説明

コイル部品及びコイル部品の製造方法

【課題】自動化でコストがかからず、且つ低背化を図ることができるコイル部品及びコイル部品の製造方法の提供。
【解決手段】ピン端子23には、ピン端子23の軸方向の全体に渡ってピン端子23の軸方向へ延出する溝23aが形成されている。溝23aの幅は第2の1次巻線の導体端部32Dの径よりもわずかに大きく、コイル部品が組立てられることにより、溝23aの全体に渡って第2の1次巻線の導線端部32Dが係合する。第2の1次巻線は絶縁被覆された芯線32Hからなるが、ピン端子23の溝23aの内面と溝23a内の芯線32Hとの間には絶縁被覆が存在せず半田33が介在し、このことにより、芯線32Hとピン端子23とは電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル部品及びコイル部品の製造方法に関し、特にコイルを構成する導線の一端又は他端が、外部電極となるピン端子に電気的に接続されるコイル部品及び当該コイル部品を製造するためのコイル部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コイル部品のコイルを構成する導線の一端又は他端が、コイル部品を構成する外部端子となるピン端子に電気的に接続されて継線されるコイル部品が従来より知られている。導線の一端又は他端のピン端子への電気的な継線は、ピン端子に導線の一端又は他端を絡げ、絡げられた導線の一端又は他端をピン端子に対して半田付けや溶接することにより行われる。このようにピン端子に導線の一端又は他端を絡げる構成については、例えば、特開平10−125540号公報(特許文献1)に記載されている。
【特許文献1】特開平10−125540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のコイル部品では、前述のようにピン端子に導線の一端又は他端を絡げており、この絡げる工程に人手がかかっていた。これに対してこの絡げる工程を自動化して機械で行おうとすると、複雑な機構を有する装置が必要となる。従って、人手で行う場合であっても自動化して行う場合であっても、絡げる工程を行うためにコストがかかるという問題が生ずる。
【0004】
またピン端子に導線の一端又は他端を絡げるためには、ピン端子の軸方向へ導線の一端又は他端を絡げるための領域を確保しなければならず、ピン端子の軸方向において背の高いコイル部品となってしまうという問題が生ずる。
【0005】
そこで、本発明は自動化でコストがかからず、且つ低背化を図ることができるコイル部品及びコイル部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、導体からなるピン端子が植設された絶縁樹脂端子台と、導線が巻回されてなり一端部又は他端部が該絶縁樹脂端子台に固定される巻線とを備え、該ピン端子には、該ピン端子の軸方向の全体に渡って該ピン端子の軸方向へ延出する溝が形成され、該溝には該巻線の一端部又は他端部が該溝の全体に渡って係合し、該導線と該ピン端子とは電気的に接続されているコイル部品を提供している。
【0007】
該ピン端子には、該ピン端子の軸方向の全体に渡って該ピン端子の軸方向へ延出する溝が形成され、該溝には該巻線の一端部又は他端部が該溝の全体に渡って係合し、該導線と該ピン端子とは電気的に接続されているため、ピン端子に導線の一端部又は他端部を絡げずに済み、ピン端子への導線の一端部又は他端部の電気的な接続を自動化することができ、コスト低減を図ることができる。
【0008】
また、ピン端子に導線の一端部又は他端部を絡げる場合には、ピン端子の軸方向において導線の一端部又は他端部を絡げるための領域を確保する必要があるが、このような領域を確保せずに済む。このため、ピン端子の軸方向においてコイル部品の低背化を図ることができる。
【0009】
また、ピン端子を径の太い導体端部や径の細い導体端部を有する様々な導線に対応させることができる。また、導体端部を筒状をなすピン端子に挿入する場合より挿入を容易とすることができる。また、導線端部が太い径を有している場合には、ピン端子を用いずに当該太い導線端部をそのまま外部電極として用いることが可能であるが、導線端部が細い場合には、強度が不足しているため導線端部をそのまま外部電極として用いることができない。このような場合であっても、ピン端子の溝に細い導線端部を挿入させて用いることで、細い導線端部を補強して外部端子として用いることができる。また、絶縁被覆が施された導線を挿入し、後にピン端子の溝に半田を供給して絶縁被覆を溝の開口部から排出させることができる。また、半田を溝内において隙間なく充填させることができる。
【0010】
また、かしめによって導線端部とピン端子とを電気的に接続する場合には、かしめによって導線端部の一部を溝の開口部へ逃がすことができ、かしめられた導線端部の行き場がなくなることによりピン端子が変形するといった不具合を防止することができる。
【0011】
また、溝の開口部にピン端子の周面から突出する突出部が設けられる場合には、ピン端子の最外形寸法を変えることなく開口部に突出部と導線端部とからなる溶接玉を形成できる。
【0012】
ここで、該導線は導体からなる芯線と該芯線の周面を被覆する絶縁被覆とを有し、該ピン端子の該溝の内面と該溝内の芯線との間には絶縁被覆が存在せずに導電体が介在していることが好ましい。
【0013】
該導線は導体からなる芯線と該芯線の周面を被覆する絶縁被覆とを有し、該ピン端子の該溝の内面と該溝内の芯線との間には絶縁被覆が存在せずに導電体が介在しているため、芯線とピン端子とを確実に電気的に接続することができる。また、開口部から絶縁被覆が排出されたコイル部品とすることができる。
【0014】
また、該導線は導体からなる芯線と該芯線の周面を被覆する絶縁被覆とを有し、該ピン端子は、該ピン端子がかしめられることにより該導線に対してかしめるかしめ部を有し、該かしめ部において該ピン端子と該導線とは電気的に接続されていることが好ましい。
【0015】
該ピン端子は、該ピン端子がかしめられることにより該導線に対してかしめるかしめ部を有し、該かしめ部において該ピン端子と該導線とは電気的に接続されているため、芯線とピン端子とを確実に電気的に接続することができる。また、かしめによって導線端部の一部を溝の開口部へ逃がすことができ、かしめられた導線端部の行き場がなくなることによりピン端子が変形するといった不具合を防止したコイル部品とすることができる。
【0016】
また、該溝の内面を規定する該ピン端子の部分は、溶融して該導線と電気的に接続される溶融部を有することが好ましい。該溝の内面を規定する該ピン端子の部分は、溶融して該導線と電気的に接続される溶融部を有するため、芯線とピン端子とを確実に電気的に接続することができる。
【0017】
また、本発明は、導体からなるピン端子であってその軸方向の全体に渡って延出する溝が形成された該ピン端子が植設された絶縁樹脂端子台の該溝に、導体からなる芯線と該芯線の周面を被覆する絶縁被覆とを有する導線を挿通させる工程と、該ピン端子の一端部を溶融半田に浸漬させて該溝内へ半田を供給することにより該溝内の該導線の該絶縁被覆を溶融させて除去すると共に該ピン端子と該芯線とを電気的に接続する工程とを有するコイル部品の製造方法を提供している。
【0018】
導体からなるピン端子であってその軸方向の全体に渡って延出する溝が形成された該ピン端子が植設された絶縁樹脂端子台の該溝に、導体からなる芯線と該芯線の周面を被覆する絶縁被覆とを有する導線を挿通させる工程と、該ピン端子の一端部を溶融半田に浸漬させて該溝内へ半田を供給することにより該溝内の該導線の該絶縁被覆を溶融させて除去すると共に該ピン端子と該芯線とを電気的に接続する工程とを有するため、芯線とピン端子とを確実に電気的に接続することができる。また、開口部から絶縁被覆を排出することができる。
【0019】
また、本発明は、導体からなるピン端子であってその軸方向の全体に渡って延出する溝が形成された該ピン端子が植設された絶縁樹脂端子台の該溝に、導体からなる芯線と該芯線の周面を被覆する絶縁被覆とを有する導線を挿通させる工程と、該ピン端子をかしめることにより該ピン端子の一部を該溝内の該導線に対してかしめて該ピン端子と該芯線とを電気的に接続する工程とを有するコイル部品の製造方法を提供している。
【0020】
導体からなるピン端子であってその軸方向の全体に渡って延出する溝が形成された該ピン端子が植設された絶縁樹脂端子台の該溝に、導体からなる芯線と該芯線の周面を被覆する絶縁被覆とを有する導線を挿通させる工程と、該ピン端子をかしめることにより該ピン端子の一部を該溝内の該導線に対してかしめて該ピン端子と該芯線とを電気的に接続する工程とを有するため、芯線とピン端子とを確実に電気的に接続することができる。また、かしめによって導線端部の一部を溝の開口部へ逃がすことができ、かしめられた導線端部の行き場がなくなることによりピン端子が変形するといった不具合を防止することができる。
【0021】
また、本発明は、導体からなるピン端子であってその軸方向の全体に渡って延出する溝が形成され該溝の開口部に該ピン端子の周面から突出する突出部が設けられた該ピン端子が植設された絶縁樹脂端子台の該溝に、導体からなる芯線と該芯線の周面を被覆する絶縁被覆とを有する導線を挿通させる工程と、該突出部を該溝内へ折曲げて該突出部を該溝内の該導線に当接させることにより該導線を該溝内に仮固定する工程と、該突出部と該導線とを溶接することにより該突出部と該芯線とを電気的に接続する工程とを有するコイル部品の製造方法を提供している。
【0022】
導体からなるピン端子であってその軸方向の全体に渡って延出する溝が形成され該溝の開口部に該ピン端子の周面から突出する突出部が設けられた該ピン端子が植設された絶縁樹脂端子台の該溝に、導体からなる芯線と該芯線の周面を被覆する絶縁被覆とを有する導線を挿通させる工程と、該突出部を該溝内へ折曲げて該突出部を該溝内の該導線に当接させることにより該導線を該溝内に仮固定する工程と、該突出部と該導線とを溶接することにより該突出部と該芯線とを電気的に接続する工程とを有するため、芯線とピン端子とを確実に電気的に接続することができる。また、ピン端子の最外形寸法を変えることなく開口部に突出部と導線端部とからなる溶接玉を形成できる。
【発明の効果】
【0023】
以上により、本発明は自動化でコストがかからず、且つ低背化を図ることができるコイル部品及びコイル部品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施の形態によるコイル部品及びコイル部品の製造方法について図1乃至図6に基づき説明する。図1に示されるようにコイル部品1は、より具体的には略直方体形状をした電源トランスであり、その寸法は縦32.6mm、横32.0mm、高さ14.5mm程度であり、UL規格(UL60950)を満たしている。コイル部品1は、図2に示されるように3つの1次巻線22、32、52と、2次巻線42と、第1絶縁樹脂ボビン41と、第2絶縁樹脂ボビン51と、板状絶縁部材31と、絶縁樹脂端子台21と、絶縁樹脂カバー61と、第1磁心11と、第2磁心12とを備えている。
【0025】
第1磁心11と第2磁心12とは同一形状であるため第1磁心11についてのみ説明する。第1磁心11は、より具他的にはMn−Znからなる導電性フェライトコアである。第1磁心11は、中央部がわずかにくびれた略長方形状の板状をなす平板部11Aを有しており、略長方形状の平板部11Aの一対の短辺全体にわたって平板部11Aの上面から図2の上方へ突出する端縁突出部11B、11Bがそれぞれ設けられている。また、平板部11Aの上面の中央位置には、当該上面から図2の上方へ突出する円柱形状の中央突出部11Cが設けられている。図1に示されるようにコイル部品1が組立てられることにより、第1磁心11の端縁突出部11Bの突出端面と第2磁心12の端縁突出部11Bの突出端面とが互いに対向当接し、第1磁心11の中央突出部11Cの突出端面と第2磁心12の中央突出部11Cの突出端面とが互いに対向当接するように構成されている。
【0026】
絶縁樹脂端子台21は、円形状に膨らんだ円形部21Bをその中央部に有する略長方形状の板状をなす端子台板状部21Aを有しており、当該円形部21Bの中央には、円形部21Bと同軸的に開口する円形の端子台貫通孔21aが形成されている。端子台板状部21Aの上面であって端子台貫通孔21aの開口の周囲には、開口の周囲全体に渡って端子台板状部21Aの上面から図2の上方へ突出する端子台開口壁21Cが設けられている。また、円形部21Bの周縁と、略長方形状の端子台板状部21Aの一方の短辺全体と、当該周縁から当該一方の短辺にわたる部分とには、端子台板状部21Aの上面から図2の上方へ突出する端子台縁部壁21Dがそれぞれ設けられている。
【0027】
略長方形状の端子台板状部21Aの図2の一番下に位置する角部に相当する部分であって端子台縁部壁21Dに囲まれる部分は、後述の第1の1次巻線22の図2の上下方向の高さと後述の板状絶縁部材31の図2の上下方向の高さとの略和の分だけ端子台板状部21Aの円形部21Bの上面よりも図2の上方向へ高いガイド部載置面21Eを有しており、略長方形状の端子台板状部21Aの一対の短辺のうちの一方の短辺の部分全体は端子電極形成部21Fをなしている。ガイド部載置面21Eには2つの径の小さな貫通孔21b、21cが形成されている。2つの貫通孔21b、21cの図2の下側の開口部には、ピン端子23、24の上端がそれぞれ固定されている。
【0028】
ピン端子23、24には、図4に示されるように、ピン端子23、24の軸方向、即ち、図4の上下方向の全体に渡ってピン端子23、24の軸方向へ延出する溝23a、24aが形成されている。溝23a、24aの幅は後述の第2の1次巻線32の導体端部32D、32Gの径よりもわずかに大きく、図1に示されるようにコイル部品1が組立てられることにより、溝23a、24aの全体に渡って第2の1次巻線32の導線端部32D、32Gが係合する。後述のように第2の1次巻線32は絶縁被覆された芯線32Hからなるが、図5に示されるように、ピン端子23の溝23aの内面と溝23a内の芯線32Hとの間には絶縁被覆が存在せず半田33が介在し、このことにより、芯線32Hとピン端子23とは電気的に接続されている。ピン端子24についても同様である。
【0029】
ガイド部載置面21Eの隣接位置には、略四角柱形状をなして端子台板状部21Aの上面から図2の上方向、即ち、後述の第1〜第3の1次巻線22、32、52の軸方向へ延出する第1導線端部保護部21Hと第2導線端部保護部22Iとが設けられている。第1導線端部保護部21Hと第2導線端部保護部21Iとには、これらの延出方向へ指向する貫通孔21e、21dがそれぞれ形成されており、貫通孔21e、21dには、それぞれ後述の第3の1次巻線52の導体端部52G、52Dが貫通して端子台板状部21Aの下面から図2の下方へ突出して、図1に示されるように外部端子をなす。貫通孔21d、21eに後述の第3の1次巻線52の導体端部52D、52Gが貫通することにより、端子台板状部21Aの上面よりも図2の上側に位置することとなる第3の1次巻線52の導線端部52D、52Gの略全体を第1導線端部保護部21Hと第2導線端部保護部21Iとが覆い保護するように構成されている。第1導線端部保護部21H、第2導線端部保護部21Iは導線端部覆部に相当する。
【0030】
第1導線端部保護部21Hと第2導線端部保護部21Iとの間には、端子台板状部21Aの円形部21Bの上面と同じ高さの平坦面が設けられており、当該平坦面には、後述の第1の1次巻線22の他方の導体端部22Gが貫通する貫通孔21gが形成されている。また、第2導線端部保護部21Iに関して平坦面と反対の側には、後述の第1の1次巻線22の図2の上下方向の高さの略半分の高さ分だけ端子台板状部21Aの円形部21Bの上面よりも図2の上方向へ高い平坦面が設けられている。当該平坦面には後述の第1の1次巻線22の一方の導体端部22Dが貫通する貫通孔21fが形成されている。貫通孔21f、21gを貫通する第1の1次巻線22の一方の導体端部22Dと他方の導体端部22Gとは、端子台板状部21Aの下面から図2の下方へ突出して、図1に示されるように外部端子をなす。
【0031】
略長方形状をなす端子台板状部21Aの一対の短辺のうちの第1導線端部保護部21H、第2導線端部保護部21I等が設けられている一方の短辺に対する他方の短辺には、当該他方の短辺全体に渡って端子台板状部21Aの上面から図2の上方へ突出する突出縁部21Jが設けられており、略長方形状の端子台板状部21Aの一対の短辺のうちの他方の短辺の部分全体は端子電極形成部21Gをなしている。突出縁部21Jの突出端面は、後述の第1の1次巻線22の図2の上下方向の高さと後述の板状絶縁部材31の図2の上下方向の高さと後述の第2の1次巻線32の図2の上下方向の高さと後述の第1絶縁樹脂ボビン41の第1ボビン板状部41Aの図2の上下方向の高さとの略和の分だけ端子台板状部21Aの円形部21Bの上面よりも図2の上方向へ高い。
【0032】
突出縁部21Jの突出端面には、図2に示されるように、後述の2次巻線42の一方の導体端部42D、他方の導体端部42Gがそれぞれ貫通する貫通孔21h、21iが形成されている。貫通孔21h、21iを貫通する2次巻線42の一方の導体端部42Dと他方の導体端部42Gとは、端子台板状部21Aの下面から図2の下方へ突出して、図1(b)に示されるように外部端子をなす。
【0033】
第1、第3の1次巻線22、52、2次巻線42は、それぞれ導体からなる芯線と芯線の周面を被覆する絶縁被覆とを有する断面円形状の導線が、軸心を中心として半径方向に径が拡大するように平面的に且つ軸心方向に二重構造となるように、いわゆるアルファ巻き(又はクロスワイズ巻き)により巻回されて構成されている。また、第2の1次巻線32は、導体からなる芯線32Hと芯線32Hの周面を被覆する絶縁被覆とを有する導線が、軸心を中心として半径方向に径が拡大するように平面的に且つ軸心方向に一重構造となるように、いわゆる整列巻きにより巻回されて構成されている。
【0034】
第1〜第3の1次巻線22、32、52、2次巻線42は、それぞれ同軸的に巻回された巻回部22A、32A、52A、42Aと、巻回部22A、32A、52A、42Aから引出された一端部22B、32B、52B、42B及び他端部22C、32C、52C、42Cとをそれぞれ有している。一端部22B、32B、52B、42B及び他端部22E、32E、52E、42Eは、巻回部22A、32A、52A、42Aから巻回部22A、32A、52A、42Aの略半径方向外方へ延出するように引出された引出し部22C、32C、52C、42C、22F、32F、52F、42Fと、引出し部22C、32C、52C、42C、22F、32F、52F、42Fの延出端から絶縁樹脂端子部の方向、即ち、図2の下方へ延出する導線端部22D、32D、52D、42D、22G、32G、52G、42Gとを有している。第1、第3の1次巻線22、52、2次巻線42の導線端部22D、52D、42D、22G、52G、42Gは、図1に示されるようにコイル部品1が組立てられることにより、前述のように絶縁樹脂端子台21の下面から下方へ突出して外部端子をなし、第2の1次巻線32の導線端部32D、32Gはピン端子23、24の溝23a、24a内においてピン端子23、24と電気的に接続されている。
【0035】
板状絶縁部材31は略円盤形状をなす円盤形状部31Aを有している。円盤形状部31Aは1次絶縁樹脂板に相当する。円盤形状部31Aの中央位置には、円盤形状部31Aと同軸的に開口する円形の絶縁部材貫通孔31aが形成されている。また、円盤形状部31Aの周縁の一部には、円盤形状部31Aの略半径方向へ突出する絶縁部材ガイド部31Bが設けられている。絶縁部材ガイド部31Bは1次支持部に相当する。絶縁部材ガイド部31Bの突出端縁には、2つの切欠き31b、31cが形成されたガイド壁が円盤形状部31Aの上面から図2の上方へ延出して設けられている。切欠き31b、31cは開口が広く構成されており、細い導線であっても切欠き31b、31cに容易に係合可能に構成されている。切欠き31b、31cにそれぞれ第2の1次巻線32の導線端部32D、32Gに接続されている引出し部32C、32Fの部分が係合して第2の1次巻線32の引出し部32C、32Fが支持されるように構成されている。
【0036】
絶縁部材ガイド部31Bは、図1に示されるようにコイル部品1が組立てられることにより、絶縁樹脂端子台21の端子電極形成部21Fのガイド部載置面21E上に載置され、第2の1次巻線32の導線端部32D、32Gは前述のようにピン端子23、24の溝23a、24a内に挿入される。このように、第2の1次巻線32の引出し部32C、32Fを支持する絶縁部材ガイド部31Bが、絶縁樹脂端子台21の端子電極形成部21Fのガイド部載置面21E上に載置されるため、絶縁部材ガイド部31Bが設けられた板状絶縁部材31が第2の1次巻線32の軸心を中心として回転することを防止することができる。このため第2の1次巻線32がその軸心を中心として回転してしまうことを防止することができる。
【0037】
第1絶縁樹脂ボビン41は略円盤形状をなす第1ボビン板状部41Aを有しており、第1ボビン板状部41Aの半径は絶縁樹脂端子台21の円形部21Bの半径よりもわずかに大きく構成されている。第1ボビン板状部41Aは絶縁樹脂板、板状部に相当する。第1ボビン板状部41Aの周縁の一部には、第1ボビン板状部41Aの半径方向外方へ突出する第1ボビンガイド部41Bが設けられている。第1ボビンガイド部41Bは支持部に相当する。第1ボビンガイド部41Bの突出端縁には、3つの切欠き41a、41b、41cが形成されたガイド壁が第1ボビンガイド部41Bの上面から図2の上方へ延出して設けられている。3つの切欠き41a、41b、41cのうちの両端の切欠き41a、41bは開口が広く構成されており、細い導線であっても切欠き41a、41bに容易に係合可能に構成されている。両端の切欠き41a、41bに、それぞれ2次巻線42の導線端部42D、42Gに接続されている引出し部42C、42Fの部分が係合して2次巻線42の引出し部42C、42Fが支持されるように構成されている。
【0038】
第1ボビン板状部41Aの中央位置には、第1ボビン板状部41Aと同軸的に開口する円形の第1ボビン貫通孔41dが形成されている。第1ボビン貫通孔41dの半径は絶縁樹脂端子台21の端子台貫通孔21aの半径よりもわずかに小さく構成されている。第1ボビン板状部41Aの下面であって第1ボビン貫通孔41dの開口の周囲には、開口の周囲全体に渡って第1ボビン板状部41Aの下面から図2の下方へ突出する第1ボビン開口下壁41Cが設けられている。また、第1ボビン板状部41Aの上面であって第1ボビン貫通孔41dの開口の周囲よりもわずかに第1ボビン貫通孔41dの半径方向外方の位置には、開口の周囲全体に渡って第1ボビン板状部41Aの上面から図2の上方へ突出する第1ボビン開口上壁41Dが設けられている。第1ボビン貫通孔41dの半径は絶縁樹脂端子台21の端子台貫通孔21aの半径よりもわずかに小さく構成されているため、図1に示されるようにコイル部品1が組立てられることにより、第1の1次巻線22の半径方向において第1ボビン開口下壁41Cは端子台開口壁21Cよりも内側に配置されて第1ボビン開口下壁41Cの外周面は端子台開口壁21Cの内周面に対向する。
【0039】
第1ボビン板状部41Aの周縁であって図1に示されるようにコイル部品1が組立てられたときに絶縁樹脂端子台21の円形部21Bの周縁に相当する部分には、端子台板状部21Aの下面から図2の下方へ突出する第1ボビン下方壁41Eがそれぞれ設けられている。また、第1ボビン板状部41Aの周縁よりもわずかに第1ボビン板状部41Aの半径方向内方の位置には、第1ボビン板状部41Aの上面から図2の上方へ突出する第1ボビン上方壁41Fが第1ボビンガイド部41Bの部分を除く全周に渡って設けられている。第1ボビン上方壁41Fは壁部に相当する。第1ボビン板状部41Aの半径は絶縁樹脂端子台21の円形部21Bの半径よりもわずかに大きく構成されているため、図1に示されるようにコイル部品1が組立てられることにより、第1の1次巻線22の半径方向において、円形部21Bの周縁における端子台縁部壁21Dは第1ボビン下方壁41Eよりも内側に配置されて、円形部21Bの周縁における端子台縁部壁21Dの外周面は第1ボビン下方壁41Eの内周面に対向する。
【0040】
第2絶縁樹脂ボビン51は略円盤形状をなす第2ボビン板状部51Aを有しており、第2ボビン板状部51Aの半径は第1ボビン板状部41Aの半径と同一である。第2ボビン板状部51Aは1次絶縁樹脂板に相当する。第2ボビン板状部51Aの周縁の一部には、第2ボビン板状部51Aの半径方向外方へ突出する第2ボビンガイド部51Bが設けられている。第2ボビンガイド部51Bは1次支持部に相当する。第2ボビンガイド部51Bの突出端縁には、3つの切欠き51a、51b、51cが形成されたガイド壁が第2ボビンガイド部51Bの上面から図2の上方へ延出して設けられている。3つの切欠き51a、51b、51cのうちの両端の切欠き51a、51bは開口が広く構成されており、細い導線であっても切欠き51a、51bに容易に係合可能に構成されている。両端の切欠き51a、51bに、それぞれ第3の1次巻線52の導線端部52D、52Gに接続されている引出し部52C、52Fの部分が係合して第3の1次巻線52の引出し部52C、52Fが支持されるように構成されている。
【0041】
第2ボビン板状部51Aの中央位置には、第2ボビン板状部51Aと同軸的に開口する円形の第2ボビン貫通孔51dが形成されている。第2ボビン貫通孔51dの半径は第1ボビン貫通孔41dの半径と同一である。第2ボビン板状部51Aの下面であって第2ボビン貫通孔51dの開口の周囲には、開口の周囲全体に渡って第2ボビン板状部51Aの下面から図2の下方へ突出する第2ボビン開口下壁51Cが設けられている。また、第2ボビン板状部51Aの上面であって第2ボビン貫通孔51dの開口の周囲よりもわずかに第2ボビン貫通孔51dの半径方向外方の位置には、開口の周囲全体に渡って第2ボビン板状部51Aの上面から図2の上方へ突出する第2ボビン開口上壁51Dが設けられている。第2ボビン貫通孔51dの半径は第1ボビン貫通孔41dの半径と同一であるため、図1に示されるようにコイル部品1が組立てられることにより、第1の1次巻線22の半径方向において第2ボビン開口下壁51Cは第1ボビン開口上壁41Dよりも内側に配置されて第2ボビン開口下壁51Cの外周面は第1ボビン開口上壁41Dの内周面に対向する。
【0042】
第2ボビン板状部51Aの周縁であって図1に示されるようにコイル部品1が組立てられたときに第1絶縁樹脂ボビン41の第1ボビンガイド部41Bに相当する部分を除く全周には、第2ボビン板状部51Aの下面から図2の下方へ突出する第2ボビン下方壁51Eが設けられている。また、第2ボビン板状部51Aの周縁よりもわずかに第2ボビン板状部51Aの半径方向内方の位置には、第2ボビン板状部51Aの上面から図2の上方へ突出する第2ボビン上方壁51Fが第2ボビンガイド部51Bの部分を除く全周に渡って設けられている。第1ボビン板状部41Aの半径は第2ボビン板状部51Aの半径と同一であるため、図1に示されるようにコイル部品1が組立てられることにより、第1の1次巻線22の半径方向において、第1ボビン上方壁41Fは第2ボビン下方壁51Eよりも内側に配置されて、第1ボビン上方壁41Fの外周面は第2ボビン下方壁51Eの内周面に対向する。
【0043】
絶縁樹脂カバー61は、円形状に膨らんだカバー円形部61Bをその中央部に有する略長方形状の板状をなすカバー板状部61Aを有しており、カバー板状部61Aの半径は第2ボビン板状部51Aの半径と同一である。カバー円形部61Bの中央には、カバー円形部61Bと同軸的に開口する円形のカバー貫通孔61aが形成されている。カバー貫通孔61aの半径は第2ボビン貫通孔51dの半径と同一である。カバー円形部61Bの下面であってカバー貫通孔61aの開口の周囲には、開口の周囲全体に渡ってカバー円形部61Bの下面から図2の下方へ突出するカバー開口壁61Cが設けられている。カバー貫通孔61aの半径は第2ボビン貫通孔51dの半径と同一であるため、図1に示されるようにコイル部品1が組立てられることにより、第1の1次巻線22の半径方向においてカバー開口壁61Cは第2ボビン開口上壁51Dよりも内側に配置されてカバー開口壁61Cの外周面は第2ボビン開口上壁51Dの内周面に対向する。
【0044】
また、カバー円形部61Bの周縁には、カバー円形部61Bの下面から図2の下方へ突出するカバー下方壁61Dがそれぞれ設けられている。カバー板状部61Aの半径は第2ボビン板状部51Aの半径と同一であることから、図1に示されるようにコイル部品1が組立てられたときに、カバー下方壁61Dの内周面全面は、第2絶縁樹脂ボビン51の第2ボビンガイド部51Bに相当する部分を除いて第2ボビン上方壁51Fの外周面全面に対向するように構成されている。
【0045】
略長方形状の板状をなすカバー板状部61Aの一対の短辺には、当該短辺全体に渡ってカバー板状部61Aの上面から図2の上方へ延出する回転防止壁61E、61Eがそれぞれ設けられている。回転防止壁61Eは、図1に示されるようにコイル部品1が組立てられたときに、第2磁心12のくびれた部分に当接可能であり、この当接により絶縁樹脂カバー61、第3の1次巻線52、第2絶縁樹脂ボビン51、2次巻線42、第1絶縁樹脂ボビン41等が第1〜第3の1次巻線22、32、52の軸心を回転軸として回転してしまうことを防止する。
【0046】
上述したコイル部品1は図6に示されるような回路構成をなしている。第1〜第3の1次巻線22、32、52が1次側に配置され、2次巻線42が2次側に配置された電源トランスの構成を採る。第1〜第3の1次巻線22、32、52の導体端部22D、22G、32D、32G、52D、52G、2次巻線42の導体端部42D、42Gはそれぞれ外部端子をなし、第1の1次巻線22の導体端部22Gと第3の1次巻線52の52Gとは、実装基板のランドパターンにより実装基板上で電気的に接続される。
【0047】
第2の1次巻線32の軸方向において第2の1次巻線32に対向配置された第1ボビン板状部41Aと第1ボビン板状部41Aに関して第2の1次巻線32とは反対の側に第2の1次巻線32と同軸的に第1ボビン板状部41Aに対向して配置された2次巻線42とを有し第2の1次巻線32と共に巻回部ユニットを構成する後述の第1絶縁樹脂ボビンモジュール40を有するため、第1絶縁樹脂ボビンモジュール40により1次巻線及び2次巻線42の軸方向において1次巻線と2次巻線42とを1枚の第1ボビン板状部41Aにより仕切ることができる。このため、1次巻線32及び2次巻線42の軸方向における低背化を図ることができる。また、1つの第1絶縁樹脂ボビンモジュール40において複数の巻線を巻回するといったことを行わないため、当該複数の巻線間において絶縁を図るために従来行っていたようなテーピングを行わずにUL規格(UL60950)を満たすコイル部品1とすることができる。
【0048】
また、第1絶縁樹脂ボビン41は、第1ボビン板状部41Aと、第1ボビン上方壁41Fとを有するため、第2ボビン板状部51Aの第2ボビン下方壁51Eとで互いに嵌合させ合うことができる。更に、第1ボビン上方壁41Fは2次巻線42の周面の略全体に渡って対向配置されているため、第1ボビン上方壁41Fが設けられている分だけ1次巻線32、52と2次巻線42との間の沿面距離をより長く確保することができる。また、2次巻線42の周面が露出することを防止することができるので、2次巻線42の周面に傷が付くことを防止することができる。また、コイル部品1を図示せぬ基板上に実装する際に、実装基板上でのコイル部品1と他部品との間における安全規格上コイル部品1の表面全体に絶縁テープを巻回してコイル部品1を保護する場合があるが、このように絶縁テープを巻回する際に2次巻線42の周面に傷が付くことを防止することができる。
【0049】
また、絶縁樹脂端子台21には第1導線端部保護部21H、第2導線端部保護部21Iが1次巻線52の軸方向へ延出して設けられているため、導線端部52D、52Gの大部分を保護することができる。また、1次巻線52の露出を少くすることができるので、実装基板上でのコイル部品1と他部品との絶縁を図ることができる。また、コイル部品1を基板上に実装する際に、実装基板上でのコイル部品1と他部品との間における安全規格上コイル部品1の表面全体に絶縁テープを巻回してコイル部品1を保護する場合があるが、このように絶縁テープを巻回する際に1次巻線52の一端部52B、他端部52Eに傷が付くことを防止することができる。
【0050】
また、絶縁樹脂板は2次巻線42の軸方向における2次巻線42の巻回部42Aの絶縁樹脂端子台21寄りの側に配置され、1次巻線32、52の軸方向における1次巻線32、52の巻回部32A、52Aの絶縁樹脂端子台21寄りの側には円盤形状部31A、第2ボビン板状部51Aが設けられ、円盤形状部31A、第2ボビン板状部51Aには巻回部32A、52Aの略半径方向外方へ延出する絶縁部材ガイド部31B、第2ボビンガイド部51Bがそれぞれ設けられているため、2次巻線42の引出し部42C、42F、1次巻線の引出し部52C、52Fを支持することができる。
【0051】
第1絶縁樹脂ボビン41の第1ボビンガイド部41B、第2絶縁樹脂ボビン51の第2ボビンガイド部51Bは、それぞれ第1ボビン板状部41Aの半径方向外方、第2ボビン板状部51Aの半径方向外方へ突出しているため、この部分には第1ボビン上方壁41F、第2ボビン上方壁51Fが設けられていないが、2次巻線42と第2、第3の1次巻線32、52との間の沿面距離を所定の値で確保することができる。
【0052】
ピン端子23、24には、ピン端子23、24の軸方向の全体に渡ってピン端子23、24の軸方向へ延出する溝23a、24aが形成され、溝23a、24aには第2の1次巻線32の導体端部32D、32Gが溝23a、24aの全体に渡って係合し、導体端部32D、32Gとピン端子23、24とは電気的に接続されているため、ピン端子23、24に導体端部32D、32Gを絡げずに済み、ピン端子23、24への導体端部32D、32Gの電気的な接続を自動化することができ、コスト低減を図ることができる。
【0053】
また、ピン端子23、24に導体端部32D、32Gを絡げる場合には、ピン端子23、24の軸方向において導体端部32D、32Gを絡げるための領域を確保する必要があるが、このような領域を確保せずに済む。このため、ピン端子23、24の軸方向においてコイル部品1の低背化を図ることができる。
【0054】
また、ピン端子23、24を径の太い導体端部や径の細い導体端部を有する様々な導線に対応させることができる。また、導線端部が太い径を有している場合には、ピン端子23、24を用いずに当該太い導線端部をそのまま外部電極として用いることが可能であるが、本実施の形態のように導線端部32D、32Gが細い場合には、強度が不足しているため導線端部32D、32Gをそのまま外部電極として用いることができない。このような場合であっても、ピン端子23、24の溝に細い導線端部32D、32Gを挿入させて用いることで、細い導線端部32D、32Gを補強して外部端子として用いることができる。また、筒状をなすピン端子23、24に導体端部32D、32Gを挿入する場合より挿入を容易とすることができる。また、絶縁被覆が施された導体端部32D、32Gを挿入し、後にピン端子23、24の溝23a、24aに半田33を供給して絶縁被覆を溝23a、24aの開口部から排出させることができる。また、半田33を溝23a、24a内において隙間なく充填させることができる。
【0055】
コイル部品の製造方法では、先ず、絶縁被覆された芯線からなる導線を空芯巻きすることにより、第1〜第3の1次巻線22、32、52と2次巻線42とを製造する。次に、絶縁樹脂端子台21の円形部21B上面に第1の1次巻線22の巻回部22Aを載置して絶縁樹脂端子台21に第1の1次巻線22を収納すると共に、貫通孔21f、21gに第1の1次巻線22の導線端部22D、22Gを挿入して貫通し、導線端部22D、22Gを外部端子たるピン端子とする。このようにして、図3に示されるように、絶縁樹脂端子台21と第1の1次巻線22とからなる絶縁樹脂端子台モジュール20を製造する。なお図3においては、説明の便宜上絶縁樹脂端子台モジュール20には第1磁心11が組合されて図示されている。
【0056】
次に、板状絶縁部材31の円盤形状部31Aの上面に第2の1次巻線32の巻回部32Aを載置すると共に、板状絶縁部材31の絶縁部材ガイド部31Bのガイド壁の切欠き31b、31cに、それぞれ第2の1次巻線32の導線端部32D、32Gに接続されている引出し部32C、32Fの部分を係合させて第2の1次巻線32の引出し部32C、32Fを支持させる。このようにして、図3に示されるように、板状絶縁部材31と第2の1次巻線32とからなる板状絶縁部材モジュール30を製造する。
【0057】
次に、第1絶縁樹脂ボビン41の第1ボビン板状部41Aの上面に2次巻線42の巻回部42Aを載置すると共に、第1絶縁樹脂ボビン41の第1ボビンガイド部41Bのガイド壁の両端の切欠き41a、41bに、それぞれ2次巻線42の導線端部42D、42Gに接続されている引出し部42C、42Fの部分を係合させて2次巻線42の引出し部42C、42Fを支持させる。このようにして、図3に示されるように、第1絶縁樹脂ボビン41と2次巻線42とからなる第1絶縁樹脂ボビンモジュール40を製造する。第1絶縁樹脂ボビンモジュール40は2次巻線モジュールに相当する。
【0058】
次に、第2絶縁樹脂ボビン51の第2ボビン板状部51Aの上面に第3の1次巻線52の巻回部52Aを載置すると共に、第2絶縁樹脂ボビン51の第2ボビンガイド部51Bのガイド壁の両端の切欠き51a、51bに、それぞれ第3の1次巻線52の導線端部52D、52Gに接続されている引出し部52C、52Fの部分を係合させて第3の1次巻線52の引出し部52C、52Fを支持させる。このようにして、図3に示されるように、第2絶縁樹脂ボビン51と第3の1次巻線52とからなる第2絶縁樹脂ボビンモジュール50を製造する。
【0059】
次に、図3に示されるように、第1の1次巻線22と第2の1次巻線32とが同軸的な位置関係となるように且つ絶縁部材ガイド部31Bが端子電極形成部21Fのガイド部載置面21E上に配置されるように板状絶縁部材モジュール30を絶縁樹脂端子台モジュール20上に積層すると共に、ピン端子23、24の溝23a、24aに板状絶縁部材モジュール30の第2の1次巻線32の導体端部32D、32Gを圧入することにより挿入する。次に、第2の1次巻線32と2次巻線42とが同軸的な位置関係となるように第1絶縁樹脂ボビンモジュール40を板状絶縁部材31上に積層すると共に、絶縁樹脂端子台モジュール20の突出縁部21Jの突出端面の貫通孔21h、21iに第1絶縁樹脂ボビンモジュール40の2次巻線42の導体端部42D、42Gを挿入し貫通し、導線端部42D、42Gを外部端子たるピン端子とする。
【0060】
次に、第3の1次巻線52と2次巻線42とが同軸的な位置関係となるように第2絶縁樹脂ボビンモジュール50を第1絶縁樹脂ボビンモジュール40上に積層すると共に、第1導線端部保護部21H、第2導線端部保護部21Iの貫通孔21d、21eに第2絶縁樹脂ボビンモジュール50の第3の1次巻線52の導体端部52D、52Gを挿入し貫通し、導線端部52D、52Gを外部端子たるピン端子とする。次に、絶縁樹脂カバー61を第2絶縁樹脂ボビンモジュール50上に積層することにより、絶縁樹脂端子台モジュール20と板状絶縁部材モジュール30と第1絶縁樹脂ボビンモジュール40と第2絶縁樹脂ボビンモジュール50と絶縁樹脂カバー61とから構成される巻回部ユニットを製造する。
【0061】
そして、第1磁心11の端縁突出部11Bの突出端面と第2磁心12の端縁突出部11Bの突出端面を当接させ、また、第1磁心11の中央突出部11Cと第2磁心12の中央突出部11Cとで端子台貫通孔21a、絶縁部材貫通孔31a、第1ボビン貫通孔41d、第2ボビン貫通孔51d、カバー貫通孔61aを貫通して第1磁心11の中央突出部11Cの突出端面と第2磁心12の中央突出部11Cの突出端面とを当接させる。このことにより第1磁心11と第2磁心12とで巻回部ユニットを挟持し、最後に第1磁心11、第2磁心12の周面をテープ1A(図1)で巻回し、ピン端子23、24の下端を半田槽に浸漬させることによりピン端子23、24の溝23a、24a内へ半田33を供給して第2の1次巻線32を構成する導線の絶縁被覆を溶融させて溝23a、24aから排出させ、ピン端子23、24の溝23a、24aの内面と第2の1次巻線32の導線端部32D、32Gの芯線32Hとの間に半田33のみを介在させてピン端子23、24の溝23a、24aの内面と第2の1次巻線32の導線端部32D、32Gの芯線32Hとを電気的に接続すると同時に、第1、第3の1次巻線22、52の導線端部22D、22G、52D、52Gの下端を半田槽に浸漬させて、導線端部22D、22G、52D、52Gの下端の絶縁被覆を剥離し、導線端部22D、22G、52D、52Gの下端に半田を付着させる。以上によりコイル部品1たる電源トランスが製造される。
【0062】
板状絶縁部材モジュール30を除き、絶縁樹脂端子台モジュール20、第1絶縁樹脂ボビンモジュール40、第2絶縁樹脂ボビンモジュール50においては、上方のみ第1、第3の1次巻線22、52、2次巻線42の巻回部22A、52A、42Aが露出していたが、上述のように各モジュールを積層することにより当該巻回部22A、52A、42Aが隠される。
【0063】
また、板状絶縁部材モジュール30の第2の1次巻線32と絶縁樹脂端子台モジュール20の第1の1次巻線22とは同じ入力側の巻線のため、沿面距離を気にする必要がない。このため、板状絶縁部材31には、第1絶縁樹脂ボビン41や第2絶縁樹脂ボビン51に設けられていたような第1ボビン下方壁41E、第1ボビン上方壁41F、第2ボビン下方壁51E、第2ボビン上方壁51F等の壁を設けずに済む。
【0064】
導体からなるピン端子23、24であってその軸方向の全体に渡って延出する溝23a、24aが形成されたピン端子23、24が植設された絶縁樹脂端子台21の溝23a、24aに導体端部32D、32Gを挿通させる工程と、ピン端子23、24の下端部を溶融半田に浸漬させて溝23a、24a内へ半田33を供給することにより溝23a、24a内の導体端部32D、32Gの絶縁被覆を溶融させて除去すると共にピン端子23、24と芯線32Hとを電気的に接続する工程とを有するため、導体端部32D、32Gの芯線32Hとピン端子23、24とを確実に電気的に接続することができる。また、開口部から絶縁被覆を排出することができる。
【0065】
本発明のコイル部品、コイル部品の製造方法は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えばピン端子23、24の下端を半田槽に浸漬させることによりピン端子23、24の溝23a、24a内へ半田33を供給して絶縁被覆を溶かして溝23a、24aから排出させ、ピン端子23、24の溝23a、24aの内面と第2の1次巻線32の導線端部32D、32Gの芯線32Hとの間に半田33のみを介在させてピン端子23、24の溝23a、24aの内面と第2の1次巻線32の導線端部32D、32Gの芯線32Hとを電気的に接続したが、電気的な接続方法はこの方法に限定されない。
【0066】
例えば、図7に示されるように、ピン端子123の周面に対して、かしめのための冶具を当接させてかしめることによりかしめ部133を設ける。このことにより第2の1次巻線32の導線端部32Dがピン端子123の溝123aの内面によってかしめられて、ピン端子123の溝123aの内面と第2の1次巻線32の導線端部32Dの芯線32Hとが電気的に接続される。このようにかしめ部133を有するコイル部品としてもよい。
【0067】
導体からなるピン端子123であってその軸方向の全体に渡って延出する溝123aが形成されたピン端子123が植設された絶縁樹脂端子台21の溝123aに、導体からなる芯線32Hと芯線32Hの周面を被覆する絶縁被覆とを有する導線の導線端部32Dを挿通させる工程と、ピン端子123をかしめることによりピン端子123の一部を溝123a内の導線端部32Dに対してかしめてピン端子123と導線端部32Dの芯線32Hとを電気的に接続する工程とを有するため、導線端部32Dの芯線32Hとピン端子123とを確実に電気的に接続することができる。また、かしめによって導線端部32Dの一部を溝123aの開口部へ逃がすことができ、かしめられた導線端部32D部の行き場がなくなることによりピン端子123が変形するといった不具合を防止することができる。
【0068】
又は、溝223a(図8)の開口部にピン端子223の周面から突出する突出部233を設け、突出部233を溝223a内へ折曲げて突出部233を溝223a内の第2の1次巻線32の導線端部32Dに当接させることにより導線端部32Dを溝223a内に仮固定し、図8に示されるように、突出部233と導線端部32Dとを溶接することにより突出部233と導線端部32Dの芯線32Hとを電気的に接続するようにしてもよい。このように突出部233を有するコイル部品としてもよい。
【0069】
導体からなるピン端子であってその軸方向の全体に渡って延出する溝223aが形成され溝223aの開口部にピン端子の周面から突出する突出部233が設けられたピン端子が植設された絶縁樹脂端子台21の溝223aに導線端部32Dを挿通させる工程と、突出部233を溝223a内へ折曲げて突出部233を溝223a内の導線端部32Dに当接させることにより導線端部32Dを溝223a内に仮固定する工程と、突出部233と導線端部32Dとを溶接することにより突出部233と芯線32Hとを電気的に接続する工程とを有するため、導線端部32Dの芯線32Hとピン端子223とを確実に電気的に接続することができる。また、ピン端子223の最外形寸法を変えることなく開口部に突出部233と導線端部32Dとからなる溶接玉を形成できる。
【0070】
又は、溝の内面を規定するピン端子の部分が、溶融して導線の芯線32Hと電気的に接続される溶融部を有する構成としてもよい。このように溶融部を有するコイル部品としてもよい。
【0071】
またピン端子を、図9、図10に示されるように、ピン端子323、324の溝323a、324aが絶縁樹脂端子台321の端面に開口するように絶縁樹脂端子台321に設けてもよい。このようにすることにより溝323a、324aの開口部から第2の1次巻線32を溝323a、324a内へ嵌め込むことが可能となる。
【0072】
また、コイル部品の製造方法では、最後に第1磁心11、第2磁心12の周面をテープ1Aで巻回することによりコイル部品1たる電源トランスが製造されたが、テープ1Aを用いることに限定されない。例えば、第1磁心11の端縁突出部11Bの突出端面と第2磁心12の端縁突出部11Bの突出端面を接着剤によって接着し、第1磁心11の中央突出部11Cの突出端面と第2磁心12の中央突出部11Cの突出端面とを接着剤によって接着してもよい。
【0073】
また、ピン端子23、24には溝23a、24aが予め形成されていたが、これに限定されない。例えば、金属棒に研削、切削、レーザー加工、エッチング等のあらゆる他の手段で溝23a、24aを後から形成しても良いし、金属棒を金型で打ち抜いて溝23a、24aを形成しても良い。また、板状の金属板を金型で打ち抜いて丸めることにより、長手方向に延出する溝23a、24aが形成された略筒状としても良い。
【0074】
また、ピン端子23、24の溝23a、24aに板状絶縁部材モジュール30の第2の1次巻線32の導体端部32D、32Gを圧入することにより挿入したが、これに限定されず、例えばインサート成形を行ってもよい。
【0075】
また、本実施の形態では、第1〜第3の1次巻線22、32、52、2次巻線42を空芯巻きすることにより製造したが、絶縁樹脂端子台21端子台開口壁21Cや、第1、第2絶縁樹脂ボビン41、51の第1、第2ボビン開口上壁41D、51Dに直接巻回して製造してもよい。
【0076】
また、第1磁心11、第2磁心12は、Mn−Znからなる導電性フェライトコアにより構成されたが、これに限定されない。例えば、金属圧粉磁心などの導電性コアや、Ni系フェライトコアにより構成されてもよい。
【0077】
また、第3の1次巻線52の一端部52B、他端部52Eの一部であって第1導線端部保護部21H、第2導線端部保護部21Iにより覆われていない部分については、樹脂コーティングしてもよい。
【0078】
また、第1導線端部保護部21H、第2導線端部保護部21Iの貫通孔21e、21dには、それぞれ第3の1次巻線52の導体端部52G、52Dが貫通していたが、このような構成に限定されず、例えば、第1、第2の1次巻線22、32、2次巻線42の導体端部22G、32G、42G、22D、32D、42Dが貫通する部分に第1導線端部保護部21H、第2導線端部保護部21Iのような突出する保護部が設けられてもよい。
【0079】
また、ピン端子23の溝23aの内面と溝23a内の芯線32Hとの間には半田33が介在していたが、半田33に限定されず、導電体であればよい。
【0080】
また、ピン端子23、24の下端を半田槽に浸漬させると同時に、第1、第3の1次巻線22、52の導線端部22D、22G、52D、52Gの下端を半田槽に浸漬させたが、ピン端子23、24の下端を半田槽に浸漬させることと、第1、第3の1次巻線22、52の導線端部22D、22G、52D、52Gの下端を半田槽に浸漬させることとを同時に行わなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明のコイル部品、コイル部品の製造方法は、特に電源装置などに用いられるトランスやチョークコイルなどのインダクタンス部品等の分野において特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1(a)】本発明の実施の形態によるコイル部品を示す上方斜視図。
【図1(b)】本発明の実施の形態によるコイル部品を示す下方斜視図。
【図2】本発明の実施の形態によるコイル部品を示す分解斜視図。
【図3】本発明の実施の形態によるコイル部品を示す分解斜視図。
【図4】本発明の実施の形態によるコイル部品のピン端子の部分を示す要部斜視図。
【図5】本発明の実施の形態によるコイル部品のピン端子の部分を示す要部断面図。
【図6】本発明の実施の形態によるコイル部品を示す回路図。
【図7】本発明の実施の形態によるコイル部品の変形例によるピン端子の部分を示す断面斜視図。
【図8】本発明の実施の形態によるコイル部品の変形例によるピン端子の部分を示す断面斜視図。
【図9】本発明の実施の形態によるコイル部品の変形例による絶縁樹脂端子台を示す斜視図。
【図10】本発明の実施の形態によるコイル部品の変形例によるピン端子の部分を示す要部斜視図。
【符号の説明】
【0083】
1 コイル部品
11 第1磁心
12 第2磁心
21 絶縁樹脂端子台
21H 第1導線端部保護部
21I 第2導線端部保護部
22 第1の1次巻線
22A、32A、42A、52A 巻回部
22B、32B、42B、52B 一端部
22E、32E、42E、52E 他端部
22C、32C、42C、52C、22F、32F、42F、52F 引出し部
22D、32D、42D、52D、22G、32G、42G、52G 導体端部
23、24 ピン端子
23a、24a 溝
32 第2の1次巻線
32H 芯線
33 半田
40 第1絶縁樹脂ボビンモジュール
41A 第1ボビン板状部
41B 第1ボビンガイド部
41E 第1ボビン下方壁
41F 第1ボビン上方壁
42 2次巻線
50 第2絶縁樹脂ボビンモジュール
51B 第2ボビンガイド部
51E 第2ボビン下方壁
51F 第2ボビン上方壁
52 第3の1次巻線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体からなるピン端子が植設された絶縁樹脂端子台と、
導線が巻回されてなり一端部又は他端部が該絶縁樹脂端子台に固定される巻線とを備え、
該ピン端子には、該ピン端子の軸方向の全体に渡って該ピン端子の軸方向へ延出する溝が形成され、該溝には該巻線の一端部又は他端部が該溝の全体に渡って係合し、該導線と該ピン端子とは電気的に接続されていることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
該導線は導体からなる芯線と該芯線の周面を被覆する絶縁被覆とを有し、
該ピン端子の該溝の内面と該溝内の芯線との間には絶縁被覆が存在せずに導電体が介在していることを特徴とする請求項1記載のコイル部品。
【請求項3】
該導線は導体からなる芯線と該芯線の周面を被覆する絶縁被覆とを有し、
該ピン端子は、該ピン端子がかしめられることにより該導線に対してかしめるかしめ部を有し、該かしめ部において該ピン端子と該導線とは電気的に接続されていることを特徴とする請求項1記載のコイル部品。
【請求項4】
該溝の内面を規定する該ピン端子の部分は、溶融して該導線と電気的に接続される溶融部を有することを特徴とする請求項1記載のコイル部品。
【請求項5】
導体からなるピン端子であってその軸方向の全体に渡って延出する溝が形成された該ピン端子が植設された絶縁樹脂端子台の該溝に、導体からなる芯線と該芯線の周面を被覆する絶縁被覆とを有する導線を挿通させる工程と、
該ピン端子の一端部を溶融半田に浸漬させて該溝内へ半田を供給することにより該溝内の該導線の該絶縁被覆を溶融させて除去すると共に該ピン端子と該芯線とを電気的に接続する工程とを有することを特徴とするコイル部品の製造方法。
【請求項6】
導体からなるピン端子であってその軸方向の全体に渡って延出する溝が形成された該ピン端子が植設された絶縁樹脂端子台の該溝に、導体からなる芯線と該芯線の周面を被覆する絶縁被覆とを有する導線を挿通させる工程と、
該ピン端子をかしめることにより該ピン端子の一部を該溝内の該導線に対してかしめて該ピン端子と該芯線とを電気的に接続する工程とを有することを特徴とするコイル部品の製造方法。
【請求項7】
導体からなるピン端子であってその軸方向の全体に渡って延出する溝が形成され該溝の開口部に該ピン端子の周面から突出する突出部が設けられた該ピン端子が植設された絶縁樹脂端子台の該溝に、導体からなる芯線と該芯線の周面を被覆する絶縁被覆とを有する導線を挿通させる工程と、
該突出部を該溝内へ折曲げて該突出部を該溝内の該導線に当接させることにより該導線を該溝内に仮固定する工程と、
該突出部と該導線とを溶接することにより該突出部と該芯線とを電気的に接続する工程とを有することを特徴とするコイル部品の製造方法。

【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−252791(P2009−252791A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95066(P2008−95066)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】