説明

コイン識別装置

【課題】
本発明の第1の目的はコインの直径判別精度を向上させることができるコイン識別装置を提供すること、第2の目的はコインの直径判別精度を向上させることができる安価なコイン識別装置を提供すること、第3の目的はコインの直径判別精度を向上させることができる小型かつ安価なコイン識別装置を提供することである。
【解決手段】
コインが転動するコイン通路の上流側と下流側に配置された矩形の第1フェライトコア及び第2フェライトコアに巻き付けられた第1励磁コイル及び第2励磁コイルの出力に基づいてコインの直径の真偽が判別される。
第1フェライトコア及び第2フェライトコアのガイドレールに対し直角方向の長さが異なる。第1のフェライトコアと第2のフェライトコアは一つの複合フェライトコア体に形成されているので、フェライトコア体の取付位相を変更することにより、選別するコイン直径に適切なフェライトコアの端面の長さを得ることができる。これにより、精度高い直径選別をすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コインの真偽及び金種を判別するコイン識別装置に関する。
詳しくは、コインの真偽及び金種を精度よく判別できるコイン識別装置に関する。
さらに詳しくは、改良された端面形状のフェライトコアを用いることによりコインの真偽及び金種を精度よく判別できるコイン識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
第1の従来技術として、コインが転動するガイドレールに対し平行であって、かつ、前記コインの中心に相対する直線上に端面が矩形又は円形の複数のフェライトコアを配置し、当該フェライトコアに巻きつけた励磁コイルからの信号を用いて当該コインの厚みの真偽を判別するコイン識別装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
第2の従来技術として、コインが転動するガイドレールに対し平行であって、かつ、前記コインの中心に相対する直線上に端面が短辺と長辺とからなる矩形の複数のフェライトコアを配置し、当該短辺が前記ガイドレールと平行に配置され、かつ、の当該フェライトコアに巻きつけた励磁コイルからの信号を用いて当該コインの厚みの真偽を判別するコイン識別装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
第3の従来技術として、投入口に投入されたバイメタルコインが傾斜するガイドレール上を転がってガイドされるコイン通路に沿って直径センサ、材質センサ及び厚みセンサを配置し、前記各センサは前記コイン通路を挟んで相対配置したフェライトコア及び励磁コイルによって構成されているバイメタルコイン用コインセレクタにおいて、前記厚みセンサは少なくともバイメタルコインの中心部のコアに相対配置される第1厚みセンサと、バイメタルコインの周縁部のリムに相対配置される第2厚みセンサとよりなり、前記コイン通路の前記ガイドレールに対し直交する線上に前記ガイドレール側から前記第2厚みセンサ及び前記第1厚みセンサの順に配置すると共に同線上であって、前記第1厚みセンサ及び第1直径センサよりも前記ガイドレールから遠い位置に第2直径センサを配置し、前記線より上流の前記ガイドレールに対し直交する線上に前記第1厚みセンサと第2厚みセンサに近接して、前記ガイドレール側から順に材質センサ、前記第1直径センサを配置したことを特徴とするバイメタルコイン用コインセレクタが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
第4の従来技術として、フェライトコアに励磁コイルを巻き付けた3個のセンサが、横一列に並んで一体化して配設固定されている構造の識別センサを一対ずつ4個用意し、垂下するコイン通路を挟んで相対配置された識別センサを2組設けて第1コイン検知部と第2コイン検知部をコイン通路におけるコイン移動方向に対して上流側と下流側に配置してなり、前記第1コイン検知部は、コインの両端部通過位置に対応位置する両端センサにより直径を検出する径検出第1センサと、コインの中央部通過位置に対応位置した材質を検出する材質センサを有し、一方、第2コイン検知部は、コインの左右端部通過位置に対応位置する両端センサより直径を検出する径検出第2センサと、コインの中央部通過位置に対応位置したコインの厚みを検出する厚みセンサを有するものと成し、かつ前記径検出第1センサの径データのピーク値出力時点で前記材質センサの検出出力をピックアップし、材質の判断値データとして取得し、前記径検出第2センサの径データのピーク値出力時点で厚みセンサの検出出力をピックアップし、厚みの判断値データとして取得して、これら直径、材質および厚みのデータからコインの真贋を判別するようにしたコインセレクタのコイン識別装置が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4094215号(図1〜図17、段落番号0028〜0142)
【特許文献2】特許第4370740号(図1〜6、段落番号0015〜0044)
【特許文献3】特許第402583号(図1〜4、段落番号0006〜0045)
【特許文献4】特開2008-9894号(図1〜16、段落番号0006〜0046)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
第1及び第2の従来技術においては、複数の矩形端面のフェライトコアの位置がガイドレールから等距離にあるため、コインの厚みを検知するには適しているがその他の直径又は材質の判別のため別にポットコア等のセンサをコイン通路に沿って配置せねばならない。
換言すれば、通常、直径判別のためのセンサは円形であるため、センサが大型化する問題がある。
また、第4の従来技術には直径センサのため矩形のフェライトコア端面が開示されているため直径選別用に第1の従来技術に開示された矩形端面のフェライトを用いることが考えられるが、コインの物理情報を取得できる範囲は、ガイドレールに対し直交する直線上に位置するフェライトコア端面の長さの範囲内だけてある。
また、コインに相対する端面を有するフェライトの周囲に励磁コイルを配置し、当該励磁コイルに対し高周波電流を印加することにより、金属の存在を検知する方式のセンサにあっては、コインとフェライトコア端面との相対する面積比率の変動が少ない程、検出精度が向上する。
換言すれば、同じフェライトコア端面の面積であれば、フェライト端面の面積が小さいほど相対する金属の面積に対する判別精度が向上する。
【0008】
第3の従来技術には、コインが転動する方向における上流側と下流側に隣接してガイドレールに対し直交する方向の距離が異なる位置に円形のフェライトコアの端面が相対する同一構成のセンサが相対する直径センサが開示されている。
このように第1直径センサと第2直径センサとを用いることにより、大径コインと小径コイン用に使い分けできるので、前記のように判別精度が高まる利点がある。
この第3の従来技術と第4の従来技術に記載の直径センサのための矩形のフェライトコア端面とを組み合わせることにより、直径検出のためのフェライトコアの端面を矩形とし、コイン通路の上流と下流であって、かつ、ガイドレールからの距離が異なる位置に直径センサのためのフェライトコア端面を配置することが考えられる。
この場合、フェライトコア端面の大きさは同一であるため、コイン直径に応じて精度が高いフェライトコア端面の面積を設定することができない問題がある。
【0009】
この問題を図21を参照して詳細に説明する。
コイン識別装置10における傾斜する直線状ガイドレール12上に最大コイン厚みよりも僅かに広い幅のコイン通路14が形成される。コイン通路14の上流側に第1直径センサ16、下流側に第2直径センサ18が配置されている。
第1直径センサ16及び第2直径センサ18は、コイン通路14の両側に配置された矩形の第1フェライトコア22、第2フェライトコア24をそれぞれ有する。
第1フェライトコア22及び第2フェライトコア24の周囲には励磁コイル(図示せず)がそれぞれ巻き付けられる。
この例では、ガイドレール12から遠く配置されている第1直径センサ16が大径コインのための大径直径センサ、第2直径センサ18が小径コインのための小径直径センサとして使用される。
第1フェライトコア22及び第2フェライトコア24はガイドレール12に対し直交方向にそれぞれ長さL10を有する。
【0010】
仮にこのコイン識別装置10において使用される最大径コインLCの直径をDx、最小径コインSCの直径をDnとした場合、第1フェライトコア22のガイドレール12から遠い外端縁22Eは、最大径コインLCの直径Dxに大径偽貨排除長さL11を加えた分、ガイドレール12から離れていれば良い。大径偽貨排除長さL11は、正貨よりも大きな偽貨の直径を判別するための物理的情報を取得可能とすると共に検出精度を低下させないように設定する必要がある。換言すれば、可及的に小さい方がよい。
また、第2フェライトコア24のガイドレール12に近い内端縁24Eも、小径偽貨を判別するための物理情報を取得するため、最小径コインCSの直径Dnよりも小径偽貨排除長さL13分ガイドレール12に近い位置に配置されることが好ましい。
【0011】
また、第1のフェライトコア22と第2フェライトコア24とのオーバーラップ長さLORは、可及的に小さいことが要求される。なぜなら、フェライトコア端面の面積が大きくなると、検出精度が低下するためである。
したがって、理想的には、第1フェライトコア22の外端縁22Eは、最大径コイン直径Dxに大径偽貨排除長さL11を加えた位置に、第2フェライトコア24の内端縁24Eは最小径コイン直径Dnから小径偽貨排除長さL13を減じた位置に位置し、第1フェライトコア22の端面と第2フェライトコア24の端面のオーバーラップ長さL14は製造や組付上の誤差があっても必ずオーバーラップする長さ、例えば0,5ミリに設定する必要がある。
そこで、多様なコイン直径に適合するよう、多種寸法のフェライトコアを製造することが考えられる。
しかし、フェライトコアは、一般に鉄粉及び金属酸化物を焼結法によって成形するので、多種寸法のフェライトコアを多数製造することは製造コスト上不利になり、俄に採用できない。
【0012】
本発明の第1の目的は、コインの直径判別精度を向上させることができるコイン識別装置を提供することである。
本発明の第2の目的は、コインの直径判別精度を向上させることができる安価なコイン識別装置を提供することである。
本発明の第3の目的は、コインの直径判別精度を向上させることができる小型かつ安価なコイン識別装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するため、本発明は以下のように構成されている。
前下がりに傾斜するガイドレール上を転動するコインの転動過程において当該転動するコインの両側において前記ガイドレールに対し直交する方向の距離が異なる位置において、前記コインの転動方向の上流側と下流側にずらして複数の矩形フェライトコアの端面を配置し、当該フェライトコアに巻き付けたコイルからの信号に基づいて当該コインの真偽又は金種を判別するようにしたコイン識別装置において、前記ガイドレールに対し直角方向に延在する第1軸線AL1及び第2軸線AL2上に複数の矩形のフェライトコアの端面が配置され、それらフェライトコアは接続壁によって連結されて一体化されると共に、前記第1軸線AL1及び第2軸線AL2上の前記ガイドレールから遠いフェライトコア端面の前記ガイドレールからの距離が異なることを特徴とするコイン識別装置である。
【0014】
請求項2の発明は、前記フェライトコア端面の前記ガイドレールに対し直角方向の長さがそれぞれ異なる第1長さで形成された第1フェライトコア端面と、前記第1長さよりも短い第2長さで形成された第2フェライトコア端面を有する複合フェライト体を複数設け、前記複合フェライト体は第1フェライトコア端面又は第2フェライトコア端面の一方が前記ガイドレールに対し近く、かつ、他方が前記ガイドレールに対し遠くなる位置関係に配置され、さらに、少なくともコイン転動方向の上流側と下流側に隣接する前記複合フェライト体の一方の複合フェライト体の前記ガイドレールから遠いフェライトコア端面は前記第1の長さを有する第1フェライトコア端面であり、他方の複合フェライト体の前記ガイドレールから遠いフェライトコア体端面は前記第2の長さを有する第2フェライトコア端面であることを特徴とする請求項1のコイン識別装置である。
【0015】
請求項3の発明は、請求項2のコイン識別装置において、上流側の前記複合フェライト体は第1フェライトコア端面が前記ガイドレールから遠く配置され、下流側の前記複合フェライト体は第2フェライトコア端面が前記ガイドレールから遠く配置されることを特徴とする。
【0016】
請求項4の発明は、請求項2のコイン識別装置において、前記上流側の複合フェライト体と前記ガイドレールとの間に第2厚みセンサが配置されていることを特徴とする。
【0017】
請求項5の発明は、投入口に投入されたコインが傾斜するガイドレール上を転がってガイドされるコイン通路に沿って直径センサ、材質センサ及び厚みセンサを配置し、前記各センサは前記コイン通路を挟んで相対配置したフェラトコア及びコイルを含むコイン識別装置において、前記コイン通路に向かって所定の間隔で突出する第1のフェライトコアと第2のフェライトコアの端面が矩形であって、前記端面の反対側において前記第1のフェライトコアと第2のフェライトコアが接続壁により接続されて一体化され、前記第1のフェライトコアと第2のフェライトコアは前記ガイドレールに対して直交する方向の長さが異なって形成されると共に、前記ガイドレールに対し直角方向の近い位置と遠い位置とに配置された複合フェライト体が前記コイン通路の上流側に配置された第1複合フェライト体と下流側に配置された第2複合フェライト体とによって構成され、前記第1の複合フェライト体と第2の複合フェライト体の前記第1のフェライトコアと第2のフェライトコアは前記ガイドレールからの距離が逆の関係に配置されると共にそれぞれ前記ガイドレールからの距離が同一である部位を含み、前記第1複合フェライト体と第2複合フェライト体の前記ガイドレールからの距離が大きいフェライトコアに関連するコイルが直径選別に用いられ、前記ガイドレールからの距離が小さいフェライトコアに関連するコイルが材質選別又は厚み選別に用いられることを特徴とするコイン識別装置である。
【0018】
請求項6の発明は、請求項5に記載のコイン識別装置において、前記第1のフェライトコアと第2のフェライトコアの側壁を囲う磁束壁を前記接続壁に対し連続して設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
この構成によれば、ガイドレール上を転動するコインはコイン通路の側方に配置された矩形のフェライトコアの端面と相対する。
ガイドレールに対し直角をなす軸線上に配置された第1フェライトコアと第2フェライトコアとは、接続壁によって接続され、一体化されている。
そして上流側に位置する第1フェライト体と下流側に位置する第2フェライト体の前記ガイドレールから遠い位置に位置するフェライトコアの端面は、ガイドレールから異なる位置に配置されている。
これにより、第1フェライト体の直径センサ及び第2フェライト体の直径センサを大径コイン用又は小径コイン用に使い分けることができるので、コイン直径の選別精度を向上させることができる。すなわち、例えば第1フェライトコアの端面面積に対する最大径コインの相対面積を最適に設定し、また、第2フェライトコアの端面面積に対する最小径コインの相対面積を最適に設定することができるため、コインの直径による信号出力の変化が大きくなるからである。
また、複数のフェライトコアを接続壁で一体化したので、1つのフェライト体に直径判別のためのフェライトコア及び厚み判別のためのフェライトコア又は材質判定のためのフェライトコアが一体化されている。よって、フェライトコア体自体を小型化できるので、コイン識別装置を小型にできる利点がある。
さらに、複数のフェライトコアを一体化することにより製造工程の減少及び原材料の少量化等により、コスト低減を図ることができる利点がある。
【0020】
請求項2の発明によれば、第1フェライトコア端面と第2フェライトコア端面との長さが異なるため、一の組み合わせにおいて、一の複合フェライトコア体における直径センサとして第1フェライトコア端面を採用し、他のフェライトコア体における直径センサとして第2フェライトコア端面を採用することができ、第2の組み合わせにおいて第2フェライトコア端面どうしを直径センサに採用することができる。結果として、使用されるコインの直径に応じてコイン識別装置の判別精度を高めることができる。
換言すれば、同一構成の二つの複合フェライトコア体を用いることによって、コインとの相対面積が異なる少なくとも二種の直径センサを構成することができ、直径選別精度が高い直径センサを構築できる利点がある。
また、直径センサとして用いないフェライトコアは、材質センサ又は厚みセンサとして用いることができるので、複合フェライトコア体が小型になり、小型のコイン識別装置が得られる利点がある。
【0021】
請求項3の発明において、上流側の複合フェライト体は第1フェライトコア端面が前記ガイドレールから遠く配置され、下流側の複合フェライト体は第2フェライトコア端面が前記ガイドレールから遠く配置されている。
これにより、同一長さのフェライトコア端面でないため、コインの直径の物理情報を精度良く検出でき、識別精度が高いコイン識別装置を得ることができる利点がある。
【0022】
請求項4の発明において、上流側の複合フェライト体と前記ガイドレールとの間に厚みセンサが配置されている。
これにより、当該厚みセンサはコインの周縁近傍の厚みを検知することができる。換言すれば、コインがバイメタルコインである場合、リム部の厚みを検知でき、コイン中央部の厚みセンサと併せて厚みによる選別ができるので、厚み選別の精度が向上する利点がある。
さらに、中央部の厚みセンサとリム部の厚みセンサの周波数を、低周波と高周波に設定することによりそれらの材質に対応して精度の高い判別を行うことができる。特に、中央部がクラッド構造の場合、中央部の厚みセンサに高周波電流を供給し、リム部の厚みセンサに対しては低周波電流を供給することが、精度高い厚み判別のために好ましい。
【0023】
請求項5の発明において、投入口に投入されたコインはガイドレール上を転動してコイン通路を移動する。転動するコインは、コイン通路の側方に配置された直径センサ、材質センサ及び厚みセンサによって、直径、材質及び厚みの真偽を判別するための情報を取得する。
そして、前記各センサは、コイン通路に向かって所定の間隔で突出する第1のフェライトコアと第2のフェライトコアの端面が矩形であって、前記端面の反対側において前記第1フェライトコアと第2フェライトコアが接続壁により接続されて一体化された第1及び第2複合フェライト体によって構成される。前記第1フェライトコアと第2フェライトコアは前記ガイドレールに対して直角方向の長さが異なって形成されると共に、前記ガイドレールに対し近い位置と遠い位置とに配置された複合フェライト体が前記コイン通路の上流側に配置された第1複合フェライト体と下流側に配置された第2複合フェライト体とによって構成され、前記第1複合フェライト体と第2複合フェライト体の前記第1フェライトコアと第2フェライトコアは前記ガイドレールからの距離が逆の関係に配置されると共にそれぞれ前記ガイドレールからの距離が同一である部位を含んでいる。
換言すれば、第1複合フェライト体と第2複合フェライト体とは、同一の複合フェライト体を使用し、一方に対し他方を逆向きに配置することでセンサを構成する。そして、ガイドレールから遠い、上流側の第1複合フェライト体の第1フェライトコアの端面により大径コイン用の直径センサを、及び第2フェライト体の第2フェライトコアの端面によって小径用の直径センサを構成している。
また、第1複合フェライト体の第2フェライトコアの端面は、厚みセンサとして用いられ、第2複合フェライト体の第1フェライトコアの端面は材質センサとして用いられる。
したがって、1つの複合フェライト体において二つのフェライトコア端面が形成されているのでセンサを小型に構成することができ、結果として、コイン識別装置を小型にできる利点がある。
【0024】
請求項6の発明において、第1フェライトコアと第2フェライトコアの側壁を囲う磁束壁を前記接続壁に対し連続して設けられている。
この構成において、磁束壁によってフェライトコア周囲から漏れる磁束を減少できるので、複合フェライト体を小型化でき、結果として小型のコイン識別装置を構成することができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の実施例1のコイン識別装置の斜視図である。
【図2】図2は、本発明の実施例1のコイン識別装置の脊面図である。
【図3】図3は、本発明の実施例1のコイン識別装置のドアプレートを取り除いた斜視図である。
【図4】図4は、本発明の実施例1のコイン識別装置のドアプレート等を取り除いた正面図である。
【図5】図5は、本発明の実施例1のコイン識別装置のドアプレートの裏面図である。
【図6】図6は、図4におけるA―A線断面図である。
【図7】図7は、本発明の実施例1のコイン識別装置の複合フェライト体の配置説明図である。
【図8】図8は、本発明の実施例1のコイン識別装置の第1、第2コインセンサにおける複合フェライト体の配置図であって、(A)は第1コインセンサ、(B)は第2コインセンサである。
【図9】図9は、本発明の実施例1のコイン識別装置の第1複合フェライト体であって、(A)は正面図、(B)は(A)におけるB-B線断面図である。
【図10】図10は、本発明の実施例1のコイン識別装置の第2複合フェライト体であって、(A)は正面図、(B)は(A)におけるC-C線断面図である。
【図11】図11は、本発明の実施例1のコイン識別装置の判別装置のブロック図である。
【図12】図12は、本発明の実施例1のコイン識別装置の作用説明のための500円コインの場合の波形図である。
【図13】図13は、本発明の実施例1のコイン識別装置の作用説明のための10円コインの場合の波形図である。
【図14】図14は、本発明の実施例1のコイン識別装置の作用説明のための100円コインの場合の波形図である。
【図15】図15は、本発明の実施例1のコイン識別装置の作用説明のための50円コインの場合の波形図である。
【図16】図16は、本発明の実施例1のコイン識別装置の作用説明図であって、(A)はフェライトコアの配置図、(B)は波形図である。
【図17】図17は、本発明の実施例2のコイン識別装置のフェライトコア体の配置説明図であり、(B)は好ましい選別対象としてのバイメタルコインの説明図である。
【図18】図18は、本発明の実施例2のコイン識別装置の作用説明のための500円コインの場合の波形図である。
【図19】図19は、本発明の実施例3のコイン識別装置のフェライトコア体の配置説明図である。
【図20】図20は、本発明の実施例4のコイン識別装置のフェライトコア体の配置説明図である。
【図21】図21は、本発明に係る従来技術の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、投入口に投入されたコインが傾斜するガイドレール上を転がってガイドされるコイン通路に沿って直径センサ、材質センサ及び厚みセンサを配置し、前記各センサは前記コイン通路を挟んで相対配置されたフェラトコア及び励磁コイルを含むコイン識別装置において、前記コイン通路に向かって所定の間隔で突出する第1フェライトコアと第2フェライトコアの端面が矩形であって、前記端面の反対側において前記第1フェライトコアと第2フェライトコアが接続壁により接続されて一体化され、前記第1フェライトコアと第2フェライトコアの側面を囲う磁束壁を前記接続壁に対し連続して設け、前記第1フェライトコアと第2フェライトコアは前記ガイドレールに対して直角方向の長さが異なって形成されると共に、前記ガイドレールに対し近い位置と遠い位置とに配置された複合フェライト体が前記コイン通路の上流側に配置された第1複合フェライト体と下流側に配置された第2複合フェライト体とによって構成され、前記第1複合フェライト体と第2複合フェライト体の前記第1フェライトコアと第2フェライトコアは前記ガイドレールに対し逆の関係に配置されると共にそれぞれ前記ガイドレールから距離が同一である部位を含み、前記第1複合フェライト体と第2複合フェライト体の前記ガイドレールからの距離が大きいフェライトコアに関連する励磁コイルが直径選別に用いられ、前記ガイドレールからの距離が小さいフェライトコアに関連する励磁コイルが材質選別又は厚み選別に用いられることを特徴とするコイン識別装置である。
【実施例1】
【0027】
次に本発明の実施例1のコイン識別装置100の概要が図1及び図4を参照して説明される。
なお、本実施例1においては、日本円の10円、50円、100円及び500円コインの4金種を選別対象として説明するが、これらに加え1円及び5円を対象にすること、又は米国ドル、ユーロ、中国元等の外国コインを識別対象にすることができる。
コイン識別装置100は、大まかには投入口102、コイン通路104、コインセンサ装置106、振分装置108、正貨通路112、リジェクト通路114、キャンセル装置116、キャンセル通路118、及び、制御装置122を含んでいる。
【0028】
まず、投入口102を主に図1を参照して説明する。
投入口102は、識別されるべきコインCが投入される機能を有する。
通常、識別される複数のコインCのうち最大直径コインの直径よりも僅かに長く、最大厚みコインの厚みよりも僅かに厚い寸法に形成された矩形スリット形に形成される。
本実施例1において、投入口102は、縦向き矩形の本体124及び本体124に上端を回動自在に取り付けられたドアプレート126によって形成されている。
【0029】
まず本体124を主に図3を参照して説明する。
本体124は、縦横が3.5インチのデファクトスタンダード寸法に形成された大凡箱形の筐体であって、絶縁体、例えば樹脂によって成形されている。
本体124は、その両端部にT字形に左サイドプレート134及び右サイドプレート136が一体成形され、それらの間にほぼ垂立する平板状のベースプレート138が形成され、全体として平面視H形をしている。
したがって、本体124の正面側には、ベースプレート138を底とし、左サイドプレート134及び右サイドプレート136を側壁とする縦向きの装着溝142が形成される。
この装着溝142には、振分装置108、ドアプレート126、通路規制プレート128及びキャンセル通路カバ132等が配置される。
また、ベースプレート138の上端部はコイン通路104の一部を画定形成する。
すなわち、ベースプレート138の右上端部には投入口102を下向きにすぼまる漏斗状に構成するための、下向きの受入傾斜部140が形成されている。
【0030】
次にドアプレート126を主に図5を参照して説明する。
ドアプレート126は、本体124と共同してコイン通路104を形成すると共にコインセンサ装置106の一部を保持し、さらに、コイン通路104においてジャムしたコインCを排除するため移動される機能を有する。
ドアプレート126は樹脂等の絶縁体によって大凡矩形に成形され、図4においてベースプレート138の右上部において右肩下がりの第1回転軸線RL1に沿って形成された円柱形の第1支軸144及び第2支軸146にその上端部形成した第1軸受孔148、第2軸受孔152を回動自在に嵌め合わせられ、その内側のドア案内壁154はベースプレート138の大凡上側半分に対し所定の間隔、すなわち最大コイン厚みよりも僅かに大きな間隔で平行に相対される。
また、ドアプレート126は、スプリング等の付勢装置(図示せず)によりベースプレート138に近づくように弾性的に付勢され、後述のガイドレール156の側端面を本体124のベースプレート138に突き当てることによりベースプレート138の上部案内壁162に対し前記間隔で平行に保持される。
ドアプレート126は、第1支軸144及び第2支軸146回りにその下端部がベースプレート138から離れるように回動された場合、上部案内壁162に対し下側程離れるよう回動される。これにより、コイン通路104においてジャムしたコインCが重力により落下可能になり、キャンセル通路118へ落下させ、最終的にリジェクト口282へキャンセルすることができる。
【0031】
次に、投入口102をさらに詳細に説明する。
本実施例1において、投入口102は平面視横長矩形のスリット状であって、その長さは最も直径が大きい500円コインの直径よりも僅かに大きく、かつその幅は最も厚い500円コインの厚みよりも僅かに大きく形成されている。
ドアプレート126の左上部に下方に延在する投入凹溝158が形成され、ベースプレート138の受入傾斜部140と共同して、ベースプレート138の左上端部に投入口102が形成される。
よって、投入口102には1円〜500円コインを投入することができるが、1円及び5円コインは偽貨としてリジェクトされる。
【0032】
次にコイン通路104が主に図4を参照して説明される。
コイン通路104は、投入口102に投入されたコインCが転動する薄板状の通路であり、大凡S形に形成されている。
コイン通路104は、本体124のベースプレート138の上端部のほぼ垂立する上部案内壁162とドアプレート126の裏面のドア案内壁154との間に形成される。
ベースプレート上部案内壁162及びドア案内壁154は、転動するコインCがその面方向に傾いて転動するよう、コイン通路104がその一側面側に僅かに傾斜している。
コインCを当該案内壁162にもたれさせつつ転動させ、コインセンサ装置106に対するコインCの位置を安定させるためである。
ドア案内壁154の側部から下端部にかけて横向きに最厚コインの厚みよりも僅かに大きい幅でガイドレール156が突出形成されている。
【0033】
ドアプレート126のドア案内壁154は、下部のガイドレール156の側端面が上部案内壁162に当接した状態においてベースプレート138の上部案内壁162と平行になるように設定される。
図5におけるドアプレート126の左上端から下部にわたり、弧状のガイドレール156が案内壁154から横向きに突出形成されている。
ガイドレール156は投入口102からほぼ垂直下方に伸びる垂下部164、垂下部164に続いて横向きに転向させる転向部166、及び所定の角度で下向きに直線的に傾斜する傾斜部168より構成される。
本実施例1において、転向部166はコインCが衝撃的に落下するので、金属片により構成されている。
【0034】
ガイドレール156の上面の転動面172は、ベースプレート138の上部案内壁162に対し直角に形成されている。
換言すれば、傾斜する上部案内壁162、及びそれに平行に配置されたドア案内壁154によって形成されるコイン通路104は、コインの面方向において上部案内壁162側へ僅かに傾斜しており、ガイドレール156上を転動するコインCは、上部案内壁162にもたれかかりつつ転動する。
また、ガイドレール156の上方のベースプレート138の上部案内壁162から横方向に突出し、かつ当該ガイドレール156と平行に上側ガイドレール174が形成されている。
ガイドレール156と上側ガイドレール174との間隔は、コインCのうち、最大径コインの500円コインの直径よりも僅かに大きく設定されている。
【0035】
以上の説明から明らかなように、コイン通路104は、上部案内壁162、ドア案内壁154、ガイドレール156及び上側ガイドレール174により画定形成された垂線に対し僅かに傾斜され、かつ500円コインの厚みよりも僅かに厚い傾斜する薄板状の空間である。
また、コイン通路104は投入口102からほぼ垂直下方にコインCのほぼ直径分伸びる垂下通路176、垂下通路176に続いて横向き連続する転向通路178及び前下がりに直線的に傾斜する傾斜通路182により構成される。
換言すれば、コイン通路104は投入口102から下向きの弧状であり、全体としては前下がりの傾斜通路を構成する。
なお「前下がり」とは、コインの転動方向の前方に向かって下方という意味である。
【0036】
次にコインセンサ装置106が図2及び図4並びに図7〜10を参照して説明される。
コインセンサ装置106は、コイン通路104の傾斜通路182を転動するコインCの真贋及び金種を判別するための物理的特徴を検知する機能を有する。
コインセンサ装置106は、コイン通路104に相対してベースプレート138及びドアプレート126にそれぞれ固定された第1コインセンサ184及び第2コインセンサ186を含んでいる。
図8に示すように第1コインセンサ184は、コイン通路104を挟んで左右に配置された第1複合フェライト体188と第2複合フェライト体192によって構成されている。
第2コインセンサ186は、コイン通路104を挟んで左右に配置された第3複合フェライト体194と第4複合フェライト体196とによって構成されている。
第1複合フェライト体188、第2複合フェライト体192、第3複合フェライト体194及び第4複合フェライト体196は同一構成であるので、第1複合フェライト体188を代表してその構成を説明し、その他の複合フェライト体の同一部には同一符号を付し、末尾の「1」を「2」、「3」又は「4」に変更して付し、説明を省略する。
【0037】
第1複合フェライト体188が図9を参照して説明される。
第1複合フェライト体188は、断面矩形であって、所定長さ(高さH1)の第1フェライトコア202-1と第2フェライトコア204-1とを有し、それら端面がコイン通路104に面するようベースプレート138の裏面に固定される。
第1フェライトコア202-1及び第2フェライトコア204-1の反コイン通路104側は、接続壁206-1によって接続されている。
第1フェライトコア202-1と第2フェライトコア204-1との周囲には矩形の磁束壁208-1が配置されている。
また、第1フェライトコア202-1、第2フェライトコア204-1及び接続壁206-1と磁束壁208-1との間も、第2接続壁212-1によって接続されている。
第1複合フェライト体188の形状を概括すれば、長方形鍋型の中央の鍋底部216-1から二つの角柱状の第1フェライトコア202-1及び第2フェライトコア204-1が突出している。
磁束壁208-1と第1フェライトコア202及び第2フェライトコア204の端面は同一平面内に位置している。
第1フェライトコア202-1及び第2フェライトコア204-1の周囲には、矩形リング形の第1コイル218-1、第2コイル220-1が配置され、接着剤等により不動に固定されている。
なお、第1コイル218-1、第2コイル220-1は矩形リング形に替えて円形リング形にすることもできる。
【0038】
磁束壁208-1の第1短辺壁222-1及び対辺の第2短辺壁224-1の中間の中央には、所定の一定幅を有する第1短辺溝226-1、第2短辺溝228-1がそれぞれ形成されている。
磁束壁208-1の第1長辺壁232-1及び対辺の第2長辺壁234-1の中間には、第1長辺溝236-1、第2長辺溝238-1がそれぞれ形成されている。
第1短辺溝226-1、第2短辺溝228-1、第1長辺溝236-1及び第2長辺溝238-1は第1複合フェライト体188の位置決め及び第1コイル218-1、第2コイル220-1のリード線の配線に用いられる。
第1複合フェライト体188の長手方向中央に位置する第1軸線AL1はガイドレール156の傾斜部168に対し直角をなすように配置される。
第1軸線AL1は、第1短辺溝226-1及び第2短辺溝228-1の中央に位置する。
第1短辺溝226-1及び第2短辺溝228-1にはベースプレート138の裏面から突出する断面矩形の第1位置決め突起242-1、第2位置決め突起244-1が挿入され、第1長辺溝236-1及び第2長辺溝238-1には同様にベースプレート138の裏面から突出する断面矩形の第3位置決め突起243-1、第2位置決め突起245-1が挿入され、ガイドレール156に対する第1複合フェライト体188の位置決めがなされる。
【0039】
第1複合フェライト体188において、ガイドレール156に対し遠い位置に位置する第1フェライトコア202-1の端面は、ガイドレール156に対し直角なす第1軸線AL1に沿ってL1の長さを有する。
ガイドレール156に対し近い位置に位置する第2フェライトコア204-1の端面は、ガイドレール156に対し直角をなす線AL1に沿ってL2の長さを有する。
長さL1は、長さL2よりも長い、換言すれば、第1フェライトコア202-1の第1軸線AL1に沿った長さL1は第2フェライトコア204-1の長さL2よりも長い、更に換言すれば、第1フェライトコア202-1の長さL1は第2フェライトコア204-1の長さL2とは異なる。
第1複合フェライト体188に相対してドアプレート126の裏面にも第2複合フェライト体192が固定されている。
【0040】
次に第2コインセンサ186を図10を参照して説明する。
第2コインセンサ186は、第1コインセンサ184に対しコイン通路104との関係では下流側に隣接して配置されている。
第2コインセンサ186は第3複合フェライト体194及び第4複合フェライト体196を含んでいるので、ベースプレート138に固定されている第3複合フェライト体194を代表して説明する。
その第1フェライトコア202-3、及び第2フェライトコア204-3が第1軸線AL1と平行な、換言すれば、ガイドレール156に対し直角をなす第2軸線AL2上に配置され、かつ、第1コインセンサ184の第1フェライトコア202-1、及び第2フェライトコア204-1とは逆の位置関係には配置されている。換言すれば、第2コインセンサ186は、第1コインセンサ184と上下関係において逆向きに配置されている。
詳しくは、第2フェライトコア204-3がガイドレール156から遠い位置に、第1フェライトコア202-3がガイドレール156に近い位置に配置され、第3位置決め突起246-3が第4短辺溝228-3に、第4位置決め突起248-3が第3短辺溝226-3に、同様に第3位置決め突起243-3、第4位置決め突起245-3が第3長辺溝243-3、第4長辺溝245-3にそれぞれ嵌め合わされて位置決めされた上、ベースプレート138の裏面に固定されている。
【0041】
次に第1コインセンサ184と第2コインセンサ186との位置関係を図7を参照して説明する。
第1コインセンサ184の第1フェライトコア202-1の下端縁248-1は、ガイドレール156から第1距離D1離れた位置に配置され、第2コインセンサ186の第2フェライトコア204-3の下端縁253-1はガイドレール156から第2距離D2離れた位置に配置され、第1フェライトコア202-1の上端縁250-1は第1距離D1に長さL1を加えた距離D3離れた位置に、第2フェライトコア204-2の上端縁252-2は第2距離D2に長さL2を加えた距離D4離れた位置に配置されている。
そして、第4距離D4は、第1距離D1よりも第3長さL3分長い。
換言すれば、第1コインセンサ184の第1フェライトコア202-1の下端縁248-1は、第2コインセンサ186の第2フェライトコア204-2の上端縁252-2との関係においてガイドレール156からの距離が同一部分が所定の第3長さL3において存在する。
さらに換言すれば、第1コインセンサ184の第1フェライトコア202-1の下端部は、第2コインセンサ186の第2フェライトコア204-2の上端部とはガイドレール156との関係では第3長さL3においてオーバーラップしている。
その理由は、第1コインセンサ184の第1フェライトコア202-1の下端縁248-1と第2コインセンサ186の第2フェライトコア204-2の上端縁252-2とを常に接する位置に配置できる場合、第3長さL3のオーバーラップは、原理的に不要である。しかし、第1複合フェライト体188〜第4複合フェライト体196の製造バラツキ、及びそれらの本体124又はドアプレート126に対する組み付けバラツキにより常にそれらが接する位置に配置できるとは限らない。
そこで、この第3長さL3のオーバーラップ長さを設けることにより、第1コインセンサ184及び第2コインセンサ186とから漏れなくコインの直径に関する物理情報を取得できるようにして検知精度を高めるためである。
【0042】
また、第1コインセンサ184の第1フェライトコア202-1の上端縁250-1は最大径コイン、本実施例1では500円コインの直径よりも所定の第4長さL4分ガイドレール156から離れていることが好ましい。大径コインLCよりも僅かに大きい偽貨FCを排除するための精度高い物理情報を取得できるからである。
第2コインセンサ186の第2フェライトコア204-3の下端縁253-1は最小径コイン、本実施例1では50円コインの直径よりも所定の第5長さL5分、ガイドレール156に近いことが好ましい。小径コインSCよりも僅かに小さい偽貨FCを排除するための精度高い物理情報を取得できるからである。
上記説明から明らかなように、第1コインセンサ184の第1フェライトコア202-1の上端縁250-1と第2コインセンサ186の第2フェライトコア204-3の下端縁253-1は、ガイドレール156に対し平行に配置されている、換言すれば、上端縁250-1と下端縁253-1は、平行に配置されている。
【0043】
次に図11をも参照して第1直径センサ254、厚みセンサ256、第2直径センサ258、及び材質センサ262を説明する。
まず第1直径センサ254を説明する。
第1直径センサ254は、大径コインLCの直径に関する物理情報を取得する機能を有する。
第1コインセンサ184を構成する第1複合フェライト体188の第1フェライトコア202-1に巻かれた第1コイル218-1及び第2複合フェライト体192の第1フェライトコア202-2に巻かれた第1コイル218-2とは、第1直径センサ254を構成する。
第1フェライトコア202-1の端面には、500円コインの上端が距離D3から長さL4を減じた位置において相対し、10円コインの上端は下側縁248-1に僅かに相対する。
【0044】
次に厚みセンサ256を説明する。
厚みセンサ256は、コインCの厚みに関する物理情報を取得する機能を有する。
第1コインセンサ184を構成する第1複合フェライト体188の第2フェライトコア204-1に巻かれた第2コイル220-1及び第2複合フェライト体192の第2フェライトコア204-2に巻かれた第2コイル220-2は、厚みセンサ256を構成する。
したがって、厚みセンサ256は10円〜500円の全ての金種のコインCが相対する位置、即ち、第2フェライトコア204-1及び204-2の上側縁のガイドレール156からの距離は、50円コインの直径中心よりも近くに配置されている。
【0045】
次に第2直径センサ258を説明する。
第2直径センサ258は、小径コインSCの直径に関する物理情報を取得する機能を有する。
第2コインセンサ186を構成する第3複合フェライト体194の第2フェライトコア204-3に巻かれた第1コイル218-3及び第4複合フェライト体196の第1フェライトコア202-3に巻かれた第1コイル218-3とは、第2直径センサ258を構成する。
第2フェライトコア204-3の端面全面に、500円コインが相対し、10円、50円及び100円コインはその端面の一部に相対する。
【0046】
次に材質センサ262を説明する。
材質センサ262は、コインCの材質に関する物理情報を取得する機能を有する。
第2コインセンサ186を構成する第3複合フェライト体194の第1フェライトコア202-3に巻かれた第1コイル218-3及び第2複合フェライト体192の第1フェライトコア204-4に巻かれた第1コイル218-4は、材質センサ262を構成する。
したがって、材質センサ262は10円〜500円の全ての金種のコインCが相対する位置、即ち、第1フェライトコア202-3及び202-4の上側縁のガイドレール156からの距離は、50円コインの直径よりも近くに配置されている。
【0047】
最大直径の500円コインがガイドレール156を転動する場合、第1直径センサ254を構成する第1フェライトコア202-1及び202-2は、それらの上端縁250-1から長さL4分ガイドレール156に近い位置において500円コインの上端が相対する。これにより、後述するように後述の第1直径検波整流回路316-1からは図12に示すような、倒立放物曲線状の波形500d1を得ることができる。
【0048】
第2直径センサ258を構成する第3フェライトコア204-3と第4フェライトコア204-4端面は、全面が500円コインに相対するので、後述の第2直径検波整流回路316-2からは図12に示すような、倒立台形状の波形500d2を得ることができる。
【0049】
厚みセンサ256は500円コインのほぼ中央部に配置されているので第2フェライトコア204-1及び204-2の全面がコインに相対するため、後述の厚み検波整流回路316-2からは図12に示すような、ほぼ倒立台形状の波形500tを得ることができる。
【0050】
さらに、材質センサ262を構成する第2フェライトコア202-3及び204-4の全面と相対するので、材質検波整流回路316-4からは図12に示すような、倒立台形状の波形500mが得られる。
【0051】
二番目に直径が大きい10円コインが投入された場合図13に示すように、第1直径センサ254から500円よりもレベルが低い倒立放物曲線状の波形10d1が、第2直径センサ258からは第2フェライトコア204-3と204-4に対しては全面が相対するので、500d2よりも幅が狭い倒立台形状の波形10d2が、厚みセンサ256のフェライトコア204-1及び204-2の全面がコインに相対するため、500tよりも幅が狭い波形10tが、材質センサ262を構成する第2フェライトコア204-3及び204-4の全面と相対するので倒立台形状であって波形500mよりもレベルが低い波形10mが得られる。
なお、500円コインのレベルよりも低いのは、10円コインは材質が銅であるからである。
【0052】
三番目に直径が大きい100円コインが投入された場合図14に示すように、500円よりもレベルが低い倒立放物曲線状の波形100d1が、第2直径センサ258からは第2フェライトコア204-3と204-4に対しては全面が相対するので、500d2よりも幅が狭い倒立台形状の波形100d2が、厚みセンサ256のフェライトコア204-3及び204-4の全面がコインに相対するため、500tよりも幅が狭い波形100tが得られ、材質センサ262を構成する第2フェライトコア204-3及び204-4の全面と相対するので倒立台形状であって波形500mよりもレベルが低い波形100mが得られる。
【0053】
最小の50円コインが投入された場合図15に示すように、第1直径センサ254を構成する第1フェライト202-1及び202-2とは相対しないので、極めてレベルが低い波形50d1が得られ、第2直径センサ258を構成する第2フェライトコア204-3と204-4に対しては上端縁と上周縁が一致するよう相対するので、倒立台形状の波形50d-2を得ることができ、厚みセンサ256のフェライトコア204-3及び204-4の全面が相対するため、最も幅が狭い波形50tが得られ、材質センサ262を構成する第2フェライトコア204-3及び204-4の全面と相対するので、倒立台形状であって最も幅が狭い波形50mがそれぞれ得られる。
よって、これら波形より得られるレベルを判別することによりコインの真偽判別及び金種判別を適切に行うことができる。
【0054】
次に振分装置108が図4及び図6を参照して説明される。
振分装置108は、コインセンサ装置106によるコインCから取得した物理情報に基づいて判別した結果に基づいて当該コインCを正貨通路112又はリジェクト通路114へ振り分ける機能を有する。
コイン通路104のコインセンサ装置106の下流に位置するコイン通路下流端部104Eは、垂直下向きに指向した後、傾斜部168と逆向きの逆向き傾斜部264の入口部に位置している。
振分装置108は、コイン振分体266と第1電磁アクチュエータ268と第1リンク機構272を含んでいる。
【0055】
まずコイン振分体266を主に図4を参照して説明する。
コイン振分体266は、板状のフラップ274であって、後述の正貨通路112の延在方向に対し直交方向の第2回転軸線RL2を有する第1縦軸276を中心に回動可能である。
コイン振分体266は、逆向き傾斜通路264を横断するキャンセル位置CP若しくは正貨通路112へ案内する収納位置SPに選択的に位置可能である。
コイン振分体266の第1縦軸276よりも下流側は左サイドプレート134と右サイドプレート136との間において垂直方向に位置する平板状のキャンセル壁278によって覆われている。
キャンセル壁278の上部と上部案内壁162とは、下向き斜面280によって接続されている。
第1縦軸276は、ベースプレート136に回動自在に軸支されている。
【0056】
次に第1リンク機構272を図4を参照して説明する。
第1リンク機構272は、第1電磁アクチュエータ268のソレノイドの励磁又は消磁によって、フラップ274をキャンセル位置CP又は収納位置SPに選択的に位置させるように駆動力を伝達する機能を有する。
第1電磁アクチュエータ268の鉄心(図示せず)は通常、スプリング(図示せず)により突出方向に付勢され、コイン振分体266は第1リンク機構272を介してキャンセル位置CPに保持される(図6の実線示位置)。
コイン振分体266がキャンセル位置CPに位置する場合、コイン通路104を転動してきたコインCは、コイン通路122を横断するコイン振分体266によって横方向に逸らされてキャンセル壁278に沿って落下し、逆向き傾斜通路264から逸らされ、重力により落下する。
落下したコインCはリジェクト通路114を落下した後、リジェクト口282からゲーム機等の返却口(図示せず)へ案内される。
換言すれば、偽コイン、又はコイン識別装置100に電源が投入されていないときに投入されたコインは、リジェクトされる。
【0057】
第1電磁アクチュエータ268が励磁された場合、鉄心が引き込まれ、フラップ274は第1リンク機構272を介して図6において時計方向に回動され、収納位置SPに移動される(図6の鎖線示位置)。
これにより、逆向き傾斜通路264を転動してきたコインCはコイン振分体266に邪魔されることなく正貨通路112に進行できる。
正貨通路112を転動したコインCは、図示しない金庫に保留される。換言すれば、真正コインCは金庫に収納されることができる。
【0058】
次に正貨通路112を図4及び図6を参照して説明する。
正貨通路112は、コイン振分体266により正貨として振り分けられたコインCが案内される機能を有する。
正貨通路112は、フラップ274の背面側に入口が配置され、キャンセル壁278とベースプレート138との間に形成され、本体下面に正貨口298が形成される。
正貨口298から落下したコインCは図示しない金庫に収納される。
【0059】
次にキャンセル装置116を図1及び図2を参照して説明する。
キャンセル装置116は、投入されたコインCがコイン通路104においてジャムした場合、右サイドプレート136の下部に開口されたリジェクト口282へ戻す機能を有する。
本実施例1において、キャンセル装置116は、ドアプレート126、キャンセルレバ284、及び、カム棒286を含んでいる。
【0060】
まず、キャンセルレバ284を説明する。
キャンセルレバ284はL形であり、顧客がコインCをキャンセルするために操作するレバであり、本体124の上部背面から横方向に突出する固定軸288にその中間を回転自在に取り付けられている。
キャンセルレバ284の下方に伸びるレバ292は左サイドプレート134とほぼ平行に下向きに伸びている。
キャンセルレバ284は、顧客の操作によってリンク機構(図示せず)を介して押し下げ可能に配置されている。
また、キャンセルレバ284は中間から下方にZ形に伸びるスプリング294によって図2において時計方向に付勢力をうけているが、ほぼ水平位置において、図示しないストッパに係止されて静止状態に保持される。
【0061】
次にカム棒286を説明する。
カム棒286はドアプレート126の背面側から前面側へベースプレート138の開口296を貫通して伸び、先端に斜面よりなるカム面298が形成されている。
キャンセルレバ284が図2において反時計方向に回動された場合、レバ292が同方向に回動すると、カム面298を押して横向きの力をカム棒286に与え、ドアプレート126の下端部をベースプレート138から離すように移動させる。
これにより、ガイドレール156と本体上部壁面184との間の隙間が使用されるコイン中の最大厚み以上に開かれ、コイン通路104においてジャムしているコインC等は上部案内壁162に連続する下向き斜面280によって案内されてキャンセル通路118に落下させられ、キャンセルガイドレール302上を転動してリジェクト口282に案内される。
【0062】
次にキャンセル通路118を説明する。
キャンセル通路118は、偽貨FCと判別され、若しくはコイン識別装置100が判別状態にない状況においてコインCが投入された場合、当該偽貨FC又は投入コインCがコイン振分体266によってキャンセル壁278の表面側へ案内されたコインCをリジェクト口282にへ案内する機能を有する。
キャンセル通路118は、キャンセル壁278とキャンセル通路カバ282とにより構成される。
左サイドプレート134と右サイドプレート136の前側先端部間には、キャンセル壁278に対し最も厚いコインの厚みの数倍の間隔でキャンセル通路カバ282が垂立状体に取り付けられている。
これにより、キャンセル壁278とキャンセル通路カバ282との間には、垂立方向に延在するキャンセル通路118が形成される。
キャンセル通路118の下端は、リジェクト口282へ向かって下向きに傾斜するキャンセルガイドレール302が形成されている。
これにより、図3においてコイン振分体266によって紙面の表側へ案内された偽貨及びコインCはキャンセル通路118を落下した後、キャンセルガイドレール302上を転動してリジェクト口282に案内され、次いで返却口(図示せず)へ案内される。
【0063】
次に検知装置120を図11を参照して説明する。
検知装置120は、第1直径センサ254、第2直径センサ258、厚みセンサ256、及び材質センサ262を構成する励磁コイル218-1、218-2、218-3、218-4、218-1、218-2、218-3218-4からの信号(電流)を受けて制御装置122におけるコインの真偽及び金種判別のためのアナログ情報を出力する機能を有する。
検知装置120は、第1直径センサ254のための第1直径検知装置304、第2直径センサ258のための第2直径検知装置306、厚みセンサ256のための厚み検知装置308及び材質センサ262のための材質検知装置312を含んでいる。
【0064】
なお、図11において、コイル216及び218の巻き始めを、黒●で示している。
まず第1直径検知装置304を説明する。
第1直径検知装置304は、和動接続された第1複合フェライト体188の第1フェライトコア202-1に巻き付けられた第1コイル218-1と第2複合フェライト体194の第1フェライトコア202-2に巻き付けられた第2コイル218-2が接続された第1直径発振回路314-1、及び第1直径発振回路314-1からアナログ信号を受け、検波整流する第1検波整流回路316-1を含んでいる。
【0065】
次に第2直径検知装置306を説明する。
第2直径検知装置306は、和動接続された第3複合フェライト体194の第2フェライトコア204-3に巻き付けられた第2コイル218-3と第4複合フェライト体196の第2フェライトコア204-4に巻き付けた第2コイル218-4が接続された第2直径発振回路314-2、及び第2直径発振回路314-2からアナログ信号を受け、検波整流した後、アナログ信号として出力する第2直径検波整流回路316-2を含んでいる。
【0066】
次に厚み検知装置308を説明する。
厚み検知装置308は、差動接続された第1複合フェライト体188の第2フェライトコア204-1に巻き付けられた第2コイル220-1と第2複合フェライト体192の第2フェライトコア体204-2に巻き付けられた第2コイル220-2が接続された厚み発振回路314-3、及び厚み発振回路314-3から信号を受け、検波整流してアナログ信号を出力する厚み検波整流回路316-3を含んでいる。
【0067】
次に材質検知装置312を説明する。
材質検知装置312は、和動接続された第3複合フェライト体194の第1フェライトコア体202-3に巻き付けられた第1コイル218-3第4複合フェライト体202-4にまきつけられた第2コイル218-4が接続された材質発振回路314-4、及び材質発振回路314-4から信号を受け、検波整流した後アナログ信号として出力する材質検波整流回路316-4を含んでいる。
【0068】
第1直径発振回路314-1、第2直径発振回路314-2、厚み発振回路314-3及び材質発振回路314-4はそれぞれに適した異なる周波数の高周波電流を対応するコイルに印加する。
第1直径検波整流回路316-1、第2直径検波整流回路316-2、厚み検波整流回路316-3及び材質検波整流回路316-4は、対応する発振回路から受けた高周波電流を検波整流し、アナログ信号として出力する。
【0069】
次に制御装置122が説明される。
制御装置122は、コインセンサ装置106によって取得したコインCの物理情報に基づいて、コインCの真偽及び金種識別を行い、当該真偽及び金種情報に基づいて第1電磁アクチュエータ268を選択的に作動させ、正貨であって、かつ受けいれるべき金種のコインを受け入れ、偽貨FC及び受け入れないコインをリジェクトする機能を有する。
制御装置122は、マイクロプロセッサ318、A/D変換回路320、ROM322、RAM324を含んでいる。
【0070】
A/D変換回路320は、第1直径検波整流回路316-1、第2直径検波整流回路316-2、厚み検波整流回路316-3、及び材質検波整流回路316-4のアナログ出力をデジタル情報に変換する機能を有する。
マイクロプロセッサ318は、ROM322に格納された所定のプログラムに基づいて所定の処理によりコインの真偽判別及び金種を識別し、当該識別結果に基づいて第1電磁アクチュエータ268を選択的に励磁又は消磁する。
具体的には、制御装置122は、偽貨FCを検知した場合、第1電磁アクチュエータ268を励磁しない。よって、フラップ274はキャンセル位置CPに保持されるので、コインCはキャンセル通路118へ案内されてキャンセルガイドレール302上を転動してリジェクト口282から返却口へ返却される。
コインCが正貨であり、かつ受け入れるべきコインである場合、第1電磁アクチュエータ268は所定時間励磁され、フラップ274が回動されて収納位置SPに位置するので正貨通路112に誘導される。
【0071】
なお、投入口102には例えば自動販売機の筐体表面に配置したコイン投入口に投入されたコイン等をシュートにより案内することができる。
また、逆向き傾斜通路264に糸吊り防止手段326を配置することが好ましい。
本実施例1の糸吊り防止手段326は、ドアプレート126に横向きに配置した支軸328に対し揺動可能に取り付けた阻止体332である。
通常、重力により阻止体332は支軸328を支点にその下端部が逆向き傾斜通路264に進行するようモーメントが作用している。
これにより、阻止体332の下端先端はドア案内壁154の切り欠き334を通って上部案内壁162に当接した状態で静止している。
換言すれば、阻止体332の下端部が逆向き傾斜通路264を横断している。
阻止体332の下端部上面は上部案内壁162に向かって下向きに傾斜している。
【0072】
よって、コインCが逆向き傾斜通路264を通過する場合、阻止体332は当該コインCにより斜面を押されて移動され、当該コインCはこれを通過することが出来る。
コインCが通過した後、阻止体332は自己モーメントにより元に戻る。
これにより、糸吊りしたコインCを引き上げた場合、当該コインCによって阻止体332の下向き斜面が押され、阻止体332は上部案内壁162に押し付けられる。
よって、コインCは阻止体332に移動を阻止され、引き上げられない。
【0073】
次に本実施例1の作用を説明する。
まず真正コインCを投入したケースを説明する。
コイン識別装置100がスタンバイ状態にない場合、換言すれば、制御装置122に通電されていない場合、第1電磁アクチュエータ268は作動されることがない。よって、フラップ274はキャンセル位置CPを保持するので、真正コインCであってもリジェクト通路114に案内され、リジェクト口282から排除される。
当然、この状態において、偽貨FCを投入した場合、当該偽貨FCは真正コインCと同様に排除される。
【0074】
コイン識別装置100がスタンバイ状態にある場合、第1電磁アクチュエータ268は消磁を継続し、その鉄心はスプリング(図示せず)によって突出され、第1リンク機構272を介してコイン振分体266、したがってフラップ274が図6における実線示のキャンセル位置CPに保持される。
【0075】
この状態で真正コインCが投入口102に投入された場合、真正コインCは垂下通路176をほぼ直径分垂直落下した後、ガイドレール156上を図4において右方へ転動する。
この転動過程において、コインCは第1コインセンサ184、第2コインセンサ186に順次相対し、当該コインCの直径、材質及び厚みに関する物理的特徴情報が取得される。
【0076】
例えば、最大直径コインである真正500円コインを投入した場合、図12に示すように、第1直径検出装置304に係る第1直径検波整流回路316-1の出力は波形500d1に示すように倒立放物曲線状になり、第2直径検出装置306に係る第2直径検波整流回路316-2の出力は波形500d2に示すように波形500d1に対し所定時間遅れた倒立台形状になり、厚み検知装置308に係る厚み検波整流回路316-3の出力は波形500d1と同時期に波形500tに示すように倒立台形状になり、及び材質検知装置312に係る材質検波整流回路316-4の出力は波形500d2と同時期に波形500mに示すように倒立足つき台形状になる。
これらの波形で出力されるアナログ信号は、A/D変換回路322によってそれぞれデジタル信号化され、ROM322に記憶された所定のプログラムによって真偽判別及び金種判別がされる。
上記判別は、大凡各波形500d1、500d2、500t及び500mのピーク値500Pd1、500Pd2、500Pt及び500Pmを求め、それらピーク値を基準値と比較することにより行われる。
【0077】
本例では真正500円コインと判別され、第1電磁アクチュエータ268が所定時間励磁され、フラップ274は収納位置SPに回動される。これにより、真正500円コインCはフラップ274によって正貨通路112へ案内され、正貨口298から金庫へ落下する。
偽コインFCである場合、制御装置122は偽コイン信号FSを出力する。
偽コイン信号FSに基づいて、第1電磁アクチュエータ268は励磁されないのでフラップ274はリジェクト位置CPのままである。よって、偽コインFCはリジェクト通路114へリジェクトされ、リジェクト口282を経由して返却される。
【0078】
真正10円コインを投入した場合、図13に示すように、各波形10d1、10d2、10t及び10mのピーク値10Pd1、10Pd2、10Pt及び10Pmを求め、各基準値と比較することにより行われる。
【0079】
真正100円コインを投入した場合、図14に示すように、各波形100d1、100d2、100t及び100mのピーク値100Pd1、100Pd2、100Pt及び100Pmを求め、各基準値と比較することにより行われる。
【0080】
最小直径コインである真正50円コインを投入した場合、図15に示すように、各波形50d1、50d2、50t及び50mのピーク値50Pd1、50Pd2、50Pt及び50Pmを求め、各基準値と比較することにより行われる。
本例の場合、真正50円コインであるので、前述のようにフラップ274によって正貨通路112へ案内され、正貨口298から金庫へ落下する。
偽コインFCである場合、前述同様にリジェクト通路114へリジェクトされる。
【0081】
実施例1は、第1コインセンサ184の大径コインLCの選別用に長さL1を有する第1フェライトコア202-1及び202-2により構成し、小径用コインSCの選別用に長さL1よりも短い長さL2を有する第2フェライトコア204-1及び204-2との組み合わせにより日本円の10円、50円、100円及び500円に最も適したコインセンサ装置106を構成した例である。
【0082】
次に、図16を参照して第1コインセンサ184及び第2コインセンサ186の両方とも長さL1を有する第1フェライトコア202-1、202-2及び202-3、202-4によって構成したケースを説明する。
第2長さL2、第3長さL3、及び第5長さL5を同一にした場合、第2コインセンサ186の第1フェライトコア202-3、202-4の長さは、第2フェライトコア204-3、204-4よりも長い。
結果として、第2直径検知装置306の下端縁253-1が長さL6分長くなる。
これにより、小径コインSCのための第2直径検知装置306の感度が実施例1のコインセンサ106に対して鈍る。
換言すれば、同一条件下において、第2フェライトコア204-3、204-4が採用されている場合に比し、図17(B)において線L7で示す程度に感度が低下する。これにより、判断の基準レベルを従来のように上げる(高める)ことができない。よって、判別精度が低下する恐れがある。
しかし、本願発明においては、第1フェライトコア202-1の長さL1及び/又は第2フェライトコア204-1の長さL2を適宜組み合わせて、選別対象コインの直径に適切なフェライトコア端面の長さを得ることができる。よって、精度高い直径選別を行うことが出来る。
【実施例2】
【0083】
次に実施例2を図17を参照して説明する。
実施例1と同一部には同一符号を付して説明を省略し、異なる部位を説明する。
実施例1と実施例2の相違点は、第1コインセンサ184とガイドレール156との間の第1軸線AL1上に第2厚みセンサ342が配置されている点である。
第2厚みセンサ342は、ガイドレール156に近接配置されるので、コインCの周縁部の厚みに関する物理情報を取得するのに適している。
換言すれば、第1厚みセンサ256はコインCの中央部の厚みに関する物理情報を取得し、第2厚みセンサ342はコインCの周縁部の厚みに関する物理情報を取得するのに適している。
さらに換言すれば、図17(B)に示すように、周縁リング344に異なる材質の円板形のコア346を嵌め込んだバイメタルコインBCの精度高い真偽判別に適している。
【0084】
第2厚みセンサ342の構成を図11をも参照して説明する。
実施例1と同一部分には同一符号を付し、異なる構成を説明する。
ガイドレール156と第1コインセンサ184との間に第2厚み検知装置348が配置されている。
第2厚み検知装置348は、コイン通路104に相対したベースプレート138の背面に固定された第1円形フェライトコア体352-1、及び、ドアプレート126の背面に固定された第2フェライトコア体352-2(第1フェライトコア体352-1と同一につき図示省略)を含んでいる。
第1円形フェライトコア体352-1の中心には円柱状の円形フェライトコア354-1が形成され、当該円形フェライトコア354-1と同心であってその外周にドーナツリング状に形成された磁束壁356-1とは接続壁358を介して接続された、所謂ポットコア型である。
円形フェライトコア354-1の周囲には第1コイル362-1が巻き付けられている。第2フェライトコア体352-2の第2コイル362-2とは差動接続され、第2厚み発振回路314-5に接続されている。
円形フェライトコア354-1は、その端面中心がガイドレール156と第1コインセンサ184との間の第1軸線AL1上であって、ガイドレール156に近接した位置に配置されている。
【0085】
第2厚み発振回路314-5は、各発振回路314-1〜314-4とは異なる周波数にて発振し、第2厚み検波整流回路316-5にアナログ信号を出力する。
第2厚み検波整流回路316-5は、検波整流した信号をA/D変換回路320に出力する。A/D変換回路320は前述同様に第2厚み検波整流回路316-5からのアナログ信号をデジタル信号に変換してマイクロプロセッサ318の処理に供する。
【0086】
実施例2において、500円コインを投入した場合、実施例1と同様に図18に示すように第1直径センサ254、第2直径センサ258、厚みセンサ256、材質センサ262にて取得した物理情報に基づいて第1直径検波整流回路316-1、第2直径検波整流回路316-2、厚み検波整流回路316-3及び材質検波整流回路316-4から金種に対応した波形500d1、500d2、500t及び500mが出力される。
同時に、第2厚みセンサ342によって取得した物理情報に基づいて第2厚み検波整流回路316-5から波形500t2の信号が出力される。
マイクロプロセッサ318において、これら波形500d1、500d2、500t、500m及び500t2のピーク値500Pd1、5500Pd2、500Pt、500Pm及び500Pt2を求め、基準値と比較することにより、総合的に真偽判別及び真正コインである場合、金種判別を行う。
真正コインである場合、第1電磁アクチュエータ268が所定のタイミングで所定時間励磁され、正貨通路112へ受け入れられる。偽貨FCである場合、第1電磁アクチュエータ268は励磁されないので、当該偽貨FCはリジェクト通路114へ案内され、返却口へ戻される。
実施例2は、厚みセンサが2つであるので、バイメタルコインBCの選別に適している。
【実施例3】
【0087】
次に実施例3を図19を参照して説明する。
実施例3は、実施例2の第2厚みセンサ342が第1八画フェライトコア体364-1及び同一形状の第2八画フェライトコア体364-2とにより構成される点が異なる。
第1八画フェライトコア体364-1及び同一形状の第2八画フェライトコア体364-2は同一構成なので、第1八画フェライトコア体364-1を代表して説明する。
フェライトコア366-1の端面は円筒形であり、磁束壁368-1は、外縁が横向き山形であって、内側縁が弧状に形成され、かつ、フェライトコア366-1の横方向の両側に配置され、第1コインセンサ184側には配置されない。
【0088】
実施例3は、基本的には実施例2と同様にコインCを識別し、処理する。
しかし、第1八画フェライトコア体364-1及び第2八画フェライトコア体364-2は、第1コインセンサ184側に磁束壁368-1は配置されない。
フェライトコア366-1には励磁コイル370-1が巻き付けられている。
したがって、ガイドレール156と第1コインセンサ184との間に配置されるフェライトコア366-1の直径を大きくすることができる。換言すれば、フェライトコア366-1端面の面積を実施例2のフェライトコア354-1の端面の面積よりも大きくすることができる。
第2厚みセンサ342のフェライトコア366-1端面の面積が大きい場合、磁束をより遠くまで波及させることができる。
よって、選別するコインCの厚み差が大きい場合、換言すれば、コイン通路104の厚みが厚い場合にも、精度高いコイン厚みに関する物理情報を取得できるので、厚みの選別精度が高まる利点がある。
実施例3も厚みセンサが2つであるので、バイメタルコインBCの選別に適している。
【実施例4】
【0089】
次に実施例4を図20を参照して説明する。
実施例4は、第1コインセンサ184に第1直径センサ254を構成する端面矩形の第1フェライトコア202-1、厚みセンサ256のための第2フェライトコア204-1及び第2厚みセンサ342のための端面矩形の第2厚みフェライトコア368-1が接続壁206-1によって接続され、また磁束壁208-1で囲われたフェライトコア体372に一体に形成されている。
第1フェライトコア202-1、第2フェライトコア204-1及び第2厚みフェライトコア368-1の第1軸線AL1に沿った長さは同一長さL1に形成されている。同一長さL1にすることにより、成形型の製造が容易になり、安価に製造することができる。
第2コインセンサ186の第2フェライトコア204-3と第1コインセンサ184の第1フェライトコア202-1とのオーバーラップ長L3等は実施例1と同一に設定してある。
第1フェライトコア202-1、第2フェライトコア204-1及び第2厚みフェライトコア368-1には、それぞれ個別に矩形の励磁コイル370-1、370-2、370-3が巻き付けられている。
実施例4も厚みセンサが2つであるので、バイメタルコインBCの選別に適している。
【0090】
実施例4において、第2厚みセンサ342の第2厚みフェライトコア368-1と厚みフェライトコア204-1との間に磁束壁208-1が配置されないので、第2厚みフェライトコア368の面積を大きくでき、厚みの選別精度が向上する。
さらに、フェライトコア体372に第1直径センサ254、厚みセンサ256及び第2厚みセンサ342が一体に構成されているので、材料や工程を節約でき、安価に製造することができる。また、センサを小型化できる利点がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前下がりに傾斜するガイドレール(156)上を転動するコイン(C)の転動過程において当該転動するコインの両側において前記ガイドレールに対し直交する方向の距離が異なる位置において、前記コインの転動方向(RD)の上流側と下流側にずらして複数の矩形フェライトコア(202、204)の端面を配置し、当該フェライトコアに巻き付けたコイル(218、220)からの信号に基づいて当該コインの真偽又は金種を判別するようにしたコイン識別装置において、
前記ガイドレールに対し直角方向に延在する第1軸線AL1及び第2軸線AL2上に複数の矩形のフェライトコア(202-1、202-2、204-1、204-2)の端面が配置され、それらフェライトコアは接続壁(206-1)によって連結されて一体化されると共に、前記第1軸線AL1及び第2軸線AL2上の前記ガイドレールから遠いフェライトコア端面の前記ガイドレールからの距離(D1、D2)が異なることを特徴とするコイン識別装置。
【請求項2】
請求項1のコイン識別装置において、
前記フェライトコア端面の前記ガイドレールに対し直角方向の長さがそれぞれ異なる第1長さ(L1)で形成された第1フェライトコア(202-1〜202-4)端面と、前記第1長さよりも短い第2長さ(L2)で形成された第2フェライトコア(204-1〜204-4)端面を有する複合フェライト体(188〜196)を複数設け、
前記複合フェライト体は第1フェライトコア端面又は第2フェライトコア端面の一方が前記ガイドレールに対し近く、かつ、他方が前記ガイドレールに対し遠くなる位置関係に配置され、さらに、
少なくともコイン転動方向の上流側と下流側に隣接する前記複合フェライト体の一方の複合フェライト体の前記ガイドレールから遠いフェライトコア端面は前記第1の長さを有する第1フェライトコア端面であり、他方の複合フェライト体の前記ガイドレールから遠いフェライトコア体端面は前記第2の長さを有する第2フェライトコア端面であることを特徴とする。
【請求項3】
請求項2のコイン識別装置において、
上流側の前記複合フェライト体は第1フェライトコア端面が前記ガイドレールから遠く配置され、下流側の前記複合フェライト体は第2フェライトコア端面が前記ガイドレールから遠く配置されることを特徴とする。
【請求項4】
請求項2のコイン識別装置において、
前記上流側の複合フェライト体と前記ガイドレールとの間に第2厚みセンサ(342)が配置されていることを特徴とする。
【請求項5】
投入口(102)に投入されたコイン(C)が傾斜するガイドレール(156)上を転がってガイドされるコイン通路(104)に沿って直径センサ(254)、材質センサ(262)及び厚みセンサ(256)を配置し、前記各センサは前記コイン通路を挟んで相対配置したフェラトコア(202-1〜202-4)及びコイル(218、220)を含むコイン識別装置において、
前記コイン通路に向かって所定の間隔で突出する第1のフェライトコア(202-1〜202-4、204-1〜204-4)と第2のフェライトコアの端面が矩形であって、前記端面の反対側において前記第1のフェライトコアと第2のフェライトコアが接続壁により接続されて一体化され、前記第1のフェライトコアと第2のフェライトコアは前記ガイドレールに対して直交する方向の長さが異なって形成されると共に、前記ガイドレールに対し直角方向の近い位置と遠い位置とに配置された複合フェライト体(188〜196)が前記コイン通路の上流側に配置された第1複合フェライト体(188、192)と下流側に配置された第2複合フェライト体(194、196)とによって構成され、
前記第1の複合フェライト体と第2の複合フェライト体の前記第1のフェライトコアと第2のフェライトコアは前記ガイドレールからの距離が逆の関係に配置されると共にそれぞれ前記ガイドレールからの距離が同一である部位を含み、前記第1複合フェライト体と第2複合フェライト体の前記ガイドレールからの距離が大きいフェライトコアに関連するコイルが直径選別に用いられ、前記ガイドレールからの距離が小さいフェライトコアに関連するコイルが材質選別又は厚み選別に用いられることを特徴とするコイン識別装置。
【請求項6】
請求項5に記載のコイン識別装置において、
前記第1のフェライトコアと第2のフェライトコアの側壁を囲う磁束壁を前記接続壁に対し連続して設けたことを特徴とする。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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