コエンザイムQ10含有素材
【課題】 コエンザイムQ10の吸収率が高まり、高い効果が得られて無駄が少ないコエンザイムQ10含有素材を提供すること。
【解決手段】 コエンザイムQ10に紅参エキスを加えてある。望ましくは、成人1日当たりの摂取量を、コエンザイムQ10が120mg、紅参エキスが60mgとする。
【解決手段】 コエンザイムQ10に紅参エキスを加えてある。望ましくは、成人1日当たりの摂取量を、コエンザイムQ10が120mg、紅参エキスが60mgとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤或いは健康食品として服用するのに好適なコエンザイムQ10含有素材に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミン様作用物質であるコエンザイムQ10は、細胞のミトコンドリアに作用し、クエン酸回路のATP産生機構に作動して、生体内の代謝活性作用を発揮すると共に抗酸化作用を有する。その結果、血行動態改善、美肌効果、老化抑制、心不全治療等の様々な効果を発揮する。
また、コエンザイムQ10は、生体で合成されると共に、生体に食物として取り入れることにより外部からも摂取している。
しかし、食品から摂取できる量は限られており、ストレスや病気によって生体機能が低下すると十分なコエンザイムを蓄積できなくなる。また、年齢と共に細胞内のコエンザイQ10の量は減少していく。この結果、代謝活性が低下し、倦怠感、疲労感、免疫力低下等の多くの症状が現れる。
【0003】
このような症状を予防し、癒すために、近年では、治療薬或いは健康食品としてコエンザイムQ10を補給することが行われている。コエンザイムQ10には重篤な副作用もなく、現代人は激しいストレスに曝されているので、1日に60〜120mg程度、症状によってはそれ以上の量を摂取することが望ましい。
ところが、血液中へのコエンザイムQ10の吸収率は非常に悪く、投与量の約10%程度しか吸収されない。また、吸収率の個人差も大きい。
【0004】
ところで、コエンザイムQ10は脂溶性の物質であり、水に溶けず、吸収するためには胆汁酸が必要であって、食事により生体が胆汁酸を分泌することが吸収に必要な条件である。
胆汁酸を分泌させるために、コエンザイムQ10にビタミンEやオイルを混入した食品が提案されているが(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)、これでも十分な吸収性は得られなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2003−289828号公報
【特許文献2】特開2003−169633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、コエンザイムQ10の吸収率が高まり、血行動態を改善し、冷え、疼痛等の症状を改善する高い効果が得られて可食し易く、無駄が少ないコエンザイムQ10含有素材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコエンザイムQ10含有素材は、コエンザイムQ10に紅参エキスを加えて混合したもの、又は、必要に応じてこの混合物を、ゼラチン等を素材とする可食性のカプセルに封入したものから成る。
十分な効果が得られ、しかも、副作用を少なくするために、成人1日当たりの摂取量を、コエンザイムQ10が120mg、紅参エキスが60mgとするのが望ましい。
紅参は古来より漢方薬の成分として知られ、肉体疲労、虚弱体質、冷え性、更年期障害等の様々な症状に改善効果を発揮する。従って、コエンザイムQ10に紅参エキスを加えることにより、コエンザイムQ10の薬効に加えて、紅参の薬効も期待できる。
また、紅参は脂溶性成分と水溶性成分とを有し、その主成分であるサポニンには界面活性作用があるため、十分攪拌することにより、脂溶性物質と水溶性物質との混在が可能となる。この結果、紅参エキスを同時に摂取すると、脂溶性物質であるコエンザイムQ10の吸収率が高まると考えられる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、コエンザイムQ10そのものは生体への吸収率が非常に低い物質であるが、これに紅参エキスを加えることによって、コエンザイムQ10を単独で投与した場合よりも吸収率が高まるので、摂取量に比して高い効果を期待でき、無駄が少なくて効率が良い。
請求項2に係る発明によれば、心機能及び総末梢血管抵抗を改善し、冷え、疼痛等の症状を改善する効果があり、しかも、副作用が少ない。
請求項3に係る発明によれば、コエンザイムQ10含有素材がゼラチン等から成る可食性のカプセルに封入されているので、摂取しやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
試験1において、コエンザイムQ10を単独で投与した場合と、紅参を加えた場合の吸収率の差について検証する。
健常な日本人33人を任意に3群に分け、A群にはコエンザイムQ10を投与せず、代わりに乳糖500mgを偽薬(placebo)として投与した。
また、B群には、コエンザイムQ10を60mgずつ1日2回合計120mg投与し、C群には、コエンザイムQ10を60mgに紅参エキスを30mg加えて混合したものを1日2回、即ち、コエンザイムQ10を120mgと紅参エキスを60mg投与した。
A群、B群及びC群の年齢、男女比、試験前の血清中コエンザイムQ10濃度を図1に示す。試験対象となるA群、B群及びC群では、各条件に有意差は無い。
【0010】
A群,B群及びC群の血清中コエンザイムQ10濃度を、2週間後及び4週間後の午前10時から11時の間にHPLC法で測定した。この測定結果を、図2にグラフとして、図3に数値として示す。
試験1の結果、A群では、血清中コエンザイムQ10濃度の変化は認められなかった。B群では、コエンザイムQ10濃度は上昇していたが、C群の濃度上昇の方が著しく、コエンザイムQ10に紅参を配合すると、コエンザイムQ10の吸収率が高まることがわかった。
【0011】
試験2で、コエンザイムQ10、紅参、及び、コエンザイムQ10と紅参との合剤が血行動態に与える影響を検証する。
血行動態とは、生体全体の血流状態をいい、主に血圧がそれを表現する。血圧=(心機能×末梢の血流)で表される。
心機能とは、分時拍出量(心拍出量:CO)で示され、単位はl/min、即ち、心臓が1分に何リットルの血液を送出できるかである。心拍出量は、一回拍出量(SV)×心拍数(HR:B/min)で表現される。身体の大きさ(体表面積;身長と体重の関数)はおのおの異なるので、心拍出量を他者と比較するときは、心拍出量を体表面積で割った値を心系数(CI)として用いる。心系数(CI)の正常値は、3.0±0.3l/min/m2であり、2.3以下が心不全であって、3.5を超えると、動悸・のぼせなどの心症状を感じやすくなる。
【0012】
末梢の血流とは、総末梢血管抵抗(SVR)であり、dyne・sec・cm-5で示される。これを実測することは不可能であり、血圧と心拍出量から割り出した理論値となる。
総末梢血管抵抗(SVR)の正常値は、1210〜1480dyne/sec/cm-5であり、これより高いと末梢の冷えやしびれ、痛みを訴える。一方、これより低いと立ちくらみやめまいを起こしやすい。
【0013】
試験2では、非侵襲的血行動態測定器(脈波・コロトコフ音記録計)Parama−Tec GP303sを用いて、安静10分後に座位でコロトコフ音図(KSG)を測定し、心系数(CI)、総末梢血管抵抗(SVR)を検討し、VAS(visual analogue scale)により主観的症状を評価した。
「冷え」や「四肢末梢の疼痛」を訴える30代の15人を任意に3群に分け、それぞれにコエンザイムQ10、紅参、及び、コエンザイムQ10と紅参との合剤を2週間投与した。第1群には、1日120mgのコエンザイムQ10を2回に分けて食後に投与した。第2群には、1日60mgの紅参エキスを2回に分けて食後に投与した、第3群には、1日120mgのコエンザイムQ10に60mgの紅参エキスを加え混合したものを2回に分けて食後に投与した。
【0014】
試験2による心系数の変動を図4及び図5に示す。
試験2以前には、各群の心系数は比較的低値であり、各群間に有意差はなかった。試験2の前後を比較すると、投与後に第2群ではほとんど変化が見られず、第1群及び第3群は共に心系数が増加して正常域に達したが、第3群の増加が最も顕著であった。
また、試験2による総末梢血管抵抗(SVR)の変化を図6及び図7に示す。
図6及び図7から明らかなように、試験2以前の各群の総末梢血管抵抗は、いずれも比較的高値であり、各群間に有意差はなかった。
試験2の前後で、第1群及び第2群の下降幅は少なく、第3群のみが大きく下降して正常値となった。
【0015】
さらに、試験2の前後における冷え、疼痛等の症状の変化を、VASにより被験者自らが評価した。最も症状のひどい状態を10とし、症状のない状態を0として数字で評価し、図8及び図9に示す。
試験2前後ではどの群も症状が改善したが、第3群は、第1群及び第2群に比べて大幅な改善を示した。
試験2の結果から、コエンザイムQ10を単独で投与した第1群は心機能の亢進が認められ、紅参を単独で投与した第2群では総末梢血管抵抗が低下した。一方、コエンザイムQ10と紅参との合剤を投与した第3群では、心機能及び総末梢血管抵抗がいずれも改善し、しかも、コエンザイムQ10と紅参を単独で投与したときの和よりも効果が大きく、心機能はコエンザイムQ10を単独投与した時より11.4%高い効果が得られ、総末梢血管抵抗は紅参を単独投与した時より23%高い効果が得られた。
【0016】
試験3により、血行動態を目安として、コエンザイムQ10と紅参エキスの適正量を調べた。試験3においても、試験2と同様に、Parama−Tec GP303sを用いて、安静10分後に座位でコロトコフ音図(KSG)を測定し、心系数(CI)、総末梢血管抵抗(SVR)を検討した。
成人15人を3群に分け、それぞれにコエンザイムQ10と紅参エキスとを混合した混合物を2週間投与した。
第1群には、コエンザイムQ10を60mgと紅参エキス30mgを加えたものを1日分とし、これを2回に分けて食後に投与した。
第2群には、コエンザイムQ10を120mgと紅参エキス60mgを加えたものを1日分とし、これを2回に分けて食後に投与した。
第3群には、コエンザイムQ10を180mgと紅参エキス90mgを加えたものを1日分とし、これを2回に分けて食後に投与した。
【0017】
図10に、試験3における第1群、第2群及び第3群の心系数(CI)の変動を示す。
3群間の治療前の心系数に有意差はなかった。
試験3前後で比較すると、第1群は治療後にも正常域に達せず、臨床効果は不十分であった。第2群及び第3群は心系数が上昇し、第2群は正常化したが、第3群は上昇しすぎであり、5例中2例で、急激な心拍出量の増加がもたらした副作用と考えられるのぼせ・動悸の症状を訴えた。
【0018】
図11に、試験3による第1群、第2群及び第3群の総末梢血管抵抗(SVR)の変化を示す。
各群間の治療前の総末梢血管抵抗に有意差はなかった。
治療前後で比較すると、第2群及び第3群は正常化したが、第1群は高いままであって、臨床効果は不十分であると考えられる。
【0019】
試験1乃至試験3の結果から、成人1日当たり、コエンザイムQ10を120mgに紅参エキス60mgを加えた量を投与することが、コエンザイムQ10の吸収率を高めると共に、血行動態全体を改善し、しかも、副作用が少ない適量であるといえる。
なお、本発明のコエンザイムQ10含有素材を投与する形態しては、コエンザイムQ10と紅参エキスとを混合したペースト状のものを直接投与することもできるが、ペースト状のものをカプセル等の可食性容器に封入したり、食品に添加することもできる。食品等に添加する場合には、食材の種類に関わらず、コエンザイムQ10を60mgと紅参エキス30mgとを混合したものを1回分として、1日2回添加する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】試験1の対象となるA群、B群及びC群の条件を示す図。
【図2】試験1の結果をグラフで示す図。
【図3】試験1の結果を数値で示す図。
【図4】試験2における心系数の変化をグラフで示す図。
【図5】試験2における心系数の変化を数値で示す図。
【図6】試験2における総末梢血管抵抗の変化をグラフで示す図。
【図7】試験2における総末梢血管抵抗の変化を数値で示す図。
【図8】試験2におけるVASの変化をグラフで示す図。
【図9】試験2におけるVASの変化を数値で示す図。
【図10】試験3における心系数の変化を示す図。
【図11】試験3における総末梢血管抵抗の変化を示す図。
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤或いは健康食品として服用するのに好適なコエンザイムQ10含有素材に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミン様作用物質であるコエンザイムQ10は、細胞のミトコンドリアに作用し、クエン酸回路のATP産生機構に作動して、生体内の代謝活性作用を発揮すると共に抗酸化作用を有する。その結果、血行動態改善、美肌効果、老化抑制、心不全治療等の様々な効果を発揮する。
また、コエンザイムQ10は、生体で合成されると共に、生体に食物として取り入れることにより外部からも摂取している。
しかし、食品から摂取できる量は限られており、ストレスや病気によって生体機能が低下すると十分なコエンザイムを蓄積できなくなる。また、年齢と共に細胞内のコエンザイQ10の量は減少していく。この結果、代謝活性が低下し、倦怠感、疲労感、免疫力低下等の多くの症状が現れる。
【0003】
このような症状を予防し、癒すために、近年では、治療薬或いは健康食品としてコエンザイムQ10を補給することが行われている。コエンザイムQ10には重篤な副作用もなく、現代人は激しいストレスに曝されているので、1日に60〜120mg程度、症状によってはそれ以上の量を摂取することが望ましい。
ところが、血液中へのコエンザイムQ10の吸収率は非常に悪く、投与量の約10%程度しか吸収されない。また、吸収率の個人差も大きい。
【0004】
ところで、コエンザイムQ10は脂溶性の物質であり、水に溶けず、吸収するためには胆汁酸が必要であって、食事により生体が胆汁酸を分泌することが吸収に必要な条件である。
胆汁酸を分泌させるために、コエンザイムQ10にビタミンEやオイルを混入した食品が提案されているが(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)、これでも十分な吸収性は得られなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2003−289828号公報
【特許文献2】特開2003−169633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、コエンザイムQ10の吸収率が高まり、血行動態を改善し、冷え、疼痛等の症状を改善する高い効果が得られて可食し易く、無駄が少ないコエンザイムQ10含有素材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコエンザイムQ10含有素材は、コエンザイムQ10に紅参エキスを加えて混合したもの、又は、必要に応じてこの混合物を、ゼラチン等を素材とする可食性のカプセルに封入したものから成る。
十分な効果が得られ、しかも、副作用を少なくするために、成人1日当たりの摂取量を、コエンザイムQ10が120mg、紅参エキスが60mgとするのが望ましい。
紅参は古来より漢方薬の成分として知られ、肉体疲労、虚弱体質、冷え性、更年期障害等の様々な症状に改善効果を発揮する。従って、コエンザイムQ10に紅参エキスを加えることにより、コエンザイムQ10の薬効に加えて、紅参の薬効も期待できる。
また、紅参は脂溶性成分と水溶性成分とを有し、その主成分であるサポニンには界面活性作用があるため、十分攪拌することにより、脂溶性物質と水溶性物質との混在が可能となる。この結果、紅参エキスを同時に摂取すると、脂溶性物質であるコエンザイムQ10の吸収率が高まると考えられる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、コエンザイムQ10そのものは生体への吸収率が非常に低い物質であるが、これに紅参エキスを加えることによって、コエンザイムQ10を単独で投与した場合よりも吸収率が高まるので、摂取量に比して高い効果を期待でき、無駄が少なくて効率が良い。
請求項2に係る発明によれば、心機能及び総末梢血管抵抗を改善し、冷え、疼痛等の症状を改善する効果があり、しかも、副作用が少ない。
請求項3に係る発明によれば、コエンザイムQ10含有素材がゼラチン等から成る可食性のカプセルに封入されているので、摂取しやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
試験1において、コエンザイムQ10を単独で投与した場合と、紅参を加えた場合の吸収率の差について検証する。
健常な日本人33人を任意に3群に分け、A群にはコエンザイムQ10を投与せず、代わりに乳糖500mgを偽薬(placebo)として投与した。
また、B群には、コエンザイムQ10を60mgずつ1日2回合計120mg投与し、C群には、コエンザイムQ10を60mgに紅参エキスを30mg加えて混合したものを1日2回、即ち、コエンザイムQ10を120mgと紅参エキスを60mg投与した。
A群、B群及びC群の年齢、男女比、試験前の血清中コエンザイムQ10濃度を図1に示す。試験対象となるA群、B群及びC群では、各条件に有意差は無い。
【0010】
A群,B群及びC群の血清中コエンザイムQ10濃度を、2週間後及び4週間後の午前10時から11時の間にHPLC法で測定した。この測定結果を、図2にグラフとして、図3に数値として示す。
試験1の結果、A群では、血清中コエンザイムQ10濃度の変化は認められなかった。B群では、コエンザイムQ10濃度は上昇していたが、C群の濃度上昇の方が著しく、コエンザイムQ10に紅参を配合すると、コエンザイムQ10の吸収率が高まることがわかった。
【0011】
試験2で、コエンザイムQ10、紅参、及び、コエンザイムQ10と紅参との合剤が血行動態に与える影響を検証する。
血行動態とは、生体全体の血流状態をいい、主に血圧がそれを表現する。血圧=(心機能×末梢の血流)で表される。
心機能とは、分時拍出量(心拍出量:CO)で示され、単位はl/min、即ち、心臓が1分に何リットルの血液を送出できるかである。心拍出量は、一回拍出量(SV)×心拍数(HR:B/min)で表現される。身体の大きさ(体表面積;身長と体重の関数)はおのおの異なるので、心拍出量を他者と比較するときは、心拍出量を体表面積で割った値を心系数(CI)として用いる。心系数(CI)の正常値は、3.0±0.3l/min/m2であり、2.3以下が心不全であって、3.5を超えると、動悸・のぼせなどの心症状を感じやすくなる。
【0012】
末梢の血流とは、総末梢血管抵抗(SVR)であり、dyne・sec・cm-5で示される。これを実測することは不可能であり、血圧と心拍出量から割り出した理論値となる。
総末梢血管抵抗(SVR)の正常値は、1210〜1480dyne/sec/cm-5であり、これより高いと末梢の冷えやしびれ、痛みを訴える。一方、これより低いと立ちくらみやめまいを起こしやすい。
【0013】
試験2では、非侵襲的血行動態測定器(脈波・コロトコフ音記録計)Parama−Tec GP303sを用いて、安静10分後に座位でコロトコフ音図(KSG)を測定し、心系数(CI)、総末梢血管抵抗(SVR)を検討し、VAS(visual analogue scale)により主観的症状を評価した。
「冷え」や「四肢末梢の疼痛」を訴える30代の15人を任意に3群に分け、それぞれにコエンザイムQ10、紅参、及び、コエンザイムQ10と紅参との合剤を2週間投与した。第1群には、1日120mgのコエンザイムQ10を2回に分けて食後に投与した。第2群には、1日60mgの紅参エキスを2回に分けて食後に投与した、第3群には、1日120mgのコエンザイムQ10に60mgの紅参エキスを加え混合したものを2回に分けて食後に投与した。
【0014】
試験2による心系数の変動を図4及び図5に示す。
試験2以前には、各群の心系数は比較的低値であり、各群間に有意差はなかった。試験2の前後を比較すると、投与後に第2群ではほとんど変化が見られず、第1群及び第3群は共に心系数が増加して正常域に達したが、第3群の増加が最も顕著であった。
また、試験2による総末梢血管抵抗(SVR)の変化を図6及び図7に示す。
図6及び図7から明らかなように、試験2以前の各群の総末梢血管抵抗は、いずれも比較的高値であり、各群間に有意差はなかった。
試験2の前後で、第1群及び第2群の下降幅は少なく、第3群のみが大きく下降して正常値となった。
【0015】
さらに、試験2の前後における冷え、疼痛等の症状の変化を、VASにより被験者自らが評価した。最も症状のひどい状態を10とし、症状のない状態を0として数字で評価し、図8及び図9に示す。
試験2前後ではどの群も症状が改善したが、第3群は、第1群及び第2群に比べて大幅な改善を示した。
試験2の結果から、コエンザイムQ10を単独で投与した第1群は心機能の亢進が認められ、紅参を単独で投与した第2群では総末梢血管抵抗が低下した。一方、コエンザイムQ10と紅参との合剤を投与した第3群では、心機能及び総末梢血管抵抗がいずれも改善し、しかも、コエンザイムQ10と紅参を単独で投与したときの和よりも効果が大きく、心機能はコエンザイムQ10を単独投与した時より11.4%高い効果が得られ、総末梢血管抵抗は紅参を単独投与した時より23%高い効果が得られた。
【0016】
試験3により、血行動態を目安として、コエンザイムQ10と紅参エキスの適正量を調べた。試験3においても、試験2と同様に、Parama−Tec GP303sを用いて、安静10分後に座位でコロトコフ音図(KSG)を測定し、心系数(CI)、総末梢血管抵抗(SVR)を検討した。
成人15人を3群に分け、それぞれにコエンザイムQ10と紅参エキスとを混合した混合物を2週間投与した。
第1群には、コエンザイムQ10を60mgと紅参エキス30mgを加えたものを1日分とし、これを2回に分けて食後に投与した。
第2群には、コエンザイムQ10を120mgと紅参エキス60mgを加えたものを1日分とし、これを2回に分けて食後に投与した。
第3群には、コエンザイムQ10を180mgと紅参エキス90mgを加えたものを1日分とし、これを2回に分けて食後に投与した。
【0017】
図10に、試験3における第1群、第2群及び第3群の心系数(CI)の変動を示す。
3群間の治療前の心系数に有意差はなかった。
試験3前後で比較すると、第1群は治療後にも正常域に達せず、臨床効果は不十分であった。第2群及び第3群は心系数が上昇し、第2群は正常化したが、第3群は上昇しすぎであり、5例中2例で、急激な心拍出量の増加がもたらした副作用と考えられるのぼせ・動悸の症状を訴えた。
【0018】
図11に、試験3による第1群、第2群及び第3群の総末梢血管抵抗(SVR)の変化を示す。
各群間の治療前の総末梢血管抵抗に有意差はなかった。
治療前後で比較すると、第2群及び第3群は正常化したが、第1群は高いままであって、臨床効果は不十分であると考えられる。
【0019】
試験1乃至試験3の結果から、成人1日当たり、コエンザイムQ10を120mgに紅参エキス60mgを加えた量を投与することが、コエンザイムQ10の吸収率を高めると共に、血行動態全体を改善し、しかも、副作用が少ない適量であるといえる。
なお、本発明のコエンザイムQ10含有素材を投与する形態しては、コエンザイムQ10と紅参エキスとを混合したペースト状のものを直接投与することもできるが、ペースト状のものをカプセル等の可食性容器に封入したり、食品に添加することもできる。食品等に添加する場合には、食材の種類に関わらず、コエンザイムQ10を60mgと紅参エキス30mgとを混合したものを1回分として、1日2回添加する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】試験1の対象となるA群、B群及びC群の条件を示す図。
【図2】試験1の結果をグラフで示す図。
【図3】試験1の結果を数値で示す図。
【図4】試験2における心系数の変化をグラフで示す図。
【図5】試験2における心系数の変化を数値で示す図。
【図6】試験2における総末梢血管抵抗の変化をグラフで示す図。
【図7】試験2における総末梢血管抵抗の変化を数値で示す図。
【図8】試験2におけるVASの変化をグラフで示す図。
【図9】試験2におけるVASの変化を数値で示す図。
【図10】試験3における心系数の変化を示す図。
【図11】試験3における総末梢血管抵抗の変化を示す図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コエンザイムQ10に紅参エキスを加えたことを特徴とするコエンザイムQ10含有素材。
【請求項2】
成人1日当たりの摂取量を、コエンザイムQ10が120mg、紅参エキスが60mgとした請求項1に記載のコエンザイムQ10含有素材。
【請求項3】
請求項1に記載のコエンザイムQ10含有素材を封入したカプセル。
【請求項1】
コエンザイムQ10に紅参エキスを加えたことを特徴とするコエンザイムQ10含有素材。
【請求項2】
成人1日当たりの摂取量を、コエンザイムQ10が120mg、紅参エキスが60mgとした請求項1に記載のコエンザイムQ10含有素材。
【請求項3】
請求項1に記載のコエンザイムQ10含有素材を封入したカプセル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−111567(P2006−111567A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−300244(P2004−300244)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(504157851)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(504157851)
【Fターム(参考)】
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