説明

コイル巻線方法及び装置

【課題】線材の占積率を高められるコイル巻線方法及び装置を提供する。
【解決手段】二列渦巻きコイルを形成するコイル巻線装置1において、蓄線リール70から線材繰出機90へと延びる線材101を第一、第二巻取り治具10,20の間に挟んでコイル内側渡り線を形成し、第一、第二巻取り治具10,20を蓄線リール70と共に回転駆動して線材繰出機90から繰り出される線材101を第一巻取り治具10に巻回して第一コイルを形成した後、第二巻取り治具20から蓄線リール70を取り外した状態で第一、第二巻取り治具10,20を回転駆動して蓄線リール70から繰り出される線材101を第二巻取り治具20に巻回して第二コイルを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル巻線方法及び装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
断面が四角形の平角線を巻回して形成される渦巻き状コイルは、巻回方向に隣接する線材の面同士が接触し、線材の占積率(密度)を高められることが知られている。
【0003】
従来、特許文献1には、図10に示すように、平角線を渦巻き状に巻回した第一、第二コイル100a,100bを有する二列渦巻き(外外巻き)コイル100を形成するコイル製造装置が開示されている。
【0004】
この装置は、中央の巻取り部材を挟んで第一、第二挟み部材が同軸上に設けられる。線材源から供給される平角線の線材を予め蓄線リールに巻き取り、この蓄線リールを第二挟み部材に取り付、線材の中程104を巻取り部材のスリットに通して保持する。そして、中央の巻取り部材と第一挟み部材が同期回転することにより線材源から供給される線材を巻取り部材と第一挟み部材の間に渦巻き状に巻回する一方、第二挟み部材が2倍の速度で回転することにより蓄線リールから供給される線材を巻取り部材と第二挟み部材の間に渦巻き状に巻き取り、第一、第二コイル100a,100bを同時に巻回するようになっている。
【0005】
第一、第二コイル100a,100bの巻芯部において第一、第二コイル100a,100bの始点となる部位には第一、第二巻付け案内部材がそれぞれ突出して設けられており、線材が第一、第二巻付け案内部材に沿って非円形に巻回される。
【特許文献1】特開平4−192593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来のコイル巻線方法にあっては、第一、第二コイル100a,100bが中央の巻取り部材を挟んで巻回されるため、第一、第二コイル100a,100bの間に間隙ができ、線材の占積率を高められないという問題点があった。
【0007】
また、第一、第二コイル100a,100bは巻芯部に設けられる第一、第二巻付け案内部材に沿って巻回されると、第一、第二コイル100a,100bが非円形に形成されるため、第一、第二コイル100a,100bの内外周部に間隙ができ、線材の占積率を高められないという問題点があった。
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、線材の占積率を高められるコイル巻線方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、線材を渦巻き状に巻回した第一、第二コイルと、この第一、第二コイルの内周端部どうしを結ぶコイル内側渡り線とを有する二列渦巻きコイルを形成するコイル巻線方法またはコイル巻線装置において、線材を繰り出す線材繰出機と、この線材繰出機から繰り出される線材を巻き取る蓄線リールと、同一軸上で回転駆動される第一、第二巻取り治具と、この第一、第二巻取り治具の間隔を軸方向に変える巻取り治具間隔可変機構と、蓄線リールをこの第二巻取り治具に連結する蓄線リール連結機構とを用い、またはこれらを備え、巻取り治具間隔可変機構を駆動して蓄線リールから線材繰出機へと延びる線材を第一、第二巻取り治具の間に挟んでコイル内側渡り線を形成し、第一、第二巻取り治具を蓄線リールと共に回転駆動して線材繰出機から繰り出される線材を第一巻取り治具に巻回して第一コイルを形成した後、第二巻取り治具から蓄線リールを取り外した状態で第一、第二巻取り治具を回転駆動して蓄線リールから繰り出される線材を第二巻取り治具に巻回して第二コイルを形成するものとしたことを特徴とするものとした。
【0010】
また、本発明は、巻芯部に線材を渦巻き状に巻回するコイル巻線方法またはコイル巻線装置において、巻芯部に送られる線材の中程をクランク状に曲折させて段付き部を形成するフォーミング機を用い、またはこれを備え、この段付き部が隣り合う巻線部どうしを段差を持って結ぶように線材を巻回して渦巻きコイルを形成するものとしたことを特徴とするものとした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、蓄線リールから線材繰出機へと延びる線材を第一、第二巻取り治具の間に挟んでコイル内側渡り線を形成するようにしたため、第一、第二コイルの間に間隙を持たない渦巻きコイルを形成することが可能となり、二列渦巻きコイルにおける線材の占積率を高められる。
【0012】
また、本発明によると、フォーミング機によって線材の中程をクランク状に曲折させて段付き部を形成し、この段付き部が隣り合う巻線部どうしを段差を持って結ぶように線材を巻回して渦巻きコイルを形成するようにしたため、渦巻きコイルを例えば円形に形成することが可能となり、渦巻きコイルにおける線材の占積率を高められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
図1の(a)は二列渦巻き(外外巻き)コイル100の平面図であり、図1の(b)は同図のA−A線に沿う断面図である。この二列渦巻きコイル100は平角線の線材101を渦巻き状に巻回した第一、第二コイル102,103を有する。
【0015】
第一、第二コイル102,103の内周端部はコイル内側渡り線104によって結ばれ、第一、第二コイル102,103の外周端部は径方向に延びるように折り曲げられてリード部105,106となっている。
【0016】
第一、第二コイル102,103において巻回方向に隣接する各線材101が互いに接触するとともに、第一、第二コイル102,103の各線材101どうしが互いに接触しており、これによって渦巻きコイル100における線材の占積率を高められる。
【0017】
図2は二列渦巻きコイル100を製造するコイル巻線装置1を示す全体図である。ここで、互いに直交するX、Y、Zの3軸を設定し、X軸が略水平前後方向、Y軸が略水平横方向、Z軸が略垂直方向に延びるものとし、コイル巻線装置1の構成を説明する。
【0018】
コイル巻線装置1は、架台19の中央部に二列渦巻きコイル100を形成する第一、第二巻取り治具10,20が設けられる。
【0019】
架台19上には、線材101を繰り出す線材繰出機90と、この線材繰出機90から繰り出される線材101を巻き取る蓄線リール70と、この蓄線リール70を回転駆動する蓄線スピンドル71と、線材101の中程を折り曲げるフォーミング機60と、線材101を切断するカッタ80とが設けられる。
【0020】
蓄線リール70の回転軸74は蓄線スピンドル71に着脱可能に連結され、この蓄線スピンドル71はサーボモータ72によってZ軸まわりに回転駆動される。蓄線リール70は蓄線スピンドル71によって回転駆動されることにより、線材繰出機90から繰り出される線材101が巻回される。
【0021】
蓄線スピンドル71は移動機7によって図中矢印で示すようにY、Z軸方向に移動する。
【0022】
第二巻取り治具20には蓄線リール70が連結される蓄線リール連結機構50が設けられる。この蓄線リール連結機構50は第二巻取り治具20の回転径方向に突出するアーム52を備え、このアーム52の先端部にカップリング穴51が形成され、このカップリング穴51に差し込まれる蓄線リール70のカップリング軸73を抜けないように係止する図示しないロック機構とを備える。
【0023】
このロック機構はカップリング軸73に形成された環状溝75に係合するロック部材と、このロック部材を環状溝75に押し付けるスプリング等を備える。カップリング軸73がこのカップリング穴51に差し込まれる際には架台19上に設けられる図示しない駆動機構によってロック部材がスプリングに抗して一時的に後退する一方、カップリング軸73がこのカップリング穴51に差し込まれるとロック部材がスプリングの付勢力によって環状溝75に押し付けられることにより、カップリング軸73がこのカップリング穴51から抜けないように係止される。
【0024】
第一巻取り治具10はスピンドル11に連結される。このスピンドル11は架台19に対してZ軸まわりに回転可能に支持され、サーボモータ32によって回転駆動される。
【0025】
図3の(a),(b)に示すように、第一巻取り治具10はX、Y軸方向に延びる第一平面部12と、この第一平面部12からZ軸方向に円盤状に突出する第一巻芯部13と、この第一巻芯部13の外周面から径方向に突出する第一突起14とを有する。
【0026】
第一巻芯部13と第一突起14はそれぞれ線材101の幅と同等の高さHを持って第一平面部12からZ軸方向に突出する。第一突起14の周方向の幅はできるだけ小さく設定される。第一突起14の先端部は後述する第一コイル102の段付き部107に沿って円弧状に面取りされている。
【0027】
第二巻取り治具20はスピンドル21に連結される。このスピンドル21は昇降台29に対してZ軸まわりに回転可能に支持され、サーボモータ31によって回転駆動される。
【0028】
第一、第二巻取り治具10,20の間隔を軸方向に変える巻取り治具間隔可変機構として、昇降台29は架台19に対して図中矢印で示すようにZ軸方向に移動する移動機5が設けられる。
【0029】
図4の(a),(b)に示すように、第二巻取り治具20はX、Y軸方向に延びる第二平面部22と、この第二平面部22からZ軸方向に円盤状に突出する第二巻芯部23と、この第二巻芯部23の外周面から径方向に突出する第二突起24と、第二平面部22に開口して線材101が収まる線材収容溝25とを有する。
【0030】
第二巻取り治具20の第二平面部22には第二巻芯部23が収まる巻芯収容凹部26が開口し、円盤状の第二巻芯部23は第二巻取り治具20に対して複数のピン27を介してZ軸方向に摺動可能に支持される。
【0031】
第二巻取り治具20には第二巻芯部23を第二平面部22から突出させる方向に付勢する複数のスプリング28が介装される。第二平面部22に対する第二巻芯部23の突出高さを規制するストッパ(図示せず)を備え、第二巻芯部23と第二突起24はそれぞれ線材101の幅と同等の高さHを持って第二平面部22から突出する。第二突起24の周方向の幅はできるだけ小さく設定される。第二突起24の先端部は後述する第二コイル103の段付き部107に沿って円弧状に面取りされている。
【0032】
線材収容溝25は第二巻芯部23の外周面に接するように直線状に延び、これに線材繰出機90からアーム52に取り付けられた蓄線リール70へと延びる線材101が収まるようになっている(図6参照)。
【0033】
第二巻取り治具20を下降させ、第一、第二巻芯部13,23を当接させ、第二巻芯部23が各スプリング28を圧縮しながら巻芯収容凹部26内に収まるとき、第二突起24が線材収容溝25の端部に収まる一方、第一突起14によって線材101が線材収容溝25に押し込まれるとともに、第二突起24によって線材101が第一平面部12に押し付けられ、第一、第二突起14,24の間で線材101が折り曲げられることによって図9の(b)に示すように二列渦巻きコイル100のコイル内側渡り線104が形成される。
【0034】
線材繰出機90は複数のローラ91を図示しないモータによって回転駆動して線材101をY軸方向に繰り出したり引き込むようになっている。
【0035】
なお、線材繰出機90はこれに限らず、ローラ91を回転駆動するモータを備えないで、ローラ91が線材101の動きに従動して案内するように構成しても良い。
【0036】
線材繰出機90は移動機9によって図中矢印で示すようにX、Y、Z軸方向に移動する。
【0037】
フォーミング機60はサーボモータ61によってZ軸まわりに回転駆動されるフォーミング回転体62と、このフォーミング回転体62の先端からZ軸方向に突出する一対のフォーミングピン63とを備える。
【0038】
フォーミング機60は移動機6によって図中矢印で示すようにX、Y、Z軸方向に移動する。
【0039】
第一、第二コイル102,103を巻回する過程でフォーミング機60が作動して線材101の中程に各段付き部107を形成する。図8の(a),(b),(c)は、第二コイル103を巻回する過程で行われるフォーミング機60の動作を示し、これについて説明する。
【0040】
まず、第一、第二巻取り治具10,20の回転を一時的に停止し、図8の(a)に示すように、各フォーミングピン63の間に線材101を介在させる。
【0041】
図8の(b)に矢印で示すようにフォーミング回転体62を上方から見て左方向に所定角度だけ回転駆動し、各フォーミングピン63が線材101の中程を所定角度で一方向に折り曲げて第一曲折部108を形成する。
【0042】
フォーミング機60を線材101に沿って所定距離だけ移動した後、図8の(c)に矢印で示すようにフォーミング回転体62を上方から見て右方向に所定角度だけ回転駆動し、各フォーミングピン63が線材101の中程を所定角度で逆方向に折り曲げて第二曲折部109を形成する。
【0043】
なお、第一曲折部108を形成した後にフォーミング機60を線材101に沿って移動させずに第二曲折部109を形成しても良い。
【0044】
こうして線材101の中程には第一曲折部108と第二曲折部109が所定の間隔を持って並ぶことによってクランク状に折り曲がる段付き部107が形成される。
【0045】
図1の(a)に示すように、第一、第二コイル102,103は5条の円弧状の巻線部121〜125が形成され、各巻線部121〜125の間に4つの段付き部107が形成される。段付き部107は各巻線部121〜125のうち隣り合うものどうしを段差を持って結び、隣り合う各段付き部107は互いに係合して並ぶように配置される。
【0046】
図9の(a)に示すように、第二コイル103は1条目の巻線部121と2条目の巻線部122を結ぶ段付き部107が第二突起24に沿って折り曲げられる。第一コイル102は1条目の巻線部121と2条目の巻線部122を結ぶ段付き部107が第一突起14に沿って折り曲げられている。
【0047】
カッタ80は図示しないエアシリンダによって駆動され、線材101を切断する。カッタ80は移動機8によって架台19に対して図中矢印で示すようにX軸方向に移動する。
【0048】
各移動機5〜9は、サーボモータ2によって回転駆動されるボールネジ3と、このボールネジ3に螺合して平行移動する従動子4等によって構成される。
【0049】
コントローラは、各移動機5〜9の各サーボモータ2、第一、第二巻取り治具10,20のサーボモータ12,22、フォーミング機60のサーボモータ61、蓄線スピンドル71のサーボモータ72、線材繰出機90のサーボモータ、カッタ80等の作動をシーケンス制御し、第一、第二巻取り治具10,20に対して線材101を巻回して二列渦巻きコイル100を自動的に形成する。
【0050】
コイル巻線装置1は、次の各工程を順に行い、二列渦巻きコイル100を形成する。
【0051】
・蓄線リール70に線材101を巻き取る蓄線工程。
これは、図5に示すように、蓄線リール70の回転軸74を蓄線スピンドル71に差し込んで連結した状態で、サーボモータ72とローラ91を同期して回転駆動し、線材繰出機90から繰り出される線材101を回転する蓄線リール70に巻き取る。
【0052】
・蓄線リール70をアーム51に取り付ける蓄線リール取り付け工程。
これは、移動機7、9を駆動して蓄線リール70と線材繰出機90を所定の巻取り位置に移動し、移動機5を駆動して第二巻取り治具20を下降させ、蓄線リール70を第二巻取り治具20のアーム51に連結する。このとき、線材繰出機90から蓄線リール70へと延びる線材101が線材収容溝25に沿って第一、第二巻芯部13,23の接線方向に延びている。
【0053】
・線材101を第一、第二巻取り治具10,20の間に挟んで二列渦巻きコイル100のコイル内側渡り線104を形成する渡り線形成工程。
これは、図6に示すように、移動機5を駆動して第二巻取り治具20を下降させて第一、第二巻取り治具10,20の間隔を狭め、第一突起14によって線材101が線材収容溝25に押し込まれるとともに、第二突起24によって線材101が第一平面部12に押し付けられ、図9の(b)に示すように、第一、第二突起14,24の間で線材101がクランク状に折り曲げられることによってコイル内側渡り線104が形成される。このとき、第二巻芯部23が各スプリング28を圧縮しながら巻芯収容凹部26内に収まり、第二巻芯部23の下端面23aが第二平面部22と同一平面上に保持される。
【0054】
・線材101を第一巻取り治具10に巻回して第一コイル102を形成する第一コイル形成工程。
これは、サーボモータ12,31を同期して回転駆動し、第一、第二巻取り治具10,20を蓄線リール70と共に回転し、線材繰出機90から繰り出される線材101を第一巻芯部13に巻回して第一コイル102を形成する。
【0055】
この第一コイル形成工程において、第一、第二巻取り治具10,20の回転を一時的に停止し、図8に示すように、フォーミング機60を駆動して線材101をクランク状に折り曲げた段付き部107を形成する。
【0056】
・第一コイル102から線材繰出機90へと延びる線材101をカッタ80によって切断する線材切断工程。
これは、移動機8を駆動してカッタ80を線材101を挟む位置に移動し、エアシリンダを駆動して駆動カッタ80が線材101を切断する。
【0057】
・蓄線リール70を第二巻取り治具20から取り外し、蓄線スピンドル71に支持させる蓄線リール取り外し工程。
これは、移動機7を駆動して蓄線スピンドル71を上昇させ、蓄線リール70の回転軸74を蓄線スピンドル71に挿入し、アーム52上に設けられロック部材をスプリングに抗して一時的に後退させ、蓄線スピンドル71を下降させて蓄線リール70のカップリング軸73をカップリング穴51から抜き取る。
【0058】
・第一、第二巻取り治具10,20の間隔を拡げる第一、第二巻取り治具間隔拡大工程。
これは、図7に示すように、移動機5を駆動して第二巻取り治具20を上昇させ、第二巻芯部23の下端面23aから第二巻芯部23と第二突起24を突出させ、この第二突起24によって線材収容溝25に収まっていた線材101を第二平面部22の下に押し出す。このとき、第一巻芯部13に巻回された第一コイル102と第二平面部22の間隔が線材101の幅と同等になる。
【0059】
・線材101を第二巻取り治具20に巻回して第二コイル103を形成する第二コイル形成工程。
これは、サーボモータ12,31を同期して回転駆動し、第一、第二巻取り治具10,20を回転し、蓄線リール70から繰り出される線材101を第二巻芯部23に巻回して第二コイル103を形成する。
【0060】
この第二コイル形成工程において、第一、第二巻取り治具10,20の回転を一時的に停止し、図8に示すように、フォーミング機60を駆動して線材101をクランク状に折り曲げた段付き部107を形成する(図1、図9の(a)参照)。
【0061】
・リード部105,106を形成するリード部形成工程。
これは、第一、第二コイル102,103から延びる線材101を図示しないローラによって第二コイル102,103の径方向に延びるように折り曲げてリード部105,106を形成する(図1参照)。
【0062】
・二列渦巻きコイル100の第一、第二コイル102,103を図示しないテープによって複数箇所で縛る結束工程。
【0063】
・移動機5を駆動して第二巻取り治具20を上昇させ、第一巻取り治具10上から二列渦巻きコイル100を取り出す搬出工程。
【0064】
以上の各工程が繰り返して行われることによって、二列渦巻きコイル100が自動的に形成されるが、一部の工程を手動で行うことも可能である。
【0065】
本実施形態では、線材101を渦巻き状に巻回した第一、第二コイル102,103と、この第一、第二コイル102,103の内周端部どうしを結ぶコイル内側渡り線104とを有する二列渦巻きコイル100を形成するコイル巻線方法またはコイル巻線装置1において、線材101を繰り出す線材繰出機90と、この線材繰出機90から繰り出される線材101を巻き取る蓄線リール70と、同一軸上で回転駆動される第一、第二巻取り治具10,20と、この第一、第二巻取り治具10,20の間隔を軸方向に変える巻取り治具間隔可変機構と、蓄線リール70をこの第二巻取り治具20に連結する蓄線リール連結機構50とを用い、またはこれらを備え、巻取り治具間隔可変機構を駆動して蓄線リール70から線材繰出機90へと延びる線材101を第一、第二巻取り治具10,20の間に挟んでコイル内側渡り線104を形成し、第一、第二巻取り治具10,20を蓄線リール70と共に回転駆動して線材繰出機90から繰り出される線材101を第一巻取り治具10に巻回して第一コイル102を形成した後、第二巻取り治具20から蓄線リール70を取り外した状態で第一、第二巻取り治具10,20を回転駆動して蓄線リール70から繰り出される線材101を第二巻取り治具20に巻回して第二コイル103を形成するものとしたため、第一、第二コイル102,103の間に間隙を持たない渦巻きコイル100を形成することが可能となり、二列渦巻きコイル100における線材101の占積率を高められる。
【0066】
本実施形態では、第一巻取り治具10は第一コイル102に沿って延びる第一平面部12と、この第一平面部12から円盤状に突出する第一巻芯部13と、この第一巻芯部13の外周面から径方向に突出する第一突起14とを有する一方、第二巻取り治具20は第二コイル103に沿って延びる第二平面部22と、この第二平面部22から円盤状に突出する第二巻芯部23と、第二平面部22に開口しこの第二巻芯部23が収まる巻芯収容凹部26と、第二巻芯部23を第二平面部22から突出させる方向に付勢する複数のスプリング28と、第二巻芯部23の外周面から径方向に突出する第二突起24と、第二平面部22に開口して線材101が収まる線材収容溝25とを備え、第一、第二巻取り治具10,20を互いに接近させて第二巻芯部23が第一巻芯部13に押されて各スプリング28を圧縮しながら巻芯収容凹部26内に収まるとき、第二突起24が線材収容溝25の端部に収まり、第一突起14によって線材101が線材収容溝25に押し込まれるとともに、第二突起24によって線材101が第一平面部12に押し付けられ、第一、第二突起14,24の間で線材101を折り曲げてコイル内側渡り線104を形成する構成としたため、クランク状に曲折されるコイル内側渡り線104を小型化することが可能となり、二列渦巻きコイル100における線材101の占積率を高められる。
【0067】
また、コイル巻線装置1を用いて第一コイル102のみを形成し、第二コイル103を持たない一列の渦巻きコイルを形成することも可能である。
【0068】
この場合、前記蓄線リール70に線材101を巻き取る蓄線工程等が不要になり、線材101の端部を第二巻取り治具20のアーム51に係止する。
【0069】
その後、渡り線形成工程、第一コイル形成工程を行い、この第一コイル形成工程において、第一、第二巻取り治具10,20の回転を一時的に停止し、図8に示すように、フォーミング機60を駆動して線材101をクランク状に折り曲げた段付き部107を形成する。
【0070】
その後、前記蓄線リール取り外し工程、第一、第二巻取り治具間隔拡大工程、第二コイル形成工程を行わず、線材繰出機90から第一コイル102へと延びる線材101をカッタ80により切断する切断工程を行い、続いてリード部形成工程、結束工程、搬出工程を行う。
【0071】
以上の各工程が繰り返して行われることによって、一列の渦巻きコイルが自動的に形成されるが、一部の工程を手動で行うことも可能である。
【0072】
本実施形態では、第一巻芯部13に線材101を渦巻き状に巻回するコイル巻線方法またはコイル巻線装置1において、第一巻芯部13に送られる線材101の中程をクランク状に曲折させて段付き部107を形成するフォーミング機60を用い、またはこれを備え、この段付き部107が隣り合う巻線部121〜125どうしを段差を持って結ぶように線材101を巻回して第一コイル102を形成するものとしたため、第一コイル102を円形に形成することが可能となり、第一コイル102における線材101の占積率を高められる。
【0073】
本実施形態では、フォーミング機60は回転駆動されるフォーミング回転体62と、このフォーミング回転体62の回転軸方向に突出する一対のフォーミングピン63とを備え、各フォーミングピン63の間に線材101を介在させた状態でフォーミング回転体62を一方向に回転駆動して第一曲折部108を形成し、フォーミング回転体62を他方向に回転駆動して第二曲折部109を形成する構成としたため、線材101に対して所定の位置にクランク状に折り曲がる段付き部107を高い精度を持って形成することが可能となり、各段付き部107の間隙を小さくし、第一コイル102における線材101の占積率を高められる。
【0074】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施の形態を示す二列渦巻きコイルの平面図と断面図。
【図2】同じくコイル巻線方法及び装置の斜視図。
【図3】同じく第一巻取り治具の平面図と側面図。
【図4】同じく第二巻取り治具の平面図と側面図。
【図5】同じく蓄線工程を示す側面図。
【図6】同じく渡り線形成工程を示す側面図。
【図7】同じく第一、第二巻取り治具間隔拡大工程を示す側面図。
【図8】同じくフォーミング機の作動を示す平面図。
【図9】同じく二列渦巻きコイルの一部を示す平面図と側面図。
【図10】従来例を示す二列渦巻きの斜視図と側面図。
【符号の説明】
【0076】
1 コイル巻線装置
10 第一巻取り治具
12 第一平面部
13 第一巻芯部
14 第一突起
20 第二巻取り治具
22 第二平面部
23 第二巻芯部
24 第二突起
25 線材収容溝
26 巻芯収容凹部
28 スプリング
50 蓄線リール連結機構
60 フォーミング機
62 フォーミング回転体
63 フォーミングピン
70 蓄線リール
90 線材繰出機
100 二列渦巻きコイル
101 線材
102 第一コイル
103 第二コイル
107 段付き部
108 第一曲折部
109 第二曲折部
104 コイル内側渡り線
107 段付き部
121〜125 巻線部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材を渦巻き状に巻回した第一、第二コイルと、この第一、第二コイルの内周端部どうしを結ぶコイル内側渡り線とを有する二列渦巻きコイルを形成するコイル巻線方法において、
線材を繰り出す線材繰出機と、この線材繰出機から繰り出される線材を巻き取る蓄線リールと、同一軸上で回転駆動される第一、第二巻取り治具と、この第一、第二巻取り治具の間隔を軸方向に変える巻取り治具間隔可変機構と、前記蓄線リールをこの第二巻取り治具に連結する蓄線リール連結機構とを用い、前記巻取り治具間隔可変機構を駆動して蓄線リールから前記線材繰出機へと延びる線材を前記第一、第二巻取り治具の間に挟んでコイル内側渡り線を形成し、前記第一、第二巻取り治具を前記蓄線リールと共に回転駆動して前記線材繰出機から繰り出される線材を前記第一巻取り治具に巻回して第一コイルを形成した後、前記第二巻取り治具から蓄線リールを取り外した状態で前記第一、第二巻取り治具を回転駆動して前記蓄線リールから繰り出される線材を前記第二巻取り治具に巻回して第二コイルを形成することを特徴とするコイル巻線方法。
【請求項2】
線材を渦巻き状に巻回した第一、第二コイルと、この第一、第二コイルの内周端部どうしを結ぶコイル内側渡り線とを有する二列渦巻きコイルを形成するコイル巻線装置において、
線材を繰り出す線材繰出機と、この線材繰出機から繰り出される線材を巻き取る蓄線リールと、同一軸上で回転駆動される第一、第二巻取り治具と、この第一、第二巻取り治具の間隔を軸方向に変える巻取り治具間隔可変機構と、前記蓄線リールをこの第二巻取り治具に連結する蓄線リール連結機構とを備え、前記巻取り治具間隔可変機構を駆動して蓄線リールから前記線材繰出機へと延びる線材を前記第一、第二巻取り治具の間に挟んでコイル内側渡り線を形成し、前記第一、第二巻取り治具を前記蓄線リールと共に回転駆動して前記線材繰出機から繰り出される線材を前記第一巻取り治具に巻回して第一コイルを形成した後、前記第二巻取り治具から蓄線リールを取り外した状態で前記第一、第二巻取り治具を回転駆動して前記蓄線リールから繰り出される線材を前記第二巻取り治具に巻回して第二コイルを形成する構成としたことを特徴とするコイル巻線装置。
【請求項3】
前記第一巻取り治具は第一コイルに沿って延びる第一平面部と、この第一平面部から円盤状に突出する第一巻芯部と、この第一巻芯部の外周面から径方向に突出する第一突起とを有する一方、前記第二巻取り治具は第二コイルに沿って延びる第二平面部と、この第二平面部から円盤状に突出する第二巻芯部と、前記第二平面部に開口しこの第二巻芯部が収まる巻芯収容凹部と、前記第二巻芯部を前記第二平面部から突出させる方向に付勢するスプリングと、前記第二巻芯部の外周面から径方向に突出する第二突起と、前記第二平面部に開口して線材が収まる線材収容溝とを備え、前記巻取り治具間隔可変機構を駆動して前記第一、第二巻取り治具を互いに接近させることにより前記第二巻芯部が前記第一巻芯部に押されて前記スプリングに抗して前記巻芯収容凹部内に収まるとき、前記第二突起が前記線材収容溝に収まり、前記第一突起によって線材が前記線材収容溝に押し込まれるとともに、前記第二突起によって線材が前記第一平面部に押し付けられ、前記第一、第二突起の間で線材を折り曲げてコイル内側渡り線を形成する構成としたことを特徴とする請求項2に記載のコイル巻線装置。
【請求項4】
巻芯部に線材を渦巻き状に巻回するコイル巻線方法において、
前記巻芯部に送られる線材の中程をクランク状に曲折させて段付き部を形成するフォーミング機を用い、この段付き部が隣り合う巻線部どうしを段差を持って結ぶように線材を巻回して渦巻きコイルを形成することを特徴とするコイル巻線方法。
【請求項5】
巻芯部に線材を渦巻き状に巻回するコイル巻線装置において、
前記巻芯部に送られる線材の中程をクランク状に曲折させて段付き部を形成するフォーミング機を備え、この段付き部が隣り合う巻線部どうしを段差を持って結ぶように線材を巻回して渦巻きコイルを形成する構成としたことを特徴とするコイル巻線装置。
【請求項6】
前記フォーミング機は回転駆動されるフォーミング回転体と、このフォーミング回転体の回転軸方向に突出する一対のフォーミングピンとを備え、この各フォーミングピンの間に線材を介在させた状態で前記フォーミング回転体を一方向に回転駆動して第一曲折部を形成し、前記フォーミング回転体を他方向に回転駆動して第二曲折部を形成し、前記第一曲折部と前記第二曲折部によって前記段付き部を形成することを特徴とする請求項5に記載のコイル巻線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−21898(P2008−21898A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−193762(P2006−193762)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000227537)日特エンジニアリング株式会社 (106)
【Fターム(参考)】