説明

コイル部品

【課題】板状コアが鍔部に載置された状態で、板状コアと鍔部とが所定距離で隔てられたコイル部品の提供。
【解決手段】鍔部4では、端子電極8A上に継線部10Aが形成され、端子電極9A上に継線部11Aが形成される。鍔部5では、端子電極8B上に継線部10Bが形成され、端子電極9B上に継線部11Bが形成される。板状コア20が継線部10A、10B,11A,11B上に載置された状態では、板状コア20と鍔部4の頂面4A及び鍔部5の頂面5Aとが所定距離を隔てて配置されるため、鍔部4、5と板状コア20との間に磁気ギャップを形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ドラムタイプコア上に板状コアが載置されて構成されたコイル部品が、コモンモードフィルタとして用いられている。ドラムタイプコアは、巻芯部とその両端に設けられた鍔部とから構成されたコアと、コアのそれぞれの鍔部に設けられた電極と、巻芯部に巻回されて両端部がそれぞれ電極に継線された導線とを有して構成されている。また、板状コアは長方形状をなし、ドラムタイプコア上に載置される。
【0003】
例えば下記の特許文献1に記載のコイル部品では、板状コアがドラムタイプコア上に載置された状態で、板状コアのドラムタイプコア側に突出した先端部分がドラムタイプコアの鍔部に接着剤により接着されている。このため、板状コアと鍔部との間には隙間はほとんど無い。コモンモードフィルタとして使用する場合には、板状コアと鍔部との間に隙間が無く密着した状態であることが望ましいことから、上記構成であっても不都合が生じることはなかった。
【特許文献1】特開2006−237209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記コモンモードフィルタとして利用されている板状コアと鍔部の構造をそのままトランスに応用することは困難であった。具体的には、板状コアと鍔部との間に位置する接着剤の厚みはわずか1?〜10?程度にすぎず、板状コアは鍔部からわずかな距離しか離間していない。このため、当該離間による磁気ギャップも不十分である。また、当該離間の幅を調整することができない場合には、所望の直流重畳特性を得ることができず、磁気飽和が生ずる。
【0005】
そこで、本発明は板状コアと鍔部とが所定距離で隔てられたコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、巻芯部と該巻芯部の軸方向の両端に設けられ頂面をそれぞれ有する鍔部とを備えるドラムタイプコアと、各該頂面上に少なくとも1つ設けられた端子電極と、該巻芯部に巻回され、端部が該端子電極に電気的に接続されて継線された継線部をなす導線と、該鍔部に跨って設けられ、各該頂面に対向配置された板状コアと、を備え、該継線部は該端子電極上面に配置され、該板状コアが該継線部上に載置されることにより、該板状コアと該頂面とが所定距離を隔てて配置されるコイル部品を提供している。
【0007】
継線部は端子電極上面に配置され、板状コアが継線部上に載置されることにより、板状コアと頂面とが所定距離を隔てて配置されるため、鍔部と板状コアとの間に磁気ギャップを形成することができる。
【0008】
ここで、該継線部は熱圧着により該端子電極に継線されていることが好ましい。継線部は熱圧着により端子電極に継線されているため、熱圧着により継線部が潰される量を調整することで、板状コアと頂面との距離を調整することができる。
【0009】
また、該頂面は、該端子電極が設けられている領域をなす電極部と該端子電極が設けられていない領域をなす露出部とからなり、該板状コアと該露出部とは接着剤によって接着されていることが好ましい。
【0010】
頂面は、端子電極が設けられている領域をなす電極部と端子電極が設けられていない領域をなす露出部とからなり、板状コアと露出部とは接着剤によって接着されているため、接着剤と継線部とが接触しない構成とすることができる。継線部上に樹脂を含んだ接着剤が充填されて継線部に接着剤が接触し、樹脂が熱膨張する場合には、熱衝撃による樹脂の膨張又は収縮によりワイヤが断線することがあるが、このような不具合が生ずることを防ぐことができる。
【0011】
また、該端子電極は各該頂面上に2つずつ設けられ、該導線は、太さの異なる第1導線と第2導線とを有し、該第1導線の継線部は第1の継線部をなし、該第2導線の継線部は第2の継線部をなし、該第1の継線部及び該第2の継線部は同一の該頂面上に配置されていることが好ましい。
【0012】
端子電極は各頂面上に2つずつ設けられ、導線は、太さの異なる第1導線と第2導線とを有し、第1導線の継線部は第1の継線部をなし、第2導線の継線部は該第1の継線部とは異なる端子電極にて第2の継線部をなし、第1の継線部及び第2の継線部は同一の頂面上に配置されているため、継線部の厚さを調整することで、板状コアと頂面との離間距離を一定にすることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上により、本発明は、板状コアと鍔部とが所定距離で隔てられたコイル部品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態によるコイル部品について図1〜図3を参照しながら説明する。以下に説明する本実施の形態に係るコイル部品は、より具体的にはトランスである。コイル部品1は、図1に示されるように、ドラムタイプコア2と、ドラムタイプコア2を覆うようにして載置される板状コア20とを有している。
【0015】
ドラムタイプコア2は長手方向に直交する断面が略長方形の巻芯部3と、巻芯部3の長手方向両端に設けられた同一形状の一対の鍔部4、鍔部5とを有している。巻芯部3には、直径の異なる2本の導線6、導線7が巻回されている。ドラムタイプコア2の両端に位置している鍔部4及び鍔部5は同一形状であるため、以下特に明記しない限り一方の鍔部4のみ説明する。また、巻芯部3の長手方向をX軸方向と定義し、巻芯部3の幅方向をY軸方向と定義し、X軸方向とY軸方向とに直交する方向をZ軸方向と定義して説明する。
【0016】
鍔部4、5は、X軸方向における巻芯部3の両端に、巻芯部3と一体的に接続されて設けられている。鍔部4は略直方体形状をなしており、頂面4A、底面4B、第1の側面4C、第2の側面4D、外端面4E、内端面4Fの6つの面を有している。頂面4Aと底面4Bとは、Z軸方向において互いに対向している。第1の側面4Cと第2の側面4Dとは、Y軸方向において互いに対向している。また、外端面4Eと内端面4Fとは、X軸方向において互いに対向している。
【0017】
鍔部4には、端子電極8A及び端子電極9Aが頂面4A、外端面4E及び底面4Bに跨って設けられている。端子電極8Aは、頂面4A、外端面4E及び底面4Bと第1の側面4Cとの接続位置の近傍に設けられている。端子電極9Aは、頂面4A、外端面4E及び底面4Bと第2の側面4Dとの接続位置の近傍に設けられている。これら端子電極8A及び端子電極9Aは、それぞれ銀ペーストを塗布して焼き付けた後に銅、ニッケル及びスズのメッキを施すことにより形成されている。また、頂面4Aのうちの端子電極8A及び端子電極9Aに覆われていない領域であって、端子電極8Aと端子電極9Aとの間の領域は、露出部12Aをなす。また、頂面4Aのうちの端子電極8A及び端子電極9Aに覆われている領域は電極部に相当する。
【0018】
鍔部5は、鍔部4と同様に頂面5A、底面5B、第1の側面5Cと第2の側面5D、外端面5Eと内端面5Fとを有している。また、鍔部5は、端子電極8B及び端子電極9Bを備えている。頂面5Aのうちの端子電極8B及び端子電極9Bに覆われていない領域であって、端子電極8Bと端子電極9Bとの間の領域は、露出部12Bをなす。また、頂面5Aのうちの端子電極8B及び端子電極9Bに覆われている領域は電極部に相当する。
【0019】
導線6は一次側の導線であり、導線7は二次側の導線であって、導線7は導線6よりも大きな直径を有している。図1、あるいは図2に示されるように、導線6、導線7は鍔部4に接続されている巻芯部3の接続部付近より引き出されて、頂面4Aへ向かって延びており、頂面4Aと内端面4Fとの接続個所では頂面4Aに沿うように折り曲げられている。図1に示されるように、頂面4A上では、導線6の端部が端子電極8Aにおいて電気的に接続されて継線部10Aをなし、導線7の端部が端子電極9Aにおいて電気的に接続されて継線部11Aをなしている。
【0020】
継線部10Aは、導線6の端部を熱圧着することにより形成される。具体的には、導線6の端部を端子電極8A上に載置し、加熱された図示せぬヒーターチップを当該導線6の端部に押し当てて、端子電極8Aに加圧密着させることにより形成される。継線部10Aは、加圧密着の過程において、次第に端子電極8A上で広がるとともに、Z軸方向における厚さが次第に薄くなる。端子電極9A上の継線部11A、端子電極8B上の継線部10B及びと端子電極9Bの継線部11Bの形成についても、同様である。
【0021】
前述のように、導線7は導線6よりも直径が大きい。しかし、Z軸方向における頂面4Aから継線部11Aの上端までの高さは、同方向における頂面4Aから継線部10Aの上端までの高さと同一とされている。これは、熱圧着時の導線6の端部に対する加圧量と比較して導線7の端部に対する加圧量を多くすることにより、継線部10Aの厚さと継線部11Aの厚さとが同一とされていることによる。同様に、継線部10Bの上端及び継線部11Bの上端の、それぞれの頂面5Aからの高さも同一である。
【0022】
板状コア20は、Z軸方向に厚みを有する略長方形状の板状をなしている。板状コア20は、ドラムタイプコア2側に端面20aを有しており、当該端面20aはXY平面に平行である。
【0023】
図2、図3に示されるように、板状コア20がドラムタイプコア2上に載置されている状態では、端面20aが所望の厚みを有する各継線部10A、10B,11A,11Bと直接当接している。このため、露出部12A及び露出部12Bと端面20aとは非接触状態を保ちながら、10?〜300?の範囲内のギャップ幅dだけ離間する。このギャップ幅dに接着剤が充填されることにより、板状コア20とドラムタイプコア2とが接着され、板状コア20はドラムタイプコア2に固定されている。
【0024】
以上説明したように、板状コア20の端面20aと継線部10A、10B,11A,11Bとは当接しており、板状コア20と頂面4A及び頂面5Aとが所定距離を隔てて配置されるため、鍔部4、5と板状コア20との間に磁気ギャップが生じることになる。従って、コイル部品1において、所望の直流重畳特性を得ることができ、磁気飽和の発生を抑制することができる。さらに、本実施の形態では熱圧着により、各継線部10A、10B,11A,11Bを形成している。このため、熱圧着による加圧量を調整することで、板状コア20と頂面4A及び頂面5Aとの間に生じるギャップ幅dを調整することができる。
【0025】
本発明によるコイル部品1は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば本実施の形態では、1つの頂面上には直径の異なる導線6、導線7の端部がそれぞれ継線部をなす構成としたが、同じ頂面上に導線6の端部が2箇所、導線7の端部が2箇所形成されてもよいし、継線部11Aと継線部11Bとを結ぶ仮想直線が継線部10Aと継線部10Bとを結ぶ直線と交差するような位置関係で形成されてもよい。この場合であっても、導線6、導線7のそれぞれの端部に対する加圧量を調整することにより、継線部10A、10B、11A、11Bの高さを調整することができる。従って、板状コア20の端面20aとドラムタイプコア2の頂面4A、5Aとが平行となるようにすることができる。
【0026】
また、本実施の形態では、巻芯部3の長手方向に直交する断面は略方形であるとしたが、このような形状に限定されず、例えば巻芯部3の長手方向に直交する断面は略円形であってもよい。
【0027】
また、本実施の形態では、頂面4A及び頂面5Aのうち、露出部12A及び露出部12Bのみが接着剤によって端面20aに固定されることとしたが、端子電極8A、端子電極9A、端子電極8B、端子電極9B以外の頂面4Aの領域及び頂面5A上の領域が接着剤によって端面20aに固定されてもよい。このようにすることで、さらに強固に板状コア20がドラムタイプコア2に固定されることになる。また、板状コア20とドラムタイプコア2との固定は、接着剤以外によるものであってもよい。
【0028】
端子電極8A、端子電極9A、端子電極8B、端子電極9Bは、めっきによって構成されることとしたが、これに代えて金具により構成されていてもよい。また、本実施の形態では、板状コア20の端面20aが各継線部10A、10B,11A,11Bと直接当接することとしたが、端面20aは接着剤を介して各継線部10A、10B,11A,11Bと接着されることとしてもよい。
【0029】
また、本実施の形態では、巻芯部3には、2本の導線6、7が巻回されることとしたが、導線の本数は2本に限られない。この場合には、各鍔部において導線の本数に対応した数の端子電極を設け、各端子電極と継線部を1対1対応させて継線すればよい。また、1つの端子電極に継線される導線端部は複数であってもよい。また、本実施の形態では、継線部は熱圧着により継線されることとしたが、熱圧着に代えて他の電気的な接続方法により継線されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態に係るコイル部品を示す分解斜視図。
【図2】本発明の実施の形態に係るコイル部品を示す正面図。
【図3】本発明の実施の形態に係るコイル部品を示す側面図。
【符号の説明】
【0031】
1…コイル部品、
2…ドラムタイプコア、
3…巻芯部、
4、5…鍔部、
4A…頂面、
5A…頂面、
5B…底面、
6、7…導線、
8A、8B、9A、9B…端子電極
10A、10B,11A,11B…継線部
12A、12B…露出部
20…板状コア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻芯部と該巻芯部の軸方向の両端に設けられ頂面をそれぞれ有する鍔部とを備えるドラムタイプコアと、
各該頂面上に少なくとも1つ設けられた端子電極と、
該巻芯部に巻回され、端部が該端子電極に電気的に接続されて継線された継線部をなす導線と、
該鍔部に跨って設けられ、各該頂面に対向配置された板状コアと、を備え、
該継線部は該端子電極上面に配置され、
該板状コアが該継線部上に載置されることにより、該板状コアと該頂面とが所定距離を隔てて配置されることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
該継線部は熱圧着により該端子電極に継線されていることを特徴とする請求項1記載のコイル部品。
【請求項3】
該頂面は、該端子電極が設けられている領域をなす電極部と該端子電極が設けられていない領域をなす露出部とからなり、該板状コアと該露出部とは接着剤によって接着されていることを特徴とする請求項1記載のコイル部品。
【請求項4】
該端子電極は各該頂面上に2つずつ設けられ、
該導線は、太さの異なる第1導線と第2導線とを有し、該第1導線の継線部は第1の継線部をなし、該第2導線の継線部は第2の継線部をなし、該第1の継線部及び該第2の継線部は同一の該頂面上に配置されていることを特徴とする請求項1記載のコイル部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−96815(P2011−96815A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248653(P2009−248653)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】