コインホルダ
【課題】コインを自立しやすい形状にして、不快な音の発生を可及的に防止したコインホルダを提供する。
【解決手段】前側周壁と後側周壁とが湾曲状に連続して形成された周壁と、左右側壁とにより形成されたコイン収納空間を備え、コインを厚み方向に並べた状態で複数枚収納可能としたコインホルダにおいて、前記コイン収納空間の左右側壁間に、一定間隔をあけて複数の区画壁を設け、各区画壁間に3枚を限度としてコインを収納可能とした小区画領域をそれぞれ形成するとともに、各小区画領域内の前記周壁に、断面視逆V字状の山形仕切体を挟んで断面視略V字形状のコイン収納溝を左右に形成し、各コインを、前記各コイン収納溝の左右の各斜面と、前記前側周壁における前側支持部及び後側周壁における後側支持部との4個所で支持することにより、自立した状態で収納可能としたことを特徴とする。
【解決手段】前側周壁と後側周壁とが湾曲状に連続して形成された周壁と、左右側壁とにより形成されたコイン収納空間を備え、コインを厚み方向に並べた状態で複数枚収納可能としたコインホルダにおいて、前記コイン収納空間の左右側壁間に、一定間隔をあけて複数の区画壁を設け、各区画壁間に3枚を限度としてコインを収納可能とした小区画領域をそれぞれ形成するとともに、各小区画領域内の前記周壁に、断面視逆V字状の山形仕切体を挟んで断面視略V字形状のコイン収納溝を左右に形成し、各コインを、前記各コイン収納溝の左右の各斜面と、前記前側周壁における前側支持部及び後側周壁における後側支持部との4個所で支持することにより、自立した状態で収納可能としたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のコインを収納するためのコインホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車内のインストルメントパネルやコンソールボックスに、複数枚のコインを収納するためのコインホルダが設置される場合がある。この種のコインホルダは、通常、厚みや直径の異なる各種金額のコインを収納自在とした構造となっており、例えば特許文献1には、コインポケットの底面に多数の山形突起を突出した構成のコインホルダが開示されている。このコインホルダは、突起間にコインを立て掛けた状態で使用するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】公開実用昭和58−58950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のコインホルダでは、自動車走行時の振動がホルダ内のコインに伝わり、その結果、コインとケースとの接触やコイン同士の接触による不快な音が発生してしまうおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明では、コインを自立しやすい形状にして、不快な音の発生を可及的に防止可能としたコインホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載のコインホルダは、前側周壁と後側周壁とが湾曲状に連続して形成された周壁と、左右側壁とにより形成されたコイン収納空間を備え、コインを厚み方向に並べた状態で複数枚収納可能としたコインホルダにおいて、前記コイン収納空間の左右側壁間に、一定間隔をあけて複数の区画壁を設けて各区画壁間に3枚を限度としてコインを収納可能とした小区画領域をそれぞれ形成するとともに、各小区画領域内の前記周壁に、断面視逆V字状の山形仕切体を挟んで断面視略V字形状のコイン収納溝を左右に形成し、各コインを、前記各コイン収納溝の左右の各斜面と、前記前側周壁における前側支持部及び後側周壁における後側支持部との4個所で支持することにより、自立した状態で収納可能としたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコインホルダにおいて、前記区画壁の基部側面が、前記コイン収納溝の一側斜面を形成していることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のコインホルダにおいて、流通するコインのうち、最大径のコインを前記コイン収納溝に収納したときのコイン下端位置を基準位置とし、他の異径コインを前記コイン収納溝に収納したときのコイン下端位置が前記基準位置よりも落ち込む量が所定値を超えないように、前記前側支持部の傾斜度合いを示す第1の傾斜角度と、前記後側支持部の傾斜度合いを示す第2の傾斜角度とを設定したことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のコインホルダにおいて、前記第1の傾斜角度と前記第2の傾斜角度との和を、75〜125度との範囲に設定したことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4の何れか1項に記載のコインホルダにおいて、前記コイン収納溝の左右の斜面の傾斜角度は、45度〜75度の間で設定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5の何れか1項に記載のコインホルダにおいて、前記小区画領域内に形成された2つのコイン収納溝にコインがそれぞれ収納されている場合、すでに収納されている2枚のコインの間に3枚目のコインを差し込み可能とし、当該3枚目のコインは、両コインで挟持された状態で前記山形仕切体の頂部により周面が支持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のコインホルダによれば、コインを自立しやすい形状としているため、特に、これを自動車内に設けた場合、振動などによる不快な音の発生を可及的に防止することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る実施形態のコイン収納ケースを示す平面図である。
【図2】本発明に係る実施形態のコイン収納ケースを示す斜視図である。
【図3】本発明に係る実施形態のコイン収納ケースを示す平面図である。
【図4】図3に示すコイン収納ケースの断面図である。
【図5】コイン収納ケースの小区画領域を示す断面図である。
【図6】第1の傾斜角度と第2の傾斜角度とコイン接触角を説明する図である。
【図7】コインの落ち込み量を説明する図である。
【図8】各条件に基づいた曲線を示すグラフである。
【図9】従来のコインホルダと各条件に基づいた3種類のコインホルダとを評価した表である。
【図10】コイン収納ケースに同径同厚のコインを収納した状態を示す図である。
【図11】コイン収納ケースに異径異厚のコインを収納した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るコインホルダは、特に、自動車などに設けるのに適しており、前側周壁と後側周壁とが湾曲状に連続して形成された周壁と、左右側壁とにより形成されたコイン収納空間を備え、コインを厚み方向に並べた状態で複数枚収納可能としたコインホルダにおいて、前記コイン収納空間の左右側壁間に、一定間隔をあけて複数の区画壁を設けて各区画壁間に3枚を限度としてコインを収納可能とした小区画領域をそれぞれ形成するとともに、各小区画領域内の前記周壁に、断面視逆V字状の山形仕切体を挟んで断面視略V字形状のコイン収納溝を左右に形成し、各コインを、前記各コイン収納溝の左右の各斜面と、前記前側周壁における前側支持部及び後側周壁における後側支持部との4個所で支持することにより、自立した状態で収納可能としている。
【0015】
そして、このように、コインとコインホルダとを、4個所で支持することによってコインが自立しやすい構成とした上で、前記前側支持部の傾斜度合いを示す第1の傾斜角度と、前記後側支持部の傾斜度合いを示す第2の傾斜角度とを特定している。
【0016】
すなわち、流通するコインのうち、最大径のコインを前記コイン収納溝に収納したときのコイン下端位置を基準位置とし、他の異径コインを前記コイン収納溝に収納したときのコイン下端位置が前記基準位置よりも落ち込む量が所定値を超えないように、前記前側支持部の傾斜度合いを示す第1の傾斜角度と、前記後側支持部の傾斜度合いを示す第2の傾斜角度とを設定しているのである。
【0017】
このとき、前記第1の傾斜角度と前記第2の傾斜角度との和を、75度〜125度との範囲に設定するとよい。
【0018】
また、前記コイン収納溝の左右の斜面の傾斜角度は、45度〜75度の間で設定することが好ましい。
【0019】
こうして、コインとコインホルダとを4個所で支持するとともに、前記第1の傾斜角度と前記第2の傾斜角度と、斜面の傾斜角度とを適宜設定すれば、ある程度の横Gが生じてもコインは自立状態を維持可能となり、コイン同士、あるいはコインとコインホルダとの接触による不快な音の発生を可及的に防止することができる。
【0020】
また、前記区画壁の基部側面は、前記コイン収納溝の一側斜面を形成するように構成すれば、コインホルダを型などで容易に一体成形することが可能となる。
【0021】
また、前記小区画領域内に形成された2つのコイン収納溝にコインがそれぞれ収納されている場合、すでに収納されている2枚のコインの間に3枚目のコインを差し込み可能とし、当該3枚目のコインは、両コインで挟持された状態で前記山形仕切体の頂部により周面が支持されるようにすることができる。
【0022】
本コインホルダによれば、コインを自立状態とすることができるので、自動車の振動や加速による力が生じても、不快な音の発生を可及的に防止することができる効果がある。また、かかる効果は、大きさの異なるコインを収納した場合でも生起される。
【0023】
以下、本発明に係るコインホルダの一実施形態について図を参照しながら説明する。以下では、コインホルダを自動車のコンソールボックスに配設したものとする。
【0024】
本実施形態に係るコインホルダを備える自動車は、図1に示すように、運転席及び助手席のシートの間に小物を収納するための開閉蓋付きのコンソールボックスBが配設されている。コンソールボックスBは、図示するように、上方に開口する箱形状に形成されたボックス本体30と、このボックス本体30の後端に上方かつ後方に引き上げ可能に枢支連結された開閉蓋となる蓋体31とを具備している。
【0025】
ボックス本体30の内部の後側に、本実施形態に係るコインホルダ1が設けられている。
【0026】
本コインホルダの構造について、図2から図9を参照しながら説明する。
【0027】
図2及び図3に示すように、本コインホルダ1は、前側周壁3と後側周壁4とを湾曲状に連続して形成した周壁2と、左右側壁5,6とにより形成されたホルダ本体7を備えている。
【0028】
ホルダ本体7は、上部開口した箱形状に形成されており、コインを厚み方向に並べた状態で複数枚のコインが収納可能なコイン収納空間8がその内部に形成されている。例えば、コイン収納空間8には、日本国の500円から100円、50円、10円、5円、及び1円硬貨などのように、大きさの異なる複数枚のコインを収納することができる。
【0029】
ホルダ本体7の左右側壁5,6間には、一定間隔をあけて複数の区画壁11,・・,11を一体的に設けている。また、各区画壁11は、左右側壁5,6に平行となるように突設されている。区画壁11の基部は、断面視略逆V字状に形成され、その各基部側面21L,21Rは、各コイン収納溝14,15の一側斜面をなすように構成している(図5参照)。このように、コイン収納空間8を複数の区画壁11,・・,11で区切ることにより、ホルダ本体7内には、3枚のコインの収納を限度とする小区画領域12が複数形成されている。すなわち、小区画領域12に、2枚又は3枚のコインをコイン厚み方向に並べた状態で収納することができる。
【0030】
各小区画領域12内の周壁2には、断面視逆V字状の山形仕切体13が突設形成され、この山形仕切体13を挟んで断面視略V字形状のコイン収納溝14,15が左右に形成されている。
【0031】
コイン収納溝14,15における傾斜面の傾斜角度α(水平面を基準)は、コインを自立させる上では重要な要素となる。本実施形態では、図5に示すように、各コイン収納溝14,15の傾斜面の傾斜角度αを45度〜75度の間に設定している。この範囲内にあれば、例えば、コイン収納溝14,15内でコインを起立させているときに当該コインを捩じった場合、復元力がはたらきやすく、自立性を損なうことがないことが理論的に分かったからである。他方、この傾斜角度が75度より大きくなると、自立性が損なわれて不快な音が生じ易くなってしまう。また、この傾斜角度が45度未満となると、3枚目のコインを差し込むときの挿入性が悪くなる。
【0032】
本実施形態に係る本コインホルダ1は、周壁2を、前側周壁3と後側周壁4とを湾曲状に連続して形成し、コインをコイン収納溝14,15に収納した際に、各コインを各コイン収納溝14,15の左右の各斜面21L,21R,22L,22R(例えば図5参照)と、前側周壁3における前側支持部23及び後側周壁4における後側支持部24(例えば図6参照)との4個所で支持するようにして、コインを自立した状態で収納可能としている。
【0033】
すなわち、図6に示すように、一方の前側周壁3における前側支持部23は、第1の傾斜角度β1をなすように形成され、他方の後側周壁4における後側支持部24は、第2の傾斜角度β2をなすように形成されている。
【0034】
以下で説明するコインCは、直径や厚みが異なる硬貨であり、例えば、日本国で流通している500円硬貨は直径や厚みが大きい大型のコインであり、100円硬貨、50円硬貨、10円硬貨は直径や厚みが小さい小型のコインである。
【0035】
かかるコインCのうち、図7に示すように、最大径のコインC2(例えば、500円硬貨)をコイン収納溝14(15)に収納したときのコイン下端位置を基準位置P1とすると、コイン収納溝14(15)に小型のコインC1(例えば50円硬貨)を収納した場合、小型のコインC1のコイン最下端である小型コイン下端位置P2は、先の基準位置P1よりも落ち込むこととなる。
【0036】
この基準位置P1から小型コイン下端位置P2までの距離を落ち込み量Dとすると、ここでは、最小径の他の小型コインC1をコイン収納溝14(15)に収納した場合であっても、落ち込み量Dが所定値を超えないように、前側支持部23の傾斜度合いを示す第1の傾斜角度β1と、後側支持部24の傾斜度合いを示す第2の傾斜角度β2とを設定している。
【0037】
すなわち、第1の傾斜角度β1と前記第2の傾斜角度β2との和である合計角度β3を、75度〜125度との範囲に設定している。この合計角度β3が75度未満となると、コインと前後周壁との接点が下方へずれるため、コインの前後方向への安定性が低下してしまう。この合計角度β3が125度より大きくなると、異径のコインを収納したときの落ち込み量Dが増えて、複数枚のコインを収納したときに各コインの収納姿勢がその高さ方向にデコボコが生じてしまい見た目が悪くなる。
【0038】
ここで、コインがコインホルダ1内で自立した状態で収納可能とするための条件について説明する。
【0039】
なお、図5に示すように、コイン収納溝14,15の水平面を基準とした傾斜面の傾斜角度αは、コイン収納溝14,15の鉛直線を基準とした傾斜角度φとの間には以下の式Aで示す関係がある。
【0040】
角度(90°−α)=コイン収納溝の鉛直線を基準とした傾斜角度φ・・・式A
【0041】
また、図6に示すように、第1の傾斜角度β1はコイン接触角θ1と同じ角度となり、第2の傾斜角度β2はコイン接触角θ2と同じ角度となるため、以下の説明では、コイン収納溝の鉛直線を基準とした傾斜角度φ(以下、単に「角度φ」とする場合がある)及びコイン接触角θ1,θ2を用いて説明する。
【0042】
コインがコインホルダ内で自立した状態で収納できるために、図8に示すように、3つの条件I〜IIIを満たすようにしている。図8において、縦軸は図5中のコイン収納溝14,15の角度φであり、横軸は図6中の前側周壁3や後側周壁4とコイン周面が接触した際のコイン接触角θ1とコイン接触角θ2の和である。
【0043】
条件Iとは、コイン収納溝14,15内のコインに、例えば自動車走行中に、所定の横G(例えば、1.0Gや1.5G)が加わった場合、コインの姿勢が捩れた状態になってしまったとしても元の自立状態に戻ろうとする力が生起されるための角度φ、コイン接触角θ1,θ2を規定するものであり(図5参照)、これら角度φ、コイン接触角θ1,θ2の適正な角度を設定することによって、コイン収納溝14,15内に収納されたコインの自立性が担保される。
【0044】
条件IIとは、図7に示すコイン落込み量Dを規定するものであり、例えば1mmから3mmまで変えたものである。このコイン落込み量Dを適正な値に規定することで、複数のコインの収納姿勢の見栄えを損なわないようにしている。なお、コイン接触角θ1,θ2の和が大きくなるほど異径のコインを収納したときのコイン落込み量Dが増加する。
【0045】
条件IIIとは、コインの挿入性を規定するものである。すなわち、左右のコイン間に3枚目のコインを差し込む際に角度φが小さくなるほど挿入性が悪くなる(図9参照)が、このコイン挿入性を担保するための条件である。このように、本実施形態におけるコインの挿入性とは、両コイン収納溝に2枚のコインが収納された状態で、3枚目のコインを2枚のコイン間に差し入れ易いか、し難いかの度合いであり、すなわち、3枚目のコインを差し入れると、両側のコインの各下部が基部側面の一斜面を上方へ摺動しながら登り易いか、し難いかの度合いでもある。
【0046】
図8のグラフにおいて、曲線L1は、上記条件Iの角度φやコイン接触角θ1,θ2の値を変えたコインホルダを作成し、各コインホルダを自動車に搭載して、コインホルダにコインを収納してコインの厚み方向に重力加速度1.5Gを印加し、コインが自立したまま倒れなかったものを示している。
曲線L2は、上記条件1の角度φやコイン接触角θ1,θ2の値を変えたコインホルダを作成し、各コインホルダを自動車に搭載して、コインホルダにコインを収納してコインの厚み方向に重力加速度1.0Gを印加し、コインが自立したまま倒れなかったものを示している。
【0047】
曲線M1から曲線M3は、上記条件IIのコイン落込み量Dを1mmから3mmまで変えたものを示している。
【0048】
曲線L1と曲線M2とで囲んだ領域では、条件Iと条件IIの両条件を満たすこととなり、さらに、条件IIIの角度φをできるだけ大きくとることで、不快な音が生じず、異径コインを収納した際の見た目(いわゆる見栄え)もよく、3枚目のコイン挿入性をよくしたコインホルダを得ることができる。本例においては、大型のコインとしての500円硬貨に対する小型のコインとしての10円硬貨の落ち込み量Dを2mm以内であることがよいことがわかった。
【0049】
図9の表は、従来のコインホルダX1と、上記条件に基づいた3種類のコインホルダY1,Y2,Y3を評価した結果を示すものである。なお、コイン接触角θ1,θ2の和を、好ましいと考えられる120度とし、コイン接触角θ1,θ2を75度と45度としたが、例えばθ1=85度、θ2=35度であってもよい。また、コイン接触角θ1,θ2の和の値は、少なくとも75度〜125度の範囲内にあればよい。
【0050】
図9に示すように、従来のコインホルダX1は、見た目や挿入性は良いが、不快な音が生じることとなる。
【0051】
コインホルダY1は、不快な音が生じないものの、角度φが30度と小さいためにコイン挿入性が悪いものとなる。
【0052】
コインホルダY2は、不快な音が生じず、見た目もよく、コイン挿入性もよいものとなる。
【0053】
コインホルダY3は、見た目、角度φが45度と大きいためにコイン挿入性がよいものの、3枚目のコインを差し込むときに音が生じてしまうこととなる。
【0054】
上記評価結果から、コインホルダY2は条件Iから条件IIIを満たすこととなる。
【0055】
上述してきた構成のコインホルダ1では、小区画領域12内に形成された2つのコイン収納溝14,15にコインがそれぞれ収納されている場合、すでに収納されている2枚のコインの間に3枚目のコインを差し込むことができる。その場合、当該3枚目のコインは、両コインで挟持された状態で山形仕切体13の頂部13aにより周面が支持されることとなる(図10参照)。
【0056】
したがって、3枚目のコインは、左右のコインで挟持された状態で山形仕切体13の頂部13aにより周面が支持されるため、ガタなどがなくなり、自動車の振動や加速により生じた力がコインに印加されても不快な音を生じるおそれがない。
【0057】
[コインホルダに各種コインを収納した状態]
本コインホルダにコインを収納した状態について図10及び図11を参照しながら説明する。図中には、大小2枚の異型のコインを示しており、小型コインC1は厚さをT1で示し,直径をR1で示す。一方、大型コインC2は厚さをT2で示し、直径をR2で示し、小型コインC1と大型コインC2との間には、T1<T2、R1<R2の関係がある。
【0058】
コインホルダ1の小区画領域12内の両コイン収納溝14,15に、それぞれ同径同厚の小型コインC1L,C1Rを自立した状態で収納した場合について、図10の右側の小区画領域12に収納された小型コインC1L,C1Rを参照しながら説明する。
【0059】
図示するように、一方の左側の小型コインC1Lは、小区画領域12内のコイン収納溝14において、その周面を4個所支持されて収納されている。すなわち、左側の小型コインC1Lの下部左側面は一の区画壁11の基部側面21Rに当接し、小型コインC1Lの下部右側面はコイン収納溝14の一斜面22Lに当接し、さらに、図4に示すように、小型コインC1Lの下部前面は前側周壁3の前側支持部23に当接し、小型コインC1Lの下部後面は後側周壁4の後側支持部24に当接している。
【0060】
また、他方の右側の小型コインC1Rについても、上述の左側の小型コインC1Lと同じように、小区画領域12内のコイン収納溝15において、その周面を4個所支持されて収納されている。すなわち、右側の小型コインC1Rの下部右側面は区画壁11の基部側面21Lに当接し、小型コインC1Rの下部左側面はコイン収納溝15の一斜面22Rに当接し、さらに、図4に示すように、小型コインC1Rの下部前面は前側周壁3の前側支持部23に当接し、小型コインC1Rの下部後面は後側周壁4の後側支持部24に当接している。
【0061】
このように左右の小型コインC1L,C1Rは、小区画領域12内の左右のコイン収納溝14,15にそれぞれ自立した状態のまま収納されており、例えば自動車からの振動や加速度が印加されても2枚の小型コインは、がたつくことなく不快な音を生じない効果がある。
【0062】
次に、コインホルダの小区画領域12内のコイン収納溝14,15に、左中右3枚の同径同厚の小型コインC1L,C1C,C1Rを自立した状態で収納することについて、図10の左側の小区画領域12に収納された小型コインC1L,C1C,C1Rを参照しながら説明する。
【0063】
小型コインC1Cは、小区画領域12内のコイン収納溝14,15に既に2枚のコインC1L,C1Rがそれぞれ収納された状態において、その間に差し込み収納されたものである。
【0064】
この場合、図示するように、これら3枚の小型コインC1L,C1C,C1Rは、密着した状態となり、左右の小型コインC1L,C1Rの両下部側部は2つの区画壁11,11に当接し、3枚の小型コインC1L,C1C,C1Rが2つの区画壁11,11間で挟持されることになる。すなわち、左の小型コインC1Lの下部左側面は一の区画壁11の基部側面21Rに当接し、右の小型コインC1Rの下部右側面は、他の区画壁11の基部側面21Lに当接している。さらに、中の小型コインC1Cは、両側部を左右の小型コインC1L,C1Rに挟持された状態で、中の小型コインC1Cの下部が山形仕切体13の頂部13aに当接している。さらにまた、図4に示すように、3枚の小型コインC1L,C1C,C1Rの各下部前面は前側周壁3の前側支持部23にそれぞれ当接し、3枚の小型コインC1L,C1C,C1Rの各下部後面は後側周壁4の後側支持部24にそれぞれ当接している。
【0065】
このように左中右3枚の小型コインC1L,C1C,C1Rは、各下部同士が密着状態をなして小区画領域12に自立した状態のまま収納されており、しかも、互いに密着してガタがないため、例えば自動車からの振動や加速度が印加されても同径同厚の3枚の小型コインは、がたつくことなく不快な音を生じることがない。
【0066】
次に、コインホルダの小区画領域12内のコイン収納溝14,15に、異径異厚の小型コインC1Lと大型コインC2Rを自立した状態で収納することについて、図11を参照しながら説明する。
【0067】
図11の右側の小区画領域12に収納されている異径異厚の小型コインC1Lと大型コインC2Rのように、一方の左側の小型コインC1Lは、小区画領域12内のコイン収納溝14に次のようにその周面を4個所支持されて収納されている。すなわち、左側の小型コインC1Lの下部左側面は一の区画壁11の基部側面21Rに当接し、小型コインC1Lの下部右側面はコイン収納溝14の一斜面22Lに当接し、さらに、図4に示すように、小型コインC1Lの下部前面は前側周壁3の前側支持部23に当接し、小型コインC1Lの下部後面は後側周壁4の後側支持部24に当接している。
【0068】
また、他方の右側の大型コインC2Rについても、上述の左側の小型コインC1Lと同様に、小区画領域12内のコイン収納溝15において、その周面を4個所支持されて収納されている。すなわち、右側の大型コインC2Rの下部右側面は他の区画壁11の基部側面21Lに当接し、大型コインC2Rの下部左側面はコイン収納溝15の一斜面22Rに当接し、さらに、図4に示すように、大型コインC2Rの下部前面は前側周壁3の前側支持部23にそれぞれ当接し、大型コインC2Rの下部後面は後側周壁4の後側支持部24にそれぞれ当接している。
【0069】
このように異径異厚の小型コインC1Lと大型コインC2Rは、小区画領域12内の左右のコイン収納溝14,15にそれぞれ自立した状態のまま収納されており、例えば自動車からの振動や加速度が印加されても2枚の大小型のコインは、がたつくことなく不快な音を生じない効果がある。
【0070】
次に、コインホルダの小区画領域12内のコイン収納溝14,15に、3枚の異径異厚の大型コインC2L,C2Cと小型コインC1Rを自立した状態で収納することについて、図11の左側の小区画領域12に収納された大型コインC2L,C2Cと小型コインC1Rを参照しながら説明する。
【0071】
3枚目のコインC2Cは、小区画領域12内のコイン収納溝14,15に既に2枚の大小のコインC2L,C1Rがそれぞれ収納された状態において、その2枚のコインC2L,C1Rの間に差し込み収納されるものである。
【0072】
この場合、図示するように、3枚の異径異厚のコインC2L,C2C,C1Rは、密着した状態となり、その左の大型コインC2Lの下部側部と右の小型コインC1Rの下部側部は2つの区画壁11,11に当接し、3枚のコインC2L,C2C,C1Rが2つの区画壁11,11間で挟持されることになる。すなわち、左の大型コインC2Lの下部左側面は一の区画壁11の基部側面21Rに当接し、右の小型コインC1Rの下部右側面は、他の区画壁11の基部側面21Lに当接している。さらに、中の大型コインC2Cは、その両側部を左の大型コインC2Lと右の小型コインC1Rに挟持された状態で、中の大型コインC2Cの下部が山形仕切体13の頂部13aに当接している。さらにまた、図4に示すように、3枚の大小型コインC2L,C2C,C1Rの各下部前面は前側周壁3の前側支持部23にそれぞれ当接し、3枚の大小型コインC2L,C2C,C1Rの各下部後面は後側周壁4の後側支持部24にそれぞれ当接している。
【0073】
このように左中右3枚の大小型コインC2L,C2C,C1Rは、各下部同士が密着状態をなして小区画領域12内に自立した状態のまま収納されており、しかも、互いに密着してガタがないため、例えば自動車からの振動や加速度が印加されても同径同厚の3枚の小型コインは、がたつくことなく不快な音を生じることがない。
【0074】
上述したように本コインホルダは、同径同厚のコインや異径異厚のコインを収納しても異音の発生がなく、自動車内の静寂を保つことができる効果がある。
【0075】
本コインホルダは、コンソールボックス内に設けたが、運転席前のインスツルメントパネルの壁面に取り付け用の開口部を形成して設けてもよいし、或は、運転席側の扉の内壁面に取り付け部を形成して設けてもよい。
【0076】
以上の実施形態により、以下のコインホルダが実現される。
【0077】
すなわち、前側周壁3と後側周壁4とが湾曲状に連続して形成された周壁2と、左右側壁5,6とにより形成されたコイン収納空間8を備え、コインを厚み方向に並べた状態で複数枚収納可能としたコインホルダ1において、コイン収納空間8の左右側壁5,6間に、一定間隔をあけて複数の区画壁11,・・,11を設け、各区画壁11,11間に3枚を限度としてコインを収納可能とした小区画領域12をそれぞれ形成するとともに、各小区画領域12内の周壁2に、断面視逆V字状の山形仕切体13を挟んで断面視略V字形状のコイン収納溝14,15を左右に形成し、各コインを、前記各コイン収納溝14,15の左右の各斜面21L,21R,22L,22Rと、前側周壁3における前側支持部23及び後側周壁4における後側支持部24との4個所で支持することにより、自立した状態で収納可能としている。このような構成とすることにより、コインを自立しやすい形状にして、不快な音の発生を可及的に防止することができる効果がある。
【0078】
また、区画壁11の基部側面が、コイン収納溝14,15の一側斜面21R,21Lを形成している。このような構成とすることにより、型などで一体成形する場合に区画壁とコイン収納溝との成形が容易となる。
【0079】
また、流通するコインのうち、最大径のコインをコイン収納溝14,15に収納したときのコイン下端位置を基準位置P1とし、他の異径コインをコイン収納溝14,15に収納したときのコイン下端位置が基準位置P1よりも落ち込む量Dが所定値を超えないように、前側支持部23の傾斜度合いを示す第1の傾斜角度β1と、後側支持部24の傾斜度合いを示す第2の傾斜角度β2とを設定している。このような構成とすることにより、異径のコインを収納したときの落込み量を最適な値とすることとなり、異径のコインを収納したときの見た目を良くすることができる効果がある。
【0080】
また、第1の傾斜角度β1と第2の傾斜角度β2との和を、75度〜125度との範囲に設定している。このような構成とすることにより、異径のコインを収納したときの落込み量を最適な値とすることとなり、異径のコインを収納したときの見た目を良くすることができる効果がある。この傾斜角度が75度未満となると、コインと周壁との接点が下方へずれるため、コインの前後方向への安定性が低下してしまう。この傾斜角度が125度より大きくなると、異径のコインを収納したときの落ち込み量が増えて、複数枚のコインを収納したときの見た目が悪くなる。
【0081】
また、コイン収納溝14,15の左右の斜面の傾斜角度αは、45度〜75度の間で設定されている。このような構成とすることにより、3枚目のコインを挿入するときの挿入性がよく、小区画領域内に3枚のコインを同時に挿入したときの見た目もよい効果を得ることができる。この傾斜角度が45度未満となると、3枚目のコインを差し込むときの挿入性が悪くなり、この傾斜角度が75度より大きくなると、不快な音が生じることとなる。
【0082】
また、小区画領域12内に形成された2つのコイン収納溝14,15にコインがそれぞれ収納されている場合、すでに収納されている2枚のコインの間に3枚目のコインを差し込み可能とし、当該3枚目のコインは、両コインで挟持された状態で山形仕切体13の頂部13aにより周面が支持されている。このような構成とすることにより、自動車の振動や加速により生じた力がコインに印加されても、小区画領域内の3枚のコインから不快な音を生じない効果がある。
【0083】
なお、本発明を実施形態を通して説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の主旨を逸脱することのない限り、各構成要素の形状のレイアウトなどは適宜変更することができる。また、実施形態においてはコインホルダを自動車内に配設する場合として説明したが、配設する場所は自動車内などに限定されるものではなく、自由に選定可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 コインホルダ
2 周壁
3 前側周壁
4 後側周壁
5 左側壁
6 右側壁
7 ホルダ本体
8 コイン収納空間
11 区画壁
12 小区画領域
13 山形仕切体
14,15 コイン収納溝
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のコインを収納するためのコインホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車内のインストルメントパネルやコンソールボックスに、複数枚のコインを収納するためのコインホルダが設置される場合がある。この種のコインホルダは、通常、厚みや直径の異なる各種金額のコインを収納自在とした構造となっており、例えば特許文献1には、コインポケットの底面に多数の山形突起を突出した構成のコインホルダが開示されている。このコインホルダは、突起間にコインを立て掛けた状態で使用するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】公開実用昭和58−58950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のコインホルダでは、自動車走行時の振動がホルダ内のコインに伝わり、その結果、コインとケースとの接触やコイン同士の接触による不快な音が発生してしまうおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明では、コインを自立しやすい形状にして、不快な音の発生を可及的に防止可能としたコインホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載のコインホルダは、前側周壁と後側周壁とが湾曲状に連続して形成された周壁と、左右側壁とにより形成されたコイン収納空間を備え、コインを厚み方向に並べた状態で複数枚収納可能としたコインホルダにおいて、前記コイン収納空間の左右側壁間に、一定間隔をあけて複数の区画壁を設けて各区画壁間に3枚を限度としてコインを収納可能とした小区画領域をそれぞれ形成するとともに、各小区画領域内の前記周壁に、断面視逆V字状の山形仕切体を挟んで断面視略V字形状のコイン収納溝を左右に形成し、各コインを、前記各コイン収納溝の左右の各斜面と、前記前側周壁における前側支持部及び後側周壁における後側支持部との4個所で支持することにより、自立した状態で収納可能としたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコインホルダにおいて、前記区画壁の基部側面が、前記コイン収納溝の一側斜面を形成していることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のコインホルダにおいて、流通するコインのうち、最大径のコインを前記コイン収納溝に収納したときのコイン下端位置を基準位置とし、他の異径コインを前記コイン収納溝に収納したときのコイン下端位置が前記基準位置よりも落ち込む量が所定値を超えないように、前記前側支持部の傾斜度合いを示す第1の傾斜角度と、前記後側支持部の傾斜度合いを示す第2の傾斜角度とを設定したことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のコインホルダにおいて、前記第1の傾斜角度と前記第2の傾斜角度との和を、75〜125度との範囲に設定したことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4の何れか1項に記載のコインホルダにおいて、前記コイン収納溝の左右の斜面の傾斜角度は、45度〜75度の間で設定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5の何れか1項に記載のコインホルダにおいて、前記小区画領域内に形成された2つのコイン収納溝にコインがそれぞれ収納されている場合、すでに収納されている2枚のコインの間に3枚目のコインを差し込み可能とし、当該3枚目のコインは、両コインで挟持された状態で前記山形仕切体の頂部により周面が支持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のコインホルダによれば、コインを自立しやすい形状としているため、特に、これを自動車内に設けた場合、振動などによる不快な音の発生を可及的に防止することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る実施形態のコイン収納ケースを示す平面図である。
【図2】本発明に係る実施形態のコイン収納ケースを示す斜視図である。
【図3】本発明に係る実施形態のコイン収納ケースを示す平面図である。
【図4】図3に示すコイン収納ケースの断面図である。
【図5】コイン収納ケースの小区画領域を示す断面図である。
【図6】第1の傾斜角度と第2の傾斜角度とコイン接触角を説明する図である。
【図7】コインの落ち込み量を説明する図である。
【図8】各条件に基づいた曲線を示すグラフである。
【図9】従来のコインホルダと各条件に基づいた3種類のコインホルダとを評価した表である。
【図10】コイン収納ケースに同径同厚のコインを収納した状態を示す図である。
【図11】コイン収納ケースに異径異厚のコインを収納した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るコインホルダは、特に、自動車などに設けるのに適しており、前側周壁と後側周壁とが湾曲状に連続して形成された周壁と、左右側壁とにより形成されたコイン収納空間を備え、コインを厚み方向に並べた状態で複数枚収納可能としたコインホルダにおいて、前記コイン収納空間の左右側壁間に、一定間隔をあけて複数の区画壁を設けて各区画壁間に3枚を限度としてコインを収納可能とした小区画領域をそれぞれ形成するとともに、各小区画領域内の前記周壁に、断面視逆V字状の山形仕切体を挟んで断面視略V字形状のコイン収納溝を左右に形成し、各コインを、前記各コイン収納溝の左右の各斜面と、前記前側周壁における前側支持部及び後側周壁における後側支持部との4個所で支持することにより、自立した状態で収納可能としている。
【0015】
そして、このように、コインとコインホルダとを、4個所で支持することによってコインが自立しやすい構成とした上で、前記前側支持部の傾斜度合いを示す第1の傾斜角度と、前記後側支持部の傾斜度合いを示す第2の傾斜角度とを特定している。
【0016】
すなわち、流通するコインのうち、最大径のコインを前記コイン収納溝に収納したときのコイン下端位置を基準位置とし、他の異径コインを前記コイン収納溝に収納したときのコイン下端位置が前記基準位置よりも落ち込む量が所定値を超えないように、前記前側支持部の傾斜度合いを示す第1の傾斜角度と、前記後側支持部の傾斜度合いを示す第2の傾斜角度とを設定しているのである。
【0017】
このとき、前記第1の傾斜角度と前記第2の傾斜角度との和を、75度〜125度との範囲に設定するとよい。
【0018】
また、前記コイン収納溝の左右の斜面の傾斜角度は、45度〜75度の間で設定することが好ましい。
【0019】
こうして、コインとコインホルダとを4個所で支持するとともに、前記第1の傾斜角度と前記第2の傾斜角度と、斜面の傾斜角度とを適宜設定すれば、ある程度の横Gが生じてもコインは自立状態を維持可能となり、コイン同士、あるいはコインとコインホルダとの接触による不快な音の発生を可及的に防止することができる。
【0020】
また、前記区画壁の基部側面は、前記コイン収納溝の一側斜面を形成するように構成すれば、コインホルダを型などで容易に一体成形することが可能となる。
【0021】
また、前記小区画領域内に形成された2つのコイン収納溝にコインがそれぞれ収納されている場合、すでに収納されている2枚のコインの間に3枚目のコインを差し込み可能とし、当該3枚目のコインは、両コインで挟持された状態で前記山形仕切体の頂部により周面が支持されるようにすることができる。
【0022】
本コインホルダによれば、コインを自立状態とすることができるので、自動車の振動や加速による力が生じても、不快な音の発生を可及的に防止することができる効果がある。また、かかる効果は、大きさの異なるコインを収納した場合でも生起される。
【0023】
以下、本発明に係るコインホルダの一実施形態について図を参照しながら説明する。以下では、コインホルダを自動車のコンソールボックスに配設したものとする。
【0024】
本実施形態に係るコインホルダを備える自動車は、図1に示すように、運転席及び助手席のシートの間に小物を収納するための開閉蓋付きのコンソールボックスBが配設されている。コンソールボックスBは、図示するように、上方に開口する箱形状に形成されたボックス本体30と、このボックス本体30の後端に上方かつ後方に引き上げ可能に枢支連結された開閉蓋となる蓋体31とを具備している。
【0025】
ボックス本体30の内部の後側に、本実施形態に係るコインホルダ1が設けられている。
【0026】
本コインホルダの構造について、図2から図9を参照しながら説明する。
【0027】
図2及び図3に示すように、本コインホルダ1は、前側周壁3と後側周壁4とを湾曲状に連続して形成した周壁2と、左右側壁5,6とにより形成されたホルダ本体7を備えている。
【0028】
ホルダ本体7は、上部開口した箱形状に形成されており、コインを厚み方向に並べた状態で複数枚のコインが収納可能なコイン収納空間8がその内部に形成されている。例えば、コイン収納空間8には、日本国の500円から100円、50円、10円、5円、及び1円硬貨などのように、大きさの異なる複数枚のコインを収納することができる。
【0029】
ホルダ本体7の左右側壁5,6間には、一定間隔をあけて複数の区画壁11,・・,11を一体的に設けている。また、各区画壁11は、左右側壁5,6に平行となるように突設されている。区画壁11の基部は、断面視略逆V字状に形成され、その各基部側面21L,21Rは、各コイン収納溝14,15の一側斜面をなすように構成している(図5参照)。このように、コイン収納空間8を複数の区画壁11,・・,11で区切ることにより、ホルダ本体7内には、3枚のコインの収納を限度とする小区画領域12が複数形成されている。すなわち、小区画領域12に、2枚又は3枚のコインをコイン厚み方向に並べた状態で収納することができる。
【0030】
各小区画領域12内の周壁2には、断面視逆V字状の山形仕切体13が突設形成され、この山形仕切体13を挟んで断面視略V字形状のコイン収納溝14,15が左右に形成されている。
【0031】
コイン収納溝14,15における傾斜面の傾斜角度α(水平面を基準)は、コインを自立させる上では重要な要素となる。本実施形態では、図5に示すように、各コイン収納溝14,15の傾斜面の傾斜角度αを45度〜75度の間に設定している。この範囲内にあれば、例えば、コイン収納溝14,15内でコインを起立させているときに当該コインを捩じった場合、復元力がはたらきやすく、自立性を損なうことがないことが理論的に分かったからである。他方、この傾斜角度が75度より大きくなると、自立性が損なわれて不快な音が生じ易くなってしまう。また、この傾斜角度が45度未満となると、3枚目のコインを差し込むときの挿入性が悪くなる。
【0032】
本実施形態に係る本コインホルダ1は、周壁2を、前側周壁3と後側周壁4とを湾曲状に連続して形成し、コインをコイン収納溝14,15に収納した際に、各コインを各コイン収納溝14,15の左右の各斜面21L,21R,22L,22R(例えば図5参照)と、前側周壁3における前側支持部23及び後側周壁4における後側支持部24(例えば図6参照)との4個所で支持するようにして、コインを自立した状態で収納可能としている。
【0033】
すなわち、図6に示すように、一方の前側周壁3における前側支持部23は、第1の傾斜角度β1をなすように形成され、他方の後側周壁4における後側支持部24は、第2の傾斜角度β2をなすように形成されている。
【0034】
以下で説明するコインCは、直径や厚みが異なる硬貨であり、例えば、日本国で流通している500円硬貨は直径や厚みが大きい大型のコインであり、100円硬貨、50円硬貨、10円硬貨は直径や厚みが小さい小型のコインである。
【0035】
かかるコインCのうち、図7に示すように、最大径のコインC2(例えば、500円硬貨)をコイン収納溝14(15)に収納したときのコイン下端位置を基準位置P1とすると、コイン収納溝14(15)に小型のコインC1(例えば50円硬貨)を収納した場合、小型のコインC1のコイン最下端である小型コイン下端位置P2は、先の基準位置P1よりも落ち込むこととなる。
【0036】
この基準位置P1から小型コイン下端位置P2までの距離を落ち込み量Dとすると、ここでは、最小径の他の小型コインC1をコイン収納溝14(15)に収納した場合であっても、落ち込み量Dが所定値を超えないように、前側支持部23の傾斜度合いを示す第1の傾斜角度β1と、後側支持部24の傾斜度合いを示す第2の傾斜角度β2とを設定している。
【0037】
すなわち、第1の傾斜角度β1と前記第2の傾斜角度β2との和である合計角度β3を、75度〜125度との範囲に設定している。この合計角度β3が75度未満となると、コインと前後周壁との接点が下方へずれるため、コインの前後方向への安定性が低下してしまう。この合計角度β3が125度より大きくなると、異径のコインを収納したときの落ち込み量Dが増えて、複数枚のコインを収納したときに各コインの収納姿勢がその高さ方向にデコボコが生じてしまい見た目が悪くなる。
【0038】
ここで、コインがコインホルダ1内で自立した状態で収納可能とするための条件について説明する。
【0039】
なお、図5に示すように、コイン収納溝14,15の水平面を基準とした傾斜面の傾斜角度αは、コイン収納溝14,15の鉛直線を基準とした傾斜角度φとの間には以下の式Aで示す関係がある。
【0040】
角度(90°−α)=コイン収納溝の鉛直線を基準とした傾斜角度φ・・・式A
【0041】
また、図6に示すように、第1の傾斜角度β1はコイン接触角θ1と同じ角度となり、第2の傾斜角度β2はコイン接触角θ2と同じ角度となるため、以下の説明では、コイン収納溝の鉛直線を基準とした傾斜角度φ(以下、単に「角度φ」とする場合がある)及びコイン接触角θ1,θ2を用いて説明する。
【0042】
コインがコインホルダ内で自立した状態で収納できるために、図8に示すように、3つの条件I〜IIIを満たすようにしている。図8において、縦軸は図5中のコイン収納溝14,15の角度φであり、横軸は図6中の前側周壁3や後側周壁4とコイン周面が接触した際のコイン接触角θ1とコイン接触角θ2の和である。
【0043】
条件Iとは、コイン収納溝14,15内のコインに、例えば自動車走行中に、所定の横G(例えば、1.0Gや1.5G)が加わった場合、コインの姿勢が捩れた状態になってしまったとしても元の自立状態に戻ろうとする力が生起されるための角度φ、コイン接触角θ1,θ2を規定するものであり(図5参照)、これら角度φ、コイン接触角θ1,θ2の適正な角度を設定することによって、コイン収納溝14,15内に収納されたコインの自立性が担保される。
【0044】
条件IIとは、図7に示すコイン落込み量Dを規定するものであり、例えば1mmから3mmまで変えたものである。このコイン落込み量Dを適正な値に規定することで、複数のコインの収納姿勢の見栄えを損なわないようにしている。なお、コイン接触角θ1,θ2の和が大きくなるほど異径のコインを収納したときのコイン落込み量Dが増加する。
【0045】
条件IIIとは、コインの挿入性を規定するものである。すなわち、左右のコイン間に3枚目のコインを差し込む際に角度φが小さくなるほど挿入性が悪くなる(図9参照)が、このコイン挿入性を担保するための条件である。このように、本実施形態におけるコインの挿入性とは、両コイン収納溝に2枚のコインが収納された状態で、3枚目のコインを2枚のコイン間に差し入れ易いか、し難いかの度合いであり、すなわち、3枚目のコインを差し入れると、両側のコインの各下部が基部側面の一斜面を上方へ摺動しながら登り易いか、し難いかの度合いでもある。
【0046】
図8のグラフにおいて、曲線L1は、上記条件Iの角度φやコイン接触角θ1,θ2の値を変えたコインホルダを作成し、各コインホルダを自動車に搭載して、コインホルダにコインを収納してコインの厚み方向に重力加速度1.5Gを印加し、コインが自立したまま倒れなかったものを示している。
曲線L2は、上記条件1の角度φやコイン接触角θ1,θ2の値を変えたコインホルダを作成し、各コインホルダを自動車に搭載して、コインホルダにコインを収納してコインの厚み方向に重力加速度1.0Gを印加し、コインが自立したまま倒れなかったものを示している。
【0047】
曲線M1から曲線M3は、上記条件IIのコイン落込み量Dを1mmから3mmまで変えたものを示している。
【0048】
曲線L1と曲線M2とで囲んだ領域では、条件Iと条件IIの両条件を満たすこととなり、さらに、条件IIIの角度φをできるだけ大きくとることで、不快な音が生じず、異径コインを収納した際の見た目(いわゆる見栄え)もよく、3枚目のコイン挿入性をよくしたコインホルダを得ることができる。本例においては、大型のコインとしての500円硬貨に対する小型のコインとしての10円硬貨の落ち込み量Dを2mm以内であることがよいことがわかった。
【0049】
図9の表は、従来のコインホルダX1と、上記条件に基づいた3種類のコインホルダY1,Y2,Y3を評価した結果を示すものである。なお、コイン接触角θ1,θ2の和を、好ましいと考えられる120度とし、コイン接触角θ1,θ2を75度と45度としたが、例えばθ1=85度、θ2=35度であってもよい。また、コイン接触角θ1,θ2の和の値は、少なくとも75度〜125度の範囲内にあればよい。
【0050】
図9に示すように、従来のコインホルダX1は、見た目や挿入性は良いが、不快な音が生じることとなる。
【0051】
コインホルダY1は、不快な音が生じないものの、角度φが30度と小さいためにコイン挿入性が悪いものとなる。
【0052】
コインホルダY2は、不快な音が生じず、見た目もよく、コイン挿入性もよいものとなる。
【0053】
コインホルダY3は、見た目、角度φが45度と大きいためにコイン挿入性がよいものの、3枚目のコインを差し込むときに音が生じてしまうこととなる。
【0054】
上記評価結果から、コインホルダY2は条件Iから条件IIIを満たすこととなる。
【0055】
上述してきた構成のコインホルダ1では、小区画領域12内に形成された2つのコイン収納溝14,15にコインがそれぞれ収納されている場合、すでに収納されている2枚のコインの間に3枚目のコインを差し込むことができる。その場合、当該3枚目のコインは、両コインで挟持された状態で山形仕切体13の頂部13aにより周面が支持されることとなる(図10参照)。
【0056】
したがって、3枚目のコインは、左右のコインで挟持された状態で山形仕切体13の頂部13aにより周面が支持されるため、ガタなどがなくなり、自動車の振動や加速により生じた力がコインに印加されても不快な音を生じるおそれがない。
【0057】
[コインホルダに各種コインを収納した状態]
本コインホルダにコインを収納した状態について図10及び図11を参照しながら説明する。図中には、大小2枚の異型のコインを示しており、小型コインC1は厚さをT1で示し,直径をR1で示す。一方、大型コインC2は厚さをT2で示し、直径をR2で示し、小型コインC1と大型コインC2との間には、T1<T2、R1<R2の関係がある。
【0058】
コインホルダ1の小区画領域12内の両コイン収納溝14,15に、それぞれ同径同厚の小型コインC1L,C1Rを自立した状態で収納した場合について、図10の右側の小区画領域12に収納された小型コインC1L,C1Rを参照しながら説明する。
【0059】
図示するように、一方の左側の小型コインC1Lは、小区画領域12内のコイン収納溝14において、その周面を4個所支持されて収納されている。すなわち、左側の小型コインC1Lの下部左側面は一の区画壁11の基部側面21Rに当接し、小型コインC1Lの下部右側面はコイン収納溝14の一斜面22Lに当接し、さらに、図4に示すように、小型コインC1Lの下部前面は前側周壁3の前側支持部23に当接し、小型コインC1Lの下部後面は後側周壁4の後側支持部24に当接している。
【0060】
また、他方の右側の小型コインC1Rについても、上述の左側の小型コインC1Lと同じように、小区画領域12内のコイン収納溝15において、その周面を4個所支持されて収納されている。すなわち、右側の小型コインC1Rの下部右側面は区画壁11の基部側面21Lに当接し、小型コインC1Rの下部左側面はコイン収納溝15の一斜面22Rに当接し、さらに、図4に示すように、小型コインC1Rの下部前面は前側周壁3の前側支持部23に当接し、小型コインC1Rの下部後面は後側周壁4の後側支持部24に当接している。
【0061】
このように左右の小型コインC1L,C1Rは、小区画領域12内の左右のコイン収納溝14,15にそれぞれ自立した状態のまま収納されており、例えば自動車からの振動や加速度が印加されても2枚の小型コインは、がたつくことなく不快な音を生じない効果がある。
【0062】
次に、コインホルダの小区画領域12内のコイン収納溝14,15に、左中右3枚の同径同厚の小型コインC1L,C1C,C1Rを自立した状態で収納することについて、図10の左側の小区画領域12に収納された小型コインC1L,C1C,C1Rを参照しながら説明する。
【0063】
小型コインC1Cは、小区画領域12内のコイン収納溝14,15に既に2枚のコインC1L,C1Rがそれぞれ収納された状態において、その間に差し込み収納されたものである。
【0064】
この場合、図示するように、これら3枚の小型コインC1L,C1C,C1Rは、密着した状態となり、左右の小型コインC1L,C1Rの両下部側部は2つの区画壁11,11に当接し、3枚の小型コインC1L,C1C,C1Rが2つの区画壁11,11間で挟持されることになる。すなわち、左の小型コインC1Lの下部左側面は一の区画壁11の基部側面21Rに当接し、右の小型コインC1Rの下部右側面は、他の区画壁11の基部側面21Lに当接している。さらに、中の小型コインC1Cは、両側部を左右の小型コインC1L,C1Rに挟持された状態で、中の小型コインC1Cの下部が山形仕切体13の頂部13aに当接している。さらにまた、図4に示すように、3枚の小型コインC1L,C1C,C1Rの各下部前面は前側周壁3の前側支持部23にそれぞれ当接し、3枚の小型コインC1L,C1C,C1Rの各下部後面は後側周壁4の後側支持部24にそれぞれ当接している。
【0065】
このように左中右3枚の小型コインC1L,C1C,C1Rは、各下部同士が密着状態をなして小区画領域12に自立した状態のまま収納されており、しかも、互いに密着してガタがないため、例えば自動車からの振動や加速度が印加されても同径同厚の3枚の小型コインは、がたつくことなく不快な音を生じることがない。
【0066】
次に、コインホルダの小区画領域12内のコイン収納溝14,15に、異径異厚の小型コインC1Lと大型コインC2Rを自立した状態で収納することについて、図11を参照しながら説明する。
【0067】
図11の右側の小区画領域12に収納されている異径異厚の小型コインC1Lと大型コインC2Rのように、一方の左側の小型コインC1Lは、小区画領域12内のコイン収納溝14に次のようにその周面を4個所支持されて収納されている。すなわち、左側の小型コインC1Lの下部左側面は一の区画壁11の基部側面21Rに当接し、小型コインC1Lの下部右側面はコイン収納溝14の一斜面22Lに当接し、さらに、図4に示すように、小型コインC1Lの下部前面は前側周壁3の前側支持部23に当接し、小型コインC1Lの下部後面は後側周壁4の後側支持部24に当接している。
【0068】
また、他方の右側の大型コインC2Rについても、上述の左側の小型コインC1Lと同様に、小区画領域12内のコイン収納溝15において、その周面を4個所支持されて収納されている。すなわち、右側の大型コインC2Rの下部右側面は他の区画壁11の基部側面21Lに当接し、大型コインC2Rの下部左側面はコイン収納溝15の一斜面22Rに当接し、さらに、図4に示すように、大型コインC2Rの下部前面は前側周壁3の前側支持部23にそれぞれ当接し、大型コインC2Rの下部後面は後側周壁4の後側支持部24にそれぞれ当接している。
【0069】
このように異径異厚の小型コインC1Lと大型コインC2Rは、小区画領域12内の左右のコイン収納溝14,15にそれぞれ自立した状態のまま収納されており、例えば自動車からの振動や加速度が印加されても2枚の大小型のコインは、がたつくことなく不快な音を生じない効果がある。
【0070】
次に、コインホルダの小区画領域12内のコイン収納溝14,15に、3枚の異径異厚の大型コインC2L,C2Cと小型コインC1Rを自立した状態で収納することについて、図11の左側の小区画領域12に収納された大型コインC2L,C2Cと小型コインC1Rを参照しながら説明する。
【0071】
3枚目のコインC2Cは、小区画領域12内のコイン収納溝14,15に既に2枚の大小のコインC2L,C1Rがそれぞれ収納された状態において、その2枚のコインC2L,C1Rの間に差し込み収納されるものである。
【0072】
この場合、図示するように、3枚の異径異厚のコインC2L,C2C,C1Rは、密着した状態となり、その左の大型コインC2Lの下部側部と右の小型コインC1Rの下部側部は2つの区画壁11,11に当接し、3枚のコインC2L,C2C,C1Rが2つの区画壁11,11間で挟持されることになる。すなわち、左の大型コインC2Lの下部左側面は一の区画壁11の基部側面21Rに当接し、右の小型コインC1Rの下部右側面は、他の区画壁11の基部側面21Lに当接している。さらに、中の大型コインC2Cは、その両側部を左の大型コインC2Lと右の小型コインC1Rに挟持された状態で、中の大型コインC2Cの下部が山形仕切体13の頂部13aに当接している。さらにまた、図4に示すように、3枚の大小型コインC2L,C2C,C1Rの各下部前面は前側周壁3の前側支持部23にそれぞれ当接し、3枚の大小型コインC2L,C2C,C1Rの各下部後面は後側周壁4の後側支持部24にそれぞれ当接している。
【0073】
このように左中右3枚の大小型コインC2L,C2C,C1Rは、各下部同士が密着状態をなして小区画領域12内に自立した状態のまま収納されており、しかも、互いに密着してガタがないため、例えば自動車からの振動や加速度が印加されても同径同厚の3枚の小型コインは、がたつくことなく不快な音を生じることがない。
【0074】
上述したように本コインホルダは、同径同厚のコインや異径異厚のコインを収納しても異音の発生がなく、自動車内の静寂を保つことができる効果がある。
【0075】
本コインホルダは、コンソールボックス内に設けたが、運転席前のインスツルメントパネルの壁面に取り付け用の開口部を形成して設けてもよいし、或は、運転席側の扉の内壁面に取り付け部を形成して設けてもよい。
【0076】
以上の実施形態により、以下のコインホルダが実現される。
【0077】
すなわち、前側周壁3と後側周壁4とが湾曲状に連続して形成された周壁2と、左右側壁5,6とにより形成されたコイン収納空間8を備え、コインを厚み方向に並べた状態で複数枚収納可能としたコインホルダ1において、コイン収納空間8の左右側壁5,6間に、一定間隔をあけて複数の区画壁11,・・,11を設け、各区画壁11,11間に3枚を限度としてコインを収納可能とした小区画領域12をそれぞれ形成するとともに、各小区画領域12内の周壁2に、断面視逆V字状の山形仕切体13を挟んで断面視略V字形状のコイン収納溝14,15を左右に形成し、各コインを、前記各コイン収納溝14,15の左右の各斜面21L,21R,22L,22Rと、前側周壁3における前側支持部23及び後側周壁4における後側支持部24との4個所で支持することにより、自立した状態で収納可能としている。このような構成とすることにより、コインを自立しやすい形状にして、不快な音の発生を可及的に防止することができる効果がある。
【0078】
また、区画壁11の基部側面が、コイン収納溝14,15の一側斜面21R,21Lを形成している。このような構成とすることにより、型などで一体成形する場合に区画壁とコイン収納溝との成形が容易となる。
【0079】
また、流通するコインのうち、最大径のコインをコイン収納溝14,15に収納したときのコイン下端位置を基準位置P1とし、他の異径コインをコイン収納溝14,15に収納したときのコイン下端位置が基準位置P1よりも落ち込む量Dが所定値を超えないように、前側支持部23の傾斜度合いを示す第1の傾斜角度β1と、後側支持部24の傾斜度合いを示す第2の傾斜角度β2とを設定している。このような構成とすることにより、異径のコインを収納したときの落込み量を最適な値とすることとなり、異径のコインを収納したときの見た目を良くすることができる効果がある。
【0080】
また、第1の傾斜角度β1と第2の傾斜角度β2との和を、75度〜125度との範囲に設定している。このような構成とすることにより、異径のコインを収納したときの落込み量を最適な値とすることとなり、異径のコインを収納したときの見た目を良くすることができる効果がある。この傾斜角度が75度未満となると、コインと周壁との接点が下方へずれるため、コインの前後方向への安定性が低下してしまう。この傾斜角度が125度より大きくなると、異径のコインを収納したときの落ち込み量が増えて、複数枚のコインを収納したときの見た目が悪くなる。
【0081】
また、コイン収納溝14,15の左右の斜面の傾斜角度αは、45度〜75度の間で設定されている。このような構成とすることにより、3枚目のコインを挿入するときの挿入性がよく、小区画領域内に3枚のコインを同時に挿入したときの見た目もよい効果を得ることができる。この傾斜角度が45度未満となると、3枚目のコインを差し込むときの挿入性が悪くなり、この傾斜角度が75度より大きくなると、不快な音が生じることとなる。
【0082】
また、小区画領域12内に形成された2つのコイン収納溝14,15にコインがそれぞれ収納されている場合、すでに収納されている2枚のコインの間に3枚目のコインを差し込み可能とし、当該3枚目のコインは、両コインで挟持された状態で山形仕切体13の頂部13aにより周面が支持されている。このような構成とすることにより、自動車の振動や加速により生じた力がコインに印加されても、小区画領域内の3枚のコインから不快な音を生じない効果がある。
【0083】
なお、本発明を実施形態を通して説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の主旨を逸脱することのない限り、各構成要素の形状のレイアウトなどは適宜変更することができる。また、実施形態においてはコインホルダを自動車内に配設する場合として説明したが、配設する場所は自動車内などに限定されるものではなく、自由に選定可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 コインホルダ
2 周壁
3 前側周壁
4 後側周壁
5 左側壁
6 右側壁
7 ホルダ本体
8 コイン収納空間
11 区画壁
12 小区画領域
13 山形仕切体
14,15 コイン収納溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前側周壁と後側周壁とが湾曲状に連続して形成された周壁と、左右側壁とにより形成されたコイン収納空間を備え、コインを厚み方向に並べた状態で複数枚収納可能としたコインホルダにおいて、
前記コイン収納空間の左右側壁間に、一定間隔をあけて複数の区画壁を設けて各区画壁間に3枚を限度としてコインを収納可能とした小区画領域をそれぞれ形成するとともに、各小区画領域内の前記周壁に、断面視逆V字状の山形仕切体を挟んで断面視略V字形状のコイン収納溝を左右に形成し、各コインを、前記各コイン収納溝の左右の各斜面と、前記前側周壁における前側支持部及び後側周壁における後側支持部との4個所で支持することにより、自立した状態で収納可能とした
ことを特徴とするコインホルダ。
【請求項2】
前記区画壁の基部側面が、前記コイン収納溝の一側斜面を形成している
ことを特徴とする請求項1に記載のコインホルダ。
【請求項3】
流通するコインのうち、最大径のコインを前記コイン収納溝に収納したときのコイン下端位置を基準位置とし、
他の異径コインを前記コイン収納溝に収納したときのコイン下端位置が前記基準位置よりも落ち込む量が所定値を超えないように、前記前側支持部の傾斜度合いを示す第1の傾斜角度と、前記後側支持部の傾斜度合いを示す第2の傾斜角度とを設定した
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のコインホルダ。
【請求項4】
前記第1の傾斜角度と前記第2の傾斜角度との和を、75度〜125度との範囲に設定した
ことを特徴とする請求項3に記載のコインホルダ。
【請求項5】
前記コイン収納溝の左右の斜面の傾斜角度は、45度〜75度の間で設定されている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のコインホルダ。
【請求項6】
前記小区画領域内に形成された2つのコイン収納溝にコインがそれぞれ収納されている場合、すでに収納されている2枚のコインの間に3枚目のコインを差し込み可能とし、当該3枚目のコインは、両コインで挟持された状態で前記山形仕切体の頂部により周面が支持される
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のコインホルダ。
【請求項1】
前側周壁と後側周壁とが湾曲状に連続して形成された周壁と、左右側壁とにより形成されたコイン収納空間を備え、コインを厚み方向に並べた状態で複数枚収納可能としたコインホルダにおいて、
前記コイン収納空間の左右側壁間に、一定間隔をあけて複数の区画壁を設けて各区画壁間に3枚を限度としてコインを収納可能とした小区画領域をそれぞれ形成するとともに、各小区画領域内の前記周壁に、断面視逆V字状の山形仕切体を挟んで断面視略V字形状のコイン収納溝を左右に形成し、各コインを、前記各コイン収納溝の左右の各斜面と、前記前側周壁における前側支持部及び後側周壁における後側支持部との4個所で支持することにより、自立した状態で収納可能とした
ことを特徴とするコインホルダ。
【請求項2】
前記区画壁の基部側面が、前記コイン収納溝の一側斜面を形成している
ことを特徴とする請求項1に記載のコインホルダ。
【請求項3】
流通するコインのうち、最大径のコインを前記コイン収納溝に収納したときのコイン下端位置を基準位置とし、
他の異径コインを前記コイン収納溝に収納したときのコイン下端位置が前記基準位置よりも落ち込む量が所定値を超えないように、前記前側支持部の傾斜度合いを示す第1の傾斜角度と、前記後側支持部の傾斜度合いを示す第2の傾斜角度とを設定した
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のコインホルダ。
【請求項4】
前記第1の傾斜角度と前記第2の傾斜角度との和を、75度〜125度との範囲に設定した
ことを特徴とする請求項3に記載のコインホルダ。
【請求項5】
前記コイン収納溝の左右の斜面の傾斜角度は、45度〜75度の間で設定されている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のコインホルダ。
【請求項6】
前記小区画領域内に形成された2つのコイン収納溝にコインがそれぞれ収納されている場合、すでに収納されている2枚のコインの間に3枚目のコインを差し込み可能とし、当該3枚目のコインは、両コインで挟持された状態で前記山形仕切体の頂部により周面が支持される
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のコインホルダ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−81841(P2012−81841A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228708(P2010−228708)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(596002767)トヨタ自動車九州株式会社 (20)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(596002767)トヨタ自動車九州株式会社 (20)
【Fターム(参考)】
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