説明

コイル梱包用資材

【課題】コイル状の製品の梱包に供するコイル梱包用資材に関し、コストダウンが可能で、しかも従来通りの錆の発生や疵の発生を防止する機能を維持した梱包用資材を提供することを目的とする。
【解決手段】コイル製品1を梱包する梱包用資材2であって、当該資材の中央部10と端部11とが異なる性質を有し、中央部10が、緩衝機能を有し、且つ、端部11が、防錆機能を有し、中央部10の幅(Lc)、及び両端部11の合計の幅(Le1+Le2)が以下の式(1)、(2)の範囲である。Lc≧W+2t ・・・(1),Le1+Le2≧W+100(mm) ・・・(2),但し、W:コイル製品の長さ,t:コイル製品の肉厚

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、特にコイル状の鋼製品等に対し、錆の発生、あるいは疵の発生防止を目的としたコイル梱包用資材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コイル状の鋼製品は、錆の発生を防止したり、あるいは、運搬時などの取扱疵の発生を防止するためにコイル全体を特定の資材で梱包する方法がとられている。例えば、特許文献1には、合成樹脂からなるフィルム状基材と、その一側面に該基材と同素材の発泡性合成樹脂からなる緩衝材が設けられ、且つ、他の側面には、該基材と同素材からなる合成樹脂製のクロスとからなる3層構造の梱包用資材が開示されている。
【0003】
当該技術は、合成樹脂製の基材と、該基材の一側面に設けられた緩衝材と、他側面に設けられたクロスとが同一の素材で形成されていることにより使用後の廃棄が容易になり、且つ、再利用に供することができ、環境問題に適した包装体を提供できるという効果があるというものである。
【特許文献1】特開平5−278715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記従来の梱包用資材では、資材全体が単一の材質(性質)で構成されているため、例えばコストダウンの為に資材の材質を変更しようとすると資材全体の材質を変更する必要があった。従って、この場合、コストダウンと同時に、錆や疵を防止する本来機能も維持する必要があり、そのような材質を見出すには非常に困難であり、このようなコイルの梱包用資材のコストダウンには限界があった。
【0005】
本願発明は、コイル状の鋼製品等の梱包に供するコイル梱包用資材に関し、コストダウンが可能で、しかも従来通りの錆の発生や疵の発生を防止する機能を維持した梱包用資材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明によれば、コイル製品を梱包する梱包用資材であって、当該資材の中央部と端部とが異なる性質を有し、前記中央部が、緩衝機能を有し、且つ、前記端部が、防錆機能を有し、前記中央部の幅(Lc)、及び両端部の合計の幅(Le1+Le2)が以下の式(1)、(2)の範囲であることを特徴とするコイル梱包用資材が提供される。
Lc≧W+2t ・・・(1)
Le1+Le2≧W+100(mm) ・・・(2)
但し、W:コイル製品の長さ
t:コイル製品の肉厚
【0007】
前記中央部が、それぞれ同一の素材からなる、コイル製品に接する側から、発泡性合成樹脂からなる緩衝材、フィルム状基材、合成樹脂製クロスを順次積層した3層構造であっても良い。また、前記端部が、それぞれ同一の素材からなる、鋼コイル製品に接する側から合成樹脂製クロス、フィルム状基材を積層した2層構造、もしくは、コイル製品に接する側から合成樹脂製クロス、フィルム状基材、合成樹脂性クロスを積層した3層構造であっても良い。更に、前記中央部と前記端部が同一の素材でも良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明のコイル梱包用資材は、疵の発生防止が重要なコイル製品の周面および側面を緩衝機能を有する中央部で包み、錆の発生防止が重要なコイル製品の内周面を防錆機能を有する端部で包むことにより、コイル製品について最適な梱包をすることができる。本発明のコイル梱包用資材は、中央部と端部の材質を任意に変更でき、コストダウンが可能であり、しかも、従来通りの錆の発生や疵の発生を防止する機能を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を使用して本願発明を詳細に説明する。なお、コイル製品の一例として、鋼コイル製品1について説明する。
図1(a)は、鋼コイル製品1を示す図である。また、図1(b)は、鋼コイル製品1に梱包用資材2を巻きつけて梱包したときのコイル軸方向に切断した際の断面を示す図である。鋼コイル製品1は、帯状の鋼板をコイル状に巻くことにより、肉厚tの中空の円筒形状をなしている。鋼コイル製品1の長さWは、鋼板の幅に等しい。
【0010】
図2は、鋼コイル製品1を梱包する本発明の実施の形態にかかる梱包用資材2の説明図である。梱包用資材2は、全体として四角形状を有しており、中央部10の両側に端部11を設けた構成である。図示の例では、梱包用資材2の中央において前後方向に伸びるように中央部10を配置し、その両側において、同様に前後方向に伸びるように端部11を配置している。なお、後に説明するように、これら中央部10と端部11は互いに異なる性質を有している。
【0011】
鋼コイル製品1を梱包する際には、先ず、図5(a)に示すように、梱包用資材2の上に鋼コイル製品1を載せる。この場合、中央部10のほぼ中央に鋼コイル製品1を載せる。また、鋼コイル製品1の長さWの方向(鋼板の幅方向)を、中央部10の幅方向と一致させる。即ち、帯状の鋼板の長手方向(コイル周方向)を、中央部10の長手方向(図2における前後方向)に一致させる。
【0012】
次に、図5(b)に示すように、梱包用資材2を円筒状に折り曲げ、鋼コイル製品1の周面を囲む。この場合、鋼コイル製品1の全周に中央部10を巻きつけるようにする。こうして、通常1枚の梱包用資材2で鋼コイル製品1全体を包み込み、次に図5(c)に示すように、梱包用資材2の余った端部を鋼コイル製品1の内側に押し込み、鋼コイル製品1の外周面、側面、及び内周面全てを梱包用資材2で包み込む。
【0013】
こうして鋼コイル製品1を梱包用資材2で包み込んだ状態は、図1(b)のように、鋼コイル製品1の内周面でも鋼コイル製品1が大気に露出しないように、梱包用資材2の端部11を重ね合せている。
【0014】
ここで鋼コイル製品1の外周面と側面は、運搬の時のハンドリング時に他の製品や設備等と接触する可能性があり、その際にも疵がつかないように梱包用資材2の中央部10に緩衝機能を持たせる必要がある。それに対し鋼コイル製品1の内周面は、他の製品や設備と接触することはないが、ただ、大気あるいは、水分などと接触を回避しなければならず、梱包用資材2の端部11は、防錆の機能を持たせる必要はあるものの、緩衝機能まで持たせる必要はない。なお、外周面、側面に当たる梱包用資材2の中央部10も防錆性はもちろん必要な機能である。
【0015】
従って本願発明では、梱包用資材2を、鋼コイル製品1の外周面及び側面にあたる部分(中央部10)と、鋼コイル製品1の内周面にあたる部分(端部11)とに分けて、中央部10を防錆と緩衝機能を有する性質とし、端部11を防錆機能を有する性質とすることを特徴としている。
【0016】
そして、梱包用資材2の中央部10の幅(Lc)、及び両方の端部11の合計幅(Le1+Le2)が以下の式(1)、(2)の範囲であることを特徴としている。
Lc≧W+2t ・・・ (1)
Le1+Le2≧W+100(mm) ・・・(2)
但し、W:鋼コイル製品1の長さ
t:鋼コイル製品1の肉厚
【0017】
即ち、中央部10の幅Lcは、鋼コイル製品1の外周面と側面とを覆う長さ以上必要であり、両端部11の合計長さLe1+Le2は、鋼コイル製品1の内周面を覆う長さWに、梱包資材2が鋼コイル製品1の内周面上で重なる重なり代、ここでいう100(mm)を加えた長さ以上を必要とすることを特徴としている。
【0018】
梱包用資材2の中央部10は、前記したように防錆機能と緩衝機能とを有していればどのような材質のものでも良いが、中央部10の強度、緩衝性が不足すると、梱包内部の鋼コイル製品1を損傷する可能性がある。従って、望ましくは図3のように、中央部10は、鋼コイル製品1に接する側(以下、内側と称す)発泡性合成樹脂からなる緩衝材15、フィルム状基材16、合成樹脂製クロス17を順次積層した3層構造が望ましい。即ち、合成樹脂製クロス17は、強度を確保するため、フィルム状基材16は防錆のため、発泡性合成樹脂からなる緩衝材15は強度と緩衝のために有利な材質である。また、これら各層15〜17の素材を同一とすると互いに密着性が良く非常に望ましい。これら緩衝材15、フィルム状基材16、合成樹脂製クロス17は、例えばポリプロピレン、ポリエチレンなどで構成される。
【0019】
また、端部11は、防錆機能を有していればどのような材質でも構わない。しかし、望ましくは、端部11は、中央部10と同一素材であると互いの接着性が良くなる。例えば、端部11は、図4に示すように、内側から合成樹脂性クロス20、フィルム状基材21を順次積層した2層構造(図4(b))、もしくは、内側から合成樹脂性クロス20、フィルム状基材21を順次積層し、更にその上に合成樹脂性クロス22を積層した3層構造(図4(a))が望ましい。これら合成樹脂性クロス20、フィルム状基材21、あるいは、これら合成樹脂性クロス20、フィルム状基材21、合成樹脂性クロス22の素材を同一とすると互いに密着性が良く非常に望ましい。これら合成樹脂性クロス20、フィルム状基材21、あるいは、これら合成樹脂性クロス20、フィルム状基材21、合成樹脂性クロス22は、例えばポリプロピレン、ポリエチレンなどで構成される。
【実施例】
【0020】
次に本願発明を実際に適用した例について説明する。
表1に今回の実施例、従来例、および比較例について、各梱包用資材の材質及びサイズを示す。それらを表2に示した寸法のコイルに梱包を実施し、約1ケ月後に錆の状況を確認した。また、それらの梱包用資材のコストについても比較し示した。なお、上記材質のそれぞれの層構成を表3に示している。その結果、実施例1、2ともにコストも従来の0.82〜0.88と低減できており、錆や疵も従来並みに防止できていた。それに対し、従来例ではコストが高く、また、比較例1は、本願の端部に使用する材質Bを梱包資材全面に使用したので、コストは安いものの錆が出たり疵がついたりした。また、端部の長さを本願範囲よりも短くした比較例2(上記式(2)を満足せず)では、端部の重ね代が不十分であり、そのあわせ目の部分に錆が発生した。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、コイル状の鋼製品等の梱包用資材に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)コイル状の鋼製品の一例の説明図である。(b)コイルに梱包資材を巻きつけたコイルの軸方向に切断した断面を示す図である。
【図2】コイル梱包用資材を示す図である。
【図3】資材中央部の材質の層構成を示す図である。
【図4】(a)資材端部の材質の層構成の−例を示す図である。(b)資材端部の材質の層構成の他の例を示す図である。
【図5】鋼コイル製品を梱包用資材で梱包する手順の説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1 鋼コイル製品
2 梱包用資材
10 中央部
11 端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル製品を梱包する梱包用資材であって、
当該資材の中央部と端部とが異なる性質を有し、
前記中央部が、緩衝機能を有し、且つ、
前記端部が、防錆機能を有し、
前記中央部の幅(Lc)、及び両端部の合計の幅(Le1+Le2)が以下の式(1)、(2)の範囲であることを特徴とするコイル梱包用資材。
Lc≧W+2t ・・・(1)
Le1+Le2≧W+100(mm) ・・・(2)
但し、W:コイル製品の長さ
t:コイル製品の肉厚
【請求項2】
前記中央部が、それぞれ同一の素材からなる、コイル製品に接する側から、発泡性合成樹脂からなる緩衝材、フィルム状基材、合成樹脂製クロスを順次積層した3層構造であることを特徴とする請求項1記載のコイル梱包用資材。
【請求項3】
前記端部が、それぞれ同一の素材からなる、コイル製品に接する側から合成樹脂製クロス、フィルム状基材を積層した2層構造、もしくは、コイル製品に接する側から合成樹脂製クロス、フィルム状基材、合成樹脂性クロスを積層した3層構造であることを特徴とする請求項1または2記載のコイル梱包用資材。
【請求項4】
前記中央部と前記端部が同一の素材からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のコイル梱包用資材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−239182(P2008−239182A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80309(P2007−80309)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(592069366)日鐵物流君津株式会社 (1)
【出願人】(000243157)堀富商工株式会社 (4)
【Fターム(参考)】