給機構70と、巻回中心軸Oを中心として公転するフライヤ55と、巻芯3に巻回される線材2をフライヤ55を介して供給する公転線材供給機構50と、巻芯3に巻回されるコイル部101の側部に対峙するスピンドル側巻芯フランジ13と、このスピンドル側巻芯フランジ13から出没可能に突出する第一、第二フォーミングピン41、42と、この第一、第二フォーミングピン41、42を往復動させるフォーミングピン移動機構43とを備え、第一、第二フォーミングピン41、42を巻芯フランジ13、58に引き込んだ状態で巻芯3に線材2を巻回してコイル部101を形成する巻回工程と、第一、第二フォーミングピン41、42をスピンドル側巻芯フランジ13から突出させた状態でスピンドル12およびフライヤ55を巻回工程における回転方向と逆方向に回転または公転させてコイル部101から非公転線材供給機構70へと延びる線材2を第一フォーミングピン41に掛けて折り曲げて第一リード部102を整形するとともに、コイル部101から公転線材供給機構50へと延びる線材2を第二フォーミングピン42に掛けて折り曲げて第二リード部103を整形する整形工程とを行う構成とする。
【0073】
上記構成に基づき、第一、第二リード部102、103をそれぞれ第一、第二フォーミングピン41、42を介してコイル部101から曲折して延びる形状とすることが可能となり、第一、第二リード部102、103の位置および形状に対する設定自由度が高められる。これにより、外外巻コイル100を実装する際、第一、第二リード部102、103を基板に接続する作業が効率よく行われる。
【0074】
スピンドル12およびフライヤ55を巻回工程における回転方向と逆方向に回転または公転させて第一リード部102と第二リード部103とを同時に整形するため、外外巻コイル100を形成するタクトタイムを短縮することができ、生産性を高められる。
【0075】
本実施の形態では、フライヤ55の公転速度をスピンドル12の回転速度の2倍に高めて非公転線材供給機構70から供給される線材2を巻芯3に巻回するととともに公転線材供給機構50から供給される線材2を巻芯3に巻回する構成とする。
【0076】
上記構成に基づき、2方向から供給される線材2が巻芯3に同時に巻回され、巻回に要するタクトタイムを短縮でき、生産性を高められる。
【0077】
本実施の形態では、非公転線材供給機構70は、線材2を挟持するクランプ75と、このクランプ75を移動する移動機77とを備え、移動機77がクランプ75移動することによって公転線材供給機構50から供給される線材2を引き込んで蓄え、巻回工程にてスピンドル12の回転に同期して移動機77がクランプ75を巻芯3に近づける方向に移動することによってクランプ75に先端部が保持された線材2が巻芯3に巻回される構成とする。
【0078】
上記構成に基づき、巻回工程にてクランプ75に先端部が保持された線材2の張力が略一定に保たれ、線材2が弛むことなく、コイル部101における線材2を隙間無く整列させることができる。
【0079】
本実施の形態では、整形工程にてスピンドル12の回転に同期して移動機77がクランプ75を巻芯3から離れる方向に移動し、クランプ75に先端部が保持された線材2を第一フォーミングピン41に掛けて折り曲げて第一リード部102を整形する構成とする。
【0080】
上記構成に基づき、整形工程にてクランプ75に先端部が保持された線材2の張力が略一定に保たれ、線材2が弛むことなくを第一フォーミングピン41を支点として折り曲げられ、第一リード部102を所定の形状に精度よく整形することができる。
【0081】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施の形態を示す外外巻コイルの側面図および正面図。
【図2】本発明の実施の形態を示すコイル巻線装置の斜視図。
【図3】同じくコイル巻線装置の端面図。
【図4】同じくコイル巻線装置の作動図。
【図5】同じくコイル巻線装置の作動図。
【図6】同じくコイル巻線装置の作動図。
【符号の説明】
【0083】
1 コイル巻線装置
2 線材
3 巻芯
11 巻芯スピンドル機構
12 スピンドル
13 スピンドル側巻芯フランジ(巻芯フランジ)
41 第一フォーミングピン (フォーミングピン)
42 第二フォーミングピン(フォーミングピン)
43 フォーミングピン移動機構
50 公転線材供給機構
51 フライヤ回転機構
55 フライヤ
58 フライヤ側巻芯フランジ
70 非公転線材供給機構
75 クランプ
76 クランプシリンダ
77 移動機
100 外外巻コイル(コイル)
101 コイル部
102 第一リード部 (リード部)
103 第二リード部 (リード部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材を巻芯に巻回してコイル部を形成するコイル巻線方法であって、
前記コイル部の側部に対峙する巻芯フランジから出没可能に突出するフォーミングピンを用い、
このフォーミングピンを前記巻芯フランジに引き込んだ状態で前記巻芯に前記線材を巻回して前記コイル部を形成する巻回工程と、
前記フォーミングピンを前記巻芯フランジから突出させた状態で前記コイル部から延びる前記線材を前記フォーミングピンに掛けて折り曲げて前記リード部を整形する整形工程とを行うことを特徴とするコイル巻線方法。
【請求項2】
線材を巻回したコイル部と、
このコイル部の外周から延びる前記線材からなる第一、第二リード部とを有する外外巻コイルを形成するコイル巻線装置であって、
巻回中心軸を中心として巻芯を回転するスピンドルと、
前記巻芯に巻回される前記線材を供給する非公転線材供給機構と、
前記巻回中心軸を中心として公転するフライヤと、
前記巻芯に巻回される前記線材を前記フライヤを介して供給する公転線材供給機構と、
前記巻芯に巻回される前記コイル部の側部に対峙するスピンドル側巻芯フランジと、
このスピンドル側巻芯フランジから出没可能に突出する第一、第二フォーミングピンと、
この第一、第二フォーミングピンを往復動させるフォーミングピン移動機構とを備え、
前記第一、第二フォーミングピンを前記巻芯フランジに引き込んだ状態で前記巻芯に前記線材を巻回して前記コイル部を形成する巻回工程と、
前記第一、第二フォーミングピンを前記スピンドル側巻芯フランジから突出させた状態で前記スピンドルおよび前記フライヤを前記巻回工程における回転方向と逆方向に回転または公転させて前記コイル部から前記非公転線材供給機構へと延びる前記線材を前記第一フォーミングピンに掛けて折り曲げて前記第一リード部を整形するとともに、前記コイル部から前記公転線材供給機構へと延びる前記線材を前記第二フォーミングピンに掛けて折り曲げて前記第二リード部を整形する整形工程とを行う構成としたことを特徴とするコイル巻線装置。
【請求項3】
前記巻回工程にて前記フライヤの公転速度を前記スピンドルの回転速度の2倍に高めて前記非公転線材供給機構から供給される前記線材を前記巻芯に巻回するととともに、前記公転線材供給機構から供給される前記線材を前記巻芯に巻回する構成としたことを特徴とする請求項2に記載のコイル巻線装置。
【請求項4】
前記非公転線材供給機構は、
前記線材を挟持するクランプと、
このクランプを移動する移動機とを備え、
この移動機が前記クランプ移動することによって前記公転線材供給機構から供給される前記線材を引き込んで蓄え、
前記巻回工程にて前記スピンドルの回転に同期して前記移動機が前記クランプを前記巻芯に近づける方向に移動することによって前記クランプに先端部が保持された前記線材が前記巻芯に巻回される構成としたことを特徴とする請求項2または3に記載のコイル巻線装置。
【請求項5】
前記整形工程にて前記スピンドルの回転に同期して前記移動機が前記クランプを前記巻芯から離れる方向に移動し、前記クランプに先端部が保持された前記線材を前記第一フォーミングピンに掛けて折り曲げて前記第一リード部を整形する構成としたことを特徴とする請求項2から4のいずれか一つに記載のコイル巻線装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate