コイル部品
【課題】樹脂コーティングが施されても断線等の発生が抑制されるコイル部品の提供。
【解決手段】第一導線8及び第二導線9が巻回される巻芯部3と、巻芯部3の軸方向両端に接続され第一導線8及び第二導線9の両端がそれぞれ継線される第一電極8及び第二電極9が設けられる第一鍔部4及び第二鍔部5とを有するドラムコア2において、第一導線8及び第二導線9が継線される第一鍔部4及び第二鍔部5の上面4A及び上面5Aと、巻芯部3のコイルが巻回される上面31とを面一に形成したコイル部品1を提供する。
【解決手段】第一導線8及び第二導線9が巻回される巻芯部3と、巻芯部3の軸方向両端に接続され第一導線8及び第二導線9の両端がそれぞれ継線される第一電極8及び第二電極9が設けられる第一鍔部4及び第二鍔部5とを有するドラムコア2において、第一導線8及び第二導線9が継線される第一鍔部4及び第二鍔部5の上面4A及び上面5Aと、巻芯部3のコイルが巻回される上面31とを面一に形成したコイル部品1を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル部品に関し、特にドラムコアを備えたコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からコイルが形成される巻芯部と巻芯部の両端に設けられてコイルの両端が継線される電極を備えた一対の鍔部とから構成されるコイル部品が公知である。このコイル部品では、実装時におけるコイル及び継線箇所を湿気等から保護するため、モールドや吹き付け・塗布等により樹脂コーティングが行われる場合がある。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この樹脂コーティングは、実装時のコイル保護、若しくは継線部分保護を目的として行われるため、コイル部品の実装基板に対して反実装基板となる部分が重点的に保護される。またドラムコアは、一般に鍔部に対して巻芯部が細くなるように構成されているが、この構成では、鍔部と巻芯部との間に段差が形成される。また巻芯部と鍔部との間には、コイルから継線箇所へと引き出される導線が介在するため、上述の段差上方に導線が配される構成を採る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−77730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂コーティングに用いられる樹脂としてはアクリル樹脂等が例示されるが、アクリル樹脂の熱膨張係数はドラムコアを形成するフェライト等より大きいため、上述した段差部分が応力集中箇所となる弱点になる。この弱点を備えたコイル部品が加熱・冷却のサイクルを繰り返し受けることにより、段差部分の樹脂に、樹脂の膨張係数とドラムコアの膨張係数の差から起因するクラックが入る場合があった。段差部分に位置する樹脂内には導線がテンションを掛けられた状態で埋設されているため、樹脂にクラックが入ってクラックが拡開することにより、コイルから継線箇所へと引き出された導線が切断される場合があった。よって本発明は、樹脂コーティングが施されても断線等の発生が抑制されるコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、巻芯部と、巻芯部の軸方向一端側及び他端側にそれぞれ接続される第一鍔部及び第二鍔部とを有するドラムコアと、巻芯部に巻回されてコイルを形成する導線と、第一鍔部及び第二鍔部にそれぞれ設けられ、導線の一端及び他端がそれぞれ継線される第一電極及び第二電極と、を有し、第一鍔部は、導線の一端が継線される第一接続面と、実装基板上に配置される第一実装面とを有し、第二鍔部は、導線の他端が継線される第二接続面と、実装基板上に配置される第二実装面とを有し、第一電極は、第一接続面に配置されて導線の一端が継線される第一継線部と、第一実装面に配置されて実装基板に接続されると共に第一継線部と一連の第一実装部とを有し、第二電極は、第二接続面に配置されて導線の他端が継線される第二継線部と、第二実装面に配置されて実装基板に接続されると共に第二継線部と一連の第二実装部とを有し、巻芯部は、第一接続面と第二接続面とのそれぞれと面一な平滑面を有するコイル部品を提供する。
【0007】
この様な構成によると、ドラムコアにおいて、反実装基板側となる面に平滑面と交差する面である段差部分が形成されることがない。よって巻芯部と鍔部との間において、第一、第二接続面と平滑面とに段差が形成されないため、この面に樹脂を施工したとしても構造的に弱点部分が形成され難く、故に樹脂にクラックが入ることが抑制される。
【0008】
上記構成のコイル部品において、第一継線部は、導線の一端が継線される第一継線面を有すると共に、第一継線面が第一接続面と面一になるように第一鍔部に埋設され、第二継線部は、導線の他端が継線される第二継線面を有すると共に、第二継線面が第二接続面と面一になるように第二鍔部に埋設されていることが好ましい。
【0009】
この様な構成によると、第一、第二接続面において、第一、第二電極と、平滑面及び第一、第二接続面との間の段差が形成されることを抑制することができる。特に第一、第二電極として、厚肉の金属板を用いた場合には、その厚さのため段差ができやすいが、この様な構成により、段差の形成を抑制することができる。
【0010】
また平滑面と第一接続面と第二接続面とを覆う樹脂コーティングを更に有し、樹脂コーティングは、コイルと、導線の第一電極との継線箇所と、導線の第二電極との継線箇所とを覆っていることが好ましい。
【0011】
この様な構成によると、予め樹脂コーティングを施すため、実装基板に装着した後にコーティングを施すより、施工不良を低減することができる。また樹脂コーティングされた部分は滑らかになるため、この部分を実装時の吸着面とすることができる。
【0012】
またドラムコアは、平滑面と直交する矢視で四角形状を成していることが好ましい。この様な構成によると、ドラムコアにおいて、平滑面、第一接続面、第二接続面の周縁に接続される側面部分に段差が形成されることが抑制される。よって樹脂が側面部分まで施されたとしても、段差が存在しないため、クラックが側面から発生することが抑制される。
【0013】
また第一鍔部と第二鍔部とに跨ると共に平滑面を覆って配置される板状コアを更に備えることが好ましい。
【0014】
この様な構成によると、閉磁路を形成することができ、コイル部品の特性を増すことができる。またコイル及び継線部分が覆われるように板状コアが配置されるため、コイル及び継線部分が外因から保護される。
【発明の効果】
【0015】
本発明のコイル部品によれば、樹脂コーティングが施されても断線等の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係るコイル部品の斜視図。
【図2】本発明の実施の形態に係るコイル部品の側面図。
【図3】本発明の実施の形態に係るコイル部品の鍔部付近の第一の変形例に係る部分断面図。
【図4】本発明の実施の形態に係るコイル部品の第二の変形例に係る平面図。
【図5】本発明の実施の形態に係るコイル部品の第三の変形例に係る側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係るコイル部品について、図1及び図2に基づき説明する。図1に示されるコイル部品1は、コモンモードフィルタであり、ドラムコア2と、第一電極6、第二電極7と、第一導線8、第二導線9と、コーティング10とを主に備え、第一導線8、第二導線9がドラムコアに巻回されてコイルを形成して構成されており、図2に示されるように実装面S上に載置されている。以後のコイル部品1において、実装面Sからコイル部品1に向かう方向を上方と定義し、反対側を下方と定義して説明する。
【0018】
ドラムコア2はフェライト等の磁性粉体が金型により成型された後に焼成されて製造されており、図1、図2に示されるように、巻芯部3と、巻芯部3の軸方向一端側及び他端側にそれぞれ接続される第一鍔部4及び第二鍔部5とから主に構成されている。
【0019】
巻芯部3は、軸方向と直交する断面が長方形に構成されており、長方形の長辺が実装基板上の実装面S(図2)と平行になるように配置されている。また長方形の長辺を構成する一面であって、実装面Sと対向する面を下面33、反実装面S側となる面を平滑面である上面31と定義する。
【0020】
第一鍔部4と第二鍔部5とは、それぞれ同形状を採るため、代表として第一鍔部4について説明する。第一鍔部4は、略直方体に成型され、直方体の一面で巻芯部3の一端に接続されると共に、巻芯部3の上面31と面一に形成された接続面である上面4Aと、上面4A及び巻芯部3の軸心と直交する端面4Bと、上面4Aと平行に形成された下面4Cとを含んで構成されている。第二鍔部5も第一鍔部4と同様に、上面5Aと端面5Bと下面5Cとを含んで構成されている。第一鍔部4の上面4Aと、第二鍔部5の上面5Aと、巻芯部3の上面31からドラムコア2の上面2Aが定義される。
【0021】
また第一鍔部4及び第二鍔部5は、上下方向の距離(上面4Aから下面4Cまでの距離)が巻芯部3における上下方向の距離(上面31から下面33までの距離)より大きくなるように構成されている。第一鍔部4及び第二鍔部5における上面4A及び上面5Aと、巻芯部3における上面31とは面一であるため、巻芯部3の下面33は、第一鍔部4及び第二鍔部5における下面4C及び下面5Cより上方に位置する構成を採る。
【0022】
第一電極6と第二電極7とはそれぞれ同形状を採るため、代表として第一電極6について説明する。第一電極6は図1に示されるように、同一形状を成す一対の電極61、62を含んで構成されており、それぞれ銀ペーストをドラムコア2の表面に塗布して焼き付けた後に、ニッケル及びスズのメッキを施すことにより形成されている。メッキによる形成のため、図2に示されるように第一電極6の後述の第一継線部61A、62A上面である継線面と第一鍔部4の上面4Aとはなだらかに繋がり、段差はほとんど形成されない。
【0023】
一対の電極61、62は、それぞれ第一鍔部4において上面4Aに位置する第一継線部61A、62Aと、下面4Cに位置する第一実装部61C、62Cと、端面4Bに位置して第一継線部61A、62Aと第一実装部61C、62Cとをそれぞれ連結する第一連結部61B、62Bとから構成されている。
【0024】
第二電極7も第一電極6と同様に一対の電極71、72を有し、一対の電極71、72はそれぞれ第二継線部71A、72Aと、第一連結部71B、72Bと、第二実装部71C、72Cとから構成されている。
【0025】
第一導線8及び第二導線9は、芯線に絶縁被覆が施された被覆導線であり、図1に示されるように、第一導線8の両端が電極61及び電極71にそれぞれ継線されて電気的に接続され、第二導線9の両端が電極62及び電極72にそれぞれ継線されて電気的に接続され、第一導線8と第二導線9とが共に巻芯部3に巻回されてコイルを形成している。
【0026】
コーティング10は、アクリル等の樹脂製であり、ドラムコア2に第一電極6、第二電極7が設けられ第一導線8、第二導線9がコイルを形成し、第一電極6、第二電極7に継線された後に、図2に示されるように、上面31、上面4A、上面5Aを覆うように塗布される。上面31にはコイルが形成され、上面4A、上面5Aには継線箇所が形成されるが、いずれもコーティング10が塗布されているため、外因から保護されている。またコーティング10の上面は滑らかに構成されるため、コーティング10上面を吸着して実装面S上にコイル部品1を配置することができる。
【0027】
一般にコイル部品において、鍔部の上面と巻芯部の上面との間に段差がある場合、この段差部分に樹脂が留まる。また巻芯部から鍔部に架け渡される導線は、この段差部分で宙に浮くため、段差部分に溜まった樹脂内に埋没する構成を採る。この状態で樹脂とコアとの熱膨張係数の違いから、弱点部分となる段差部分の樹脂にクラックが入った場合には、樹脂内に埋没した導線が、鍔部と巻芯部との間で切断するおそれがある。しかし、本実施の形態のコイル部品1では、第一鍔部4及び第二鍔部5の上面4A及び上面5Aと、巻芯部3の上面31との間は、段差部分が無く面一に構成されている。よってコーティング10において、第一鍔部4及び第二鍔部5と巻芯部3との間に応力集中箇所である弱点が形成されることが抑制される。故にドラムコア2に対してコーティング10が膨張したとしても、第一鍔部4及び第二鍔部5と巻芯部3との間にクラックが入ることは抑制される。
【0028】
コーティング10への第一鍔部4及び第二鍔部5と巻芯部3との間におけるクラックの抑制により、巻芯部3から第一鍔部4及び第二鍔部5に延出された第一導線8及び第二導線9の断線が抑制される。
【0029】
本発明のコイル部品は上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲で種々の改良や変形が可能である。例えば図3に示されるように、厚さのある金属端子を第一電極106、第二電極に用いてコイル部品101を構成してもよい。
【0030】
第一電極106が金属端子から構成される場合、第一鍔部104において上面104Aと、第一電極106の継線部161Aとの間に段差が形成されるおそれがある。よって上面104Aに継線部161Aの厚さと略等しく継線部161Aを収容可能な凹部104aを形成し、この凹部104a内に継線部161Aを埋設して第一電極106を第一鍔部104に装着する。
【0031】
この様な構成を採ることにより、上面104Aと、継線部161Aの継線面となる上面とが面一となるため、第一電極106と、上面104Aとの間に段差が形成されることを抑制することができる。第二電極と第二鍔部とも同様に構成することにより、第一電極106及び第二電極を含んでドラムコア102の上面102Aを面一に構成することができ、樹脂コーティングを施したとしても、クラックの発生が抑制される。
【0032】
また図4に示されるように、コイル部品201を平面矢視(上面202Aと直交する方向からの矢視)した状態で、ドラムコア202が略四角形を成すように構成してもよい。具体的には、巻芯部203の幅(軸方向と平面矢視の方向とのそれぞれに直交する方向の距離)を第一鍔部204及び第二鍔部205の幅と同じに構成する。
【0033】
この様な構成を採ることにより、ドラムコア202において、上面202Aの周縁に接続される巻芯部203、第一鍔部204、第二鍔部205の側面部分に段差が形成されることが抑制される。樹脂をコーティングした際には、側面部分まで樹脂が回ることがあるが、この様な構成を採ることにより、側面部分に段差が存在しないため、樹脂コーティングにクラックがドラムコア202の側面から発生することが抑制される。
【0034】
また図5に示されるように、第一鍔部304と第二鍔部305とに跨って、巻芯部303の上方に板状コア311が配置される構成を採ってもよい。この板状コア311には、第一鍔部304に当接する第一足部311Aと第二鍔部305に当接する第二足部311Bを有しており、第一足部311Aと第二足部311Bとは板状部分から突出するように構成されているため、板状コア311が巻芯部303に形成されたコイルに当接することは抑制されている。板状コア311は、第一足部311Aが第一継線部361Aと第一継線部362Aとの間の上面304Aに当接し、第二足部311Bが第二継線部371Aと第二継線部372Aとの間の上面305Aに当接して、接着剤によりドラムコア302に接着される。
【0035】
この様な構成を採ることにより、ドラムコア302と板状コア311とから閉磁路を形成することができ、コイル部品301の特性を増すことができる。またコイル及び継線部分が覆われるように板状コア311が配置されるため、コイル及び継線部分が外因から保護される。
【符号の説明】
【0036】
1・・コイル部品 2・・ドラムコア 2A・・上面 3・・巻芯部 4・・第一鍔部
4A・・上面 4B・・端面 4C・・下面 5・・第二鍔部 5A・・上面
5B・・端面 5C・・下面 6・・第一電極 7・・第二電極 8・・第一導線
9・・第二導線 10・・コーティング 31・・上面 33・・下面
61、62・・電極 61A、62A・・第一継線部 61B、62B・・第一連結部
61C、62C・・第一実装部 71、72・・電極 71A、72A・・第二継線部
71B、72B・・第一連結部 71C、72C・・第二実装部
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル部品に関し、特にドラムコアを備えたコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からコイルが形成される巻芯部と巻芯部の両端に設けられてコイルの両端が継線される電極を備えた一対の鍔部とから構成されるコイル部品が公知である。このコイル部品では、実装時におけるコイル及び継線箇所を湿気等から保護するため、モールドや吹き付け・塗布等により樹脂コーティングが行われる場合がある。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この樹脂コーティングは、実装時のコイル保護、若しくは継線部分保護を目的として行われるため、コイル部品の実装基板に対して反実装基板となる部分が重点的に保護される。またドラムコアは、一般に鍔部に対して巻芯部が細くなるように構成されているが、この構成では、鍔部と巻芯部との間に段差が形成される。また巻芯部と鍔部との間には、コイルから継線箇所へと引き出される導線が介在するため、上述の段差上方に導線が配される構成を採る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−77730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂コーティングに用いられる樹脂としてはアクリル樹脂等が例示されるが、アクリル樹脂の熱膨張係数はドラムコアを形成するフェライト等より大きいため、上述した段差部分が応力集中箇所となる弱点になる。この弱点を備えたコイル部品が加熱・冷却のサイクルを繰り返し受けることにより、段差部分の樹脂に、樹脂の膨張係数とドラムコアの膨張係数の差から起因するクラックが入る場合があった。段差部分に位置する樹脂内には導線がテンションを掛けられた状態で埋設されているため、樹脂にクラックが入ってクラックが拡開することにより、コイルから継線箇所へと引き出された導線が切断される場合があった。よって本発明は、樹脂コーティングが施されても断線等の発生が抑制されるコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、巻芯部と、巻芯部の軸方向一端側及び他端側にそれぞれ接続される第一鍔部及び第二鍔部とを有するドラムコアと、巻芯部に巻回されてコイルを形成する導線と、第一鍔部及び第二鍔部にそれぞれ設けられ、導線の一端及び他端がそれぞれ継線される第一電極及び第二電極と、を有し、第一鍔部は、導線の一端が継線される第一接続面と、実装基板上に配置される第一実装面とを有し、第二鍔部は、導線の他端が継線される第二接続面と、実装基板上に配置される第二実装面とを有し、第一電極は、第一接続面に配置されて導線の一端が継線される第一継線部と、第一実装面に配置されて実装基板に接続されると共に第一継線部と一連の第一実装部とを有し、第二電極は、第二接続面に配置されて導線の他端が継線される第二継線部と、第二実装面に配置されて実装基板に接続されると共に第二継線部と一連の第二実装部とを有し、巻芯部は、第一接続面と第二接続面とのそれぞれと面一な平滑面を有するコイル部品を提供する。
【0007】
この様な構成によると、ドラムコアにおいて、反実装基板側となる面に平滑面と交差する面である段差部分が形成されることがない。よって巻芯部と鍔部との間において、第一、第二接続面と平滑面とに段差が形成されないため、この面に樹脂を施工したとしても構造的に弱点部分が形成され難く、故に樹脂にクラックが入ることが抑制される。
【0008】
上記構成のコイル部品において、第一継線部は、導線の一端が継線される第一継線面を有すると共に、第一継線面が第一接続面と面一になるように第一鍔部に埋設され、第二継線部は、導線の他端が継線される第二継線面を有すると共に、第二継線面が第二接続面と面一になるように第二鍔部に埋設されていることが好ましい。
【0009】
この様な構成によると、第一、第二接続面において、第一、第二電極と、平滑面及び第一、第二接続面との間の段差が形成されることを抑制することができる。特に第一、第二電極として、厚肉の金属板を用いた場合には、その厚さのため段差ができやすいが、この様な構成により、段差の形成を抑制することができる。
【0010】
また平滑面と第一接続面と第二接続面とを覆う樹脂コーティングを更に有し、樹脂コーティングは、コイルと、導線の第一電極との継線箇所と、導線の第二電極との継線箇所とを覆っていることが好ましい。
【0011】
この様な構成によると、予め樹脂コーティングを施すため、実装基板に装着した後にコーティングを施すより、施工不良を低減することができる。また樹脂コーティングされた部分は滑らかになるため、この部分を実装時の吸着面とすることができる。
【0012】
またドラムコアは、平滑面と直交する矢視で四角形状を成していることが好ましい。この様な構成によると、ドラムコアにおいて、平滑面、第一接続面、第二接続面の周縁に接続される側面部分に段差が形成されることが抑制される。よって樹脂が側面部分まで施されたとしても、段差が存在しないため、クラックが側面から発生することが抑制される。
【0013】
また第一鍔部と第二鍔部とに跨ると共に平滑面を覆って配置される板状コアを更に備えることが好ましい。
【0014】
この様な構成によると、閉磁路を形成することができ、コイル部品の特性を増すことができる。またコイル及び継線部分が覆われるように板状コアが配置されるため、コイル及び継線部分が外因から保護される。
【発明の効果】
【0015】
本発明のコイル部品によれば、樹脂コーティングが施されても断線等の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係るコイル部品の斜視図。
【図2】本発明の実施の形態に係るコイル部品の側面図。
【図3】本発明の実施の形態に係るコイル部品の鍔部付近の第一の変形例に係る部分断面図。
【図4】本発明の実施の形態に係るコイル部品の第二の変形例に係る平面図。
【図5】本発明の実施の形態に係るコイル部品の第三の変形例に係る側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係るコイル部品について、図1及び図2に基づき説明する。図1に示されるコイル部品1は、コモンモードフィルタであり、ドラムコア2と、第一電極6、第二電極7と、第一導線8、第二導線9と、コーティング10とを主に備え、第一導線8、第二導線9がドラムコアに巻回されてコイルを形成して構成されており、図2に示されるように実装面S上に載置されている。以後のコイル部品1において、実装面Sからコイル部品1に向かう方向を上方と定義し、反対側を下方と定義して説明する。
【0018】
ドラムコア2はフェライト等の磁性粉体が金型により成型された後に焼成されて製造されており、図1、図2に示されるように、巻芯部3と、巻芯部3の軸方向一端側及び他端側にそれぞれ接続される第一鍔部4及び第二鍔部5とから主に構成されている。
【0019】
巻芯部3は、軸方向と直交する断面が長方形に構成されており、長方形の長辺が実装基板上の実装面S(図2)と平行になるように配置されている。また長方形の長辺を構成する一面であって、実装面Sと対向する面を下面33、反実装面S側となる面を平滑面である上面31と定義する。
【0020】
第一鍔部4と第二鍔部5とは、それぞれ同形状を採るため、代表として第一鍔部4について説明する。第一鍔部4は、略直方体に成型され、直方体の一面で巻芯部3の一端に接続されると共に、巻芯部3の上面31と面一に形成された接続面である上面4Aと、上面4A及び巻芯部3の軸心と直交する端面4Bと、上面4Aと平行に形成された下面4Cとを含んで構成されている。第二鍔部5も第一鍔部4と同様に、上面5Aと端面5Bと下面5Cとを含んで構成されている。第一鍔部4の上面4Aと、第二鍔部5の上面5Aと、巻芯部3の上面31からドラムコア2の上面2Aが定義される。
【0021】
また第一鍔部4及び第二鍔部5は、上下方向の距離(上面4Aから下面4Cまでの距離)が巻芯部3における上下方向の距離(上面31から下面33までの距離)より大きくなるように構成されている。第一鍔部4及び第二鍔部5における上面4A及び上面5Aと、巻芯部3における上面31とは面一であるため、巻芯部3の下面33は、第一鍔部4及び第二鍔部5における下面4C及び下面5Cより上方に位置する構成を採る。
【0022】
第一電極6と第二電極7とはそれぞれ同形状を採るため、代表として第一電極6について説明する。第一電極6は図1に示されるように、同一形状を成す一対の電極61、62を含んで構成されており、それぞれ銀ペーストをドラムコア2の表面に塗布して焼き付けた後に、ニッケル及びスズのメッキを施すことにより形成されている。メッキによる形成のため、図2に示されるように第一電極6の後述の第一継線部61A、62A上面である継線面と第一鍔部4の上面4Aとはなだらかに繋がり、段差はほとんど形成されない。
【0023】
一対の電極61、62は、それぞれ第一鍔部4において上面4Aに位置する第一継線部61A、62Aと、下面4Cに位置する第一実装部61C、62Cと、端面4Bに位置して第一継線部61A、62Aと第一実装部61C、62Cとをそれぞれ連結する第一連結部61B、62Bとから構成されている。
【0024】
第二電極7も第一電極6と同様に一対の電極71、72を有し、一対の電極71、72はそれぞれ第二継線部71A、72Aと、第一連結部71B、72Bと、第二実装部71C、72Cとから構成されている。
【0025】
第一導線8及び第二導線9は、芯線に絶縁被覆が施された被覆導線であり、図1に示されるように、第一導線8の両端が電極61及び電極71にそれぞれ継線されて電気的に接続され、第二導線9の両端が電極62及び電極72にそれぞれ継線されて電気的に接続され、第一導線8と第二導線9とが共に巻芯部3に巻回されてコイルを形成している。
【0026】
コーティング10は、アクリル等の樹脂製であり、ドラムコア2に第一電極6、第二電極7が設けられ第一導線8、第二導線9がコイルを形成し、第一電極6、第二電極7に継線された後に、図2に示されるように、上面31、上面4A、上面5Aを覆うように塗布される。上面31にはコイルが形成され、上面4A、上面5Aには継線箇所が形成されるが、いずれもコーティング10が塗布されているため、外因から保護されている。またコーティング10の上面は滑らかに構成されるため、コーティング10上面を吸着して実装面S上にコイル部品1を配置することができる。
【0027】
一般にコイル部品において、鍔部の上面と巻芯部の上面との間に段差がある場合、この段差部分に樹脂が留まる。また巻芯部から鍔部に架け渡される導線は、この段差部分で宙に浮くため、段差部分に溜まった樹脂内に埋没する構成を採る。この状態で樹脂とコアとの熱膨張係数の違いから、弱点部分となる段差部分の樹脂にクラックが入った場合には、樹脂内に埋没した導線が、鍔部と巻芯部との間で切断するおそれがある。しかし、本実施の形態のコイル部品1では、第一鍔部4及び第二鍔部5の上面4A及び上面5Aと、巻芯部3の上面31との間は、段差部分が無く面一に構成されている。よってコーティング10において、第一鍔部4及び第二鍔部5と巻芯部3との間に応力集中箇所である弱点が形成されることが抑制される。故にドラムコア2に対してコーティング10が膨張したとしても、第一鍔部4及び第二鍔部5と巻芯部3との間にクラックが入ることは抑制される。
【0028】
コーティング10への第一鍔部4及び第二鍔部5と巻芯部3との間におけるクラックの抑制により、巻芯部3から第一鍔部4及び第二鍔部5に延出された第一導線8及び第二導線9の断線が抑制される。
【0029】
本発明のコイル部品は上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲で種々の改良や変形が可能である。例えば図3に示されるように、厚さのある金属端子を第一電極106、第二電極に用いてコイル部品101を構成してもよい。
【0030】
第一電極106が金属端子から構成される場合、第一鍔部104において上面104Aと、第一電極106の継線部161Aとの間に段差が形成されるおそれがある。よって上面104Aに継線部161Aの厚さと略等しく継線部161Aを収容可能な凹部104aを形成し、この凹部104a内に継線部161Aを埋設して第一電極106を第一鍔部104に装着する。
【0031】
この様な構成を採ることにより、上面104Aと、継線部161Aの継線面となる上面とが面一となるため、第一電極106と、上面104Aとの間に段差が形成されることを抑制することができる。第二電極と第二鍔部とも同様に構成することにより、第一電極106及び第二電極を含んでドラムコア102の上面102Aを面一に構成することができ、樹脂コーティングを施したとしても、クラックの発生が抑制される。
【0032】
また図4に示されるように、コイル部品201を平面矢視(上面202Aと直交する方向からの矢視)した状態で、ドラムコア202が略四角形を成すように構成してもよい。具体的には、巻芯部203の幅(軸方向と平面矢視の方向とのそれぞれに直交する方向の距離)を第一鍔部204及び第二鍔部205の幅と同じに構成する。
【0033】
この様な構成を採ることにより、ドラムコア202において、上面202Aの周縁に接続される巻芯部203、第一鍔部204、第二鍔部205の側面部分に段差が形成されることが抑制される。樹脂をコーティングした際には、側面部分まで樹脂が回ることがあるが、この様な構成を採ることにより、側面部分に段差が存在しないため、樹脂コーティングにクラックがドラムコア202の側面から発生することが抑制される。
【0034】
また図5に示されるように、第一鍔部304と第二鍔部305とに跨って、巻芯部303の上方に板状コア311が配置される構成を採ってもよい。この板状コア311には、第一鍔部304に当接する第一足部311Aと第二鍔部305に当接する第二足部311Bを有しており、第一足部311Aと第二足部311Bとは板状部分から突出するように構成されているため、板状コア311が巻芯部303に形成されたコイルに当接することは抑制されている。板状コア311は、第一足部311Aが第一継線部361Aと第一継線部362Aとの間の上面304Aに当接し、第二足部311Bが第二継線部371Aと第二継線部372Aとの間の上面305Aに当接して、接着剤によりドラムコア302に接着される。
【0035】
この様な構成を採ることにより、ドラムコア302と板状コア311とから閉磁路を形成することができ、コイル部品301の特性を増すことができる。またコイル及び継線部分が覆われるように板状コア311が配置されるため、コイル及び継線部分が外因から保護される。
【符号の説明】
【0036】
1・・コイル部品 2・・ドラムコア 2A・・上面 3・・巻芯部 4・・第一鍔部
4A・・上面 4B・・端面 4C・・下面 5・・第二鍔部 5A・・上面
5B・・端面 5C・・下面 6・・第一電極 7・・第二電極 8・・第一導線
9・・第二導線 10・・コーティング 31・・上面 33・・下面
61、62・・電極 61A、62A・・第一継線部 61B、62B・・第一連結部
61C、62C・・第一実装部 71、72・・電極 71A、72A・・第二継線部
71B、72B・・第一連結部 71C、72C・・第二実装部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻芯部と、該巻芯部の軸方向一端側及び他端側にそれぞれ接続される第一鍔部及び第二鍔部とを有するドラムコアと、
巻芯部に巻回されてコイルを形成する導線と、
該第一鍔部及び該第二鍔部にそれぞれ設けられ、該導線の一端及び他端がそれぞれ継線される第一電極及び第二電極と、を有し、
該第一鍔部は、該導線の一端が継線される第一接続面と、実装基板上に配置される第一実装面とを有し、
該第二鍔部は、該導線の他端が継線される第二接続面と、該実装基板上に配置される第二実装面とを有し、
該第一電極は、該第一接続面に配置されて該導線の一端が継線される第一継線部と、該第一実装面に配置されて該実装基板に接続されると共に該第一継線部と一連の第一実装部とを有し、
該第二電極は、該第二接続面に配置されて該導線の他端が継線される第二継線部と、該第二実装面に配置されて該実装基板に接続されると共に該第二継線部と一連の第二実装部とを有し、
該巻芯部は、該第一接続面と該第二接続面とのそれぞれと面一な平滑面を有することを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
該第一継線部は、該導線の一端が継線される第一継線面を有すると共に、該第一継線面が該第一接続面と面一になるように該第一鍔部に埋設され、
該第二継線部は、該導線の他端が継線される第二継線面を有すると共に、該第二継線面が該第二接続面と面一になるように該第二鍔部に埋設されていることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
該平滑面と該第一接続面と該第二接続面とを覆う樹脂コーティングを更に有し、
該樹脂コーティングは、該コイルと、該導線の該第一電極との継線箇所と、該導線の該第二電極との継線箇所とを覆っていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項4】
該ドラムコアは、該平滑面と直交する矢視で四角形状を成していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一に記載のコイル部品。
【請求項5】
該第一鍔部と該第二鍔部とに跨ると共に該平滑面を覆って配置される板状コアを更に備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一に記載のコイル部品。
【請求項1】
巻芯部と、該巻芯部の軸方向一端側及び他端側にそれぞれ接続される第一鍔部及び第二鍔部とを有するドラムコアと、
巻芯部に巻回されてコイルを形成する導線と、
該第一鍔部及び該第二鍔部にそれぞれ設けられ、該導線の一端及び他端がそれぞれ継線される第一電極及び第二電極と、を有し、
該第一鍔部は、該導線の一端が継線される第一接続面と、実装基板上に配置される第一実装面とを有し、
該第二鍔部は、該導線の他端が継線される第二接続面と、該実装基板上に配置される第二実装面とを有し、
該第一電極は、該第一接続面に配置されて該導線の一端が継線される第一継線部と、該第一実装面に配置されて該実装基板に接続されると共に該第一継線部と一連の第一実装部とを有し、
該第二電極は、該第二接続面に配置されて該導線の他端が継線される第二継線部と、該第二実装面に配置されて該実装基板に接続されると共に該第二継線部と一連の第二実装部とを有し、
該巻芯部は、該第一接続面と該第二接続面とのそれぞれと面一な平滑面を有することを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
該第一継線部は、該導線の一端が継線される第一継線面を有すると共に、該第一継線面が該第一接続面と面一になるように該第一鍔部に埋設され、
該第二継線部は、該導線の他端が継線される第二継線面を有すると共に、該第二継線面が該第二接続面と面一になるように該第二鍔部に埋設されていることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
該平滑面と該第一接続面と該第二接続面とを覆う樹脂コーティングを更に有し、
該樹脂コーティングは、該コイルと、該導線の該第一電極との継線箇所と、該導線の該第二電極との継線箇所とを覆っていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項4】
該ドラムコアは、該平滑面と直交する矢視で四角形状を成していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一に記載のコイル部品。
【請求項5】
該第一鍔部と該第二鍔部とに跨ると共に該平滑面を覆って配置される板状コアを更に備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一に記載のコイル部品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2011−77178(P2011−77178A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225219(P2009−225219)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]