説明

コグニティブ無線通信方法

【課題】周波数検出を行うことができ、制御メッセージを直接的に送受信可能で、しかも周波数割り当てを好適に行う。
【解決手段】MAC(Medium Access Control)プロトコルを用いたコグニティブ無線通信方法において、制御用サブフレームと実データが記述されるデータ用サブフレームとを備える第1のMACフレーム31を連続させるとともに、制御用サブフレームと実データが記述されるデータ期間並びに周波数チャネルを検出するための検出期間とを有する混合サブフレームとを備える第2のMACフレーム32が上記連続する第1のMACフレーム31間に所定周期で挿入されているフレームデータをセカンダリネットワーク側から送信し、検出期間を介して周波数チャネルを検出することによりプライマリネットワークの状況を識別することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッシュネットワークにおいてチャネルホッピングを行うためのMAC(Medium Access Control)プロトコルを用いたコグニティブ無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年において周波数の有効利用しつつ無線通信を行う方法としてコグニティブ(Cognitive)無線通信技術が近年において注目されている。コグニティブ無線通信とは、限定された周波数リソースを再活用してより効率的に周波数リソースを使用する技術である。即ち、コグニティブ無線通信によれば、セカンダリネットワークに属するデバイスは、プライマリネットワークにおいて使用されていない周波数リソースを周期的または非周期的にセンシングして使用可能な周波数リソースを認知し、認知された使用可能な周波数リソースを利用してデータを送受信するものである。
【0003】
コグニティブ無線では、もともとある通信帯域を使用する優先ネットワーク(プライマリネットワーク)と、プライマリネットワークが使用していない周波数帯域や時間などを監視して、この情報をもとに通信を行うコグニティブシステム(セカンダリネットワーク)が存在する。基本的にはプライマリネットワークは、優先的に与えられた通信帯域を常に使用することが可能であり、例えばテレビシステム等がある。セカンダリネットワークは、プライマリネットワークに干渉を与えることなく、自システム内に属するデバイスによる通信を行う。セカンダリネットワークは、上述したプライマリネットワークとしてのテレビシステムに割り当てられている周波数を使用することが前提となる。この中でも、特にこのセカンダリネットワークでは、自身が判断して周波数を利用して通信を行うデバイスがあり、例えば自らの位置情報と、当該位置において利用可能なプライマリネットワークの周波数に関する情報を取得することができるデバイスがある。また、このセカンダリネットワークでは、このような位置情報やプライマリネットワークの周波数情報を取得することができない場合には、他のデバイスによる制御の下で通信を行うものもある。
【0004】
ところで、無線通信により特にメッシュネットワークで通信を行う場合に、MACプロトコルは重要な役割をはやす。MACプロトコルは、各デバイスがどのように有限な無線通信帯域幅資源を共有するかを定義するものである。
【0005】
しかしながら、上述のようなコグニティブ無線通信のIEEE802.16d標準(例えば、非特許文献1参照。)のメッシュネットワークにおいて定義されているMACプロトコルは従来において存在しなかった。コグニティブ無線通信に、独自のメッシュネットワークのMACプロトコルを応用するとき、以下に説明するような問題点があった。
【0006】
従来のMACプロトコルには、チャネル検出のための機能が無かった。このため、IEEE802.16dの各メッシュノードは、プライマリユーザの状況に関する情報を取得することができなかった。このため、プライマリユーザとの間で通信衝突を起こしてしまう危険性があった。
【0007】
従来のIEEE802.16d標準のMACプロトコルには、有効な周波数チャネルに直接的にアクセスするためのアルゴリズムが存在しなかったため、ネットワークの制御を行うことができなかった。
【0008】
また、従来のIEEE802.16d標準のMACプロトコルには、コグニティブ無線通信を行うにあたり、周波数割り当てのための詳細なアルゴリズムが存在しなかった。このため、データ送信のスケジューリングを行うことができないという問題点があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】IEEE standard for Local and Metropolitan Area Networks - Part 16: Air Interface for Fixed Broadband Wireless Access Systems, IEEE 802.16-2004
【非特許文献2】Peng-Yong Kong, Jaya Shankar Pathmasuntharam, Haiguang Wang, Yu Ge, Chee-Wei Ang, Wen Su, Ming-Tuo Zhou and Hiroshi Harada, "A Routing Protocol for WiMAX Based Maritime Wireless Mesh Networks", IEEE 69th Vehicular Technology Conference VTC 2009 Spring, 26-29 April 2009, Barcelona, Spain.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は以下の3点にある。
【0011】
先ず第1番目としては、メッシュネットワークのIEEE802.16d標準において、周波数検出機能が実装されていないこと。
【0012】
第2番目としては、IEEE802.16d標準のメッシュネットワークにおいて制御メッセージを直接的に送受信するためのアルゴリズムが存在せず、一のチャネルを通じて制御メッセージを送信した場合に、他のチャネルにより動作している隣接ノードによって受信されない虞もあった。
【0013】
第3番目としては、IEEE802.16d標準のメッシュネットワークでは、コグニティブ通信を行う上での周波数割り当てのための詳細なアルゴリズムが存在せず、周波数の割り当てを行うことができなかった。
【0014】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、IEEE802.16d標準のメッシュネットワークにおいて、コグニティブ通信を行う際に、周波数検出を行うことができ、制御メッセージを直接的に送受信可能で、しかも周波数割り当てを好適に行うことが可能なコグニティブ無線通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上述した課題を解決するために、以下の構成からなるコグニティブ無線通信方法を発明した。
【0016】
先ず第1番目の問題点に対しては、フレーム構造の中に周波数チャネルの検出を行うことが可能なチャネル検出期間を導入することとした。
【0017】
また、第2番目の問題点に対しては、制御メッセージを送信するために、周波数チャネルを直接的にアクセスするアルゴリズムを提案している。いくつかの有効チャネルを持つコグニティブメッシュノードは、ネットワークから各種メッセージを受信するための平等な機会を持っているものと考える。周波数の割り当てメッセージは、可能な限り多くの隣接ノードによって受信され、通信衝突を減少することが可能となる。
【0018】
また、第3番目としては、有効なチャネルの周波数割り当てのアルゴリズムを提案することとした。
【0019】
即ち、請求項1記載のコグニティブ無線通信方法は、MAC(Medium Access Control)プロトコルを用いたコグニティブ無線通信方法において、制御用サブフレームと実データが記述されるデータ用サブフレームとを備える第1のMACフレームを連続させるとともに、上記制御用サブフレームと実データが記述されるデータ期間並びに周波数チャネルを検出するための検出期間とを有する混合サブフレームとを備える第2のMACフレームが上記連続する第1のMACフレーム間に所定周期で挿入されているフレームデータをセカンダリネットワーク側から送信し、上記検出期間を介して周波数チャネルを検出することによりプライマリネットワークの状況を識別することを特徴とする。
【0020】
請求項2記載のコグニティブ無線通信方法は、請求項1記載の発明において、隣接ノードの周波数チャネルの検出結果を通知するための情報要素(IE)を含めて送信することを特徴とする。
【0021】
請求項3記載のコグニティブ無線通信方法は、請求項1又は2記載の発明において、上記制御用サブフレームを構成する制御用スロットにおいて、全てのメッシュノードは、通常の周波数チャネルでのアクセスを試み、当該周波数チャネルが少なくとも一のノードにおいて有効である旨が報告された場合には、当該の一の周波数チャネルでアクセスし、それ以外の場合には、制御スロットの形式に基づいて他の有効な周波数チャネルでアクセスを行うことを特徴とする。
【0022】
請求項4記載のコグニティブ無線通信方法は、請求項1〜3のうち何れか1項記載の発明において、各ノードにおいて全ての周波数チャネルにつきミニスロットの有効性がそれぞれ記述されるテーブルを保有し、隣接ノードにおける周波数の割り当てを当該テーブルを参照しつつ実行することを特徴とする。
【0023】
請求項5記載のコグニティブ無線通信方法は、請求項1〜4のうち何れか1項記載の発明において、更にデータ用サブフレームの先頭において周波数チャネルを検出するための検出期間を設け、当該検出期間において他の周波数チャネルが検出された場合、予定していたフレームデータの送信を中止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
上述した構成からなる本発明によれば、メッシュネットワークのIEEE802.16d標準において、コグニティブ無線通信を行う際に周波数検出を行うことができるため、通信衝突が生じてしまうのをより低減させることが可能となる。
【0025】
また、制御メッセージを直接的に送受信するためのアルゴリズムが存在するため、一のチャネルを通じて制御メッセージを送信した場合に、他のチャネルにより動作している隣接ノードによって受信されることが可能となり、コグニティブ無線通信を行う際に通信衝突が生じてしまうのを防止することが可能となる。
【0026】
更に、本発明よれば、コグニティブ通信を行う上での周波数割り当てのための詳細なアルゴリズムにより、周波数の割り当てを効率的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明を適用したコグニティブ無線通信システムの構成図である。
【図2】本発明において実際に送受信するフレームデータの構造を示す図である。
【図3】制御スロットのスロット番号を計算する方法を示す図である。
【図4】テーブルTiの具体的な構造を示す図である。
【図5】海上のコグニティブメッシュネットワークのシミュレーションモデルを示す図である。
【図6】シミュレーションの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0029】
図1は、本発明を適用したコグニティブ無線通信システム1の構成を示している。ちなみに図1(a)は、コグニティブ無線通信システム1を網目状に配列されたノード12、これらノード12にアクセスを試みるPC(パーソナルコンピュータ)、携帯情報端末等で構成されるデバイス11とを備えた、いわゆるメッシュネットワークである。また、このコグニティブ無線通信システム1は、IEEE802.16d標準を採用するものである。
【0030】
このコグニティブ無線通信システム1は、もともとある通信帯域を優先的に使用するプライマリネットワークと、プライマリネットワークが使用していない周波数帯域や時間などを監視して、この情報をもとに通信を行うセカンダリネットワークが存在する。即ち、このセカンダリネットワークは、正式な規格において未だ認可されていないものであり、あくまでプライマリネットワークにより使用されていない周波数帯域を選択的に使用して通信を行うものである。
【0031】
基本的にはプライマリネットワークは、優先的に与えられた通信帯域を常に使用することが可能であり、例えばテレビシステム等がある。セカンダリネットワークは、プライマリネットワークに干渉を与えることなく、自システム内に属するデバイスによる通信を行うことが前提となる。ちなみに、このコグニティブ無線通信システム1では、IEEE802.11afの規定の下で、図示しない電波塔からテレビジョン受像機に向けてテレビジョン用の電波が放射されていることが前提となる。
【0032】
次に、このようなコグニティブ無線通信システム1の動作について図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0033】
図2は、本発明において実際に送受信するフレームデータの構造を示している。データ構造においては、第1のMACフレーム31を所定数に亘って連続させるとともに、第2のMACフレーム32をこの第1のMACフレーム31間に所定周期で挿入させてなる。この図2の例では、Kフレーム毎に第2のMACフレーム32を挿入する例である(ここでKは、0を除く整数)。第1のMACフレーム31は、制御用サブフレームnCSと実データが記述されるデータ用サブフレームfDSとを備えている。また第2のMACフレーム32は、制御用サブフレームsCSと混合サブフレームmDSとを備えている。
【0034】
混合サブフレームmDSは、実データが実際に記述されるデータ期間35並びに周波数チャネルを検出するための検出期間36とが混合されてなる。この混合サブフレームmDSでは、データ期間35、検出期間36の順に配列されているが、これに限定されるものではない。
【0035】
制御用サブフレームsCSは、制御スロット41に細かく分割されている。この制御スロット41に実際の制御メッセージが記述されることになる。また、データ用サブフレームfDSは、更にミニスロット42に分割され、実データは、かかるミニスロット42に実際に記述されることになる。
【0036】
本発明を適用したコグニティブ無線通信システム1では、一のノード12から隣接ノード12へ向けて上述した構造からなるフレームデータを送信する。このフレームデータでは、第2のMACフレーム32における混合サブフレームmDSにおいて検出期間36が設けられていることから、当該検出期間36を通じて他の周波数チャネルを検出することが可能となる。このため、IEEE802.16dの各ノード12は、プライマネットワークの通信状況をこの周波数チャネル検出を介して識別することが可能となる。その結果、セカンダリネットワークとプライマリネットワークとの間で通信衝突を起こしてしまうのを防止することが可能となる。
【0037】
このとき、実際に隣接ノードの周波数チャネルの検出結果を通知するために、MSH−NCFGメッセージの全てにおいて情報要素(IE)を含めるようにしてもよい。その結果、このコグニティブメッシュノードは、一つのチャネルを合わせる回数が1hopとしたときに1hop〜2hopsの隣接ノードの全てから検出結果を取得することが可能となる。
【0038】
また本発明では、以下に説明するチャネルホッピングのアルゴリズムを用いるようにしてもよい。
【0039】
制御用サブフレームsCS、nCSを構成する制御用スロット41において、全てのメッシュノード12は、通常の周波数チャネルでのアクセスを試み、当該周波数チャネルが少なくとも1のノードにおいて有効である旨が報告された場合には、当該の一の周波数チャネルでアクセスするようにしてもよい。そして、それ以外の場合には、制御スロット41の形式に基づく他の有効な周波数チャネルでアクセスを行うようにしてもよい。
【0040】
以下、この処理ステップの詳細について説明をする。
【0041】
第1のステップでは、周波数チャネルの総数をカウントする。そして、チャネル用帯域を分割して低い順から、チャネルC0〜チャネルCNc-1までチャネル番号を付す。
【0042】
第2のステップでは、異なる形式の制御スロット41の数をカウントし、IEEE802.16dの周波数分割スキームを考慮し、制御スロット41を3つのタイプ(一つはMSH−NENT、一つはMSH−NCFG、一つはMSH−DSCHに分類する。図3は、制御スロット41のスロット番号を計算する方法を示している。ここで参照時間(0)とは、制御用サブフレームの開始時間である。Nfrmは、参照時間(0)から、スロット番号が付されたフレームの数を示している。Nctrは、現フレームの開示時刻(t0)と、当該現フレーム内にある現スロットの開始時間(tc)間にある制御スロット41の数である。フレームの連続期間がTfであり、制御スロットの連続期間がTsであるとき、Nfrm=tc DIV Tf、Nctr=(tc−Nfrm×Tf)DIV Ts
【0043】
制御スロットの形式は、以下の方法によって知ることが可能となる。
【0044】
a) (Nfrm MOD L)!=0であるとき、MSH−DSCHメッセージのための制御スロット41になる。
b) (Nfrm MOD L)=0であり、またNctr>0であるとき、MSH−NCFGメッセージのための制御スロット41になる。
c) (Nfrm MOD L)=0であり、またNctr=0であるとき、MSH−NENTメッセージのための制御スロット41になる。
【0045】
上述したa)〜c)において、Lは、制御用サブフレームの期間である。
【0046】
MSH−NENT、MSH−NCFG、MSH−DSCHメッセージのための制御スロットのスロット番号(Nent、Ncfg、Nsch)は、以下の式により算出される。
sch=(Nfrm−Nfrm DIV L−1)×Ns+Nctr
cfg=Nfrm DIV L×(Ns−1)+Nctr−1
ent=Nfrm DIV
【0047】
ここでNsは、フレームにおける制御スロット41の数である。
全てのメッシュノードがアクセスを試みるチャネル番号は、C=(Nsch or Ncfg
or Nent) MOD Ncで表される。
【0048】
第3のステップにおいて、コグニティブ無線通信モードで、第2のステップにおいてアクセスを試みた周波数チャネルが有効である場合、ノード12は当該周波数チャネルでアクセスしようとする。これに対して、第2のステップにおいてアクセスを試みた周波数チャネルが有効でない場合、ノード12は、制御スロット41の形式に基づき、他の有効な周波数チャネルでアクセスを試みる。
【0049】
例えば、制御スロット41は、MSH−NENT、MSH−NCFG、MSH−DSCHの各メッセージを伝達する機会があるのであれば、ノード12は、有効な周波数チャネルの一つをランダムに選択するようにしてもよい。また、仮に制御スロット41がMSH−DSCHを送信するためのものであれば、ノード12は、最大チャネル有効度(CAD:Channel Availability Degree)を持つ周波数チャネルの一つを選択する。仮に最大CADを持つ周波数チャネルがいくつか存在する場合には、チャネル番号の最も小さい周波数チャネルを選択する。ここで、チャネル有効度CADは、チャネルが有効であると報告された隣接ノード12の数として定義される。
【0050】
また、本発明では、以下に説明する制御メッセージのスケジューリング方法を実行するようにしてもよい。
【0051】
a)MSH−NENTメッセージのために、ノード12は、MSH−NENTメッセージをランダムに選択する。そして、ノード12は、これからアクセスを試みようとするチャネル番号を計算する。仮にそのチャネルが、係るノード12並びにネットワークエントリーのために提供されるスポンサーノードにおいて有効でない旨が報告された場合、そのノード12は、MSH−NENTメッセージをランダムに選択する。そして、係るノード12とスポンサーノードの双方で有効であるチャネルが見つかるまで上述のフローを繰り返し実行する。
【0052】
b)MSH−NCFGとMSH−DSCHの各メッセージを処理するとき、メッシュ選択のために競合ノード12を選択する上で、アクセスを試みる周波数チャネルが有効でないノード12は、除外される。
【0053】
c)MSH−NCFGの送信処理を行う際において、かかる処理を制御する制御スロットにおいてアクセスを試みようとするチャネルが、最後のMSH−NCFGメッセージを送信しようとするチャネルと同一の場合、ノード12は、互いに重複するMSH−NCFGメッセージを繰り返し送信するのを防止する観点から、次のMSH−NCFGメッセージの送信機会を検討する。
【0054】
d)MSH−DSCHメッセージを処理する上で、仮にメッセージがMSH−DSCH(情報要素(IE))を含む場合は以下となる。
【0055】
目的地としてのノード12へ向けて送信される、確認情報が付された正式なIEは、メッシュ選択のアルゴリズムを用いることによって、隣接ノード12での衝突を防止することを考慮に入れて現制御スロットを確認することも行う。かかる確認処理は、目的地のノード12へアクセスを試みるチャネルの有効性を確認する上で必要とされる。仮に、現在の制御スロットが各種の条件に合致する場合、ノード12は、この制御スロットにおけるMSH−DSCHメッセージの送信処理を行う。それ以外の場合、各種条件に合致するスロットが見つかるまで、次のMSH−DSCHメッセージの送信機会を再考する。
【0056】
また本発明では、以下に説明する周波数割り当てのアルゴリズムを適用するようにしてもよい。
【0057】
先ず、ノード12は、それぞれのノード12での周波数チャネルの全てにおいてミニスロットの有効性が記述されるテーブルTaを保有する。また、それぞれ隣接ノード12毎にこのようなテーブルTi(i=0、1、2、・・・、Nr−1:ここでNrは、隣接す
るノードの総数)を保有する。図4は、このテーブルTiの具体的な構造を示している。縦軸が周波数チャネル(C0、C1、・・・、CNc-1)、横軸がミニスロット42のグループ(msg1、msg2、・・・、msgN)を示している。ミニスロット42の有効性を示す上での労力低減のため、256のミニスロット42(これは、IEEE802.16dメッシュネットワークにおいて標準化されている)がN個のグループmsg1、msg2、・・・、msgN)に分類される。ミニスロット42のグループのグリッドサイズは、ネットワークにおけるデータパケット通信のために、要求される最小のグリッドに基づくものとされる。
【0058】
テーブル(TaとTi)において、各セルは、一の周波数チャネルにおけるミニスロット42のグループの有効性が記述される。仮に周波数チャネルがプライマリユーザの通信により有効でない場合には、全てのセルにおいて“プライマリユーザによって占有されている”旨の表示がされる。仮にミニスロット42のグループがこのノード12又はデータパケットを送受信する隣接ノード12に割り当てられる場合、これに対応するテーブルTa上のセルには、“セカンダリユーザによって占有されている”旨が表示される。テーブルTaの残りのセルには、“セカンダリユーザにとって有効である”旨の表示が行われる。隣接するノードにおけるミニスロット42のグループの割り当ては、MSH−DSCHを介して知ることが可能となる。
【0059】
次に周波数チャネルの割り当て条件について説明をする。周波数チャネルを割り当てる際に、ノード12は、テーブルTa〜Tiの全てをチェックする。一のチャネルにおけるミニスロット42のグループは、このノード12における隣接ノードnxとの間における送受信のために割り当てられる。この割り当てが行われるのは下記のケースである。(a)全てのテーブルTa〜Tiにおけるセルが“セカンダリユーザによって占有されている”と記述されていない場合、(b)全てのテーブルTa〜Tiにおけるセルが“プライマリユーザによって占有されている” と記述されていない場合、(c)テーブルTaにおいて、他のチャネルのセルが“セカンダリユーザによって占有されている”と記述されていない場合。
【0060】
実際の周波数チャネルの割り当て方法について以下説明をする。
【0061】
コグニティブ通信における各メッシュノード(要求側)が、他のノード(提供側)から周波数チャネルの割り当てを要求する場合、要求側は、提供側に対して係る周波数チャネル要求リクエストを送信する。リクエストを受信した後、提供側は、即座に周波数チャネルを提供しない。あくまで次のMSH−DSCHメッセージを送付する直前に周波数チャネルを提供する。提供側は、そのMSH−DSCHメッセージを送付するとき、提供側は、有効なテーブルTa〜Tiの全てをチェックする。そして、上述の方法に基づいて要求側に好適な周波数チャネルを提供する。提供側から提供された周波数チャネルを受信した後、要求側はそのテーブルの有用性について即座にチェックを行う。仮に周波数チャネルの割り当て条件が合致するのであれば、その提供を受け付ける。それ以外の場合にはかかる周波数チャネルの提供を拒絶する。
【0062】
仮にその周波数チャネルの提供を受け付ける場合には、その有効なテーブルTaにおいてセルにマークを入れる。またMSH−DSCHメッセージを送付した次の時点において、提供を受けた周波数チャネルを受け付けたか否かを示す確認情報を提供側に送信する。
【0063】
提供の受信、提供に関する確認情報の送信の間の時間において、要求側が、提供側により割り当てられる周波数チャネルが重複してしまう旨の情報を受信した場合、その提供を拒絶するようにしてもよい。
【0064】
なお、本発明では、上述した混合サブフレームmDSにおける通常の信号検出に加えて、ノード12がデータサブフレームfDSにおいてデータパケットの送信を予定する場合には、そのデータサブフレームfDSの先頭においてそのデータパケットの送信を行うための周波数チャネルの検出を行うようにしてもよい。ここで、検出期間において他の周波数チャネルが検出された場合、予定されていたデータパケットの送信は中止するようにしてもよい。
【実施例1】
【0065】
本発明は、コグニティブ通信におけるIEEE802.16dメッシュネットワークにおいて使用することができる。通信アプリケーションの例は、TVWS(White Space)の動作下における、船舶間、又は船舶と海岸間で行われる海上通信に用いられる、コグニティブIEEE802.16dメッシュネットワークが先ず考えられる。それ以外には、WS(White Space)において動作する、ブロードバンドのコグニティブIEEE802.16dメッシュネットワークが考えられる。
【0066】
海上のコグニティブメッシュネットワークに本発明を適用したシミュレーションモデルを図5に示す。このシミュレーションモデルは、一般的な海上無線メッシュネットワーク又はアドホックネットワークであり、IMO(International Maritime Organization)によって定義される交通整理スキームが用いられた狭域海上チャネルによりカバーされるものである。この通信ネットワークは二つの平行な船舶84のレーンが存在する。一のレーンは、進行方向が東向きであり、他の一のレーンは進行方向が西向きである。それぞれのレーンは、幅20kmであり、それぞれ地上基地85を持っている。この地上基地85は、IEEE802.16dメッシュの基地局の場合には、海岸から10km離間した箇所に位置している。
【0067】
本シミュレーションにおける海の状態は、3.0と6.0である。また一つのチャネルを合わせる回数が1hopとしたときに1hop〜3hopsとしている。また632〜692MHzの範囲において全部で10のTVWS周波数チャネルが解析に用いられる。各チャネルの帯域幅は6MHzである。QPSK1/2は、データパケットの送信、制御パケット送信の双方において用いられる。また、MRPT(Maritime Routing Protocol for Triton)が経路探索用プロトコルとして用いられる(例えば、非特許文献2参照。)。
【0068】
MACフレームの期間は、40msである。1のチャネルの検出のために使用される時間は、0.5msである。各シミュレーションにおいて全51の海路のノードが海上に存在し、基地局としての地上基地85が陸上にある。海上ノードの一つは、それぞれのシミュレーションにおける基点ノードとして選択され、目的地のノードは、地上基地85となる。各シミュレーションの時間は600秒である。最初の300秒においてシステムのウォームアップを行い、次の300秒において、選択した一のノードからCBR(Constant bit-rate)データパケットを地上基地85へ送信する。パケットのサイズは400バイトであり、パケットの到着までの時間は、5msである。
【0069】
図6は、シミュレーションの結果を示している。横軸は、受信比率である。また縦軸は、送信比率で、どの程度の割合で目的地のノードへと送信することができたかの割合が示されている。これは、各海の状態(=3.0又は6.0)と、全て3つのhop回数何れのケースにおいても見られている。ここで海の状態が3.0であって、1hopの場合に、送信比率は、1に収束されてくる。これはほぼ全てのパケットが送信成功となることを意味している。最も悪いケースでは、海の状態が6.0であって、6hopの場合である。縦軸が0.8であるときの送信比率が70%を少し超える程度である。シミュレーションの結果から、本発明を適用したコグニティブ無線通信方法の効果を確認することが可能となる。
【符号の説明】
【0070】
1 コグニティブ無線通信システム
12 ノード
11 デバイス
31 第1のMACフレーム
32 第2のMACフレーム
35 データ期間
36 検出期間
41 制御スロット
42 ミニスロット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MAC(Medium Access Control)プロトコルを用いたコグニティブ無線通信方法において、
制御用サブフレームと実データが記述されるデータ用サブフレームとを備える第1のMACフレームを連続させるとともに、上記制御用サブフレームと実データが記述されるデータ期間並びに周波数チャネルを検出するための検出期間とを有する混合サブフレームとを備える第2のMACフレームが上記連続する第1のMACフレーム間に所定周期で挿入されているフレームデータをセカンダリネットワーク側から送信し、
上記検出期間を介して周波数チャネルを検出することによりプライマリネットワークの状況を識別すること
を特徴とするコグニティブ無線通信方法。
【請求項2】
隣接ノードの周波数チャネルの検出結果を通知するための情報要素(IE)を含めて送信すること
を特徴とする請求項1記載のコグニティブ無線通信方法。
【請求項3】
上記制御用サブフレームを構成する制御用スロットにおいて、全てのメッシュノードは、通常の周波数チャネルでのアクセスを試み、当該周波数チャネルが少なくとも一のノードにおいて有効である旨が報告された場合には、当該の一の周波数チャネルでアクセスし、それ以外の場合には、制御スロットの形式に基づいて他の有効な周波数チャネルでアクセスを行うこと
を特徴とする請求項1又は2記載のコグニティブ無線通信方法。
【請求項4】
各ノードにおいて全ての周波数チャネルにつきミニスロットの有効性がそれぞれ記述されるテーブルを保有し、隣接ノードにおける周波数の割り当てを当該テーブルを参照しつつ実行すること
を特徴とする請求項1〜3のうち何れか1項記載のコグニティブ無線通信方法。
【請求項5】
更にデータ用サブフレームの先頭において周波数チャネルを検出するための検出期間を設け、当該検出期間において他の周波数チャネルが検出された場合、予定していたフレームデータの送信を中止すること
を特徴とする請求項1〜4のうち何れか1項記載のコグニティブ無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−114824(P2012−114824A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263966(P2010−263966)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】